岩石磯物礦床學
第 二 十 四 巷 第 六 號 昭 和 十 五 年 十 二 月 一 日研
究
報
文
弓 長 嶺 柘 榴 石 の 研 究(1) 物 理 恒 數 理 學 士 待 場 勇 目 次 1 緒 言 2 二 種 の柘 榴 石 3 屈 折 率 4 比 重 5 格 子恒 數 6 物 理 恒數 よ り導 い たイヒ學 成分 7 成 因的 考 察 8 総 括 1緒言 弓長 嶺 産柘 榴 石JR .見の 歴 史に 就 い て は未 だ 充分 審 か に す る を得 な いが, 本 邦 地 學 者 の 一般 が 本 産 地柘 榴 石 に就 い て知 る に至 つ たの は市 村1)都 Eq一' 2),淺 野 及 び 岡 田3)の 諸 氏 の 報 告 に負 ふ もの で あ ら う。 筆 者 は未 だ 實 地 に就 い て 踏 査 す る機 會 を得 な か つ た が,瀞 津 先 生 の 御 指 導 の 下 に先 生 御 所 藏 の標 本 に就 い て物 理 性 質 を精 査 し,そ の 結 果 よ り化 學 成分 を算 出 し, 更 に か くの如 き柘 榴 石 の域 因 を考 察 し,猶 進 ん で は 弓 長嶺 鐵 礦 床 との關 係 に も脚 か 〓 れ て見 た の で あ る。 本 實 験 の 最 初 に於 い て は原 田教 授 が 神 津 先 生 に贈 られ た 結 晶 を使 用 しだ 1) 布 村 毅,朝 鮮 鑛 業 會 誌,第5巻,第6號,大 正11. 2) 都 留 一 雄 、 族 順 工 科 大 學 彙 張,第99號,昭 和10. 3) 淺 野 五 郎,岡 田 重 光,満 瀕 地 質 調 査所 報 告,第98號,昭 和15.が,實 験 の進 む に從 ひ 多 くの 試料 を要 す る様 に なつ た ので,そ の 後 昭 和製 鋼 所 の三 田正 揚 博 士 か ら神 津 先 生 に 多量 に附 られ た もの に就 い て 研 究 を行 つ た の で あ る。 本210(2) 岩 石 礦 物 礦 隊 學 總252 本 稿 を草 す る に當 り本 研 究 中終 始 御 懇 篤 な る御 指 導 を賜 り且 本 稿 校 閲 の 勞を と られ た神 津 先 生 に封 し衷 心 よ り感謝 の意 を 表 す る。 又 この 研 究 に勝 ひた 柘 榴 石 は,上 記 の 如 く原 田及 び 三 田兩 博 士 の神 津 先 生 に 贈 られ た もの で,聊 か 研 究 の 目的 を達 し得 た の は これ 等 標 本 の潤 澤 に 手許 に あつ た 御 蔭 で,兩 簿 士 に 封 し感 謝 の 念 に堪 へ な い次 第で あ る 。 猫 本 研 究 中 同僚 の 竹 内,大 森 及 び加 藤 の 三 學 士 は實 験 に 又 は諸 種 の 計 算 に 多大 の援 助 を輿 へ られ,本 研 究 の速 進 に助 力 せ られ た 友 情 に封 し て は筆 者 の深 く感 銘 す る所 で,鼓 に 記 して 謝 意 を表 した い。 筆 者 は未 だ 本 地域 の實 地調 査 の 機 會 を得 なか つ たの で,本 礦 の産 状 に 封 して は故 都 留 學 士 の報 告 に負 ふ と ころ が 勘 な くな い。 又 本 礦 の 域 因 に關 し て は淺 野學 士 の舊 套 を追 は な い灰 説 に 少 な か らず興 味 を感 じた 。 以 下 記 す る筆 者 の所 論 と淺 野學 士 の そ れ とは全 く異 な る立 場 か ら導 か れ た もの で, 且 つ 同學 士 の所 論 中 に は筆 者 の 了解 し能 は ざ る點 もあ る が,そ の 結 論 に 於 て 一脈 相 通 ず る所 の あ るの は愉 快 に堪 へ な い の で あ る。 