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Academic year: 2021

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(1)

博士後期課程用

(様式4

学 位 論 文 の 内 容 の 要 旨

氏 名 鬼塚 陽子 印

(学位論文のタイトル)

Inhibition of autolysosome formation in host autophagy by Trypanosoma cruzi infection

(南米トリパノソーマ感染による宿主オートファジーにおけるオートリソソーム 形成抑制)

(学位論文の要旨)2,000字程度、A4

アメリカトリパノソーマ (Trypanosoma cruzi) は中南米でシャーガス病を引き起こす 偏性細胞内寄生原虫である。媒介昆虫により感染すると、1 ヶ月の急性期を経て、ほとん どの成人は慢性期に移行し、心筋炎、巨大食道、巨大結腸などの臨床症状を呈する。T. cruzi は心筋や神経細胞内で分裂増殖を繰り返すが、原虫の宿主生体防御反応からの回避メカニ ズムは明らかにされていない。

オートファジーは細胞内タンパク質分解機構の一つであり、栄養飢餓刺激やストレス刺 激により誘導され、不要な細胞内器官の除去などを行い、細胞内の恒常性を維持している。

この経路には LC3 を代表とするオートファジー関連 (Atg) タンパク質群がはたらく。オ ートファジーが誘導されると、まず隔離膜とよばれる小胞体由来の扁平な二重膜構造体が でき、アタプター分子p62 を介し、不要なものを包み込む。この時、隔離膜外膜に局在し ている Atg12-Atg5-Atg16L複合体により、LC3 が LC3-I から脂質化された LC3-IIに変 換され、隔離膜に結合し、膜の伸長を促進する。膜の一端が閉じ、オートファゴソームが 形成されると、Syntaxin17 (Stx17) がリクルートされ、オートファゴソームは成熟する。

その後リソソームと融合しオートリソソームとなり、内容物が加水分解される。

オートファジーは細胞内に侵入した病原体の除去にもはたらく。本研究では、T. cruzi が 宿主オートファジー機構を抑制し、宿主生体防御機構を回避するという仮説をたて、検証 を行った。

ヒト繊維肉腫細胞HT1080 にT. cruzi を感染させ、オートファジーマーカーLC3 の輝 点数を蛍光画像で定量したところ、感染細胞では非感染細胞に比べ LC3 の輝点が経時的 に増加し、感染後 9 時間に最大となった。隔離膜上に存在する Atg16L と LC3 は、感染 細胞で共局在が認められ、原虫感染により隔離膜形成が起きていると考えられた。この結 果は原虫感染により、宿主オートファジーの初期過程が誘導されることを示している。し かし、細胞内のT. cruzi がLC3 に囲まれている像は観察されず、原虫は隔離膜に認識さ れないことが明らかとなった。

(2)

博士後期課程用

次に、LC3の脂質化を指標とし、原虫感染によるオートファゴソーム形成について解析 した。非感染細胞に比し、感染9 時間後ではLC3-IIが増加していた。この結果から、T. cruzi 感染細胞では、隔離膜形成からオートファゴソーム形成の過程は進行することが明らかと なった。オートファゴソームがリソソームと融合するためには、オートファゴソームが成 熟する必要があり、その過程にはオートファゴソームにStx17 がリクルートされることが 必須である。そこで、mCherry-Stx17 強制発現HT1080細胞を樹立し、Stx17とLC3の 共局在を蛍光顕微鏡下で観察した。感染細胞では、Stx17 と LC3 の共局在が観察されず、

T. cruzi 感染によりオートファゴソームの成熟過程が抑制されると考えられた。

最後に、酸性オルガネラを染色するLysotracker を用い、感染細胞でのオートリソソー ム形成を検証した。原虫感染 (感染12 時間後) および非感染細胞では蛍光強度の増加は認 められなかった。また、オートリソソームによって分解されるp62は、感染細胞では分解 されず、オートリソソームは機能していないと考えられた。これらの結果から、原虫感染 細胞ではオートリソソーム形成は抑制されることが明らかになった。

以上より、T. cruzi 感染で宿主オートファジーの初期過程が誘導されるが、原虫は隔離 膜に認識されないことを明らかにした。これまでに、細胞内寄生細菌Shigella flexneriか ら分泌される因子が、オートファジーによる認識を回避する役割を果たしていることが報 告されており、T. cruzi は類似した回避機構を持つ可能性がある。また、原虫が宿主オー トファジーを利用して細胞へ侵入するという報告があり、原虫の感染成立にオートファジ ーの初期過程の活性化が重要である可能性が示唆された。さらに、原虫感染細胞ではオー トリソソーム形成が阻害されることを我々は見出し、それは、オートファゴソーム形成よ り下流でおこると考えられた。同じトリパノソーマ科に属するLeishmania majorは宿主 細胞のオートファジーを活性化させるが、自身が産生するGP63 タンパク質により、オー トファゴソーム-リソソーム融合の過程を阻害するという報告がある。T. cruzi にもGP63 オルソログが存在し、オートリソソーム形成を阻害している可能性を考えている。

参照

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