上昇方向に列をなす2気泡挙動の実験および数値解 析
著者 楠野 宏明
発行年 2020‑06
出版者 静岡大学
URL http://doi.org/10.14945/00027791
(課程博士・様式9) 審 査 要 旨
専攻 環境・エネルギーシステム専攻 学籍番号 55745037 学生氏名 楠野 宏明 論文題目 上昇方向に列をなす2気泡挙動の実験および数値解析
(1,000字程度)
本論文は、気泡間の相互作用現象の解明を目的として、上昇方向に列をなす 2 気 泡挙動の実験や数値解析から、気泡に働く揚力や抗力における相互作用成分の変化 とその物理メカニズムを明らかにしたものである。
第1章では、序論として気泡流の背景、単一気泡の作用する揚力や抗力、2気泡 間相互作用現象、気泡の数値解析についての従来研究についてレビューし、本研究 の目的や必要性について述べた。
第2章では、不純物の影響を受けないシリコーンオイル中で気泡を2つ発生させ、
その挙動や径を詳細に観察した。得られた気泡挙動から、キルヒホッフ方程式を利 用することで気泡に働く揚力や抗力を導出し、気泡後流による後方気泡の加速、気 泡後流による揚力、ポテンシャル作用による反発力といった2気泡間相互作用の要 因を予測した。
第3章では、単一気泡周りの流れを、気泡表面での境界条件を適切に満たすこと が可能な、渦度流れ関数法と境界適合格子を用いて解析を行った。固体表面とは大 きく異なる構造を持つ非常に薄い粘性境界層内の速度特性を理解した。またその速 度分布について理論解析結果との比較を行い、計算結果への理論解析の適用性につ いて議論した。さらにVOF法を用いた数値解析と比較することで、計算精度を保証 するための格子解像度の基準を決定した。
第4章では、VOF法を用いて静止液体中を上昇する2気泡の挙動の数値解析を行 った。実験結果で観察された挙動との比較を行い、気泡表面で生成された渦度の輸 送と後流との関連、後流領域での圧力低下や速度勾配と揚力や抗力の関係など、気 泡間相互作用の物理機構を明らかにした。実験装置の製作から新たな実験結果の取 得、コーディングを通じた数値解析コードの開発と計算精度の保証法の提案、さら にオープンソフトウェアを用いた解析を通じて上昇方向に列をなす2気泡挙動の詳 細を明らかにしたことから、博士(工学)の学位授与にふさわしい実力を有するも のと認められる。
以上のように、本論文では、2気泡間の相互作用の物理機構解明を目指し、気泡 の数値解析における計算精度の指針を示すとともに、気泡流の微細流動構造に関す る有用な知見を与えている。よって、以上のことから、本論文は博士(工学)の学 位論文としてふさわしいものと認められる。