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介護士の施設利用者に対する対人関係技術の実態調査

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Academic year: 2021

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(1)

介護士の施設利用者に対する対人関係技術の実態調査

田中 かおり 曽出 利恵 田中 正俊 山中 桂 掛上 美保 田中 京子

高山赤十字介護老人保健施設はなさと

抄  録: 当施設は、平成9年10月20日に開設され、14年が経過した。その間介護を取り巻く 環境は変化し、平成19年には介護福祉士制度が改正され、業務の内容が従来の「入浴、排泄、

食事、その他の介護」から「心身の状況に応じた介護」に改められた。また介護福祉士として 高い倫理観を持って職務を遂行し、福祉サービス関係者等との連携を図るなど、自己研鑽し知 識・技能の向上に努めることが追加された。そのため更なる専門的知識・技術の習得に努め、

個別性のある関わりをしていくためには、対人関係技術の向上を図る必要がある。そこで介護 士の施設利用者に対する対人関係技術の実態調査を行ったところ、共感とかかわり行動が不足 しており、安全保証に対する意識が高いことがわかったので、ここに報告する。

索引用語: 介護士、 対人関係技術、介護老人保健施設

Ⅰ はじめに

平成19年に介護福祉士制度が改正され、介護士 の業務内容が従来の「入浴、排泄、食事、その他 の介護」から「心身の状況に応じた介護」に改め られた。これにより介護士自身が専門職としての 意識を高めようと自覚すると共に、周囲からも責 任とより質の高い介護サービスの提供が求められ ている。

介護の質の向上を考えた時、利用者と良好な人 間関係を築き、利用者本位の介護を提供するため には、対人関係技術が最も重要な技術と考える。

今回鈴木ら

1)

の対人関係の技能についての調査 項目を引用して、当施設の介護士の対人関係技術 の実態調査を行ったのでここに報告する。

Ⅱ 用語の定義

介護士:当施設で働く介護福祉士、ホームヘル パー2級有資格者

対人関係技術:鈴木ら

1)

の研究に基づき、共 感・かかわり行動・対人尊重・安全保証の4 つの カテゴリーに分類する

Ⅲ 目 的

介護士の対人関係技術の実態を把握し、不足し

ている点を見出す。

Ⅳ 方 法

1.対象:当施設に勤務する20代~60代の介護士 30名(女性27名・男性3名)介護福祉士は27名。

2.データ収集期間:2011年10月1日~10日 3.調査方法

1)鈴木ら

1)

による対人関係の技能について の調査項目33項目に高山赤十字病院介護福 祉士新人チェックリストより9項目を加え、

合計42項目のアンケート用紙を作成する。

2)配布回収法の自記式である質問紙によるア ンケート調査を行う。内容は(1)共感に ついて11項目、(2)かかわり行動につい て10項目、(3)対人尊重について15項目、

(4)安全保証について6項目の42項目に ついてであり、「ほとんどできない」・

「できないことが多い」・「少しはでき る」・「常にできる」の4段階選択肢に回 答を求めた。各項目に対する回答数で統計 処理を行った。

3)データの分析方法

  統計的検定にはエクセル統計により分散 分析法を用い、有意水準をp<5%(*)

とした。

(2)

表 1 対人関係技術アンケート結果

図 1 共感の平均値と標準偏差

図 2 かかわり行動の平均値と標準偏差

図 3 対人尊重の平均値と標準偏差

図 4 安全保証の平均値と標準偏差

(3)

4.倫理的配慮

アンケートは無記名・任意とし、調査にあたり 目的・方法の説明をする。結果は本研究以外では 使用しないことを伝え、承諾を得た。

Ⅴ 結 果

アンケートは30名中28名回収し、回収率は93%

であった。(表1)

1.共感について

11項目において、「ほとんどできない」が 1.6%、「できないことが多い」が18.3%、「少し はできる」が68.8%、「常にできる」が11.1%で あった。

「ほとんどできない」の平均値は0.45で標準偏 差(以下SDとする)0.52。「できないことが多 い」の平均値は5.09でSD2.11。「少しはできる」

の平均値は19.09でSD2.16。「常にできる」の平 均値は3.09でSD2.38であった。(図1)

「ほとんどできない」と「できないことが多 い」に回答した人数が多かった項目は②・⑤・⑩ であった。「少しはできる」と「常にできる」に 回答した人数の多い項目は⑦・⑨であった。

2.かかわり行動について

10項目において、「ほとんどできない」が 0.7%、「できないことが多い」が17.5%、「少し はできる」が60.5%、「常にできる」が21.1%で あった。

「ほとんどできない」の平均値は0.2でSD0.42。

「できないことが多い」の平均値は4.9でSD2.51。

「少しはできる」の平均値は16.9でSD1.52。「常 にできる」の平均値は5.9でSD2.60であった。

(図2)