猶 これ 等 の 問 題 に 就 い て は後 章 に論 述 す る。 2 二 種 の 柘 橿 石 弓長 嶺 産柘 榴 石 と して 一般 に知 られ た もの は 直 徑2cmを 越 へ る大 品 で 原 田教 授 寄4の 標 本 も三 田博 士寄 贈 の標 本 も大 部分 は これ で あ る。 然 る に 三 田博 士 が 余 等 の 注意 を惹 くた め特 に 附箋 され た 小 形 結 晶 は直 徑Icmを 越 へ な い もの ば か りで あ る。 所謂anthophyllite1)様 の母 岩 中 に密 に散 在 し,柘 榴 石 は 容 易 に 母居 よ り離 脱 し得 る もの で あ る。 結 晶 の色 も晶癖 も大 晶 と異 な らな い もの で あ る が,顯 微鏡 下 に検 す る に包 裏 不 純 物 質 が 前 者 に 1)大 結 晶 の 燈 岩 の 礦 物 に 封 して は 淺 野 學 一t一はthuringite 。と 呼 び, は aphrosideriteと 分 難 し て ゐ る。 余 等 は 未 だ 充 分 の 研 究 を行 つ て ゐ な い 。
比 して 著 し く寡 少 で あ る。 後 章 の 比 重 測 定 の 項 で 記 す る よ うに 大 形 結 晶 中 :には微 細 の 包 裏 物 が 多量 で柘 榴 石の 純 質 を得 る ことが 中 々餌 難 で あ るが, 後 者 は比 較 的 容 易 で あ る。 總253 研 究 報 文 本211(3) これ 等 大 形 結 晶 と小 形 結 晶 と は その 物 理 的 性 質 に 實 験 上 の 誤 差 の 範 圍 外 で槍 出 し得 られ る程 度 の 差 異 を呈 す る の で あ る。 故 に その 化 學 減 分 も亦C れ に 相 應 して 異 な る もの で あ ら う。 、 この 小 形結 晶 が 大形 結 晶 に 比 して 如 何 な る産 出の 歌 態 を呈 す る もの で あ るか 未 だ 知 る を得 な い が,こ れ は將 來 充 分 に調 査 して みた い と思 ふ。 結 晶 晶 出時 代 に於 け る結 晶 速 度ti 異 を生 ぜ しめた よ うな地.fit的條 件 が 獲 見 さ れ るか も知 れ な い 。 或 は 結晶 速 度 を制 限 す る様 な軍 な る機 械 的 條 件 の 差 異 の みで あ るか も知 れ な い 。 要 す るに これ等 大 小 二種 の柘 榴 石は 僅 か で は あ るが 井 性質 を異 に す る こ とに 氣 付 い た の で,以 下 記 述 す る物 理 恒 數 で は その 差 異 を出 來 るだ け精 密 に 示 す こ とに 務 めた 。 3屈 折 率 屈 折率 の測 定 は 異 な る二 つ の 方法 で試 み た,即 ち分 散 法 とプ リズ ム法 と で あ る。 第 壹 表 分 散 法 はMerwm1)の 創 意 に係 る ピ ペ リン 沃 化 物 を媒 質 と し,末 野 學 士2)製 作 の標 準 硝 子 を用 ひ,坪 井 教 授3)提唱 の ハ ル トマ ン網 圖 を使 用 し,光 の 分 散 を利 用 して 屈折 率 を決 定 した ので あ る。 その 結 果 は第 壷 表 に 見 る様 で あ る 。第 壹表 に 示 す様 に 小 形 結EIAと大形 結 晶 とは 小 數 黙 以 下 三 位 で 三 軍 位 の 差 が あ る。 三 羅 位 の 差 は そ の化 學 成 分 に如 何 な る差 異 を來 た す か は後 章
1) Merwin, H. Fi., J. Wash. Ac. Sci.,3, pp. 35∼40, 1913 .2) 末 野 悌 六,地 質,40、pp.10∼24,昭8.
