博 士 ( 農 学 ) 飯 嶋 渡
学 位 論 文 題 名
メタノリシス反応と熱分解を併用した 軽油代替バイオ燃料製造技術の開発
学位論文内容の要旨
1.は じめに
; 袈研 究は, 燃判用 作物の 生産基 盤が 脆弱な 日本に おいて ,バ イオマ スを原 料とし た軽油 代替 燃料の普及を目指 し て 行 っ た もの で あ る 。 軽油 代 替 燃 料 の普 及 に 係 る 重要 事項と して, 小規模 生産 ,無廃 棄物, 廃食用 油利 用の3 点 を 具 備 す べき 要 件 と 考 え, こ れを 基本と して製 造技術 の開 発を行 った。 特に, 製造工 程で 排出さ れる廃 棄物は 現 在譜: 及して いる アルカ リ触媒 法によ る脂 肪酸メ チルエ ステル(FAME)の製 造に おける 最大の 欠点と もいわれる。
そ の 理 由 と して , 可 溶 陸 のカ 蝶 を用 いるた め,反 応後に 触媒 の除去 ,中和 ,洗浄 およ乙 聯舗 冰の浄 化と複 数の工 程 が 必 要 で ある こ と , お よび 副 産物 として2獅u用が 困難 な低品 質のグ リセリ ンが 生成さ れるこ とが挙 げられ る。
そ こ で , 反 応工 程 の 無 触 媒化 お よ び グ リセ リ ン 非 生 成を 達成す る製造 法を開 発目 標とし 也FAIVEの無 触媒生 成法 と して| 超臨界 メタノール法が知られるが,グリセリン生成の問題は解決できなぃ丶。了方で水素化分解,壷み拍翠,
合 成 等 に よる炭 化水素 生成 法が存 罐ナる 。これ らは 基櫛勺tこ 角蝶の 除去は 不要で ,グリ セリ ンも生 成しな いが,
代 わりに ターノ レ, チャー 缶李の 重質成 分が 生成さ れる問 題が残る。そこで,FAME生成と熱分解等を併用し,それぞ れ の 副 産 物 の生 成 を 最 小 とす る 条 件 を 確立 す る こ と でJI上 記の目 標を 達成で きると 考えt‑oこの 方針 に従い ,本 研 究 で は メタノ リシス 反応 と熱分 解を併 用したSTING法(Simultaneous application of Transesterification and thermal cracking process)を 開発・ 評価す るこ とを目 的とし た。
2,装 置た閑 乏ニお よび反 応条 件の確 立
ま ず, /璢蜥漣 式反応 装置 を試作 し,反 応管の 仕様を 確立 した。 メタノ ールに 対す る油脂 の規格 イは昆合拡散係 数 を 算 出 し ,反 応 管 径 と 指数 関 数的 な関係 にある ことを 明ら かとし た。こ れに加 え,FAME生成速 度に よる評 価を 行 っ た 。 反 応渦 度400℃ , 圧 力20 MPa,時 間8分 で 処理 し た ぁ 昜 合, 直 管 型 反応 管では 変換率14%で あった のに 対 し,ヘ リカル コイ ル反応 管では60%と なった 。反応 管内部 にお いてメ タノー ッレと 油脂が 混合 ・攪拌された結果 と 考えら れJ以降ヘ リカル コイ ル反応 管を基 本とす るこ ととし た
次 に ,グ リ セ リ ン 生成 を 抑 制 す る 反応 条 件 の 確 立を 行つ1r̲oこれ までの 知見か ら, 反応圧 カは20MPa, 反応時 間 は4分 に設 定し, 油脂と メタノ ーリ レの混 合比お よて皈 応温 度を検 討した 。グリ セリン 生成 量,粘 度およ び高沸
| 長 成 分 含有率 を指標 とし た結果 ,油脂 :メタ ノー ルの混 合比は 容積比 で2:1,質量 比で7:3が望 まし く,反 応温 度 は440〜460℃とす る必 要があ ること が明ら かと なっr̲o
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こ こ で , 望 ま しb晦 涜 簡 澣 は , 反 応 温 度440〜460℃ , 圧 力20 MPa, 時 間4〜5分J油 脂 : メ タ ノ ー ル 混 合 比
