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留学生 セ ンター 日本語 コースの現状 と課題

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5 2

留学生 セ ンター 日本語 コースの現状 と課題

が き みつ ひ ろ

は じ め に

本稿では、外国人留学生指導 セ ンター (以下セ ンター と略す)が日本語課外補講を担当す るようになった

1 9 89

(平成元)年か ら現在 までのセ ンターにお ける日本語教 育を振 り返 り、今後改善 されるべ きと思われる問題点の 整理 を試みると共 に、その解決のための方策 について若 干の私見を述べたいと思 う

筆者 はセ ンターでE]本語教育が行われるようになった のに伴 い

、1 9 89

(平成元)年

2

月にセ ンター専任教官 と して着任 した。以来

4

年 あまりにわたってセ ンターの職 務 に従事 して きたが、本年

3

月末で職を退 く予定である。

4

月か らは新 たな専任教官が着任 してセンター日本語コー スの運営が続 け られることになるが、本稿が今後のセ ン ターにおける日本語教育の一層の充実 に向けて少 しで も 参考 となれば幸 いである

1

. コース発足か ら現在 まで

( 1)

日本語 コース発足の経緯

セ ンターは

1 9 86( 昭和6

1)年

6

月に発足 したが、いわ ゆる日本語課外補講をセ ンターが担当す ることになった のは

、1 9 89

(平成元)年度か らの ことである

。1 9 8 8( 昭 和63)

年度当時のセ ンターの記録 によると、学生部 など の主催で日本語 ・日本事情担当教官 などを中心 に実施 さ れていた日本語課外補講 の受講者が増え、クラス編成そ の他の対応上 の問題が大 きくなったという事情があった ようである

。1 9 8 8( 昭和6 3) 6

1 3

日の本学留学生専門 委員会で この問題が討議 され、日本語課外補講 について はセ ンターで対応す ることとなり、同年8月 2日の臨時

部局長会議 において、日本語課外補講 に対応す るための 専任教官定員を学内措置でセ ンターに配置す ることが決 まった。

筆者 は、以上のような経緯で配置 された専任教官 とし

1 9 8 9

(平成元)年

2

1 6

日付 けでセンターに着任 した。

当初 は専用のスペースもな く、本部事務局の片隅に机 と 椅子だけの借 り住まいで、教室 は教養部別館 を借 りて授 業 をす るとい う状況であった。 しか し、 このよ うな物理 的な問題 よりも、日本語課外補講の位置付 けが必ず しも 明確ではなか ったことが、現在 まで未解決の最大の問題 であったと言 ってよい。

もっとも、当初 はそれまでの日本語課外補講 の実施状 況を踏 まえて、新年度の計画を立案 し実行 に移すだけで 精一杯であった。そのような中で予算要求、カ リキュラ ム立案、講師依頼、プ レースメン ト・テス トの実施、授 業開始 といった一連の作業が行われた。筆者 自身、足が 地 につかぬ思 いでただ目前の仕事にとりかかる状況であっ

セ ンター専用施設の確保の問題が解決 したのは筆者 の 着任後半年を経た

1 9 89

(平成元)年

8

月の ことである

授業用の専用 スペース、教官研究室などが手狭 なが らも 確保 され、 この年の 9月か らセ ンターの授業 は現在の施 設で行われることになった。

( 2 ) 1 989 ( 平成元)年度

セ ンターによる日本語課外補講実施 の初年度 は、それ まで長崎大学で実施 されていた課外補講を受 け継 ぐ形で 始 まった。まず、学生部が教養部の日本語 ・日本事情担 当教官 に委託 して行われていた授業 のはか、水産学部で 行なわれていた授業 も合流 してセ ンタ‑実施 という形態

(2)

にな った

授業編成 は従来 の形をほぼ踏襲 し、初級、中級 と分け、

その中をまたい くつかに分けて開講 した。また、それぞ れの過当た り授業時間について は、特 に初級 について週

3

校時 (当時 は

1

校時

1 0 0

分 )ずっ とい う計 画で ス ター トした(Jしか し、 これは後期 になって日本語能力が全 く ない学生が新 たに入学 して きたため、新 たに彼 らのため のクラスを開 くことが必要 とな り、その分を削 って週

