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1.研究室の概要

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Academic year: 2021

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第 83 巻 第 8 号 (2019) (53) 497

1.研究室の概要

 当研究室は,私達の生活を支える様々な素材を製造する プロセスの,資源・エネルギー・環境問題など多様な制約 の下での高効率かつ安定稼働の実現,また革新的な新プロ セスの開発を通じて社会へ貢献することを目標としてい る。主に鉄鋼および非鉄金属の製錬を対象として,反応器 内で生じている現象を解明・定量化し,これを取り込んだ 熱流体工学・反応工学に基づく速度論的プロセスシミュ レーション技術の開発とプロセス解析,ならびに工業排熱 を対象とした熱回収・蓄熱・利用技術の開発に取り組んで いる。これらは分野担当埜上の前々任地一関工業高等専門 学校物質化学工学科および前任地室蘭工業大学機械科学ト ラックで継続してきたもので,現在の実施内容はスタッフ それぞれの強みを生かして展開している。研究室は,2013 年10月に埜上が赴任後,2014年4月に丸岡助教が,また 本年4月に夏井助教が着任し,現在は技術補佐員2名,博士 学生1名,修士学生7名を加えた計13名の態勢となっている。

2.研究内容

2.1 プロセスシミュレーション

 我が国の鉄鋼生産のうち,約7割は鉄鉱石を主原料とし た高炉−転炉法により製造されている。高炉(溶鉱炉)は内 径15〜16 m,高さ30 m程度の巨大な反応器であり,炉頂 から鉄源である焼結鉱および還元材となるコークスを装入 し,炉下部の羽口と呼ばれるノズルから高温の酸素富化空 気を吹き込み,溶銑(炭素を多く含む溶鉄)を製造している。

炉内ではコークスの燃焼により発生した一酸化炭素と熱に より,焼結鉱中の酸化鉄を還元するとともに生成した鉄と 脈石を炉内で溶融し,得られた溶銑とスラグを炉底部の出 銑孔から取り出す。高炉は向流接触式移動層型反応器に分 類されるが,内部には融体の流動を伴っており,さらに長 短様々な時定数を持つ非常に多くの化学的・物理的変化が 同時に生じる複雑系である。これまでに,数値流体力学,

粉粒体工学,反応工学や伝熱工学等を包含した総合工学的 シミュレーション技術を開発し,高炉の新規操業や原料設 計に対して有益な知見を示してきている。しかし,高炉内 部には未だに十分に定量化されていない現象も多く,その 解明のため,エッセンスを抽出した研究室レベルの実験に よる測定やその結果の定式化も同時に進めている。一方,

計算機の構成や能力の進展に伴って個々のシミュレーショ ン技法も進展しており,特に炉内に存在する融体や粉粒体 などの分散相の運動の解析技術の進展はめざましい。従 来,シミュレーションは基礎式が与えられ,現象を「再現」

東北大学多元物質科学研究所 プロセスシステム工学研究部門 環境適合素材プロセス研究分野 埜上研究室 埜上 洋・丸岡伸洋・夏井俊悟

研究室紹介

するものと捉えられていたが,近年の解析技術は,直接観 察が困難な現象の精細な可視化と定量情報の提供により,

「現象解明」のツールとして期待されており,当研究室でも 常に新たな手法の取り込みを進めている。

2.2 熱回収・蓄熱・利用技術

 素材製造プロセスからは,様々な温度域の排熱が多様な 形態で放出されている。当研究室ではエクセルギーは低い が多量に放出される低温排熱の有効利用技術の開発を進め ている。低温度差での高効率な排熱回収技術として,境膜 剥ぎ取り式熱交換器の開発を進めている。これは二重管型 熱交換器の内筒を軸周りに回転させ,回転内筒に先端が摺 接するように固定羽根を設置したもので,10 kW m−2 K−1 を超える総括伝熱係数を得られることを確認しており,一 関高専での故千葉陽一先生との共同研究以来,実用化を目 指した研究を進めている。間欠的に発生することの多い排 熱の平準化および蓄積技術として,凝固層掻き取り式潜熱 蓄熱槽の開発を進めている。潜熱蓄熱槽では,放熱時に熱 交換器部分に形成される凝固層が伝熱阻害要因となるが,

境膜剥ぎ取り式熱交換器に着想を得て,凝固層を掻き取る 機構を設けることで,小型試験装置では伝熱速度を100倍 程度に高速化し,蓄積した熱の9割程度を実用的な速度で 利用できることを確認しており,スケールアップの検討を 進めている。有効利用については,上記の技術と同様に回 転円筒を利用した物質移動の高速化機構について基礎的実 験を進めており,冷熱製造への応用を検討している。

3.研究室の特徴

 当研究室は「多元的な物質に関する学理およびその応用 の研究」を使命とした多元物質科学研究所に設置され,大 学院では工学研究科のマテリアル・開発系の協力講座と なっている。学部学生の配属がないため,研究室に配属と なる大学院生は全員学部時代とは異なる研究テーマに取り 組むことになる。また多くの学生が学部時代に平衡論や冶 金学などをはじめとした材料科学系科目を中心に専攻して いるため,研究室に配属となった当初は移動現象論や反応 速度論・流体力学・粉体工学等の化学工学的手法やプログ ラミング技術の習得に苦労するようであるが,学生達はこ れらを自ら学び取り,研究を進めてくれている。その過程 で幅広い視野を獲得して社会で活躍してくることを念じて 指導に当たっている。

公益社団法人 化学工学会 http://www.scej.org/

参照

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