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communication book p5 34 2014

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全文

(1)

茶畑から茶殻まで、笑顔のバトンをリレーする。

伊藤園にかかわる人々とともに持続可能な未来を。

皆様に愛され続ける「お~いお茶」。皆様のお手元に届くまでには、

原料調達・製造・販売・消費の流れの中で、伊藤園とパートナーとのストーリーが日々繰り広げられています。

伊藤園の「茶産地育成」が

もたらした好循環

●進化を続ける茶産地育成事業

STORY

1

7

安全でおいしい製品で、

お客様に笑顔をお届けしたい

●品質管理と環境配慮

●茶殻リサイクルシステム

STORY

2

11

「STILL NOW」の精神を

合言葉に!

●地域密着の国内営業

(2)

「お客様第一主義」は

グローバルスタンダードだ!

「世界のティーカンパニー」を目指す

STORY

4

19

小泉武夫氏が警鐘を鳴らす

日本食文化の危機と伊藤園への期待

●食文化への貢献

「お〜いお茶新俳句大賞」 ●ティーテイスター制度

STORY

5

21

「はまってけらいん

かだってけらいん」

●東日本大震災復興支援

STORY

6

27

人と社会と環境を考え行動する

「人づくり」が求められている

●持続可能な開発のための教育(ESD)

STORY

7

31

会社概要

株式会社伊藤園

ITO EN, LTD.

本 社 所 在 地 東京都渋谷区本町3丁目47番10号 ■ 1966(昭和41)年8月22日 ■ 19,912,300,000円 ■ 5,339名

支店・営業所・出張所 全国30地区201拠点 ■ 全国190店舗

静岡相良工場(静岡県牧之原市女神21)

浜岡工場(静岡県御前崎市新野3406-4)

福島工場(福島県福島市荒井北1-2-9)

沖縄名護工場(沖縄県名護市伊差川112) ■ 中央研究所(静岡県牧之原市女神21) ■ 茶葉および飲料製品の製造、販売

連 結 売 上 高 437,755百万円(2014年4月期)

(3)

大分県臼杵市で親子でお茶の 生産に取り組む優成農産社長、 工藤将二郎氏(左)と同会長、 父の工藤賢治氏(右)。 「自然相手のお茶づくりは本当

に難しい。でも地域の方々のサ ポートや伊 藤 園の指 導を受け て、日々精進していきます」。

STORY

1

皆様に愛され続ける伊藤園の「お~いお茶」。

その源流には、茶生産者の方々と伊藤園の二人三脚で歩む姿がありました。

「夢をあきらめるべきか…」。大分県 臼 杵 市 の 若 手 生 産 者 、3 3 歳 の 工 藤 将 二 郎 氏が不 安を抱いていたのは5 年前のこと。学生の頃から「農業で起 業し、大 分の農 業を元 気にしたい」と いう夢を抱 いていたが 、臼 杵 市に昔 から数多くある葉たばこ農家が、経営 難や後継者不足などで農業をやめて いく現 状を目の当たりにし、不 安が心 を占めていた。

そんな工 藤 氏 の 転 機となったのは

2009年。「伊藤園と大分県が茶産地育

成事業に関する協定を結び、生産者を 募っているとの情報がありました。栽培 した茶葉は伊藤園が『お〜いお茶 』の 原料として全量を買い上げてくれる仕 組みで、心配だった経営安定にもつな がることを知ったんです」。農業で起業 するための光が見えた瞬間だった。

今では「農への感謝、自然への恩返 し」を合言葉に、お茶づくりに励む工藤 氏。植栽から4年かかるお茶づくりも、 一部の茶畑で初めての摘採を迎えた。 このことを喜ぶのは、二人三脚で農業

に取り組む父親の賢治氏だ。「新参者

の私たちですが、伊藤園をはじめ、農 業について素 晴らしい経 験や知 恵を 持った地域の方々が、葉たばこ栽培の 経験を活かして、われわれ 親子をサポートしてくれま す。皆さんと一緒に、親子 でお茶づくりに携われるこ とが何よりもうれしい」と穏 やかに語る賢治氏の表情 は希望に満ちている。

工藤将二郎氏の

親子二人三脚の挑戦

(4)

大分県宇佐市で荒廃したぶどう園を茶畑 に造成し、お茶づくりに励む碑成園社長、 遠嶋ひとみ氏と従業員の方々。 「自分たちが大切に育てたお茶が、『お〜

いお茶 』となり全国で飲まれていることは 誇りに感じるとともに大きな責任も感じて います」。

遠嶋ひとみ氏の朝は早い。「お茶は

春先の霜の害が心配な作物なんです」 と語る遠嶋氏。無事に一番茶の摘採を

終え、夏を迎えた今は二番茶の成長の チェックに余念がない。

遠 嶋 氏 がお茶 づくりを始 めたのは 2008年。荒れ果てた農地が増加し、何 とかできないかと悩んでいた大分県と、 「お〜いお茶 」の原 料 茶の品 質 向 上

と安定調達を目指し、茶葉を畑から育 てることを考えていた伊藤園が手を組 み、生産者を募っていたところに手を挙

げたのが遠嶋氏だった。「大分県宇佐

市はぶどうの産地ですが、ぶどう農家 の後継者不足で耕作放棄地が増えて

農 業 未 経 験 者の遠 嶋 氏 がお茶の 栽 培を始 めたのには理 由 があった。 「 建 設 業 は、春 から夏 場にかけては

仕 事が少なく、公 共 工 事も減っていく 中、もう一つの経営の柱がほしかった」 と当時を振り返る。

「伊藤園や周りの農家の方々にアドバ イスをいただきながら、2012年に最初の

遠嶋ひとみ氏の

異業種参入、ゼロから耕す

地域にも広がる笑顔の輪

いました」。もともと家族で建設業を営 んでいる遠嶋氏。お茶づくりを始めるた めの耕 作 放 棄 地からの土 壌 整 備は、 大型重機を使い建設業のノウハウを活 かして効率的に行われ、2012年には15 ヘクタールの茶畑が造成された。

摘採にこぎつけました。お茶は子どもの ような存在で、育てる楽しみを感じてい ます。お茶づくりを通して、地域の若者 を一人でも多く雇用したり、地域の活性 化に貢献したり、この地域に恩返しがで きればいいですね」。そう語る遠嶋氏に は笑顔があふれている。

(5)

「茶産地育成事業」が地域にもたらすもの

「おいしいお茶は、いい畑から。」のキャッチコピーで知られる伊藤園。

茶市場から茶葉を仕入れるだけでなく、茶産地の育成から取り組むその姿勢には、

どういったこだわりがあるのか。

その想いを農業技術部長 荒井昌彦が語った。

生産者も、生産地も、伊藤園も元気にしたい

「今後、高まる緑茶飲料人気を見据 え、荒 茶 取 扱 量日本 一※ 1の伊 藤 園だ

からこその大 規 模 茶 園 事 業をやりた い」。副社長の橋本俊治から、荒井に 指示があったのは、1998年のこと。緑 茶飲料需要が拡大する一方で、就農 者の高齢化等が進み、茶栽培面積、茶 栽培農家数ともに減り続けていた。副 社長、農業技術部、仕入部、開発部と いった関係者が集い、たどり着いた答 えが、荒れた農地を整備して大規模な 茶園として復活させ、収穫茶葉の全量 を伊藤園が買い取るという「茶産地育 成事業(新産地)」※2だった。

当時を振り返り荒井はこう語る。「副

社長から話を聞いた時に、まず頭に浮 かんだのは、農家の方々の顔でした。 1970年代から茶葉の直接仕入れで、 茶農家の方との交流は常にありました。 そこで、茶農家のご意見も仰ぎながら、 緑茶飲料の原料により適した茶葉につ いて、伊藤園にとっても生産者にとって も価値のある生産方法や事業形態を、

