• 検索結果がありません。

日本金属学会誌第 72 巻第 9 号 (2008) 化合物半導体からの希少金属リサイクルに関するインジウム アンチモン 酸素系の熱力学的研究 小林純一 1 伊藤聰 2 東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻 J. Japan Inst. Metals, Vol. 72, No. 9

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "日本金属学会誌第 72 巻第 9 号 (2008) 化合物半導体からの希少金属リサイクルに関するインジウム アンチモン 酸素系の熱力学的研究 小林純一 1 伊藤聰 2 東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻 J. Japan Inst. Metals, Vol. 72, No. 9"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1 東北大学大学院生(Graduate Student, Tohoku University) 2 現在東北大学大学院工学研究科創造工学センター(Present

address: Innovation Plaza, Graduate School of Engineering, Tohoku University)

化合物半導体からの希少金属リサイクルに関する

インジウムアンチモン酸素系の熱力学的研究

小 林 純 一

1

伊 藤   聰

2

東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻

J. Japan Inst. Metals, Vol. 72, No. 9(2008), pp. 763768  2008 The Japan Institute of Metals

Thermodynamic Study on IndiumAntimonyOxygen System with Respect to Recycling of Rare Metals from Compound Semiconductors

Junichi Kobayashi1and Satoshi Itoh2

Department of Environmental Studies Graduate School of Environmental Studies, Tohoku University, Sendai 9808579

Phase equilibria and the activities of the components in indiumantimonyoxygen ternary system have been investigated at temperature of 1173 K to discuss the recovery of indium and antimony from used InSb compound semiconductors. Using the ac-tivities of indium and antimony in the indiumantimony binary system reported in literature, the equilibrium partial pressures of oxygen were calculated by applying the GibbsDuhem equations to the phase relation of metaloxide equilibrium. The vapor pres-sures of indium, antimony and antimony oxide, Sb4O6, were then calculated. It was found that the vapor pressure of antimony was much larger than the values of indium and antimony oxide except in the vicinity of pure antimony composition, indicating that an-timony might preferentially vaporize in remelting of used InSb compound semiconductors for recycling. This suggests that change in InSb composition may occur. However, the equilibrium partial pressure of oxygen calculated indicates that the indium oxide is stable compared to antimony oxide, Sb2O3. Then the melting experiment of InSb compound was conducted under the con-dition of simulated air atmosphere. The indium oxide film formed was observed on the metal surface and it prevented vaporiza-tion of antimony. Consequently, the recycling of InSb compound semiconductor can be expected by remelting in an oxidavaporiza-tion at-mosphere like air without a change in InSb composition.

(Received January 7, 2008; Accepted June 16, 2008)

Keywords: indiumantimonyoxygen ternary system, phase equilibria, rare metal, recycling, compound semiconductor

1. 緒 言 インジウム,アンチモンなどの希少金属は先端産業を支え る重要な素材であり,現在,インジウムはフラットパネルデ ィスプレイ(FPD),液晶ディスプレイ(LCD),プラズマデ ィスプレイパネル(PDP),有機 EL,エレクトロルミネッセ ンス(OEL)ディスプレイなどの薄型ディスプレイの大型 化,ならびに市場拡大に伴って,透明電極用 ITO(Indium Tin Oxide)ターゲット材向けに,アンチモンはプラスチッ クの難燃助剤向けに三酸化アンチモンが需要の大半を担って いる.しかしながら,これらの希少金属は我が国に資源が乏 しいため,その供給の大半を海外,特に中国からの輸入に依 存している.そのため,海外の動向によって我が国への希少 金属の供給が左右され,安定した供給が確保されているとは 言い難い.現に,最近急速な経済成長を遂げている中国で は,インジウムおよびアンチモンといった希少金属を戦略物 質とし,今まで国外に輸出していた資源を国内産業へ優先的 に供給する傾向にあり,我が国において安定した希少金属の 確保は早急に取り組むべき課題である1).このような背景か ら,廃棄物を都市鉱山と見なし,国内の希少金属資源を環 境・経済的に回収し,安定かつ効率良く供給することは極め て重要である. そこで,本研究では鉱石資源に乏しい我が国が安定した希 少金属の供給を目指すに当たり,供給源の一つと考えられる, InSb 化合物廃半導体からのインジウムおよびアンチモンの リサイクルに関する熱力学的研究を行った.InSb 化合物半 導体材料の作製は,族化合物で代表的な GaAs と同様 に,構成元素であるインジウムとアンチモンから InSb 多結 晶を合成し,これを原料として単結晶インゴットを成長させ て行う.族化合物半導体では As, P, Sb のような族 元素の蒸気圧が大きく,その組成の精密な制御が必要であ る2).リサイクルのための再溶解時においても純粋な金属の インジウムとアンチモンの蒸気圧差は,たとえば 1173 K に おいて約 3 桁3)あるので,InSb 化合物中のアンチモンが蒸 発することによる組成変動が避けられないものと考えられ る.実際のリサイクルは大気中で行われることが多いため, 金属が一部酸化され,酸化物が生成することもある.インジ

