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子どもの発達課題の分析と生活指導実践の構想

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

子どもの発達課題の分析と生活指導実践の構想

著者 船越 勝

雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要

巻 2

ページ 45‑54

発行年 1993‑03‑31

その他のタイトル Analysis of Developmental Task and Construction of the Practice in School‑Guidance

URL http://hdl.handle.net/10105/4456

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子どもの発達課題の分析と生活指導実践の構想

船 越   勝 (教育実践研究指導センター)

Analysis of Developmental Task and Construction of the Practice in School‑Guidance

Masaru Funagoshi (Center for Educational Reserch and Training)

Abstract

In Japan.we are now being confronted by the many problrems in the developmet ofchildren‑

delinquency,school refusal and so on. In order to find the solution of these problems,we have to analyze the developmental task of children really and guide them in their every practical task.

The mam results are as follows.

1 ) The developmental task of children is analyzed in view of "repletion","shift"and"restora‑

tion .

2 ) The practice in school一guidance is constructed on the level of "an individual","commu‑

nication‑cooperation and"self‑government".

3 ) The practical task is set "individually","to any group"and"to all"

Key Words: Developmental Task, School‑Guidance

I 現代社会と子どもの発達の問題 1.企業社会が要請する改革の方向性

1980年代においては、企業社会の生き残り戦略としての要請を受けて、臨時教育審議会が設置さ れ、いわゆる「臨教審」路線が推し進められてきたo 「臨教審」路線が進める改革の方向性という のは、企業社会が要請する、 ①公共部門の縮小と民間活力の導入(私的部門の拡大)を中核とした 行政改革、 ②内部労働市場の縮小と中間労働市場の拡大という労働市場の再編、 ③さらには、経済・

軍事大国化に向けての教育の「情報化」 「国際化」という社会改革の方向性に応えて、学校教育の

1)

なかに「複線的多様化」ともいってよい新しい多様化を持ち込む、というものであった。それにし たがって、現在、単位制高校の導入や総合学科の新設等の高等学校における一連の改革と、中学校 における選択科目の制度的導入等が実施されている。

2.子どもを取り巻く社会の階層分化の状況

上で述べたように、 1980年代に、労働市場の再編と、公共部門の縮小による教育・福祉の切り拾

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船 越   勝

2)

てが行われ、その結果、社会の階層分化状況に大きな変化が生じてきた。わが国は、社会学的な統 計調査においても、1970年代までは社会的な階層移動が可能な開放的性格を持っていたが、1980年 代に入って、欧米の社会においては既に支配的になっている再生産的な傾向が強まってきたのであ る。つまり、高度成長以来続いてきた、国民の大多数が中流になったという中流幻想が実質的に崩 壊し、持てる者と持てない者との格差が拡大し、さらには、持てる者の子どもがやはり大人になっ ても持てる者になり、持てない者の子どもはやはり大人になっても持てない者になるという傾向が ますます高まってきたのである。すなわち、社会における階層分化状況の進展である。

たとえば、偏差値が全国でトップクラスの国立大学の学生の親の平均所得は1200万円を越えてい るという事態がマスコミ等でしばしば報道されているし、その外のいわゆる有名大学でもその傾向 は指摘されている。これは後に述べる現在の学校教育における「知」のあり方にも問題があるのだ けれども、「学力」の伸びは、親の所得に比例するともいわれている。つまり、金を出して、「商品」

としての学力をどれくらい買えるかというのである。

こうした状況とあいまって、子どもたちのさまざまな問題行動が生じてきているが、この子ども の問題行動と親の所属階層の問に一定の相関関係があるのではないかということが最近指摘されて いる。たとえば、高所得者層の子どもには、能力主義的な偏差値競争に、脅迫的にこだわる子ども3)

が増えているとか、いわゆる「貧困層」の子どもが、問題行動を繰り返すなかで、親と同じように

「貧困層」になり、二世代化していくというような状況である。これは、地域においては、同じ校 区でも、公団団地と新興住宅地の子どもでは異なる発達課題を抱えている可能性があると考えられ