一から検討していくことにしました」。

協 力できたからこそ、ここまで広 がっ た の だと思 います 」と荒 井 は 語る。

2013年5月には、農事組合法人カヤ ノ農産の茶畑と同月稼働を始めたばか りの荒 茶 工 場に、安 倍 晋 三 内 閣 総 理 大 臣が視 察に訪れた。案 内した河 野

杉雄氏(副組合長理事)は、「カヤノ農

産をご視察いただき大変光栄です。雇 用も創出されており地域発展のため、 なおいっそうの努力を続けていきます」 と意気込みを語った。会長の本庄八郎 とともに総 理の案 内を終えた荒 井は、

1998年当時思い描いていた「生産者 の役に立つ活動」に少しは近づけたか なと話す。しかし、現状に満足すること なく、次の目標を追いかけたいという。 生産者も生産地も、伊藤園にもメリット があり、そして日本の農業が元気になる

ために―伊藤園の挑戦は続く。

プロジェクト第一号は、宮崎県都城 市のJ A 都 城とのパートナー協 定だっ た。農業生産法人有限会社アグリセン ター都城を立ち上げるところからの、試 行錯誤の末のスタートだったが、現在 では150ヘクタールもの茶園で収穫を 行う(写真左)。

この大 規 模 茶 園の特 徴は、大 型の 機械の利用により作業の効率性を追求 できること。年間作業時間がほかの産 地に比べ半分程度にまで減少したとい うデータもある。安定的な経営が実現 し、地域の若者も農業に戻り、ある地域 では就農者の平均年齢がなんと17歳 も若返っているのだ。

これまでも、これからも進 化を続け る茶 産 地 育 成 事 業 。大 分 県では、伊 藤 園 が 県 や 市と協 定を結び 、より幅 広い関係者との協力で事業を推進し ている。現 在は、2 0 0 6 年 から開 始し た当 初 の 1 0 0 ヘクタールの 計 画をほ ぼ 達 成 。2 0 1 2 年 1 1月にはさらに1 0 0 ヘクタールの造 成 へ 向けた協 定を新

たに結んだ。「 生 産 地の方々と上 手く

※1 伊藤園は、日本の荒茶生産量の約24%(2013年度 実績)を取り扱っています。

(6)

有識者と関係者が語る

「茶産地育成事業の意義」

このような伊藤園の取り組みは、社会からどう見られているのか。

その意義と期待について、有識者と関係者から話を伺った。

一 般 財 団 法 人 C S Oネットワーク事 務局長で理 事の黒田かをり氏はこう語る。 「伊藤園が茶産地の育成に取り組み、品質の良い茶葉を安定的に調達するとと

もに、生産地にも良い影響を及ぼしていることは、まさに伊藤園が本業で培った強 みを活かした地域貢献と言えます。持続的な農業の育成に具体的な形をもって貢献 されている、非常に画期的な事業だと思っています」。

黒田氏の言う本業の強みを活かした地域貢献は、まさに伊藤園の目指す姿であ

る。自社だけが得をするのではなく、茶の生産者も、地域社会にも得がある。「近江

商人の三方よし」の考え方そのものだ。

また、農政の専門家である公益社団法人国際農林業協働協会顧問の東久雄氏 は「日本の農業の問題点は耕作放棄地の増加と就農者の高齢化です。伊藤園が 茶産地の育成に取り組むうえで、耕作放棄地を有効活用して茶園を造成し、雇用も 生まれているのは、非常に価値のあることだと思います」と伊藤園への期待を述べ た。近年増加傾向にある日本の耕作放棄地は深刻で、イノシシ、シカなど有害鳥獣の 巣になったり、廃棄物が不法投棄されたりなどの問題を地域社会に引き起こすのだ。

この事業には、地元の行政の関心も高い。本事業第一号以来、最もお付き合い

が長い宮崎県。河野俊嗣宮崎県知事は、こうコメントを寄せる。「県内の主要産地

である都城市で、地元JAとの連携によって、伊藤園の茶産地育成事業が大規模に 展開されており、遊休農地の活用や大規模化による生産コストの削減、契約栽培に よる経営の安定化等、地域農業の振興、雇用の創出につながる取り組みとして期待 しています。今後とも、国内はもとより海外においても、いっそうの緑茶のPR・消費拡

大が図られることを期待いたします」。

広瀬勝貞大分県知事は、「2006年に計画した伊藤園さん向け100ヘクタールの

茶園造成が達成できる見込みとなりました。生産者にとっては、安定した価格で全 量を買い取っていただけることから、長期的な展望のもと大規模経営が成り立つ ようになり、雇用の創出にもつながっています。また、耕作放棄地の解消にもつなが り、大変助かっています。このため、2012年11月、さらに100ヘクタールの茶園造成 を行う、2期目の茶産地育成協定を本県、臼杵市、杵築市に宇佐市を新たに加え、

伊藤園さんとの間で締結しました。今後とも、伊藤園さんと生産者、行政の連携が、 いっそう図られることを期待しています」と、大分県における展望を語った。

(7)

安全でおいしい製品で、

お客様に笑顔をお届けしたい

STORY

2

「伊藤園の飲料はいつ飲んでもおいしいね」。お客様からそう言っていただくために

飲料製造のパートナーと伊藤園とのトレーサビリティ

※1

の確立を含む品質と

環境へのたゆまぬ努力の姿がありました。

製造にまつわる

さまざまな飲 料 製 品を扱う伊 藤 園 にとって、最も大 切な取り組みの一つ 「 品 質 管 理 」。「 お〜いお茶 」を例に とっても、茶 畑、荒 茶 工 場、茶の問 屋・

仲介業者を経て、静岡相良工場で飲 料 用原 料に加 工される。大 部 分の飲

料製造は、外部の飲料製造工場に委 託されている。ここには、伊 藤 園だけ でなく、茶 農 家や飲 料 製 造 委 託 企 業 といった外 部のパートナーも多くかか わっているが、原 料 段 階・製 品 段 階と もに一 貫した品 質 管 理 体 制を構 築し て、安 全・安 心な製 品 づくりを徹 底し ている。

絹村真也は、伊藤園品質管理一部 長である。製品の製造委託先を担当す る品質管理一部メンバーを率いるかた わら、自らも工場に出向き、担当者と顔 を合わせる。伊藤園の品質管理につい

て、絹村はこう語る。「ポイントは2つあり

ます。1つ目は、大部分の飲料製造を外 部のパートナー企業にお願いしている

(8)

左から(株)ホテイフーズコーポ レーション 田中大志氏、東洋製 罐(株)別府慎太郎氏、伊藤園 品質管理一部 絹村真也、鈴木 亜希子。

「最新システムのスムーズな導入 は、三社の連携のたまもの。これ からも協力して、安全でおいしい 製品をつくっていきたい」。

パートナーとの協 働 関 係 が 形となり 3年 前から結 実したのが、容 器のプロ フェッショナルである東 洋 製 罐( 株 )と 共 同 開 発した「 緑 茶 飲 料に最 適な飲

料充填システム」※2である。導入にかか

わった東洋製罐(株)の別府慎太郎氏 は「 初めての試みで、伊 藤 園、製 造 委 託先工場と何度も試作を重ねました。稼 働した時は感慨深かった」と当時を振り 返る。この開発により、味・品質の向上と PETボトルの軽量化など大幅な環境負 荷の低減も実現。品質にも環境にも良い 画期的な技術だ。ホテイフーズでも、この 新製造システムの導入が完了した。