(2)

Fig. 1 Schematic diagram of experimental setup for determi-nation of phase relations.

ウム酸化物(In2O3)の蒸気圧に関するデータが報告されてい ないことから,インジウム酸化物の蒸気圧は非常に小さいと 考えられるのに対して,アンチモン酸化物(Sb4O6)のそれは 極めて大きく4),鉛バッテリーからのアンチモン回収5)の場 合と類似してアンチモンの優先的な酸化揮発による分離回収 の可能性が示唆される.亀田,田辺6)は,溶融 InSb 系合金 がほぼ全組成範囲にわたって,純粋な In2O3と平衡すると仮 定して,ジルコニア固体電解質を用いた酸素濃淡電池を構成 して 880~ 1272 K の温度 範囲 で起電 力測 定を行 い, 900, 1200 K における合金の活量を求めた.彼らは溶融塩化物電 解質法によっても同系の活量を求めて,固体電解質法による 結果の検証を試み,良く一致したと報告した.しかしなが ら,合金と平衡する酸化物が純粋と見なせない場合には大き な誤差を生じるにもかかわらず,純粋な In2O3であるかどう かについて明らかにしなかった.したがって,酸化を含めた リサイクルを考える際の基本系である,インジウムアンチ モン酸素 3 元系の相平衡と成分の活量に関して,これまで に報告されているのは 673 K における相関係7)のみであり, 融体を取り扱うリサイクルにおいては直接利用できないのが 現状である. そこで,本研究は InSb 化合物の融点8)より 150 K 以上高 温の 1173 K でインジウムアンチモン酸素 3 元系における 平衡相の関係を明らかにし,その相関係に GibbsDuhem 式 を適用して平衡酸素分圧を求めて,InSb 化合物半導体から のインジウム,アンチモンのリサイクルについて熱力学的考 察を行った.さらに InSb 化合物表面へのインジウム酸化物 皮膜の生成による蒸発抑制の可能性を調べる目的で,酸化性 雰囲気における溶解を行った.なお,本論文では,アンチモ ンの蒸気種として単原子分子 Sb の他に,Sb2, Sb4の多原子 分子の存在が知られているので3),全蒸気圧をアンチモンの 蒸気圧と記述したが,有効蒸気圧9)も用いて考察を行った. 2. 実 験 方 法 2.1 InSbO 系の相平衡 純度がそれぞれ 99.99, 99.999 massの In, Sb および市 販特級試薬の純度 99.9, 98.0 massの In2O3, Sb2O3から所 定の組成となるように合計約 5 g 秤量して出発試料とした. 