博 士 ( 農 学 ) ヘ ン ド リ ッ ク セ ガ
学位論文題名
Study on evaluation of land cover chan Lused by .ge c21
human activities in the tropical peat swamp forest area by satellite images .
( 人工 衛星 データ によ る熱 帯泥 炭林 にお ける 土地 改変の評価に関する研究)
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
インドネシアの中央カリマンタンの低平地には,熱帯特有の泥炭湿地林が広く分布して おり,地球上のカーボンシンクとして重要な位置を占めている。しかし,その一部は乱開 発(メガライスプロジェクトや不法伐採)及ぴエルニーニョ現象に伴う乾燥化が拍車をか けた大規模森林火災によって,二酸化炭素として大気中に放散されており,森林火災によ る地球規模の環境への影響も懸念されている。したがって,熱帯泥炭林における森林火災 の影響を受けた植生の動態を解明することが重要な課題となっており,高精度で迅速に実 施できる土地被覆変化の評価手法が望まれている。人工衛星リモートセンシング技術は,
そのための有カな手法であり,火災によって失われた森林部の植生のモニタリングや土地 改変 を把 握す るた めの 効率 的な 手法 の開 発と それ によ る評価 が重 要に なっ ている。
中央カリマンタンにおいて1997年に発生した泥炭林の火災は過去に例をみない規模で 拡大した大森林火災となり,さらに2002年にも大規模な火災が発生し,現地の被害だけで はなく地球環境へも大きな影響を及ばした。本研究ではこの2回の大火災に着目し,@火 災による土地改変の実態を把握し,焼失域の特定(面積推定)を行い,◎火災後の植生回 復状況を明らかにするために,現地調査の実施と共に3種類の人工衛星データ(LANDSAT, SPOT,MODIS)を利 用して従来の手法の改良や新規の手法開発を行うこと,更にそれら によって作成された画像の解釈を目的にした解析を行った。
1. 泥 炭 林 に お け る LANDSATデ ― タ を 用 い た 土 地 被 覆 状 況 の 変 化 検 出 研究対象地域は,インドネシア中央カリマンタンのパランカラヤ付近(2.13〜2.74°S, 113.62〜114.31゜E)に設定した。使用した衛星データは5シーンのLANDSAT TM/ETM+デ ータ (1996年5月10日,2000年7月16日,2003年1月14日 を主 とし て使用 )で あり , 1997年と2002年に発生した大規模森林火災の前後に当たる。これら衛星データを幾何補 正するために,森林分布のGISデータと現地で取得したGPSによる位置情報を使用した。
現地調査の結果に基づき,最尤法を用いて8個の土地被覆クラス(市街地,農地,乾性 草地,湿性草地,低木草地,開放林,閉鎖林,水域)に分類した。主要な解析法は,LANDSAT 画像による変化抽出のためのPCC (Post Classification Comparison)法である。この解析の 結果から研究対象地域の熱帯林(開放林と閉鎖林クラス)は,1996年の416,OOOhaから2000 年の292,OOOhaに減少し,さらに2000年から2002年までは166,OOOhaが変化し,全ての土
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地被覆クラスの中で最も大きな変化を示した。以上のようにPCC法を中央カリマンタンの 土地被覆変化に適用した結果,土地被覆情報の更新手段としての有用性が確かめられた。
次に ,火災前 後の複数シ ーンを用 いた主成分分析(PCA)を適用して火災被災地の検出 を行 った。通常は1シーンのみに適用されるPCA法を複数シーンで用いることによる熱帯 森林火災検出の適用可能性を検討した。まず,最適な主成分を決定するために,使用する LANDSAT画像 のバンド 数を変化さ せ,火災 による被 覆状況の 変化検出の精度(K係数)
