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環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1)

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333

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1)

戸  田  俊  彦

  目 次 1 本稿の目的

II 中部地方中小企業調査からみた成長・衰退要因 III愛知県中小企業調査からみた成長・衰退要因 IV 東京都中小企業調査からみた成長・衰退要因 V 大阪府中小企業調査からみた成長・衰退要因

VI長期永続型中小企業調査からみた成長・衰退要因………・・…・以上本号 VII愛知県の高業績中小企業と低業績中小企業の対比からみた

  成長・衰退要因…………・…・…・…・………・……・・…………・……・…以下次号 V皿 各種調査の総:合分析からみた中小企業の成長・衰退要因

IX むすび

1 本稿の目的

 昭和の末期から平成に入って,産業構造の転換,技術革新の進展,国際化,

情報化,需要の多様化・短縮化など,中小企業を取り巻く環境の変化の広範さ,

速さ,激しさは一層増すばかりである。

 こうした中で多くの中小企業が経営活動を高度化させ,環境変化にのり,そ れを生かして巧みに企業を成長・発展させてきたのも事実であるが,一方でこ の変化にのり遅れ,変化に翻弄されてその地位を低下させてきた中小企業も決

して少なくはない。

(2)

図表1 中小企業

(1二部の中小企業に関する実態調査 (2慶知県の中小企業経営者実態調査

(中部経営者調査と略称) (愛知経営者調査と略称)

報  告  書 小川英次・岩田憲明・北洞忠宏・戸田 『中小企業経営者実態調査報告書 俊彦・山田基成・林伸彦・内藤勲・史 一中間報告』愛知県産業情報セン 世民『産業構造転換と中部の中小企業 ター,平成元年3月

に関する実態調査研究報告書』中部生 産性本部,昭和63年7月

調査のねらい 円高下の中部地方の中小企業の実態解 愛知県の中小企業経営者の実態解

調査票発送時期 昭和62年8月下旬 平成元年1月下旬

調 査 対 象 製造業で中部地方を代表する9業種に 愛知県内の中小の製造業,商業,

属する従業員50人以上の中小企業なら サービス業 びに愛知,岐阜,三重,石川,富山5

県下の生産性本部会員の製造企業。

回  収  率 1,602社中454社(28.3%) 1,500企業中313企業(21.6%〉

14.4%が300人以上の大企業

成 長 度 別 昭和58年度と61年度の出荷額に基づき 最近5年間ぐらいの売上高推移に

サ ン プ ル 計算 つき選択

低成長(昭和58年度に対する61年度 減    少(23企業,7,5%)

の製造品出荷額等の伸び率 横  ば  い(50企業,16.1%)

がμ一σ未満,50企業,12.4 ジグザグ上昇(72企業,23.3%)

%) 漸    増(126企業,40.8%)

中低成長(同じくμ一σからμまで, 急    増(38企業,12.3%)

166企業,41.1%)

中高成長(μからμ+σまで,127企業,

31.4%)

高成長(μ+σ以上,61企業,15,1%)

 このような環境激変下に成長・発展してきた中小企業はどのような企業であ ったのか,逆に停滞・衰退を余儀なくされたのはどのような企業であったのか を探っておくことが,今後とも環境の激変が予想される現在,不可欠な課題と いわなければならない。

 そこで本稿では,環境激変下,成長あるいは衰退した企業はどのような要因 なり条件なりが働いていた企業であったのかを,昭和62年から平成2年にかけ て私が参画した4種類の中小企業実態調査(図表1参照)を姐上に据え分析す ることによって,多面的・実証的・具体的に解明してみようとするものである。

 このためまず第1に,各種中小企業実態調査の一つ一つについて,質問項目

(3)

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1> 335 実態調査の概要

(3凍京都・大阪府の中小企業経営者実態調査 (4)長期永続型中小企業の経営活動調査

(東京経営者調査,大阪経営者調査と略称) (長期永続企業調査と略称)

『中小企業経営者実態調査報告書一最終報 碓井貢・岡本正歌・熊沢孝・戸田俊彦・中山 告』愛知県産業情報センター,平成2年3月 健『長期永続型中小企業の経営活動に関する 研究』中小企業事業団・中小企業大学校・中 小企業研究所,平成3年3月

愛知経営者調査の継続調査で,東京都,大阪 創業後60年以上経過したいわゆる長期永続相 月,愛知県の経営者の相互比較 中小企業の経営実態の解明

平成元年8月下旬 平成2年7月下旬

愛知県経営者については愛知経営者調査を利 ㈱帝国データバンク所蔵データベース(CO 用。東京都,大阪府の製造業,商業,サービ SMOS2)に収録されている法人企業の中 ス業を営む中小企業それぞれ1,000企業 から創業後60年以上経過した(昭和5年12月

31日以前に設立した)従業員300人以下の製造 業のすべて899社

東京1,000企業中147企業(14,7%),大阪1,000 899社中309社(34.4%)

企業中119企業(11.9%)

愛知経営者調査に同じ 昭和60年度と比べた平成元年度の売上高状況 東 京      大 阪 を選択

藩ば省1憺縫:、1:;菱臨塞董:11:1菱; 減 少(昭和60年度に対する平成元年度の売

@  上高の伸びが減少したもの,56企業,

多至算(37企業,25.3%) (28企業,23.5%) 18.7%)

漸 増(65企業,44.5%) (55企業,46.3%) 低成長(同じく伸びが0〜20%未満のもの,

急 増(12企業, 8.2%) (11企業, 9.2%) 145企業,48.3%)

なお大阪では横ばいを減少の中に含め横ばい 中成長(同じく伸びが20〜50%未満のもの,72

・減少とする 企業,24.0%)

高成長(同じく伸びが50%以上のもの,27企 業,9.0%)

ごとに成長度とのクロス分析をすることにより成長要因ならびに衰退要因を探 り出す。つまり,売上高を大きく増やしたサンプル企業(高成長企業ないし急 増企業)と逆に売上高を相対的に減らしたサンプル企業(低成長企業ないし減 少企業)という両極端の成長度を示した企業で目立った差異を示した項目は何 であったのかを,それぞれ全企業のサンプルと比べてみることによって引き出 してみた。その際サンプル数が60〜99なら全企業のウエイトと比べて7%以上,

40〜59なら10%以上,30〜39なら13%以上,20〜29なら15%以上,19以下なら 20%以上の差異を示したものをとり出している。この条件にわずかに満たない 場合「やや」という言葉をそえて拾い出している。こうして指摘された項目は

(4)

それぞれ成長ないし衰退と関連する,すなわち成長要因ないし衰退要因とみな しうるであろう。

 さらに同時に,各種調査の質問項目一つ一つにつき,成長度の低いサンプル から高いサンプルへ成長度順に並べ観察したとき,そのウエイトが上昇傾向な いし下降傾向を示した項目も指摘した。これらの項目も成長度に影響を与える 要因とみなしうるからである。

