FOREX WEEKLY
市場営業統括部
チーフ・エコノミスト 山下えつ子
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株の下落
先週はグローバルに長期金利が上昇し、株式相場がピークアウトし始めたところで越週した。今週 は 10 日、11 日に米国株式相場は大幅に下落し、ドル円も一時 112 円を割った。特に株式相場の下落 が大きく、米ダウは 10 日に 831 ドル、11 日に 545 ドル、と続落して、3 日に付けた直近ピークの 26828 ドルから 1 週間で 6.6%下落した。米国株式市場の動きはグローバルに連鎖し、日本株も含め、株式 市場には大きな調整が入っている。 長期金利の上昇については前回の 10/5 号で取り上げた。長期金利が上昇し、株式相場に調整が入 る、という相場は今年初旬の相場に似ていると言及したが、今週の株式相場の急落はまさに 1 月後半 の相場に似ている。当時は、まず金利上昇と株式相場の上昇が同時進行した後、株式相場が急反落し、 株式相場はいったん持ち直すが二番底が 3 月に到来した。株式相場(ダウの場合)はその後再び上昇 したものの、長期金利の上昇を背景に今回、再度大幅に下落した、というわけである。今回の相場が 当時と似た経路を辿るとすれば、足元の株式相場の下落からの回復は難航する、ということになる。 少なくとも今日の時点では、そのように警戒気味に見るマーケット参加者は多いだろう。 1 月には FRB の利上げ継続を背景に長期金利も 上昇し、株式相場は大幅に下落したものの、新任 のパウエル議長は景気は底固いと動じず、利上げ を実施し、そのスタンスがマーケットを落ち着か せて、株式相場は持ち直した。だが、1 月~3 月 の米国の景気指標が一時的に下振れ、長期金利は 低下してきたものの、米国による鉄鋼・アルミニ ウムへの関税発動があったため、先行き不透明感 が高まって、株式相場は 3 月に再び下落した。 現在、FRB は利上げを継続し、長期金利も上昇 している。米国の経済指標は依然として強い。他 方、米中通商対立がエスカレートし、中国経済へ の懸念も高まってはいる。そして、株式相場が下落した。 今年の相場の特徴は、FRB による利上げが緩やかながらも継続的に実施され、金融正常化や経済正 常化が意識されやすくなっていること、税制改革によって景気が押し上げられ、物価にも上昇圧力が 加わっていること、またその中で金利上昇の影響を米国内外の株式市場が警戒するといった構図が強 まってきていること、である。そして、米国の通商政策の先行き不透明感が株式相場の追加的な抑制 要因となっている点ももう一つの特徴である。 トランプ大統領は今回の株式相場の大幅な下落の背景を FRB の過度な利上げにある、と強く批判し ている。1 月と同様に、FRB の利上げ継続→株式相場の下落、という因果関係は確かに存在するよう に見える。マーケットが金利上昇を警戒していることは上述の通りでもある。だが、1 月~3 月と異 なるのは、当時は米国の経済指標が弱かったのに対して、現在は強いことだ。このため、相場の動き や継続期間が 1 月~3 月と同じようになるか、と言えば、恐らく米国景気が強い分、反転までの期間 は短いのではなかろうか。その後、3 月のように再度、株式相場が下落するか否かは、米中通商対立 の展開が最も重要な要因となる、と考えられる。 22000 23000 24000 25000 26000 27000 28000 2.2 2.4 2.6 2.8 3 3.2 3.4 1 /1 2/1 3/1 4/1 /15 6/1 7/1 8/1 9/1 1 0/ 1 (資料)Bloomberg % ダウ(右軸) 10年債利回り (左軸) 米国の長期金利と株中国の経済は供給過剰、不良債権など構造的な脆弱性を政策が支えてきたが、米国との通商対立の 激化が経済のスローダウンと資金流出に拍車をかけることとなり、株式相場は年初来、下落トレンド である。