金属がほぼ純粋な In2O3と平衡する試料では,In2O3の融点 が 2183 K10)と高温なので本研究温度において固体であるこ とから,平衡後の In2O3相が液相に分散して分析が困難にな らないように,In2O3を円柱ブリケットに圧粉成型して用い た. 実験装置の概略を Fig. 1 に示す.試料の加熱にはカンタ ル線巻抵抗炉を用い,内径 40 mm の不透明石英製反応管を 使用した.試料は外径 13 mm,内径 10 mm,長さ 50 mm のアルミナるつぼに入れて加熱した.この試料るつぼの上部 は酸化物の蒸発を防ぐ目的でアルミナセメントを用いて充填 した.この充填が十分でない場合,雰囲気が大気下では空気 による酸化の恐れがあるため,反応管内をアルゴン雰囲気と した.実験温度の 1173 K で所定時間加熱保持して十分に平 衡させた後急冷した.急冷後の試料を金属相と酸化物相に分 離し,めのう乳鉢で粉砕してインジウムおよびアンチモンに ついて ICP 発光分析に供した.In2O3固相が存在する試料で は,EPMA によりインジウムおよびアンチモンについて分 析を行った.その際,標準試料の適確な選択を行い,直接相 を観察した上で,10 箇所以上の点分析を行った.なお, ICP 発光分析は,アルミナるつぼと試料の反応が懸念される ことからアルミニウムについても行った. 2.2 酸化性雰囲気における溶解 InSb 化合物表面にインジウム酸化物皮膜を生成させれ ば,インジウム酸化物の蒸気圧は小さいと考えられるので, 蒸発を抑制できる可能性が示唆される.そこで,InSb 化合 物半導体の模擬試料を用いて酸化性雰囲気における溶解を行 った.試料は相平衡実験に使用したものと同様であり,In と Sb のモル比が 11 となるように合計約 10 g となるよう に秤量して石英管に真空封入して予め溶製して用いた.実験 には,著者らの既報11)の熱天秤装置を使用し,内径約 18 mm,高さ約 44 mm の SSAS のアルミナるつぼに試料を入 れて,電子天秤から 0.5 mm 径のステンレス鋼線を用いて反 応管内に吊り下げ,カンタル線巻抵抗炉の均熱帯に位置させ た.反応管は,内径 29 mm,長さ 870 mm であり,ガス導 入用の石英製ノズル(内径 3.4 mm)が付けられている.試料 表 面 ま で の ノ ズ ル 距 離 は 約 10 mm と し た . Ar 雰 囲 気 中 1173 K において溶解したことを確かめた後,大気組成にほ ぼ 近 い Ar 19.9  O2混 合 ガ ス を ノ ズ ル か ら 17 × 10-6m3 (STP)・s-1の流量で吹きつけ,この時を反応時間ゼロとし て質量の経時変化を電子天秤により測定した. 3. 実験結果および考察 3.1 平衡時間の決定 1173 K における加熱保持時間と金属,酸化物各相の組成 の関係を調べた実験結果を Fig. 2 に示す.出発試料とし