品質、環境への伊藤園の追求には 終わりがない。伊藤園とパートナーとの あくなき挑戦はこれからも続く。 ため、パートナー企業との綿密なやりとり

と、信頼関係が大切だということ。2つ目 は、主力製品であるお茶に関して、茶葉 の調達の履歴が分かる仕組みであるト レーサビリティを構築していることです。

パートナーに粘り強くご協 力をお願い し、現在のレベルにまで到達したのは、

やはり、お客様に安心して伊藤園の飲 料を楽しんでいただきたい、という関係 者の想いと、すべてのパートナーの多 大なるご協力があったからにほかなりま せん」。パートナー企業との協働につい て、長年伊藤園の製品を製造している、 ( 株 )ホテイフーズコーポレーションの

田中大志氏は「伊藤園とは、製品の品 質を守るために、現場で顔と顔を合わ せてやりとりをすることが多いですね。 お互い絶対に妥協することなく、飲料製 造のプロフェッショナルとしてのお付き合 いをしています」と語る。

また、品 質を水 平 展 開 するために、 パートナー企業が一堂に会し、品質や 環境に関することなど、さまざまな悩み や事例を共有する品質会議を開催して

いる。「情報を共有することが大切。パー

トナー企業だけでなく、当社にも良い気 づきを与えてもらう機会となっていて、ま

環境にも配慮する製造方法

※1 トレーサビリティ

生産から販売までの各段階での記録を保管 し、食品とその情報について追跡・調査できる 仕組み。

※2 緑茶飲料に最適な飲料充填システム NSシステム(Non-Sterilant=薬剤を使用しな いという意味)は「常温無菌充填」が可能な どの特色がある。

(9)

省資源

CO2削減 リサイクル

3つの環境配慮

茶殻リサイクル3つの環境配慮

さらり畳

茶殻入り段ボール 容器回収BOX茶殻入り空き

容器包装の改善

従来

ラベル 簡易開封ラベル

茶殻のリサイクルでパートナーとともに日本人の生活の知恵を進化させる

年間約49,000トン。その量のイメー ジがわくだろうか。名古屋市の1ヵ月の ごみ 処 理 量に匹 敵 する。これが 茶 系 飲 料 の 製 造 過 程 で 発 生 する年 間 の 茶殻の量である。

「お客様のために有効活用できない か」この発想が茶殻リサイクルシステム の開発のきっかけであったと安倍は約 15年前を振り返る。ヒントは昔からの生 活の知恵にあった。研究してみると「抗 菌性・消臭性・香り」の3つの有用性があ り、これを活かすことが使命であった。

早 速、茶 殻のリサイクルに着 手した が、大きな壁が立ちはだかる。茶 殻は 多 量の水 分を含 み 腐りやすい。安 倍 のチームは茶殻を乾燥させるなどエネ ルギーを一切使わずに済むリサイクル 方法の開発に乗り出し、ようやく3年後 に水分を含んだままリサイクルすること に成功した。

茶殻リサイクルシステムでの製品化 は、第 一 号の「 茶 配 合ボード」( 茶 殻 を配合した木質繊維板)を使った製品

「さらり畳」(2003年発売)を皮切りに、

この3つの環境配慮と、3つの有用性 に関 連して、第 2 0回地 球 環 境 大 賞 環 境大臣賞(2011年2月)をはじめ、グリー ン購入・循環型社会・地球温暖化防止・ エコプロダクツなどの受賞歴がある。ま た「お茶入りダンボール」が「新日本様 式」100選に選定され、ライフスタイルの 面でも評価されていることが注目される。 紙原料やプラスチック樹脂、建材など

に展開、アイテム数で現在30品目以上 に及んでいる。

最も多く使われているものはレンゴー ( 株 )と共 同で開 発した「 茶 殻 入り段 ボール箱」で現在約2,500万ケースにの ぼる(「お〜いお茶」PETボトル500ml 24本入り、段ボールには約10%の茶殻が 含まれている)。

「これが本業で使っている最も代表

的なものです。『お〜いお茶 』の茶殻を

使った段ボールで出荷することで、伊 藤園の環境配慮が理解してもらえてい

る」と語る安倍。「茶殻リサイクルシステ

ムでは、茶殻配合製品に携わっている 異業種企業の方々との関係が重要で

す。パートナーとともに、省資源・CO2削

減・リサイクルの一石三鳥のシステムを 発展させます。伊藤園の茶畑から茶殻 までの環 境 配 慮をお客 様にご理 解い ただくとともに、お茶成分の日用品への 活用で衣食住の面で豊かな生活につ ながる『ものづくり』へ挑戦するのが私 の役割です」とまとめた。

環境にやさしい「ものづくり」への挑戦

伊藤園では「茶畑から茶殻まで」徹底した環境配慮がなされている。

「茶殻リサイクルシステム」について、生活のさまざまな場面で

お茶の素晴らしさを体感してほしいという想いから始めた

その経緯と展開を、開発一部長 安倍義人が語った。

お客様の声を活かす

伊 藤 園では、お客 様 相 談 室に届く 「 お 客 様 からの 声 」が 全 部 署・全 役

員に共 有される徹 底 ぶりだ。容 器 包 装の要望への対応も迅速に行われる。 「 せっかく分 別しようとしてもラベルが

(10)

有識者と関係者が語る「パートナー企業と

取り組む品質管理・環境配慮」

社会からの関心が高まる品質管理と環境配慮。

自社だけの取り組みにとどまらず、パートナー企業との協働も求められている。

伊藤園に期待される取り組みについて、有識者と関係者から話を伺った。

品質管理問題に詳しい毎日新聞社生活報道部編集委員の小島正美氏は、伊藤

園への期待をこう語った。「『安全・安心』と言われますが、安全と安心は違う。セット

で語らず、『安心』ではなくて『信頼』という言葉を使ったほうがいい。科学的にここま

で伊藤園は安全を絶対的に追求しているので、あとは情報の公開を徹底している伊 藤園の姿勢を信頼してください、という訴求がいいのではないか。また、伊藤園は委 託先とも連携してきちんと品質管理を行っているので、今後、私たちメディアや消費 者団体の方たちとのコミュニケーションと発信強化が重要です」。

「これからは、環境と経済と社会がWin-Win-Winでなくてはならない」と語るの は、明治大学法学部教授の西尾哲茂氏だ。西尾氏によると、これまでは環境と経済 のトレードオフを解消することを目指していたが、これからはそこに社会という新たな 視点が入ってくるという。環境問題に取り組む中で、どう社会にも貢献していくかにつ

いて、こう示唆している。「本業を通じての社会貢献は、消費者対応・環境対応はもと

より、雇用や地域社会のことも考えて関係者と協働していくのが本道だと思います。 世界のティーカンパニーを目指すには、雇用・地域・環境ともWin-Win-Winでやって いくという大筋をしっかり踏まえていく必要があります」。

地球環境問題の専門家である、公益財団法人地球環境産業技術研究機構理

事長 茅陽一氏は、「地球環境問題は『持続可能性』の問題であることを再認識す

る必要がある。産業界の責任としては、やはり3Rが重要である」と強調している。

伊藤園の茶殻リサイクルシステムについては、「茶殻には、良い香り・消臭性・抗菌

性などの特性があり、捨てるのはもったいない。茶殻の持つ資源としての特性をうま く利用するこのシステムは非常に意義のある取り組みだと思います。今後は、より寿 命の長い製品に応用して、できるだけ持続可能性にプラスになるような効用を探求 してほしいと思います」と期待を寄せた。

2012年10月、愛知県で行われた「第6回人と自然の共生国際フォーラム」では、

当日の目玉企画「お茶殻折り紙」の折り紙教室を実施。(株)トーヨー社長 眞下安弘氏

はこう振り返る。「愛知万博が開催された『自然・環境』という言葉が最も合う場所で

『 折り紙 』と『お茶 』という後世に伝えるべき日本の伝統を、参加者の皆様に発信で きたことは大変素晴らしいことだと考えております」。

※茶殻リサイクルシステムの受賞歴

(11)

ルート営業の道中、ロードレポーターと して活躍する栗原政伸(浦和支店)。 「 仕事をしながら、地域社会にも役

立っている。そう実感できることが仕 事のやる気にもつながっています」。

「いつでもどこでもお客様にはおいし い飲料を楽しんでほしい。そのため、 製品在庫の過不足が発生しないよう にすることが私の使命」と語るのは、 村岸弘(浦和支店)。5S活動を通じ て、スムーズな製品の出し入れなど、 倉庫内のチェックに余念がない。

STORY

3

営業社員の

「STILL NOW」の精神を合言葉に!