「ほとんどできない」と「できないことが多 い」に回答した人数が多かった項目は③・⑦・

⑧・⑨であった。「少しはできる」と「常にでき る」に回答した人数の多い項目は①・②・⑤で あった。

3.対人尊重について

15項目において、「ほとんどできない」が 0.4%、「できないことが多い」が5.7%、「少し はできる」が56.9%、「常にできる」が36.7%

あった。

「ほとんどできない」の平均値は0.13でSD0.35。

「できないことが多い」の平均値は4.9でSD2.51。

「少しはできる」の平均値は15.8でSD4.05。「常 にできる」の平均値は10.2でSD5.41であった。

(図3)

「ほとんどできない」と「できないことが多 い」に回答した人数が多かった項目は⑧・⑪・⑫ であった。「少しはできる」と「常にできる」に 回答した人数の多い項目は⑬・⑭・⑮であった。

4.安全保証について

6項目において、「ほとんどできない」が0%、

「できないことが多い」が6.5%、「少しはでき る」が54.7%、「常にできる」が38.6%であった。

「できないことが多い」の平均値は1.83で SD1.16。「少しはできる」の平均値は13.66で SD5.75。「常にできる」の平均値は10.83で SD3.65であった。(図4) 

「ほとんどできない」に回答した人はいなかっ た。「少しはできる」と「常にできる」に回答し た人数の多い項目は⑥であった。

Ⅵ 考 察

4つのカテゴリー別に「できていない事」を中 心に考察する。

まず共感についてであるが、鈴木ら

1)

は共感 とは「利用者の感情に配慮した項目」「共感的ア プローチが信頼を深めるためのコミュニケーショ ンとして最も大切であり、それなくしては援助関 係は成立しないとし、介護者の感受性を開発し高 めることが重要である」と述べている。

「できないことが多い」という回答が多かった

項目の理由を考えると、「②忙しい中でも個々の

利用者と対話の機会を作ることが大切だと考えま

すが、あなたはそれができている」と「⑩苦痛や

不安を終始訴える利用者などに嫌な顔をしたり面

倒がらずに訴えを何度も聞いてあげることができ

る」に対しては、これまでの介護活動が機能別で

業務中心であり、時間内に業務を終えることを重

要視してきたためではないかと考える。「⑤利用

者に制限や禁止を伝える際、利用者の抵抗感が少

なく、納得できるような言い方ができる」に対す

る「できない」とは、利用者の立場に立つ事なく、

(4)

禁止や制限を押し付けている姿と考えるが、これ は安全面を最優先とするばかりに、利用者の今ま での生活習慣や利用者自身の希望などの情報収集 が不足していたためではないかと考える。

反対に「少しはできる」と「常にできる」とい う回答が多かった「⑦日常的に利用者と触れ合う 際に、ちょっとした言葉かけなどをして相手に関 心を示すことができる」に対しては、日々の介護 の中での声かけを心がけている姿勢がうかがわ れ、信頼関係を深めようと努力していると考える。

「⑨うつ状態の利用者が「寂しい」「心配でしょ うがない」などと繰り返している時には、安易に 頑張ってなどと激励しないようにできる」に対し ては、うつ状態の方への対応の仕方を把握してい ると同時に、利用者の状況を共有できていると考 える。

次にかかわり行動について述べる。鈴木ら

1)

は、かかわり行動とは「介護者の行動の形式的特 徴」「介護者自身の介護行動における様式(や り方)ととらえることができる」と述べている。

「できないことが多い」という回答が多かった

「③利用者の話を聞く時は、利用者が自分の姿全 体を見られるような位置にいることができる」と

「⑨介助の途中で別の仕事をしなければならなく なった時、利用者を放っておかないよう配慮する ことができる」は、業務を優先してしまい、何か をしながら話を聞いたり、すぐに対応できない時 の声かけが足りないためではないかと考える。利 用者の心情を察し、利用者の立場に立って考える ことが求められる。「⑦場の緊迫感を和らげる ユーモアを取り入れ、周囲を和ませる対応ができ る」に対しては、日常の忙しさや業務に追われる 中では、ユーモアで周囲を和ませることが困難な 場合も多いと言える。しかし介護施設での生活は、

利用者にとって慣れ親しんだ家庭から離れ、社会 生活を営む場であり、緊張感や不安感を抱えてい ると考える。利用者の緊張や不安を思いやり、笑 顔で明るい対応をすることが利用者の緊張を和ら げることにつながると考える。「⑧利用者の話を 聞く時に話の内容と感情の両方を理解することが できる」に対しては、利用者の言葉だけでなく表 情や声の質からも感情を読み取ることが必要であ るが、1対1で利用者とゆっくり向き合って話す