の 所 論 で 明 らか で あ る。 本212(4) 岩 石 礦 物 礦 鎌 學 總254 プ リ ズ ム 法 は 周 知 の 如 く柘 榴 石 の プ リ ズ ム を 作 り,反 射 測 角 器 を 用 ひ そ の 角 と 波 長589μ μ の 光 線 に 封 す る 最 小 轉 向 角(minimum deviation angle)を 測 定 し,こ れ 等 の 値 よ う該 波 長 の 光 に 對 す る 屈 折 率 を算 出 し た の で あ る 。 そ の 結 果 は 第 貳 表 の よ うで あ る 。 同 表 に 見 る よ う に 小 形 結 晶 の 屈 折 率 は1.824で 大 形 結 晶 は1.822で あ る。 第 壹 表 に 見 られ る 分 散 法 で 得 た 第 貳 表 もの と實 験 誤 差 の範 圍 内 で 一致 す る。 但 し プ リズ ム法 の 方が 精 確 な結 果 が 得 られ る こと は一 般 に信 ぜ られ る所 で あ るか ら,こ れ ら柘 榴 石 の λ=589 μμ の 光 に封 す る屈 折 率 の 實 験 値 と して次 の値 を採 用 す る 。 小 形 結 晶 nD=1.824 大 形 結晶 nD=1.822 但 し屈 折 率 の 比 重 及 び格 子恒 数 に 封 す る相 封 的 關 係 か ら見 出 した小 形 結 晶の 屈 折 率 は實 測 値1.824よ り梢 々 小 さ い1.8235か 或 ひ は1.8230が 適
當 で あ る こ と は 後 章 で 蓮 べ る よ う で あ る 。 総255研 究 報 文 本213(5) 4比 重 礦 物の 比 重測 定 で第 一 に重 要 な條 件 は試 斜 の純 質 で あ る こ とで あ る。 即 ち 不純 物 を 出來 得 るだ け除 去 す る こ とで あ る。 既 に記 した 様 に 大形 結 晶 に は 微 細 の 不 純 物 が 多 くこれ を除 去 す る こ と は容 易 で な く,約2グ ラム の純 質 を得 るた め に ニ ケ 月絵 を要 した 。 小 形 結 晶 は前 者 に比 べ て 不 純 物 少 な く 約2グ ラ ムの純 質 を得 る た め に一 ケ月飴 で 劉的 を達 した 。 測 定 方法 は比 重堤 法 で5ccの もの を 用ひ 煮 沸 に よつ て 氣 泡 を除 去 す る 常 法 と,比 重壜 内 を眞 空 と し て氣 泡 を除 去 す る眞 空 法 とを並 用 した 。 その 結 果 は第 参 表 に示 す よ うで あ る。 第 参 表 に輿 へ π と こ ろか ら明 らか な よ う 第 峯 表 に こ れ 等 二 種 の 柘 榴 石 の 比 重 は 次 の 値 を 探 る こ と す る 。 小 形 結晶 G4゜=4.256 大 形 結 晶 G4゜=4.230
即 ち 大形 結 晶 は 小形 結 晶 に比 して小 数 點以 下 二 位で2.6軍 位 の 差 が あ る。 本214(6) 燈 石 礦 物 礦 床 學 總256 5格 子 恒 数 格 子恒 数 の測 定 方法 は粉 末 鳥眞 法 で あ る。 鐵 の對 陰 極 を有 す る管 球 をX 線 源 と し,カ メラの牛 徑 は30.25mmで あ る。 柘 榴 石 の粉 末 中に は 黄 鐵礦 の粉 を混 じ,そ の 廻 折 線 か ら補 正曲 線 を得 て,柘 榴 石 の廻 折 線 間 の 距離 の 補 正 を行 ひa0を 算 出 した の で あ る。 か くして得 たasの 値 の 實 験 上 の誤 差 を少 な くす るた め に 三 つ の カメ ラ を同 時 に 使 用 し,そ の平 均値 を求 めて 實測 範 と した 。 廻 折 線 間 の距 離 の 測 定 に は コ ムパ レ ー ター を使 用 した 。 小形結晶のa0上 記 の よ うな方法 で 小 形 結 晶 のa0を 三 つ の カ メ ラに 對 す る三 枚 の フ イル ムの 各 々 に對 し て 三 回の 異 なつ た 日に 測 定 した 結 果 は次 の よ う で あ る 。 