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(1)

著者 松下 由憲

発行年 2020‑12

出版者 静岡大学

URL http://doi.org/10.14945/00028257

(2)

博士学位論文

車載補機用デュアルポート絶縁形 DC/DC コンバータ の新規トポロジーと制御法に関する研究

2020年 1 2月

静 岡 大 学

大学院自然科学系教育部 環境・エネルギーシステム専攻

松下由憲

(3)

1

車載補機用デュアルポート絶縁形 DC/DC コンバータの新規トポロジーと 制御法に関する研究

目次

第1章 序論 ... 3

1.1 研究背景 ... 3

1.1.1 車載補機用絶縁形DC/DCコンバータの動向 ... 3

1.1.2 電力変換器の小型化動向... 5

1.1.3 電力変換器のノイズ対策動向... 7

1.1.4 研究背景まとめ... 8

1.2 研究目的 ... 9

1.2.1 問題解決の手段と目的... 9

1.2.2 目標値の設定... 11

1.2.3 本論文の目的, 目標値まとめ... 16

1.3 論文の構成と概要 ... 17

参考文献 ... 19

第2章 デュアルポート絶縁形DC/DCコンバータのトポロジー, 制御法の検討23 2.1 緒言 ... 23

2.2 絶縁手段の決定 ... 24

2.3 出力分岐点の決定 ... 24

2.4 一般的なDC/DCコンバータ, 整流回路 ... 27

2.4.1 絶縁形DC/DCコンバータ ... 27

2.4.2 非絶縁形DC/DCコンバータ ... 31

2.4.3 整流回路... 35

2.5 一次側インバータ部の選定 ... 39

2.6 二次側整流部案の選定 ... 41

2.7 デュアルポート制御案の選定 ... 44

2.8 結言 ... 46

参考文献 ... 48

第3章 1 kW, 100 kHzデュアルポート絶縁形DC/DCコンバータの新規出力制御 ... 49

3.1 緒言 ... 49

3.2 制御法の概要と主回路構成 ... 50

3.3 動作原理 ... 53

3.4 実機検証による提案法の検証 ... 56

3.4.1 回路仕様... 56

3.4.2 電圧目標値応答特性... 61

(4)

2

3.4.5 シミュレーションと実測結果の比較評価... 70

3.4.6 負荷外乱応答特性... 73

3.5 効率, 損失評価 ... 75

3.5.1 測定方法... 75

3.5.2 効率特性... 76

3.5.3 損失解析... 77

3.6 結言 ... 79

第4章 2 kW, 400 kHz新規デュアルポート絶縁形DC/DCコンバータ ... 80

4.1 緒言 ... 80

4.2 回路構成と特徴 ... 81

4.3 動作原理 ... 82

4.4 実機検証 ... 87

4.4.1 主回路構成... 87

4.4.2 制御回路構成... 89

4.4.3 動作点... 91

4.4.4 電圧目標値応答特性... 92

4.4.5 動作波形... 94

4.4.6 詳細な動作モード... 96

4.4.7 負荷外乱応答特性... 102

4.5 効率, 損失評価 ... 105

4.5.1 効率特性... 105

4.5.2 損失解析... 106

4.6 回路拡張による小型化の可能性 ... 109

4.6.1 拡張回路の構成と特徴... 109

4.6.2 回路拡張が装置体積に与える影響... 113

4.7 結言 ... 118

参考文献 ... 119

第5章 結論 ... 120

5.1 本論文の結論 ... 120

5.2 各章のまとめ ... 122

5.3 課題と今後の展望 ... 126

付録 ... 129

A. ハーフブリッジ回路におけるLLC共振ソフトスイッチング原理 ... 129

B. Hブリッジ回路におけるソフトスイッチング原理 ... 135

謝辞 ... 140

発表論文 ... 141

(5)

3

第 1 章 序論

1.1 研究背景

1.1.1 車載補機用絶縁形 DC/DC コンバータの動向

地球温暖化の原因と言われている CO2の排出量は, 全世界の約四分の一 が輸送分野からのものであると言われている[1]。これを減らすため, 自動

車業界はEV, PHV, FCVといったモータ駆動車を市場に投入しており, その

販売数は市場投入以来伸び続けている[2]。また2020 年12月には, 日本の 経済産業省が 2030 年代半ばにガソリン車の新車販売を禁止するという発 表をしており[3], アメリカカリフォルニア州, カナダ, アイスランド, イ ギリス, アイルランド, フランス, スペイン, スロベニア, インド, 中国に

おいても 2030~2040 年までにガソリン車の新車販売を禁止すると発表し

ている[4]。よってモータ駆動車の販売数は今後さらに加速していくと予想 される。

これらモータ駆動車の補機電源には, モータ駆動用電源を入力とする絶

縁形DC/DCコンバータが利用されている[5,6]。ステアリングやリクライニ

ング機構のような従来機械式であった機能の電動化, そしてシートヒータ

(6)

4

ーやドライブレコーダーのような快適性, 利便性を向上させる電装品の増 加により, 補機電源の電力容量および消費電力は今後増加していく傾向が

見られる[7,8]。この電力容量増加に伴い増加する導通損失を減らすために,

従来 12Vであった補機電源を48V 化することが提案されている[9,10]。し かし, コスト, 部品供給, メンテナンスサービスといった観点から, すべて の12V電源用負荷を48V電源に対応させることは困難であるため, 従来の 12V 電源を要求する負荷の需要も依然として残る。したがって補機電源に は48Vと12Vの2系統が要求される。

補機電源の2系統化を実現する方法の一つに, 欧州でLV148として規格 化されている48-Vマイルドハイブリッドと呼ばれる構成がある。この構成 は, エンジン駆動車のオルタネータで直流48Vを発電し, 48 Vと12 Vの非 絶縁双方向DCDCコンバータにより12V電源を作ることで48Vと12Vの 2系統を賄っている[11]。しかし, この構成は12V生成のために二回の電力 変換が行われているため効率が悪い。別の2系統電源の実現方法として, モ ータ駆動用電源を入力とする絶縁形DC/DCコンバータを2台搭載する案が あるが, この構成は2台搭載による大型化が問題になる。そのため, モータ 駆動車における補機用電源は一体化が進んでいる。駆動用の高電圧を入力,