=2:1 (v/v)であ ると し ,こ の条 件 下におけるグ リセリンおよぴオ レイン酸の反応生 成物の定性分析を行 った。グ リ セ リ ン は 閲 萪 島 度350℃ 以 上 で 反 応 を 始 め , 主 と し て ,t呶 アル コ `ー/レJ脂 肪酸 およ びFAMEに変 換 され た オレイン 酸はオレイン酸メチ ルc工ステ′レとなるーブi炭素鎖カ§二重結合部立で切断され,カ/レボキシソレ基側フラ グ メ ン ト か ら 炭素 数4〜 12のFAMEが 生成 され た 。, 方の メ チル 基側 フ ラグ メン ト から 生成 さ れた と思 わ れる 顕 著な成分 は観察されず,多様 な微量成分に分解 されたと考えられ/
3.装置のスケーッ レアップと廃食用 油への適用
実験 室規 模 での 試験 結 果を 基に , 実用 規模 ヘ スケ ール ア ップ した 装 置を 設計 ・ 試作 した 。 このHも廃 食用油回 収 の実 例調 査 の結 果よ り ,製 造量 を200ソ 日と 設定 し た。 装置 の 設計 に当 っ ては ,熱 交 換器 導入 に よる 投入工ネ ル ギ ー 削 減 , 装置 各部 の 見直 しに よ る装 置本 体 価格 の低 減 を行 い, 投 入工 ネル ギ ーの23% 減 を果 した ま た, 試 作 嚢薮 艶喪 置 を用 いて , 複数 種の 廃 食用油を燃*W匕し,主として物 理陸状からの評価 を行った。房弗舳の 品質によ り 製 造 麟 糾 の 品 質 に も 差 が 見 ら れ た が , 反 応 温 度 の 調 整 に よ り 改 善 す る こ と は 可 能 で あ る と 考 え ら れ た 4.農用デ ィーービノレ機関に おける排気ガス特 性
製造 した 燃 料の ディ ー ゼル 機関 に おけ る排 気 ガス 特陸 を 検討 した 。 ディ ーゼ ル 特殊 自動 車8モ ー ド法 に従い,
デ ィー ゼル 特 殊自 動車 排 出ガ ス規 制 項目(NOx,'CO,THC,PM,黒煙濃度), およぴC02濃度を計測し,軽 油との比 較 を 行 っ た 。 その 結暴PM,黒 煙濃 度 が28 '‑‑33%低 下し ,CO,THC濃 度が29〜35∞. 加 した 。ま た ,NOx濃度 が 5%低 下 ,C02濃度が3%増加し た。これらは:過去 に行われたBDFのおP気ガス測定の結 果と同程度の変動範 囲であっ た ま た , い ず れ の 値 も 供 試 脚 こ 適 用 さ れ る 平 成15年 規 制 値 を 大き く 下回 って お り, 本技 術 によ り製 造 され た 燃料は従 来の軽油と同様に使 用できることを確 認した。
5.自動製 造装置の開発と評価
市貝 反饑 の プロ トタ イ プと なる 自 動製 造装 置 を設 計・ 開 発した。自動製造 装置は24時間以上 の連続運転に耐えI ま た 単 位 黼 糾 当 り の 消 費 電 力 量 は10時 間 未満 の稼 動 時間 で1.lkWh,20時 間以 上 で0.6O.7kwhとな っ た。 従 っ て , 可 能 な 限り 連続 運 転す るこ と が望 まし い と考 えら れ たま た, こ れを 用い て 複数 腫の 廃 食用 油を 原 料と し て 燃 料 翁 告 し , そ の 品 質 安 定 陸 を 検 証 し 也 そ 噺 吉 果 , 燃 ぢ ゆFAME組 成 は 劇 軸 脂 のFA肥 組 成 の 影 響 を 受 け る も のの ,そ の 変動係数fヨリヽ さくなっており,原 料油脂の変動を軽 減できる可詣陸が 示唆された。一方で ,密度,
粘 度 , 高 沸 点 成 分 含 有 率 な ど は 原 料 油 の 組 成 の 影 響 を ほ と ん ど 受 け ず , 安 定 し た 結 果 が 得 ら れ た 。 6.本製造法の環境 影響評価およぴコ スト試算
