ベトナム社会主義共和国
ハムトアン・ダーミー水力発電所建設事業
(1)(2)(3)(4)
評価者:
2008
年ベトナム・日本合同評価チーム1 現地調査:2008
年11
月1.
事業の概要と円借款による協力事業地域の位置図 ハムトアン発電所
1.1
背景:ベトナムでは、
1986
年のドイモイ政策導入後の経済発展に伴い、電力需要が急速 に増加した。事業審査時点(1994
年)では、特にベトナム中部および南部におい て電力不足が既に深刻な問題となっていた。南部においては、電力供給(12kWh
/日/人)は、潜在需要(
14
~14.4kWh
/日/人)を満たすことができないと推計 されていた。また、1995
年から2000
年の間に、電力需要は国全体で年15.5%
、南 部において年17.3%
の割合で増加すると予測されていた。1994
年時点での発電設備容量は、ベトナム全国で4,470MW
、南部で1,507MW
で あった。上述したような需要を満たすためには、2000
年には、全国で4,595
~5,390MW
、また南部では1,740
~2,290MW
の最大発電容量が必要とされた。1 2008年ベトナム・日本合同評価チームは三つのワーキンググループから構成され、その各々が異 なる事業を評価した。本件事業は、以下のメンバーからなる水力発電グループにより評価された。
Cao Than Phu (計画投資省:MPI)、Vu Van Thai (商工省: MOIT)、Luong Thi An (ベトナム電力公社:
EVN)、Nguyen Xuan Thang (EVN)、Le Sy Hoi (EVN)、Nguyen Thi Hong Thuy (第六水力発電事業管理 局: HPPMU6)、Nguyen Thi Lan Dai (HPPMU6)、Nguyen Hong Hai (HPPMU6)、Nguyen Tan Vinh (ダ ニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社: DHD)、Nguyen Duy Thinh (DHD)、Nguyen Song Anh (現 地コンサルタント)、Nghiem Ba Hung (現地コンサルタント)、原口 孝子(日本人外部評価者)。
Official
Use Only
南部における電力不足解決のため、北部と南部を結ぶ
500kV
送電線が1994
年に運 転開始された。しかし北部もまた、急激な経済発展のため、近い将来に電力不足 に陥ることが予想された。したがって、他の地域からの電力供給があったとして も、南部における大規模な電力供給源が必要であった。1.2
目的:南部ベトナムのラムドン省およびビントゥアン省において、ドンナイ川系のラン ガ川およびダーミー川に沿って二つの水力発電所(ハムトアンおよびダーミー)
および関連設備を建設することによって、増大する電力需要への対応およびビン トゥアン省の下流地域における乾季の農業用水供給を図り、もって当該地域の経 済発展に寄与する。
事後評価に適用されたロジカル・フレームワーク 上位目標 地域の経済発展
事業目標
1.
南ベトナムにおける電力需要の増加を満たす。2.
ビントゥアン省における灌漑農業を強化する。アウトカム
1.
南部地域への電力供給の増加2.
ビントゥアン省ドゥクリン県およびタンリン県への灌漑用水の供給 アウトプット
1.
ハムトアン水力発電所300MW 2.
ダーミー水力発電所175MW 3. 110 kV
および220 kV
送電線4. 110kV
および220kV
変電所5.
コンサルティング・サービス インプット 総事業費:701億4500
万円(円借款:596
億2300
万円、ベトナム政府105
億2200
万円)1.3
借入人/
実施機関/
実行機関借入人:ベトナム社会主義共和国政府
実施機関:第二電力会社(
Power Company No. 2 (PC2)
)(1995
年1
月27
日 以降ベトナム電力公社(EVN
))実行機関:
EVN
第六水力発電事業管理局(Hydropower Project Management Unit No.6 (HPPMU6)
)1.4
借款契約概要:第
1
期 第2
期 第3
期 第4
期 円借款承諾額/実行額
170
億9,200
万円/150
億8,370
万円49
億6,200
万円/ 47
億9,600
万円46
億6,400
万円 /42
億7,300
万円248
億9,300
万円/ 98
億8,400
万円交換公文締結/
借款契約調印
1995
年4
月/1995
年4
月1996
年3
月/1996
年3
月1997
年1
月/1997
年3
月1998
年3
月/1998
年3
月 借款契約条件 金利1.8 %
、返済
30
年(
うち 据置10
年)
、 一般アンタイド金利
2.3 %
、 返済30
年(
うち据置
10
年)
一般アンタイド金利
2.3 %
、 返済30
年(
うち据置
10
年)
一般アンタイド金利
1.8 %
、 返済30
年(
うち据置
10
年)
一般アンタイド 貸付完了2002
年9
月17
日2003年3
月26
日2004
年9
月12
日 2005年7
月25
日 本体契約(10
億円以上のみ記載)
トーメン、
Ansaldo Energia SPA
(イタリア)、富士電機。日立造船。Ssangyong Corp.
(韓国)。Hyundai Corporation
(韓国)。トーメン、Hydraulic Construction
(ベトナム)、Ssangyong
(韓国)、前田建設。熊谷組、
Astaldi Spa
(イタリア)、Kukdong Engineering
(韓国)。日 商岩井。コ ン サ ル テ ィ ン グ ・ サ ー ビ ス
(1
億 円 以 上 の み 記 載)
電源開発、日本工営。
フ ィ ー ジ ビ リ テ ィ・スタディ
1991
年 ベトナム政府実施2.