2

校時ずっに減 らさざるをえな くなった。

1 9 8 9

年度 は、また受講者 の資格をめ ぐって対応が揺れ た年で もあ った。当初 は外国人研究者や留学生の家族、

さらには外国人講師やその家族 まで授業 に参加す ること を認 めていた。 しか し、 このよ うな対応 に根拠があった わけではな く、またクラスによっては留学生 よ りその家 族 の受講者 のほうが多 いといった本末転倒の状況が生 じ

たため、後期か ら留学生以外の受講 は認めないこととし、

外国人研究者 について は関係機関 に検討 を要請 した。 こ の問題 については次節で詳述す る

この年 には、夏季休業期間中に も日本語の授業 を続 け て欲 しいという受講生 の要望 もあ り、夏季特別授業 を急 速編成 したが、実際に開講 してみると参加者 は少な く、

留学生 の家族だけとい う結果 に終わ った。

( 3 ) 1 9 9 0 ( 平成 2

)年度

この年か ら課外補講 という名称を避け、留学生センター 日本語 コースとい う名称 を使用す るよ うになった。また、

4

1

日に新 たな専任教官が着任 し、専任教官

2

名の態 勢 とな った。

授業編成 については、初級 ・中級 といったクラス分け をやめ、「文型 ・会話

Ⅰ〜Ⅴ

読解 ・作文「聴解 ・ス ピーチ漢字」など、機能別のクラス編成 と したC こ れ は受講者 が求 める日本語教育 の内容がさまざまに異な ることに対 して授業時間総数が限 られている中で、メニュ ーを多様化す ることによって対応 しよ うと考えたか らで あ る。 この他、前年 までの受講生 の要望 も踏 まえ、 この 年か ら 「日本の生活 と文化」 と して異文化適応や日本文 化理解 を目的 とした授業 も開講す ることと した。

また、本学国際交流委員会か らの要請で、外国人研究 者 について は可能 な範囲内でセ ンター日本語 コースの受 講 を認 めることとなった。

( 4 ) 1 9 91 ( 平成 3

)年度

全体 として は前年度の態勢 をほぼ踏襲 しっっ、若干 の 修正が行 なわれた。授業編成 については、「聴解 ・スピー チ」を廃 し、代わ りに 「総合演習」 とい うクラスを設 け て、中級程度 までの日本語学習を終えた留学生 に も対応 で きるよ うに した。また、例年、後期入学の留学生 の編 入に苦慮 していたことか ら、「文型 ・会話 」 の各 ク ラス については前期 、後期 にそれぞれ新 たに開講 とい う形 で 対応す ることと した。

この他、 この年 は本学 の他部局の教官 にセ ンターでの 授業担当を依頼す る際の取 り扱 いが問題 とな り、学内非 常勤講師化がEaられたが、実際 にそれが認め られ ること

になったのは

1 9 9 2

年度か らであ る

( 5 ) 1 9 9 2 ( 平成 4

)年度

授業編成 について は当初 、ほぼ従来どおりであったが、

開講時期を前期 、後期 ともに繰 り上 げて、

4

月及 び

1 0

上旬 とした。 このため、前期 については夏季休暇の前に 終了す ることがで きるよ うになった。

一方

、1 0

1

日付 けで専任教官

1

名が転 出す ることと な り、後期 の授業計画については開講科目を若 干削減 し、

従来委嘱 していた学外講師の他 に新 たに

2

名の講師に委 嘱 して実施す ることとなった。

2.問

さて以上 のよ うな経緯で実施 されてきた留学生セ ンター 日本語 コ‑スであるが、学内外の方 々の協力で今 日まで まが りなりに も維持 され、また受講す る学生達 か らもそ の存在意義 を認 める感想を聞 くことも多 く、長崎大学 の 留学生教育 にそれな りの貢献を して きた ことは確かであ しか し、改善 され るべ き点 も決 して少 な くはない。

その中にはコ‑スの存在の是非 に も関わ る本質的な問題 も含まれている

( 1 ) 明確 な教育 目標の欠如

セ ンター日本語 コースの最大 の問題点 は、その目的が 明確でないこと、 この一点 につ きるといって も過言 では ない。 もちろん、長崎大学 に在籍す る留学生の日本語能

(3)