を比 較することによって使用するバンドを決定した。1997年と2002年の両年とも火災前 後 の2シー ン のLANDSATの バ ンド1,4,5,7を 使 用し てPCAを適 用 する と0.94(1997 年),0.92 (2002年)と最も高いK係数を示し,このバンドの組合せが火災による被災地 の検出に最適であると判明した。
本手 法を用い て近年のカ リマンタ ン島で発生した2回の大規模な森林火災(1997年と 2002年) の前後のLANDSAT画像による分類結果を比較することによって土地被覆の変化 抽出を行ったところ,森林と非森林に注目してみると,対象地域の20%近くの森林が2回 の火災によって焼失したことが判明した。また,2回の火災による被害の特徴として水路 や 道 路の よ うに 人 間 活動 の 活発 な と ころで火 災が広が ることが浮 き彫りに なった。
2. 衛 星 と 地 上 観 測 に よ る 植 生 指 数 を 用 い た 火 災 後 の 植 生 回 復 の モ ニ タ リ ン グ 種々の人工衛星データの中でも,時間分解能が高く長期間の観測ができるものは,火災 後の植生回復状況をモニタリングするのに有用である。本研究ではそのようなデータとし てSPOTとMODISのデータに 着目した 。SPOT‑Vegetationはlkmの解 像度でほ ば毎日観 測 できるセンサーであり,大陸生物圏における連続的なモニタリングを地域レベル,地球レ ベルで実施できるようにNDVI(正規化植生指数)のような植生被覆のパラメータとなる データを提供している。本研究ではNDVI 10‑day MVC(最大値コンポジット)プロダクトを NRF(ノイズ除去フィルター)処理により雲やノイズの影響を取り除いたデータに変換して 用い た。1998年から2003年までの5年間にお けるNDVI値の 変化(差 )に着目 して火災 による被害程度と比較し,これを利用することで回復状況や被災地分布の把握を行った。
1998年4月 と2003年3月 に お け るNDVIの 差 の 分布 をLANDSATによ る 火災 被 害 分布 状 況の結果と比較すると,NDVIの差が大きい場所は1997年の火災被害地に対応した。さら に,1997年の火災時に焼失した比較的広い地域に注目すると,その中心部ほどNDVIの差 が大きく,約5年間の植生回復が顕著であったことが判明した。このように,NRF処理を 行った年 次の異なるSPOT画像のNDVI差 によって 植生回復 のモニタリングが可能となる 新しい知見が得られた。
一方,MODISデ ータも毎日 の観測データが得られ,こちらは500mの解像度で観測され た画像である。本データのプロダクトであるNDVIとEVI (Enhanced Vegetation Index)を 用 い て 研 究 対 象 地 域 の 平 均 値 を 求 め てSPOTのNDVIと比 較 した 結 果 ,MODISのNDVI の方がEVIよりも高い決定係数(r2: 0.66)を示した。これは,EVIは植生モニタリングの ために改良された植生指数であるが,熱帯泥炭地では必ずしもNDVIより良好とは言えな いこ とを示すも のである 。また,MODISのNDVIはSPOTのそ れと相互 に変換し て使用し 得ることが判明した。
地上観測によるNDVI観測結果と衛星データを火災年である2002年で比較したところ,
両 者 に は 良 い 対 応 関 係 が 見 ら れ , 定 点 観 測 に よ るNDVIの 有 用 性 も 確 認 で きた 。
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火災前 後の土地 被覆に基づくPCC解析や長期間のNDVI変化に注目することは,熱帯泥 炭林の動態を解析する上で重要である。火災の頻度と規模を特定し被災を防ぐことや火災 後にあたっては植生の回復状況をモニタリングすることは,森林の持続可能な管理にとっ て不可欠であるため,リモートセンシングの重要性は今後とも増大すると考えられる。本 研 究 の 知 見 を 多 数 得 ら れ て い る 衛 星 デ ー タ に 適 用 す る 必 要 が あ る 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主 査
