Author(s)
林, 隆広; アシャリフ, モハマッド レザー
Citation
琉球大学工学部紀要(57): 137-142
Issue Date
1999-03
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12000/1486
double-talk状態でのエコーキャンセリングを
行なう相関LMSアルゴリズムの提案
林隆広*
アシャリフ・モハマッド・レザー・*
Echo-CancelinginDouble-TalkCondition
byDefiningCorrelationLMSA1gorithm
TakahiToHAYAsHI*MohammadRezaAsHARIF* AbstractTheconventionalalgorithmsintheechocancelingsystemfbrhand-fteesetmobUeradiotelephone
havedrawbackwhentheyarefacedwithdouble-talkconditions、ThisconditioncouldmisleadtheefIectivealgorithminfindingtheechopathreplica・Inthispaper,wehavedefinedanewalgorithmfbrtap
adaptationsintheechocancelerbasedoncorrelationfimction(CLMS),wherethenear-endsignalis
existm9.Inthisapproach,thegradientsearchalgorithmisobtaiI1edfromthecorrelationfimctionofthe inputsignal.・That狛,thetapadaptationprocessisperfbrmedinanewlydefinedcorrelationpath,and thencOpiedintotheechopathreplicadigitalfilterThecomputersimulationshowstherobustnessofthe proposedalgorithminthepresenceofdouble-talksigI1al. KeyWOrds:Signalprocessmg,Echocanceling,Adaptivefilter1LMS タップ係数の更新の停止は、更新スピードを遅らせると いう結果をまねく上に、double-talk問題の解決としては消極的である。参考文献[5],[61,[8]では、double-talk問題
の解決方法を提案しているが、計算方法が非常に複雑で ある。 本論文では、double-talkの状況下であるないにかか わらず、タップを固定することなく更新を続けていく新しいアルゴリズム(Correlation-LMSアルゴリズム:以下
CLMS)を提案する。この提案法はsingle-talk状態におい
ては従来のLMSとほぼかわりないものであるが、double‐ talk状態でのエコーパス推定には独自の収束結果を得られた[91,[10]111],[12],[131.
従来法では、入力信号そのものを用いて演算を行なう 代りに、提案法では、信号の相関関数を利用して演算を行 なう点に大きな特徴がある。入力信号の自己相関関数とはその信号のもつpowerそのものであり、いままでのアル
ゴリズムが信号そのものを適応フィルタに通していたこと からすると、大きく異なる処理方法である。本理論の背景 には、far-end信号とneaエーend信号と力湘互関係を持たな いということを前提としており、仮にタップの係数更新が相関関数を基礎とした演算による導出であっても、従来法
以下の収束精度になることはない。CLMSの生命線とも
いえる相関関数を求めるにあたり、ここでは忘却係数を用 いて相関をとる演算法を用いる。 本アルゴリズムの本質は、従来のdouble-talk問題を 解決するアルゴリズムに比べ、複雑さと計算量が非常に 少ないことである。この点でいえば、提案法はLMSアル 1.まえがき スピーカとマイクの間に音響的フィードバックのある hand-free移動体電話やテレビ会議システム等では通信音 声の質がひどく劣化してしまう。これは、ある空間内にお いてスピーカから出力された音声信号が壁などに反射したエコー成分により引き起こされる[1],[2]。このエコー成分
をキャンセルするために適応FIRフィルタによって疑似 エコーを作成する方法が用いられるがエコー成分のインパ ルス応答長が大きいとフィルタの多くのタップ更新を必要 とし、計算量、計算時間ともに大きくなってしまうことが 現状である。これまでのLMS(Least-Mean-Squ麺e),BLMS(B1ock-LMS)[3],[4LFBAF(Frequency-Bm-Adaptive-Filter)(参
