学 位 論 文 の 要 約
三 重 大 学
所 属 三重大学大学院生物資源学研究科
共生環境学 専攻 氏 名 廖 志強
学位論文の題名
Study on Smart Diagnosis System for Plant Machinery - Diagnosis Method Based on Intelligent Signal Processing and Intelligent Condition Recognition for Rotating Machinery -(生産設備のスマート診断システムに関する研究-知的信号処理と知的状態識別による 回転機械診断法-)
学位論文の要約
「安全と安心」及び「自然環境を考慮した持続可能な経済発展」が人類にとって重要な共通課題 であることは言うまでもなく、人類は生活や社会活動に欠かせないプラント設備などの人工物や人 工システムの安全性を確保し、その事故や破壊によって自然環境などに与える悪影響を防がなけれ ばならない。
現在農業・工業生産には機械設備が急増しており、回転機械は農業生産、工業生産に最も多く使 用される設備である。その重大なトラブルや事故は経済的や人的な被害だけでなく、時には環境に も悪影響をもたらす。知的設備診断技術は、情報工学などの手法を用いて設備状態を自動的に監 視・診断する技術であり、今後、設備の大型化、高速化、知能化、無人化および複雑化がますます 進行するに伴い、生産設備の重大なトラブルや事故を未然に防止する重要技術として一段と注目さ れていく。
本論文は、回転機械の異常を早期に発現し、異常種類を早期に判明するために、振動情報や人工 知能の手法による回転機械設備の知的状態診断法に関する研究成果をまとめたものであ り、その内 容を要約すると次の通りである。
(1)回転機械を診断するために測定した振動信号から微小な異常信号を抽出するために、5種 類の斬新的なノイズ除去法、すなわち、改良遺伝的アルゴリズムに基づく自動フィルタリング法、
近傍虚位点(FNN)と統計的基準に基づく特異値分解による自動フィルタリング法、経験的モード 分 解 と 信 号複 雑 性に 基づ く 自 動 フィ ル タリ ング 法 、 適 応尖 度 波形 統計 に よ る 異常 信 号抽 出法 、 CEEMDANと相対エントロピー差スペクトルに基づく自動フィルタリング法を提案した。これらの方 法の有効性は、中低速軸受診断および歯車診断に適用して確認された。
(2)回転機械設備の知的状態診断を行い場合、時間領域と周波数領域の特徴パラメータを数多 く定義する必要がある。状態識別感度が高い複数の特徴パラメータを評価・選出し、特徴パラメー タの異常識別感度を表すために、正準判別分析法(CDA)により求めた特徴部分空間において近 傍虚位点(FNN)により状態間の距離を測る方法を提案した。提案した方法を実際の設備診断に適 用した結果、状態識別感度が高い特徴パラメータが効率よく選出することができると確認できた。
(3)従来、知的精密診断は決定木やサポートベクターマシンなどの分類方法を用いているが、
これらの方法は診断時に特徴パラメータが用いられるが、特徴パラメータを計算するときに詳細な 設備仕様が必要な場合が多い。しかし、現場で実際に診断する場合、診断対象としている設備の仕 様が設備を分解しないとわからない場合も多くある。また、特徴パラメータは識別しようとする異 常種類によってさまざまな種類が存在するため、見つけることは容易ではない。そこで、本研究で は、教師なしでも信号の特徴を抽出することができ、設備診断時に人間の経験や専門知識を頼りに す る こ と を 効 果 的 に 軽 減 で き る 3 種 類 の デ ィ ー プ ラ ー ニ ン グ 手 法 (convolutional neural networks : CNN, deep belief network : DBN, stacked auto -encoders : SAE)を用いた設備異 常の自動精密診断法を提案した。提案した方法の有効性を様々な設備診断に適用して確認できた。
(4)軸受は回転機械に最も多く使用されている部品であり、その異常診断については、初期異 常である単一傷に関する診断法が多く提案・発表されているが、軸受の各部に複数の傷が同時に発 生している場合(複合異常ともいう)は、異常種類と計測データの特徴との関係が複雑になるた め、その診断は単一の異常状態に比べ、はるかに困難となる場合が多い。そこで、本研究では、単 一の異常状態と同様な診断を可能にするために、複合異常を示す振動信号からそれぞれの単一の異 常成分を、時間・周波数領域の解析手法の一つであるショートタイムFFT、および各瞬間の異常信 号の強さを表わすスペクトル強度によって抽出する手法を提案した。また、抽出した瞬間異常スペ
クトルの特徴を表わす周波数領域の特徴パラメータを正準判別分析法(CDA)により統合して異常 種類を判別する方法、および異常種類を特定するために正準変量区間におけるマッチング得点に基 づく推論による異常種類の特定方法も提案した。提案した諸手法を実際の軸受診断に適用・検証す ることにより、その有効性を示した。