厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業)
分担研究報告書
被災地における保険薬局薬剤師の活用に関する研究
研 究 分 担 者 桒 原 健 国 立 循 環 器 病 研 究 セ ン タ ー 薬 剤 部 長
研 究 分 担 者 宍戸 稔聡 国 立 循 環 器 病 研 究 セ ン タ ー 研究推進支援部長
研 究 要 旨:本 研 究 は 、保 険 薬 局 薬 剤 師 が 循 環 器 病 管 理
WEBシ ス テ ム を 利
用 し て 、患 者 の 薬 歴 や 副 作 用 情 報 等 の 管 理 と 、在 宅 で の 適 切 な 服 薬 指 導 等 を 行 う こ と で 、循 環 器 疾 患 の 二 次 三 次 予 防 を 行 い 、自 宅 で 長 く 暮 ら し 続 け る こ と が で き る 地 域 モ デ ル 作 り を 目 指 す こ と を 目 的 と す る 。保 険 薬 局 薬 剤 師 は 地 域 医 療 向 上 の た め の 有 用 な リ ソ ー ス で あ る が 、そ の 活 用 は 十 分 に 行 わ れ て い な い 。 本 研 究 で は 、 被 災 地 域 を モ デ ル と し て 、 保 険 薬 局 薬 剤 師 を 含 め た「 新 し い 在 宅 医 療 チ ー ム 」の 姿 に つ い て 検 討 を 行 っ た。昨 年 度 開 発 し た 研 修 プ ロ グ ラ ム を 用 い て 、血 圧 等 の 患 者 情 報 を 円 滑 に 収 集 す る こ と を 目 的 と し た 研 修 会 を 実 施 し た 。さ ら に 、地 元 医 師 の 指 導 の も と 被 災 者 等 を 対 象 に 、 お 薬 相 談 ・ 家 庭 用 血 圧 計 や 血 糖 ・
HbA1c測 定
器 等 を 用 い た 健 康 チ ェ ッ ク に 関 す る 相 談 会 を 開 催 し 、薬 剤 師 が 医 師 と の 連 携 を 図 り な が ら 早 期 受 診 勧 告 を 行 う な ど 、循 環 器 疾 患 を 抱 え る 患 者 が、日 常 生 活 を 保 ち な が ら 、自 宅 で 長 く 暮 ら し 続 け る こ と が で き る 地 域 モ デ ル 作 り に つ い て 検 討 し た 。
研 修 会 の 参 加 者 は
30名 で あ っ た 。研 修 終 了 後 、受 講 者 の 90% が 、今 後
の 薬 剤 師 業 務 の 中 で フ ィ ジ カ ル ア セ ス メ ン ト を 実 践 し た い と 答 え て い た こ と か ら 、在 宅 業 務 へ の 動 機 付 け に 影 響 を 及 ぼ し た も の と 考 え ら れ た。 ま た 、 す べ て の 項 目 に つ い て 研 修 後 の 修 得 度 は 有 意 に 上 昇 し 、 受 講 し た 薬 剤 師 の 技 術 を 高 め る こ と が で き た と 思 わ れ た 。
検 体 測 定 室 ・ 相 談 会 モ デ ル を 検 討 す る た め 、宮 城 県 薬 剤 師 会 会 員 を 対 象 に 地 元 医 師 に よ る 最 新 の 糖 尿 病 治 療 に 関 す る 講 習 、機 器 ・ 医 療 用 廃 棄 物 の 取 り 扱 い に 関 す る 研 修 を 実 施 し た 。研 修 後 、地 元 の 在 宅 診 療 医 の 指 導 の も と 、 被 災 者 等 を 対 象 に 、 お 薬 相 談 ・ 家 庭 用 血 圧 計 や 血 糖 ・
HbA1c
測 定 器 等 を 用 い た 健 康 チ ェ ッ ク に 関 す る 相 談 会 を2回 開 催 し た 。 地 域 住