5 4

力を高めることがその日的であると言えばそれはそ うだ が、それは実際には何 も語 っていないに等 しい。

常識的に考えれば、大学教育 も留学生活 も日本の社会 の中で行 なわれるか ら、その社会で使用 されている言語 である日本語が十分 に使用で きるようにす ること、 これ が目的 となると思われ るのだが、そのような共通理解が 学内にあるようには思えない。

その何よ りの証拠 に、長崎大学 には最低限必要 な日本 語教育の態勢 さえ整 っていないのに、毎年、日本語能力 がゼロの留学生が受 け入れ られているという事実がある。

筆者が着任 してか ら今までに、そのような日本語能力ゼ ロの留学生を受 け入れ る教官か ら、長崎大学ではどのよ うな日本語教育の態勢があるのか とい う問い合わせを受 けたことは皆無である学生が到着 した後で 「セ ンター の授業 は受 けられ るか」 という問い合わせを受 けたこと は何回かある 留学生受 け入れの決定 にあたって、当該 学生の日本語能力 はいったいどれだけ考慮 されているの だろうか。

本来な らば、留学生が日本の大学で十分な学習 ・研究 の成果を挙 げるために必要 な日本語能力の基準が設定 さ れた上で、それぞれの留学生の現時点での日本語能力を 評価 し、それが基準 に足 りない場合にはどのよ うに して 能力をそこまで高めるかが考え られなければな らないと ころである しか し日本の大学 における留学生 の日本語 能力についての対応の現状か ら見れば、 これは全 くの理 想論 に過 ぎないよ うにも思える 一方、欧米の大学 の多 くは、入学希望者 に対 して英語、 フランス語、 ドイツ語 など受 け入れ国の言語 あるいは国際語 としての英語 の能 力を厳 しく評価 し、それが十分でないと判断 した場合に は、集中語学教育を義務づけている。例えばアメ リカの 大学 に留学 しよ うとして も

、TOEFL

の点数 が低 ければ 受 け入れて もらえない し、最低点数 は越えていて も学課 の授業 の受講 に不十分 と見なされれば、十分な点数が取 れ るまで語学 コースに入れ られる 留学生教育 において 言語の持っ意味を考えれば当然 とられるべ き合理的な措 置である

しか し長崎大学 の現状を顧みれば、多少の配慮を受 け ているのは

6

ケ月程度の日本語集中予備教育を九州大学 や大阪外国語大学などで受 けて くる大使館推薦 の国費留 学生のみで、はかの留学生 は日本語能力の問題 について

の合理的な配慮 はほとんど何 も受 けていない (ここでは 学部学生の問題 は扱わない)

あるいは 「そ ういった学生のために日本語課外補講が あるのではないか」 という向 きもあろうしか し、課外 補講 とはいったい何を もって言 うのであろうか。日本語 能力 ゼロの学生を前に して、いったい何を 「補 う」 こと がで きるのであろう 彼 らが研究室や日常生活の中で見 覚え、聞 き覚えで習 う日本語を 「補 う」のだろうか。十 分な日本語能力な くして 「課外」ではない 「正規」の教 育 は、いったいどのように して行われているのだろうか。

課外補講」あるいは 「補講」 といった名称の暖昧 さ が問題 を分か りに くくしている 文部省が留学生経費の 配分 に当たって このよ うな用語 を使用 しているために、

各大学で も使われているものである 文部省 として も日 本語補講の概念が必ず しも明確 になっていないのではな いだろうか。少な くともこのような暖味な用語 の使用 は 改めるべ きである

いずれに して も、「日本語課外補講」 の名 の下 で行 な われている日本語教育 は明確 な理念 を欠 いている理念 が明確でない以上 、その内容や実施形態 も合理的な もの にな りえない。

(2)授 業 内 容

留学生 日本語 コースはいったいどの程度の開講授業数 を必要 としているのか、と問われることがままある の問いに答えることは不可能である 目標が不明確なの にどこまで必要であるとか、ないとか、議論 の しょ うが ないのである。

