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伊勢物語第九段の後世への影響

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

伊勢物語第九段の後世への影響

著者 今田 克巳

雑誌名 文学研究

巻 1

ページ 14‑17

発行年 1955‑07‑21

URL http://hdl.handle.net/10105/8898

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う点からも啄木の社会主義は︑愛読番であったクロボト キンの二軍命家の想い出﹂で知った︑ロシアの人々が

身をすてゝとび込んで行ったナロードユキの運動そのも

のに対するあこがれから来たのではないかと思う︒これ

は又︑明治四十︼年から四十四年にかけて作られた短歌

には︑︵新しき明日の来るを信ずといふ自分の言葉に嘘

はなけれどー︶ ︵途中にてふと気が変りつとめ先を休み

て今日も河岸をさまよへり︶ など自分の感傷性にひたつ

たり︑投げやり︑自嘲の歌が多いが︑たとえ﹁食ふべき

詩﹂に書かれている様に︵恰度夫婦喧嘩をして要に放け

た夫が理由もなく子供を叱ったり虐めたりするやうなl

種の快感を︑私は勝手気優に短歌といふ一つの詩形か虚

位する事に発見した︶の態度であったとしても︑詩と歌

の矛盾はおかしい︑という事からも云える︒

まだ読んでいない日記︑書簡︑評論を読む事によって

違った面が出てき︑時代的背景︑肉体的条件を考える事

によって啄木に対する考え方は変つで来るだろうと畢つ

が︑﹁呼子と口笛﹂に於ける啄木の社会主義は︑極めて

弱いものである︒

伊勢物語第九園の後世への影響

伊勢物語オ九段は有名な﹁あづま下り﹂である︒この

段には︑﹁かきつばた﹂の折句である︵−

伸 唐衣きつゝ馴れにしっましあればはる子\釆ぬる

旅をしぞ思ふ﹂の業平朝臣︵古今集︶の歌を始め︑

① 駿河なる宇津の山辺のうつ1紅も夢にも人に透は

ぬなりけり

即 時しらぬ山は富士の嶺いつとてか鹿子まだら監ヨ

の降るらむ

曲 名にしおははいざこと間はむ都鳥わが思ふ人はあ

りやなしや

の四首がある︒いづれも有名なものである︒それ故に︑

中世に至っても特にその部分が愛好せられたという事を

考えてみる︒文章としての東下りは海道記︑東関紀行︑

時代を下っては芭蕉の甲子紀行︑十返舎−九の東海道中

藤粟毛などの先駆をなすものと見られる︒

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さて矛九段は後世への影響として先ず謡曲があけられ

る︒九段全体としては﹁杜若﹂ ︵世阿弼元清作︶となり

︑用の唐衣⁚・の歌を中心としたのは﹁千手﹂ ︵金春

禅竹作︶となっている︒更にその﹁千手﹂の地歌の部分

が閑吟集三四となっている︒なお∽駿河なる字津の・

︒・の和歌は閑吟集二三の小歌となっている︒共にそ

の出典は伊勢に見られるのであるが︑伊勢物語のこけ段

が︑謡曲  閑吟集と紐承せられ︑閑吟集の小歌となる

過程に於いてそれぞれの意味が異つて来ていることを考

えて︑時代の推移を見ようと思う︒

先ず謡曲﹁杜若﹂ ︵かきつばた︶からそれをみると︑

その主題は︑かつて業平によって詠まれた杜若の精が︑

女の姿であらわれて業平の冠と高子の后の唐衣とをみに

つけて舞うのであるが︑主眼は業平を歌舞の菩薩の化身

として讃美する所にある︒ある旅僧︵ワキ︶が八橋の杜

若の咲いている所へ来ると美しい女人があらわれて︑こ

の杜若の由来を話すのであるが︑その詞章は全く矛九段

を骨子としてつゞられている︒

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をかなでらん   yテ﹁別れ来し跡の恨みの唐衣︑祖 を都に返さばや  地﹁柳もこの物語は如何なる人の何事によっても恩の霞の信夫山︑思ひて通ふ道芝の始めもなく柊もなしという詞章でもつて初冠してからの色々の出来事︑即ち伊勢物語オ一段から八段までの革を会話でのべている︒この所からもわかるように︑当時における伊勢物語の完全なる戯曲化ともいうべきものであり︑そこに流れている︑この伊勢物語に対する考え方は︑立派な和歌によれば︑生きては神の恵をうげ︑死しては仏楽を得︑その徳草木にまで及ぶという謡曲作家の和歌に対する信仰があらわれているのであって︑完全な意味としてこれらの和歌を引用しているのである︒即ち︑この﹁杜若﹂では忠実に伊勢物語の継承となっているのである︒この底には和歌に対する信仰以外に当時の社会層を念預において︑その物語の愛好に伝説的なものが加っていることも認められる︒次に謡曲﹁千手﹂についてみてみると︑平重衛が捕虜となって銀倉に送られ︑出家の麿も斥けられて︑刑場の露と消えねばならなくなったとき︑