民 を 対 象 と し た 検 体 測 定 室 ・ 相 談 会 モ デ ル を 作 成 し 、こ れ を 実 施 す る こ と で 、様 々 な 問 題 点 を 抽 出 す る こ と が で き た 。病 院 を 受 診 し て い な い 住 民 に 対 し て 受 診 勧 奨 を 行 い 、循 環 器 疾 患 の 二 次 ・ 三 次 予 防 を 行 い 、QOL を 保 ち な が ら 、長 く 暮 ら し 続 け る こ と が で き る 地 域 モ デ ル ・ シ ス テ ム 作 り を 目 指 す 基 礎 を 作 る こ と が で き た 。心 不 全 を 有 す る 循 環 器 疾 患 患 者 が 、保 険 薬 局 を 健 康 支 援 拠 点 と し て 活 用 し 、医 療 情 報 通 信 技 術
(MICT)を 用 い た イ ン フ ラ と 、早 期 受 診 勧 告 が 可
能 な 薬 局 に お け る チ ェ ッ ク 機 能 の 整 備 等 の 提 供 を 行 う モ デ ル 作 り が 達 成 で き た 。地 域 で 診 療 を 行 う 医 師 と 連 携 し 副 作 用 の 早 期 発 見 ・ 早 期 受 診 勧 告 を 行 う な ど 、地 域 の 包 括 的 な 支 援 ・ サ ー ビ ス 提 供 体 制 の 構 築 に も 役 立 つ も の と 期 待 さ れ る 。心 不 全 を 有 す る 循 環 器 疾 患 患 者 が 、自 宅 で 日 常 生 活 を 保 ち な が ら 、長 く 暮 ら し 続 け る 地 域 作 り を 目 指 す こ と が 可 能 と 考 え ら れ た 。A.研究目的
本研究は、保険薬局薬剤師が循環器病管 理 WEB システムを利用して、患者の薬歴や 副作用情報等の管理と、在宅での適切な服 薬指導を行うことで、循環器疾患の二次、
三次予防を行い、患者の QOL 向上を目指す ことを目的とする。
保険薬局薬剤師は地域医療向上のための 有用なリソースであるが、現在、国内にお いて、循環器疾患を抱える在宅患者に対す る活用は十分に行われていない。本研究で は、東日本大震災で被災した特定の地域を モデルとして、保険薬局薬剤師を含めた「新 しい在宅医療チーム」の姿について検討を 行った。平成 25 年度研究で開発した研修プ ログラムを用いて、フィジカルアセスメン ト研修を実施した。さらに今年度は、医師 の指導のもと、被災者等を対象に、お薬相 談・家庭用血圧計や血糖・HbA1c 測定器等 を用いた健康チェックに関する相談会を開 催し、薬剤師が医師との連携を図りながら、
早期受診勧告を行うなど、循環器疾患を抱 える患者が、日常生活を保ちながら、自宅 で長く暮らし続けることができる地域モデ ル作りを目指した。
B.研究方法
1.フィジカルアセスメント研修について
①研修会の実施体制について
昨年度研究班で開発した研修プログラム を用いて、今年度、研修会を実施した。場 所は宮城県薬剤師会館の会議室を研修会場 とした。昨年度の実施内容を再度検討し、1 グループ 6 名を 5 グループとし計 30 名で研 修を実施した。各グループにファシリテー タ 1 名、ファシリテータ補佐 1 名を配置。
また、フィジカルアセスメントモデル担当
として薬剤師を 2 名、腹部のフィジカルア セスメントには専任の医師 1 名と薬剤師 1 名を配置した。研修会は平成 26 年 8 月 24 日(日)に行った。
昨年同様、薬剤師のフィジカルアセスメ ントの必要性について導入講義を、薬剤師 であり医師でもある福島医大乳腺外科の渡 邉久美子助教に講義を依頼した。
②研修会プログラム 8:30〜9:00 集合・準備 9:00〜9:30 打ち合わせ 9:30〜10:00 受付
10:00〜10:20 開会挨拶、事前アンケー ト記入
10:20〜12:30 フィジカルアセスメント 導入講義(導入講義終了後に機器等の操作 指導を実施)
12:30〜13:30 昼食
13:30〜16:00 フィジカルアセスメント 研修
・1 グループ 6 名にファシリテータ 1 名を 配置(5 グループ)
・聴診器は研修生全員に、パルスオキシメ ータ、血糖測定器、水銀レス血圧計、電子 体温計、ペンライトは研修生二人に一個を 用意。