 なお,以上の分析でいう成長とは依拠したデータの性格上,激変する環境下 に売上高を数年にわたって高成長ないし急増させた場合をさし,衰退とは売上 高を数年にわたって減少ないし停滞させた場合をさしている。

 第2にとくに愛知経営者調査にまとをしぼって,その中から高業績企業10社 と低業績企業10社とを厳選し,比較対照することによっても成長・衰退の要因 を探り出そうとした。

 最後に第3に,こうした個々の調査から引き出された成長・衰退要因を総合 的に観察・分析して環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因は何かを引き 出してみようとした。

 以上の3つの視点からの観察・分析を通じて,環境激変下の中小企業の成長 要因・衰退要因を明らかにし,できうれば経営者や経営活動のあり方を提示し てみようとするのが本稿の目的である。

II 中部地方中小企業調査からみた成長・衰退要因

 中部地方の高成長中小企業および低成長中小企業で,全サンプルに比べて差 異の目立った項目を一覧化すると図表2のとおりである。

 ここにあげられた項目,すなわちそれは成長要因あるいは衰退要因とみなし うるものであるが,その一つ一つについて検討する紙幅の余裕はない。したが って,ここではポイントのみを述べてみるならば,高成長中小企業の場合,社 長の年齢は「60代以上」の高齢ではなくて「50代」と円熟期にあること,後継 者は「その他の理由で未決」であって「長男」としているものは相対的に少な いこと,経営者のタイプは「技術家型」であって,得意分野も「販売」とする

(5)

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1) 337 図表2 中部の高成長企業および低成長企業で目立った項目

質 問 項 目 高成長企業(61企業) 低成長企業(50企業)

社長の年齢 050代       (14.9,50.8) □40代       (9.2,24.5)

△60代以上     (130,32.2)

出身地位 □他社での勤務経験のない2代目以降

(9.5,327)

得意分野 △販売       (14.8,11.1)

後継者 △長男       (11.2,21.7)

○その他の理由で未決(8.1,18.3)

事業の失敗は経営者個人の △全くそう思う   (8.1,34.4) ○どちらとも言えない(11.5,24.5)

責任 ○どちらかといえばそう思う  (9.2,49.2)

会社経営が最大の生き甲斐 ○どちらとも言えない(7.9,19.7)

利益の多寡よりも経営の安 X全くそう思う   (6.3,39.3)

定を図ることが重要 □どちらとも言えない(68,18.0)

現事業は創意工夫次第で将 △全くそう思う   (125,29.5) △全くそう思う    (15.5,26.5)

来とも有望 ○どちらかといえばそう思う  (11.7,47.5) ○どちらかといえばそう思う  (13.2,49.0)

内部管理体制の充実より競 △どちらとも言えない(7.2,36.1)

争企業の動向に対応がよ ○どちらかといえばそう思わない

り重要 (1L3,34.4)

専門誌・講習会情報は経営 △どちらかといえばそう思う  (7.9,42.6) □どちらとも言えない(9.6,44.9)

に役立つものが多い □どちらかといえばそう思わない

(6.4,13.1)

消費者・取引先の意見・要望 △全くそう思う   (7,4,49.2) □どちらかといえばそう思う  ( 9.0,46.9)

はできるだけ会社経営に 反映させたい

多少の危険が予測されても,十分 O全くそう思う    (7.2,50.8)

に検討した計画なら実施する △とちらかといえばそう思う  (13.7,27.9)

経営計画や方針を決める際,従業 △どちらとも言えない(7.9,3.3)

員の意見にも十分配慮する □どちらかといえばそう思う  (6.3,55 7)

経営上の重点 ○人間尊重(生活安定含む) (10.9,37.0)

社長としてより大切な条件 ×すぐれたパーソナリティ (9.5,67.3)

経営者のタイプ ○技術家型     (10.1,39.7)

社長の条件 △意欲       (12.2,25.0) □意欲       (9.7,46.9)

○洞察力       (10.6,48.3)

□決断力       (6.3,78.3) △決断力       (12.8,59.2)

△健康       (13.9,35.0> ○健康       (12.3,61.2)

注(1)全企業による構成比と比べ高成長企業および低成長企業の構成比が一定%以上開いた   ときに目立った項目として指摘した。その際,サンプル数が60〜99なら7%以上,40〜59   なら10%以上,30〜39なら13%以上,20〜29なら15%以上,19以下なら20%以上のものを   示した。なお差異が1%程度不足の場合はややという言葉を付して記している。

 ② 上記の条件を満たしたもので,○印は全企業に比べ構成比が高かったもの,△印は同じ   く低かったもの,□印は同じくやや高かったもの,×印は同じくやや低かったものを示し   ている。

 (3)(   )内は,前の数字が全企業の構成比と当該企業の構成比の差異(%)を示.し,後の   数字は当該企業の構成比(%)を示している。

 (4)差異が条件に満たなかったがゆえに示されなかった質問項目としては次のものがある。

  社長就任時年齢,最:終学歴,社長が今日ある理由,経営計画の作成にあたっては自分の経   験を経営分析結果よりも重視する,会社経営にあたって具体的な経営方針を持たなけれ   ばならない,大企業との競争が激しくなっても中小企業が強みを発揮できる分野がある,

  経営活動の結果は定期的に計画と対比しその後の経営活動に生かす,経営者は従業員の

(6)

 先頭に立って経営活動に従事しなければならない,意思決定のパターン,事業経営上のマ  イナス性格等。

ものは少ない。社長の条件として「洞察力」,「決断力」を強調し,「意欲」,「健 康」をあげるものは相対的に少ない。

 そして経営に対する意識でくっきりと浮かびあがっていることは,「多少の危 険が予測されても,十分に検討した計画なら実施する」に大いに共感を示し,

「事業の失敗は経営者個人の責任」や「現事業は創意工夫次第で将来とも有望」

や「経営計画や方針を決める際,従業員の意見にも十分配慮する」については

「どちらかといえばそう思う」と一歩ひいた共感を示していることである。

 これらから高成長企業の特徴は,経営者の積極性や円熟性,さらには成長に 対する真のひたむきさが浮かび上がっているように思われる。

 このことは逆に,低成長中小企業で,「健康」や「意欲」といった経営者とし て当然の前提的条件の強調や「人間尊重(生活安定含む)」といった成長以外へ の気配りの重視,さらには「他社での勤務経験のない2代目以降」の社長がや や目立つといった点と好対照をなすものであろう。