(12)

お客 様と顔をあわせて、コミュニケー ションを取れるのが伊 藤 園の営 業の 特長。「『青木さんには安心して任せら れる!』と評価をいただいたときが、この 仕事をやっていてよかったなと実感す る瞬間です」。営業一筋18年の青木 靖雄(浅草支店)。

「ロードレポーター」※をご存知だろう

か 。道 路の穴ぼこ、ガードレールの破 損、歩道のでこぼこなどを発見し、県土 整 備 事 務 所に通 報するいわば、道 路 の見張り番である。

浦和支店の栗原政伸は、営業車で 製品を自動販売機や販売店に納品す る道中で、このロードレポーターとして 活躍する営業社員。

「会社の営業車を運転するということ は、伊藤園の看板をつけて街中を走っ ているということ。運転マナーに気を配 るのは当然ですが、さらに地域の役に 立てていることがうれしい。自分の運転 や行いが伊藤園の代表としてみられて いることを意識しつつ、これからも安全 でエコな運転を心掛けたい」と語る。

全国2,600名ものルート営業社員が、 日々お客様を訪問し、直接コミュニケー ションを取るのが伊藤園流の営業であ

る。「お客様が本当に何を望んでおら

れるのか、何を不満に思っておられる のか。直接お客様と顔を合わせること で分かることがあるのがルート営業。そ のルート営業を事務面で支え、電話に よる発注やお問い合わせなど、お客様 の最初の窓口となるのが、われわれ拠 点の内務担当者です」と語るのは浦和 支店の村岸弘だ。

「また私たちの支店では、5S(エス) 活動を推進しています。これは『 整理・

自動販売機やお客様の売り場は、伊 藤園がお客様に製品をご提案でき、自 分たちの考えを表現できるキャンバスの ようなものである。真っ白いキャンバスに 絵を描くように、場所や季節、売れ筋を 分析しながら、自動販売機の製品構成

や売り場の提案をする営業社員。「最

近は省エネ型自動販売機や社会貢献 型自動販売機の要望も増えています」 と語るのは、浅草支店の青木靖雄だ。

「お客様や地域のニーズが多様化し ている中、自動販売機を含め、常に売り 場を魅力あるものにするため、お客様と のコミュニケーションを第一に考えてい ます。このコミュニケーションの中から生 まれた一つの例として、私の支店では、

浅 草の浅 草 寺で『 お茶のいれ 方セミ ナー』を継続的に実施しています。お茶 と文化のつながりを感じていただき大 変好評を得ています」と笑顔で語った。

地域の安全と笑顔を守る

基本の積み重ねを大切に

お客様目線での提案を

※埼玉県ロードレポーター

県と協定を締結した企業や団体のドライバーが、 国道および県道の損傷や障害、ガードレールの 破損、歩道の段差などの不具合を発見した場合 に県土整備事務所に通報する制度。

(13)

小川

 愛知県豊川市では、2013年に大 きな「食」のイベントがあったようですね。

藤上

 先日、CSR推進部長と一緒に

豊川市長とお会いしました。市長もこの イベントを重視しています。豊川市はお

稲荷さんの街で、「いなりん」というキャ

ラクターもいるんですよ。

小川

 企業も応援しやすい「プラット

フォーム」的なものですね。

藤上

 豊川稲荷は日本の三大稲荷の

一つに称されています。さらに「『 豊川 いなり寿司 』で豊川市をもりあげ隊」と いう組織もあります。また「お〜いお茶」

小川

 お客様の社内報に伊藤園のこ

とを取り上げていただいたそうですね。

太田黒

 商談で伊藤園の取り組みを

お話ししたところ、ぜひ加盟店様の会 員への会報の中で紹介したいというこ とで、掲載していただきました。また、コ ンビニエンスストアチェーンのある店舗 では、内装材に茶殻リサイクルの茶殻 ボードを使用していただいています。

小川

 製品だけではなくて会社の取り組

みをお伝えすることが大事なんですね。

太田黒

 この製品をつくっている会社

はどのような会社なのか、どのような社

支店では、地域が大事にしていること に寄り添い、地域で真に必要とされる パートナー企業を目指していきます。

小川

 中部地域営業本部は、2年続け

て社内の「CSR大賞」を受賞しましたよ ね。ますますのご活躍を期待します。

客様の目線に立つ」です。この地道な 活動が、いつも重要だと思っています。 と「いなり寿司」の相性がいいこともあ

り、伊藤園と豊川市はとても良い関係 です。前任の堀浩士郎支店長時代か らの人と人のつながりもあります。豊川

会貢献活動をしているのかなど、お客 様はとても関心を持っています。伊藤園 の取り組みを、自分の言葉で説明でき るように心掛けています。製品の知識 はもちろんですが、伊藤園の取り組み についても勉強しています。企業の取り 組み内容を紹介する冊子やパンフレッ トはすごく大事ですよ。

小川

 営業活動で重要なことは何で

すか。

太田黒

  伊 藤 園の「 お客 様 第 一 主

義」の根幹は、「お客様との接点を大切

にする」「訪問をしっかりする」「常にお

「最前線レポート」 お客様のもとへ笑顔を

届ける「お客様第一主義」の実践

地域密着型の営業をしているルートセールス、大手企業を担当している法人営業、

コンビニエンスストアやスーパーなどを担当している流通営業など、

さまざまな顔を持つ伊藤園の営業部署。

最前線で活躍する営業社員をCSR推進部の小川愛実が取材した。

地域に溶け込む

地域営業統轄本部豊川支店長藤上 泰樹

お客様との接点を大切に

広域CVS営業本部CVS営業一部太田黒 昌

※山脇実豊川市長(写真右・左は藤上)のコメント 「当市では2013年6月1日で市制70周年を迎え、

(14)

小川

 お客様との最近の話題は何で しょうか。

島田

 茶殻リサイクルに関心があるお

客様が多く、最近は茶殻リサイクル製 品を使った企画もご提案しています。

小川

 自動販売機で社会貢献してい

る事例があるそうですが。

島 田

 私の本 部で取り組んでいる、

障 がいを持 つ 子どもたちを支 援して いる「 おぎゃー献 金 基 金 」へ の 寄 付 型自動 販 売 機 があります 。伊 藤 園は 2003年からの支援が評価され、同基 金の5 0 周 年 式 典に招 待され 感 謝 状

小 川

 ワーク・ライフ・バランスの特色

ある例として、広報部の角野友哉さん ( 写 真 )が、全 国 紙で取り上げられた

そうですね。

松 重

 その通りです。人事部が先頭

に立ち、ワーク・ライフ・バランスやダイ バーシティの推 進に積 極 的に取り組 み、働きやすく働きがいのある環境を整 え、社員満足の向上に努めています。 そしてこれからも、社員全員が経営理 念である「お客様第一主義」を実践し、 お客様のことを常に考える「人にやさし い会社」を目指したいと思います。 を授与されました。

小川

 継続性が大事ですね。中部地

域営業本部では、日本赤十字社愛知 県 支 部および設 置 先と連 携して寄 付 型自動販売機を展開しています。これ も「人にやさしい」自動販売機として注 目されています。

松重

 サマータイム制度導入を機に、

就業時間を9時〜17時半から8時半〜 17時に変更しました。この結果、角野 さんは30分早く退社し、お子さんを保 育園へ迎えにいくことができるようにな り、ご家 族に喜ばれています 。また国 際 一 部の鈴 木 彰 斗さんは、この3 0 分 を語 学 勉 強に充て、今は語 学を活か せる部署で頑張っています。

小川

 お客様に気持ち良く接していく

ためには、社員が元気でないといけま

せんよね。「お客様満足度向上」のた

めにも「社員満足度」が重要ですね。

「人にやさしい会社」へ

人事部人事課長松重 淳介

お客様のニーズに応える

広域法人営業本部広域法人営業三部島田 一輝

※公益財団法人日母おぎゃー献金基金専務理事 力武義之氏(写真中央・右は広域法人営業本部 長の小野寺達哉、左は松山支店長の前野淳哉) のコメント。

(15)

STORY

4

「お客様第一主義」はグローバルスタンダードだ!