48V, 12Vを出力とする1入力2出力DC/DCコンバータをはじめとし, 自動

車に搭載した再生可能エネルギー源からの給電や V2X 等も考慮した双方 向マルチポートコンバータの研究が行われている[12-17]。

(7)

5

1.1.2 電力変換器の小型化動向

車載補機用電源における小型軽量化のメリットは居住空間の増加, 燃費 の向上が挙げられるが, 車載補機用に限らず, 電力変換器には小型軽量化 の需要がある。小型化実現のための主な手段として高周波化による受動素 子の小型化が挙げられる[18]。

例えばトランスの最大磁束密度 Bmax, インダクタ, キャパシタのインピ ーダンスZL, ZCはそれぞれ以下の式で表される。

𝐵 = 𝑉

2𝜋𝑓𝑁𝐴 (1-1)

ZL = j2𝜋𝑓L (1-2)

ZC = 1

j2𝜋𝑓C (1-3)

ここで, Vはトランス一次側印加電圧(正弦波)の振幅, fは周波数, Nは 一次巻き線の巻数, Aeはコア材の実効断面積, Lはインダクタンス, Cはキャ パシタンスである。これらの式より, 高周波化(fの増加)によりBmax, ZL, ZC

を一定に保ったままAe, N, L, Cを小さくすることできることがわかる。Ae, N, L, Cはそれぞれ素子サイズと正の相関があるパラメータであるため, 高 周波化によりこれら受動素子の小型化が可能となる。

その一方で, 高周波化により, 周波数に依存する損失であるスイッチン グ素子のスイッチング損失やトランス, インダクタの鉄損が増加する。損 失は主に熱になるため, これらの損失が増加すると, 熱を逃がすために熱 抵抗が小さく体積の大きな放熱器が必要になる。つまり, 高周波化により 受動素子の体積を小さくすることができても, 放熱器の体積が大きくなっ てしまう。これでは装置全体の小型化は困難である。

(8)

6

この周波数に依存する損失の低減策として, スイッチング損失に対して はソフトスイッチングやスイッチングアシストといった手法が[19-21], 鉄 損増加に対してはより損失の少ない材料特性や構造が[22-24]研究されてい る。その結果, 高周波化に伴う損失の増加, 即ち放熱器体積の増加は抑制さ れていくと予想される。

図1-1に, 周波数と受動素子体積, 放熱器体積の概念図を示す。周波数が 増加するにつれて, 受動素子のサイズが減少するとともに放熱器のサイズ が増加する。両者の和を装置体積と仮定する*と, 装置体積は周波数に対し て下に凸のカーブを描くため, その極小値における周波数が装置の小型化 に対して最適な周波数となる。この周波数は入出力の電力条件により変化 するが, 先述した周波数に依存する損失低減の研究により[19-24], 今後増 加していくことが予想される。

図1-1 電力変換器の体積と動作周波数

*実際の装置体積は部品が搭載された基板(や放熱器)を囲う筐体の体積である。

筐体の体積に対して回路の構成部品が占める割合を実装率と定義すると[25, 26], 1-1は実装率100%の極端な例である。

(9)

7

実際, GaN素子を利用した高周波化による駆動電力変換器の小型化はAC

アダプタ[27, 28]やパワーコンバータ[29]といった領域で実用化されている。

車載用にも開発が進められており[30], GaN 素子を採用した高周波駆動の 小型車載補機電源の実用化は着実に近づいてきている。

1.1.3 電力変換器のノイズ対策動向

負荷の増加, 高周波化により電力変換器が大電力高周波で動作するよう になると, スイッチング時の電圧, 電流の時間変化率(di/dt, dv/dt)が大き くなる。それに伴い, C dv/dt , L di/dtで表されるサージ電流, 電圧が大きく なるため, ノイズが大きくなる。ここで, C, Lは回路内に意図せず含まれる 寄生キャパシタンス, 寄生インダクタンスであり, 例えばスイッチング素 子の出力キャパシタンス, 基板の層間のキャパシタンス, トランスの漏れ インダクタンス, 配線のインダクタンスなどが挙げられる。一般的に回路 素子は定格電圧, 電流が大きいほどサイズが大きくなる。よって, 装置小型 化のためにはノイズ電圧, 電流が原因となる素子定格電圧, 電流の増加は 防がれるべきである。

ノイズによる素子定格増加を防ぐために, ノイズを発生させないための 対策と, 発生したノイズを抑制する対策の 2 つが挙げられる。まずノイズ を発生させない対策として, 前述した意図せず含まれる寄生成分を極力小 さくすることが挙げられる[31].。しかし, これらの寄生成分は素子, 基板の 構成上ゼロにすることは不可能であるため, この対策ではカバーしきれな いノイズが発生してしまう。そこで, このノイズを抑制する対策としてス ナバ回路の挿入が挙げられる。スナバ回路はサージのエネルギーの一部を キャパシタに分けることでサージを抑制しており, そのエネルギーは基本

(10)

8

的に抵抗で消費され, 損失となる。よってスナバ回路は本来の回路の機能 上不必要なものであるため, 極力前者のみの対策が望ましい。なお, ここで は大電力高周波動作を前提としているため, di/dt, dv/dtの抑制は考えていな い。

これらの対策により素子定格の増加によるサイズ増加を防ぐことができ たとしても, 電力伝送部で生じた避けられないノイズピークは数十ボルト に達する。制御信号部は一般的に12-V電源で駆動しているため, もし電力 伝送部で生じたノイズがそのまま制御信号部に回り込んでしまうと, 意図

しない ON/OFF 信号がスイッチング素子に与えられ, 出力電圧の変動や素

子の破壊といった問題が発生する。この問題を防ぐため, レイアウト上で 制御信号部と電力伝送部を切り分けることは必須である。

1.1.4 研究背景まとめ

1.1節では, 車載補機の大電力化のため, 補機電源の大型化が課題である こと, 補機電源の小型化のために動作周波数が高周波化していくこと, そ して大電力高周波によって生じるより大きなノイズの抑制が課題であるこ とを述べた。1.2節では, これらの背景に基づく研究目的, およびその目標 値について述べる。

(11)

9

1.2 研究目的

1.2.1 問題解決の手段と目的

本論文では, 電圧 2 系統化による車載補機電源大型化の問題を解決する ため, 1入力2出力のデュアルポート絶縁形DC/DCコンバータ(以下, デュ アルポート回路)の新規トポロジーおよび制御法を提案し, それを車載を 想定した入出力仕様で高周波動作させることを目的とする。