・フィジカルアセスメントシミュレータを 用意し、指導には 2 名のファシリテータを 配置。
・腹部指導に 1 名(医師)のファシリテー タと担当薬剤師 1 名を配置。
16:00〜16:30 終了挨拶(アンケート記 入)
2.最新の糖尿病治療、機器・医療用廃棄 物の取り扱いに関する研修会
健康チェックに関する相談会を開催する
ためには、事前に、最新の糖尿病治療や機 器・医療用廃棄物の取り扱いに関する研修 を実施する必要があると考え、宮城県薬剤 師会会員を対象として、研修会を実施した。
研修会のプログラムは以下のとおり。
日時:平成 26 年 9 月 21 日(日) 13:30〜
16:00
場所:宮城県薬剤師会館 3F セミナーホール 13:30〜13:45
「検体測定室に関する届出・測定ガイドラ インについて」
講師 宮城県薬剤師会副会長 瀬戸裕一 先生
13:45〜14:45
「糖尿病について」
講師 木村貞之進記念 まひと内科クリ ニック院長 木村真人先生(宮城県医師会)
14:45〜16:00
「実際の機器操作方法について」
講師 宮城県薬剤師会副会長 瀬戸裕一 先生
3.健康チェックに関する相談会について
①事前準備について
平成 26 年 4 月 9 日付、医政発 0409 第 4 号にて、都道府県知事、各保健所設置市市 長、特別区区長宛に厚生労働省医政局長よ り、検体測定室に関するガイドラインが発 出されている。相談会を実施するにあたり、
このガイドラインを遵守し、必要な届け出 をする必要がある。必要な届け出書類を作 成すると共に、穿刺器具等の血液付着物の 廃棄、精度管理、標準作業書、作業日誌等 を作成した。また、相談者に対する同意説 明書を別添の通り作成した。
②相談会の開催場所について
相談会は宮城県登米市に設置された、や
まと在宅診療所登米が運営する「coFFee doctors」を借用して実施した。本診療所は、
震災後、田上佑輔院長が登米市に設立した 在宅専門の診療所であり、患者家族が安心 して生活できる医療、地域が安心できる医 療を目指して運営されている。今回の検体 測定室・相談会は田上院長の全面的な協力 を得て、また、登米市薬剤師会を通じ登米 市医師会のご理解を得て、地域住民に対す る相談会を実施した。
登米市には平成 26 年度現在、6 カ所の仮 設住宅が設けられており、沿岸部からも多 くの被災者が避難し暮らしている。また、
登米地区には糖尿病の専門医は不在で、糖 尿病が発見される患者の多くは重症化して いることから、医師会としても薬剤師会の 取り組みに理解を示していただいた。相談 会を開催するにあたり、宮城県医師会の嘉 数研二会長宛に、宮城県薬剤師会佐々木孝 雄会長、国立循環器病研究センター桒原健 薬剤部長の連名で、臨床検査技師等に関す る法律第二十条三第一項の規定に基づき厚 生労働大臣が定める施設の一部改正があ り、薬局内でも血糖値や中性脂肪等の検査 を実施することが可能となったこと、これ を受け今年度の研究では、地元医師会と連 携し、今年度研究として、医師の指導のも と、主に被災者等を対象に、お薬相談・家 庭用血圧計や血糖・HbA1c 自己簡易測定機 等を用いた健康チェックに関するお薬相談 会等を開催し、在宅チーム医療の推進、循 環器疾患の二次・三次予防、並びに、患者 の QOL 向上について検討する旨について連 絡を行った。
③相談会の実施について
相談会の開催については、登米市広報誌、
ポスター等を用いて、住民に対して周知を
行った。相談会は平成 26 年 10 月 5 日(日)
と平成 26 年 11 月 3 日(日)の 2 日にわたっ て開催した。両日とも、前日の土曜日に宮 城県薬剤師会館に集合し、Mobile Pharmacy の出動準備後、登米市に向け出発。登米市 会場到着後、テント等の設営準備を実施し た。
相談会当日のスケジュールは以下の通り。
9:00 スタッフ集合・事前打ち合わせ 9:30 各ブースで作業内容の確認 10:00〜 お薬相談会の受付開始