北米市場に「お〜いお茶」を広めた角野賢一。

伊藤園の地道な営業スタイルを基に、新たな発想で新規開拓に挑む姿がありました。

角野賢一の

アメリカはサンフランシスコのシリコン バレーのとあるIT企業。彼らのデスクに は、日本でおなじみの「お〜いお茶」が 並んでいる。

「すごくおいしいよ。飲みやすく、甘く

なくて、健康にいいんだ」「お茶は毎日

飲んでいるわ。お茶本来の香りがして、

とっても好きよ」「アメリカ人は炭酸飲料

が大好きなんだ。でも、僕は健康に気を つかってお茶を飲むようにしてるよ」。

アメリカで販売されているお茶といえ ば、ほとんどが砂糖入り。しかし、社会 的な肥満問題を背景に、アメリカ人の ヘルシー志向が高まり、甘くない無糖の

緑茶に注目が集まっているという。そん なサンフランシスコでの「お〜いお茶」 ブームの火付け役が、角野だ。これほど までに受け入れられるようになった彼の

挑戦は、4年前にさかのぼる。

(16)

角野賢一

ITOEN(NorthAmerica)INC.

「 売り場には時 間が許す限り行くように しています。取引先や実際に飲んでいた だいているお客様の声に耳を傾けること が伊藤園の営業スタイルの基本ですか らね」。

「お客様第一主義」はグローバルスタンダードだ!

「2009年に渡米した当初は、全くコネ クションがありませんでした。ターゲット 会社をリストアップし、アポイントメントな しでの飛び込み営業をしていましたが、 うまくいきませんでした」と、角野は苦笑

いをする。そんな時に出会ったあるIT 企業の知人から「シリコンバレーで成功 したいなら、エンジニアの友人をつくっ て、彼らから情報を得ていくしかないよ」 とのアドバイスをもらった。

そこから、角野の試行錯誤の営業が

始まったのである。「夜な夜なバケツと

氷、そして伊藤園のお茶を持って、IT 関連のエンジニアが集まる勉強会やセ ミナー、イベントへ足を運んだんです。

はじめのうちは、相手にもされず、なぜ こんなところでお茶をふるまっているん だ ? という反応でした」と、当時を振り 返る。しかし、毎日、毎週のように足しげ く角野は営業活動を続け、次第に製品 の良さが伝わり、ファンになってくれる方 も増えていった。そして、角野は大きな チャンスをつかんだ。知り合ったエンジ ニアの方々が、各IT企業の担当者を探 し出し、紹介してくれたおかげで、伊藤 園の製品を各社に置いてもらえること になったのである。

角 野 が 新 天 地 で 結 果を残 せ たの は、日本での経験によるところが大きい

ようだ。「アメリカに来て、日本で苦労し

た経験が本当に活かされました。自分 にしかできないことは、それまで日本で もやってきた泥臭く人とかかわっていく

営業だと思いました。もし日本で苦労し た営業経験がなければ、こんな泥臭い 営 業はしていなかったと思います 」と 話す角野。それから、渡米する時に人 事部門のトップに言われた言葉も頭に

残っていた。「角野君、君が行くことで

売上が2倍、3倍になるとは思っていな いよ。そうではなく、君が行った足跡み たいになるモノを残してきてくれ」とい う言葉だ。

角野は今日も取引先の企 業を訪ね て、売り場のチェックやお客 様のご要 望に耳を傾けている。そんな角野のこ れからの目標は、「『 U n s w e e t e n e d T e a( 無 糖のお茶 )=お〜いお茶 』と いうところまで持っていきたいですね。 みんながお茶を飲みたくなった時に、 『 お〜いお茶 』飲もうよって言ってくれ

るようになったら本当にうれしいです」 と語り、次の取引先に向かって走って

いった。

(17)

日本食文化にまつわる

小 泉 武 夫 氏 が 警 鐘を鳴らす日本 食 文 化の  危 機と伊藤園への期待

変わりゆく日本食文化と日本茶の可能性。食の世界遺産として

「和食」の登録に尽力された専門家小泉氏が、伊藤園への期待を交え語りました。

STORY

5

「この6 0 年 間で日本の食 生 活は激 変している」。

小泉氏は、発酵学者であり、醸造学 や世 界の食 文 化 論 、さらには農 業や 町づくりにも造詣が深い、食文化の世 界的なオピニオンリーダーである。

「 油 脂の摂 取 量 がこの6 0 年で4 . 7 倍、肉の消 費 量が3 . 6 倍 。昔ながらの 日本食といえば、低タンパク、低脂肪、

低カロリーであったが、戦後、急速な食 の欧米化が進んでいる」と、日本の食 生活、さらには食文化継承の難しさを 危惧していた。小泉氏は、このような状 況を「長い年月をかけて受け継いでき た日本 人のD N Aに逆らった変 化とも 言えます。だから、昔はほとんど見られ なかった、高 血 圧 や 糖 尿 病などの生 活習慣病が増えているのです」と、警 鐘を鳴らしている。

日本 食を「 食 の 世 界 遺 産 」として 「 和 食 」という無 形 文 化 遺 産 の 登 録

に尽 力された小 泉 氏は、「日本とは反

対 で、世 界 は 今 、和 食に向 かってい る。和 食を形 成 するさまざまな食 材 、 食べ物、飲み物などが、世界中から注 目を集めています。和 食は人 類にとっ てそれほど価値のあるものであり、中で も、お茶の可能性に私は期待していま す」と語る。昨今のお茶の消費量の増 加は、和食への回帰現象ではないか、 との分析も付け加えた。

危機に瀕する日本食文化

小泉氏がお茶に着目するのは、単な

る飲み物としてだけではない。「お茶と

いうのは、実際に飲んでおいしいという ことばかりでなく、心の問題なんです。

お茶の素晴らしさとは何か

例えば、朝早く、静かな名刹の朝霧の 中で一人お茶を飲む。お茶の良い香り と味に身を委ね、目に見えない世界に 身を置く。つまり、日本文化で言うところ の侘・寂(わび・さび )、一 種 独 特の世 界観と哲学も持ったものなのです。そし て、心を落ち着かせる」。

その継 承の役 割を担うのが、伊 藤 園独自の社内資格ティーテイスター制 度である。「 伊 藤 園の社 員 が 町 や 地 域に出かけていって、本当においしい お茶をふるまったり、お茶のおいしい いれ 方 やお茶の作 法 や 文 化 的 背 景 も伝えているのは、日本の食文化や伝 統の継承という観点から、本当に素晴 らしい活 動だと思います 。どんどん人 材 育 成して、世の中に広めていくこと