一方、人民元も 4 月以降は人民元安へ転換しており、これはあたかも、米国からの関税を相 殺する目的にも見える。また、人民元安によるドル高という戦略だとの見方もある。しかし、経済の 弱まりと株式相場の下落、また金融緩和の実施といった事実に照らせば、人民元安を人為的に誘導し ているとは断じ難い。 注目された米国財務省による半期為替報告書は 15 日までに公表される予定だが、それに先立ち、 11 日に、財務省はムニューシン財務長官に対して中国は為替を操作していないと報告した、と報じら れた。トランプ大統領は 2016 年の大統領選での公約の一つに、中国を為替操作国として指定するこ とを掲げたが、多くの実現された公約の中で、この項目は実現できていない。11 月の中間選挙を前に、 今回の為替報告書で指定する、との憶測が高まったが、見送られる模様である。同じく 11 日には、 米国が中国と 11 月の G20 会合の際に首脳会談を開催する、とメディアが報じており、米中通商対立 が和らぐとの期待が芽生えているのが最新の状況である。前述の、株式相場を左右する重要事項とし ての米中通商対立について、株式市場にとりあえず安堵感を与えるニュースである。これらのニュー スを受けた株式相場の反応をまずはチェックしたい。 FRB の利上げについては、来週、9 月の利上げ実施時の FOMC の議事録が公表される。「通商政策に 関する不透明感は依然としてリスクだが、国内の雇用、景気は非常に堅調であり、利上げ継続が正当 化される」との見解でほぼ一致していると予想される。株式相場の下落が続いていれば、利上げ継続 は嫌気されるが、持ち直していれば、米国景気の強さが株式相場を支える方に力が働く、と予想する。 バランスシートの縮小が金融引き締め効果を持つため、縮小をどこで止めるべきかとの議論があった 場合や、今後の利上げ継続のペースの緩和の可能性に触れた箇所があった場合には、株式相場にはポ ジティブと考えられる。 来週はそのほかにも、小売売上高や住宅統計などの経済指標の発表がある。ただし、中級クラスの 指標がほとんどなので、マーケットには大きなインパクトはないだろう。5 日に発表された雇用統計、 ならびに 11 日に発表された CPI は、失業率が 3.7%まで低下して労働需給が一段と引き締まったにも 関わらず、賃金の上昇やインフレは加速しない、という図であった。米国経済は雇用の拡大に支えら 20000 20500 21000 21500 22000 22500 23000 23500 24000 24500 100 102 104 106 108 110 112 114 116 1 /1 2/1 3/1 4/1 /15 6/1 7/1 8/1 9/1 1 0/ 1 (資料)Bloomberg ドル円(左軸) 日経平均株価 (右軸) 日本の株と為替 2200 2400 2600 2800 3000 3200 3400 3600 3800 6 6.2 6.4 6.6 6.8 7 7.2 1 /1 2/1 3/1 4/1 /15 6/1 7/1 8/1 9/1 1 0/ 1 (資料)Bloomberg 人民元(左軸) 上海総合指数 (右軸) 中国の株と為替
れて堅調だが、人手不足でも賃上げが広範囲の業種で強まることはなく、インフレも加速しないため、 FRB がインフレ警戒のために利上げペースを上げる可能性は低い。FOMC 議事録の中でも、そうした見 解となっていると考える。 なお、CPI は全体の数字はなかなか加速しないものの、個別の動きからは、①アパレルや家具など、 財でも価格が引き上げられている品目があり、個人消費の強さに依拠した小売業の強気も散見される こと、②配送料金や引越し料金の値上がり(前年比 6%~7%)など、人手不足が賃金、そして物価へ、 と波及したと見られる項目もあること、の 2 点が読み取れる。つまり、景気の強さや人手不足が賃金 やインフレへ全く影響を及ぼしていない、というわけではない。その程度が小さく、インフレ警戒に よる利上げ加速は必要なかろう、というのみである。