4)

る。

3.能力主義的一元的秩序と受験知・制度知

5)

他方、「臨教審」路線による「複線的多様化」政策導入の背景にあるのが、能力主義的一元的秩 序といわれるものである。これは、偏差値を唯一の尺度とする教育による社会的配分のシステムで ある。つまり、偏差値をもとにして、偏差値の高い子どもは進学校の普通科に、偏差値の低い子ど

もはそれなりの高校(商業科、工業科、農業科等の職業学科の他に、総合学科等の新設学科)にと いうように、子どもたちを社会的に選別・選抜していく一つのシステムとして機能しているのであ る。

その結果、能力主義的なものの見方・感じ方・考え方に、親ばかりでなく、子どもたちまでもが、

囲い込まれてきているのである。これは、何よりも、親や子どもたちが、今の企業社会ではより偏 差値の高い学校に行かないと、将来の安定した就職・生活が望めないということを明確に知ってい るからである。それゆえ、塾が大変たくさんできているし、他県からマイクロバスで迎えにくるよ うな塾もあるという。この点では、地域間の区別はなくなってきている。そして、その結果、学校 や子どもをめぐって、いろいろな問題が生じてきているのである。

そうしたなかで、たとえば、小学校6年生のクラスは、とりわけ3学期には、クラスが進学校へ の進学組と公立組へと2分して、集団づくりのこれまでの成果が台無しになってしまうようなこと が多数起きていることが指摘されている。また、中学校でも、都市部からの流入人口が新興住宅地 を形成しているところでは、それだけに、進学熱も高い。ここでは、約半数の子どもが、公立高校

6)

を受験しないで、私学の進学校に流れていくともいわれている。この背景には、先に述べたが、社 会の階層分化状況が進展していること、そして、階層上昇するための偏差値・学歴を国民は自分の 金で買わなければならないこと等があげられる。その結果、子どもたちは学習することを、受験知・

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子供の発達課題の分析と生活指導実践の構想

7)

制度知をただ機械的に詰め込むだけだというように思い込まされている。また、学級の仲間も偏差 値競争のライバルであり、学習観が個人主義的になるということだけにとどまらず、生活全般にわ たって、個人主義的な行動を取るようになる。

ここの部分を授業や進路指導も含めた生活指導実践総体のなかで、実践的にどうつき崩していく かが、今酎可よりも求められているのである。生活指導は、子どもの生活現実をリアルに見つめ、

そこから実践を出発させるのであるが、私たちは急激に変貌するこうした子どもたちの状況にどの ように切り込んでいくのか、真筆に検討していく必要があるのである。その場合、現代の子どもが 抱えている発達課題をリアルに洗い流し、その課題に応じて、実践を重層的に組み立てていくこと が重要になってくる。

Ⅱ 子どもの発達課題のリアルな把握

1.発達課題に応じた集団づくりの成果と課題

戦後の生活指導運動は、1970年代に入ってから、子どもの身体や心の異変が指摘されるなかで、

集団づくりのなかで子どもの発達を問題にするという視点を重視してきた。これは、集団づくりが 子どもの発達を無視するという批判へ答えるという性格も持っていたが、むしろそれよりも、「集 団のなかでこそ子どもは発達する」という教育の原則を、具体的な集団づくりの指導論のレベルで 解明するということをねらいとしていた。

こうした議論のなかで、城丸章夫による「交わり」概念の提起が行われ、集団づくりの目標論が、

8)

「自治」から「自治と交わり」へと二重構造化されたのである。

こうした1970年代の議論を集大成したのが、浅野誠による「子どもの発達と生活指導の教育内容

9)       10)

論」という視点である。(図1参照)浅野は、これまでの心理学研究の成果に基づきながら、これ までの集団づくりの研究のなかで、ほとんど問題にされてこなかった集団づくりという実践が内包