評価結果 (レーティング:A
)2.1
妥当性(レーティング:a
)本事業は、審査時および事後評価時ともに、ベトナムの国家政策および開発ニー ズと十分に合致しており、事業実施の妥当性は高い。
2.1.1
ベトナム開発政策との整合性本事業前後の社会経済開発計画(
SEDP
)いずれにおいても、電力セクター開発の 優先度が高い。1996
年~2000
年のSEDP
(審査段階)では、産業開発プログラム およびインフラ開発プログラムにおいて、電源およびネットワークの追加・拡充 が挙げられている。2006
年~2010
年SEDP
(事後評価段階)では、電力セクター 開発の優先順位が1996
年~2000
年計画よりもさらに高くなっており、産業開発プ ログラム、インフラ開発プログラムのいずれも、最初に電力について言及してい る。ベトナムの天然資源を利用した水力発電の優先性も強調されている。電力セクターの開発計画については、第四次電力マスタープラン(
1996
年~2000
年、2010
年までの見通し含む)にて、4,435MW
(1994
年)の発電容量を19,000MW
(
2010
年)まで増強することが計画されていた。事後評価段階における第六次電 力マスタープラン(2006
年~2015
年)」は、50
箇所の水力発電所を含む発電所の建設を通じて、発電容量を
12,357MW
から42,000MW
まで増加させることを計画 している。SEDP
と同様、水力発電開発は、電力マスタープランにおいて高い優先 順位を与えられている。2.1.2
ニーズとの整合性表
1
に、審査時および事後評価時における電力需給に関する指標を示した。本事 業の前後とも高い需要がみてとれ、南部における電力供給源開発の必要性を裏付 けている。他方で、高電圧の国家送電網の発展に鑑み、本事業により生産された電力は南部 のみでなく国全体に供給されている。したがって、本事業の必要性は全国的なも のといえる。
表1:基本的電力指標
指標 事前評価段階 事後評価段階
電力消費量と増加率
全国 9,198GWh (1994) 51,325GWh (2007) 14.7% p.a. (2000-2007)
南部 4,248GWh (1994) 26,646GWh
17-20% p.a. (2000-2007) 発電設備容量
全国 4,470MW (1994) 13,512MW (2007) 南部 1,507MW (1994) 3,920MW (2007) 電力需要予測
全国 15.5% p.a. (1995-2000) 14,640GWh 30,105GWh
17-20% p.a. (2006-2015)
南部 17.3% p.a. (1995-2000) 7,000GWh 15,560GWh 出所
: EVN
2.2
効率性(レーティング:b
)本事業は、事業費は計画を下回ったものの、期間が計画を若干上回ったため、効 率性についての評価は中程度と判断される。
2.2.1
アウトプット本事業のアウトプットはほぼ計画通り完成した(本報告書の最終ページにある「主 要計画/実績比較」参照)。アウトプットは、(
i
)ハムトアン水力発電所(貯水池、ダム含む)、(
ii
)ダーミー水力発電所(貯水池、ダム含む)、(iii
)送電線、(iv
)変 電所、(v
)コンサルティング・サービス、(vi
)住民移転地の開発、のコンポーネ ントからなる。アウトプット実績の概要は以下の通りである。主要アウトプット実績
・ 水力発電所(
2
箇所、定格容量計475MW
):ハムトアン発電所300MW
(150MW x 2
基)およびダーミー発電所175MW
(87.5MW x 2
基)・ 貯水池(
2
箇所、総貯水量836
百万m
3):ハムトアン貯水池(695
百万m
3)、ダーミー貯水池(総貯水量
141
百万m
3)・ ダム:ハムトアン・メインダム(ロックフィルダム、堤高
93.5m
)、ダーミー・メインダム(ロックフィルダム、堤高
72m
)および補助ダム・ 送電線(合計
282.2km
):220kV
線171.2km
、110kV
線111km
・ 変電所(
4
箇所、変圧器容量合計379MVA
):-
バオロック変電所増設(220/110/35kV
、63MVA
および110/22kV
、25MVA
)-
ファンティエット変電所新設(110/22kV
、25MVA
変圧器2
基)-
ドゥクリン変電所新設(110/22kV
、16MVA
)-
ロンタン変電所新設(220/110kV
、250MVA)
ハムトアン貯水池 ダーミー・メインダムと取水口 ハムトアン発電設備
当初計画(第
1
期審査時)と実績の差異に関して、送電線の総延長は、詳細設計2に基づいて
495km
から282.2km
に短縮された。また、4
箇所の変電所のうち、ロンタン変電所は当初計画にはなかったが、発電所のより効果的な送電のため、追加 アウトプットとして建設された。
発電所完成後、両発電所において発電機に何点か問題が生じた。うち、ダーミー 発電所の発電機における問題はいまだ解決されていない3。
2 送電線亘長の計画と実績の差異は、220kV 線が198.8km、110kV線が14kmの短縮であった。220kV 区間のうち2区間(ハムトアン~フーミー線155kmおよびダーミー~ロンビン線165kmは、ロン タン変電所の追加建設に伴ってキャンセルとなった。かわりに、ダーミー-ロンタン線129kmが追 加された。
3 両発電所の発電機の問題点は次の通り。
- ハムトアン発電所:回転子(ロータ)軸の不均衡、潤油タンクの高さ不十分、ガス絶縁型開閉 器装置(GIS)の漏油等で、すべて2004年末までに修復された。
- ダーミー発電所:発電機2基の固定子(ステータ)が性能試験および運転中に焼損した。コン トラクターは冷却装置を2度にわたり交換し、また遮断材と固定子コイルエンド部を隙間9mm 以内となるように改良した。作業は2001年から2005年まで行われたが、現在までのところ、
固定子コイルエンド部に亀裂を生じる問題は未解決である。2008年5月、EVNおよびコントラ
コンサルティング・サービスは、ほぼ計画通り実施された。主な業務内容は、入 札および施工管理であった。コンサルタントの能力に関し、問題は報告されてい ない。
貯水池および送電線の建設に伴う再定住地の開発は、「
2.4.3
用地取得および住民 移転のインパクト」に記載した。図1. 事業サイトの地図
2.2.2
期間本事業の期間は、当初
1995
年4
月から2000
年12
月までの69
カ月間と計画され ていた4。実際の期間は、1995
年4
月から2001
年7
月までの76
カ月間で、当初計 画の110%
であった。遅延の理由としては以下のようなものがある。すなわち、(
i
)入札の遅れおよび追クターは、契約金額の減額および今後2年間分の交換部品提供といったオプションについて協 議を行い、EVNが自身で部品交換を行う予定である。
4 開始時点は、第1期借款契約の署名日である。完了日は、本事業の場合、性能試験の合格日と定 義された。
ランガ川
ダーミー発電 設備
ハムトアン発 電設備
ダーミー川
ハムトアン貯水池
ダーミー 貯水池
メイン・ダム 補助ダム
メイン・ダム
補助ダム 洪水吐 ラムドン省
バオロック県 ビンツトゥアン省
タンリン県
ラムドン省 ディリン県
ビントゥアン 省タンリン県
0 5 km
加地質調査・設計変更の必要による建設作業の開始の遅れ、(
ii
)審査および入札 段階における運営・維持管理機関(ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社)不在により生じた技術上のミスマッチや、メイン・ダムの氾濫、ダーミー・サブ トンネルの部分的倒壊といった幾つかの要因による、建設中の所定外の作業の発 生、(
