ごみ溶融スラグと中品質再生粗骨材を用いたRC梁部材の基礎的研究
―その2 乾燥収縮性状―
日大生産工(院) ○高橋 幸裕 日大生産工 師橋 憲貴 日大生産工 桜田 智之 1.はじめに 昨年度の学術講演会では、ごみ
溶融スラグと再生粗骨材を併用したコンクリ ートのフレッシュ性状と材齢 5 週時の付着性 状を報告した
1)。その結果、ごみ溶融スラグ を細骨材に 50%置換したコンクリートのフレ ッシュ性状は材料分離が見られなかったが、
100%置換した場合は材料分離が認められた。
また、付着割裂強度はごみ溶融スラグの置換 率を 50%とした試験体では既往の実験結果
2)と同等な結果が得られたが、置換率を 100%と した試験体では置換率を 50%とした試験体と 比較して低下する傾向が見られた。
一方、乾燥収縮性状に着目すると再生粗骨 材を使用したコンクリートは骨材表面に付着 するモルタル分の吸水率が高いため、乾燥収 縮による乾燥収縮ひび割れが多数発生するこ とが報告されている
2)。長期的に考えると乾 燥収縮ひび割れは耐久性の低下に繋がると懸 念されるためどのような影響があるか検討す る必要がある。本研究は乾燥収縮ひび割れが 発生する要因と考えられる乾燥収縮性状に着 目し、打設後 1 年経過時の乾燥収縮率や乾燥 収縮ひび割れの発生状況などごみ溶融スラグ を利用したコンクリートのひび割れについて 検討したものである。
2.実験概要
2.1 骨材の品質 表-1 に試験体詳細を、 表-2 にコンクリートの調合表を、 表-3 に骨材の品 質を示す。 本研究で使用したコンクリートは、
表-1 試験体詳細
重ね継手長さs=30db=570(mm)共通 b×D=300×300mm共通
1),2):参考文献で発表の試験体を示す。
6) RM1K2) 1年
経過後 RM2)
RM
RMM シリーズ
RMS
7) RMM2) 8) RMM1K2) 5)
試験体名
4)
天然砂 材齢5週 50%
再生砂 50%
1年 経過後 砕石
50%
再生粗骨材 50%
天然砂 100%
再生砂 0%
材齢5週 粗骨材
置換率 載荷時期
3) RMS1) 材齢5週
1) 2) RMNS1K
細骨材 置換率
RMS1K 1年
経過後 砕石
50%
再生粗骨材 50%
1年 経過後 RMNS1)
RMNS
天然砂 材齢5週 50%
溶融スラグ 50%
天然砂 0%
溶融スラグ 100%
表-2 コンクリ ー トの調合表
水 セメント
444 482 469 424
469 424
シリーズ W/C (%)
単位質量(kg/m3)
細骨材 粗骨材
RMS 69.4 184 265 ごみ溶融スラグ 砕石 再生 粗骨材 955
RMNS 72.5 184 254 天然砂 ごみ
溶融スラグ 砕石 再生
粗骨材
表-3 骨材の品質
砕石 2.72 2.74 63.8 0.77 再生粗骨材 2.33 2.46 61.8 5.40 天然砂 2.54 2.59 66.2 2.05 ごみ溶融スラグ 2.82 2.83 61.3 0.38 砕石 2.70 2.72 61.5 0.60 再生粗骨材 2.37 2.48 62.5 4.58 天然砂 2.54 2.59 66.7 1.96 再生砂 2.08 2.28 72.0 9.53
シリーズ
ごみ溶融スラグを天然砂に対して置換率を 50%としたRMNSシリーズと 100%としたRMSシ
RMNS RMS
RM2)
2)
吸水率 (%) 表乾密度
(g/cm3)
骨材 絶乾密度
(g/cm3)
実積率 (%)
RMM