本研 究に お いて 開発 し たSTING法 の評 価 のた め, ニ 酸化 炭素 排 出量 ,エ ネ ルギ ー収 支 比お よび 製 造コ ストを試 算 した 。二 酸 化炭素排 出量に関して既存BDFと比較 した場合,副生さ れるグリセリンカ ミ有効Fl亅用される と仮定す る と , 本 塞 摧 拙 は 排 出 量 が30増 加 す る が ,有 ジ浙I亅用 で きな い場 合 は逆 に42卿 彪け るこ と が明 らか と なっ た また,10年間装置を稼動させ ると仮定した場合 ,総投スエネル′ ギーは1,132GJ,総 生産三エネノレギ ーは9,153GJ と なり ,エ ネ ルギ ー収 支 比は8.1と なっ た。 こ れは 石油 火 力発 電等 と ほば 同等 の値 であり,エネルギー 生産技術
7.まとめ
本研究では,廃食用油を厠 斛とし,グリセリンを副生しなぃ軽油代替燃糾の製造技贓STING法を開発した。
本法で製造される燃料の排気ガス特陸は規制値以下であり,軽油と同様に使用司能であった。また,製造コス ト,二酸化炭素排出量の面か らも既存BDFと同等,あるいはそれ以上の優位陸が認められ,実用技術へと発展 できる要件を備えていること が確認された。
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学位論文審査の要旨
主査 教授 木村俊範 副査 教授 野口 伸 副査 教授 柴田 洋一 副査 准教授 近江谷和彦
副査 ユニット長 鍋谷浩志(食品総合研究所)
学 位 論 文 題 名
メタノリシス反応と熱分解を併用した 軽油代替バイオ燃料製造技術の開発
本論文は9章からなり、図61、表31、引用文献数152を含む総頁数181の和文論文であり、
別に3編の参考論文(学位論文に直結する)が添えられている。
化石資源の枯渇、燃料価格の高騰を受け、資源の生産基盤が脆弱な日本においてバイオマスに 由来する燃料開発と普及が重要視されている。軽油代替燃料の場合、その生産に係る事項として、
小規模生産、無廃棄物、廃食用油利用の3点を具備すべき要件と考え、これを基本として製造技 術の開発を行なった。
現在普及しているアルカリ触媒法による脂肪酸メチルエステル(FAME)の製造における最大の欠 点は製造工程で排出される廃棄物にある。そこでは可溶陸の触媒を用いるため、反応後に触媒の 除去、中和、洗浄およぴ洗浄水の浄化の必要性、および2次利用が困難な低品位グリセリン生成 が挙げられる。そこで、FAME生成と熱分解等を併用し、それぞれの副産物の生成を最小とする条 件を確立することで上記の目標を達成できると考え、本研究ではメタノリシス反応と熱分解を併 用したSTING法(Simultaneous application of methanolysis and thermal cracking process) を開発・評価することを目的とした。
1.装置仕様および反応条件の確立
小型流通式反応装置を試作し、反応管の仕様を確立した。メタノールに対する油脂の規格化混 合拡散係数を算出して反応管径と指数関数的な関係にあることを明らかとした。次いでFAME生成 速度による評価を行い、反応温度400℃、圧力20MPa、時間8分で処理した場合、直管型反応管で は変換率14%であったのに対し、ヘリカルコイル反応管では600hとなった。反応管内部においてメ タノールと油脂が混合・攪拌された結果と考えられ、以降、ヘリカルコイル反応管を基本とする こととした。
次に、グリセリン生成を抑制する反応条件を検討し、反応圧カは20MPa、反応時間は4分とし
し く、 反応 温 度は440〜 460℃ とす る必 要 なことが分かった。 上記に基づき、適正反応条 件を反 応温度440‑‑‑460℃、圧力20MPa、時 間4〜5分、油脂:メタノール混合比:2:1(v/v)として反応後、
グ リセ リン お よぴ オレ イン 酸 の生 成物 定陸 分析を行なった。 グリセリンは反応温度350℃ 以上で 反 応 を 始 め 、 主 と し て 、 低 級 ア ル コ ー ル 、 脂 肪 酸 お よ びFAMEに 変 換 さ れ た 。 2.装 置のスケールアップと廃食用 油への適用