現在の週当た り授業時間数 については、まず、専任教 官の担当授業時間数 は、教養部の外国語科 目担当教官 の 担当授業時間数を参考に して週当た り

5

とし、学外講師 担当の授業時間数 は、年間の謝金予算を時間当た りの謝 金単価で割 って算出 し、両者を足 し合わせたに過 ぎない。

また、授業の内容 については、日本語の初学者か ら日 本語能力試験

1

級程度の能力を持っ学生 まで、能力に大 きな差のある受講希望者の要望 にで きるだけ広範 に応え るために、上記の授業時間総数 の許す範囲内でで きるだ け レベルと内容 に多様性 を持たせ ることを基本 として計 画 した ものである。要す るに 「浅 く広 く」 ということで あって、集中的な学習を必要 としている初学者 に対 して

(4)

は、極 めて不十分な対応 しかで きないという結果 にな っ ている。

また、セ ンターにや って くる留学生 の相談や要望 の内 容か ら判断す ると、全般的な日本語能力がまだ初級ある いは中級程度の学生であ って も、それぞれの指導教官 に 日本語 で専門文献を読んだ り、研究発表を行 った りす る ことを要求 され る場 合が多いようであるいわゆる専門 日本語教育 といわれ るこの分野のあ り方をめ ぐっては日 本語教育学会などで も検討 の対象 とな り、それぞれの分 野の専門家 と日本語教師が協力 してい く必要があるとの 合意がで きっっあ るのだが、本学ではこの点 については まだほとんど検討 されていない。

専門分野の ことに部外者が口を出すな という考え もあ るよ うだが、か と言 って指導教官が専門分野で使われ る 日本語 の教育を行 っているか とい うと、そ うではない場 合が多 いよ うに見受 けられ る日本語能力がまだまだ十 分ではないのに指導教官か ら日本語 で書かれた専門文献 を渡 されて、セ ンターに助 けを求 めて くる留学生 も少な くはない 。 しか し現在のセ ンター日本語 コースの態勢で は、そ ういった専門分野で使用 され る日本語 についての 指導 は難 し

い 。

( 3 )

開 講 期 間

現在、セ ンター日本語 コースの開講期間 は前期 、後期

1 5

週間 となっている これについて規定上 の根拠があ るわけで はない。各学部で行われている授業 に合わせて いるだけである

受講者 の中か らはむ しろ一年中開講 して欲 しいとい うI 声 もある 年間 を通 して実験 ・研究 に携わ ってお り、大 学の夏休みや冬休みなどとは関係な く、一年 を通 じて研 究生活 を送 っている留学生 が多いのは確かである。また、

休暇を利用 して帰国 した り旅行 した りす る留学生 も少な くはないが、そ うでない学生 は、例えば冬休みなど、別 にどこに出かけるで もな く宿舎やアパ ー トに一人残 され るとい うよ うな状況 もある

日本語 予備教育 を行 っているい くつかの国立大学 の留 学生 セ ンターでは前期 、後期 それぞれに

2 0

週間程度 の授 業 を行 っていることが多 い。

それでは、セ ンター日本語 コースの実施期間 はどの程 度 とす るのが適切 なのだろ うか。 これ も、 コースの目的

によるとしか言 いようがない。到達 目標が決 まれば、集 中度 との兼ね合 いを考慮 しなが ら所与 の条件 の中で実施 期間 は設定 され ることになる。 しか しなが ら、課外補講

という暖味 な位置付 けでは、それ は難 しい 。

また、事実上 日本語 コースの実施期間 に関す る規定や 根拠がない以上 、 これを徒に伸ばす ことは、セ ンター教 官 の授業負担 を歯止 めのないままに重 くす る結果 に もな り兼ねない 。セ ンター教官 の授業負担 その ものにつ いて なん らの規定 もない現状では、そのよ うな ことは避 ける べ きである

( 4 )

開 講 時 期

開講時期 の問題 は開講期間の問題 と表裏一体である

現状では留学生 の入学時期 は日本人学生 に比べて極 めて 変則的である 日本語 コースを受講す る留学生 はほとん どの場 合、まず研究生 として長崎大学 に受 け入れ られ る が、その受 け入れ時期 は基本的 に前期

4

月、後期

1 0

月の

2

回に分かれ るほか、最近 は

1

月 に大学推薦 の国費留 学生 の受 け入れが増 えている このよ うに受 け入れが年 間 に

3

回に分かれ る上 に、同 じ4月入学生で も、月初 め に到着す る学生がいるか と思えば月末近 くになって到着 す る学生 もいるというふ うに到着 日がば らば らである

