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比良俊典訳

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Academic year: 2021

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チョオーサ「善女列伝」I‑II

比良俊典訳

Chaucer's Legend of Good Women I‑II

Tr. by TOSHINORI HIRA

クレオパトラ伝

580‑588エジプトを統べたプトレマイオス王亡き後后クレオパトラが位に上って後の事, 或る時ローマから元老が遣わされた.王国をロ‑マの物としそれで以てローマの街に誉を加え

ようとしての事でした.斯ういうのがロ‑マの政の常でした.斯ういう仕儀にならなければ后 は当然この王国を自らの意の優に統べる事も出来た筈です.実の処その人がアントニウスだっ たのです.

589‑595この男運が向いて来た時運命の女神に不面目の議を受け口「′マに背く羽目とはな るのです.粍てて加えてアントニウスは,カエザルの妹がそれとは露知らぬ間に,不倫にも棄 てて別の女子を后にしようとした.それで以てアントニウスはカエザルとローマの敵になった のです.

596‑606とは申せこの元老宴に気高く天晴な兵であったからこの男の死は惜しんで余ある ものがありました.だが愛の神はクレオパトラの恋にこの男をあれ程狂わせ,あれ程碇りと恋 の農の虜にしたため恋の他この世は益なき物と断じた.クレオパトラを慈み仕える事の外無く てならぬ物は他に何一つない様にこの男には恩えたのです.この男后とその御位大事と政を他 所に女の腕に抱かれて死ぬ事も厭う物ではなかった.

mi‑615 、后とて同し,この騎士の勲と武者坂に引かれアントニウスを痛く慕う身とはなっ たのです.この両名の事を記'した本に偽りがなければこの騎士の見目形の良さ,気高さ,虞の ある所,雄々しい事は憶に今の誰にも引を取る物ではなかったし,后も麓しくその艶やかさは 五月の蕎夜と歳うぼかしでした.兎角話は手短かに致すを善しとしますから后はこの騎士と連 添い男を息の健にしたと申して置きましよう.

616‑623その時の華燭の典と祝宴に就いて書く事は何と′しても冗長に過ぎこれから数多の 話をしよう企の私としては,もっと大事な事を蔑ろにしない様この際差控えさして戴きまし た.何せ荷船に荷物を潰過ぎているの聾です.ですから舌の決着を急ぐ事としその余の事はお 吉LLtない事1こ致しましょう.

624‑628丁ントユウスの乱行に怒り狂ったアウダストゥスは獅子の如く猛きローマの兵を

(2)

以てアントニウスの総崩を計り大軍をエジプト‑差向けたのでした.こうして兵共は船に乗込 んだのですが此方の方は暫く海の上に置いておく事にしてアントニウスの事をお話ししましょ

う.

629‑653アントニウスは軽挙妄動する人ではなかったのですが然ればと言って出来得べく んばローマ軍と千曳を交えずに事を済まそうなぞとは恩もよらず,寧ろ機先を制して此方から 敵を沖に迎へ撃とう謀を廻らしたのです.こうして或る日の事后共々大軍を引具して船に乗る と早速沖へ打って出ローマ軍と出会ったのです.明晩が高々と鳴渡るとエジプト軍はそれを合 図に歓声を上げて矢の雨を浴びせお目様を背に激しい攻に出ました.大筒が天地を揺るがす物 音を響かして喰る中をエジプト軍は透かさず敵船目掛けて突込む,大筒の玉は敵の頭上‑莫逆 様.数多の船綱を縫って鎌が行交い四つ目錨が飛ぶ,敵味方斧を以て押合う者もあれば帆柱の 後へ逃げたかと思うと出でては敵を海中‑落す者もある,槍で敵を串刺にする者もあり草刈鎌 に似た錨で帆を破く者もある.亦杯を持出して敵に呑す者,尻餅をつかせようと槍ロに豆を放 く者,石灰の壷を持って突進む者共もあると言った按配で日がな一日軍に明暮れ,その挙句ア ントニウスが負けて逃げ家来も散々になって此所に事の決着は着いたのです.