が 期 待されている。お〜いお茶 新 俳 句大賞も、俳句というものをより身近に した非常に良い事例だ」と。小泉氏は

さらに、「日本文化の心を強く反映した

(18)

小 泉 武 夫 氏 が 警 鐘を鳴らす日本 食 文 化の  危 機と伊藤園への期待

小 泉 氏は最 後に、中国での興 味 深 いエピソードについて語った。

「中国には、汾酒(フェンチュウ)とい う、フルーティな香りのする焼酎があり、

山西省杏花村にあるその工場を訪れ た時のことです。工場長に工場を案内 していただき、帰り際に記念の色紙を書 いてくれ、と頼まれたんですね。私は、汾 酒のおいしさに感動して、こんなに素晴 らしいお酒はないという意味を込めて、 『 一滴在心 』と書きました。汾酒の一滴

一滴に心があり、私の心を揺さぶるよう なお酒でした、という気持を表現したの です。すると、工場長は、それではダメ ですと。それでは、一滴にしか心がない

「滴滴在心」でお茶づくりを

という意味になる。一滴だけ良いものを

つくり、あとは適当になってしまってはい

けない。われわれは、『滴滴在心』という

気持ちでつくっている。つまりすべての 汾酒に心を込めているのです、と」。

「伊藤園さんには、工場長の『 滴滴 在心 』の言葉に倣い、心を込めた製品 をこれからもつくり続けてほしい」と、小 泉氏はエールを送った。

小泉武夫氏

東京農業大学名誉教授

「 食の世 界 遺 産 」登 録に向けた検 討 委 員会委員、農林水産省料理人顕彰制度 審査委員、全国地産地消推進協議会会 長(以上 農林水産省)、発酵学者、食の 文化論者。

日本経済新聞にて「食あれば楽あり」を連 載、他著書多数。

※伊藤園は、日本食の世界遺産化の応援企業で あると同時に、農林水産省料理人顕彰制度「料 理マスターズ」も応援しています。「料理マスター ズ」とは、日本の「食」や「食材」、「食文化」の素 晴らしさや奥深さ、その魅力に誇りとこだわりを持 ち、生産者をはじめとする地域の方々と協力し、さ まざまなことを行ってきた各界の料理人等を表彰

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「滴滴在心」の話を励みに

100年後、1000年後の日本文化発展のために

緑茶飲料の企画責任者で、ティーテ イスター1級を持つ志田。小泉氏の話 をステークホルダーダイアログで聞き、

「大変奥深く励みになりました。『 滴滴

在 心 』という言 葉が特に心に響きまし

た。私もその心構えで、『お〜いお茶 』

のさらなる進化に向けてがんばりたい と思います」と意気込みを、社長を含む

出席者を前に発言した。

「日本の食文化は、多様で豊富な旬 の食材、栄養バランスのとれたメニュー

「お〜いお茶新俳句大賞」がスター トした1989年当時は、松尾芭蕉の「奥 の細道」紀行300周年であり、歌人・俵 万智さんの「サラダ記念日」が人気とな るなど、伝 統 的な短 詩 形 文 芸 への関

心が高まっていた。「俳句や短歌の市

民講座に人気が集まっていましたが、 作 品を発 表する機 会がほとんどなく、 どこかでその成果を発表したいという

声が多くありました。そこで、『 お〜い

お茶 』のパッケージを発 表 媒 体として

日本茶文化と伝統文化の伝道師、伊藤園

活用できないかと考えたんです」と横 田は語る。日本の伝統文化である俳句 を、季 語や五・七・五の定 型など創 作

上の制限を設けず、多少「字余り」「字

足らず」であってもよしとし、感じたこと や思ったことを誰もが自由に表現できる

「新俳句」が生まれたのだ。「お茶とと

もに日本の伝統文化の継承にも大きく 貢献することができると考えています」

日本の生活や文化と深くかかわる「お茶」を取り扱う伊藤園。

「お~いお茶」の企画責任者、商品企画一部長 志田光正(左)と

「お~いお茶新俳句大賞」にかかわってきた

広告宣伝部広告宣伝課長 横田功(右)が、その想いを語った。

ということだけでなく、食と年中行事や 人生儀礼との密接な結びつきなど、世 界的に見ても特徴的であり、文化的多 様性の観点から大きな意義があるもの だと思うんです」と志田は分析する。伊

藤園が、「料理マスターズ」や「和食文

化の保護・継承」の応援をしているの はこの観点からだ。今後もティーテイス ターの有資格者を中心に、お茶に関す る情報を積極的に発信し続ける。

と横田。お茶と日本文化の継承をうまく 組み合わせたのである。

この新 俳 句 大 賞 、老 若 男女を問わ ず、近年160万句以上の応募があり、 第 1 回から2 5 回までの累 計 応 募 数は 2,620万句以上で英語俳句の応募も多 くある。日本の伝統文化である「お茶」と 「俳句」をより多くの方が気軽に親しめ

る機会となっているのだ。そればかりで なく、新俳句は学校教育でも取り入れ られるなど、子どもたちの表 現 力の育 成、情操教育に適した題材として活用 され、伝統文化を支える基盤層の形成 にも一役買っている。100年後、1000年 後の日本の茶文化発展と世界のティー カンパニーを目指して-。日本文化を 守り、広く社会に伝え、次世代につなげ るための伊藤園の取り組みは続く。 第1回お〜いお茶新俳句大賞募集広告

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「第24回お〜いお茶新俳句大賞」で文部科学大臣賞(受賞句:「新幹線秋を真

横に走ってる」)受賞者の愛知県の新谷英二さん(12歳)の受賞のコメントは、「昨

秋、一泊二日の修学旅行で京都・奈良に行った時、新幹線から紅葉がスピードに のって真横に流れていくのが見えました。その様子を、帰 宅 後 句に残し新 俳 句 大 賞に応募しました」。新谷さんは普段から俳句、短歌などをメモ帳に書き残したり しているそうで、お兄さんが第22回新俳句大賞で佳作特別賞に入賞したことが きっかけで今回応募をしたそうだ。

また、審査員である俳人の金子兜太氏は、「伊藤園の俳句は特別で、今までの俳

句とは少し違います。新鮮な感じで、これが現在の俳句というものなのかもしれませ ん。新しすぎたり、奇抜すぎるものもあると言われてきましたが、次第に馴染んできま した。あとしばらくすると、俳句の現在の姿は伊藤園の俳句だよと確信を持って言わ れるようになるのではないでしょうか」と、日本の伝統文化である俳句の振興に役立

つと同時に、「新俳句」という新たなジャンルの創出にも寄与していると見ている。

さらに日本の食文化やお茶文化の普及等に関して、異文化経営学会会長およ び桜美林大学経済経営学系教授で、多様性と異文化が専門の馬越恵美子氏は、 「日本の生活や文化と深いかかわりのあるお茶文化の普及・啓発活動、さらには食

文化の応援等、伊藤園の取り組みは、現代の日本人が忘れかけていることを再発 見する一つのメッセージであるととらえています。世界のティーカンパニーを目指す 伊藤園が、日本文化のアイデンティティを大切にすることは非常に重要なことだと思 います。私は先日南極まで旅行に行ったんですよ。私も日本茶が好きですが、海外の レストランではあまりおいしい日本茶が出てきたことがありません。個人的な期待で すが、Green Teaと言えば、伊藤園でつくっているようなお茶がどこにいても飲めた