(3)

Fig. 2 Relation between the sample composition and time at 1173 K for sample No. 6, whereNiandN ′idenote the mole frac-tion in metal and oxide, respectively.

Table 1 Results of inductivelycoupled plasma optical emission spectrometry (ICP) and electron probe Xray microanalysis (EPMA) of the equilibrated samples at 1173 K.

Exp. No. Metal phase(l) In2O3(s) Sb2O3(l)

NIn NSb NO XSb N ′In N ′Sb N ′O X ′Sb N ′In N ′Sb N ′O X ′Sb 1 0.8051 0.1949 0 0.1949 0.3968 0.0032 0.6 0.0080 ― ― ― ― 2 0.6155 0.3845 0 0.3845 0.3968 0.0032 0.6 0.0080 ― ― ― ― 3 0.4154 0.5846 0 0.5846 0.3968 0.0032 0.6 0.0080 ― ― ― ― 4 0.1851 0.8149 0 0.8149 0.3968 0.0032 0.6 0.0080 ― ― ― ― 5, 6 0.0018 0.9982 0 0.9982 0.3963 0.0037 0.6 0.0093 0.0108 0.3892 0.6 0.9730 balance

whereNiandNi′donote the mole fraction in metal and oxide, respectively.

XSb=NSb/(NIn+NSb)molar ratio in metal, X ′Sb=N ′Sb/(N ′In+N ′Sb)molar ratio in oxide.

Fig. 3 Phase diagram of the indiumantimonyoxygen system at 1173 K, whereNi: mole fraction, ○: oxide phase, ●: metal phase, △: threephase combination, ―: tie lines, ◇: starting samples. て,全体組成を◇印で示した試料について,6, 12, 24 h の各 時間で加熱保持を行い,金属と酸化物に分けて,ICP 発光分 析に供した.この試料は,In2O3(s), Sb2O3(l), Sb(l)の 3 凝 縮相共存関係にあるが,図にはこのうち Sb2O3(l)と Sb(l)の 2 相の分析結果について示してある.図から 6 h 前後ですで に平衡組成に近いことがわかったので,異なる組成の試料に ついても平衡を達成させるために保持時間を 12 h とした. なお,分析は前述のように ICP 発光分析によりインジウム およびアンチモンについて行ったが,1173 K においてイン ジ ウ ム , ア ン チ モ ン へ の 酸 素 の 溶 解 度 は そ れ ぞ れ 0.10 molO12),0.02 molO13)であることから,金属相へ の酸素の溶解は無視できると見なした.一方,酸化物相に関 して,インジウム酸素系の状態図が報告されていないので 明 ら か で な い が , 本 研 究 温 度 の 1173 K に お い て , In と In2O3の相互溶解度は小さく無視できることを仮定した.Sb と Sb2O3の相互溶解度については無視できる14)ことから, 酸化物相中のインジウムおよびアンチモンは In2O3および Sb2O3として酸素が分配されることを仮定した.なお,前述 したようにアルミニウムについても ICP 発光分析を行った が,検出できなかったことから,アルミナるつぼ試料間の 反応は無視した. 3.2 InSbO 3 元系の相関係

Table 1 に ICP 発光分析および EPMA による分析結果を 示し,Fig. 3 に 1173 K における実験結果を状態図として示 した.図中◇印は出発試料の全体組成であり,●,○および △印は,それぞれ 2 凝縮相共存平衡,3 凝縮相共存平衡にお ける各相の分析値をプロットしたものである.したがって, ●,○印を結んだ実線が金属,酸化物相の 2 凝縮相共存の 共役線であり,等活量線を示す.△印で囲まれるドットで示 した範囲は,In2O3(s)+Sb2O3(l)+Sb(l)の 3 凝縮相共存領 域である.共役線がほぼ調合組成を通っていることから,本 研究の実験および分析方法が妥当であったと考えられる.な お,前述のように,In2O3の固相が液相に分散して EPMA による分析が困難にならないように,In2O3を圧粉成型して 実験を行ったが,In2O3濃度は 100に近く誤差が大きくな るので,Sb2O3濃度を 100 から差し引いて求め,Table 1 の 値に*印をつけて,balance と注記した.In2O3相の組成は, In2O3に極めて近いので,分析の結果 N ′Sb=0.0032~0.0037 と得られたが,本来 In2O3に近づくにつれて Sb2O3濃度は小 さくなると考えられる.本研究の 1173 K では,In2O3と Sb2O3の相互溶解度が小さく,ほとんど全組成の合金がほぼ 純粋な In2O3と平衡することが明らかとなった.したがっ て,亀田ら6)が固体電解質を用いた酸素濃淡電池により In Sb 合金の活量を求めたが,その活量誤差は小さいと推察さ れた. 3.3 平衡酸素分圧 金属相と酸化物相が共存平衡する場合,各相について式 ( 1 ), ( 2 )の InSbO 3 元系における GibbsDuhem 式が成 立する.