654‑695紫の帆も貴やかな后の御座船も雨露と降る矢玉を避けて戦列から外れて行く.后 が激しい矢玉に堪えられなかったとて別に不思議はありませんでした.この様を見て「忌々し や!これにて吾が身の菅も終ったわ」と長大息した.アントニウスは落胆の余気が顛倒しその 場を遠く出でずして心の蔵を刺して果てたのです.后とて今更カエザルに御慈悲を願う術もな い健虞と悶々の情遣る方なくエジプト‑と遁げ帰った.喋々『恋』を語る殿原,御清聴の程を.

愛しい女子の惰気には死も厭いはせぬなぞと心にもない事をきつく仰有る方々,女子の誠が 何の様な物か今御分かりになりますぞ.悲嘆に暮れたクレオパトラは身も世もあらぬ程悲しん だ.その様は到底筆では尽し難い程の物ですが一夜明けると躊躇を捨て腕利きの職人に命じて 国中のルビーと言うルビー,宝石と言う宝石で杜を造らせ,匂を立込ますと体に池を塗らし然 る後自らの屍を運ばせ此所に納める様計いました.次にその社の直ぐ側に穴を掘らすと集めら れる文の蛇を入れこう申しました. 「さあ,妾の悲しき心が斯く迄素直だった御方,何の気兼 もなく妾は殿の物と誓ったその時から,妾はアントニウスの事を申しておるのじゃが,妾は夜 昼を分かたず夢見る心地がしておった.嬉しいに付け悲しいに付け,将又踊るに付け歌うに付 け殿の事は妾の心から離るることはなかった.じゃに依って妾は己れの心に決めたのじゃ,殿 が嬉しいに付け悲しいに付け思う事は何に依らず妾に叶う事なれば殿の后の菅に掛けて申すが 生きておろうと死のうと妾の恩と同じ,寸分違おう筈は御座りませぬ.この取極生きておる裸 に果たそうぞ.后たる者妾を措いて恋に誠を致す事斯く迄心入れし者なき事,今皆の者にも分 かろうぞ」

696‑702こう言うか言わぬ裡に猿な心からでは更々なく一糸纏わぬあられもない姿になっ

て蛇で一杯の穴に健気にも身を投げたのでした.こうして后は此所を死所と定めたのです.忽

ち数多の蛇が后の体を刺し出し為に此所で死を迎えた.后は己れをいとおしんだアントニウス

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心に報いるべく歓然として死についたのです.この話は昔あった事で決して作り話ではありま せん.

705‑705それに引返,殿御となると恋の為には死をも厭わぬ実のある方に御目に掛かった らその時はその時でそれ迄は心痛無用.

ティスベ伝3

706‑723アッシリヤの美しい后セミラミスが廻りを全部溝で囲ませ火を能く通した堅いタ イルで壁を高々と築かしたバビロンの町に,或る時こういう事がありました.この見事な町には 大変貴人の誉高い二人の殿が住んでいた.この二人緑なす土地に隣合わせに居を構えていた.4 それで以て両家の境は大方の大きな町の例に洩れず石塀がある丈でした.処で正直に言うとこ の殿の一人には息子,今一人には娘がありました.この息子天下第‑の猛き郎君の一人,同様 に娘も東の国の女では随一の蒲たけき郎女と言った処でした.御両人の名は近所の苦しい女子 の口の端に上って御互の知る処となったのです.と申すのもこの土地では今以て然なのですが 女子は愚かしき事をしない様,やっかみから御互きつく見守られているからです.

724‑736この郎君はピュラモス,郎女はティスベと言いました.オヴィディウスが然申し ているのです.5両人の好い噂は口伝えで御互の知る処でしたので年と共に憎からず思う様にな り年頃を迎えたのです.ですから年から言うと両人は一緒になっても良かったのですが双方の 父親は二人を一緒にする事を肯んずべくもなかった.6それ丈に両人の気持は嵩じたから執れの 友も誰一人として両人の燃える胸の火を消そうとした処で到底叶う事ではなかったのです.二 人は時には策を弄して忍逢い慕う心の端々を口の端に上すのでした.恋の火は消そうとすれば 十倍にも燃盛る,これは石炭の火を覆えばそれ丈燃えるの聾です.

737‑752処でこの両人の間を隔てる塀は随分前に造られたのですが出来た時を出でずして 上から下‑真直ぐに割目が這入っていた.この割目大変細く小さな物でしたから直ぐにそれと 気が付く様な代物ではなかったのです.7でも恋する者の目にこれが見えない筈はありません.