デュアルポート回路が装置大型化の解決手段となる理由を説明するため, 図 1-2に補機電源の電圧が 2系統化したときの従来の構成と提案する構成 を示す。ここで, Vinは電圧数百Vのモータ駆動用バッテリ電圧である。

(a) 絶縁形-非絶縁形カスコード構成

(b) 絶縁形並列構成

(c) 提案構成(デュアルポート回路)

図1-2. 電圧2系統における電源構成の比較

(12)

10

図 1-2(a)は前述の 48-V マイルドハイブリッド構成をモータ駆動車に 適用した絶縁形-非絶縁形カスコード構成である。Vin を入力とする絶縁形

DC/DC コンバータによって入力と絶縁された 48V 電源が生成され, その

48Vを入力とする非絶縁形DC/DCコンバータによって12Vが生成される。

この方式は, 非絶縁形DC/DCコンバータに電力の双方向性をもたせること が比較的容易であり, その電力双方向性により電源の冗長性が増すメリッ トがある。その一方で, カスコード接続であるため12Vを出力するために Vinから2回の電力変換を行っており, 効率が悪いというデメリットがある。

図1-2(b)は既存の12V出力の絶縁形DC/DCコンバータに, 48V出力の

絶縁形DC/DCコンバータを追加し並列に接続した構成である。容易に実現

可能であるが, 体積が大きくなることが問題である。

図1-2(c)は提案するデュアルポート回路構成である。何らかの手段で

2つの回路を一体化させ, Vinを入力し, 48Vと12Vを出力する一つの回路と する。これにより, 上述の絶縁形-非絶縁形カスコード構成のデメリットで ある12V出力の低効率化と, 絶縁形2並列構成のデメリットである体積大 型化を解決する構成である。しかし, 1台の回路で2出力を制御する必要が あるため, 制御が複雑になるというデメリットがある。

以上の理由により, 1入力2出力のデュアルポート回路は車載補機用電源 の電圧 2 系統化による電源大型化の問題の解決手段となり得る。なお, こ れは参考文献[12-17]と同様のコンセプトである。[12-17]は複数ポートの双 方向電力伝送が可能であるが, 本論文ではよりシンプルに 1入力 2 出力の 単方向デュアルポート回路を対象とする。

(13)

11

1.2.2 目標値の設定

1.2.1項では本論文における目的を「デュアルポート回路の新規トポロジ

ーおよび制御法を提案し, 車載を想定した入出力仕様で高周波動作せるこ と」とした。本項では, 既存研究や車載補器用電源の調査結果に基づき, 「車 載を想定した仕様」の設定を行う。

出力電圧

出力電圧目標値は, は1.1.1項で述べた通り, 48 Vと12 Vとする。

入力電圧

図1-3に車載補機用電源の最大入力電圧を示す[32-34]。調査した結果, 最 大入力電圧は200 ~ 450 Vであった。新電元製の電源については, 採用車種 は不明である[34]。これらの平均を取り, 本論文における入力電圧の目標値

は300 Vとする。

図1-3. 車載補機用電源の最大入力電圧

0 100 200 300 400 500

target

[32] [34]

[32] [33] [33] [33]

[32]

新電元 HS250h

アクア LEXUS

C-HR プリウス PHV

m ax im um in pu t vo lt ag e (V )

プリウス

RX450hLEXUS

(14)

12 出力電力

図1-4に車載補機用電源の最大出力電力を示す[32-34]。図1-4より, 最大 出力電力は1120 ~ 2100 Wであった。新電元製の電源については出力電力 の記載がなかったため[34], 出力電流定格である150 Aを12 Vで出力した 時の電力としている。これらの平均電力は1530 Wであった。1.1節で述べ たように, 補器電力は大電力化する傾向にあるため, 本論文における最大 出力電力の目標値は1530 Wより大きな2000 Wとする。

図1-4. 車載補機用電源の最大出力電力

駆動周波数

1.1.2 項で述べたように, 装置小型化のための最適な駆動周波数は増加傾

向にある。一方で, 1.1.3 項で述べたように, 大電力高周波化に伴い di/dt, dv/dtが増加し, L di/dt, C dv/dtで表されるサージ電圧, 電流が大きくなるた め, 大電力になればなるほど高周波での駆動は困難になる。前述の入出力 仕様決定に用いた車載補機電源[32-34]からは駆動周波数のデータを得るこ

0 400 800 1200 1600

2000 target

maximum output power (W)

[32] [34]

[32] [33] [33] [33]

[32]

新電元 HS250h

アクア LEXUS

C-HR プリウス PHV

プリウス

RX450hLEXUS

(15)

13

とができなかったため, 出力がキロワットオーダーの1出力絶縁形DC/DC コンバータの既存研究[35-44]から, 最大出力電力と駆動周波数の関係を調 査した。その結果を図1-5に示す。図1-5より, 高周波になるほど最大出力 電力が小さくなる傾向が確認できる。本論文では小型化を見込んだ高周波 駆動を視野に入れており, かつ前述の通り目標最大出力電力を 2 kW とし たため, 図中のtarget 2である2 kW, 400 kHz付近での駆動を最終目標とし た。周波数を400 kHz付近としたのは, AMラジオの周波数帯である約500

kHz ~ 1600 kHzを避けるためである。また, はじめから2 kW, 400 kHz付近

での駆動を達成するのは難易度が高いと考え, その前段として既存研究と 同程度の難易度と思われる, 図中にtarget 1と示した1 kW, 100 kHz付近で の駆動を実施し, 動作における問題点の有無を確認することをはじめの目 標とした。

10 100 1000

0 1000 2000 3000 4000 5000 6000

target 2

frequency (kHz)

[42] [43] [44]

[40]

[41]

[39]

[38]

[37]

[36]

[35]

maximum output power (W)

target 1

図1-5. 既存研究における最大出力電力と周数の関係

(16)

14 最大効率(参考)