している「教育内容」を、発達段階にしたがって構造化したのである。

これは、主として中学校の実践をもとに解明されてきた、これまでの集団づくりの技法が、機械 的により下の発達段階の実践に適応される傾向に対する批判として大変重要な意義を持っていたの とともに、これまで意識的な研究対象とされてこなかった「集団づくりを通して何を教えるか」と いう問題を発達段階との関わりで解明するということに先鞭を付けたという意味でも、大きな意義 を持っていた。

しかしながら、こうした浅野の議論は、発達段階ごとの「教育内容」の解明という視点に力点が 置かれていたので、集団づくりの実践が発達段階に規定され、発達段階の枠内で構想されるという 傾向をはらんでいた。

しかし、実際の集団づくりの実践においては、第一に、発達段階に応じるという側面だけでなく、

次の発達段階にどう高めていくかという視点もまた必要なのである。しかも、それを具体的な指導 論のレベルで明らかにしていくことが必要なのである。さもないと、集団づくりの実践は、発達段 階の全くの後追いになってしまうことになるのである。

また、実際の集団づくりの実践では、第二に、一つの学級のなかに異なる発達段階の子どもがい るのは当たり前のことである。それを無視して、一つの学年段階を想定して実践を行うと、「問題 児」が出てくるのはいわば必然的なのである。

これらの2つの問題を以下検討してみよう。

(5)

浩   隊       蘭

図1 子どもの発達と生活指導の教育内容の概観

八 七 六 五 四 − 段

青 日 少 少 幼 幼 幼 乳 す主

年 中 後 期

竺 後

後 期

年 前 期

児 後 期

児 中 期

児 児 る要

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子供の発達課題の分析と生活指導実践の構想

2.「移行」と「充実」と「取り戻し」という視点の重要性

第一に、発達段階に応じた集団づくりの研究を、子どもたちの発達段階に解消していくのではな く、つぎの発達段階にどう高めていくかという視点を指導論として重視するというのは、どのよう なことを意味するのであろうか。

それは、集団づくりの実践の展開にあたって、一般的な発達段階を押さえたうえで、「移行」と

「充実」と「取り戻し」という3つの視点で、一人ひとりの子どもの発達課題を洗い出すというこ

1i

とである。

子どもの発達段階を、仮りに浅野にしたがって、乳児期、幼児前期、幼児中期、幼児後期、少年 前期、少年後期、青年前期、青年中後期に分けるとしよう。その場合、言うまでもないが、子ども たちはある日突然ある発達段階から次の発達段階へ変わるわけではない。一つの発達の節を乗り越 え、次の発達段階に移行する時には、ダイナミックな発達のドラマが展開されるのであり、そこに は飛躍があるのである。それゆえ、一般的にある発達段階に応じた指導ということではなく、発達 の事実をリアルに見るのならば、その飛躍をっくりだすための特別の指導が必要になってくるので ある。これが、「移行」という視点の意味である。

次に、「充実」という視点である。これも、一般的に発達段階に応じた指導というよりも、子ど もがある発達段階に「移行」したとすると、その発達段階を豊かに生き、過ごしていくことが必要 になってくる。この場合、子どもにとっては、その段階を豊かに生きることそのものが、発達課題 なのである。こうしたある発達段階を豊かにくぐらせる特別な指導のことを、「充実」の視点とい

うのである。

最後に、「取り戻し」という視点であるが、実際の子どもの発達というのは、自らの発達課題を 克服し、「充実」と「移行」を繰り返して、発達段階の階段を年齢に従って順々に登っていくとい うような単純なものではなく、むしろ、年齢段階はあがっていっているが、その前の段階の発達課 題を残していることが多いので、その段階の発達課題を「充実」させる指導を行いながら、平行し て、その前の段階の発達課題の「取り戻し」をさせる指導を行う必要がある。その場合、「取り戻 し」の指導は、単純にその前の段階の指導の方法を行ったら良いというのではなく、現在の段階の 発達的特質を配慮して、指導の方法を構想することが重要である。たとえば、年齢的には青年前期 に入っているが、少年後期の発達課題を残している子どもに対しては、少年期的な指導の方法を機 械的に繰り返すのではなく、プライドを重視するという思春期以降の発達的特質を考慮する必要が