正直言ってその細い割目に気が付いたのはこの御両人が初めて.二人は塀を挟んで割目から司 祭に心の中を打明ける時みたいな低い声で話してはこの場にいる間のべて恋の怨みつらみを語 り合うのでした.忍逢いは何時もこうでした.男が塀の此方とすれば女は塀の向こうから互の 優しい声を耳にすると言った按配でした.

753‑766両人は見張の目を欺いては割目の所で忍逢うのを常としたので,塀に執っ七は来

る日来る日が心許無く何時壊されるかと気を挟む毎日が続くのでした.塀が壊れん事を願う両

人は「忌々しい奴!お前のやっかみで我等は思うに任せぬ.何故二つに割れるなり裂けて落

ちようとはせぬ.それが不承知ならせめて一皮限でも好い,顔を見るなり熱いキスをするなり

出来る様計らわぬ.そうだと我等の挟める気も余程直る物を.お前のモルタルと石の間から話

す外はないとして我等二人矢張お前には大きに加蔭を蒙っておる.おるにはおるが今の健では

(4)

のう」こう申すのでした.

767‑792この様な空しい言葉を吐くと両人は冷たい石塀にキスして別を告げるのでした.

人に見られる事を悼る余購曳は朝末か夕も厭う物ではなかった.永い事御両人はこうした忍逢 を繰返した挙句,或る朝の事月の女神の姿も末だ鮮かで消えてはいなかったけれど,暁の女神も 熱い目差で以て濡れた草に宿る露を乾かした頃に,何時もの通割目の所‑ピュラモスが来た後 一足遅れてティスベが遣って来た.今夜は何としても内を抜出し見張の目を悉く掠めて町の外

‑行こうと堅く約した事でした.原っぱは大変広かったから一つ所で時を同じくして逢うには 揖曳の場を定めて置く事が肝心.でニノス王の亡骸を葬った一本の木の下と言う事になった.

偶像を寒めた古の邪教の徒は亡骸を野っ原に葬るのを常としたからセミラミスはニノスを此所 に葬ったのです.この墓所の直ぐ脇には湧水がありました.8処で手短に申せばこの夜伽両人は 此所で逢おうと堅く言交していた.為に日暮がもどかしくお目様が中々海へ沈まないので殊更 長く暮残る様御両人には思えた事でした.

795‑801ティスベがピュラモスを慕う気持は大変な物だったので一刻も早く男に逢いたい 一心で機を窺っていたが,夜になって表へ出られる様になると頃は善しとばかり上手に頭巾で 顔を隠し人知れず内を抜出たのです.男との取極を取り女は友を捨てたのでした.女は男の事 が能く分からないといとも容易く相手の言う事を真に受けて男に誠を致すが常.その心根哀.

802‑822ティスベがいそいそと足早に件の木の所へ赴いたのも恋心が女を痛く励ましたれ ばこそ.こうして泉の脇に腰を落着けたのでした.処がその時,早速一匹の雌獅子が獲物で口 を真赤にして,ティスベがいる泉へ水を飲みに森から現われる.9この様を見てティスベは吃驚 仰天立上がるなり震える足を泳え洞穴‑飛退いた.10月明かりで女には洞穴が能く見えたので

した.逃げる時頭巾を落したのですが気にも留めなかった.それ程女は慌てていたのです.逃 げ切れた事を喜ぶと其所に息を殺して身を隠しています.獅子は鱈腹水を飲むと泉の辺をうろ ちょろし目敏く件の頭巾に目を留めて赤くなった口で以て引裂いて仕舞いました.寸々にする と獅子は愚図愚図する暇もあらばこそ森‑取って返したのです.