本論文における目的は「デュアルポート回路の新規トポロジー及び制御 法を提案し, 実際に動作させること」であるため, ここからは参考値という 位置づけである。

図 1-6 に既存研究[36-44]における最大効率と周波数の関係を示す。結果 が示すように, 周波数と最大効率の間に相関は見られなかった。これらの

平均値が 95.2%であることから, 1出力のキロワット出力絶縁形DC/DC コ

ンバータの最大効率の参考値を95%とする。

図1-6. 既存研究における最大効率と周波数の関係

この参考値をデュアルポート回路に適用することを考える。図 1-7 に示 すカスコード構成の各コンバータの効率48, converter 2が95 %であると仮定 すると, 12V出力の効率12は0.952と計算される。各出力の効率の平均をデ ュアルポート回路の効率と仮定すると, デュアルポート回路における最大 効率の参考値は以下の式より92.6%と計算される。

10 100 1000

90 92 94 96 98 100

95.2%

frequency (kHz)

[42] [44]

[43]

[40]

[41]

[39]

[38]

[37]

[36]

maximum efficiency (%)

average

η=0.95+(0.95×0.95)

2 = 0.926 (1-4)

(17)

15

図1-7. デュアルポート回路の効率計算イメージ

電力密度(参考)

図1-8に車載品, および既存研究の電力密度を示す。[32-34]は車載品, [45]

は研究レベルの双方向 3 ポート絶縁形 DC/DC コンバータであり, 750 W,

175 kHz駆動, 最大効率95 %である。3ポートコンバータであるため, 上述

の目標値設定の参考データには含めなかったが, 仮に含めたとしても出力 電圧, 駆動周波数, 最大効率とも, 設定した目標値に変更を与える値では ない。なお, 駆動周波数, 最大効率の設定に用いた文献[35-44]には体積の情 報が含まれていなかった。図1-8より, 電力密度は0.7~3.75W/ccであった。

電力密度については参考値を一意に決めず, 現状の値を把握するに留める。

0 1 2 3 4

output power density (W/cc)

中央研究所 豊田

[45]

[32] [34]

[32] [33] [33] [33]

[32]

新電元 HS250h

アクア LEXUS

C-HR プリウス PHV

プリウス

RX450h LEXUS

図1-8. 車載補機用電源および既存研究における出力密度

(18)

16

1.2.3 本論文の目的 , 目標値まとめ

1.2.1項, 1.2.2項で設定した本論文の目的および目標値を表1.1に示す。

車載を想定した入出力条件で高周波動作する, 新規デュアルポート絶縁形

DC/DC コンバータのトポロジーおよび制御法を提案することが本論文の

主目的である。1.1.1 項で述べた車載補機電源の背景から出力電圧を 48 V

と12 Vとし, 実際の車載補機用絶縁形DC/DCコンバータ調査から入力電

圧を 300 V, 出力電力を 2 kW とした。また, キロワット出力の絶縁形

DC/DCコンバータの既存研究調査から, 出力電力と駆動周波数に負の相関

があることが明らかになったため, 2 つ出力電力と周波数の目標値を設定 した。ひとつは既存研究と同程度の難易度である1 kW, 100kHz付近での駆 動とし, もうひとつは既存研究を超える難易度である2 kW, 400 kHz付近で の駆動とした。また, 参考値として, 調査結果から最大効率92.6 %, 電力密 度0.7~3.75 W/ccを得た。

表1-1 本論文の目的および目標値

目的

デュアルポート回路の新規トポロジーおよび 制御法を提案し, 車載を想定した入出力仕様 で高周波動作せること

目標値

出力電圧 48 V, 12 V 入力電圧 300 V 出力電力

周波数

① 1 kW, 100 kHz付近

② 2 kW, 400 kHz付近 参考値

最大効率 92.6 % 電力密度 0.7 ~ 3.75 W/cc

(19)

17

1.3 論文の構成と概要

本論文は全5章で構成される。構成のイメージを図1-9に示す。

図1-9 本論文の構成

第1章「序論」では, 車載補機用絶縁形DC/DCコンバータの社会的背景 および電力変換器の技術的背景から現状の問題点を述べ, 本論文の目的を 示した。そして車載補機用電源や既存研究の調査から, 目標値を設定した。

第2章「デュアルポート絶縁形DC/DCコンバータのトポロジー, 制御法 の検討」では, 一般的な回路トポロジーと車載補機電源に必要な条件から, 段階を踏んで新規トポロジーおよび制御に適した案を選定した。

第3章「1 kW, 100 kHzデュアルポート絶縁形DC/DCコンバータの出力

制御」では, 少ない制御信号で異なる 2 電圧を制御する方法を提案した。

(20)

18

提案手法を適用可能な一番シンプルな回路に対して, 一つ目の目標値であ

る1 kW, 100 kHz付近での動作を目的とした。試作回路を作製し, その評価

結果と課題を示した。

第4章「2 kW, 400 kHzデュアルポート絶縁形DC/DCコンバータ」では, 二つ目の目標である2 kW, 400 kHzで動作する回路を提案し, 試作, 評価, 課題出しを行った。また, 提案回路の拡張案により, 装置小型化の可能性を 検討した。

第5章「結論」では, 本論文の成果, 各章の概要および課題と今後の展望 についてまとめた。

(21)

19

参考文献

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Overview.

https://www.iea.org/reports/co2-emissions-from-fuel-combustion-overview 2. IEA—International Energy Agency. Global EV Outlook 2020.

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https://www3.nhk.or.jp/news/html/20201203/k10012743081000.html 4. NHK 「ガソリン車が消える? 近づく脱炭素社会」

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(25)

23

第 2 章 デュアルポート絶縁形 DC/DC コンバ ータのトポロジー , 制御法の検討

2.1 緒言

第 1 章で, 本論文の目的が「デュアルポート回路の新規トポロジーおよ び制御法を提案し, 車載を想定した入出力条件で実機動作させること」で あることを述べた。本章では, 第 1 章で述べた車載補機電源に必要な条件 と既存の一般回路の特性を比較することにより, 提案すべき新規トポロジ ー, 制御法の案を絞り込んだ。

表 1-1 に示した本論文の目的および目標値から, 本論文で提案するト ポロジーおよび制御法に関する条件を整理すると, 以下のようになる。

 入出力間が絶縁されていること

 最大出力電力が2 kWであること

 入力電圧が300 Vであること

 48 V, 12 Vの2電圧を出力する降圧回路であること

これらの条件をもとに, 段階を踏んで新規トポロジーおよび制御法に適 した回路トポロジー条件, 制御条件を選定していく。

(26)