IJ

あるのである。これが、「取り戻し」の視点である。

これを分かりやすくまとめると、図2のようになる。

取り戻し→

←移行

←     充実

←     充実

発達段階C         発達段階B

取り戻し→

← 移行

←     充実

発達段階A 図2 集団づくりにおける発達の「移行」「充実」「取り戻し」

3.集団づくりの指導における「個人」「交わり・共同」「自治」

第二に、子どもの発達課題をこのようにとらえるとしたとしても、先に指摘したように、実際の

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船 越   勝

集団づくりの実践の展開のなかでは、一つの学級のなかに、異なった発達課題を抱えた子どもたち が存在する。そして、一つの発達課題に対応した指導を行うと、必ずその指導から「落ちこぼれ」

が出現し、「問題児」になってしまう。こうした問題をどのように解決したら良いのであろうか。

先に見た1970年代の集団づくりにおける発達のとらえ方の議論のなかで、「交わり」概念が提起 され、集団づくりの目標論が「自治と交わり」に二重構造化されたことは既に述べたが、さらには、

この両者の関係そのものが問われたのである。両者の関係をめぐる議論についての詳細な検討はこ こでは行わないが、ひとつだけここで確認しておきたいのは、「自治」のなかで「交わり」がっく られるという決定論的な把握の重要性は認めたうえで、しかし、集団における子どもの関係性の総

13)

体においては、「交わり」は「自治」に解消されない独自の領域を有しているということである。

言い換えれば、これらは、密接な関連を持ちながらも、独自の指導領域としてあるということで ある。

こうした観点を継承しながら、一つの学級のなかでの異なった発達課題を抱えた子どもがいると いう状況に対しては、次のような3つの指導のレベルを設定して、関連させながらも、平行して指 導を展開していくことが重要になってくる。すなわち、①個人の指導のレベル、②「交わり・共同」

の指導のレベル、③「自治」の指導のレベルである。

第一の個人の指導のレベルとは、子どもの個人の行動や一身上の問題等に表れた発達課題に対す る指導を展開するレベルである。これは、プライバシーにかかわることが多いので、教師の個人指 導による個別的接近が重要な指導形態となる。

第二の「交わり・共同」の指導のレベルとは、子どもたち相互の「交わり」や「共同」に表れた 発達課題に対する指導を行うとともに、子どもたちに民主的な「交わり」能力、「共同」能力を形 成する指導を展開するレベルである。

第三の「自治」の指導のレベルとは、班長会の確立をメルクマールとした前期的段階への移行を めざした、子どもたちに民主的な主権者としての「自治」能力を形成する指導を展開するレベルで ある。

集団づくりの実践においては、第三の「自治」の指導レベルが中心的な課題になるのであるが、

それとは相対的に独自に、第一の個人の指導のレベルや第二の「交わり・共同」の指導のレベルに おいても、指導を重層的に展開していくことが求められるのである。

Ⅲ 発達課題の分析に基づく集団づくりの構想 1・子どもの権利としての集団の組織化

子どもたちが集団を自分たちでつくる力が弱くなってきたといわれて久しい。しかし、他方で、

子どもたちに私的グループが小学校高学年以降では「地下組織」のようにできて、教師の指導に反

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抗するという問題等が指摘されている。この2つの合い矛盾する傾向をどのように考えたらよいの であろうか。

これまでの研究の成果から、こうした私的グループを壊しにかかったら実践は失敗するというこ とが明らかにされてきた。つまり、子どもたちは、趣味による私的グループや、近所の者による私 的グループ、元同じクラスによる私的グループ、あるいは、グループにまでは至っていないが気の 合う2人組の「交わり」など、教師の目から見れば、とても民主的な自治的集団とはいえないけれ ども、学級には集団はあるのである。子どもたちは仲間を、集団を求めているし、それはたとえ歪