823‑852この時になってやっとピュラモスが遣って来た.随分永い事内にいたもの!月

も出てその優しい光は誰にも仰ぎ見られる頃になっていました.男は急足でこの場‑遣って来

たのですが道々目を地面へ向けると砂の上に獅子の大きな足跡を認めた.思ひも寄らぬ事にざ

くっとして色を失い髪は逆立ちました.歩を進めて見ると頭巾が引裂かれているではありませ

んか.ピュラモスは叫びました. 「これはしたり.!今夜一晩で二人とも御仕舞とは.ティス

ベを危めたのがこの私であってみれば其方に何と申して慨を乞うたものか.私が其方を危めた

も同然.この様な所へ来る様言わなければ死なせずに済んだものを.女子に而も夜この様にお

っかない所‑来る様言ったのが抑の誤.それにしても私が遅れたとは.些Lも早う此所へ来て

おればのう.其方よか二・三百米も先んじおれば大事なかったものを.いざこの森に潜む獅

千,何の様に猛き獅子も厭いはせぬ.出て来て私を八裂にするが好い.何の様に荒ぶる獣とて

厭いはせぬは.出て来てこの心の蔵を噛むが好い11」こう言うなり′ピュラモスは頭巾月掛けて

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飛掛かり幾度となくキスを浴びせるとその上に泣崩れて話し掛けた事でした. 「お前は愛しい ティスベの熱い血潮を吸うたに依って私の血も吸うのじゃ.よいな」こう言残してピュラモス は心の蔵を打砕いたのでした.血は傷口から遣り宛ら堰を切った水の様.

853‑868 ‑方,こう言う事とは露知らぬティスベはおどおどして身を屈めていたのですが こう思った事でした. 「愛しいピュラモスは或はもう御到着かも知れぬ.さすれば妾の姿がな い故,情を知らぬ偽人と妾の事を思うてやも知れぬ」そこで女は洞穴を出ると目を凝らして懸 命に男の姿を求めたのです. 「獅子が出て来て恐かった事とか恐々逃げて洞穴にいた事とか愛 しい御方に話して上げずば」と思っていたのです.12こうして女はとどのつまり男の体を探し 当てたのですが男は血塗れになって地面に叩附けられた様に死んでいた.女は後退りしたかと 思うと胸は乱れて波の様,黄楊の木みたいに血の気を無くし暫しは事の次第を恩ひ巡らしたけ れど,此所に倒れている男は紛もなく愛しいピュラモスである事が分かりました.

869‑882この時ティスベがどんなに血の気を失ったか,髪は振乱しどんなに苦悶して地面 に倒れ気も失せん許になったか,男の庇ロに戻して女の欺きで愛しい人の血を染め,顔を血で 其赤に化粧すると男の屍をどんな具合i,こ強く抱締めたか,この時哀に打粒がれた郎女が何の様 に振舞ったか,愛しいピュラモスの冷くなった唇にキスをしたのですがこの女の様哀,誰か能

r

くこれを筆に尽くし得よう. 「この様な仕打をしたは一体誰,妾の愛しい人を危めた人非人は 何所の誰か,ピュラモスの君,教えて賜れ.斯く言う妾はティスベで勧座りまするぞ13」こう 言ってティスベほどュラモスの頭を抱上げました.

885‑886恨を呑んだピュラモスはティスベが己れの名をロにするのを聞くと,未だ嚇かは 命を留めていたので死際の重い目を上げて女を見るなり目は閉じて息絶えた.14

887‑899ティスペは喚く事もせずやおら立上がって己れの頭巾が引裂かれたり男を危めた 刀と鞘が離々になっているのに気が付いたのです. 「妾のこの手は哀しさで以て震えてはいて も愛しい人がした事を遣って退けられぬ事はない.あの方を慕う心が妾を励まして妾を気丈夫 にし吃度妾の疲ロを大きく開かせようぞ.妾も自害して愛しいお方の後を追おうぞ.妾がこの お方を危めたも同然.されば後を追って自害するのが道理」ティスベはこう申しました. 「妾 からこのお方を引離く物は死を措いて他には何一つあろう筈はないに依って,妾は後を追いま するぞ.然れば殿は死んで妾と一緒になりますのじゃ」

900‑915ティスベはこうも申しました. 「処で我等のきつい勧父上方頑でおわすが,我等 は嘗てその子であった故御願が御座りまする.最早仲達は止して我等の躯は一つ墓に納めて下 さりませ.我等の痛ましき末路も元はと言えば好き合うたがため.事の是非を正し賜う神様, 実好き合うた二人には我等二人の及びも付かぬ仕合を賜りまする様.この様なおっかない所に

は由緒正しき女子が足を運ぶ向う見ずはなりませぬ.然ればと言って女子が男程恋に誠を致す

事はよもあるまいなぞ息わるるも業腹故,妾は早速女子も男に劣らぬ処を身を以て御見せ致し

まする」こう言うなりティスベは矢場に未だ愛しい人の血で生暖い刀を執ると胸を深く突いて

心の蔵を刺したのでした.