検査項目:HbA1c 測定、血糖測定、ポケ ットリピッド(コレステロール等)測定、
パルスオキシメータ、体重測定、血圧測定 14:30 測定受付終了
15:00 測定終了・撤収開始 16:00 解散
(主な役割分担)
薬剤師に対する技術指導並びに住民の医療 相談:やまと在宅診療所医師 1〜2 名で対 応。
受付、案内:宮城県薬剤師会会員 5〜6 名で 対応。
検査ブース:宮城県薬剤師会会員 5〜6 名で 対応。
Mobile Pharmacy 担当:宮城県薬剤師会会 員 3 名で対応。
お薬相談コーナー:登米市薬剤師会会員 7
〜8 名で対応。
(倫理面への配慮)
フィジカルアセスメント研修会で実施し たアンケート調査では、個人を特定する情 報を排除して情報を収集した。相談会で実 施した調査は、厚生労働省医政局長通知に 示された検体測定室に関するガイドライン に則り、文書を用いて説明し、同意を得た
参加者に対して個人情報を収集した。なお、
収集したそれぞれの調査データの取り扱い については、研究分担者の所属する機関の 研究における倫理規程に照らして適切に対 処した。
C.研究結果
1.フィジカルアセスメント研修について アンケート調査は研修会当日に実施し た。修得度自己評価得点については、研修 開始前と研修後にそれぞれ「できない」を 0 点、「できる」を 10 点として 1 点刻みで 調査を行った。
1)参加者の背景等について
今年度実施した研修会の参加者は合計 30 名であった。内訳は男性 12 名、女性 18 名。年齢別では、20‑29 歳 6 名、30‑39 歳 8 名、40‑49 歳 7 名、50‑59 歳 9 名であった。
現在の職種における経験年数別に見ると、1 年未満 2 名、1‑2 年 3 名、3‑4 年 0 名、5‑9 年 8 名、10‑14 年 7 名、15‑19 年 5 名、20‑29 年 2 名、30 年以上 3 名であった(図 1)。
在宅患者への服薬指導経験の年数を聞いた ところ、1 年未満 16 名、1‑2 年 3 名、3‑4 年 5 名、5‑9 年 4 名、10‑14 年 2 名であった。
在宅患者への服薬指導経験について通算症 例数を聞いたところ、なし 17 名、1‑10 例 6 名、11‑30 例 4 名、31‑50 例 1 名、51‑100
例 1 名、101 例以上 1 名であった(図 2)。
過去のフィジカルアセスメント研修の受 講歴を聞いたところ、なし 24 名、1 回 3 名、
2 回 1 名、3 回 1 名、5 回 1 名であった。こ れまでの業務経験の中で、フィジカルアセ スメントの必要性を感じたことがあるか聞 いたところ、はい 19 名、いいえ 11 名であ った(図 3)。
2)フィジカルアセスメントの導入講義につ いて
フィジカルアセスメントの導入講義の内容 については、非常に参考になった 26 名、参 考になった 4 名であった(図 4)。
3)今後の実施について
今後、フィジカルアセスメントを実施した いと思うかと聞いたところ、はい 27 名、い いえ 3 名であった(図 5)。
4)修得度自己評価得点について
フィジカルアセスメント研修受講後に、
再度、修得度自己評価得点について調査を 行った。評価点は研修受講前と同様「でき ない」を 0 点、「できる」を 10 点として 1 点刻みで調査を行った。
研修前後の体温、脈拍、呼吸、酸素、む
くみ、瞳孔、血圧、意識、腹部、血糖自己 測定の修得度について自己評価得点を比較 したところ、すべての項目において、統計 学的に有意な上昇を見た。意識、腹部につ いては他の項目に比較して、研修後の自己 評価は低かった(図 6)。
(図6)
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
研修前 研修後
修得度自己評価得点
図) 研修前後のフィジカルアセスメント修得度自己評価得点 t検定 *:p < 0.001