(4)

Fig. 4 Activity of antimony and indium in the InSb alloy. Hinoet al.16)(transpiration method, 1273 K) Terpilowski17)(emf, fused bromide electrolyte, 673 K)

Niwaet al.18)(emf, fused iodide electrolyte, 900 K) Kamedaet al.6)(emf, fused chloride electrolyte, 1200 K)

Kamedaet al.6)(emf, solid electrolyte, 1200 K) Hultgrenet al. 900 K19)

Fig. 5 Relation between the partial pressure of oxygen and the composition of condensed phase at 1173 K, whereXSb= NSb/(NIn+NSb): molar ratio in metal, X ′Sb=N ′Sb/(N ′In+N ′Sb): molar ratio in oxide, ○: oxide phase, ●: metal phase, △: three phase combination, ◇: estimated from EMF measurement by Kamedaet al.6), ×: calculated by assuming a

In2O3=1, □: In/

In2O33,10,15)and Sb/Sb2O33,4,15).

NInd log aIn+NSbd log aSb+NOd log (PO2/10

5Pa)1/2=0

( 1 ) N ′Ind log aIn+N ′Sbd log aSb+N ′Od log (PO2/10

5Pa)1/2=0 ( 2 ) ここで,aIn,aSbはそれぞれ共存平衡する凝縮相中のイン ジウムおよびアンチモンの活量であり,PO2は平衡酸素分圧 である.また Ni,N ′iはそれぞれ InSbO 3 元系のモル分率 で表した金属相,酸化物相の i 成分の組成である. 本研究温度において金属と酸化物の両相が平衡するので, 成分の活量は等しく,どちらかの相,ここでは金属相の活量 がわかれば,これら 2 つの式を連立させて解くことにより 平衡酸素分圧を求めることができる.本研究では式( 1 ), ( 2 )より aSbを消去して式( 3 )を導き,未知数である平衡酸 素分圧 PO2を求めた. log (PO2/10 5Pa)=log (P O2/10 5Pa) NIn=1+2

f

NIn NIn=1 yd log aIn ( 3 ) ここで,(PO2/10 5Pa) NIn=1は NIn=1,すなわち純粋な In と In2O3の 平 衡 酸 素 分 圧 で あ り , Barin の 値3,10,15)を 用 い た.また,y≡(NSbN ′In-N ′SbNIn)/(N ′SbNO-NSbN ′O)であ り,式( 3 )の aInについては,前述したように金属相への酸 素溶解度が無視できることを仮定して,InSb 2 元合金のイ ンジウムの活量を代入した.InSb 2 元系の活量についてこ れまで報告されているものをまとめて Fig. 4 に示す.日 野16)は流動法により 1273~1473 K においてアンチモンの活 量を多原子分子間の平衡関係を考慮して求めたが,温度依存 性 は 極 め て 小 さ い と 述 べ て い る . Terpilowski17), Niwa ら18),亀田ら6)はそれぞれ溶融臭化物,溶融ヨウ化物,溶融 塩化物を電解質とした起電力法により,それぞれ 673, 900, 1200 K についてインジウムの活量を求めて報告した.亀田 ら6)は,前述したようにジルコニア固体電解質を用いても活 量を求めているが,他の研究者による結果も含めて,実験方 法および温度が異なるにもかかわらず,大きな有意差は認め られない.すなわち,インジウムの活量について温度依存性 が認められなかったので,本研究では Hultgren ら19)が推奨 値としてまとめた 900 K におけるインジウムの活量を式 ( 3 )の aInに代入した. 得られた平衡酸素分圧と金属元素のモル比 XSb=NSb/(NIn +NSb)および X ′Sb=N ′Sb/(N ′In+N ′Sb)の関係を Fig. 5 に示 す . 図 に お い て 左 側 が In, InO1.5( In2O3) 側 , 右 側 が Sb, SbO1.5(Sb2O3)側に相当し,△印が In2O3(s)+Sb2O3(l)+ Sb(l)の 3 凝縮相共存,●,○印が 2 凝縮相共存関係にあ る.○印が酸化物相,●印が金属相について示してある.す なわち,△印を結んだ水平線の 3 凝縮相共存より酸素分圧 の大きい領域では,In2O3(s)と Sb2O3(l)の酸化物 2 相が共存 し,●印を結んだ線より下側では,金属の単相が安定に存在 する.なお,両端の小さい□印は純粋な In と In2O33,10,15)お よび Sb と Sb2O33,4,15)共存における平衡酸素分圧である.ま た,Fig. 3 において,純アンチモンのごく近傍以外の金属は 全組成範囲にわたり,平衡する酸化物がほぼ純粋な In2O3で あることから,In2O3の活量を近似的に 1 と置き,In2O3の 平衡定数3,10,15)を用いて平衡酸素分圧を求め,Fig. 5 に×印 で示した.さらに小さな◇印は,亀田ら6)の起電力測定結果 を用いて参考として求めた値である.この値は,起電力と温