機会が少ないと考える。少なくとも利用者の感情 に変化があると感じた時は、利用者とゆっくり向 き合う時間を確保する必要があると考える。

次に対人尊重とは、鈴木ら

1)

は「利用者の尊 厳に対する配慮」と述べている。「できないこと が多い」という回答が多かった「⑧認知症利用者 などには介護者側の思いが通じない場合もよくあ ることを理解し、自分の感情をコントロールする ことができる」に対しては、認知症利用者を十分 に理解できず、どのように対応したらよいのかが わからないためではないかと考える。利用者を尊 重し、利用者にはそれぞれの人生観や価値観があ ることを受け入れ、相手を受容し共感できる自分 を育てる訓練が必要である。現在、施設内の認知 症ケア専門士による勉強会が開催されているが、

今後も学習の継続が望まれる。「⑪利用者家族が 納得できる説明を行い、同意を得ることができ る」と「⑫利用者・家族の意向を把握し、援助を 考えることができる」では、今まで利用者の家族 への報告・連絡・相談は、ほとんど日勤リーダー を担う看護師まかせになっていたことがあげられ る。現在介護士も日勤リーダーとなり、家族との 関わりを持つ機会が増えてきているが、今後は一 層積極的に家族と関わり、利用者と家族の両方が 満足する介護を考えていく必要があると考える。

「少しはできる」と「常にできる」という回答 が多かった「⑬利用者の人権を尊重し、業務上の 秘密を守ることができる」と「⑭プライバシーを 保護し、看護・介護情報や記録物を取り扱うこと ができる」と「⑮介護は利用者中心のサービスで あることを認識し、利用者・家族に接することが できる」は、毎年介護士対象の倫理研修があり、

積極的に参加し、意識付けが出来ているのではな いかと考える。

最後に、安全保証とは鈴木ら

1)

は「利用者が

事故や怪我をしないように利用者の安全に配慮し

た項目」と述べている。安全保証は、「ほとんど

できない」と回答した人はいなかった。これは安

全な生活を重視した環境を提供できるよう、施設

での研修が多いことと毎月のカンファレンス時で

のインシデントの振り返りが定着しているためと

考える。また業務の中でもチェックリストの記入

や家族への同意書を頂くときなど、スタッフへの

(5)

意識付けの機会も多く、実践できていると考える。

「社会福祉士及び介護福祉士等の一部を改正す る法律」が2007年12月公布され、平成27年度の国 家試験からは、3年以上の実務経験に加え、6ヶ 月以上の実務者研修の受講が求められる。これか らの介護の現場は、業務中心の介護から、利用者 中心の介護へと介護実践の展開方法を根本から変 えようという意識改革期にある。これは入浴や排 泄や食事など直接援助業務を中心に、一斉に流れ 作業のような仕事をしていると思われていた介護 から、利用者を理解し、利用者に寄り添い、利用 者一人一人の異なったニーズに応じる介護を目指 すということである。今回の研究により社会の流 れを確認し、当施設の介護士の実態を知ることで、

当施設も介護士自身が意識と援助方法を変えなけ ればならないと改めて認識した。 

Ⅶ 結 論

1.介護士の施設利用者に対する対人関係技術の 実態調査の結果、共感とかかわり行動が不足して いることがわかった。

2.介護士は施設利用者に対して、安全保証に対 する意識が高いことがわかった。

Ⅷ おわりに

この研究を通して、日常業務の中で利用者への

対応に問題があることがわかった。今後も施設外 の現任研修に積極的に参加すると共に、施設内で も対人関係技術の研修を継続的に実施できるよう 提案していきたい。又、スタッフ自身が介護サー ビスの質を向上させていきたいという意識を持ち、

利用者に安心と安全、穏やかなその人らしい生活 を提供していきたいと考える。

引用文献

1)鈴木聖子・佐藤倫子他:介護技術の構造と 関連要因の検討,高齢者のケアと行動科学 VOL.7,No.1 pp.37-43,2000

参考文献

1)鈴木聖子:介護福祉職のコミュ二ケーション スキルに関する検討-自己評価から-,介護 福祉学VOL8 No.1 pp.71-78,2001.10 2)渡辺裕美:看護と介護の異同-介護福祉士

の専門性-,保健医療社会学論集18巻2号  pp.18-23,2007

3)荘村多加志他:三訂介護福祉士養成講座⑦老 人・障害者の心理,中央法規出版株式会社,

1997

(6)

表 1 対人関係技術アンケート結果

参照