らいいなと期待しています」。また、「私の感覚で言えば、伊藤園は『誠実』、英語で

『Integrity』というんですが、それに該当するイメージですね」と出席したステーク ホルダーダイアログで締めくくった。

「お~いお茶新俳句大賞」関係者と

異文化交流の有識者からのコメント

このような伊藤園の取り組みは、日本文化の伝承や現代社会に

どのような影響を与えているのか。

「お~いお茶新俳句大賞」関係者や

異文化コミュニケーションの観点でいただいた

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伝えたいのは「お茶を通じたおもてなしの心」

社外の方から見た伊藤園のイメージ

は、「お茶の会社」。そのイメージに応え

られる知識、スキルを社員は身につけて いるだろうか。一人ひとりが自信を持っ て、お茶についてお客様にお伝えする ことができるだろうか。そんな問題意識 がきっかけとなりスタートした「ティーテイ スター制度」。お茶の会社として、お茶 のいれ方は当然のこと、お茶の成分や 効能、産地、歴史、マーケットに至るまで、 「お茶のプロフェッショナルたれ」という

会社の姿勢を社員に理解・共感しても らい、さらには社会に広める役割を担っ てほしいという願いを込めて、1994年に 始まった制度で、難易度は高い。試験 は、筆記試験とプレゼンテーション能力、 目、鼻、舌、手でお茶の種類や品質を識 別する検茶試験や面接試験と、社内資 格とはいえ本格的だ。

「うわべの知識だけでは、お茶の深 い魅力をお客様にお伝えしきれないと 感じたのが、勉強を始めたきっかけで

す」と語る浜田。「入社3年目に百貨店

当然、ティーテイスターは資格を取る ことが目的ではない。各地でお茶のい れ方セミナーなどを開 催し、お茶の魅 力について、できるだけ多くの人に伝

える伝道師としての役割を担う。「どう

やったらもっとお茶を好きになっていた だけるかという気持ちでセミナーを実施

しています」と浜田。「セミナーの対象

者は、主婦、小中学生や料理学校の生 徒さん、企業の秘書室の方々など、さま ざまです。内容もそれぞれにあわせて 毎回検討します。伝え方やマニアック度 ( 笑 )を参 加される皆 様によって変 更 するわけですが、どんなセミナーでも変

わらず基本にしているのは、『お茶を通

じたおもてなしの心』なんです」。 この、おもてなしの心がつなぐ人と人

の輪。そして、「お茶の魅力を多くの人

に伝えたい」と同じ想いを持つ社員の 輪。このお茶を通じた人と人の輪は、地 道に、しかし確実に広がっている。 部 へ 配 属となったのがきっかけで、お

茶に興味を持つようになりました。それ までは自動 販 売 機 担 当で、茶 葉に触 れることなどなかったんです」と当時を 振り返る。

「通常業務がある中で1級を目指す のは大 変でしたが 、周 囲 の 応 援もあ り、達成することができました。合格で きたと分かったときは、うれしいというよ

り、『さあこれからだ』と、身が引き締ま

る思いでした」。

浜 田を含め6 名 がティーテイスター 1 級を取 得している。この仕 組みにつ いて、毎日新 聞 社 の 小 島 正 美 氏は、 「ティーテイスター1級が生まれたのは

大変なことだ。今後の伊藤園の底力に 期待したい」と感想を寄せている。世界 のティーカンパニーを目指す伊藤園に とって、心強い戦力となっている彼ら。

1級は緑茶はもちろん紅茶などお茶全 般について学んでいく。2013年8月には 浜田ともう1名がスリランカでの現地研 修に派遣された。

プロフェッショナルとしてお茶を極める

伊藤園にはティーテイスター制度という社内資格制度がある。

資格取得を目指し、社員が日々切磋琢磨するというティーテイスター制度。

2013年5月に難関の試験を突破し、見事1級を取得した商品企画一部 浜田ゆみ子が

この資格の魅力を語った。

(22)

静岡県 牧 之 原 市にある伊 藤 園中央 研究所。ここでは、お茶に含まれるカテ キンやテアニンなどの成分の研究や、健 康効果についての実証試験を行ってい

る。課長を務める卯川は、こう語る。「中

央研究所では、お茶の基礎的な研究に ついて、長年にわたって取り組んできま した。これまでの実 績を基 盤として、体 脂肪やコレステロールが気になる方など に向けた、特定保健用食品の製品開発 なども行っています」。体脂肪とコレステ ロールの2つの働きを訴求できる特定保 健用食品を持っているのは伊藤園だけ

だ(2013年8月末現在)。「研究には、大

大 学で医 食同源について取り組んで いました。伊 藤 園の取り組みはこれと 相通じるものがあります。今後も、健康 性の高いお茶の研究をさらに究めてい ただきたい」と期待を寄せた。 学や研究機関などのパートナーの協力

が欠かせません」。伊藤園が世に提供 する健康価値の研究においても、パート ナーとの強固な信頼関係が鍵となって いるのである。さらに卯川はこう続ける。 「 私たちが長 年 地 道に取り組んできた

研究の成果が、日本だけでなく、アメリカ でも受け入れられつつあります。これから も、世界の人々の健康ニーズに応える研 究を目指し、健康価値の向上につながる 提案にチャレンジし続けたいですね」。

一 方、伊 藤 園のこのような取り組み を、社 会はどう見ているのか。元 北 里

大学副学長 陽捷行氏は言う。「私は、

お茶の健康価値を究め、世界に向けて発信したい

「お茶のことならす べて、私たち伊 藤 園にお任 せください」。そう語るの は、リーフ製 品や茶 器などを扱う日本 茶専門店「伊藤園」を担当する、この

道14年の青木だ。「私たちが提供して

いるのはお茶という製品だけではあり ません。お茶を通してお客様に豊かで 楽しいひと時をご提供したいと思って います。試飲していただいたお客様か ら『ありがとう』と笑顔で言っていただ けた時に、この仕事の醍醐味を感じま すね」と話す。このような取り組みにつ いて、公益社団法人国際農林業協働 協会の東久雄氏も「新たにできた神奈

のお茶に対する想いをできるだけ多くの 方々にお伝えしたい」と意気込む青木。 「そのためにも、おもてなしの心とは何

かを考え続け、お客様から愛される店 舗をつくっていきたい」。

川県長津田の伊藤園の店舗に買い物 に行ったことがあるのですが、単にお 茶を購入できる場所というだけではな く、お茶の魅 力や関 連 製 品 全 般に触 れられる場 所だと感じました。一 般の 生活者が気軽に立ち寄れるので、まさ に『お茶の魅力の発信基地 』として非 常に有効だと思います。小売部門まで 有していることが伊藤園のもう一つの 強みなのではないでしょうか」とその意 義を語る。

「これからも、直 接お客 様とコミュニ ケーションが取れる販売店の特長を活 かして、お茶の魅力の奥深さ、伊藤園

お客様に直接お伝えしたい「お茶の魅力」

専門店一部第一課長青木 大

(23)

「はまってけらいん かだってけらいん」

STORY

6

お茶でつながる心と心。笑顔の輪を広げるために

試行錯誤で始まった東日本大震災被災地における「お茶っこ会」をご紹介します。

(24)

「今日は、家庭科の時間として、みん ながあまり知らないおいしいお茶のい れ方など、伊藤園の方が教えに来てく れました。しっかりとお茶について学び ましょう」。担任教諭 村上直子氏の声 が教室に響く。

岩手県陸前高田市にある米崎小学 校。東日本大震災での大津波の被災 をぎりぎりのところで免れたこの小学校 には、今でも校庭に仮設住宅が立ち並 ぶ。2013年3月8日、震災から丸2年を 迎えようとする日に、6年生の教室では 「卒業お茶会」と称した「お茶っこ会」

が開催された。講師役の地域販売促 進部 今野哲は、30名の児童たちを前 に少し緊張した面持ちだ。おいしいお 茶のいれ方を、さまざまな実演やクイズ

を通して体験してもらう。さらに、「茶殻

の活用は生活の知恵で環境にも大切」 と、茶殻リサイクル製品も提供された。

「 子どもたちがお茶に興 味を持ち、 笑顔になっている姿をみているうちに 胸が熱くなりました」と今野は、後日そ の感想を語った。

この「お茶っこ会」、伊藤園の社員が 講師となって、被災地で仮設住宅を中 心にお茶のいれ方教室を開くというもの だ。その回数は、2011年11月〜2013年 7月で累計76回を数える。