(5)

Fig. 6 Vapor pressures of metal and oxide at 1173 K, where XSb=NSb/(NIn+NSb), PSbn, totalandP∑Sbdenote the total vapor

pressure of antimony metal gas species and the effective total vapor pressure of antimony metal gas species, respectively.

Fig. 7 Relation between the mass change of InSb compound and time at 1173 K. 度の関係図6)から 1173 K における起電力値を読み取って計 算したので,読み取り誤差を含むが,図のように誤差以内で 3 つともよく一致している.また,式( 3 )の反対側,すなわ ち,Sb/Sb2O3側からも求めた平衡酸素分圧は,In/In2O3側 からの値とほぼ一致したが,Sb/Sb2O3側から図上積分を行 う際,誤差が比較的大きかったので,図示しなかった. 3.4 InSb 化合物半導体からのインジウムおよびアンチモン のリサイクルに関する熱力学的考察 緒言で述べたように,InSb 化合物中のアンチモンが蒸発 することによる組成変動が避けられないものと考えられる が,活量を考慮して精確に評価する必要がある.Fig. 6 に InSb 2 元系合金組成とインジウムおよびアンチモン成分の 蒸気圧の関係を示す.図中 PSbn, totalはアンチモン成分蒸気圧 の全圧(PSbn, total=PSb+PSb2+PSb4)を示している.また,P∑Sb は有効 Sb 蒸気圧9)(P ∑Sb=PSb+2PSb2+4PSb4)である.計算に は文献値3)を用いた.図中 X Sb=0.5 の垂直な破線は InSb 化 合物組成に相当し,有効 Sb 蒸気圧はインジウムの蒸気圧に 比較して約 3 桁程度大きいので再溶解の際に組成変動は避 けられないと推察される. 図中 にはア ンチ モン 酸化 物 Sb4O6の蒸気 圧も 示し てあ る.この値は式( 4 )の反応の平衡定数値11)を用いて算出し た.すなわち,Fig. 4 に示した Hultgren ら19)の推奨値のア ンチモン活量と Fig. 5 に示した平衡酸素分圧を式( 5 )に代 入して PSb4O6を求めた. Sb(l)+3/4O2(g)=1/4Sb4O6(g) ( 4 ) K=(PSb4O6/10 5Pa)1/4 aSb(PO2/10 5Pa)3/4 ( 5 ) 図のように Sb4O6の蒸気圧は純アンチモンのごく近傍以外 はほぼ全組成範囲にわたり,有効 Sb 蒸気圧より小さい.ま た,インジウムの蒸気圧と比較しても XSb=0.5 において約 7 桁小さい.したがって,鉛バッテリーからのアンチモンの 回収の場合5,11)のような,積極的な酸化によるアンチモン酸 化物(Sb4O6)としての揮発分離は望めないことがわかる.な お,前述したようにインジウム酸化物の蒸気圧は極めて小さ いと考えられ,報告されていないので図示していない. 3.5 酸化性雰囲気における溶解 前に示した Fig. 3 と 5 から,インジウム酸化物がアンチ モン酸化物に比べて熱力学的に極めて安定であると考えられ る.すなわち,InSb 化合物表面にインジウム酸化物皮膜を 生成させれば,インジウム酸化物の蒸気圧は小さいと考えら れるので,金属の蒸発を抑制できる可能性が示唆された.そ こで,InSb 化合物半導体の模擬試料を用いて酸化性雰囲気 における溶解を行った. Fig. 7 に試料の質量変化の 1 例を示す.この図は約 2 h ま での溶解であるが,同様の実験をさらに最長で 8 h まで行 い,ほぼ同じ結果を得た.図のように出発試料 10 g につい て,増加した質量はわずか 0.03 g であり,図から反応初期 に質量がわずかに増加するものの,その後,質量増加は停滞 することが分かった.溶解後の試料は,金属表面に金属と色 の異なる酸化皮膜のようなものがわずかに生成した以外,内 部は溶解前の金属の状態のままであった.Fig. 8 に皮膜状物 質についての X 線回折パターンを示す.図のように,ピー クは In2O3であることから,金属表面に生成した皮膜はイン ジウム酸化物であることがわかった.前述したように,アン チモン酸化物に比べてインジウム酸化物が極めて安定である ことから,反応初期にインジウムが酸化され,その酸化物皮 膜が金属表面に生成したため質量が増加したと考えられる. さらに,酸化の進行に伴って,皮膜が金属表面を覆い,それ 以降は酸化および蒸発を妨げたために質量が変化しなくなっ たものと推察される.したがって,金属表面に生成した In2 O3が金属の蒸発を妨げたので,不活性雰囲気において再溶 解時に懸念されたアンチモンの蒸発による InSb 化合物の組 成変動は,酸化性雰囲気では抑制されたと考えられる.すな