考文献[31[4]の筆者によって提唱されたアルゴリズム)と
いったアルゴリズムはエコーキャンセラのタップ係数更新 に幅広く利用されている。しかしながらこれらのアルゴリズムは、far-endからの入力のみがある状態(singletalk
状態)ではスムーズなエコーキャンセルを行なうが、neaエー
endとfaLendの両方に信号が存在する場合(double-talk
状態)では、理想的な収束結果を得ることは困難である。
従来法では、double-talk状態においては係数更新を行な わず、double-talk前の係数を保持する方法をとっている。 受理:1998年11月31日 電気情報通信学会において平成10年12月発表済 *工学部情報工学科 (Dept・ofinfbrmationEngineering,mc・ofEng-)ここでMSEの勾配を求めると
▽んMSE=-2e(汎沖(〃-k)(4)
とし、係数更新式を以下に示す:M〃+1)=んん(〃)-WAMSE
=剛冗)+2脾e(泥)工(〃一k)(5)似=ステップサイズ
この過程がLMSアルゴリズムである。 しかし、従来のLMSを用いるとdouble-talk状態になっ た場合にMSEの収束に対して悪影響を持つという性質が ある。 ゴリズムに最も近いことが言える。5章でのコンピュー ターシミュレーションでは、今回定義したCLMSアルゴ リズムがdouble-talkの環境にある場合でもロバストな収 束を残しているのに対し、Normalized-LMSが同条件下 において発散している様子をいくつか示している。本論文では、以下より2章ではecho-cancelingの背景、3章で
はLMSの目的と櫛成とdouble-talkのシステムと問題点 を説明し、4章では本文で提案するcorrelation-LMSアル ゴリズムの説明を行なう。5章では本アルゴリズムの有効 性をシミュレーションで確認、最後に6章でまとめと今後 の研究課題を述べる。 2Echo-cancelingbackground 2.3double-talkとその問題点 2.1Echo-cancenngsystemこれまではfaェ造endからの入力xのみ(single-talk状
態)であったが、実際問題としてはnear-endからの入力が
ある場合が多い[5],[6118],[15]。このnear-end信号とfar‐
end信号の両方が同時に存在する場合がdouble-talk状態である。Fig.2でいえばs(、)がnem-end信号であり、こ
のs(、)が存在すると所望信号d(、)がy(、)+s(、)となって
しまう。この状態になってしまうと従来のLMSやNLMS では収束スピードが遅くなるだけでなく、収束精度も悪く なってしまうという大きな問題が生じる。提案法ではこの double-talk時の収束精度を従来法よりも向上させること に成功した。3章では提案法であるCLMSの理論につい て説明する。図1にecho-cancelingのシステム図を示す。x(、):入力
信号,d(、):所望信号,90z):フィルタ出力信号,e(、):エラー信
号とする。このとき、e(〃)=。(〃)-,(")を最小にするこ
とが、echo-cancelingの目的である。以下に式を示す。:
J=E[e20z)]
河=Zez(A:)
ん=O 冗=Z[。(I,)-9(府)],(1)
に=0。』は平均自乗誤差,Eは期待値i寅算を示す。
far-end near-end Fig.2.double-taqk状態 LS:LoudSpeaker LEMS:Loudspeaker-Encrosure-Microphone-system 3Correlation-LMSアルゴリズム 3.1CLMSの説明入力データx(、)の自己相関関数を次式で定義する:
Fig.1.echo-cancelingsystem 2、2LMSアルゴリズム 、E錘(水(j-A;)
j=Oz('一k)=oij<k
①…い,虎) (6)2.1で述べた平均自乗誤差J(以下MSE)を求めるため
に現在では、LMSアルゴリズムが幅広く利用されている。フィルタ係数を'2tとおくと出力@は:
N-10(、)=エハ捻鯵("-k)(2)
A=O 求めるMSE(よ:MSE=E[dい)-9(〃)]2(3)
所望応答。(、)と入力信号x(、)間の相関関数もまた次式の
ように表せる: 、の`雪(",k)=Z。(巾(j-A)(7)
j=0判耐
当ト
-1ト
y r LEMS ノ / FIR-filter /|、Ⅳ-1
=E[|①。趣("’0)-ヱノz`ん(",i)'2]('7)
‘=O MSEの勾画己は以下の式で表される。Ms画=鶚
=,画1.位)鵲]
=-2E[|e(兄)の…い,j)|] (18) それゆえに適応アルゴリズムは以下のように表せる:ハル+1)=M犯)-Wj[班SE]
しかし、double-talk時においてd(、)はech⑫signal1y(、)