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5)その他
今回の研修会に、栃木県薬剤師会と岩手 県薬剤師会からそれぞれ 2 名の見学があっ た。
2.最新の糖尿病治療、機器・医療用廃棄 物の取り扱いに関する研修会
参加者は宮城県薬剤師会会員 23 名であ った。座学後に行われた実際の機器の操作 方法に関する研修では、HbA1c、血糖、コレ ステロールの測定器を使用して研修を行っ た。機器によっては、指先採血での測定に 要領を必要とすることから、複数回の測定 を必要とする研修生が見られた。また、一 般住民を対象とした自己検査における、様 々な問題点があげられた。
3.健康チェックに関する相談会について 相談会の模様については以下の写真1〜
3に示す。
(写真1)
(写真2)
(写真3)
2 回開催した合計来場者数は 85 名であっ た。来場者の概要を表 1 に示す。
来場者の概要
男 女
性別 39 46
年齢 46.2 ± 13.1 53.5 ± 15.6 身長 170.3 ± 6.2 155.8 ± 5.9 体重 70.1 ± 12.5 56.9 ± 10.2 BMI 24.1 ± 3.7 23.4 ± 3.8
BMI ≧ 25 14 12
(平均±標準偏差)
(n=85)
(表1)
自己検査の結果を表 2 に示す。
検査結果
測定項目 平均±標準偏差 異常値 例数 %
収縮期血圧 136.8 ± 23.5 ≧140mmHg 35 42.2%
拡張期血圧 88.3 ± 13.5 <90mmHg 45 54.2%
酸素飽和度 98.5 ± 0.6 ≦96% 0 0.0%
HbA1c 5.6 ± 0.6 ≧6.5% 5 6.0%
血糖 118.3 ± 46.0 ≧126mg/dL 23 27.4%
中性脂肪 121.3 ± 60.6 ≧150mg/dL 16 25.0%
HDLコレステロール 70.2 ± 15.2 ≦39mg/dL 4 6.3%
LDLコレステロール 103.2 ± 22.4 ≧120mg/dL 13 20.3%
(n=85)
(表2)
HbA1c で異常値が認められた 5 名につい ては全例病院等に通院中であり、内 3 名は 糖尿病治療薬が処方されていた。参加者の 感想は「大変良かった」43%、「良かった」
54%と良好な結果を得ることができた。
「どちらでもない」と回答した 2 名は、共 に指先からの採血に難渋した住民であっ た。未受診住民に対する受診勧奨は 14 名の 住民に対して行われ、病院等に行くと答え た住民は 5 名、行かないと答えた住民は 9 名であった。第一回目の相談会では情報を 把握することができなかったが、第二回目 の相談会で、主治医への相談を助言した住 民に対しては、5 名の住民すべてが薬剤師 の助言を受け入れ、主治医に相談するとの
回答を得た。住民からの主な相談事例は以 下のとおり。
・血圧やコレステロール値が高いことはわ かっているが、病院を受診していない
・抗コレステロール薬を処方されているに も関わらず、服薬を行っていない
・高血圧に対する服薬を行っているにも関 わらず、血圧が高値であった
・もう少し踏み込んで結果を教えてほしい
・父親が糖尿病で本人に不安あり。A1c 測 定目的で来場。
・現在通院中。 A1c は高値であるが、飲食 店を経営しているので食事制限が難しい。
・市の検診で異常値を知り、今回の相談会 で再度検査し異常値が出れば受診するつも りだった。話を聞いて病院に行く決心がつ いた。
・食前の薬を飲み忘れる(ボグリボース)。
薬剤の必要性、服用方法について説明。
・今朝の味噌汁を持参。パンフレット等を 用いて説明。
第一回目の相談会後に実施された検討会 でスタッフから以下の問題が指摘され、こ れら問題に対応するために改善を行った。
問題点と改善点については以下のとおり。
・手が冷たいと、血液が出にくい→手を温 めるために温かい飲み物と使い捨てカイロ を準備。