Fundamental Study on Reinforced Concrete Beams with Melt-solidified Slag Aggregate and Middle Quality Recycled Aggregate
-Part.2 Drying Shrinkage Properties-
Yukihiro TAKAHASHI, Noritaka MOROHASHI and Tomoyuki SAKURADA
0 8 16 24 32 40 48 56
2) 2)
○:RMNSシリーズ
□:RMSシリーズ
△:RMシリーズ
◇:RMMシリーズ
-500
500 800 1000 1500 0
乾収率×0-6
材齢(週)
燥縮ε1
② ①
③
乾燥収縮率測定箇所
リーズの 2 シリーズである。2 シリーズとも に粗骨材は再生粗骨材の置換率を 50%とした。
また、粗骨材に使用した中品質再生粗骨材は コンクリート塊をジョークラッシャーで破砕 して製造されたものである。一方、細骨材に 使 用 し た ご み 溶 融 ス ラ グ は 一 般 廃 棄 物 を 1,200℃以上の高温で溶融固化して製造され たものであり、JIS A 5031
3)の基準値である 絶乾密度 2.5g/cm
3以上、実積率 53%以上、吸 水率 3%以下を満たしていた。本研究では、ご み溶融スラグを使用していない既往の中品質 再生粗骨材の置換率を 50%としたRMシリーズ と、さらに細骨材に再生砂の置換率を 50%と したRMMシリーズの実験結果
2)と比較検討を 行った。これにより細骨材に使用した骨材の 種類やごみ溶融スラグの置換率の違いが乾燥 収縮性状に及ぼす影響を検討した。
2.2 試験体形状 図-1 に試験体断面を、 図-2 に試験体形状を示す。試験体は付着性状を検 討 す る た め 純 曲 げ 区 間 の 下 端 に 長 さ 30db(570mm)の重ね継手を設けた単純梁形式 とし、曲げ降伏前にサイドスプリット型の付 着割裂破壊が先行するよう配筋した。
3.乾燥収縮性状
3.1 乾燥収縮率 乾燥収縮率の測定はJIS A 1129-2( コ ン タ ク ト ゲ ー ジ 法 )
4)に 準 じ て 100mm×100mm×400mmの長さ変化試験体を作 製した。長さ変化試験体は 1 シリーズにつき 3 本の試験体を作製し、 コンクリート打設後 1 週間水中養生した後、 湿度 60%±5%、 室温 20℃
±2℃の恒温恒湿室保存とした。なお、乾燥収 縮率は 3 本の平均値とした。
図-3 に長さ変化試験体の乾燥収縮率を示 す。ごみ溶融スラグを使用した試験体(RMNS、
RMS シリーズ)は使用していない試験体(RM、
RMM シリーズ)と比較して乾燥収縮率の低減 が見られた。これはごみ溶融スラグの吸水率 が 0.38%であり、他の骨材と比較して極めて
主筋 SD345
σ
y=376 (N/mm
2) Es=1.81×10
5(N/mm
2) 横補強筋 SD295A
σ
y=363 (N/mm
2) Es=1.88×10
5(N/mm
2)
30 240 4-D19
4-D19 Cs=30mm
300 単位:mm
3024030 300 30
図-1 試験体断面
単位:mm
1000 3000 700
重ね継手 s=30db=570
300 700 300
図-2 試験体形状
0 8 16 24 32 40 48 56
2) 2)
-500
500 800 1000 00 0
乾燥収縮率ε×10-6
材齢(週)
○:RMNSシリーズ
□:RMSシリーズ
△:RMシリーズ