こうい った事情 か ら日本語 コー スの開講 時期 は

1 9 91

(平成

3

)年度 まで は、だいたいの新入生 が揃 う

5

月初 め と

1 1

月初 めとしていたが、前学期 よ り継続 して受講す る学生や4月

、1 0

月の早 い時期 に到着 した学生 には不評 だ った。 このため

1 9 92

(平成

4

)年度は開講を

4

月初め、

1 0

月初 めとい うふ うに早 めたが、開講後 もば らば らに到 着 して来 る学生 に対 して一 々プ レースメン トを実施 した り、既 に開始 したクラスに途中か ら新 たに学生 を入れた りす るなど、さまざまな問題が生 じている また、現状 では

1

月受 け入れの学生 には対応 の しょ うがない。

4

まで受講を待 たせればよいとい う考え もあるしか し、

1

月期 に到着す る大学推薦 の国費留学生 は日本語予備教 育 を受 けずに直接長崎大学 に受 け入れ られ日本語能力 も

ほとん どない学生が多い 。このよ うな学生 については到 着直後の

3

カ月間 こそ、 もっとも日本語教育が必要 とさ れ る期間なのに、セ ンターはそれに対応す る態勢 にはな いとい う矛盾 した状況が生 じている

(5)

5 6

(5) 受 講 資 格

セ ンターの規則か ら判断す るな らば、長崎大学 に在籍 す る留学生以外 は対象外 ということになるが、慣行や担 当教官の裁量 という要素があって、当初 は長崎大学 に関 係があるという理由で、留学生 の家族、外国人研究者、

さらには長崎大学で授業 を担当 している専任あるいは非 常勤 の外国人の教師 も受 け入れた。 この受 け入れの判断 は特 にセ ンターの運営委員会などに諮 った上でのことで はな く、あ くまで教官個人の判断であった。 しか し、セ ンターでの日本語教育の実質上の責任者である専任教官 がそのような判断をす ることは、一般の学部の講義担当 教官が、いわゆるもぐりの学生の聴講を認めるというの とは事情が違 っている しか し、直接会いに来て日本語 がで きな くて困 っていると言われ ると、なかなか断れな いものである

初級の授業などでは、 もともと受講者が少なかったが、

留学生の受講者 は実験が忙 しくなって欠席す ることが多 くな り、逆に一 日中部屋に閉 じ篭 りがちな留学生 の妻た ちばか りが欠席 もせず、一生懸命に予習復習を して授業 に参加す るというような状況が生 じて きた。留学生の妻 たちが日本語 を習得 し、日本での生活 に適応すれば、留 学生の精神的負担 も軽減 され留学生教育に も寄与す ると

いう声 もあるし、留学生 自身がそのような考えを持 って いることもある しか し大学 の専任教官 として留学生教 育に従事せよということで仕事を している身 としては、

留学生 は欠席 し、その妻 たちだけが出席 しているような 授業 を担当す ることは、何 として も納得の行かない状況 であった。

このような事情か ら家族 の受講 は断 ることに したが、

この点 については今で も留学生の妻たちの中か ら不満の 声を聞かされ ることがあるよ うな状況で、当時 も留学生 たちなどに十分 には納得 して貰えなか ったのではないか と思 う一方、外国人研究者 については大学が受 け入れ ていることで もあるし、何 らかの形が整えば十分にセ ン ターとして も対応で きると考え られたため、外国人研究 者を所管す る本学 の学術交流専門委員会及び国際交流委 員会 において検討す るよ う依頼が行われた。その結果、

国際交流委員会委員長である学長名でセンター長あてに、

外国人研究者 の日本語教育 についての受講受 け入れ依頼

が文書で行われ、 これを根拠 として、その後セ ンターで は外国人研究者の受講を認 めている。

ただ し、研究者 についての対応が解決を得 たというわ けではない。研究者 の来崎 は留学生以上 にば らば らであ る。一般 に本国での地位 も高 く、また年齢 も高 いことが 多いので、留学生 のグループに溶 け込 ませ るのに特別の 配慮を要す ることもある。 しか しJ日本語学習の希望 は 多 い。