 つぎに低成長,中低成長,中高成長,高成長と成長度が高まるにつれウエイ トが上昇ないし低下するなど特定の傾向を示した項目をあげてみるならば図表 3のとおりである。

 これから社長の年齢として「50代」は成長度が高まるにつれ上昇している。

つまり50代は成長の一つの要因とみることができるのである。逆に,出身地位 を「他社での勤務経験のない2代目以降」とするものは成長度が高まるにつれ ウエイトが低下する傾向が認めちれ,他社での勤務経験が成長促進と関連して いることを示唆しているように思われる。また,後継者を「長男」とするもの は成長度が高まるにつれ減少し,「その他の理由で未決」が増えている。後継者 としての長男は成長にブレーキになっているようであり,さらには低成長であ れば長男にやってもらわざるをえないということであろうか。「多少の危険が予 測されても,十分に検討した計画なら実施する」という見方に「全くそう思う」

とするものが成長度の高まりとともに増えている。危険を冒すところに高成長

(7)

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1> 339 図表3 成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下した項目       (中部経営者調査)

低   中   中   硬

質   問 項   目

成 饒 蔑 成

長%  長%  長%  長%

社長の年齢 50代の上昇 28.6 → 34.8 → 33.3 → 50.8

出身地位 他社での勤務経験のない2代目以降の低下 32.7 →  24.8 →  18.4 →  21.3

後継者 長男の低下 37.8 → 36.8 → 31.7 → 21.7

その他の理由で未決の上昇 2.2 一ナ  9.7 →  9.8 → 18.3

事業の失敗は経営者個人の責 どちらかといえばそう思うの上昇 32.7 → 40,6 → 37.6 → 49.2 どちらとも言えないの低下 24.5 → 10.9 → 13。6 →  8.2

専門誌・購習会情報は経営に どちらかといえばそう思わないの上昇 0   →   6.7 一ナ  6.3 →  13.1

役立つものが多い

多少の危険が予測されても,十分に 全くそう思うの上昇 39.6 → 40.6 → 45,6 → 50.8 検討した計画なら実施する どちらかといえばそう思うの低下 50.0 一》 44.2 一》 41.6 → 27.9

社長としてより大切な条件 すぐれたパーソナリティの上昇 67.3 → 77.5 → 77.4 → 81.7

社長の条件 意欲の低下 46.9 → 41,5 → 33,6 → 25.0

洞察力の上昇 32.7 → 36.5 → 36,0 一今 48.3

決断力の上昇 59,2 →  74 2 →  71,2 →  78.3

健康の低下 61.2 → 46,5 → 53.6 → 35.0

注(1)低成長と高成長の間で少なくとも10%以上の差異を示したもののみを記した。また一   部に全体のパターンと逆転した数字が現われても,10%以内なら記した。たとえば健康の   場合,中低成長と中高成長の数字が全体の低下傾向に反し逆に上昇しているが,全体のパ   ターンをくつがえすものとみられないからあげられている。さらに全体のパターンと逆   転しないが,端の1つの数字が例外的で,他の3つの間の差異が3%以内にすぎないなら   それは例外ということであげていない。たとえば統率力の上昇(34.7→42.8→44.0→

  45.0)は低成長以外の差異が2.2%しかないがゆえにとりあげなかった。

② (1)の条件に合致しなかったために排除された,上昇ないし低下傾向を示した,項目とし   てはつぎのものがある。

  最:終学歴・大学・大学院(理科系)の上昇,出身地位・創業者の上昇,得意分野・販売の   低下,今日ある理由・人に恵まれたの低下,利益の多寡よりも経営の安定が重要・全くそ   う思うの低下・どちらとも言えないの上昇,社長の条件・統率力の上昇・協調性の低下,

  事業経営上マイナス性格等・怒りっぽいの低下。

が実現したのであろう。「事業の失敗は経営者個人の責任」についても「どちら かといえばそう思う」が上昇していて,高成長企業の経営者ほど経営者の重要 性を自覚している側面がうかがえる。社長としてより大切な条件を「すぐれた パーソナリティ」とするものも成長度が高まるにつれ上昇している。社長の条 件として,「洞察力」,「決断力」が成長度とともに上昇し,「意欲」,「健康」は 低下していることも明らかである。

これらのことはすでに高成長企業および低成長企業で特記した要因とほぼ一 致しており,この面からも成長要因,衰退要因の確認ができたものとみること

(8)

越後和典教授退官記念論文集(第273・274号)

  図表4 愛知県の急増企業および減少企業で目立った項目 質 問 項 目 急増企業(38企業) 減少企業(23企業)

地区 ○尾張       (33.8,56.5)

△名古屋       (25.6,34.8>

創業年次 △戦前       (15,6,5.4)

△昭和20年代     (17.5,5.4)

○昭和50年代    (24.6,45.9) △昭和50年代    (17.0,4.3)

業種 △製造業      (17.8,31.6> ○製造業      (15,8,65.2)

○サービス業     (26.0,50.0) ムサービス業    (15.3,8.7)

常用従業員数 △9人以下     (15.0,2.6) 09人以下      (17.2,34.8)

030〜49人      (20.2,36.8) △30〜49人      (16.6,0)

最新の年間売上高 05億〜10億円    (14.3,32.4)

最新の経常利益額 ○赤字       (33.9,43.5)

対前年売上高成長率 △0 〜5%      (19.4, 2.7) ○マイナス5%以下  (24,9,30.4)

△ 5 〜10%      (20.9, 5.4) ○マイナス5〜0%  (32.9,39.1)

010〜30%      (20.3,54,1> △5〜10%      (17.6, 8,7)

030%超       (20.8,27,0) △10〜30%      (29.5, 4.3)

対前年経常利益成長率 △0 〜 5%      (21.8, 5.4) ○マイナス5%以下  (31.6,39.1)

030%超      (20.8,37.8) ○マイナス5〜0%  (19,9,30.4)

× 0 〜 5%      (14.2,13.0)

△5〜10%      (17.0,  0  )

5年間経常利益推移 ○急増        (36.6,43.2) △漸増      (37.5,  0  )

ムジグザグ上昇   (16.5,8.1) ムジグザグ上昇   (24.6,0)

○ジグザグ下降   (30.8,34.8)

○漸減       (26.4,30.4)

○急減       (15.7,17.4)

企業特性 ○新型企業      (15.8,65.8)

主要事業・製品のライフサ ○中期成長期    (14.5,51.4) △中期成長期    (23,9,13.0)

イクル △成熟期      (13.9,16.2) ○衰退期      (35.3,43.5)

創業者との関係 ○本人        (25.9,75.7)

△子供       (17.1,10.8) ○子供       (15.6,43.5)

得意分野 △販売       (16.3,18.2)

口技術(研究開発)  (14.0,40.9)

これまでの体験・経験 □倒産・経営危機経験(14.4,43.5)

社長の能力決定づける最も △人柄・性格     (16.8,30.6)

大切なもの

事業経営上プラスになった性格等 ○意欲・達成欲求   (13.6,39.5> ○忍耐力      (15.7,34.8)