第1回 カ メ ラ No.1 a0=11.507A カ メ ラ No.4 a0=11.507 カ メ ラ No.5 a0=11.509 平均a0=ll.508A 第2回 カ メ ラNo.1 a0=11.507 A カ メ ラNo.4 a0=11.508 カ メ ラNo.5 a0=11.508 平 均a0=11.508A 第3回 カ メ ラ No.1 a0=11.508A カ メ ラ No.4 a0=11.508 カ メ ラ No.5 a0=11.5O8 平 均a0=11.508A 大形結晶のa0小 形結 品 の場 合 と同様 の 方 法 でa0を 測 定 した 。 この 場 合 に は 三 つ の カ メ ラ か ら 得 た 三 枚 の フ イ ル ム に 對 し 唯 一 回 の み 測 定 し た の で あ る が 各 々 の 値 は 能 く近 似 し て ゐ る, 即 ち カ メ ラ No.1 a0=11.518A カ メ ラ No.4 a0=11.518 カ メ ラ No.5 a0=11.517 平 均a0=11.518A
大 形 結 晶 のa0は 小 形 結 晶 のa0に 對 し て0.OIOだ け 大 き い 。 總257 研 究 報 文 本215(7) 6 物 理恒數 よ り箪 いた化學成 分 柘 榴 石 の 物 理 恒 數 と化 學 成 分 とは 實験 上の誤差 の範 圍 内 で 直線 的 關 係 を 保 つ と いふ こ と は,本 邦 産柘 榴 石 の數 腫 にこ就 い て 既 に 神 津 先 生1)に よつ て 論 蓮 され た と ころで あ る。 然 し本 礦 の よ うな鐵 分 に 著 し く富 む もの に 就 い て は未 だ 實 験 的 證 明 は行 はれ て な い か ら,本 礦 が 又 この 誰 明 の 第 一 の 實 側 と な る課 で あ るが,化 學 分 析 は 八 木 健 三 學 士 と満 洲 國 地 質 調 査 所 員 家 木 幸 雄 氏 とが 各 自猫 立 に並 行 して實 験 中 で あ るた め,實 測 化 學 成 分 を加 へ て 論 ず る こ とは現 在 の と こ ろ 出 來 な い か ら,茲 で は 屈 折 率,比 重及 び 格 子 恒 数 の 實測 値1から如 何 な る化 學 成分 が 豫 期 され るか を述 べ て 見 よ う。 勿論 物 理 的 性 質 と化學 成分 とは 直 線 的 關 係 に あ る こ とを前 提 とし ての こ と で あ る。 三成分の合場 柘 榴 石 の 主 端 成 分 が 三 種 で あつ て 他 の 二種 は除 外 して も物 理 的 性 質 に は殆 ん ど影 響 を來 た さな い とい ふ よ うな 威分 を持 つ柘 榴 石 は あ り得 る譯 で あ る。 又 二 種 を除 外 して も物 理 的 性 質 に與 へ る影 響 が 僅 少で あ る と云 ふ 場 合 もあ る。 これ 等 二つ の場 合 に は 物理 恒 数n,G及 びa0中 何 れ か 二 つ を正確 に知 れ ば,前 者の 場 合 は朝 然 と 化學 威 分 を算 出 す る こ とが 出 來,後 者 の場 合 に は そ の 大 要 を知 る こ とが 出 來 る。
今Alm, And, Gr, Py及 びSpの 五種 の端 成 分 中か ら必 ずAlmを 含
む 三 成分 を撰 出 す る と, Alrn-And-Py, Alm-Py-Sp, Alm-Gr-Py,
Alm-And-Gr, Alm-And-Sp及 びAlm-Gr-Spの 六 鍾 に過 ぎ な い。 何 故 にAlm
を含 む もの を撰 出 した か ば弓 長 嶺 産柘 榴 石の 屈 折 率 と比 重か ら該 威分 が 多 量 に 含 まれ て ゐ る こ とが 明 らか で あ るか らで あ る。 以 上 の 六種 の 三 成 分 紐 合せ に 對 し,a0とn, a0とG及 び π とGの 組 合 せ か ら三 つ の 主要 端 成 分 の混 比 を算 出 す る と,小 形 結 晶 で は第 五 表,大 形 結 晶 で は 第 六 表 の 各 々の(工)か ら(Ⅰ8)迄 の十 入種 の混 比 が 輿 へ られ る が,こ の 中混 比 に 負 號 を有 す る もの は實 際 に は起 り得 な い もの で あ る。 故 1)憩 津,竹 内 及 大 森,岩 礦,23, 5, PP. 203∼312, 昭 和 15.