iii
)自然災害による建設作業の一時停止(1998
年および1999
年における洪 水は、25
年に一度の確率の規模であった)、(iv
)送電線のための用地取得におけ る遅れ、である。しかし、建設工事期間そのものは、ほぼ計画通りであった。当初、第一号の発電機(ハムトアン発電所第一ユニット)は
2000
年1
月に、また 最後の発電機(ダーミー発電所第二ユニット)は2000
年4
月に商用運転を開始す る予定であったが、実際の開始日は、ハムトアン発電所、ダーミー発電所それぞ れ2001
年4
月および2001
年6
月となった。2.2.3
事業費当初計画による総事業費用は
683
億7,500
万円で、うち581
億1,800
万円が円借款 対象となっていた。実際の総事業費は417
億3,800
万円で、うち円借款によるもの が357
億9,500
万円となった。事業費減少の主な理由は、(
i
)競争による効率的受注、(ii
)1995
年、1996
年、1997
年における為替レートの変動、(iii
)送電線のルート変更および変電所における統 一的な変圧器の設置による費用削減、である。2.3
有効性(レーティング:a
)本事業の実施によりおおむね計画通りの効果発現が見られ、有効性は高い。
2.3.1
電力供給の増加図
2
および表2
に見られる通り、ハムトアンおよび ダーミー発電所の年間発電量は、すべての年におい て最低計画値を上回っており、またほとんどの年で 平均計画値も上回った。発電量の変動は、主に降雨 量(特に、2005
年の水量が少ない)および、「2.2
効 率性」にて述べた発電機の問題に起因している。し かしながら、発電量が最も少なかった年(2005
年)においても、総発電量は計画値の
85
%を上回ってい る。ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社および
HPPMU6
は、かかる問題を解決するために本事業コンサルタントおよびコントラクターと協力して対応し、その結果、計画外停
図2. ハムトアン・ダーミー発電 所の年間発電量
出所:ダニム・ハムトアン・ダー ミー水力発電会社
止時間は、時を経て急激に減少した(表
3
)。表2. ハムトアン・ダーミー発電所発電量の計画値と実績
(
単位:GWh)
計画値 実測値
最低 年間平均 2001* 2002 2003 2004 2005 2006 2007 ハムトアン 701 965 923 1,112 1,217 1,054 838 1,183 1,188 ダーミー 394 590 401 468 708 558 494 682 629
合計 1,095 1,555 1,323 1,580 1,925 1,613 1,333 1,865 1,817
出所:計画値は審査資料、実測値はダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社
注: 2001年の数値は、4月~12月(ハムトアン)および6月~12月(ダーミー)のもの。
表3. ハムトアン・ダーミー発電機の運転時間 (単位:時間)
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 運転時間(計画値:3,500時間/ユニット)
ハムトアン 6,196 7,958 9,164 8,224 6,476 8,636 9,419 - 第一ユニット 1,791 4,383 4,699 4,102 3,577 4,286 4,847 - 第二ユニット 4,405 3,575 4,465 4,122 2,899 4,350 4,572 ダーミー 5,218 5,513 8,459 6,673 5,895 8,163 7,539 - 第一ユニット 2,361 2,143 4,254 2,077 3,706 3,982 5,135 - 第二ユニット 2,857 3,370 4,205 4,596 2,189 4,181 2,404 計画外停止時間
ハムトアン 5,182 2,489 51 883 239 98 1 - 第一ユニット 3,237 1,924 10 368 126 28 0 - 第二ユニット 1,945 565 41 515 113 70 1 ダーミー 3,757 8,005 3,838 7,486 4,232 545 185
- 第一ユニット 2,360 4,818 1,939 4,941 840 262 150 - 第二ユニット 1,397 3,187 1,899 2,545 3,392 283 795 出所:ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社
表
4
は、ハムトアンおよびダーミー発電所における水利用状況を示している。貯 水池への年間流入量は降水量により変動するが、最大水位に届かなかった年は1
年のみであった(2005
年)。貯水された水は、発電に十分に利用されている(すな わち、洪水吐からの放水は最小限に保たれている)。貯水池の堆積量の測定は行わ れていないが、将来の実施が計画されている。表4. ハムトアンおよびダーミー発電所の取水量および放水量 (単位:百万m3)
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007
貯水池への総流入量
ハムトアン 1,880 1,786 1,964 1,627 1,358 1,760 1,933 ダーミー 1,054 1,792 1,966 1,651 1,341 1,876 1,928 洪水吐からの総放水量
ハムトアン 610 16 37 2 0 69 73
ダーミー 0 526 27 131 0 7 222
発電に使用された水量
ハムトアン 1,341 1,735 1,872 1,594 1,269 1,784 1,807 ダーミー 1,062 1,272 1,932 1,504 1,344 1,877 1,711 出所:ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社
本事業後、ハムトアン・ダーミー発電所はさらに、ドンナイ川沿い、ダーミー発 電所の下流に位置するチアン水力発電所(
400MW
)に発電用水を供給するように なった。表5
は、チアン貯水池への流入量を示している。ダーミー発電所からの 流入量は同貯水池の30%
を占めているが、特に、2001
年以降の乾季月に増加を見 せ、1998
年より高くなった(1999
年および2000
年はドンナイ川流域への水量は 確率30
%以下の多量であったため比較対象からは外している)。表5.チアン貯水池への乾季の流入量
(
単位:m
3/s)
年 1月 2月 3月 4月 5月 6月
1998 83.26 45.39 29.09 43.20 155.70 188.77 1999 265.56 106.43 83.1 322.54 674.87 1,328.04 2000 146.46 101.15 94.93 158.30 230.50 509.25 2001 203.11 91.04 78.53 143.35 221.02 628.50 2002 107.55 64.70 71.45 88.73 127.20 375.36 2003 134.05 70.10 70.35 78.25 261.97 669.51 2004 122.94 69.36 58.09 103.78 198.56 623.59 2005 64.46 48.89 123.04 72.13 160.02 269.86 2006 133.01 88.30 91.16 121.83 178.24 262.82 2007 222.05 56.37 80.74 114.75 263.04 327.03 出所:チアン水力発電所