副 査 副 査 副 査 副 査
助教授 教授 教授 教授 助教授
谷 宏 浦野慎一 矢沢正士 高橋邦秀 平野高司
学位論文題名
Study on evaluation of land cover change caused by human activities in the tropical peat swamp foreStarea bySatelliteimageS
( 人 工 衛 星 デ ー タ に よ る 熱 帯 泥 炭 林 に お け る 土 地 改 変 の 評 価 に 関 す る 研 究 )
本 論 文 は7章 か ら な り , 図54, 表13, 引 用 文 献174を 含 む154頁 の 英 文 論 文 で あ る 。 他 に 参 考 論 文4編 が 添 え ら れ て い る 。
イ ン ド ネ シ ア の 中 央 カ リ マ ン タ ン の 低 平 地 に は , 熱 帯 特 有 の 泥 炭 湿 地 林 が 広 く 分 布 し て い る が , 乱 開 発 や エ ル ニ ー ニ ョ 現 象 に 伴 う 乾 燥 化 が 拍 車 を か け た 大 規 模 森 林 火 災 に よ っ て 大 量 の 二 酸 化 炭 素 が 大 気 中 に 放 散 さ れ , 地 球 環 境 へ の 影 響 も懸 念さ れて い る。
本 研 究 は , 熱 帯 泥 炭 林 に お け る 森 林 火 災 の 影 響 を 受 け た 植 生 の 動 態 を 解 明 す る た め に 人 工 衛 星 リ モ ー ト セ ン シ ン グ の 利 用 技 術 を 開 発 ・ 改 良 し , 火 災 に よ る 土 地 改 変 の 実 態 の 把 握 と 焼 失 域 の 特 定 ( 面 積 推 定 ) を 行 い , 火 災 後 の 植 生 回 復 状 況 を 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。
1. 泥 炭 林 に お け る LANDSATデ ー タ を 用 い た 土 地 被 覆 状 況 の 変 化 検 出 研 究 対 象 地 域 を イ ン ド ネ シ ア 中 央 カ リ マ ン タ ン の パ ラ ン カ ラ ヤ 付 近(2.13〜2.74゜S, 113.62〜114.310E)に 設 定 し , 衛 星 デ ー タ と し てLANDSAT TIVUETM+に よ る1997年 と 2002年 に 発 生 し た 大 規 模 森 林 火 災 の 前 後 に 当 た る 5シ ー ン を 使 用 し た 。 現 地 調 査 の 結 果 に 基 づ き , 最 尤 法 を 用 い て8個 の 土 地 被 覆 ク ラ ス ( 市 街 地 , 農 地 , 乾 性 草 地 , 湿 性 草 地 , 低 木 草 地 , 開 放 林 , 閉 鎖 林 , 水 域 ) に 分 類 し た 。LANDSAT画 像 に よ る 変 化 抽 出 の た め にPCC (PosClassiflcationConlpmson) 法 を 用 い た 結 果 , 対 象 地 域 の 熱 帯 林 ( 開 放 林 と 閉 鎖 林 ク ラ ス ) は ,1996年 の416,ooohaか ら2000年 の 292,000haに 減 少 し , さ ら に2000年 か ら2002年 ま で は166,ooohaが 変 化 し , 全 て の 土 地 被 覆 ク ラ ス の 中 で 最 も 大 き な 変 化 を 示 し た 。
次 に , 通 常 は1シ ー ン の み に 適 用 さ れる主 成分 分析(PCA法) を, 火災 前後 の複 数 シ ーン に対 して 用いる こと によ る熱帯森林火災検出の適用可能性を検討した。まず,