に 正 號 の み の 混 比 を 求 む れ ば 第 五 及 び 第 六 の 兩 表 に 於 け る(1),(2),(3), (4),(5),(6),(Ⅰ3),(16)及 び(17)の 九 つ の 場 合 で あ る 。 猶 これ 等 を 更 に 吟 味 す る と(3)及 び(4)と(5)及 び(6)はa0とn, a0とGの 組 合 せ の 場 合 は そ の 混 比 は 正 號 で あ る がnとGの 組 合 せ で は(Ⅰ4)及 び(Ⅰ5)の 様 に 負 號 に 示 す か ら これ 等 の 場 合 は 實 際 に は 成 立 し な い と い ひ 得 る 。 又(16)と (17)はnとGの 組 合 せ で は 正 號 を得 る が,こ れ に 相 當 す るa0とn及 び a0とGの 組 合 せ で は(7),(8),(9)及 び(Ⅰ0)に 見 る 様 に 負 號 を呈 す る か ら, こ の 場.含 も實 際 に は 威 立 し な い の で あ る 。 結 局 残 る 場 合 は(1)及 び(Ⅰ3) で 端 成 分 の 組 合 せ はAlm-And-Pyで あ る 。 以 上 の 關 係 を見 易 く す る た め に 第 四 表 を掲 げ た 。 本216(8)岩 石 礦 物 礦 旅 學 總258 第 四 表 小 形結 晶に對 す る端 成 分Alm-And-Pyの 検 討 小 形 結 晶 の 筏G及 びa0 の 實 測 値 は 各 々Ⅰ.824,4.256及 び Ⅱ.508Aで あ る 。こ れ 等 の 値 を 二 つ
組 合 せ て 算 出 し たAlm, And及 びPyの 混 比 は 第 五 表 の(1),(2)及
び(13)に 見 ら れ る,即 ち a0とn a0とG nとG Alm...90.64 90.32 90.00 n=1.824 And...3.00 3.03 3.50 G=4.256 Py...6.36 6.65 6.50. a0=11.508 A で あ る。 若 し實 験 上 得 たn,G及 びa0の値 が 柘 榴 石 の眞 の値 で あ る な ら ば 上 記 の 三 つ の 場 合 の 混 比 が 全 く 同 値 で あ るべ き筈 で あ る 。然 るにAlm の 例 を と る とa0とn及 びnとGの 組 合 せ の 間 に は0.64の 差 が あ る。
總259研 究 報 文 本217(9)
第 五 表(1)及 び(2)
第 五 表(3)及び(4)
本218(10)岩 石 礦 物 礦 床 學 總260.
第 五 表(7)及 び(8).