問題なのは、研究者本人たちは日本語学習を希望 して お り、セ ンターの教官 はそのような希望 に対 して直接対 応をせま られ る場面が多いのに、彼 らを受 け入れた教官 や研究者担当の事務部局 は研究者への日本語教育に消極 的なように見受 け られることである。本来、留学生 セ ン

ターに研究者の日本語教育を担当す る義務 はない。 しか し、実際には私たちのところに研究者がや って くるので 私たちはこの問題を取 り上 げるのである。本来 な ら受 け 入れ教官や担当部局か らセンターに対応の依頼なりがあっ て もよさそ うなのであるが、実際にはセ ンター教官が一 人芝居を している感が否めなか った留学生受 け入れ態 勢の整備 もさることなが ら、研究者受 け入れ態勢の整備 について も学内協力態勢の問題を含めて もう少 し論 じら れて もいいのではないだろうか。

(6) セ ンター専任 スタッフに求められる資質 セ ンター専任教官にはどのような資質が要求 され るの であろうか。 これ もセ ンターでの日本語教育の目的如何 によって左右 され る問題である たとえば、留学生が日 本語でそれぞれの専攻分野で資料 を読み、論文を書 くよ うになることを目指 した日本語教育をセ ンターで行 うべ きだ ということになれば、現在のスタッフでは十分な対 応 はで きない。

長崎大学 の学部構成がいわゆる理系 の応用科学中心で あ り、特 に大学院 は理系分野 に しか設置 されていないこ とか ら、医、歯、薬、水産、工学 の分野の学生が長崎大 学の留学生のかな りの部分を占めている。

専門分野別の日本語教育 については先に も述べたが、

日本語教育学会などで も担当者 に求め られる資質、方法、

内容 などをテーマとして研究の発表が多 く見 られるよう にな り、いわゆる日本語教師 とそれぞれの専門分野の教 師 とがいかに連携 してい くか ということが議論 されるよ

(6)

うにな って きている そのよ うな議論 の中で、工学 な り 何 な りの何 らかの専門分野 も修 め、また日本語教育法 も 修めたよ うな教師を求 め る声 も出ている

実際、セ ンターで 日本語 を学ぶ留学生 か らも専門分野 で使 う日本語 につ いての対応 を求 め られ ることが多 く、

筆者 自身 も日本語教 師 と してで きる範囲内での対応 は し て きた。 しか し当然 の ことなが らそれに も限界があ る

各学部 に配置 されっっある留学生専門教育教官とセ ンター との連携 のあ り方 も含めて、検討 されるべき課題である。

(7)

非常勤 スタ ッフの待遇

日本語教育者 の層が決 して厚 くない長崎地域にあって、

セ ンター日本語 コースが充実 した非常勤 スタッフによ っ て支 え られて きた ことは特筆すべ きことであ る学 内に さえ依然 と して 「日本語 が話せれば日本語 は教え られる」

とか、「英語がで きれば日本語 は教 え られ る」 とい った 誤 った認識 が見 られ るが、セ ンターの日本語教育 がそ う い った レベルの議論 とは無関係であ ることは、何 らかの 客観的な評価 が実施 されれば直 ちに明かになろ う

問題 は、充実 したスタッフをセ ンター外部 に依頼 して いるに もかかわ らず、 こうい った外部講師の勤務条件や 待遇 が必ず しも十分 な もので はない点 にあ る

学 内教官 につ いて は、1

992

(平成

4)年度か ら非常勤

講 師化 されて一応 の解決 を見 たが、学外 の講師につ いて は、「謝金講師」 とい う扱 いで、いわ ゆ る非常 勤講 師 の 扱 いはなされていな

い。

このため職員録に掲載 されない、

報酬 (謝金 )の支払 いが月毎 で はないといった問題 が生 じて いる これ は、文部省が留学生経費の配分 にあた っ て課外補講担 当の非常勤 の講 師への報酬 を謝金 の扱 いで 予算化 していることが原因であ る 日本語課外補講 を担 当す る非常勤 の講 師 につ いて も、他 の非常勤講師 と同様 の扱 いがで きるよ うにすべ きであ る

( 8 ) 教育効果の評価

現在 の ところ、日本語 コースの教育効果 の評価 は行 な われていな

い。

受講証明書 を発行 しているが、主 に出席 率 を基準 に してそれぞれの授業 の担 当教官が可否 を判断 している 教育効果 の評価が学習者 にとって も教育す る 側 に とって も重要 であ ることは言 うまで もな