24

2.2 絶縁手段の決定

上述の成立条件のうち, まずは候補となる手段の少ない, 電力の絶縁方 法について考える。電力の絶縁方法は, トランス, キャパシタの利用が挙げ られるが, ①車載補器用電源の電力部の絶縁にはトランスが使われており, キャパシタを用いた例はないこと, ②実績のあるトランス絶縁のほうが製 品化への敷居が低いこと, ③トランスにはキャパシタには無い, 巻き数比 による変圧機能があること, ④大電力のキャパシタ絶縁の研究が少なく, トランス絶縁に対する優位性が明らかではないことから, 電力の絶縁手段 にはトランスを用いることにした。これにより, 新規トポロジーの構成が 図 2-1 に示すように一次側インバータ部, 絶縁トランス部, 二次側整流部 の3部位に分けることができる。

図2-1 電力の絶縁にトランスを用いたDC/DCコンバータの構成

2.3 出力分岐点の決定

図 2-1に示す 3部位からなる構成の回路をデュアルポート化させるため に, 回路のどの部分で出力を分岐させるかを検討する。入力から絶縁され た2つの出力が要求されるため, 2つの出力ポートは共に絶縁トランスの二 次側にあることが必須である。一次側インバータ部, 絶縁トランス部, 二次 側整流部の各部で出力を分岐させる場合の構成を図2-2に示す。

(27)

25

(a) インバータ部で分岐

(b) 絶縁トランスで分岐

(c) 整流部で分岐

図2-2 デュアルポート化のための出力分岐部位と回路構成

(28)

26

図2-2(a)は一次側インバータ部で出力を分岐する場合の回路構成であ る。何らかの方法で一次側インバータ部から2つの交流波形を生成し, 2つ のトランスに入力する。各トランスで入力部から絶縁された後, 二次側に 接続された整流回路によって整流された2電圧が出力される。図2-2(a)

からわかるように, この構成にはトランス, 整流回路がそれぞれ 2 つ必要 になる。トランス, 整流回路が各出力専用になるため, 2出力の独立制御が 比較的容易であると想像されるが, 部品点数の削減による小型化のメリッ トを得ることができない。

次に図2-2(b)に絶縁トランス部で出力を分岐する場合の回路構成図を 示す。トランスで分岐された2 つの出力がそれぞれ整流回路に接続される 構成である。トランス出力を分岐させる方法は, 3巻き線トランスの使用が 妥当であると考えられる。この構成の場合, 全ての部位を一般的な回路で 構成できるが, 新規性はない。トランスの構造を工夫することでメリット を出せる可能性があるが, それは新規トポロジーとは言えないため, 本論 文の目的と合致しない。

最後に二次側整流部で出力を分岐する場合の回路構成図を図2-2(c)に 示す。二次側整流部に何らかの工夫を施し2電圧を出力する構成である。

一次側インバータ部で分岐させる場合とは異なり, 一次側インバータ部, トランスが共通であるため, これらの部位では部品点数の増加は起きない。

よって, 二次側整流部で部品の削減を行うことで回路全体としての部品点 数を減らすことが可能である。

以上のことから, 部品点数削減のメリットを出すことができる二次側整 流部での出力分岐を採用する。

(29)

27

2.4 一般的な DC/DC コンバータ , 整流回路

本節では一般的な絶縁形 DC/DCコンバータ, 非絶縁形 DC/DCコンバー タ, そして整流回路のトポロジーとその特徴を述べる。これら回路の特徴 と, 提案する車載補機用デュアルポート回路の条件を比較することで新規 トポロジー, 制御法の候補を絞り込む。

2.4.1 絶縁形 DC/DC コンバータ

一般的な絶縁形 DC/DC コンバータのトポロジーと入出力電圧の関係式 を表 2-1 に示す。これらの回路はいずれも一次側インバータ部, 絶縁トラ ンス部, 二次側整流部から構成されている。表2-1中の式におけるVin, Vout, D, N1, N2 はそれぞれ入力電圧, 出力電圧, スイッチングデューティサイク ル, トランス一次側巻き数, トランス二次側巻き数である。整流部の特徴は 後述するため, 本項では主に一次側インバータ部の特徴を述べる。

(30)

28

表2-1 一般的な絶縁形DC/DCコンバータ

方式 トポロジー 入出力関係式

フライバック Vout=N2 N1

D 1-DVin

フォワード Vout=N2 N1DVin

プッシュプル Vout=N2 N1DVin

ハーフブリッジ Vout=N2 N1DVin

Hブリッジ Vout=N2 N1DVin

フライバックコンバータ[1,2,3]

一次側インバータ部はスイッチング素子のみ, 二次側整流部はダイオー ドとキャパシタのみで構成されており, 他のトポロジーと比較して構成が 簡単である。一次側インバータ部は正電圧とゼロ電圧の2 レベルの交流矩 形波を生成する。スイッチング素子によりトランスをインダクタのように 機能させているため, 二次側回路にインダクタが不要である。代わりにト

(31)

29

ランス体積が大きくなる。スイッチング周期の半分しか電力伝送に寄与し ないため, 特に大電流出力において出力キャパシタのリプル電流が大きく なる。よって出力電流の小さな小容量電源向けに利用されることが多い。

フォワードコンバータ[1,2,3]

フライバックコンバータと比較すると部品点数は多いが, 構成が簡単な トポロジーである。トランスに片方向のみ励磁するため, 磁器飽和を防ぐ ためのリセット回路が搭載される。フライバックコンバータと同様, スイ ッチング周期の半分しか電力伝送に寄与しないため出力リプル電流が大き いが, 出力平滑インダクタがあるためフライバックコンバータよりは大電 流出力に向いている。

プッシュプルコンバータ[1,2,3]

一次側回路に電源→トランス→スイッチング素子の電流経路が2 つ存在 する回路である。相補的スイッチングによりこれらの電流経路を切り替え ることでトランスが両方向に励磁される。スイッチングパルス幅およびト ランス一次側の巻き数比をそれぞれ同値にできれば磁器飽和は発生しない。

一方の素子が OFF の間に他方の素子が ON して電力を伝送しているため, フライバックコンバータ, フォワードコンバータより出力容量が大きい。

その一方で, 一方の素子が電力伝送しているとき, 他方の電流経路内のト ランスは電力伝送に寄与していない。つまり一次側トランス巻き線の利用 率が半分であるため, トランスサイズに対する伝送電力率が後述のハーフ ブリッジコンバータ, Hブリッジコンバータより悪い。また, トランス一次 側にセンタータップが必要なためトランス構成が複雑になる。スイッチン