第 五 表(9)及 び(10)
總261研 究 報 文 本219(11)
第 五 表(13)及 び(14)
第 五 表(15)及 び(16)
若しnをⅠ.8235と す る と a0と92 a0とG nとG Alm...90.18 90.32 90.26 n=1.8235 And...30.4 3.03 3.02 G=4.256 Py...6.78 6.66 6.72 a0=11.508A と な り,a0とn及 びnとGの 組 合 せ に 對 す る 混 比 が 極 め て 接 近 し,且 つa0とGと も よ く近 似 す る。 故 に 精 密 に 云 ふ と き は 屈 折 率 は1.824よ り 1.8235と す る 方 が 適 當 で あ る と い ひ 得 る 。 こ の 關 係 は 後 に 述 べ る 四 つ の 端 成 分 の 場 合 に 一 層 明 らか と な る 。 本220(12)岩 石礦 物 礦 床 學 總262 nに 對 す る上 記 の 關 係 をGに もa0に も 見 た い た め にGが4.257, a0が Ⅱ509Aの 場 合 の 混 比 を 算 出 し て 第 五 表 及 び 第 六 表 に 與 へ た の で あ る 。 要 す る に 小 形 結 晶 の 端 成 分 が 上 記 の 三 種 の み と す れ ば"そ の 混 比 はAlm =90.28 , And=3.03, Py=6.72mol%に 最 も近 似 の 愚の で あ る 。 大 形 結 晶 に 對 す る端 成 分Alm-And-Pyの 検 討 大 形 結 晶 のn, G及 びa0 は 夫 々1.822, 4.230及 び Ⅱ.5Ⅰ8 Aで あ る 。 こ れ 等 三 つ の 値 か ら 二 つ づ 組 合 せ て 上 記 の 三 成 分 を算出 し た もの が 第 六 表 の(1)か ら(18)中 に 與 へ ら れ た もの で あ る 。 小 形 結 晶 の 場 合 と 同 檬 に混 比 が 結 局 正 號 で 輿 へ ら れ
る も の はAlm-And-Pyの み で あ る。 今 上 記 の 物 理 恒 數 か らAlm, And
及 びPyの 混 比 を 算 出 す る と次 の 様 で あ る 。 a0とn a0とG nとG Alm...35.37 36.34 86 .47 n=1.822 And...5.08 5.04 4 .69 G=4.230 Py... 9.05 8 .62 S.84 a0=11.518A と な り,そ の 混 比 は 近 似 で は あ るが 合 致 に 近 い も の と は 轡 へ な い 。 故 に 物 理 恒 數 中 に 多 少 な り と も變 化 を來 た せ ば,前 例 の 如 く混 比 に 合 致 を 見 る で あ ら う。 今1.822をⅠ.8225と す る と a0とn a0とG nとG Alm...86.33 86.34 86 .33 n=1.8225 And...5.03 5 .04 5.04 G=4.230 Py... S.63 8.62 5 .62 a0=11.51SA
總263研 究 報 文 本221(13)
第 六 表(1)及 び(2)
第 六 表(3)及 び(4)
本222(14)岩 石 礦 物 礦床 學 總264
第 六 表(7)及 び(8)
第 六 表(9)及 び(10)
總265研 究 報 文 本223(15)
第 六 表(13)及 び(14)
第 六 表(15)及 び(16)
と な り遇 然 と もいふ べ き 一致 を見 た の で あ る 。
本 224(16)岩 石 礦 物 礦 床 學 總266
故 に 若 し 大 形 結 晶 がAlm, And及 びPyの み よ りな る と す れ ばAlm
は86.34,Andは5.04及 びPyは8.62mol%で あ る。 四成分 の場合 三 つ の 端 成 分 よ り成 る 場 合 は上 に論 じた が,Alm, And, Pyの 外 にSpを 加 へ た 四成 分 の 場 合 を檢 討 して見 よ う。本 柘 榴 石 の物 理 恒 數 か らSpは 多 量 に は 存 在 し得 な い こ と は割 るが,少 量 で も必 ず 存 在 す る こ とはMnOを 定 性 分 析 で 認 め られ る こ と に よつ て知 られ る。 上 記 四 種 の 端 成 分 を算 出 す る に は,先 きに神 津 先生 の論 ぜ られ た 聯 立 四 元 一次 方 程 式1)を 解 け ば よ いの で あ る。 既 に述 べ た様 に小 形 結 晶 の場 合 はnは 實測 値Ⅰ.824の 代 りにⅠ.8235と す る 方 が 三 成分 の混 比 を算 出 す る に適 當 で あ つた 。 今 四 成分 の 場合 を見 る 第 七 表 第 八 表 1)岩 礦,第23巷,第5號,總173頁,昭和15.