(6)

Fig. 8 Xray diffraction pattern of film formed on the metal surface. ▽: In2O3. わち,空気程度の酸化性雰囲気において InSb 化合物半導体 の再溶解を行えば,InSb 化合物として回収できる可能性を 確認できた. 4. 結 言 InSb 化合物半導体からのインジウムおよびアンチモンの 回収を考える上で基本系である,インジウムアンチモン酸 素 3 元系についての熱力学的研究,および酸化性雰囲気に おける InSb 化合物の溶解を行った.得られた結果をまとめ ると次のようになる. InSbSb2O3In2O3で囲まれる範囲について,1173 K に おける平衡相の関係を明らかにした.金属,酸化物相の 2 凝縮相共存域では,ほとんど全ての組成で金属がほぼ純粋な インジウム酸化物と平衡する.また,In2O3(s)+Sb2O3(l)+ Sb(l)の 3 凝縮相共存領域では,インジウム酸化物とアンチ モン酸化物の相互溶解度が非常に小さいことが明らかとなっ た. 得られた相関係に 3 元系における GibbsDuhem 式を適用 して,1173 K における平衡酸素分圧を求めた.さらに,金 属元素および酸化物成分の蒸気圧を計算により求めた.その 結果,InSb 化合物半導体のリサイクルにおいて,再溶解の 際,不活性雰囲気ではアンチモンが蒸発し,組成変動するこ とから InSb 化合物としての回収は困難であると推察された. 酸化性雰囲気において InSb 化合物半導体を再溶解すれ ば,金属表面にインジウム酸化物皮膜が生成し,蒸発による 組成変動が抑制され,InSb 化合物として回収できる可能性 のあることが明らかとなった. 終わりに,本研究の EPMA 分析を担当された東北大学工 学部 須田恭三技術職員に感謝する.また,平成 18 年度の 同和鉱業株との包括的提携による非鉄金属材料基盤研究にお いてご支援いただいたことに謝意を表する. 文 献 1) H. Minami: Raremetal 2007(3), 37(2007) 459464.