・採血で緊張するため、採血後の血圧測定 は避ける方がよい→採血・血圧測定の順序 を変更。
・検査エラー発生時の対応方法を再検討す る必要がある→採血方法を再検討し改善。
・結果の評価を伝えられないため、曖昧な 表現に終始してしまう→在宅診療所医師と 相談し、医師の対応を手順化。
薬剤師で対応しきれない治療等に関連する 相談事例については、在宅診療所医師に対 応を依頼した。主な相談内容は以下のとお り。
・今回、LDL のみ高値であった。
・妊娠高血圧の既往あり。今回の血圧測定 で、140‑90 を超えた。
・父親が胃癌で死亡。過去にペニシリンで の発疹の既往があり、ピロリ菌の除菌はで きないと、医師から断られている。
・かかりつけ医にて高血圧、不整脈の治療 を受けている。今後受診する医療内容等に ついて相談したい。
D.考察
昨年度開発したフィジカルアセスメント 研修モデルを用いて、今年度研修会を実施 した。昨年同様、薬剤師にはどのようなフ ィジカルアセスメントが必要であり、なぜ フィジカルアセスメントを実施する必要が あるかについて、導入講義を実施したとこ ろ、導入講義の評価は高く、その必要性を 確認することができたとする多くの意見が あった。研修会終了後、受講者の 90%が、
今後の薬剤師業務の中でフィジカルアセス メントを実践したいと答えていたことか ら、在宅業務への動機付けに影響を及ぼし たものと考えられた。また、フィジカルア セスメントの技術については、すべての項 目について研修後の修得度が有意に上昇し たことから、受講した薬剤師のアセスメン ト能力を高めることができたと思われた。
以上の様に受講者より高い評価を得たこと から、昨年度開発した研修モデルは、薬剤 師を対象としたフィジカルアセスメント研 修として活用できると考えられた。また、
今回の研修会に近隣県の薬剤師会から見学
者があったことから、今後、研修モデルの 拡がりが期待できる。
昨年度フィジカルアセスメント研修を受 講した宮城県薬剤師会の在宅推進委員会、
地域応援薬局検討委員会の委員を中心に、
医師の指導のもと、被災者等を対象に、お 薬相談・家庭用血圧計や血糖・HbA1c 測定 器等を用いた健康チェックに関する相談会 を開催した。住民を対象とした、お薬相談、
血糖・HbA1c 測定器等を用いた健康チェッ クに関する検体測定室・相談会モデルを作 成し、これを実施することで、様々な問題 点を抽出することができた。また、健康に 関心を持つ住民に対しては、簡易検査キッ トを用いた検査結果を提供し、好評を得る ことができた。病院を受診していない住民 に対して受診勧奨を行い、循環器疾患の二 次・三次予防を行い、QOL を保ちながら、
長く暮らし続けることができる地域モデル
・システム作りを目指す基礎を作ることが できた。
昨年度の研究において本研究班では、従 来型の医師・看護師が主体である在宅医療 をさらに発展させ、保険薬局薬剤師を含め ることにより、受診中断のみならず、薬物 治療中断にも対応できる「新しい在宅医療 チーム」を提唱するにいたった。在宅医療 の際に使用する医療情報通信にかかわるア クセス技術の検討、医療情報通信にかかわ るネットワーク環境の整備、医療情報通信 技術(MICT)を用いたアプリケーション等の インフラの整備は重要である。被災地にお いては、より一層の在宅支援の充実が求め られる。本研究班では、全国に先駆けて、
保険薬局薬剤師に対する効果的な研修モデ ルの提案と、医師と連携しながら実施する、
保険薬局薬剤師による検体測定室・相談会
モデルの運用についても提案することがで きた。地域住民に対し、フィジカルアセス メント能力を備えた薬剤師が医師との連携 を図りながら、副作用の早期発見・早期受 診勧告を行うなど、地域の包括的な支援・
サービス提供体制の構築にも役立つものと 期待される。
今後、心不全を有する循環器疾患患者が、
