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卒業生の近況報告 医療法人白日会 黒川病院

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卒業生の近況報告 医療法人白日会 黒川病院

著者 吉村 梢恵

雑誌名 東京家政大学附属臨床相談センター紀要

巻 11

ページ 73‑75

発行年 2011

出版者 東京家政大学附属臨床相談センター

URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010065/

(2)

東京家政大学附属 臨床相談センター紀要 第11集

-73-

卒業生の近況報告

医療法人白日会 黒川病院

吉村 梢恵

私は、大学院を修了してから、新潟県胎内市に ある黒川病院で心理士として勤務しています。今 回は近況報告ということで、当院の紹介とそこで の心理士の業務内容について報告させていただ きます。

黒川病院は新潟県北部の山間部にあります。周 りは豊かな自然に恵まれており、県立自然公園や スキー場など、自然を活かした場所がたくさんあ ります。現在は胎内市という地名になりましたが、

黒川病院の名前の由来となっている黒川村は、日 本最古の石油発祥の地として知られています。

当院は昭和

29

年に

37

床で開設し、現在の許可 病床数は

264

床(精神科急性期治療病棟・精神科 療養病棟・認知症治療病棟)で、他に精神科小規 模デイケアがあります。また、病院の併設として、

認知症疾患医療センター、老人保健施設を開設し ています。当院では、地域の方々に愛される病院 づくりを目指し、 「子どもから高齢者まですべて の方のための精神科病院です」をスローガンとし て掲げています。地域柄、高齢者が多いこと、そ して、児童精神科医が常勤していることから、外 来では「もの忘れ外来」と「児童外来」を標榜し ており、成人患者に比べて、高齢者と児童の来院 が多いのが特色です。

業務にも、その特色が反映されており、心理業 務の中では、高齢者や児童と関わることが多いで す。心理査定では、圧倒的に認知症検査が多く、

その目的は認知症の有無、程度の把握、うつ病と の鑑別、認知症の原因疾患の鑑別と多岐にわたり

ます。使用する検査は同じですが、目的によって 着目する点が違ってくるため、何が求められてい るのかを明確にすることを心がけています。そし て、児童に対しては、知能指数や発達のムラの把 握を目的とした検査の依頼があり、併せて性格特 徴を把握するための人格検査もおこなっていま す。その他、統合失調症やアルコール依存症、人 格障害を対象に、病態水準や性格傾向の把握を目 的とした検査も実施しています。心理療法は、外 来では発達障害、適応障害など数ケースを担当し ており、児童の場合には遊戯療法を取り入れてい ます。院内は十分な数の面接室がなく、心理療法 をおこなうのに適した環境とは言い難いですが、

目の前の患者さんに何ができるか、患者さんのた めにどこまで動けるかを考え、患者さんと向き合 っています。病棟では認知症患者を対象に、週に

1

回、回想法を実施しています。稲穂や湯たんぽ といった五感を刺激する品物を用いて、昔のこと を話してもらいます。不安の軽減、抑うつ症状の 改善といった精神機能の維持安定を目的として います。それだけでなく、患者さんのコミュニケ ーションが促進されたり、病棟職員の患者理解が 深まったりするなどの効果も得られています。

これまで当院では、それぞれの職種が

Dr.とや

りとりをしながら個々に患者さんと関わってい

る状態で、多職種とのつながりは希薄でした。そ

れが、昨年から病院を変えていこうという動きが

起こり、多職種で患者さんを援助していく機会が

増えています。ケースカンファレンスや退院支援

(3)

医療法人白日会 黒川病院

などがその代表です。ケースカンファレンスは、

認知症治療病棟でおこなっているものに参加し ており、病棟看護師、介護福祉士、精神保健福祉 士、作業療法士とともに、退院や施設入所の方向 性、病棟内での対応方法、家族への支援方法など を話し合っています。そして、昨年末からは長期 入院患者の退院を促進していく取り組みを開始 し、長期入院によって生じた機能低下の回復を図 ることを主目的に、医師、看護師、薬剤師、作業 療法士、精神保健福祉士と協働して、当院オリジ ナルのプログラムを作成し、実施しています。

また、心理業務に加えて、外来部門会議や患 者・職員の安全を図る対策委員会への参加、新採 用者研修委員や職員研修委員の担当、院内行事へ の参加、フィリピン人看護師候補生の日本語教育 など病院職員としての業務があります。専門職と は異なる業務ですが、組織の一員として病院が機 能していくために必要な業務であり、それだけで なく、このような業務を通じて、多職種とつなが りが持てるため、心理業務を遂行していくために も重要な業務だと考えています。

入職してから今年で

4

年目に入り、途中、チー ム医療の導入という大きな動きがありました。チ ーム医療が開始された当初は、医師と看護師、看 護師と精神保健福祉士といった二者で話が進ん でいき、私はただ座っているだけのお客様状態の 日々が続きました。話し合いに出席するたびに、

何のためにここにいるのだろう?、ここで何をす ればいいのだろう?と思い心理士がチーム医療 に加わる意義が見出せませんでした。そんなこと を感じていた頃、不適応行動の目立つ患者さんが 話題に上り、看護師から「心理士からみてどうで すか?」と問われました。初めての発言の機会に 緊張しながらも、患者さんの状態と対応方法を伝 えると、 「ああー、そうなんだ。じゃあ、そうし

てみようか」「この患者さんはそういう思いがあ るのね」という返事をもらいました。その時、チ ーム医療だからといって特別なことをする必要 があるのではなく、心理士の視点で患者さんを捉 え、それを伝えるという、これまでしてきた業務 と役割は同じなんだ、ということに気づきました。

ただ、心理士が加わって、患者さんの心理的な側 面を伝えることで、多職種の人が少しでも患者さ んへの理解を深められ、その後の援助につなげて いけるようにすることが求められているのかな と感じました。

それ以降、自分なりにチームに加わっている意 義が見出せ、チーム医療の参加に積極的になれた ように思います。しかし、失敗も多く、以前は、

私自身、どの職種の人がどういうふうに患者さん と関わっているかを把握しきれておらず、どの職 種の人にも、同じ言葉で同じ内容を伝えていまし た。そのため、きちんと理解されていなかったり、

関わりのない部分を伝えてしまったりと、持って いる情報が有効に使われていないことがありま した。それをふまえて、現在は、チームでの話し 合いの際には、相手に合わせた伝え方をすること を心がけています。そして、チーム医療では、患 者、職員だけなく、その家族や地域、施設職員な どさまざまな人との関わりが出てくるため、専門 的な知識、技術が求められることはもちろんです が、それ以上にコミュニケーション力や協調性と いった部分も必要だなと感じています。

今後、当院では、多職種で患者さんを援助して

いく動きがますます増えてくると思います。しか

しながら、現在は、まだ動き始めたばかりで、チ

ームとしての体制が完全に整っているわけでは

ありません。心理士としての経験も浅く、検査結

果を読み取れているのだろうか、きちんと患者さ

んの良い面を引き出せているだろうか、この対応

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吉村 梢恵

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で良かったのだろうか、と日々、自分の力量のな さを痛感していますが、黒川病院の心理士として、

また、チームの一員として与えられた役割をこな

し、多職種とサポートし合いながら、患者さんを

援助していけるよう努めていきたいと思います。

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