い。

これ まで教育評価が行 なわれて こなか った最大 の理 由

は、セ ンター日本語 コースが単位を認定 しない授業であっ た ことにある また、学期末 にな ると、学生達 も実験や レポー ト・論文 の提 出に追 われ ることが多 く、セ ンター の授業への出席率 は減 って しま うのが例年の状況である

強制力 のないセ ンターの授業 で期末 テス トを行 って も、

十分な出席 は得 られない。

3.今後の課題 :課外補講を越えて

(1)

セ ンター化 は何 をもた らすか

以上 セ ンター日本語 コースの抱 え る問題点 を、その専 任担当者 の立場 か ら率直に挙 げてみたが、 これ らの問題 点 はどのよ うに した ら解決 で きるのだ ろ うか。筆者 は、

これ らの うちのかな りの部分 は、セ ンターを省令施設化 し、現在文部省が各国立大学 に設置を進 めている留学生 セ ンターの機能 を もたせ ることによって解決す るので は ないか と考えている

セ ンターが省令施設化 されいわゆる 「留学生セ ンター」

とな ることによって もた らさ られ る最大 の利点 は、セ ン ターの日本語教育 の目的、 カ リキ ュラム、組織 、ス タッ フのあ り方 が明確 にな ることであろ う

現在 「セ ンター化」を進 め るにあた って、文部省 は国 立大学 における日本語教育組織 の統合 を進 めよ うと して いるが、従来 の日本語 ・日本事情科 目の他 に研究留学生 に対す る日本語予備教育 をセ ンターの重要 な任務 と位置 づ けているよ うであ る 省令施設化 に向 けた概算要求 の 過程 で当然 そ ういった問題 の明確 な議論 が必要 にな って くる し、また教官定員 の配置 、予算 の配分にあたって も、

一応 の基準 が明確 にな るであろ う

しか し問題 は、そのよ うな 「セ ンター化」のための条 件 と して、目下 の ところ留学生総 数 が2

00

名 を越 え た大 学 について検討す るとい うこととな ってお り、また現在、

実際 にセ ンターが設置 されている大学 はこの数字 を遥 か に越 えた数 の留学生 を受 け入れているということである

長崎大学 の現在の受 け入れ数 が1

60

名前 後 で あ る ことを 考え ると、省令 セ ンターの設置 を早急 に望 むのは難 しい

よ うに思 われ る

(7)

5 8

図 1.日本語教育と専門教育の関係に関する概念図

現 状 (1) :大 学 推 薦 国 費 研 究 留 学 生 ・私 費 研 究 留 学 生 の 場 合

日 本

語 能 力

現 状

(2) :大使 館 推 薦 国 費 留 学 生 の場 合

日本 語 能 力 十分

日本 語 能 力 な し

総 合 的 な 日本 語 教 育 の モ テリレ

日本 語 能 力 な し

図 2. 留学生を対象とした総合的な日本語教育の内容として考えられる諸領域

汎 用 的 ・基 礎二的 な 日本 語 能 力 の 養 成 日本 語 を 自立 的 に 学 習 す る能 力

日本 語 の構 造 あ る い は 体 系 に 関 す る知 識

基 本 的 な 聞 く ・話 す 能 力 基 本 的 な読 む ・書 く能 力

専 門分・野 で 必 要 な 日本 語 能 力 の 養 成

日本 語 の 専 門 語 嚢 を使 う能 力 、 専 門分 野 の 日本 語 に特 有 の 語 法 を使 う能 力

多 重 文 化 能 力 の 養 成 異 文 化 の 中 で 生 きる た め の 基 礎 的 な 能 力

異 文 化 と して の 日本 文 イヒに 逮.応 す る 能 力

日本 の 大 学 とい う環 境 に 適 応 す る能 力

(8)

(2)総合的な 日本語教育プ ログラム策定の必要性 また、セ ンターが省令施設化 され、日本語予備教育を 行 うようになったとして も、日本語課外補講の問題が全 て解決 されるわけではない。既存の他大学の留学生 セ ン ターで も日本語課外補講 については、本稿で指摘 したと 同様 な多 くの問題を抱えているようである これ らのセ ンターで も日本語課外補講 は、