2.3.2
内部収益率(IRR
)審査時に計算された本事業の財務的内部収益率(
FIRR
)は7.62
%であった。費用 としては投資額、再投資額、運営・維持管理費が、便益としては電力販売が含ま れている。事後評価時、費用および便益の実績額を使って再計算したところ、FIRR
は
3.52%
となった。FIRR
の減少は、電力販売価格が審査時の見積もりよりも低いためであると思われる5。経済的内部収益率(
EIRR
)は審査時に計算されていない。2.3.3
ビントゥアン省における乾季の農業用水の供給ハムトアン・ダーミー水力発電所で発電に使用後放水された水は、ビントゥアン 省におけるランガ川沿いの地域にて、灌漑用に用いられている。ダニム・ハムト アン・ダーミー水力発電会社によると、ハムトアン・ダーミー発電所は、
15
億m
3/年、または最大
136m
3/秒の水をビントゥアン省に提供している。図3
に示した 通り、乾季の河川水はハムトアン・ダーミー貯水池に蓄えられ、流入量よりも多5 審査時の仮定において、電力販売料金は0.06USD/kWhとされた。これは2000年価格で1,193ド ン/kWhに相当する(計算が行われた1993年時点の為替レート1USD=10,536ドンを適用)。一方、
今回事後評価時に入手した資料からは、実際の販売価格は2006年に128ドン/kWh、2007年に131 ドン/kWh、2008年には156ドン/kWhとなっている(2000年価格に換算)。ちなみに、産業向けの 高圧電力(110kVまたはそれ以上)の小売価格は、2000年価格において、316ドン/kWh(オフピー ク時)から1,183ドン/kWh(ピーク時)の幅がある。なお、審査時仮定による販売価格と便益の実 績額を用いて試算したところ、FIRRの再計算値は14%程度となった。本事業審査時の他の類似調 査もまた同様のレートを使っていたため、審査での計算が販売価格を過大評価していたとは言えな い。電気価格は、EVNの支配下にある。
くの水が発電後放水されている。この水供給は、特に乾季の間、タンリン県およ びドゥクリン県にとって極めて重要であった。農業生産への水供給のインパクト に関しては、「
2.4.1 (3)
稲作生産の向上」を参照のこと。図3. 乾季および雨季におけるハムトアン・ダーミー スキームからの/への水量比較
出所:ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社
2.3.4
ビントゥアン省への水供給の安定化ハムトアン・ダーミー貯水池が整備されて、ランガ川からビントゥアン省への水 資源は非常に安定した。図
4
は、事業のあった場合となかった場合の水量比較を 示している。すなわち、本事業施設により、増水期には本事業がなかった場合よ り放水量が減少して洪水の程度が軽減され、乾季にはより多くの水を供給してい るといえる6。図4. 本事業があった場合となかった場合の乾季/雨季の間の水量比較
出所:ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社
2.4
インパクト本事業は社会経済開発のための電力を供給することで、ベトナム南部およびその 他の地域における工業化および近代化プロセスの推進に寄与している。さらに、
ビントゥアン省においては、より直接的な影響も見られる。
6 図3および図4におけるグラフは、2001年から2008年の流量を示している。一連のデータにお いて、乾季および雨季をそれぞれを代表する月として2月と8月を選び、月間の流量を比較してい る。
2.4.1
地域の経済発展へのインパクト(上位目標の達成度)(1)
経済成長1997
年から2007
年までのベトナムの国内総生産(GDP
)年平均成長率は7.2
%で あった7。同時期の部門別成長率を見ると、製造業部門で11.4
%、農業部門で3.5
%、エネルギーおよび水道部門で
12.0
%となっている。産業部門の発展はベトナムの 経済成長を後押ししている。(2)
経済発展のための電力供給(発電のインパクト)電力供給の増加が経済発展を支えたことは容易に推察できる。図
5
および図6
が 示すように、電力生産と電力消費はいずれも増え続けている。図5 ベトナム全土における電力生産と消費
(単位:100万kWh)
図6 南部における電力生産と消費
(単位:100万kWh)
出所:
EVN
出所:EVN
本事業を含めた電力セクター開発の進展に伴い、
2001
年から2004
年までの間に電 力需要(EVN
予測)と供給との差はほぼゼロにまで縮小した。しかし、需要の急 増により、差は再び拡大しつつある(図7
)。図7:電力需給ギャップ
(電力供給から予測需要を引いたもの)
図8:製造部門における電力消費のシェア
出所:
EVN
出所:EVN
電力消費者数(メーター数ベース)は、
1999
年の3,063,000
から2006
年には10,390,000
にまで増加した。また、グリッドにアクセス可能な世帯の割合は、同じ7 1994年の一定価格換算。
期間中に
60
%から92
%にまで拡大した。製造部門における電力消費のシェアも同 様に増加傾向にある8。製造部門での消費量は、1999
年にはベトナム全土の総電力 消費の36
%、南部では44
%を占めていたのが、2006
年にはそれぞれ48
%と52
% に増加している(図8
)。産業開発の盛んな南部の省においては、例えばドンナイ 省(ホーチミン市から北に30km
に位置し、多くの工業団地が位置する)では78
% に達している。ハムトアン・ダーミー水力発電所からの電力は
220kV
の送電網を通じてグリッド に送られているため、本事業の便益は国全体に及び、上述のような電力供給の増 加に寄与している。電力生産データを用いて本事業の貢献分を推定すると、ハム トアン・ダーミー水力発電所の発電量は、2006
年には全国発電量の3.6%
、南部で の発電量の7%
を占める計算になる。さらに、本事業の発電による想定受益者数は、ハムトアン・ダーミー水力発電所の発電量を一人あたり電力消費(
2006
年には609kWh
)で除することにより、約300
万人と概算できる。(3)
稲作生産の向上(灌漑用水供給のインパクト)ビントゥアン省のドゥクリン県は、同省の中で最大の米生産地である。ハムトア ン・ダーミー水力発電所からの放水後、同県では
900ha
の追加的な灌漑農地が開 墾され(県内の灌漑農地面積合計は6,200ha
)、三期作が広まった。省および県の 政府は、自己予算によってポンプ場、堤防および貯水池を建設した。一部には、自費で簡易なポンプ場を建設した農民もみられた。ドゥクリン県の米の生産高は 順調に増加し、
2007
年には75,300t
に達した。新たに開墾された水田 地方政府が建設した灌漑ポンプ場
(4)
運輸交通の改善(道路建設のインパクト)本事業では、事業サイトへのアクセスを改善するため、国道
1
号(ファンティエ ット市周辺)および国道20
号(バオロック町周辺)を結ぶ総延長120km
の地方道8 EVNは電力消費者を以下に分類している:(i)住居・マネジメント、(ii)商業・サービス、(iii) 製造、(iv)農林水産業、(v)その他。
路を建設・修繕した。この道路は国道
55
号と指定され、ファンティエット(ビン トゥアン省の省都)~ダラット(ラムドン省の省都)間の移動時間を、6.5
時間か ら4.5
時間に短縮した。(5)