(6)

916‑921 、この様にしてピュモスラとティスベは自害して果てたのでした.ピュラモスの外 恋に誠を致した男は手許の本には殆ど見当らなかった物で私はこの男の話を持出したのです.

何せ女に優しく恋に誠を致す事が出来る男がいるなぞは私共男に執っては大変結構な話ですか ら.

922‑925縦令男が何様な恋をしようと女房方も男と同し事が遣って退けられると言う事が お分かりになりましよう.

1.テクストはGlobe Chaucer, ed. Alfred W. Pollard, 1898に拠る.

2. Cleopatrasに就いてはGowerはConfessto Amantis (ed. G. C. Macaulay)のLiber VIII で大変簡単に言及しているに留まる.

2571‑2577 「私はこの人々に交って慾に沈んだクレオパトラの姿も緑なす草原に認めたのでした.この 后生きながらに吾と我身を蛇に噛まして洞穴に果てたのでした.后は斯く我身を八裂にした.これも偏に 愛しい夫の君アントニウスを亡くした嘆から出た事でした」

3. GowerのTisbeeに就いてはConfessto AmantisのLiber III, 1331行‑1502行参周.拙論

「PyramusとThisbeの話」に対するChaucerとGowerの取扱いの相違(「長崎大学教養部紀要」, 人文科学,第5巻, 1965, 1真一15頁)参照.

4. Gower比較参照.

1334‑1339 「数多の家来を抱えた殿原がこの町の此所彼所に居を構えていたのですが,この殿原に交っ て一際止事無く権勢並ぶ物無き殿が一つ通に軒を並べて御二人おったのです」

5. Gowerではこれに対応する行(1331行)は極めて簡単で「私が読んだ本の話を致しましょう」

となっているに過ぎない.

6. Gower比較参照.

1351‑1356 「キューピッドが二人の事を御膳立したのでこの二人は愛の神の手を遁れる事叶わず.キュ ーピッドは恋の矢を二人に射た訳ではなかったのですが両人の心を乱し若人ならば過れる能わざる愛の按 を守らせよう企でした」

7. Gowerの場合(1370行‑1371行)は「そこでこの両人二人を隔てる寮に穴を開けた」になって いる. I

8. Gower比較参照.

1378‑1381 「夜分二人は人知れず密に町外から抜出して,湧水が一本の木の下にある所へ行く様話が決 まったのです」

9. Gower比較参照.

1392‑1393 「ティスベは獅子が獲物欲しさに野原‑遭って来る様を見た」

1401‑1403 「獅子は欲しい物を屠り腹が張った処で冷い水を泉‑飲みに遣って来た」

10. Gower比較参照.

(7)

1413 「ティスベは薮に身を潜めたじろぎもせず小さくなっていました」

ll. Gower比較参照.

1431‑1433 「私がこの阿鼻叫喚の本故,私が死ぬるが道理.其方は私故に身を亡ぼしたに依って」

12.これに対応するGowerの行欠.

13. Gower比較参照.

462‑1478 「ヴィーナスと仰る愛の女神様,それに恋する二人に道を御示し下すったその御子,キュー ビツド, 『愛』を司る御二人の神に申上げたき儀がありまする.妾の愛しきお方と妾の問に丈不仕合があ ると言うに就いては神様方が盲になって事の是非が分らずなって在すと思う外は御座りませぬ.此所には れ,こうして血を流して御座るピュラモス殿は何故かかる御最後を遂ぐる事があったのか.殿は神様方の 御意を休し善う御仕え申しておったに.刺‑うら若うて在したものを.若い事は妾とて同し事.然れば何 故斯様な為され方をし給うか?我等二人は胸に恋の火を付けられたに依って恋焦るる身とはなったに.

然るをかかる憂目を見るとは如何にも解せぬ事.それもこれも今となっては詮無い事.いと若く面白かる べき我等の春も悦に回り合う事なく終ったに依って何を以てしても購う術もないわ」

14. Gower比較参照.

1446‑1447 「この男早春込をしたが運の尽,吾と我身を危める事とはなったのです」

(昭和45年9月50日受泡)

参照

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