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子供の発達課題の分析と生活指導実践の構想

んだ形はとることがあるにしても、人間本来が持っている共同的性格の発揮なのである。それゆえ、

私たちはこうした子どもたちの集団を承認し、そこから実践を出発させることが必要である。

現在、世界各国でその批准が進められている「子どもの権利条約」には、子どもの結社の自由と

15〕

権利が明記されている。この精神に立っなら、子どもたちが自主的・自発的につくるグループ、交 わり、集団を子どもの権利の行使として積極的に認めるとともに、それを子どもたちがさらに豊か な方へと発展させていくことができるように指導していくことが必要である。

2.集団づくりの重層的な展開

(1)集団づくりにおける発達課題と実践課題と教育課題

このように考えるなら、今日の集団づくり実践を構想していく場合に、全ての指導を「自治」に 収赦していくという発想には、問題があるのである。子どもたちは、自主的に自分たちの好みの集

団をつくる権利があるからである。この問題をどのように考えたらよいのであろうか。

かって、石川正和は集団づくりにおける組織論と活動論を切り結びながら、発展させる視点とし

16)

て、発達課題(個人)と実践課題(活動)と教育課題(集団全体)ということを主張した。つまり、

学級集団全体に教えたいものとして教育課題があり、もう一方で、一人ひとりの発達課題がある。

この一人ひとりの発達課題と集団の教育課題を織り込んだものとして活動としての実践課題を考え なければならないとしたのである。これは、集団づくりを個人の発達課題別に分裂させたり、実践 を啓蒙主義的な誤りに陥らせたりせず、活動論と組織論を結合させていく重要な問題提起であった と評価できる。しかし、これは集団づくりの実践のレベルをあまりにも「自治」に一元化してとら えているといわざるをえない。むしろ、子どもの結社の自由と権利を承認し、学級には子どもの多 様なグループ、交わり、集団があるという現実があるのであるから、先に述べたように、集団づく りの実践を「個人」の指導、「交わり・共同」の指導、「自治」の指導という3つのレベルに分けて 考えた方がよい。

つまり、「個人」の指導のレベルにも、発達課題と実践課題と教育課題があるし、「交わり・共同」

の指導のレベルにも、発達課題と実践課題と教育課題があるし、「自治」の指導レベルにも、発達 課題と実践課題と教育課題があるのである。

(2)発達課題の個別的設定と共同的設定と集団的設定

これをより実践的にいうならば、個人の発達課題と集団の教育課題をふまえたうえで、実践課題 をどのように設定するかということである。この間題を、先の集団づくりの指導レベルとしての

「個人」の指導、「交わり・共同」の指導、「自治」の指導という3つのレベルに分けて考えると、

次の3つの実践課題の設定がある。

①実践課題の個別的設定

②実践課題の共同的設定

③実践課題の集団的設定

教師は、集団づくりの実践を構想する場合、学級の一人ひとりの行動や、「交わり」、あるいは

「自治」の質に表れている発達課題をリアルに分析し、それぞれに実践課題を個別的、共同的、集 団的に設定していく必要があるのである。

その場合、重要になってくるのは、子どもたちの個人であれ、「交わり」であれ、「自治」であれ、

設定した実践課題に取り組むことによって、それぞれが発達・発展していくためには、実践課題の 設定において、その発達課題と組織の特性に応じた活動内容を吟味するということである。たとえ

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船 越   勝

ば、子どもたちが切り結んでいる「交わり」を発展させていこうとすれば、その子どもたちの交流 が何が結合原理となって成立しているのか、その質はどのレベルか、さらに豊かに発展させていく には、どのような活動を取り上げたらよいのかを検討し、実践課題をとしていくのである。

(3)「自治」「交わり」を統一した集団づくり実践の重層的展開

集団づくりの実践において、実践課題を個別的、共同的、集団的に設定して、指導を構想してい く場合、これらをばらばらに行うのではなく、関連させて、統一的に行うことが必要なことは言う までもない。しかし、だからといって、子どもたちが切り結んでいる「交わり」を全て「自治」に 結びつけていく必要はないのである。子どもたちが取り組んでいる活動の中には、集団の「自治」

