序 文
この度発刊する北海道農業研究センタープロジェクト研究成果シリーズNo.9は、当センターが中心とな り、平成21年度から23年度までの3年間、新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業のプロジェクト 研究「国産濃厚飼料の安定供給に向けたイアコーンサイレージの生産利用技術の開発」で実施した成果をと りまとめたものです。 近年、輸入穀物価格の高騰等に由来する飼料費の増大によって、わが国の畜産経営を取り巻く情勢は一層 厳しさを増しております。今後の飼料価格の動向は不透明な状況ですが、輸入穀物を安価でかつ安定的に入 手するのは、かなり困難と予想されます。わが国の畜産業が持続的に発展するには、現在、海外依存割合の 高い輸入濃厚飼料の代替となる自給飼料の生産体制を作り上げる必要があります。 わが国で自給濃厚飼料資源候補としては農産副産物等であるエコフィードや飼料米があげられますが、そ の地域内での供給量には限界があり、低コストで安定供給可能な国産濃厚飼料源の開発が求められています。 飼料用トウモロコシは土地生産性が高く、栄養濃度の高い雌穂は植物全体の5~6割を占めることから、雌 穂のみを効率的に収穫できれば、濃厚飼料として利用できます。しかし、わが国ではその生産利用に関する 実用的な技術体系は確立されていないのが現状です。また、耕地面積の少ないわが国では、畜産農家の有す る飼料生産圃場面積には限界があり、また、労働力上でも、濃厚飼料生産を行う余裕はありません。一方、 大規模畑作専業農家に目を向けると、近年、地力低下や担い手不足の問題が顕在化し、省力管理が可能で有 機物を還元できる作物の導入に対する要望が高まっています。そこで、耕種農家で飼料用トウモロコシを生 産し、雌穂を濃厚飼料として収穫し畜産農家で利用し、収穫残さは畑作圃場に還元するといった耕畜連携に よるイアコーンサイレージの生産利用体系を構築できれば、国産濃厚飼料の供給力を強化するとともに、環 境負荷を低減した資源循環型畜産を実現できると期待されます。 このような研究ニーズを受け、本プロジェクト研究では、品種・栽培、作業技術、飼料調製、大家畜飼養 および経営・経済の各研究分野が連携協力して、実用的なイアコーンサイレージの生産利用技術の開発に取 り組みました。取り組み期間が3年間と、短期間ではありましたが、品種・栽培、飼料調製・加工、大家畜 飼養および経営・経済の各分野で優れた成果が得られました。 品種栽培分野では、イアコーンサイレージ向け高雌穂収量型品種を選定し、その安定多収栽培技術の開発、 さらに、イアコーンサイレージの効率的収穫調製作業体系の構築と国内で生産されたイアコーンサイレージ の飼料特性を明らかにしました。また、イアコーンサイレージの効率的利用を目的に、乳牛および肉牛への 合理的な給与法について検討しました。さらに、イアコーンサイレージの生産利用技術の耕畜両農家への導 入条件の解明に取り組むとともに、現地実証として道内TMRセンターにおけるイアコーンサイレージの生 産コストを算出し、その経済性を評価しました。 イアコーンサイレージ等自給濃厚飼料生産については、まだ取り組むべき課題は多く残されていると思い ますが、この成果を公表して関係各位からの意見を教示頂きながら、濃厚飼料の自給生産を定着させ資源循 環型畜産の実現に貢献してまいりたいと思っております。 最後になりましたが、このプロジェクト研究の推進にあたり、多くの関係者のご協力を得ました。特に、 プロジェクト推進に有益なご指導を頂いた評価委員の酪農学園大学 名久井忠前教授、専門プログラムオ フィサーの(社)農林水産技術情報協会 上原昭雄氏に心よりお礼申し上げます。ここに深甚の謝意を表す る次第です。 平成26年3月 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 北海道農業研究センター所長 天野 哲郎目 次
研究の要約 ……… 1 第1章 雌穂利用向け飼料用トウモロコシの低コスト安定生産技術の開発 1.イアコーン向け高雌穂収量型品種の選定 ……… 11 2.高雌穂収量型トウモロコシの安定多収栽培技術の開発 ……… 16 3.イアコーン収穫残さの有効利用法の開発 ……… 20 第2章 イアコーンサイレージの大規模収穫調製技術の確立 1.イアコーンサイレージの効率的収穫調製作業の体系化 ……… 25 2.流通向けイアコーンサイレージの安定調製・貯蔵技術の開発 ……… 28 3.イアコーンサイレージの品質評価基準の策定 ……… 33 第3章 イアコーンサイレージの乳肉用牛への効率的給与技術の開発 1.イアコーンサイレージの栄養特性に基づく泌乳牛への合理的給与法の開発 ……… 37 2.育成・肥育前期の黒毛和種牛に対するイアコーンサイレージの効率的給与法の開発 ……… 42 3.イアコーンサイレージ多給による自給飼料活用型牛肉生産技術の開発 ……… 49 第4章 イアコーンサイレージ生産・利用が農業経営に及ぼす経済効果の検証 1.畑作経営におけるイアコーン生産の経済性評価と導入条件の解明 ……… 55 2.酪農経営におけるイアコーンサイレージ利用の経済効果と耕畜連携モデルの提示 ……… 61地域資源の有効活用による地域経済の活性化と新飼 料生産による雇用創出の効果が期待される。 