(http://www.jogmec.go.jp /mric _ web /kogyojoho/200709/ MRv37n314.pdf)

2) T. Shirakawa, K. Matumoto, S. Nishine and M. Tatumi: Com-pound Semiconductors, (Dainippontosho, Tokyo, 1994) pp. 17. 3) I. Barin ed.:Thermochemical Data of Pure Substances, 2nd ed., (Federal Republic of Germany, 1993) pp. 700701, 12871290. 4) I. Barin ed.: Thermochemical Data of Pure Substances, 2nd ed.,

(Federal Republic of Germany, 1993) pp. 12971299. 5) S. Itoh, K. Yamanishi and A. Kikuchi: Journal of MMIJ 117

(2001) 138142.

6) K. Kameda and J. Tanabe: J. Japan Inst. Metals 51(1987) 1174 1179.

7) R. S. Roth, J. R. Dennis and H. F. McMurdie: Phase Diagrams for Ceramists, Vol. 6, (The American Ceramic Society, Inc., U.S.A., 1987) p. 26.

8) T. B. Massalski, J. L. Murray, L. H. Bennett and H. Baker: Bi-nary Alloy Phase Diagrams, Vol. 2, (American Society for Metals, U.S.A., 1986) p. 1395.

9) H. H. Kellogg: Trans. Metall. AIME236(1966) 602615. 10) I. Barin ed.: Thermochemical Data of Pure Substances, 2nd ed.,

(Federal Republic of Germany, 1993) p. 717.

11) S. Itoh, J. Ono, M. Hino and T. Nagasaka: Mater. Trans.46 (2005) 658664.

12) T. Narushima, D. Sajuti, K. Saeki, S. Yoshida and Y. Iguchi: J. Japan Inst. Metals59(1995) 3743.

13) S. K. Hahn and D. A. Stevenson: J. Chem. Thermodynamics11 (1979) 627637.

14) S. Itoh and T. Azakami: J. Japan Inst. Metals48(1984) 293 301.

15) I. Barin ed.: Thermochemical Data of Pure Substances, 2nd ed., (Federal Republic of Germany, 1993) p. 1093.

16) M. Hino: Thermodynamic Study on Activities and Phase Equilibria of Molten Speiss, (Doctoral Thesis, Tohoku Universi-ty, Japan, 1982)

17) J. Terpilowski: Arch. Hutnictwa,3(1985) 227.

18) K. Niwa, H. Hoshino, Y. Nakamura and M. Shimoji: Ber. Bun-senges. Phys. Chem.69(1965) 114118.

19) R. Hultgren, P. D. Desai, D. T. Hawkins, M. Gleiser and K. K. Kelley:Selected Values of the Thermodynamic Properties of Bina-ry Alloys, (American Society for Metals, U.S.A., 1973) p. 1027.

Fig. 1 Schematic diagram of experimental setup for determi- determi-nation of phase relations.
Fig. 3 Phase diagram of the indium antimony oxygen system at 1173 K, where N i : mole fraction, ○: oxide phase, ●: metal phase, △: threephase combination, ―: tie lines, ◇: starting samples.て,全体組成を◇印で示した試料について,6, 12, 24 h の各時間で加熱保持を行い,金属と酸化物に分けて,ICP 発光分析
Fig. 4 Activity of antimony and indium in the In Sb alloy. Hino et al. 16) (transpiration method, 1273 K) Terpilowski 17) (emf, fused bromide electrolyte, 673 K)
Fig. 6 Vapor pressures of metal and oxide at 1173 K, where X Sb =N Sb /(N In +N Sb ), P Sb n , total and P ∑Sb denote the total vapor
+2

参照

関連したドキュメント

青年団は,日露戦後国家経営の一環として国家指導を受け始め,大正期にかけて国家を支える社会

金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院

東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. [email protected]

東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上

るものの、およそ 1:1 の関係が得られた。冬季には TEOM の値はやや小さくなる傾 向にあった。これは SHARP

話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学

向井 康夫 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 牧野 渡 : 東北大学大学院 生命科学研究科 助教 占部 城太郎 :

高村 ゆかり 名古屋大学大学院環境学研究科 教授 寺島 紘士 笹川平和財団 海洋政策研究所長 西本 健太郎 東北大学大学院法学研究科 准教授 三浦 大介 神奈川大学 法学部長.