◇:RMMシリーズ
吸水率が低いためと考える。
図-4 に梁部材の乾燥収縮率示す。梁部材は コンクリート打設後 1 週間湿布養生を行いそ の後 2 週間の水中養生を行った後、空調設備 のない実験棟内に保存した。なお図-4 中に示 すように梁部材の乾燥収縮率の測定箇所は 3 箇所とし、乾燥収縮率は平均値とした。梁部 材の乾燥収縮率は長さ変化試験体と同様にご み溶融スラグを使用した試験体は他の試験体 と比較して乾燥収縮率は低い値で推移した。
また、 図-4 に示した梁部材の乾燥収縮率は図 15
図-3 長さ変化試験体の乾燥収縮率
図-4 梁部材の乾燥収縮率
-3 に示した長さ変化試験体の乾燥収縮率と 比較して全体的に低い値を示した。
3.2 乾燥収縮ひび割れの発生状況 図-5 に 材齢 1 年経過時の乾燥収縮ひび割れの発生状 況(側面)を示す。ごみ溶融スラグを 50%置換 した RMNS1K(a)図)は材齢 6 週目に乾燥収縮ひ び割れが打設面および側面に 1 本発生した。
一 方 、 ご み 溶 融 ス ラ グ を 100% 置 換 し た RMS1K(b)図)は材齢 12 週目に乾燥収縮ひび割 れが打設面端部のみに数本発生した。ごみ溶 融スラグを置換した試験体はごみ溶融スラグ を置換していない既往の試験体と比較して乾 燥収縮ひび割れの発生が減少する傾向が見ら れた。 これは図-3 および図-4 に示した乾燥収 縮率の低下によるものと考える。
3.3 乾燥収縮ひび割れの深さと幅 図-6 に 材齢 12 週から材齢約 56 週までの乾燥収縮ひ び割れの深さと幅の関係を示す。乾燥収縮ひ び割れ深さは超音波測定器により、また乾燥 収縮ひび割れ幅はマイクロスコープ(最小目 盛り 0.02mm)により計測を行った。a)図より RMNS1K の乾燥収縮ひび割れの深さと幅は材 齢の経過とともに大幅に増加することはなか った。なお、RMNS1K は材齢 6 週目に乾燥収縮 ひび割れの発生を確認しているが、測定可能 となるひび割れの発生した材齢 20 週目から の測定結果を示した。一方 b)図の再生砂を 50%置換した既往の RMM1K はひび割れ深さ、 幅 とも材齢の経過に従い増加する傾向が見られ た。ごみ溶融スラグを用いた試験体はごみ溶 融スラグの吸水率が極めて低いため乾燥収縮 率が低くなり、乾燥収縮ひび割れの発生が減 少し、乾燥収縮ひび割れの深さと幅において も大幅な増加は認められなかった。
4.実験結果
4.1 長期許容応力度時の最大曲げひび割れ幅 表-4 に材齢 5 週時および材齢 1 年経過時の実 験結果一覧を、 図-7 に主筋長期許容応力度時
a)RMNS1K(側面)
b)RMS1K(側面)
c)RM1K
2)(側面)
d)RMM1K
2)(側面)
図-5 乾燥収縮ひび割れの発生状況 (材齢 1 年経過時)
表-4 実験結果一覧 0
5 10 15 20 25
0
ひび割れ深さ D(mm)
0.05 0.10 0 0.05 0.10 0 0.05 0.10 0.15
12週目 24週目 56週目
ひび割れ幅 W(mm)
0
5 10 15 20 25
0
ひび割れ深さ D(mm)
ひび割れ幅 W(mm)
0.05 0.10 0 0.05 0.10 0 0.05 0.10 0.15
12週目 20週目 54週目
a)RMNS1K(側面)
b)RMM1K
2)(側面)
図-6 乾燥収縮ひび割れの深さと幅の関係
乾燥収縮ひび割れの測定箇所
◎ □ ● ▲△ ■ ○
乾燥収縮ひび割れの測定箇所
● ○ ◎
σB Wmax Pmax τu exp.