事業経営上マイナスになつ △焦り       (15.5,0) ○自信過剰        (23.8,43.5)

た性格等 □情実重視      (14.1,26.1)

パーソナリティ重視か知識 ○パーソナリティ重視(28.0,70.3)

・経験重視か

性格に近い三英傑 ○信長       (16.7,42./)

経営上の重点 △従業員の幸福   (17.7,8.7)

社長になって会社の業績は ○大いに上がった  (32.6,81.1>

△やや上がった   (21.5,18.9)

勤務時間(退社一出社時聞) ○ユ0時間台       (20.8,44.7)

海外出張回数 01回台       (20.4,47.1)

東京出張回数 010回以上     (15.9,52.8)

後継者 △長男        (13.2,18,4> ○自分かぎり    (18.8,21.7)

○従業貝(幹部含む) (17.6,28.9)

新聞必読記事項目数 △0 〜 5       (14曾8,32.4)

06 〜10       (19.5,59.5)

日頃の個人的つきあい △友人・知人     (15.0,34.2> ○同業種経営者   (20.4,60.9)

(9)

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1) 341

経営力充実策(従来) ○生産能力の拡大   (16.9,52.2)

○人材の育成・確保  (17.9,65,8) △人材の育成・確保  (30.5,17,4)

[]省力化・自動化   (14.8,39.1)

経営力充実策(今後) ○経営者能力の強化 (16.3,28.9) △販売能力の強化  (17.7,4.3)

意思決定のパターン □社長中心の意思決定(14.7,52.2)

同業他社に比べ劣っている項目数 × 0       (14.5, 8.7)

注(1)(2)(3)は図表2に同じ。

 (4)差異が認められなかった質問項目としては次のものがある。

 新製品開発に成功したことがある,社長の性別,現在年齢,最終学歴,論理的か直観的  か,革新的か保守的か,任せるほうか自分でやるほうか,経営成功は努力か才能か,社長   としてよくやっているか未熟か,望ましい後継社長像,社長の地位・職務一言で,社長の  影響力,企業発展・業績を左右する要因,めざす主要事業の市場地位,同業他社に比べ優   れている項目数。

ができよう。

III愛知県中小企業調査からみた成長・衰退要因

  愛知県の中小企業で5年間ぐらいの売上高推移が急増とした企業および減少  とした企業で,全サンプルに比べて差異の目立った項目を一覧化すると図表4  のとおりである。

  これから急増企業の特徴を要約的に述べてみよう。急増企業は若くて,「サー  ビス業」で,「新型企業(研究開発型,情報関連,ニュービジネスから成る)」

 で,「中期成長期」に位置し,比較的小規模で,対前年売上高成長率,対前年経 常利益成長率,5年間経常利益が急増している企業である。

 経営者は「創業者本人」が多く,「意欲・達成欲求」をもち,焦らず,「パー  ソナリティ重視」で,「信長」のような積極果敢な性格をもち,社長になって会 社の業績は「大いに上がった」とする。長時間働くのも辞さず,海外・東京出  張にも積極的で,後継者を「長男」に限らず「従業貝(幹部含む)」にも目を向  け,新聞は「6〜10」項目ほどを必読し,「友人・知人」との日頃の個人的つき  あいは相対的に少なく,経営力をこれまでは「人材の育成・確保」,これからは  「経営者能力の強化」で充実させようとしているなどの点が目立つ企業である。

  逆に,減少企業では,「尾張」地区に属し,「製造業」で,「9人以下」の零細 企業が多く,売上高,経常利益の額も伸びも推移もそれぞれ悪い。主要事業・

製品のライフサイクルも「衰退期」が多く,創業者の「子供」が多く,事業経

(10)

営上プラスになった性格等を「忍耐力」とし,マイナスになった性格等を「自 信過剰」としている。経営上の重点を「従業員の幸福」とするものは少ない。

後継者は「自分かぎり」とするものが相対的に多い。日頃の個人的つきあいは

「同業種経営者」が多い。経営力充実策(従来)は「生産能力の拡大」が多い。

意思決定のパターンは「社長中心の意思決定」が多い。

 つまりここでは急増企業の若々しさや経営者の行動性,積極性が消え失せて いる。そして急増企業と減少企業では対照的な関係にあることが浮き彫りにさ れているといえよう。

 つぎに,成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下するなど特定の傾 向を示した項目をあげてみるならば図表5のとおりである。

 急増企業ほど上昇した項目を示してみると,地区は「名古屋」に属すること,

創業は「昭和50年代」で,業種は「サービス業」,従業員数は「30〜49人」,年 間売上高は「5億〜10億円」,対前年売上高成長率は「10〜30%」および「30%

超」,対前年経常利益成長率は「30%超」,主要事業・製品のライフサイクルは

「中期成長期」の企業である。

 社長の年齢は「40代」で,「創業者本人」で,得意分野は「販売」,事業経営 上プラスになった性格等は「意欲・達成欲求」・「統率力」で,「パーソナリテ ィを重視」し,「成功は努力」とし,勤務時間は「10時間台」,東京出張回数は

「10回以上」,日頃の個人的つきあいは「従業員・従業員家族」,「組織中心の意 思決定」をし,経営力充実策(従来)を「人材の育成・確保」・「経営者能力の 強化」とし,企業発展・業績を左右する要因を「従業員能力」としている経営 者である。

 これらの項目も企業の若々しさや経営者の行動1生,積極性を示唆するもので あり,企業の成長要因を示しているとみられよう。

 逆に,急増企業ほど低下した項目は「尾張」地区の企業,「戦前」創業企業,

「製造業」,従業員数「19人以下」の小規模企業,年間売上高「5千万〜1億 円」,対前年売上高成長率,経常利益成長率ともに「マイナス」の企業,5年間 経常利益推移は「ジグザグ下降」,主要事業・製品のライフサイクルが「衰退期」

(11)

       環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1)

図表5 成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下した項目       (愛知経営者調査)

343

質   問 項   目

減  横  ジ   漸  急

@     グ   ば      ザ上

少% い% グ昇% 増% 増%

地区 尾張の低下 56.5→16.0→ 22.2→21.4→ 13.2 名古屋の上昇 34.8→60.0→ 54.2→65.9→71.1 創業年次 戦前の低下 30.4→32.7→25,0→16。8→  5.4 昭和50年代の上昇 4.3→  8.2→ 16.7→24曾8→45,9 業種 製造業の低下 65.2一ナ48.0→ 57.1→48.8→31.6 サービス業の上昇 8.7→12.0→ 18.6→26.8→50.0 従業員数 9人以下の低下 34.8→20.0→19.4→ 16.7→  2.6 10〜19人の低下 30.4→20.0→26.4→ 19,8→13.2 30〜49人の上昇 0  →12.0→ 12.5→ 17.5→36.8 年間売上高 5千万〜1億円の低下 13.0→12.5→  8.3→  5.6→  2.7