最 適 な 主 成 分 を 決 定 す る た め に , 使用 するLANDSAT画 像の バン ド数 を変 化さ せ, 火 災 によ る被 覆状 況の変 化検 出の 精度 (K係数 )を比 較す るこ とによって使用するバン ド を 決 定 し た 。 そ の 結 果 ,1997年 と2002年 の 両 年 と も 火 災 前 後 の2シ ー ン の LANDSATのバ ンド1,4,5,7に 対し てPCAを適 用す ると ,1く 係数が0.94(1997年),
0.92 (2002年) と最も 高い 値を 示し,このバンドの組合せが火災による被災地の検出 に 最適 であ ると 判明し た。
本 手 法 を 用 い て 近 年 の カ リ マ ン タン 島で 発生 した2回の 大規 模な 森林 火災 (1997 年 と2002年 ) の 前 後 のLANDSAT画 像 を 用 い た 分 類 結 果 を 比 較 す る こ と に よっ て 土 地 被覆 の変 化抽 出を行 い, 森林 と非森林に注目すると,火災被害を受けやすい地域が 判 明 で き , 人 間 活 動 の 活 発 な と こ ろ で 火 災 が 広 が る こ と が 浮 き 彫 り に なっ た 。 2. 衛 星 と 地 上 観 測 に よ る 植 生 指 数 を 用 い た 火 災 後 の 植 生 回 復 の モ ニ タ リ ン グ 時 間 分 解 能 が 高 く 長 期 間 の 観 測 が で き る 人工 衛 星 デ ー タ と し てSPOTとMODISの デ ータが有用であると判断し,これらによる植生指数(NDVI, Normalized Difference Vegetation Index;EVI,Enhanced Vegetation Index)を主として用いた。SPOTによる 1998年 か ら2003年 ま で の5年 間 に お け るNDVI値 の 変 化 ( 差 ) に 着 目 し て 火災 に よ る 被害 程度 と比 較し, これ を利 用することで回復状況や被災地分布の把握を行った。
1998年 と2003年 に お け るNDVIの 差 の 分 布 をLANDSATに よ る 火 災 被 害 分 布 状 況 の 結 果 と 比較 する と,NDVIの差 が大 きい 場所は1997年の 火災 被害 地に 対応 した 。さ ら に ,1997年 の火 災時 に焼 失し た比 較的 広い地 域に 注目 する と, その 中心 部ほ どNDVI の 差が大きく,約5年間の植生回復が顕著であったことが判明した。.このように,年 次 の 異 な るSPOT画 像 のNDVI差 に よ っ て植 生 回 復 の モ ニ タ リ ン グ が 可能 とな る新 し い 知見 が得 られ た。
一 方 ,MODISデ ー タ か ら 得 ら れ る 植 生 に 関 す る プ ロ ダ ク ト で あ るNDVIとEVIに つ い て 対 象 地 域 の 平 均 値 を 求 め てSPOTのNDVIと 比 較 し た 結 果 ,MODISのNDVI の 方 がEVIよ り も 高 い 決 定 係 数 (r2=0.66)を示 した 。こ れは ,EVIは植 生モ ニタ リ ン グ の ため に改 良さ れた 植生 指数 であ るが, 熱帯 泥炭 地で は必 ずし もNDVIよ り良 好 と は 言 え な い こ と を 示 す も の で あ る 。 ま た ,MODISとSPOTのNDVIは 相 互 に 変 換 し て 使 用し 得る こと が判 明し た。 さら に,地 上観 測に よるNDVIと衛 星デ ータ によ る NDVIを 火災 年で ある2002年で 比較 した ところ ,両 者に は良 い対 応関 係が 見ら れ, 定 点 観測 によ るNDVIの有 用性 も確 認で きた 。
本 研 究 は , 大 規 模 森 林 火 災 前 後 の 土地 被 覆 に基 づくPCC及びPCA解 析や 長期 間の NDVI変 化に 注目 するこ とに よる 解析 方法 を提 案し ,中 央カ リマ ンタンに適用して火 災 被災 地の特定と火災後の回復状況を明らかにした。得られた成果は学術的に貴重な も ので あり,その応用のための基礎資料としても高く評価される。よって審査員一同 は,Hendrik Segahが博士(農学)の学位を受けるに充分な資格を有するものと認めた。