とneaJr-endsigna1,s(、)の二つによって構成されているた
め以下の式になる。。(灯)=yい)+s(、)(8)
よってこれを(7)に代入すると
孔。`霧(、,k)=E[s(j)+‘(j)1麺(j-A)
ノーO 冗=“(",k)+E卿("沖(j-k)(9)
ゴーO蝿(〃,k)はfar-endsignal1x(、)とdouble-talksigna1,s(、)
との相関関係である。またechosignal,y(、)は以下の式で
表せる。 Ⅳ-1ヅ(")=E嘘鰯(協一j)('0)
i=OLoudspeaker-Enclosure-Microphone-System(LEMS)の
インパルス応答をrjとする。式(10)を用いて式(9)を以
下のように表す。 jV-1dd露(M)=j・琴(ハル)+Zr`の…(凧,|k-i|)('1)
ゴーO式(11)でk=0とすると、同式Iま以下のようになる。
Ⅳ-1の。曇("’0)=。。露(〃,O)+E榊亟剛(12)
セーOここで、の`麺(〃,0)母Oを定義する。このことは、x(、)と
s(、)が互いに独立したspeechsignalであることから容易
に定義できる[14]。よって:
JV-1d`血,O)唇E帆露(”,i)(13)
ボーOここで相関LMS適応フィルタのタップ係数をh`(〃)とし
て定義すると次式のように書ける: Ⅳ-16.忽(”,0)=ZM…(",i)('4)
i=O このことより相関LMS適応フィルタが11頁応したタップハバ〃)によて応答ri(犯)を計算していることはある意味従
来のLMSアルゴリズムと同じであると言える。 また、相関関数の誤差の総和を以下のように定義する。:eい)=①。”,O)-ウ。②(蝿,O)(15)
となる。ここで適応フィルタ内のタップ係数を計算するた めに相関関数の最小平均2乗法を用いる。以下にdouble‐ talkの評価関数となるMSEを求める式を示す。:ハISB=回[|dd趣化,O)_`d錘(”,O)'2]('6)
ここで式(13),(14M15)を利用して式(16)を以下のよう
に変形する:皿SE=EUe(〃)'2]
hj(ね+1)=肘(ね)+2〃E[e("〃…(〃,j)](19)
0≦だⅣ-1 ここでLMSアルゴリズムと同じように、統計的な期待値演算を除いた勾配▽jMsEを用いて式(19)を以下のよう
に表す。hj(、+1)=んj(犯)+2似e(犯)の…(〃,j)(20)
O≦だlV-1これより①…(",i)と吻墾(〃,0)を計算する。まず、式(6)
より: 丸の鍾露(宛,i)=E諺('”(l-i)
【=O 7B-1=Z趣(!)⑳('一`)+鰯(鋼)錘(施一`)
l=O (21) O<`<Ⅳ-1 よっての…(〃,j)=(1-α)の…(〃-1,j)+α釘(〃”い-i);
O<α<1(22)同様にして式(7)より
“(72,0)=(1-β)“他-1,0)+βd(氾沖(犯);
O<β<1(23)
式(22)、式(23)の係数α、βは忘却係数とする。
3.2CLMSの安定性これより、提案法の安定性を検証する側。まず、以下
の式を定義する。:互い十1)=&(〃+1)-こ
(24) 恥提案法が推定したエコーパス のインパルス応答列 78エコーパスのインパルス応答列旦:hとェの誤差信号
式(24)の豆が収束すれば提案法の安定性を示せる。よっ
(X=[z(〃,O),z(,z’1),…,、(〃,IV-1)]T)
提案法がCLMSと呼ばれるのは参考文献[9],[10],[111,[12]
および[131を参照している。
図3よりエコーキャンセラの出力は以下の式で求められる 5位)=。(〃)-,(〃)て、式(20)より:
且(冗十,)=上位)+2〃e(〃)些露(〃)-z
=亘(〃)+2脾e(")2…(〃)
(25)
(2墾璽(")=[の…(〃,o),の諺辱(、,'),…,“('0,N-1)])
とする。式(13)、式(14)、式(15)より、:
N-1。(、)=Z(『`-ハバ”))の邇曇M
i=0. 」V-1=-EE`Mn,i)
。=O=_巨?(〃)2露鍾(")(26)
式(25)に式(26)を代入する。
且("+')=亘(")-2似[ご(")些璽(")}△辱い)
=蔓(〃)-2処露(泥)[型(施)旦(")](27)
よって、式(27)は以下の式で示せる。;
旦(泥+1)=[Ⅱ-2似塑露化)2二(”)]亘(")(28)
ここで、以下の式を定義する。:③…(")=2…(")型(、)(29)
式(28)、式(29)より、以下の式を示す。:
旦他+1)=[1-2庇…(〃)]且(犯)(30)
よって、亘が収束するためには、式(30)の。の固有値の最
大値入、。=と似の間に以下の関係が成り立てば良い:
1 (31)o〈似くう(扁孟
さらに、入…<か③…(〃)
Ⅳ-1=Zの:沖,j)(32)
ゴー0 .trはトレース演算を表す。式(32)より、且が収束するための条件は、以下のように
なる。:’三IHI菫上),,.