受益者の意見電力会社 本事業の直接受益者は、南部において
220kV
以上の送電系統を管理し ている、国家送電会社(NPT)
9下の第四送電会社(PTC4)
である。今回事後評価で は、南部で営業する配電会社全3
社、すなわちホーチミン市電力会社(HCMC PC
)、ドンナイ電力会社(
Dong Nai PC
)、第二電力会社(PC2)
および、そのそれぞれが 傘下に置くいくつかの地方配電会社への聞き取りを行った10。その全社が、ハムト アン・ダーミー水力発電所からの電力は、2005
年以降は既に不十分とはいえ、電 力供給を改善し、産業発展を後押ししたと回答している。地方政府 事後評価においてホーチミン市、ドンナイ省、ビントゥアン省、ラム ドン省の人民委員会への聞き取りを行った。すべての回答者が、南部における電 力セクター開発は全体として産業開発に貢献し、特に工業団地の開発を通じての 貢献が大きかったと回答した。また、地方の電化に加え、農業の発展を促進した 点(例、灌漑ポンプの動力や畜産への利用)も強調された。
本事業のより直接的なインパクトに関して、ビントゥアン省が強調したのは次の 点である。(
i
)乾季の灌漑用水供給による便益、(ii
)省間道路の建設による利便 性の強化(本事業の完成後、当該道路の管理はラムドン省およびビントゥアン省 に移転され、その後国道55
号と指定された)、(iii
)用地取得および住民移転の影 響を受けた人々の生活の大きな変化(下記「2.4.3
用地取得および住民移転の影響」を参照)。他方、ハムトアン貯水池およびハムトアン水力発電所の一部が位置して いるラムドン省は、同発電所を含む水力発電所は、省の収入を増加させたことを 指摘した11。
電力消費者
PC2
およびHCMC PC
の顧客22
社(主として製造業および小売店 舗・ホテル)に対して、2007
年のフーミー火力発電所事業(1
)~(4
)(1994
年、1995
年、1997
年、1999
年に借款契約を締結し、2005
年に事業完了)の事後評価 に使用したものと同じアンケートを使って調査を行なった。9 送電部門の管理は、2008年のNPT設立に伴い、EVNからNPTに移管された。
10 HCMC PCはホーチミン市内の配電、Dong Nai PCはドンナイ省の配電、PC2はその他の南部の 省すべての配電を担当している。これら各社の下、数々の地方(すなわち下位の)配電会社が存在 する。
11 ラムドン省の人民委員会によると、2005年から2007年の間のダニム・ハムトアン・ダーミー水 力発電会社からの累積収入は、付加価値税、水資源税および事業税を含み、1,000万米ドルに達し た。
調査の結果は
2007
年の調査結果と合致するものであり、電力供給の量と信頼性は2000
年代初めと比べて改善したという回答企業に共通の認識を示している。同時 に、多くの回答者が最近の電力不足およびさらなる改善の必要性について指摘し ている。サンプル数が非常に少ない調査であったが、両者の調査で同様の傾向が みられたことから、この結果にはある程度の信頼性があると思われる。囲み1
で、顧客調査の結果をより詳細に説明した。
農業従事者 事後評価チームは、ビントゥアン省ドゥクリン県ヴォシュー町にて、
24
人の農業従事者とのフォーカスグループ・ディスカッションを実施した。参加 者の多くは、発電所からの放水量が規制されていないというマイナス側面も強調 する一方で、本事業が農業生産を支えていることを指摘した。囲み2
に、フォー カスグループ・ディスカッションの概要を示した。電力会社への聞き取り 省政府への聞き取り
囲み1. 南部におけるEVN顧客調査の概要
1. 調査の目的:2000年代の南部電力セクター開発の効果に関する情報の収集
2. 調査期間:2008年
11
月3. 調査方法:
1) 2007
年のフーミー火力発電所事業(1)~(4)(以下「2007年版調査」)の事後 評価に使用したものと同じ書面によるアンケート調査2)
回答者3
名(社)に対する半構造的インタビュー4. 回答者プロフィール:PC2および
HCMC PC
顧客から合計22
名の回答者1) PC2
顧客:回答者計10
名(小売店3、製造業 7)
2) HCMC PC
顧客:回答者計12
名(小売店1、製造業 6、ホテル 2、その他の事業 3)
従業員数 年間電力消費 年間電気料金
最大 2,000人 19,000 MWh 181,000,000,000 ドン
最小 15人 650 MWh 220,000,000 ドン
平均 482人 5,838 MWh 7,610,000,000 ドン
* 2007
年版調査では、回答者は合計30
名5. 2007年版調査と比較した主な調査結果
1)
電力供給量(単位:回答数)最も回答数の多かったカテゴリー(ハイライト表示)が
2002
年以後は「低い」か ら「適正」へ。2007年版調査(n=30)) 2008年版調査(n=22)
高い 適正 低い 大変 低い
無回 答
高い 適正 低い 大変 低い
無回 答 2002 年
以前 1 (3%)
8 (27%)
18 (60%)
2 (7%)
1 (3%)
2002
年以前 1 (5%)
3 (14%)
10 (46%)
1 (5%)
7 (32%) 2002 年
以後 1 (3%)
25 (83%)
4 (13%)
0 0 2002
年以後 0 14 (64%)
7 (32%)
0 1 (5%)
2)
電力供給の安定性(単位:回答数)最も回答数の多かったカテゴリー(ハイライト表示)が「悪い」から「適正」へ。
2007年版調査(n=30) 2008年版調査(n=22)
大変よ い
適正 悪い 大変 悪い
無回 答
大変 よい
適正 悪い 大変悪 い
無回 答 2002 年
以前 1 (3%)
6 (20%)
20 (67%)
2 (7%)
1 (3%)
2002年以
前 2
(9%) 4 (18%)
8 (36%)
0 8 (36%) 2002 年
以後
1 (3%)
24 (80%)
4 (13%)
1 (3%)
0 2002年以 後
6 (27%)
14 (64%)
1 (5%)
0 1 (5%)
(囲み
1
続き)3)
電力供給が事業にもたらすプラス効果(2008年版調査)・ 電力供給がより製造や事業の需要に見合うものになった。
・ 電力供給によってより大規模な生産や高品質化が可能になった。
・ 不安定な電力供給や停電による生産の中断が減った。
・ 今でも停電は起きるが、事前に通知がある(以前は予告なしだった)ので、それ に備えることができる。
・ ここまでの期間中、配電会社が非常に協力的だったので助かった。
4)
その他のコメント(2008年版調査)・ 停電については改善が必要、電力供給もさらに安定させるべき。
・ 電力部門は発電にもっと投資すべき。
・ 地下中電圧グリッドを改善するべき。
・
2002
年以後電力供給は大幅に改善されたが、2008 年以降はまた非常に厳しくな ってきた。6. HCMC PC顧客とPC2顧客の回答の比較
各回答カテゴリーのスコアは以下の方法で計算:
・ 電力供給量の信頼性、停電、電圧変動および電圧レベルに関する各回答に対し、
以下のポイントを付与:
「高い」「大変よい」は
4
ポイント「適正」は
3
ポイント「低い」「悪い」は
2
ポイント「大変低い」「大変悪い」は
1
ポイント「無回答」は
0
ポイント・ 各回答カテゴリーのスコアは上記のポイントに回答数をかけて算出。
・ スコアは
HCMC PC
顧客とPC2
顧客とを比較するために標準化されている(0ポ イントから100
ポイントまで)。「2002年以前」と「2002年以後」の差は、全体的に
PC2
の顧客よりもHCMC PC