を確立していくのに役立っものと、そうでないものがある。だから、子どもたちが個別的、共同的 に行っていく活動については、その内容を吟味して、集団全体で取り上げるかどうか、検討する必 要がある。

その対応のし方については、次の3つがある。

(彰集団の「自治」の確立に結びっくもの

②子どもたちの「交わり」のなかでまかしておくもの

③個人の趣味にしてやるもの

また、②や③の場合にしても、学級会などで、取り上げて集団に紹介などをしてやると、たとえ 特定の子どもたちの取り組みであっても、学級のなかに位置づいてくるし、自発的に集団をっくっ てもいいということを、教えることにもなってよいだろう。

3.リーダーを生み出す今日的なすじみち

(1)教師のリーダー観を問い直す

こうした「自治」と「交わり」を統一した、重層的な実践の展開を考えるうえで、実践的に重要 なポイントになるのが、リーダーづくりである。今日、リーダーがなかなかで出てこないといわれ る。事実、今日リーダー指導が大変難しい。しかし、教師が持っているリーダー観そのものが、リー ダー指導を困難にしているという側面もある。したがって、今日私たちは、どのようなリーダー観

17)

をもてばいいのか、検討していく必要があるのである。

これまで、生活指導の実践では、リーダーづくりにおいては、リーダーの個人的資質という側面

18)

を重視してきた。すなわち、これまでの生活経験の中で、かなり集団経験を持っており、したがっ て、集団構成員への影響力も強い子どもに着目してきたのである。こうした子どもは、また、生活 力や学力にも秀でていることが多く、いわゆる総合型のリーダーであった。

ところが、現代の子どもの生活は、あらゆる側面に商品文化が入り込み、子どもたちはほとんど 本来の集団経験を持って学校に入ってこない。この点が、城丸章夫の言葉を借りれば、これまで集

l、1、

団づくりが想定していた「集団的な基礎経験」と全く異なってきているのである。したがって、リー ダーの予想・発見から確立・発展に至るリーダーづくりのすじみちも今日的な視点から発展させら れなければならないのである。

そうした問題意識から、最近、リーダーを役割行動という視点からもとらえるということが強調 されるようになってきた。すなわち、リーダーを個人的資質と役割行動の統一としてとらえるとい うことである。つまり、リーダーを特定個人の属性として考えるのではなく、集団そのものが持っ ている役割と考えるのである。

こうしたリーダーのとらえ方は、発見するものとしてのリーダーという見方から、つくりだすも

52

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子供の発達課題の分析と生活指導実践の構想

のとしてのリーダーへの発展を意味する。子どもの置かれている発達的状況からすれば、今日にお いては、リーダーは、さまざまな教師の指導の中から、生み出し、つくりあげるものと考えるべき なのである。

(2)リーダーが出現する多様な組織と活動内容を用意する

では、どうしたらリーダーがでてくるのか。これについても、狭い意味での「自治」的な取り組 みだけでなく、むしろ先に指摘したように、「個人」の指導のレベルや、「交わり・共同」の指導の レベルなどで、さまざまな活動経験やリーダー経験を重ねる中で、徐々にリーダーとしての意識と 能力が発達してくるのである。後は、彼らの集団全体における「自治」的なリーダーとしての出番 をどう演出するかということになる。ある子どもは、スポーツ大会の実行委員会がこのきっかけに なったであろうし、ある子どもは問題別の小集団でのリーダーの経験がきっかけになるなど、それ こそ多様なすじみちがありうるだろう。その点は、教師自身のその子どもの発達課題の分析と指導 方針にかかっているといえる。

(3)リーダーシップの共有・共同論

こうした中で出現したリーダー集団は、むしろ集団と呼ぶより、いろんな利害を持った子どもた ちの代表という性格をも持っている。すなわち、代議機関としての班長会ということである。これ を学級全体の指導機関としての性格をより強めていく必要があるのだけれども、いずれにしても、

最後まで代議的な性格は残る。したがって、初期には、強力なリーダーとしての指導力を持ったも のはいないので、場面場面でのそれぞれ指導性を発揮するというリーダーシップの共有・共同とい