(33)
俎工卸
(36)
M2沖(冗一j)
§(〃)=。(〃)一
八 s(、) 、) Fig.3.CLMSsystem 4シミュレーション結果 4.1各数値の設定 エコーのインパルス応答7tを以下のように定義する:r-Ui[ezp(-8i/Ⅳ)](37)
.Udは白色信号式(37)でエコーパスを有色化する。今回のシミュレーショ
ンでは、入力信号とdouble-talk信号も有色信号を用いる。 また、本アルゴリズムの収束の測定は以下の式により評価 する。: jV-1 JV-1D(、)=101.9,0[E|『`-仇(")'2/Elア`'2](38)
j=o f=0 4.2シミュレーション結果 これより、CLMSアルゴリズムの収束精度の優位`性を 確認するために行なったシミュレーション結果を3つ示 す。 Correlation-LMSとNormalized-LMSをdouble-talkの 状態で起動させたときの収束精度について比較した結果を図4に示す。CLMS起動時は忘却係数の値を0.1,NLMS
起動時には同係数値を1として比較を行なった。その結果、NLMSではまったく収束していなかったり(、)がCLMSで
は約-9dBの収束結果を残している。このことからCLMS が従来法より優位性があることがわかる。図3ではsingle-talk状態からdouble-talk状態へ移り、さ
illconditionを防ぐために、分母に1を加える。 以上のことより、提案法の適応フィルタのタップ係数更 新を以下に示す。M"+')=b(、)+南ii:岩下e(")“剛(34)
O</40<1上式はNLMS(Normalized-LMS)アルゴリズムに非常によ
く似ている。その式を以下に示す。:Mn+1)=M耐)+甫静e(")z(n-j)(35)
らにsingle-talk状態へ戻ったときのCLMSとNLMSとの
比較を行なった。この図は、=800でdouble-talk状態になり、、=1500でまたsingle-talk状態へ戻ったという場合の
シミュレーション結果である。図からCLMSは、double‐ talk状態になったときでさえも-20dB~-15dBほどの収束 を保っているが、NLMSでは収束精度をまったく失って いるのが確認できる。このシミュレーションではCLMSの忘却係数α、βの値をdouble-talke状態のときは0.1、
singla-talk状態では1と変化させて実験している。
さらに図6ではdouble-talk状態になった場合に、エコー パスも変化させるという実験の結果を示している。この 状態は、echo-cancellerにとって最も厳しい状況であると いえるというのはこれまでの説明から容易に推測できる。 この状態にあってもCLMSアルゴリズムは-15dB~-10dB の収束精度を誇っていることが、このシミュレーションか ら確認できる。 NoTTTnFllz⑪d-LMS 0 5 0 1 1 2 ロマ0{E)◎ CLM軍 CLM軍 200400600BOO10001200MOO16,0180020m Fig.5.アルゴリズム起動中にdoubletalk状態になった場合の両アル ゴリズムの動作 5まとめ 本論文では、エコーキャンセリングシステムにおいて、 double-talk状態でもタップ係数更新を行なう新しいアルゴリズム(CLMS)を提案した。提案法では、入力信号そ
のものを用いる代りに、入力信号の自己相関関数をもちい てエコーパスの推定を行なった。それゆえに、double-talk 状態でもタップ係数を固定することなく、エコーパスの推 定を行なうことが可能となり、スムーズなエラー信号の 収束が得られた。さらにコンピュータシミュレーションで は、理想的な結果を得ることができ、提案法の優位性を示 した。今後の課題としては、CLMSを用いた周波数領域で のエコーパス推定や、実時間での処理などが挙げられる。 0505 1 - NcwuTa齢一十UAS 0 5 0 1 1 2 国▽0くこ百 Cln4S Cln4S 釦 505 233 200400600800100,12,140016001800、00 Fig.6.double-talk状態になると同時にエコーバスも変化した場合の 両アルゴリズムの動作2
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