の 顧客において大きい。インパクトは他の地域と比べてHCMC
においてより明確に感 じられている。HCMC PC顧客(HCMC内に所在) PC2顧客(その他の地域に所在)
量 信頼性 停電 電圧変 動 電圧レ
ベル 量 信頼性 停電 電圧変
動 電圧レ ベル 2002年
以前 1 8 18 2 1 2002年
以前 1 3 10 1 0
2002年
以後 1 25 4 0 0 2002年
以後 0 14 7 0 0
差 11 16 25 11 (7) 差 43 63 55 60 55
2.4.2
環境へのインパクト本事業に関する環境影響評価(
EIA
)は、1994
年4
月にベトナム政府の承認をう けた。EIA
によると、本事業現場は自然保護地区内に位置しておらず、また、絶 滅の危機にある動植物は地域内に存在していないとのことであった。事業実施中 は、ラムドン省およびビントゥアン省の科学技術環境部(DOSTE
)が毎月、水質、大気質、騒音レベルおよび振動レベルを測定していた。事業完成・引き渡し後は、
ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社が同じ項目を年に
1
回測定している。測定結果および省政府と水力発電会社への聞き取り結果によると、環境問題は検 出されていない。
2.4.3
用地取得および住民移転のインパクト(1)
被影響地域および人口本事業のため、計
6,827ha
の土地が取得された。内訳は、貯水池3,144ha
、発電所3,175ha
、道路64ha
、送電線・変電所444ha
12である。その結果、計3,209
世帯が影 響を受け、本事業による補償または支援を受けた。受けた影響の内容は次の通り。- 823
世帯が貯水池地域から移転した。うち150
世帯が、本事業がハムトアン省 ハムトアンバック地区のラダコミューンに建設した再定住地に移転し、その他12 審査資料に計画値の記載なし。
囲み 2. ビントゥアン省の農業従事者との フォーカスグループ・ディスカッションの概要
1. 実施日・場所
2008
年11
月11
日 於 ビントゥアン省ドゥクリン県ヴォシュー町2. 参加者
合計
23
名の参加者(男性15
名および女性8
名)3. ディスカッションのテーマ「本事業はあなたの生活をどのように変えましたか?」
以下の各意見の後の番号は、参加者による投票数である(参加者あたり
3
票を、自分 が最も重要だと思った「変化」に対し、自由に分配して投票するよう依頼した)。参加者が最も重要だと考える上位
5
つの「変化」:1)
農地の増加、生産の多様化による生産支援 (20)2)
規制されていない放水が、生産にマイナス影響を引き起こした(14)3)
農村地域の生活の変化、人々が幸せに(10)4)
洪水が減少した(5)4)
環境汚染が減少した(5)の世帯は、バオラム県およびディリン県といった、同省の近隣地区に移動した。
彼らのほとんどは、本事業審査が行われた時点で既に移転済みであった13。
- 345
世帯が送電線・変電所用地から家屋等を撤去した。-
残り2,041
世帯は土地、林木、作物の一部が影響を受けた。(2)
本事業による補償および支援本事業は、地方自治体との緊密な協議を行い、影響を受けた人々に対して次のよ うな補償または支援を提供した。
-
ラダコミューンの150
世帯に対する、150
軒の住宅(母屋、台所、養鶏小屋)
および各家屋に隣接する3ha
の耕地、診療所1
軒、小学校1
校、コミューン 道路、灌漑施設。金銭の供与は行われなかった。-
ディリン県のロックナムコミューン、バオラムコミューン、ホアバックコミ ューンに移住した人々に対する、灌漑施設(各地区につき、100
~140ha
の灌 漑用貯水池・ダム1
つを含む)建設資金304
億ドンおよび移転・農業支援129
億ドン。-
送電線・変電所用地取得により影響を受けた人々に対する補償計445
億ドン。HPPMU6
は現在もなお、上述の諸施設をフォローアップするために、当該コミューン、地区および省政府と密接な連絡を取っている。
(3)
住民移転のインパクト基本的指標
ラダコミューンから入手した統計データは、本事業が再定住地を開 発した後、人々の生活が多くの面での大きく変化したことを示している(表
5
)。表5. ラダコミューン(再定住地)の統計データ
本事業前(1995年) 本事業後(2007年)
総面積 11,212ha
人口 600世帯(コホー族)
世帯電化率 0% 100%
清潔な水へのアクセス 0% 100%
世帯オートバイ所有率 13% 70%
世帯テレビ所有率 12% 90%
一人当たり食糧消費 89kg/年 320kg/年
耕作面積 7,673ha 1,700ha
13 貯水池周辺の住民は、移動耕作を伝統的に行ってきた少数民族のコホー族に属している。本事業 の影響を受けた人々のうち66世帯は、彼らの親戚が住むラダコミューンに事業前に再定住していた ため、本事業では84世帯が再定住の追加対象者と認定された。それら84世帯もラダコミューンへ の移転を希望したため、本事業は、新たな移転住民と早期移転住民との間のトラブルを避けるため、
早期移転住民のための家屋も含め、150軒の家屋を用意した。
本事業前(1995年) 本事業後(2007年)
年間の作付回数 1 2-3
総家畜頭数 200頭 1,000頭以上
世帯あたり子供数 時には13名 4
小学校数 2 3 (*)
中学校数 1 1
診療所数 0 1(*)
出所:ラダコミューン人民委員会
注:増加した小学校および診療所は、本事業により建設されたものである。
移転住民とのフォーカスグループ・ディスカッション 事後評価チームは
2008
年11
月12
日に、ラダコミューンの20
名の移転住民とのフォーカスグループ・デ ィスカッションを行った。テーマ「本事業はあなたの生活をどのように変えまし たか?」に対する参加者の意見は、住居や道路の改善といった肯定的なものより も、「高電圧送電線に対する心配」、「不確かな土地利用権」、「畑まで遠くなった」、「家屋の老朽化」といった否定的なものが多くを占めた。
本事業で建設した住宅と道路
(ラダコミューン)
移転住民とのフォーカス・
グループ (ラダコミューン)
本事業で建設した小学校
(ラダコミューン)
アンケート調査
2007
年に、ベトナムの社会開発貧困撲滅研究センターが、ラ ダコミューン、ロックナムコミューンおよびホアバックコミューンの住民計350
名を対象に、本事業の住民移転インパクト調査を行った14。調査結果は上述したフ ォーカスグループ・ディスカッションの結果とは対照的で、回答者の高い満足度 を示している。例えば、現在の住居に満足している回答者は87.7%
、満足していな い回答者は12.3%
で、再定住プログラムが良いと思う回答者は57.0%
、良くないと 思う回答者は13.4%
、変化なしとの回答が25.3%
、等である。また、生活(生産活 動、健康、教育、文化等)の変化に関する調査結果は、表5
において示されてい る統計値の傾向と一致していた。14 Research Center of Social Development and Poverty Eradication of Vietnam National University and University of Social Sciences and Humanities (July 2007) Economic and Social Impact Analysis on Ham Thuan-Da Mi Hydropower Project.
2.5
持続性(レーティング:a
)本事業は実施機関および運営・維持管理機関の能力および維持管理体制ともに問 題なく、高い持続性が見込まれる。