5億〜10億円の上昇 13.0→14,6→13.9→ 19.0→32.4 対前年売上高成長率 マイナス5〜0%の低下 39.1→14.6→  1.4→  0.8→  2.7

10〜30%の上昇 4.3→10.4→32.4→43.2→54.1 30%超の上昇 0  →  0  →  5.6→  4.0→27.0

対前年経常利益成長率 マイナス5%以下の低下 39.1→  8.3→  4.3→  3.2→  8.1

マイナス5〜0%の低下 30▼4→20.8→  8.7→  3.2→ 10.8

30%超の上昇 8.7→12.5→ 14,5→15.3→37.8 5年間経常利益推移 ジグザグ下降の低下 34,8→  4.0→  1.5→  0  →  0

主要事業・製品のライフサイ 中期成長期の上昇 13.0→29,8一→43.7→36曾3→51.4 クル 衰退期の低下 43.5→19.1→  2曾8→  2.4→   0

社長の年齢 40代の上昇 26.1→28.3→29.6→36.1→44.7 50代の低下 39.1→28.3→ 28.2→32,0→ 18.4 60代の低下 26.1→26.1→25.4→ 19,7→13.2 創業者との関係 創業者の上昇 39.1→38.8→46.5→50.4→75.7 子供の低下 43.5→36.7→22.5→29.8一ナ10.8 得意分野 販売の上昇 18.2→18.8→39.7→38.9→42.9 技術(研究開発)の低下 40.9→31.3→30.9→21,2一ナ22.9 事業経営上プラスになった性 意欲・達成欲求の上昇 21.7→22.0→23.6→25.4→39.5 格等 統率力の上昇 4.3→  2.0→11.1→11.1→15.8 事業経営上マイナスになった性格等 怒りっぽいの低下 34.8→32.0→29.2→25.4→18.4 論理的対直観的 論理的の低下 59.1→51.3一ナ49.1→41.8→38.2 パーソナリティ重視対知識・経験重視 パーソナリティ重視の上昇 33.3一ナ24.4→41.1→40.9→70.3 経営成功は努力対才能 成功は努力の上昇 66.7→75.0→75.0→83.2→81,1 社長の影響力 ほとんど全ての低下 56.5→54.2→51.4→47.6→43.2 勤務時間 10時間台の上昇 17.4→14.9→21.4→23.6→44.7 9時間台の低下 26.1→23。4→15.7→18.7→13.2 海外出張回数 なしの低下 45.0→37,2一ナ40.6→39.4→32.4 東京出張回数 なしの低下 27.3→14.9→20.0→15.8→  5.6

3回台の低下 18.2一→14.9一ラ  6.2一→ 10.0→  2.8

10回以上の上昇 27.3→31,9→33.8→37.5→52.8 後継者 自分かぎりの低下 21.7→  4.1→  0  →  1.6→  G

日頃の個人的つきあい 従業員・従業員家族の上昇 4.3→  6.0→16.7→11.1→21.1 意思決定のパターン 社長中心の意思決定の低下 52.2→42.9→34.3→35,7→32.4

組織中心の意思決定の上昇 0  →  2.0→ 10.0→  8.7→ 13.5 経営力充実策(従来) 省力化・自動化の低下 39.1一→28.0→27.8→20.6→13.2 人材の育成・確保の上昇 17.4→46.0→40.3→51.6→65.8 経営者能力の強化の上昇 8.7→12.0→  5.6→12.7→21.1

(12)

労務管理の充実の低下 17.4→ 10.0→  0  →  6,3一ナ 5.3 経営力充実策(今後) 高級化・高付加価値化の低下 43.5一>32.0一ナ30.6→31.7→21.1 企業発展・業績を左右する要 従業貝能力の上昇 13.0→ 14.9→ 17.1→21.1一ナ24.3 得意先・取引先の低下 17.4→ 12.8→14.3→  8.1→  2.7 めざす主要事業の市場地位 追随者の低下 13.0→ 13.3→  4.6一→  4,3一ラ  0

注(1)図表3に準じる。

 ② (1)の条件に合わないが,上昇ないし低下傾向を示した項目としては次のものがある。

 従業員数・50〜99人目上昇,経常利益・赤字の低下,社長の能力決定づける最も大切なも   の・意欲の上昇,事業経営上マイナスになった性格等・暗示を受けやすいの低下,後継者   ・まだ必要ないの上昇,経営力充実策(従来)・事業転換の低下,経営力充実策(今後)

  ・新製品開発の低下。

の企業である。

 そしてさらに社長の年齢が「50代」・「60代」で,「創業者の子供」,得意分野 を「技術(研究開発)」とするもの,事業経営上マイナスになった性格等を「怒 りっぽい」とし,「論理的」とみ,社長の影響力を「ほとんど全て」とし,勤務 時間を「9時間台」とし,海外出張も東京出張も「なし」とし,東京出張が「3 回台」とするものも低下傾向を示している。後継者を「自分かぎり」とし,意 思決定のパターンは「社長中心の意思決定」,経営力充実策(従来)を「省力化

・自動化」・「労務管理の充実」,経営力充実策(今後)を「高級化・高付加価 値化」,企業発展・業績を左右する要因を「得意先・取引先」,めざす主要事業 の市場地位を「追随者」とする企業も急増企業ほどウエイトを低下させている。

 つまりこれらの項目が意味していることは,企業に若々しさがなく,業績も おしなべて悪く,経営者も怒りっぽさや論理性が表に立って行動が伴っていな いし,売上成長よりも省力化・自動化,高級化・高付加価値化を求め,社長中 心の意思決定で,得意先・取引先に追随してきた企業とみられ,これらはむし ろ成長にはブレーキになるものとみられるのである。

IV 東京都中小企業調査からみた成長・衰退要因

 東京都の中小企業で5年間ぐらいの売上高推移が急増とした企業および減少 とした企業で,全サンプルに比べて差異の目立った項目を一覧化すると図表6 のとおりである。

 これから急増企業の特徴を要約的に述べてみよう。対前年売上高成長率は「10

(13)

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1) 345 図表6 東京都の急増企業および減少企業で目立った項目

質 問 項 目 急増企業(12企業〉 減少企業(14企業)

常用従業員数 09人以下     (22.9,42.9)

最新の年間売上高 01億円以下    (24.4,42.9>

川 経常利益額 ○赤字       (27.3,38.5)

△1干万〜5千万円 (20.3,15.4)

対前年売上高成長率 △ 0 〜 5%      (23.3,  0  ) ○マイナス     (51.3,64.3)

× 5 〜10%      (19.3,14.3)

010〜30%      (40,7,66.7) △10−30%      (26.0,  0  )