(32)

30

グ素子に電源電圧の 2 倍の耐圧が必要であるため, 主に入力電圧の低い電 源に使われる。

ハーフブリッジコンバータ[1,2,3]

電源を半分に分圧する2つのキャパシタと2つのスイッチからなるトポ ロジーである。ショートしてしまうため, S1とS2が同時にONになること はない。スイッチングの切り替えにより, 分圧されたキャパシタから負荷 へ電力供給する(電源利用率 50%)。例えばプッシュプルコンバータと同 じ入力電圧, 出力電力の時, 一次側スイッチング素子の電流が 2 倍必要と なる。そのため比較的入力電圧が高い場合に利用される。前述の3つのト ポロジーと異なり, トランス利用率は 100 %である。キャパシタの中点電 位をつくるのが難しい。トランスに直列の外付けキャパシタとトランスの 漏れインダクタンス, 励磁インダクタンスを利用した LC 共振によるソフ トスイッチングが知られている。

Hブリッジコンバータ[1,2,3]

ハーフブリッジコンバータの分圧キャパシタがスイッチング素子に置き 換わったトポロジーである。ショートしてしまうため, 同じレグのスイッ

チ(S1, S2およびS3, S4)は同時にONすることはない。プッシュプルコ

ンバータやハーフブリッジコンバータと異なり, 一次側スイッチング素子 には電源電圧が印加され, 電源電流が通流する。電源, トランスとも利用率

が100%であり, 大電力出力に向いている。各レグのスイッチングデューテ

ィ50%の相補的スイッチングを保ったまま2つのレグの位相をずらす位相 シフト制御によるソフトスイッチングが知られている。

(33)

31

2.4.2 非絶縁形 DC/DC コンバータ

一般的な非絶縁形DC/DCコンバータのトポロジーと, スイッチング素子

が ON/OFF の時の電流経路, および入出力電圧の関係式を表 2-2 に示す。

表中の式におけるVin, Vout, Dはそれぞれ入力電圧, 出力電圧, スイッチング デューティサイクルである。以下にスイッチング素子のON, OFF時の挙動 および各回路の特徴を述べる。

(34)

32

表2-2 一般的な非絶縁形DC/DCコンバータ

方式 トポロジー 電流経路ON/OFF 入出力関係式

降圧

チョッパ Vout=DVin

昇圧

チョッパ Vout= 1

1-DVin

昇降圧

チョッパ Vout=- D

1-DVin

cuk

コンバータ Vout=- D

1-DVin

sepic

コンバータ Vout= D

1-DVin

zeta

コンバータ Vout= D

1-DVin

(35)

33 降圧チョッパ[1,2]

スイッチング素子が ONのときは電源が負荷へ電力を供給するとともに インダクタ, キャパシタを充電し, OFFの時は負荷が電源から切断され, イ ンダクタ, キャパシタが負荷へ電力を供給する。インダクタとキャパシタ が平滑フィルタとして働くため, 出力リプルが小さい。スイッチング素子 がOFFすると入力電流が不連続になるため, この部分から放射ノイズが発 生する。降圧のみで, 昇圧はできない。

昇圧チョッパ[1,2]

スイッチング素子が ONのときは電源がインダクタを充電するとともに キャパシタが負荷へ電力を供給し, OFF のときは電源とインダクタが負荷 への電力供給およびキャパシタの充電を行う。ON 時はキャパシタのみで 出力を担保する必要があるため, 降圧チョッパより大きなキャパシタが必 要になる。昇圧のみで, 降圧はできない。

昇降圧チョッパ[1,2]

スイッチング素子が ONのときは電源がインダクタを充電するとともに キャパシタが負荷へ電力を供給し, OFF のときはインダクタが負荷への電 力供給およびキャパシタの充電を行う。昇圧チョッパと同様, ON時はキャ パシタのみで出力を担保する必要があるので, 大きなキャパシタが必要に

なる。ON時, OFF時共に電源から負荷へ直接の電力供給がなくインダクタ

を介しているため, 大きなインダクタが必要である。昇圧, 降圧共に可能で あるが, 出力が反転される。

(36)

34 cukコンバータ[1,4]

昇降圧チョッパの双対回路の入出力を電圧源化した回路。昇降圧チョッ パと同様, 出力極性が反転する。スイッチング素子がON時に電源からL1,

L2, C1が充電されるとともに, 負荷へ電力を供給する。OFF時はL1, L2, C1

の放電により負荷へ電力を供給する。ON時のスイッチング素子, OFF時の ダイオードに入力電流の約2 倍の電流が流れ込むため導通損が大きい。ま

た, C1 が両極に充放電を繰り返すため, 電流リプルが大きい。入出力共に

インダクタとキャパシタがフィルタとして働くため, ノイズが少ない。

sepicコンバータ[1,4]

cukコンバータのダイオードとL2が入れ替わったトポロジー。スイッチ ング素子がONのとき, 電源によりL1, L2, C1が充電される。このとき, 負 荷への電力供給はC2の放電で賄う。OFF時は, C2は充電され, L1, L2, C1 が放電する。このL1, L2, C1の放電および電源で負荷へ電力供給を行う。

cukコンバータと同様, ON時のスイッチング素子に入力電流の約2倍の電 流が流れるため, 導通損が大きい。出力極性が反転しない昇降圧チョッパ として機能する。出力非反転なので, GNDを他の回路と共通にできる。

zetaコンバータ[1,4]

スイッチング素子ON時, L1, L2, C1が電源により充電されるとともに, 電源が負荷に電力を供給する。OFF時はL1, L2, C1の放電で負荷に電力が 供給される。sepicコンバータと同様, 出力非反転の昇降圧コンバータであ

る。sepicコンバータと異なり出力部がLC平滑フィルタとして働くため, 出

力リプルが小さい。一方で電源にLが直列に挿入されていないため入力リ プルが大きく, 同じエネルギーを伝送する場合, 大きなC1が必要である。

(37)

35

2.4.3 整流回路

一般的な整流回路と入出力電圧の関係式を表 2-3 に示す。表に示した回 路はすべてトランスから振幅±Vin, 及び 0の3 レベル矩形波が入力される ものとする。表中の式におけるVout, Vin, Dはそれぞれ出力電圧, 入力電圧, トランス電圧デューティである。トランス電圧デューティの定義を図 2-3 に示す。半周期中に入力電圧が±Vinを取る時間割合がDである。