と 第 七 表 の よ うで あ る 。 同 表 の 示 す 如 くnが1.824の 場 合 はSpは 負 號1 を 示 し 四 成 分 は 成 立 し な い 。 猶n=Ⅰ.824と し てa0を 變 化 し て もa0が Ⅱ,600A以 上 に な ら な け れ ば 負 號 が 溝 失 し な い こ と は 第 八 表 に 見 ス よ う' で あ る 。 總267研 究 報 文 本225(17) 第 九 表 第 拾 表 第 拾 壹 表
本228(饗8》 岩 石 礦 物 磯 床 學 總268 然 るに 若 しn=1.823と すれ ばG及 びa0は 第 八 表 に與 へた 値 と同 じで もSpに 負 號 を生 ぜ しめ な い こ とは 第 九表 に見 る よ うで あ る。 比 重(G)の 變 化 が 混 比 に 與へ る影 響 は第 拾 表 に 示 した。 要 す るに 小 形 結 晶 の 成 分 は 第 七 表 のnが1℃823か ら Ⅰ.8235の 間 の 化 學 成分 に近 似 の もの で あ る と推 察 され る。 第 拾 貳 表 大 形 結 晶 のAlm-And-Py-Spな る 四 域 分 の 場 合 を 檢 べ る と,第 拾 壹 表 に 見 る 様 にnが1.8215 か ら1.8225の 間 に 相 當 す る 混 比 が,本 柘 榴 石 の 化學 成分 の 大要 を示 す もの と推 測 され る。 猶n=Ⅰ.82z或 ひ は Ⅰ.822, G=4.230, a0=Ⅱ.518Aな る 柘 榴 石 で Alm-And-Gr-Spな る混 比 が 可 能 で あ るか 否 か を檢 す る に,第 拾 貳 表 の 様 な結 果 を與 へ,か る混 比 の 成 立 は 不 可能 で あ る こ と を示 して ゐ る。 7成 因 的 考 察 筆 者 は 未 だ現 地 踏 査 の機 會 な く,又 柘 榴 石 の 母岩 の 研 究 も充分 行 は ず, 單 に 本礦 物 の 物 理 恒 數 を精 査 した の に 止 ま るの で あ るか ら,一 般 的 に本 礦 の 成 因 を論 議 す る まで に は至 つ て な い こ と は勿 論 で あ る。 鼓 で は物 理 恒 數 を基 と して考 察 され 得 る,或 ひ は豫 察 され 得 る點 に就 い ての み述 べ て見 よ う。先 づ 既 刊 の 報 告 に 記 載 され た 本 産 地 柘 榴 石の 成 因 論 に就 いて 考 察 して 見 よ う。 市 村 教 授 は 其 成 因 を石 灰 質 岩 の 變 質 に 由來 した もの と考 へ られ た 様 で あ る が,そ の場 合 に は 一般 にGr-And分 子 を主 と す る柘 榴 石が 形 成 され る筈 と思 はれ る。 都 留 學 士 は 共 生 成 を接 觸 變 質 作 用 に歸 して をられ る が 淺 野學 士 の指 摘 され た様 に共 原 岩 には觸 れ て を られ な いの で,共 生 成過 程 を考 察 す る こ とは 出 來 ないが,そ の 母 岩 の 性 質 よ り推 察 すれ ば 鐵 に 富 む
基 性 岩 で あつ た と推 察 され る。 換 言 すれ ば か くの如 き母 岩 か ら接 觸 作 用 で 二次 的 に柘 榴 石 が 形 成 され た もの との 考 へ の よ うに推 察 され る。 か る場 合 に 果 してAlmを 主 とす る柘 榴 石 が形 成 され るや 否 や は筆 者 に は まだ 明 らか で ない か ら論 議 は 出來 な いが,数 に一 つ の 疑 問 は何 故 に接 觸 作 用で 生 じた と考 へ ね ば な らぬ か,又 何 故 に 原岩 中 に既 に柘 榴 石が 礦 物 成 分 と して 存 在 して をつ た とは考 へ られ な い で あ ら うか と いふ こ と で あ る。 總269研 究 報 文 本227(19) 四 國 共 他 の 基性 變 成 岩 中の柘 榴 石 は 一般 に 屈折 率 の低 い もの で,目 下 神 津 先 生 の 下 で 研 究 中の もの で あ るが,本 礦 山 産 の もの とは 々PP別 さ るべ き もの で あ る。