ツレ︵重衡︶ ﹁口惜しや︑われ一の谷にていかにもな

るべき身の生捕られ︑今は東のはてまでもかように恥を

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さらすこと ︵と欺くと︶ ソテ︵千手︶ ﹁げにァ立こ

れは衝ことわりながら︑かかる例は古今に多き習ひと聞

くものを︑ひとりとな欺き給ひとよよ︒  ヅレ﹁げ

によく慰め給へども︑たみ1ひはあらじ憂き身の果︑

yチ﹁昨日は都の花と栄え   ツレ﹁今もは東の春に

地﹁思へたが世は空蝉の唐衣︑世は届の唐衣︑きつ︑

馴れにし嚢しある都の雲居をたち依れ︑はるばるきぬる

旅をしぞ思ふ嚢への憂き身の果ぞ悲しき︑水行ノ︑川の八

綺や︑蜘蛛手に君恩へとはか炉ぬ情のなか私かに都る

るや恨みなるらん廿劇るるや恨なるらん

とある︒この部分は閑吟集三四となっている︒即ち︑

ニー四大eみやこの雲ゐをたちはなれ︑はるばる米ぬる

旅をしぞおもふおとろへの︑うき身の果ぞかなしき︑水

ゆく川の八橋や︑くもでに物をおもへとほ︑かけぬ情の

である︒これはいわゆる連歌式轟さん法として﹁橋﹂に

属するのである︒しかもこの場合﹁八つ橋﹂としておる

ので餌には﹁はるばる来ぬる旅をしぞ思ふ﹂と﹁唐衣﹂

の歌を引用じ1後には﹁水のくもてなりつるに﹂から︑ くもでに物をおもへとは︑をもつて来て痔の縁語として﹁かけぬ情の中 に.なるるやうらみなるらん﹂と結んでいる︒さて︑閑吟集では謡曲に於けろ完全紐承から︑単に橋をひき出しての修飾として伊勢物語ほうげっがれて︑この二一四における歌の意は強く﹁かけぬ情の●:﹂ に餓点がおかれて︑単にその部分を言はんがための序詞的な仇きしかないと考えられる︒この 皆 については閑吟集では 九六小・たゞ人は情あれ︑樋の花の上なる霜の世に 八一小品心ひのたねかや人のなさけ 二九・小 たゞ人には創意じ物じゃ1 なれての後にっ はなるるるるるるるるが大事ぢやる物1︒その他二四二八の一連の小歌でよまれている如く︐当時にあっては︑かなり畢買なる なさけ をよんだものであってー有名且神聖視されていた伊勢物語浄九段は謡曲から閑吟集に移るによって︑単なる男女間の なさけ の問題をよんだものとなって来ている︒ここに中世後期の人の心の刹那的な人間の真実を求める叫びとなり︑単なる美文より︑︷歩進んだ別の意味を引き出すようになって来た︒又の駿河なる宇津の山辺の現にも夢にも人に蓮わぬなりけり﹂ の和歌は.︑閑吟集一二示・字浮の山ペ

1る

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のうつ1にも︑夢にも人のあほぬもの  となっている

︒これは﹁夢﹂に属する小歌であって︑意味としては︑

伊勢物語の和歌菅っけているが︑それのみで︑立派な恋

愛歌となっている︒尺八を伴奏として︑しきりに﹁都都

連境の花の下︑月の前の宴席に立ち交り︑声を共に﹂う

たはれたこれらの小歌は︑遠く伊勢物語の由来をはなれ

その当時の人々の感情のま1に恋の歌として歌ほれたの

以上簡単ではあるが伊勢物語  謡曲  閑吟集への

紐承の問題を考へてみた︒

︵文科四︶

第十二童と第十三章との重複に

ついて    岡 本 武 臣

﹁文学界﹂に連載したのだから︑各軍の書出しに少し

東榎の個所がある︒例えば美空利と倍如の出逢いの寮前

のところなど︑十三草の冒預は十二章の末尾と若干の重

なりを示しているようであるが︑︒⁚﹂ ︵明治大正文 学研究オ五号樋口一葉﹁たけくらべ﹂︶と塩田艮平氏が述べておられますように︑この十三葦と十二章との重複は︑これ迄は単に﹁文学界﹂に断続連載をした為に生じたものであると考えられているようですが︑以下重複が生じた原寓と重複部分に存在する矛尽したことばについて少し述べてみたいと思います︒

最初に﹁文学界﹂に連載されたことによって生じたと

いうことについて考えてみますと︑﹁たけくらべの終末

の各章は十一月にまとめて作られたのであろうと考えら

れ︑︵単行本﹁たけくらご著作年表︶又この十二・十三

尊は多分二八年十二月号に同時に発表されたのであろう

と思います︒一︵﹁文学界﹂を調べていませんので︑八月

号に十二章が発表され︑十三草が十一月号に発表された

のであれば︑この考えは誤りですが︑諸種の事情から︑

多分誤りではないと思います︒︶したがって重複して書

く必要は生じて来ないのではないかと思います︒

そこで︑その原因として考えられますのは︑作者がこ

の場面に非常な愛着を持ち︑文学的効果を高めようとし

たためではないかということです︒それは﹁よもぎふ日

記﹂の明治二六年二月二三日の条に︑思いがけず半井桃

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