5年間の経常利益推移 ○急増       (22,2,25.0) △漸増       (34.3,7.7)

ムジグザグ上昇   (25.9,0) ムジグザグ上昇   (25.9,0)

○減少        (64.4,76.9>

主要事業・製品のライフサ ○衰退期      (4L8,50,0)

イクル x中期成長期    (19.1,8.3)

社長の年齢 050代        (29.6,57.1)

最終学歴 □大学(理科系)   (19.1,41.7)

得意分野 △販売       (21.5,8.3)

性格に近い三英傑 ○秀吉       (35.2,63.6)

△家康       (20.6,18.2)

芝居に誘われたらまず何を △役者は誰だと聞く (21.3,0>

聞く ○出し物は何かと聞く(27.0,100,0)

社長になって会社の業績は ○大いに上がった  (24.2,63.6) △やや上がった   (30.3,16.7)

○ほとんど変わらない(31.1,41.7)

海外出張回数 ×1回台       (19.6,11.1)

大阪出張回数 01回台       (35.0,50.0) ○なし        (37.0,63,6)

名古屋出張回数 ○なし        (20.0,66.7) ○なし        (31.1,77.8)

起床時刻 △7時前      (26.1,33.3)

07時半〜7時59分 (20.7,33.3>

後継者 ○長男       (25.7,58.3) ○自分;かぎり     (23.0,28.6)

名古屋地域での商売(仕事) ○ない        (28.4,100.0)

経験

商売(仕事)をしたい所 □東京       (19.9,91.0)

地域の違いによる商売(仕 □大いに違いを感じる(19.0,66.7)

事)実感 △やや違いを感じる  (21.0,16.7)

注(1)(2)(3)は図表2に同じ。

 (4)差異が認められなかった質問項目としては次のものがある。

  創業年次,資本金,業種,社長の性別,社長就任時年齢,創業者との関係,望ましい後継   社長像,思いがけず大金が手に入ったとき,経営上の重点,出社時刻,退社時刻,就寝時   刻,勤務時間(退社一出社時刻),地域の違いによる商売(仕事)のあり方,めざす主要   事業の市場地位,意思決定のパターン。

〜30%」と高いこと,5年間の経常利益推移も「急増」が相対的に多いなど.業 績は急上昇している。得意分野を「販売」とするものは少ないし,性格に近い 三英傑は「秀吉」が多い。芝居に誘われたら全員がまず「出し物は何かと聞

く」。社長になって会社の業績は「大いに上がった」とし,大阪出張回数は「1 回台」,名古屋出張回数は「なし」とするものが多いし,名古屋地域で商売(仕

(14)

事)したことも「ない」としている。起床時刻は「7時半〜7時59分目が相対 的に多く,後継者は「長男」とするものが多い。

 逆に減少企業では,従業員数「9人以下」,売上高も「1億円以下」,経常利 益は「赤字」で「減少」推移,売上高成長率も「マイナス」とするなど業績面 でみるものはない。主要事業・製品のライフサイクルも「衰退期」とし,社長 の年齢は「50代」が多いが,社長になって会社の業績は「ほとんど変わらない」

としている。大阪も名古屋も出張回数は「なし」とし,後継者も「自分かぎり」

とするものが相対的に多くなっている。

 つまり,愛知県調査ほど急増企業と減少企業の対照性は目立たないものの,

急増企業での業績のよさと経営者の行動性,積極性が読みとれるように思われ

る。

 つぎに,成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下するなど特定の傾 向を示した項目をあげてみるならば図表7のとおりである。

 急増企業ほど上昇した項目を示してみると,従業員数で「50〜99人」,売上高

「20億〜50億円」,経常利益額「1千万〜5千万円」,対前年売上高成長率が「10

〜30%」,主要事業・製品のライフサイクルで「中期成長期」,社長の年齢で「40 代」,得意分野が「企画・調査」,社長になって会社の業績は「大いに上がっ

た」,起床時刻は「7時半〜7時59分」,出社時刻は「8時〜8時29分」,後継者 は「長男」,「役員と協議して社長が意思決定」,地域の違いによって商売(仕事)

は「やや違いを感じる」などである。

 この側面からみても,急増企業では伸び盛りにあって業績がよく,経営者に も若さと経営能力があって行動性,積極性を示していることが読みとれるとい ってよいであろう。

 逆に,低下傾向を示した項目は,創業年次が「戦前」,経常利益額が「赤 字」,対前年売上高成長率が「マイナス」,5年間経常利益推移が「減少」,主要 事業・製品のライフサイクルが「衰退期」,最:終学歴が「高専・短大」,得意分 野が「製造」,社長になって業績は「ほとんど変わらない」としたもの,起床時 刻が「7時前」,就寝時刻が「10時台」,後継者が「自分かぎり」,めざす主要事

(15)

環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1) 347 図表7 成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下した項目       (東京経営者調査)

質   問 項   目

減  横  ジ   漸  急

@     グ   ば      ザ上

少% い% グ昇% 増% 増%

創業年次 戦前の低下 41.7→35.3→27.3→15.3→18.2 従業員数 50〜99人の上昇 7.1→ 22.2→ 16,7→ 16.9→25.0 売上高 20億〜50億円の上昇 0  →   0  →  2.7→ 10.8;一レ 16.7

経常利益額 赤字の低下 38.5→27.8→  8.3→  4.6→  0

1千万〜5千万円の上昇 15.4→22.2→41.7→36.9→54.5 対前年売上高成長率 マイナスの低下 64.3→33.3→  8.1→  1.5→  0

10〜30%の上昇 0  →  0  →16.2→36.9→66.7 5年間経常利益推移 減少の低下 76,9→27 8→  2.8→  1.6→8.3 主要事業・製品のライフサイ 中期成長期の上昇 8.3→ 12.5→24.2→33.3→45.5

クル 衰退期の低下 50.0→ 18.8→  3,0→  1.6→   0

社長の年齢 40代の上昇 14.3→ 16.7→38.9→35.5→50.0 最:終学歴 高専・短大の低下 21.4→ 16.7→  8.1→  7.7→  8.3

得意分野 製造の低下 23.1→22.2→11.1→ 15.4→  8.3 企画・調査の上昇 0  →  0  →  2.8→ 13.8→16.7

社長になって会社の業績は 大いに上がったの上昇 25.0→27.8→32.4→44.1→63.6 ほとんど変わらないの低下 41.7→ 16.7→  8.8→  5.1→  0

起床時刻 7時前の低下 71.4→58.8→68.6→57.8→33.3 7時半〜7時59分の上昇 0  → 11.8→ 11.4→ 12.5→33.3

出社時刻 8時〜8時29分の上昇 16.7→25.0→22.9→25.8→36.4 就寝時刻 10時台の低下 23.1→17.6→17.6→17.5→  8.3 後継者 長男の上昇 21.4→29.4→28.6→33.8→58,3 自分かぎりの低下 28,6→ 11.8→  5.7→  3.1→  0