自宅で日常生活を保ちながら長く暮らし続 けるため、保険薬局を健康支援拠点として 活用できるよう、継続的な研修の支援に加 え、医療情報通信技術(MICT)を用いたイン フラと早期受診勧告が可能なチェック機能 の整備等の提供を行う必要があると思われ た。
E.結論
東日本大震災で被災した宮城県をモデル 地域として、保険薬局薬剤師に対し、循環 器疾患の薬物療法の服薬指導に必要な講習 を実施し、在宅訪問服薬指導の際に副作用 の早期発見につながる患者情報の収集方法 に関するフィジカルアセスメント等を取り 入れた研修の支援を行い、また保険薬局薬 剤師による検体測定室・相談会モデルの運 用について提案することで、地域で診療を 行う医師等との連携を図りながら、副作用 の早期発見・早期受診勧告を行うなど、心 不全を有する循環器疾患患者が、自宅で日 常生活を保ちながら、長く暮らし続けるこ とができる地域モデル作りを目指すことが 可能と考えられた。
F.研究発表
・佐藤美和子、轡基治、豊島篤志、森川昭 正、瀬戸裕一、佐々木孝雄、渡辺久美子、
桒原健、宍戸稔聡、安田聡、下川宏明、被 災地域をモデルとして在宅医療を見据えた フィジカルアセスメント研修の実施効果に 関する研究、第 47 回日本薬剤師会学術大 会、山形
・桒原健、被災地における保険薬局薬剤師 の活用に関する研究−平成 26 年度研究に ついて−、第 21 回日本未病システム学会学 術総会、大阪
G.知的財産権の出願・登録状況 該当なし
(謝辞)
今回の研究を実施するあたり、全面的な ご支援・ご協力をいただきました、宮城県 薬剤師会の先生方と、やまと在宅診療所登 米の先生方に深謝いたします。
(別添) 測定に関する事前説明書
①今回の測定は、特定健康診査や健康診断等ではありません。
(特定健康診査や健康診断を受診していない方は、受診をおすすめします)
②検体の採取及び採取前後の消毒・処置については、ご本人に実施していただきます。
③現在服用されているお薬や既往歴によっては(以下をご確認ください)、止血が困 難となる場合がありますので、測定を行うサービスを受けられない場合があります。
・抗血栓薬等の服用 □無 □有(薬剤名: )
・出血性疾患の有無
(□血友病、□壊血病、□血小板無力症、□血小板減少性紫斑病、□単純性紫斑病)
④採血はご本人の責任において行うものであることから、出血・感染等のリスクは、
基本的にご本人に負っていただきます。
⑤自己採取及び自己処置ができない方はサービスが受けられません。
⑥採取方法(穿刺方法)は指先に針を刺して血液を採取します。
⑦採取量(採血量)はゴマ粒大よりも多めの血液を採取していただきます。
⑧今回の相談会で測定していただける項目は以下の通りで、希望される項目にチェッ クを表記します。
□ヘモグロビン A1c、□中性脂肪、□HDL コレステロール、□LDL コレステロール
⑨血液量等により測定できないことがあります。
⑩測定に要する時間は約15分程度です。
⑪体調や直前の食事時間等が測定結果に影響を及ぼすことがあります。
⑫検体の測定結果については、ご本人で判断していただきます。
⑬検体測定室での測定は診療にあたるものではありません。医療機関を受診される場 合は、改めて医療機関の医師の指示による検査を受ける必要があります。
⑭穿刺による痛みや迷走神経反射が生じることがあります。
⑮自己採取された検体については、ご本人が希望された測定項目の測定以外には使用 しません。
⑯今回収集したデータの一部が医学論文などに公表されることがありますが、データ は集計して使用するため、氏名などの個人情報を公表することは一切ありません。
⑰お問い合わせ先(一般社団法人宮城県薬剤師会 TEL 022(391)1180)
私は、カフェ coFFee Doc+tors(検体測定室)での測定にあたり、上記に ついて説明を受け、これを十分に理解したことについて、
( □ 同意します □ 同意しません )
※ 同意しない場合は測定を受けられません。
(同意した場合)その上で、測定することを承諾いたします。
平成 年 月 日
氏名(自署)
住 所 連 絡 先
運営責任者の 確認印