2.5.1
実施機関および運営・維持管理機関2.5.1.1
運営・維持管理の体制本事業設備の運営・維持管理に関する組織体制に問題はみられない。
EVN
の下部 にあるダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社が、貯水池およびダムを含む ハムトアン・ダーミー水力発電所の運営・維持管理に責任を負っている。この組 織は、事業完成にあたり、それまでの暫定運営維持管理委員会(EVN
により設立され、
HPPMU6
の管理下にあった)が改組されたものである。発電所の運営は第二業務部が担当し、維持管理は技術部および企画・資材部の支援を受けて、第二 メンテナンス部が行っている。
現在、ラムドン省およびビントゥアン省は、同水力発電会社に土地利用権証明書 を発行していない。したがって、周辺住民が水力発電所地域に侵入し(主に耕作 のため)、発電所の保護、監視および維持管理上の問題を引き起こす可能性が懸念 されている。
一方、本事業の送電線および変電所の運営・維持管理は、
220kV
系統に関してはNPT
の下の第四送電会社(PTC4
)が管理する地方送電会社が、110kV
系統に関し てはEVN
の下の第二電力会社(PC2
)およびホーチミン市電力会社(HCMC PC
) が管理する地方配電会社が、それぞれ行っている。2.5.1.2
運営・維持管理における技術運営・維持管理スタッフの技術能力は、一部修理をサプライヤに頼る必要が存在 するとはいえ、おおむね十分である。
ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社の業務部には
12
名のエンジニアを含 む48
名の職員が、メンテナンス部には20
名のエンジニアを含む42
名の職員が、それぞれ配置されている。同社によると、当該職員の人数および能力はほとんど の事業設備の運営・維持管理に十分である。同社職員のうち
30
名は、本事業実施 中に、メーカーおよびサプライヤから研修を受けた。事業完了後は、発電会社が 引き続き研修を実施している。運営・維持管理活動は、文書に基づいて確立され た手続またはサプライヤ指定の手続きに従って遂行されている。運営・維持管理作業の大半は水力発電会社自身によって行われているが、一部は
依然としてメーカー(純正部品およびサービスを提供)に修理を外注する必要が ある(例えば、調速(ガバナ)システム、励磁制御システム等)。
図9. ダニム-ハムトアン・ダーミー 水力発電会社の組織図
出所:ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社
2.5.1.3
運営・維持管理における財務表
6
は、本事業の運営・維持管理費用が収益によって賄われていることを示して いる。ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社は、運営・維持管理予算を毎年
1,000
万ドンずつ増加させることを計画している(表7
)。しかし、電力販売価格は発電費用単価とほぼ同じレベルに抑えられている。なお、水力発電会社は現 在株式会社化の過程にある。
送電線および変電所に関しては、送電会社および配電会社が系統全体の運営・維 持管理費として管理しているため、本事業施設部分のみの予算情報は入手できな かった。しかし少なくとも、
EVN
グループの最近の財務実績は良好であると言え る(表8
および9
)。表6. ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社の費用と収益
(単位:別途記載のない限り、百万ドン)
2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008
燃料 0 0 0 0 0 0 0 0
材料 2,614 3,307 3,496 3,079 5,257 5,387 8,958 6,070 人員 9,794 12,200 13,980 16,048 18,144 25,185 27,489 32,392 資産減価償却 157,455 324,710 316,916 276,566 278,949 297,149 308,505 326,857 外注 622 889 1,052 986 871 1,452 1,465 1,682 オーバーホール 7,501 9,849 13,625 12,416 21,989 16,474 15,187 31,278 天然資源税 - - - - 4,102 40,385 44,801 38,126 土地賃貸 99 116 141 141 148 255 740 907 長期借入金利息 2,689 90,297 89,984 103,672 100,011 84,143 133,887 140,211 食事手当 752 825 1,300 1,339 1,431 1,572 1,793 1,681 その他費用 4,168 5,967 7,784 7,302 7,555 8,245 8,676 8,255 費用総額 185,694 448,160 448,278 421,550 438,457 480,247 551,501 587,459 生産単価原価
(ドン/kWh) 77.01 185.68 154.55 175.98 236.62 166.5 184.7 231.2 電力販売価格
(ドン/kWh) 172.20 172.7 278.8
収益 496,625 791,978 708,431
税引前利益 16,378 240,477 120,972
税引後利益 14,085 23,841 49,571
出所:DHD水力発電会社
表7. 運営・維持管理費用および予算 (単位:百万ドン) 実際のO&M費用 O&M予算
年 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 金額 16,943 7,470 78,817 86,990 95,705 109,859 120,000 130,000 140,000 150,000 出所:PCR
注:固定資産減価償却費および長期借入金利息は含まれない。
表8. EVNグループの連結貸借対照表
2005 2006 2007
流動比率
186% 203% 195%
当座比率
125% 144% 137%
自己資本比率
42% 38% 41%
固定資産対自己資本比率
175% 188% 177%
出所:
EVN
表9. EVNグループの連結損益計算書
(
単位:百万ドン) 2005 2006 2007
総収入
38,818,688 44,920,047 58,133,397
粗利益5,731,131 7,660,987 9,777,833
税引後利益2,327,253 2,256,201 3,335,853
出所:
EVN
2.5.2
運営・維持管理状況水力発電所の維持管理は、国で定められた規則およびメーカーの維持管理マニュ アルに従って、次のように行われている。
-
オーバーホール(4
年毎)-
日常メンテナンス(2
年毎)-
定期点検(毎年)現在、ハムトアン水力発電所の設備の状態は正常である。
しかし、「
2.2
効率性」で述べた通り、ダーミー発電機の 問題は完全には解決されていない。また、制御システム、調速システム、励磁システムといった幾つかの機器はす でに生産されていないため、交換部品の入手が困難とな っている。さらに、それらの機器の価格は非常に高額で ある。ダーミー水力発電所を正常な状態に戻すための対 策は未だに継続中である。その状況で運転を続けるため、
通常よりも頻繁なメンテナンスが行われている。
3.