1,acroixの 記 載 し た マ ダ カ スカ"ル 結 晶 片岩 中の柘 榴 石 も Almandine-pyropeと 稱 し,屈 折 率 に 於 い て は四 國 五 良 津 産 及 び 徳 島 眉 山 産 柘 榴 石 と似 た もの で あ る。果 して 變 威岩 生 成作 用 で 弓長 嶺 産柘 榴 石 の様 なAlmを 主 成 分 とす る もの が 形 成 され る だ ら うか 。 まだ研 究 中 の 問題 で は あ るが,神 津 先 生 の 下 に 於 け る材 料 を借 用 す る と統 計 的 に は 弓長 嶺 産 柘 榴 石 の性 質 は 火成岩 中 に形 域 され た もの に近 いの で あ る。 それ で あ るか ら 只 今 の と ころ で は,現 在 の 母岩 の 原岩 は 火成岩 で あつ て柘 榴 石 は そ の 中 に 初 成的 に形 成 され た礦 物 成分 で は な いか と考 へ て ゐ る。緒 言 に 於 い て淺 野 學 士 の結 論 と一脈 相 通 ず ると ころが あ る と言 つ た の は 本 柘 榴 石が 接 觸 變 質 作 用で 出 來 た と考 へ な い鮎 で あ る。 若 し本 柘 榴 石 の 成 因 が 火成岩 漿 よ り品 出 した もの と すれ ば本 礦 山 礦 床 の 富礦 體 の 成 因 とは直 接 の關 係 の な い もの とい はれ よ う。3ζこの 附近 一帯 の 受 け だ變 成居 生 成 作 用 に も成 因的 に は 關 係 が な い こ とにな る。 これ らの 問 題 を解 決 す る に は現 地 の精 査 と これ に關 蓮 す る精 密 な岩 石學 的 及び 礦 物 學 的 研 究 を進 め な けれ ば な らぬ。 8總 括 1弓 長 嶺 産 柘 榴 石 中に は 普 通 一 般 に知 られ て を る大 形 結 晶 の外 に直 徑 Ⅰcmに 足 らな い小 形 結 晶 の母 岩 中に 群 體 を な す ものが あ る。 この 小 形 結 晶 は以 下 記 す る様 に 大 形 結 晶 に 比 しAlm分 子 の 富 ん だ もの で あ る。
本228(20) 岩 石 礦 物 礦 床 學 纏270 2こ れ ら 兩 種 柘 榴 石 の 屈 折 率 は 次 の よ うで あ る。 小 形 結 晶 nD=1.824或 ひ は1.8235 大 形結 晶 nD=1.822或 ひ は1.8225 大 小 兩 結 晶 の 各 々 に 於 て 屈 折 率 の 小 数 鮎 以 下 四 位 に 於 け る 五 軍 位 の 差 は 化 學 成 分 算 出 に 著 し い 影 響 を輿 へ る 。 3二 種 の 柘 榴 石 の 比重は 次 の よ うで あ る 。 小 形結 晶 G4゜=4.256 大 形結 晶 G4゜=4.230 4二 種 柘 榴 石 の 格 子 恒 数 は 次 の よ う で あ る 。 小 形結 晶 a0=11.508 A 大 形結 晶 a0=11.518A 5上 記 三 つ の 物 理 恒 數 か ら算 出 し た 二 種 の 柘 榴 石 の 化 學 成 分 は 次 の よ う で あ る。 小 形 結 晶 Alm ... 90.25 And ... 3.03 Py .... 6.72 +Sp 1•`2% Alm ... 88.83•`89.97 And... 2.67•`294 Py .... 6,51•`6.61 Sp.... 1.99•`0.49 大 形 結 晶 Alm...86.34 And ... 5.04 Py .... 8.62 +Sp 1•`2% Alm ... 85.1886.31 And... 4.77•`5.04 Iy.... 8.51•`8.61 Sp .... 1.54•`0.04 6本 柘 榴 石 は母 岩 の原 岩 即 ち 基性 火成岩 中 に 初 成護 物 域分 と して 晶 出 し た もの よ うに今 で は考 へ て ゐ る。 最 後 に本 研 究 に謝 し終 始 變 らざ る御 熱 心 を以 て御 指 導 を賜 へ る神 津 先 生 に再 び謝 意 を捧 げ て擱 筆 す る 。