実験 室規 模 での 試験結果を基に 、実用規模ヘスケールアップ した装置を設計・試作した 。この 際 、事 前の 廃 食用 油回 収の 実 例調 査結 果よ り、製造量を200L/日と設定した。装置の設計 に当っ て は、 熱交 換 器導 入による投入工 ネルギー削減、装置各部の見 直しによる装置本体価格の 低減を 狙 い、 投入 エ ネル ギーの230h減を 果した。また、試作製造装置 を用いて、複数種の廃食用 油を燃 料 化し 、主 と して 物理陸状からの 評価を行なった。原料油の品 質により製造燃料の品質に も差が 見 られ たが 、 反応 温度の調整によ り改善することは可能である と考えられ、スケールアッ プ装置 の初期´ 陸能を確認した。
次に 、市 販 機の プロトタイプと なる自動製造装置を設計・開 発した。自動製造装置は24時間以 上 の連 続運 転 に耐 え、 また 単 位燃 料当 りの 消費電力量は10時 間未満の稼動時間で1. lkWh、20時 間以上で0.6 ‑‑0. 7kWhとなった。従って、可能な限り連続運転することが望ましいと考えられた。
ま た、 これ を 用い て複数種の廃食 用油を原料として燃料製造し 、その品質安定陸を検証し た。そ の 結果 、燃 料 のFAME組 成は 原 料油 脂のFAME組成 の 影響 を受 ける もの の、その変動係数は 小さく な って おり 、 原料 油脂の変動を軽 減できる可能陸が示唆された 。さらに、密度、粘度、高 沸点成 分 含 有 率 な ど は 原 料 油 の 組 成 の 影 響 を ほ と ん ど 受 け ず 、 安 定 し た 結 果 が 得 ら れ た 。 3.農 用エンジンへの適用、環境影 響要因、コスト試算による 評価
製造 した 燃 料の ディ ーゼ ル 機関 にお ける 排気ガス特性等を 検討した。ディーゼル特殊自 動車8 モード法 に従い、ディーゼル特殊自 動車排出ガス規制項目(NOx、CO、THC、PM、黒煙濃度)、およ びC02濃度 を計 測し 、軽油との比較 を行なった。その結果、PM、黒煙濃度が28〜330低下し 、CO、 THC濃度 が29〜35y0増加した。また、NOx濃度が5%低下、C02濃度 が3%増加した。これらは過去に 行なわれ たBDFの排気ガス測定の結果 と同程度の変動範囲であっ た。
装置 の二 酸 化炭 素排出量、エネ ルギー収支比および製造コス トを試算した。本製造法の 二酸化 炭 素排 出量 は 、既 存のアルカリ触 媒法において副生されるグリ セリンが廃棄される場合と 比較し て 、55%減 少す ると い う結 果と なっ た。 ま た、10年間装置を稼 動させると仮定した場合、 総投入 工ネルギ ーは1,230GJ、総生産エネ ルギーは10,149GJとなり、エネルギー収支比は8.2となった。
こ れは 石油 火 力発 電等とほば同等 の値であり、エネルギー生産 技術として妥当であると判 断され た 。BDFで の事 例と 同 様に 、装 置導 入に 際 し補助金を利用する ことで本装置での製造コス トは75 円/Lと 試 算 さ れ 、BDFと 同 程 度 で あ っ た こ と か ら 、 実 用 競 争 カ は あ る と 判 断 で き た 。
本 研究 では 、従 来 技術 の欠 点を 回避 す る新規の製造プロセ スであるSTING法を提唱し、 その基 礎 特 陸を 明ら かに した上で実用規 模装置へとスケールアップし 、さらに農用エンジンへの 利用に 続 き 、環 境お よび コスト解析をし て技術の有効性を検証して韜 り、その研究成果は学術、 実用技 術 の 両観 点か ら高 く 評価 でき るも ので あ る。
よ って 審査 員一 同 は、 飯嶋 渡 が博 士 (農 学) の学 位を 受 ける に十分な資格を有する ものと 認 め た。
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