結論および教訓・提言3.1
結論上述のような調査結果から、本事業の評価は非常に高いといえる。
3.2
教訓(1)
事業準備・ 用地取得および補償は、地方政府や関連機関の支援によって首尾よく行われた。
特に、ベトナム政府および地方政府の支援で、土地利用権の供与、森林保護の ための作物および林産物の支援は時宜を得ていた。本事業でみられた以下のよ うな対応は、将来の事業のための好例となり得る。
-
人々が水力発電所建設に関する政府の政策を理解するよう働きかけたこ と。-
用地取得における次のような好条件を付与したこと。+
地方政府は住民と土地インベントリを完成させた後で、建設工事の開 始をコントラクター/サブコントラクターに許可した。+
土地を迅速に取得するため、森林樹問題を取り扱うタスクフォースを 設置した。+
住民への支払いを促進するため、補償および支援計画の審査・承認プ ロセスを迅速化した。ロンタン変電所における メンテナンス作業
+
地方政府が迅速に問題点の解決に当たった。-
目的を果たすための協力・共同の精神に基づき、事業が省、県、コミュー ン人民委員会と日常的な友好関係を維持した。-
あらゆる障害を、政府の政策や規定に基づき、相互の理解と関心をもって 話し合い、解決していった。-
公文書および公式報告の利用を必要ない限り最小化した。これらの管理手 段は常に時間のかかるものであり、非効率的である。・ 地質調査において正当な手順である無作為抽出を行ったにもかかわらず、工事 開始後に地質条件が調査結果と異なっていることが判明した。工事段階での再 調査および再設計による遅延を避けるため、地質調査は改善の余地があった
(
サンプルの増加等)。(2)
実施・ 工事段階における運営・維持管理機関の参加(本事業の場合、暫定運営管理委 員会のメンバーとして)に伴い、運営・維持管理に関する経験が深まった。今 後の事業も、持続性を改善するための手段として、このような対応を取り入れ ることもできると思われる。
(3)
運営・維持管理・ 技術移転を組み込む。すなわち、水力発電所事業において、財政状況が許せば、
重要な機器(調速、励磁、制御、保安コントロールシステム等)に関しては製 造に関する技術、ノウハウおよび知的財産権(技術移転)を購入することも考 えられる。それにより、事業の業者への依存度を低減し、運転停止を最小化す ることができる。
3.3
提言(1)
すべての事業の完了・ ダニム・ハムトアン・ダーミー水力発電会社は、
HPPMU6
からの助言を受け、ダーミー発電機の問題を解決するための方策を継続するべきである。
(2)
運営システムの改善・ ラムドン省およびビントゥアン省は、周辺住民の不法侵入を防ぎ、発電所およ び関連設備が適切に運営・維持管理され得るよう、ハムトアン・ダーミー水力 発電会社に土地利用権を迅速に与えるべきである。
主 要 計 画 / 実 績 比 較
項 目 計 画 実 際
1.
ア ウ ト プ ッ ト1)
ハ ム ト ア ン 水 力発 電 所
a)
設 備 容 量:300MW (150MW x 2
基)
b)
貯 水 池:総 貯 水 量6
億9500
万m3
c)
メ イ ン ・ ダ ム : ロ ッ ク フ ィ ル ダ ム 、 堤 高91m
a)
計 画 通 りb) 6
億9523
万m3
c)
堤 高93m
2)
ダ ー ミ ー 水 力 発 電 所a)
設 備 容 量 :175MW (87.5MW x 2
基)
b)
貯 水 池 総 貯 水 量 :1
億4100
万m3
c)
メ イ ン ・ ダ ム : ロ ッ ク フ ィ ル ダ ム 、 堤 高69m
a)
計 画 通 りb)
計 画 通 りc)
堤 高72m
3)
送 電 線110kV
お よ び220kV
6区 間 合 計 495km 6区 間 合 計 282.2km
4)
変 電 所a)
バ オ ロ ッ ク 変 電 所 の 増 設 :220/110/35kV–63MVA
お よ び110/22kV-25 MVA
b)
フ ァ ン テ ィ エ ッ ト 変 電 所 の 新 設 :110/22kV-2x25MVA c)
ド ゥ ク リ ン 変 電 所 の 新設 :
110/22kV-16MVA
a)
追 加 : ス ペ ア ・ ベ イ110/22kV-25 MVA
b)
計 画 通 りc)
計 画 通 りd)
ロ ン タ ン 変 電 所 の 新 設 :220/110kV–250MVA 4)
コ ン サ ル テ ィ ング ・ サ ー ビ ス
外 国 :
763MM
現 地 :1,300MM
外 国 :
696.5MM
現 地 :1,252.5MM 5)
住 民 移 転 地 の開 発
住 宅
150軒 お よ び そ の 他 の
必 要 な イ ン フ ラ住 宅