意思決定のパターン 役員と協議して社長決定の上昇 28.6→35.3→40.0→42.2→50.0 地域の違いによる商売(仕事)実感 やや違いを感じるの上昇 16.7→25.0→39.4→45.6→36.4 めざす主要事業の市場地位 ニッチャーの低下 50.0→40,0→40.0→31.1→30.0 注(1)図表3に準じる。

 ② (1)の条件に合わないが上昇ないし低下傾向を示した項目としては次のものがある。

  従業員数・9人以下の低下,売上高・1億円以下の低下,経常利益額・1億一一 5億円の上   昇,社長の年齢・50代の低下,得意分野・技術(研究開発)の上昇・購買・外注の低下,

  大阪出張回数・1回未満の低下,就寝時刻・12時台の上昇・1時以降の上昇。

業の市場地位が「ニッチャー」などである。

 つまり,戦前創業で衰退期に入っていて業績がきわめて悪い企業である。社 長は得意分野が製造で,業績を変えられず,早起きであるが,市場地位はニッ チャーをめざしている企業である。成長には縁遠い要素が目立っているのであ

る。

V 大阪府中小企業調査からみた成長・衰退要因

大阪府の中小企業で5年間ぐらいの売上高推移が急増したと答えた企業およ

(16)

   図表8 大阪府の急増企業および横ばい・減少企業で目立った項目 質 問 項 目 急増企業(11企業) 横ばい・減少企業(25企業)

創業年次 □昭和50年代    (19.6,40.0) △昭和50年代    (15,6,4.8)

資本金 △1,000万〜5,000万円(18.0,333)

業種 ムサービス業     (19.4,8.3)

常用従業員数 09人以下     (177,32.0)

対前年売上高成長率 ○マイナス     (20.4,28.0)

00 〜 5%      (30.6,56.0)

△ 5 〜10%      (28.8,  0  ) △5 〜10%      (16.8,12.0)

010〜30%      (36.9,70,0) △10〜30%      (29.1, 4.0)

主要事業・製品のライフサ ○後期成長期     (25.2,40.0)

イクル △成熟期      (27.8,0) ○成熟期      (15.1,42.9)

最終学歴 ○高専・短大    (25.2,36.3)

性格に近い三英傑 △秀吉       (29,0,9.1)

○家康       (25.5,63.6>

東京出張回数 ○なし         (22.8,36.0)

勤務時間(退社一出社時刻) Q10時間台      (24.6,50.0)

後継者 △長男       (20.2,4.0)

地域の違いによる商売(仕 ○大いに違いを感じる(35.3,81.8) x大いに違いを感じる(145,32.0)

事)実感 △やや違いを感じる (25.8,18,2)

地域の違いによる商売(仕事)のあり方 △大いに違えるべきだ(22.1,0)

注(1)(2)(3)は図表2に同じ。

 (4)差異が認めちれなかった質問項目としては次のものがある。

  最新の年間売上高,経常利益額,社長の性別,現在年齢,就任時年齢,創業者との関係,

  得意分野,望ましい後継社長像,思いがけず大金が手に入ったとき,経営上の重点,社長   になって会社の業績は,海外出張回数,名古屋出張回数,起床時刻,出社時刻,退社時   刻,就寝時刻,名古屋地域での商売(仕事)経験,商売(仕事)がしてみたい所,めざす   主要事業の市場地位,意思決定のパターン、

び横ばい・減少したと答えた企業で,全サンプルに比べて差異の目立った項目 を一覧化すると図表8のとおりである。

 これから急増企業の特徴を要約的に述べてみよう。対前年売上高成長率で「10

〜30%」が多く,主要事業・製品のライフサイクルは「後期成長期」が多く,

最終学歴で「高専・短大」が相対的に多く,性格に近い三英傑は「家康」が多 い。勤務時間は「10時間台」が多く,地域の違いにより商売(仕事)は「大い に違いを感じている」が,商売(仕事)のあり方を「大いに違えるべきだ」と するものは皆無である。

 逆に,横ばい・減少企業で目立ったことは,従業員数「9人以下」で,対前 年売上高成長率も「マイナス」を含め「5%以下」,主要事業・製品のライフサ イクルは「成熟期」が多く,東京出張回数は「なし」が相対的に多いことなど

(17)

       環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1) 349 である。

 要するに,急増企業では業績のよさと,家康に代表される着実さ,手堅さが 感じられる。そして地域の違いによる商売(仕事)は大いに違いを感じてもあ り方を違えるべきとするには至らない。つまり,きめ細かさまでは追求してい ないのである。横ばい・減少企業では成長期を通りすぎた小規模な業績のあが らない積極性に欠ける企業であるところに特徴が認められる。

 つぎに,成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下するなど特定の傾 向を示した項目をあげてみるならば図表9のとおりである。

 急増企業ほど上昇した項目を示してみると,「サービス業」,従業員数「50〜

99人」,対前年売上高成長率「10〜30%」,主要事業・製品のライフサイクルで

「中期成長期」,社長年齢で「40代」と「50代」,創業者との関係で「その他の 親族」,社長になって会社の業績は「大いに上がった」,退社時刻「5時台」,商 売(仕事)したい所は「東京」,地域の違いによる商売(仕事)は「大いに違い

を感じる」などとなっている。

 つまり成長度が高まるほど成長に望ましいと考えられる要素のウエイトの上 昇が認められるのである。

 逆に成長度が高まるにつれ低下した項目は,創業年次で「昭和40年代」,業種 で「卸売業」,売上高「1億円以下」,売上高成長率「マイナス」・「0〜5

%」,主要事業・製品のライフサイクルで「成熟期」と「衰退期」,社長の年齢

「70代以上」,社長になって会社の業績は「ほとんど変わらない」とするもの,

就寝時刻「10時前」,勤務時間「12時間台」,意思決定が「社長中心の意思決 定」,名古屋地域での商売(仕事)を「現在している」とするもの,商売(仕事)

したい所を「大阪」とするもの,地域の違いによる商売(仕事)に「やや違い を感じる」・「地域差を感じない」ものである。

 つまり,小規模の成熟期,衰退期を迎えた業績がよくない企業で,社長も高 齢で業績をかえられず,社長中心の意思決定をしているものである。成長に望

ましいと考えられる要素があまり見受けられないことが明らかであろう。

(18)

   図表9 成長度が高まるにつれウエイトが上昇ないし低下した項.目        (大阪経営者調査)