米崎小学校の「卒業お茶会」は、震 災が起こる前には、毎年、礼儀作法を

学ぶ機会として行われていた。「震災

があってからはお茶 会ができなくなっ ていました」と話すのは佐藤圭子校長

(当時)だ。「そんな時、伊藤園さんか

ら『お茶のいれ方教室ならできます』と 声をかけていただき、お茶を通した癒し の場、学びの場は児童にも先生にも良 いと思い、開催をお願いしました」。

このような取り組みについて、戸羽太

陸前高田市長は、「米崎小学校だけで

なく、仮設住宅を中心に何度も実施し ていただいている『お茶っこ会 』。われ われに寄り添って活動してくださるのが

大変ありがたいですね。私たちも、『は

まってけらいん かだってけらいん運

動』※を推進していて、被災者の方々が

気軽にみんなの輪に入り、お話する機 会を増やすことを進めているんです。 伊 藤 園さんの『 お茶っこ会 』でもこの 運動のオレンジ色ののぼりを立てて実 施してください」と語る。というのも、震 災からの復興は、これまで以上に被災 者の心のケアが大切になってきている

のだそうだ。「住民の方々が気軽に交

流できる場づくりをお手伝いしていきた い」と意気込む今野。

被災者の方々の心をつなぎ、笑顔の

輪を広げるために―。被 災 地 域の

歩 調に合わせた伊 藤 園の活 動は、こ れからも継続されていく。

ともに歩む被災地と伊藤園

※はまってけらいん かだってけらいん運動 陸前高田市の保健・医療・福祉関係者により推進 されている、人々が「はまって(参加して一緒に なって)かだる(話をする)」ことを目指した運動。 ※ 写真は陸前高田市矢作中学校仮設住宅での

(25)

お茶を通じて、一日も早いコミュニティの復興に役立ちたい

全国に営業拠点を持つ伊藤園。震 災による人 的 被 害はなかったものの、 岩手県釜石市にある支店が津波の被

害を受けた。「私たちが持つ製品の在

庫は、災 害 発 生 時には、被 災 者の皆 様への救援物資となる」という創業者 の考えが根 付く伊 藤 園 。震 災 発 生か ら72時間以内には、近隣県の営業拠 点からも在庫の製品が集められ、避難 場所に配られた。そのほかにも伊藤園 らしい方 法で支 援 ができないか社 内 で検 討した結 果 、各 地で実 施してい るお茶セミナー(お茶のいれ方 教 室 ) を活用できるのではないか、というアイ デアが生まれたと今野は語る。東北地 方では、近所の方々が「ちょっとお茶で

も」という時、「お茶っこしようか」という

ところから、被災地でのお茶セミナーは 「お茶っこ会」と名付けられた。

試 行 錯 誤 の中 、2 0 1 1 年 1 1月に岩 手県陸前高田市からスタートした「お 茶っこ会 」だったが 、回を重ねるごと に、地 域での認 知 度も高くなってきて

を大 切にした活 動です 。お互いの活 動の相 乗 効 果も大いに期 待できるの で、今後も一緒にやっていきましょう」と 意義を語った。

そのほか、東 北 大 学との連 携 活 動 や岩 手 県 大 船 渡 市・釜 石 市、宮 城 県 気仙沼市・南三陸町・仙台市内と開催 地域も広がりつつある「お茶っこ会」。 「これ からも人と人とのつながりを大

切に、一日も早いコミュニティの復興を 目指し、できる限りのことを続けたい」

と今 野 。「 私たちがお世 話になってい

る東北のこの地域で、少しでも恩返し ができたらうれしいですね」と話 すそ の瞳は、復 興した被 災 地の将 来の姿 をしっかりと見据えている。

いる。「陸前高田市の戸羽太市長(写

真 左 )にもご 報 告したところ、伊 藤 園 が『 お茶っこ会 』を実 施している様 子 を市のF a c e b o o kでご紹 介していた だきました。同 市の社 会 福 祉 協 議 会 からは、継 続 的に実 施し、お茶を通し て『 人が集まり楽しく語らう場 』を作っ てほしいとのご意見をいただいていま す 。地 域 社 会の仕 組みの一 つとして 認められたようで、いっそう責任を感じ ます」と話す今野。

また、この活動からはさまざまなつな がりが生まれ、取り組みの輪が広がっ ている。臨 床 心 理 士 会との連 携 活 動 もその一つだ。被災地でのメンタル面 の悩み相談を行っていた臨床心理士 会。伊藤園の「お茶っこ会」に臨床心 理士が参加し、心を落ち着けた会話を 楽しむことで、リラックスした雰囲気が 生まれる。宮城県臨床心理士会会長

の高橋典子氏(写真右)は、「伊藤園

の活動と私たちの活動には共通点が 多くあり、笑 顔と元 気につながる五 感

被災地のコミュニティの復興を目指して

2011年3月11日の東日本大震災。

(26)

有識者と関係者が語る

「伊藤園のお茶っこ会の意義」

伊藤園の被災地での取り組みについて、

有識者と関係者に話を伺った。

横浜市立大学CSRセンターLLPセンター長の影山摩子弥氏は、伊藤園が活動を

始めた当初から、アドバイスをいただいていた専門家の一人だ。「伊藤園のお茶セ

ミナーは、この地域の方が溜めているストレスを発散させる意味で、非常に良い取り 組みです。被災地支援は、現地のニーズを把握することが大前提。伊藤園は、CSR の担当役員も現地に足を運び、生の声を聞いて社内にフィードバックしていますが、 これが大事です」と、今後の活動についての期待を語った。

主に被災者の心理的ケアを続けている東北大学大学院のプロジェクトチームが ある。教育学研究科准教授の若島孔文氏らが中心となり、複数名の臨床心理士で 組織するチームだ。2013年2月には、伊藤園の「お茶っこ会」とのコラボレーションが

実現。若島氏は当日を振り返る。「お茶は日頃からとてもなじみがありますし、毎日飲

んでいるものです。このような身近な素材をテーマに、人が集まるということはとても 良いことだと思いますし、コミュニケーションをとるにはお茶はとても効果的です。今 後も新たな展開に期待したいと思います」。

また伊 藤 園は、「 絆プロジェクト」※で継 続 的に被 災 地の支 援を行っている。

達増拓也岩手県知事はこれに謝辞を述べつつ、「お茶っこ会」の取り組みについ

ては、こうコメントを寄せている。「岩手県では、今、全力で復興に取り組んでいます

が、主な課題の一つに地域コミュニティの再構築があります。この『お茶っこ会 』は 地域住民のコミュニティの再構築に大切な役割を担っております。伊藤園さんのこ の活動に対し、深く感謝いたします。今後、できれば活動範囲を広げ、さらに多くの 地域で活動を展開していただければ幸いです。今、被災地以外の地域では、震災 の記憶の風化が懸念されています。このような中、伊藤園さんの被災地に寄り添っ た支援活動が多くの方々からの共感をいただくことを通じて、全国の皆様が長く被 災地に思いを寄せていただくことができればと考えます」。

※ 2013年度お〜いお茶「絆」プロジェクト

伊藤園は「お〜いお茶」全飲料製品の売上の一部を、岩手県は「いわての学び希望基金」を通じて、宮城県は「東日本大震災みやぎこども育 英募金」を通じて、福島県は「東日本大震災ふくしまこども寄附金」として、被災した子どもたちの教育支援事業に寄付している。

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