整流回路は大きく半波整流と全波整流に分類される。交流入力の単極性 しか整流しない回路を半波整流回路, 両極性を整流する回路を全波整流回 路と呼ぶ。半波整流回路の出力リプル周波数は入力周波数と同じで, 全波 整流回路の出力リプル周波数は入力周波数の2 倍である。以下に各整流回 路の特徴を述べる。

(38)

36

表2-3 一般的な整流回路

方式 トポロジー 入出力関係式

半波整流 Vout=D

2Vin

センタータップ式

全波整流 Vout=DVin

ダイオードブリッジ式

全波整流 Vout=DVin

倍電圧整流 Vout=2DVin

倍電流整流

(カレントダブラ) Vout=D 2Vin

図2-3 トランス電圧デューティの定義

(39)

37 半波整流回路

ダイオードが 1 つのシンプルな構成。半周期しか整流しないため, 整流 しない半周期の出力はキャパシタやインダクタによって確保されるため, 出力リプルが大きくなる。

センタータップ全波整流回路

トランス二次側のセンタータップをGNDに接続し, 残りの2端子にダイ オードをそれぞれ接続した構成。全波整流が可能になる。センタータップ で区切られた一方の巻き線が電力伝送しているとき, 他方の巻き線は利用 されない。そのため二次巻き線の利用率が半分であり, トランスサイズが 増大すること, そしてセンタータップが必要なためトランスが複雑になる ことがデメリットである。一方, 同時に通流するダイオードの数が 1 つで あるため, 後述のダイオードブリッジ整流回路より導通損が小さい(半分)

ことがメリットである。また, 利用されていない巻き線に加わる電圧の分 だけダイオードの逆電圧が加わってしまうため, 耐圧の大きなダイオード, 即ちオン抵抗の大きなダイオードが必要である。

ダイオードブリッジ全波整流回路

ダイオードを4 つ有している構成。センタータップ全波整流回路とは異 なり, センタータップを用いずに両極性の入力を整流できるため, 二次巻 き線の利用率は100%である。センタータップ式とは異なり, ダイオードに 必要な耐圧が小さい半面, 倍の数のダイオードが必要である。常に 2 つの ダイオードに通流するため, 導通損がセンタータップ方式の2倍である。

(40)

38 倍電圧整流回路

ダイオード2つ, キャパシタ2つからなる整流回路である。入力電圧の2 倍の電圧が出力される。よってこの整流回路を絶縁形DC/DCコンバータの 二次側回路に用いることで二次側巻線の巻き数を半分にでき, トランスサ イズを小さくすることが可能である。主に二次側巻線の巻き数が多くなる 昇圧の絶縁形DC/DCコンバータに対して有効である。逆に例えば二次巻き 線の巻き数が元から 1 である降圧回路に適用すると, 一次巻き線の巻き数 を倍にしなければならない。

倍電流整流回路(カレントダブラ)

ダイオード2つ, インダクタ2つからなる, 倍電圧整流回路の双対回路で ある。入力電流の 2 倍の電流が出力される。言い換えると, 入力電圧の半 分の電圧が出力される。倍電圧整流回路の双対であるため, この回路を昇 圧の絶縁形 DC/DC コンバータの二次側回路に用いると二次側巻線の巻き 数が倍になり, トランスサイズが大きくなってしまう。一方で, 降圧回路の トランス二次側巻き数が設計上 1 回以下になる場合, この回路を二次側に 適用することで二次側巻線の巻き数を倍にでき, その結果一次側巻線の巻 き数を抑制でき, トランスの小型化に寄与できることがある。

(41)

39

2.5 一次側インバータ部の選定

トポロジー, 制御法の検討に話を戻す。2.3節で一次側インバータ部は両 出力で共有することにしたため, 一次側インバータ部は従来のインバータ トポロジーをそのまま適用できる。よって, 2.4.1項で述べた絶縁形DC/DC コンバータ(表 2-1)の一次側回路からデュアルポート回路の一次側トポ ロジーを選定する。

1.2節で述べた目標値より, 本論文では最大電力 2 kWを扱うため, 小電 力向けのフライバックコンバータ, フォワードコンバータは候補から除外 される。また, 目標値より提案回路は300 V入力, 48 V, 12 V出力が条件で あるため, 降圧回路となる。降圧回路は一次側巻き線数が多くなるため, ト ランス一次側利用率が50 %のプッシュプルコンバータも適切ではない。

残りの候補はハーフブリッジコンバータとHブリッジコンバータである。

高周波化に伴うスイッチング損失低減のためにソフトスイッチングが必要 であるため, 以下に各コンバータをソフトスイッチング制御させたときの 特徴を示す。なお, これらのソフトスイッチングの動作原理は付録A, Bに それぞれ示す。

ハーフブリッジコンバータ(LLC共振によるソフトスイッチング)

トランスの漏れインダクタンス”L”, 励磁インダクタンス”L”, およびト ランスに直列に挿入したキャパシタ”C”の”LLC”による共振によりソフト スイッチングを実現する。ソフトスイッチング動作領域は, ”LLC”から得ら れる 2 つの共振周波数によって決定される。2 つのスイッチング素子はデ ューティ 0.5 で相補的にスイッチングしており, 入力電圧や負荷の変動に 対してスイッチング周波数を変化させることにより出力電圧を制御する。

(42)

40

Hブリッジコンバータ(位相シフト制御によるソフトスイッチング)

4 つのスイッチング素子の寄生キャパシタ, ボディダイオードを利用し たソフトスイッチングである。各レグのスイッチング素子はデューティ0.5 で相補的にスイッチングしており, レグ間の位相をずらすことにより, ト ランス電圧のパルス幅を任意に変更することのできるパルス幅制御(Pulse Width Control: PWC)である。