6ケ月間の日本語予備教

育 と単位が認定 される「股教育振替科目としての日本語 ・

日本事情科 目の陰に隠れた領域であるというのが実情の ようなのである

筆者 は、このような状況を打開す るためには、日本語 予備教育 あるいは日本語課外補講 というよ う形式的な分 類をやめ、総合的な日本語教育のプログラムを作 り上げ てい くべ きだ と考える

毎週

2 0

時間以上 というように集中 して行 なわれている 日本語予備教育だが、現在のように単純に

6

ケ月な ら

6

ケ月の定め られた期間が過 ぎたか らと言 って、その後 は 週 に一度あるかないかの課外補講でよいということには な らない。一定期間の日本語予備教育を終えて も、当該 学生の日本語能力が留学生活を営むのにまだ不十分なら、

今暫 く集中度の高 い日本語教育を継続 して受 けさせ るべ きである

また、日本語予備集中教育を受 けていない大学推薦の 国費留学生や私費の研究留学生 に対 して も、 もし日本語 能力が不十分であれば、大使館推薦の国費留学生 と同様 に日本語予備教育を行 うべ きであることは言 うまで もな

い 。

前節で も述べたよ うに、留学生に対 して大学 としてど のよ うな日本語能力を求めるのかその基準を明確に設定 した上で、留学生の現時点での日本語能力を評価 し、基 準 に照 らして能力が著 しく劣 る場合には専門教育 は行わ ずに集中的な日本語教育を実施するそ して日本語能力 に応 じて日本語教育の内容 と集中度を、専門教育 との兼 ね合いの中で調整 してい くといった合理的なプログラム を作 る必要がある。(図 1参照)

( 3 )

総合的な 日本語教育プログラムの内容

それではそのような総合的な日本語教育のプログラム は、具体的にはどのよ うな内容 のものとなるべ きもので

あろうか。 この問題 は日本語教師 と全学の専門教育担当 の教師、さらには異文化間 コ ミュニケーションの専門家 が協力 して取 り組むべ き課題であろう その際、他大学 の既存の留学生セ ンターの経験 は十分参考になる。但 し、

そ ういった既存の留学生セ ンターで も日本語予備教育、

日本語課外補講、一般教育科 目としての日本語 ・日本事 情科目、専門 日本語教育の総合化 については課題を抱え ているというのが実情のようであるか ら、長崎大学独 自 の取 り組みが当然必要である

そもそ も大学における日本語教育 はどのよ うな内容を カバーすべ きなのか、とりあえず考え られる内容領域の 概念図を図

2

に示す。何れに して も、我 々日本語教師は 設定 された到達 目標に向けて最大限の教育効果が挙がる ように努力す るのが任務であって、日本語を使 って留学 生活を送 るのは留学生 自身であ り、その日本語を媒介 と して留学生の指導 にあたるのは専門分野の担当教官であ よ り合理的な留学生教育の実現 のために も、留学生 や指導教官の立場か らの議論が学内でより広 く行われる 必要がある

お わ り に

生涯教育の拡充 と大学の国際化が唱え られる中で、社 会人学生や海外か らの留学生 に対す る教育が、日本の大 学教育の中で も重要 な位置を占めは じめている時を同 じくして、大学設置基準の大綱化に伴い、大学の教育理 念やカ リキュラムの見直 しが急がれている 本稿で指摘 したよ うな問題 は、単 に日本語教育にとどま らず、大学 全体の教育のあり方 にも通 じるものであ り、また全休的 な大学改革の構想の中に位置付 けられて こそ、初めて解 決が可能な問題であろう

本稿では問題点ばか りを強調 した嫌 いがあるが、セ ン ター日本語 コースが現在 まで長崎大学の留学生教育に少 なか らず寄与 して きたこともまた確かであろう必修で もな く、単位がでるわけで もない、何の強制力 もない授 業 に出席 して くる学生達の姿 こそが、それを雄弁に物語 っ ていると思 うそれだけに、教える側 も教え られる側 も 共 に十分に納得のい くような日本語教育の態勢が作 り上

げ られてい くことを願 う

(外国人留学生指導センター講師)

参照

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設けている。

‡封美化する学部留学生の日本語力-の対応策として、留学生センターは2004年

2.