う考え方が必要になってくる。

そして、学級集団のフォロアーシップを強める中で、また、集団全体が重層的に発展していく中 で、班長会の指導機関としての性格が発展していくのである。

1)臨時教育審議会の第一次答申、第二次答申、第三次答申、および最終答申を参照されたい。ま た、企業社会としての現代日本の構造分析は、渡辺治著『現代H本の支配構造分析一基軸と周辺−』

(花伝社、1988年)、同『企業支配と国家』(青木書店、1991年)が詳しい。同様の視点から、高 度成長期以降の教育の特質を分析したものに、乾章夫著『日本の教育と企業社会一一元的能力主 義と現代の教育=社会構造−』(大月書店、1990年)がある。

2)1985年「社会階層と社会移動全国調査」(SSM調査)の結果については、以下の文献に詳し く報告されている。(『現代日本の階層構造』全4巻、東京大学出版会、1990年参照)

3)神保映「小学校現場からの報告」日本生活指導学会編『生活指導研究』NO.8、明治図書、1 991年、宮本誠貴「階層文化のなかの班づくり」『生活指導』NO.438、明治図書、1992年、浅野 誠「階層性を視野に入れた学級集団づくり」『生活指導』NO.439、明治図書、1992年参照。

4)建石一郎著『福祉が人を生かす時』あけび書房、1990年参照。

5)現在、受験競争を緩和するために、高校制度の「複線的多様化」に対応した、高校入試の選抜 方法の多様化と選抜尺度の多元化が議論されているが、問題はそれほど単純ではないように恩わ れる。(文部省高校教育改革推進会議「高等学校入学者選抜の改善について」参照)

6)尾木直樹著『ちょっと待って!私立中学受験』労働旬報社、1991年参照。

7)制度知については、駒林邦男「子どもは授業でなにを学んでいるか」(岩波講座『教育の方法』

第3巻、岩波書店、1987年)を参照されたい。

(11)

船 越   勝

また、パウロ・フレイレは、こうした学習のあり方を「銀行型教育」と批判している。(パウ ロ・フレイレ著・小沢有作訳『披抑圧者の教育学』亜紀書房、1979年参照)

8)拙論「生活指導における『交わり』概念の構造一城丸章夫を中心に−」日本生活指導学会編

『生活指導研究』NO.7、明治図書、1990年参照。

9)浅野誠著『子どもの発達と生活指導の教育内容論』明治図書、1985年参照。

10)同上、100〜102貢。

11)これらの視点については、障害児教育研究における田中呂人の一連の著作に示唆を得ている。

(田中呂大著『人間発達の科学』青木書店、1980年、『人間発達の理論』青木書店、1987年参照)

12)取り戻すべき発達課題を、現在の発達(年齢)段階の特質を無視して取り組ませるのは、実践 における機械主義の誤りである。また、その反対に、現在の問題行動を、それ以前の発達(年齢)

段階における指導の不十分さの責任にだけするのは、実践における還元主義の誤りである。(田 中孝彦著『子育ての思想』新日本出版社、1983年参照。)

13)遠藤芳信著『集団づくりと教師の指導性』明治図書、1983年参照。

14)全生研常任委員全編『子どもの私的グループと班づくり』明治図書、1986年参照。

15)「子どもの権利条約」の内容については、以下の文献を参照されたい。(永井憲一著『解説/

子どもの権利条約』日本評論社、1990年。

16)石川正和「子どもの実態と保育実践の構造」全国保育問題研究協議全編『乳幼児の集団づくり』

新読書社、1988年参照。

17)こうした点で、最近の五十嵐弘晃の実践的な問題提起は、検討に値する。(五十嵐弘晃「子ど もが主体的に取り組める自主活動の展開を」『生活指導』NO.447、明治図書、1992年参照。)

18)全生研常任委員会編『学級集団づくり入門第二版』明治図書、1971年、125〜142貢参照。

19)城丸章夫「集団づくりと民主的学校の創造」『生活指導』NO.196、明治図書、1974年、25貢。

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参照

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