両回路のソフトスイッチングの特徴から, どちらの回路も目標とするデ ュアルポート回路に適していると判断できる。表 2-4 に 2.4 節で説明した

絶縁形DC/DCコンバータの一覧と, それらをデュアルポート回路の一次側

インバータ部に適用した場合の検討結果およびその理由を示す。

表2-4 一次側インバータ部の候補となる回路の一覧と検討結果

方式 検討結果 理由

フライバック × 小電力用のため フォワード × 小電力用のため プッシュプル △ トランス利用率が低いため ハーフブリッジ ○

Hブリッジ ○

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2.6 二次側整流部案の選定

続いて, 二次側整流部について考える。2.3節より, 本論文ではこの部分 でデュアルポート化を行うことにしたため, この部分がトポロジーの肝と なる。一次側インバータ部の候補がハーフブリッジ回路, Hブリッジ回路で あること, 二次側整流部内で2出力を生成することから(図2-2(c)), 二 次側整流部の条件は以下の3つである。

①オフセットのない矩形波交流入力であること

②48Vと12Vをそれぞれ出力すること

③両出力のGNDが共通であること(ボディアースのため)

これらの条件から, 前節と同様, 目標とするデュアルポート回路の二次 側整流部に適した回路を2.4節で説明した非絶縁形DC/DCコンバータ, 整 流回路群の中から選別する。

まず①の条件より, 半波整流回路は目標とするデュアルポート回路の候 補から外れる。半周期が出力に寄与しないこと, その寄与しない半周期を 補うため出力平滑回路が大型化することが理由である。

次に条件①②より, 2巻き線トランスと整流回路のみで異なる2電圧を出 力することは難しいため, 少なくともひとつの変圧機能, あるいは変圧補 助機能が二次側整流部には必要である。また, 目標回路は降圧回路である ため, 回路内に昇圧機能があると, 昇圧した電圧を再び降圧するという手 順を踏むため効率が悪い。よって, 昇圧機能しか有していない昇圧チョッ パ, 倍電圧整流回路は目標とするデュアルポート回路の候補から外れる。

さらに条件③より, 出力が反転する昇降圧チョッパ, cukコンバータを採

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用した場合, これらの出力反転コンバータ部をボディアースから絶縁させ, 反転した出力の GND をボディアースに接続する必要があり, 組付け工数 が増加してしまう。よってこれらの出力が反転する回路もデュアルポート 回路の候補から外れる。

以上より, 目標とする 2 出力整流回路の候補となる回路は, 降圧チョッ パ, zeta回路, sepic回路, 全波整流回路(センタータップ型, ダイオードブ リッジ型), カレントダブラの6つに絞られる。ここで, zeta回路, sepic回 路は降圧機能をもつが, 降圧チョッパと比較して部品点数が多いため, 本 論文の目的と照らし合わせると部品点数の多い降圧チョッパという位置づ けになるため, 以降は考慮しない。よって残りの4つの回路の組み合わせ, 統合により目標とするデュアルポート回路の二次側整流部を実現すること にする。

表2-5に非絶縁形DC/DCコンバータおよび整流回路の一覧と, それらを 目標とするデュアルポート回路の二次側整流部に適用した場合の検討結果 およびその理由を示す。

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表2-5 二次側整流部の候補となる回路の一覧と検討結果

分類 回路方式 検討

結果 検討理由

非絶縁形

DC/DCコンバータ

降圧チョッパ ○

昇圧チョッパ × 降圧できないため 昇降圧チョッパ × 出力反転のため

cukコンバータ × 出力反転のため

sepicコンバータ △ 部品点数が多いため

zetaコンバータ △ 部品点数が多いため

整流回路

半波整流 × 平滑回路大型のため センタータップ ○

ダイオードブリッジ ○

倍電圧整流 × 降圧できないため カレントダブラ ○

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44

2.7 デュアルポート制御案の選定

これまでの検討で選定されたデュアルポート回路トポロジーの候補回路 と, それら回路が有する制御要素を表 2-6 に示す。表 2-6 中の式における Vin, Vout, D, N1, N2はそれぞれ入力電圧, 出力電圧, スイッチングデューティ サイクル, トランス一次側巻き数, トランス二次側巻き数である。なお, D の定義は図2-3に準ずる。表2-6より, 制御要素はハーフブリッジ回路の周 波数, H ブリッジ回路のパルス幅および周波数, そして二次側整流部内の 降圧チョッパのパルス幅および周波数の計5つであることがわかる。ハー フブリッジ回路の制御要素にパルス幅が無い理由は, ハーフブリッジ回路 でソフトスイッチングを実現するためには, 基本的にパルス幅が固定であ る必要があるためである(付録A参照)。また, 回路駆動中に制御ができな い変圧要素として, トランス巻き数比による降圧とカレントダブラによる 電圧半減がある。

表2-6 候補回路の制御, 変圧要素

構成部位 回路方式 制御要素 備考

一次側 インバータ部

ハーフブリッジ 周波数 -

Hブリッジ パルス幅, 周波数 -

絶縁トランス部 2巻線トランス - Vout=N2 N1Vin

二次側整流部

降圧チョッパ パルス幅, 周波数 -

センタータップ - -

ダイオードブリッジ - - カレントダブラ - Vout=D

2Vin

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目標とするデュアルポート回路は 2 出力の制御が必須であるため, 挙げ られた 5つの制御要素の中から2 つを採用し, それぞれを2つの出力電圧 の制御に充てる必要がある。その組み合わせは表 2-7 に示す#1~#8 の 8 通 りである。

表2-7 トポロジー候補の制御要素と組合せ 番号

ハーフ

ブリッジ Hブリッジ 降圧チョッパ 検討

結果 検討理由 周波数 パルス幅 周波数 パルス幅 周波数

#1 ○ ○ △ 周波数使用

#2 ○ ○ △ 周波数使用

#3 ○ ○ △

周波数使用 降圧チョッパ不要

#4 ○ ○ ○ 周波数不使用

#5 ○ ○ △ 周波数使用

#6 ○ ○ △ 周波数使用

#7 ○ ○ △ 周波数使用

#8 ○ ○ × インバータの

制御要素不使用

これら8通りのうち, #8の降圧チョッパのパルス幅と周波数を用いるパ ターンは, デュアルポート回路にインバータ回路が存在するにもかかわら ず, そのインバータのもつ制御要素を使わない案であり非効率なため不採 用とする。また, 周波数を制御に用いる場合, 受動素子のサイズが下限周波 数に制限され, 高周波駆動による小型化メリットが活かしきれないという 問題がある。よって 2 つの制御要素のどちらか一方, あるいは両方に周波 数を用いる#1, #2, #3, #5, #6, #7, #8は積極的に採用すべきではない。ただし,

#3 の案は周波数を制御要素に含むものの, Hブリッジインバータのパルス

参照

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