(N/mm2) (mm) (kN) (N/mm2) 1) RMNS1) 22.7 0.14 296.8 3.33 S 2) RMNS1K 29.5 0.14 291.0 3.27 S RMS1) 19.2 0.12 199.2 2.24 S ) RMS1K 27.9 0.12 235.5 2.64 S 5) RM2) 27.5 0.13 264.0 2.96 S RM1K2) 32.3 0.16 289.2 3.26 S RMM2) 28.1 0.12 292.8 3.29 S 8) RMM1K2) 32.9 0.20 298.6 (3.35)*1 FS
t=200N/mm2(P=150kN)時 後の付着割裂破壊
後の付着割裂破壊時 P=298.6(kN),δ=15.43(mm) 破壊 形式 付着割裂 試験体名 強度
コンクリート 強度
最大曲げ
ひび割れ幅最大荷重
3) 4
6) 7)
最大曲げひび割れ幅Wmaxはσ S:付着割裂破壊 FS:曲げ降伏
*1 RMM1Kの曲げ降伏
の最大曲げひび割れ幅を示す。ごみ溶融スラ グの置換率や細骨材の種類によらず主筋長期 許容応力度時の最大曲げひび割れ幅Wmaxはほ ぼ同等な値を示した。 また、RMNS1KとRMS1K(と もに●印)は載荷前に乾燥収縮ひび割れが僅 かに発生していたが、Wmaxへの影響は認めら れずRC規準
5)のひび割れ制限目標値である 0.25mm以内となった。
4.2 最終破壊形状 図-8 に最終破壊形状を 例示する。最終破壊形状は重ね継手区間に付 着ひび割れが急激に進展するサイドスプリッ ト型の付着割裂破壊で想定した破壊形式とな った。最終破壊形状にごみ溶融スラグを置換 した影響は認められなかった。また、載荷前 に僅かに発生していた乾燥収縮ひび割れの影 響も認められなかった。
5.まとめ ごみ溶融スラグと中品質再生粗骨 材を用いたRC梁部材の乾燥収縮性状につい て検討を行った結果、本実験の範囲内で以下 の知見が得られた。
1)ごみ溶融スラグを置換したコンクリートの 乾燥収縮率は置換していない試験体と比 較して乾燥収縮率が低減した。
2)ごみ溶融スラグを置換した場合、乾燥収縮 ひび割れの発生を減少させることが認め られた。
3)ごみ溶融スラグを 50%置換した場合は、再 生砂を 50%置換した場合と比較して材齢 54 週に至るまで乾燥収縮ひび割れの深さと 幅の大幅な増加は認められなかった。
今後は乾燥収縮性状を定期的に観測する とともに、材齢 1 年経過時の変位性状や付着 割裂強度について検討したい。
謝辞
本研究に際し、習志野市芝園清掃工場の村 山陽一氏および東京建設廃材処理協同組合 葛西再生コンクリート工場の細野知之氏には
0.0 0.1 0.2 0.3 0.4
シリーズ RMNS RMS RM
2)RMM
2)σt=200N/mm2
Wmax (mm)
制限目標値(0.25mm) 5週時:○
1年経過時:●
図-7 主筋長期許容応力度時の 最大曲げひび割れ幅 a)RMNS1K
b)RMS1K
c)RM1K
2)d)RMM1K
2)図-8 最終破壊形状
本研究に対し多大な御助言、御協力をいただ きました。株式会社フローリックの皆様には 試し練りや調合に関して多大な御協力をいた だききました。また、本研究は文部科学省、
平成 20 年度 「私立大学戦略的研究基盤形成支 援事業」 、SO803003、地域に根差した研究、 「地 域生活に安全・安心を与えるための建造物の 高耐震化・再生化技術とヘルスモニタリング 技術の応用に関する研究」(研究代表者:土木 工学科教授 木田哲量)の一貫として行われた ものであり関係各位に感謝の意を表したい。
参考文献
1)高橋幸裕、師橋憲貴、桜田智之:ごみ溶融スラグ と中品質再生粗骨材を用いたRC梁部材の基礎的 研究-その 1 フレッシュ性状と付着性状-,日本 大学生産工学部第 40 回学術講演会,2007 年 12 月,
pp.39-42
2)渡辺慎吾、師橋憲貴、桜田智之:普通骨材と中品 質再生骨材を混合使用した鉄筋コンクリート梁-
乾燥収縮性状と付着性状-,日本大学生産工学部 第 40 回学術講演会,2007 年 12 月,pp.35-38 3)日本工業規格:JIS A 5031(一般廃棄物、下水汚泥
又はそれらの焼却灰を溶融固化したコンクリート 用溶融スラグ骨材),2006 年 7 月
4)日本工業規格:JIS A 1129(モルタル及びコンクリ ートの長さ変化試験方法―第 2 部:コンタクトゲ ージ方法),2001 年 6 月
5)日本建築学会:鉄筋コンクリート構造計算規準・
同解説-許容応力度設計法-,1999