横   ジ   漸   急

質  問 項   目 ば    グ「減  ザ上

・少% グ昇% 増%  増%

創業年次 昭和40年代の低下 23.8 →  25.0 一♪ 18.7 →  10.0

業種 卸売業の低下 12.5 →   7.4 →   0   →   0

サービス業の上昇 8.3 → 29.6 → 33.3 → 40.0

従業員数 50〜99人の上昇 4.0 →  10.7 → 20.0 → 27.3

売上高 1億円以下の低下 16.0 →  10.7 →   5.4 →   0

対前年売上高成長率 マイナスの低下 28,0 →   7.1 →   0   →   0

0〜5%の低下 56.0 → 21,4 →  16.3 →  10,0

10〜30%の上昇 4.0 → 42.8 → 34.5 → 70.0

主要事業・製品のライフサイ 中期成長期の上昇 23,8 → 29.6 一> 44,0 → 50.0 クル 成熟期の低下 42,9 → 33.3 → 24.0 →   0

衰退期の低下 14,3 →   3,7 一ナ  2.0 →   0

社長の年齢 40代の上昇 20.8 → 29.6 → 26.9 → 36.3

50代の上昇 29.2 → 33.3 → 38.4 →  45.4

70代以上の低下 16.7 一ナ  7.4 →   5.7 →   0

創業者との関係 その他の親族の上昇 4.0 →   0   →  13.0 →  27.3

社長になって会社の業績は 大いに上がったの上昇 34.8 → 46.4 →  54.5 → 54.5

ほとんど変わらないの低下 21.7 →  10.7 →  5.5 →  9.1

退社時刻 5時台の上昇 8.0 →  10.7 →  12.7 →  18.2

就寝時刻 10時前の低下 26.1 →  14.3 →  18.2 →   9.1

勤務時間(退社一田打時刻) 12時間台の低下 16.0 一♪ 10.7 一ナ  1.8 →   0

意思決定のパターン 社長中心の意思決定の低下 44曾0 →  42.9 →  32曾7 →  18.2 名古屋地域での商売(仕事〉経験 現在しているの低下 40.0 → 32.1 →  32,7 → 27 3 商売(仕事)したい所 東京の上昇 54.2 一ナ 55.6 → 68.6 → 70.0

大阪の低下 33.3 → 37.0 → 23.5 → 20.0 地域の違いによる商売(仕事) 大いに違いを感じるの上昇 32.0 一→ 39.3 → 50.0 → 81.8

実感 やや違いを感じるの低下 56.0 →  46.4 →  42.3 →  18,2

地域差を感じないの低下 12.0 →  14.3 →   7.7 →   0

注(1)図表3に準じる。

 ②(1)の条件に合わないが上昇ないし低下傾向を示した項目としては次のものがある。

  創業年次・昭和50年代の上昇,経営上の重点・企業の拡大の上昇,海外出張回数・なしの   上昇,東京出張回数・10回以上の上昇。

VI長期永続型中小企業調査からみた成長・衰退要因

 創業後60年以上という長期間にわたって存続してきた,いわゆる長期永続型 中小企業で,最近4年間の売上高の伸びが50%以上とした高成長企業および売 上高が減少とした減少企業で,全サンプルに比べて差異の目立った項目を一覧 化すると図表10のとおりである。

 これから高成長企業の特徴を要約的に述べてみよう。高成長企業は経常利益

(19)

      環境激変下の中小企業の成長要因・衰退要因(1)

図表10 長期永続型の高成長企業および減少企業で目立った項目

351

質 問 項 目 高成長企業(27企業〉 減少企業(56企業)

企業形態 *○合名・合資会社等(11.1,28,6)

*×株式会社   (9.4,69,6)

創業年 *×明治時代    (14,8,11.1) *×大正時代   (9.1,33,9)

平成元年度売上高 *□1億〜5億円未満 (9.0,446)

平成元年度経常利益 01億〜5億円未満(16,8,33,3)c ○損失     (17.8,30.4)a

△5千万〜1億円未満(8.4,0)c 従たる業種分類 ◎食料品製造業  (8.5,11.1>c

◎家具・装備品製造業 (3.4,3.7>c

◎非鉄金属製造業(3.4,3.7)c 設立時の業種 ◎家具・装備品製造業 (5.4,5.9)c

◎金属製品製造業(12.2,17.6)c

業種を変えた回数 △1回      (11,3,0)c

現在の社名に変えた時期 00〜10年前  (33.0,41.7)a *○戦前     (15.8,600)

経営者になってからの年数 *020〜29年   (16.1,40.7)

出身 *△営業系    (15.0,14.8)

創業以来何代目 ◎初代目    (7.9,11.1)c 02代目    (15.7,29,6)c 従業員不足の職種 *○企画・研究者  (15.7,51.9)

人材養成の方法 ○業務に従事しながら教育(16.7,963)c

従業員研修の内容 *□経営者研修   (14.0,37.0)

従業員に対する感想 〇十分働いてくれている (22.8,70.4)c

△もっと働いてほしい(20.3,11.1)c *○もっと働いてほしい(11.5,42.9)

従業員の定着率について *□良い方だと思う(14.2,81.5) △良い方だと思う (13.7,53.6>c

○普通だと思う (14.5,44.6>c 定着率向上策の実施状況 *△実施している (10.1,37.5)

*○実施していない(10.0,58.9>

規模の拡大について △しょうと思ってもなかなか実現出来ない *□しょうと思ってもなかなか実現出来ない

(25.2,18.5)c (9.9,53.6)

○特に意識する必要はない(25.1,70.4)c

販売ルート △商社・卸を通して(19.3,11.1)c ○商社・卸を通して(16.0,46.4)c

*×代理店を通して(9.4,7.1)

輸入の有無 *○なし      (15.9,85.2)

消費者ニーズの高度化・多 *○有利である   (17.7,63.0) *△有利である  (11.4,33,9)

様化の影響 ○不利である  (15.1,33.9)c

メカトロニクス機器の導入 OCAD機器   (16.0,29.6)c

状況 ○自動搬送装置  (20,3,40.7)c

中小企業に適している理由 ○短納期が要求される分野(24,9,55.6)c *×多品種少量生産の分野 (12.4,59,5)

本業分野の今後の経営戦略 ◎新事業分野を開拓し,本業分野縮小

(7.1,10.7)c

分社化した企業数 *01社     (33.1,77.8)

経営環境変化の察知の情報 ◎公的機関の指導(86,14,9)c

収集手段

経営上の問題点 △主力商品の販売不振(21.4, 0 )b ○主力商品の販売不振(197,41.1)b

*○人手不足   (17.9,59.3)

*x人件費上昇  (14.4,22.2)

○機械設備の陳腐化(19.1,33.3)b

永続要因・経営者特性 ×創造力     (9.3,3.6)c

*一山耐力     (9.4,51.8>

〃  ・経営戦略要因 *△利益追求   (13.1,19.6)

〃  ・組織要因 □規模の拡大  (14.9,25.9)c △役員・幹部の結束(14.0,26.8)c

参照

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