V.研究方法 第1章 雌穂利用向け飼料用トウモロコシの低コス ト安定生産技術の開発 1.イアコーン向け高雌穂収量型品種の選定 雌穂収量を高めるために、現在、ホールクロップ 用に市販されている品種や海外でイアコーン用途に 利用されている品種を供し、その生産性(雌穂乾物 率、TDN収量等)、耐病性等から検討し、わが国 の気象条件にあったイアコーン向け品種を選定する。 2.高雌穂収量型トウモロコシの安定多収栽培技術 の開発 飼料用トウモロコシの雌穂への炭水化物転流に及 ぼす気象要因や品種間差を明らかにする。また、栽 植密度や施肥方法を検討し、圃場面積当たりの雌穂 収量を最大に高める安定多収栽培技術を開発する。 3.イアコーン収穫残さの有効利用法の開発 イアコーン収穫後の茎葉残さの有効利用法を開発 する目的で、イアコーン収穫残さが畑土壌の理化学 性(物理性、排水性)に及ぼす影響を経時的に調査 する。さらに、分解残さから放出される養分(無機 態窒素、交換性カリウム等)の変動を追跡するとと もに後作の畑作物(大豆等)の収量・品質への影響 も検討し、輪作体系の中におけるイアコーン収穫残 さの圃場還元効果を明らかにする。 第2章 イアコーンサイレージの大規模収穫調製技 術の確立 1.イアコーンサイレージの効率的収穫調製作業の 体系化 雌穂収穫専用アタッチメントのスナッパヘッドを 利用したイアコーン収穫の作業能率と収穫ロスを計 測するとともに、細断型ロールベーラを用いたサイ レージ調製作業についても作業能率と梱包ロスを検 討し、調製条件と作業性の関係を明らかにし最も効 率的なイアコーンサイレージ収穫・調製体系を提示 Ⅰ.研究年次・予算区分 研究年次 平成21~23年度 予算区分 新たな農林水産政策を推進する実用技術 開発事業 Ⅱ.主任研究者 主査: 北海道農業研究センター所長 折登一隆(平成21 ~22年度) 北海道農業研究センター所長 天野哲郎(平成23 年度) 取りまとめ責任者: 酪農研究領域 上席研究員 大下友子(平成21~ 23年度) Ⅲ.研究場所 農研機構北海道農業研究センター、(独)家畜改 良センター十勝牧場、(地独)北海道立総合研究機 構・畜産試験場、十勝農業試験場、ホクレン農業協 同組合連合会、(株)IHIスター、国立大学法人・ 帯広畜産大学 Ⅳ.研究目的 飼料自給率を高め、安全安心な畜産物を供給する ためには、自給濃厚飼料資源の安定供給が不可欠で ある。飼料用トウモロコシの雌穗(イアコーン)は 栄養価が高く、濃厚飼料として有望であるが、わが 国では実用的なイアコーン生産利用に関する技術体 系は確立されていない。本研究では、イアコーンサ イレージを耕種農家で生産し、畜産農家で利用する 耕畜連携による生産利用体系を構築するための技術 開発を行う。本研究の開発目標としては、イアコー ンサイレージTDN1kgあたりの生産コストを50~ 60円台で生産する技術開発を目標とする。 その結果、国産濃厚飼料資源の低コスト安定供給 により、飼料自給率向上への貢献と国産飼料給与に よる安全・安心な畜産物の供給が可能となる。また、
研 究 の 要 約
3水準とした試験区を設定し、9~28ヶ月齢まで肥 育試験を行い、イアコーンサイレージ多給が産肉性 (枝肉成績、肉の理化学性状等)に及ぼす影響を明 らかにし、自給飼料活用型牛肉生産技術を開発する。 第4章 イアコーンサイレージ生産・利用が農業経 営に及ぼす経済効果の検証 1.畑作経営におけるイアコーン生産の経済性評価 と導入条件の解明 飼料用トウモロコシの栽培が多い十勝管内および 周辺地域の畑作農家を対象に畑作経営における飼料 栽培実態を調査し、作付けを行う効果と課題を明ら かにするとともに、サイレージ用イアコーン生産技 術の経済性を評価し、畑作経営におけるイアコーン 栽培の経営効果を解明し、導入条件を解明する。 2.酪農経営におけるイアコーンサイレージ利用の 経済効果と耕畜連携モデルの提示 畑地型酪農地帯の酪農経営における自給濃厚飼料 であるイアコーンサイレージ利用の経済効果および その導入条件を明らかにして、新飼料資源であるイ アコーンサイレージを軸とした耕畜連携モデルを提 示する。 する。 2.流通向けイアコーンサイレージの安定調製・貯 蔵技術の開発 地域内流通を想定し、貯蔵方法として細断型ロー ルベーラとトランスバックでの貯蔵方法について検 討する。まず、粒度の細かいイアコーンサイレージ を調製するために、既存の細断型ロールベーラを試 作・改良する。 3.イアコーンサイレージの品質評価基準の策定 イアコーンサイレージを流通するためには、一定 品質以上のものを調製する必要がある。収穫時期あ るいは品種によるイアコーンサイレージの品質変動 (飼料価値および発酵品質)を明らかにし、流通向 けのイアコーンサイレージの品質評価基準を策定す る。 第3章 イアコーンサイレージの乳肉用牛への効率 的給与技術の開発 1.イアコーンサイレージの栄養特性に基づく泌乳 牛への合理的給与法の開発 イアコーンサイレージに含まれる炭水化物の第一 胃内発酵特性と乳牛消化管の部位別消化率および菌 体タンパク生産効率を明らかにする。また、泌乳牛 への合理的給与法を明らかにするために、生理状態 および乳生産性に対する圧片トウモロコシの代替割 合および併給粗飼料源(放牧草あるいはサイレージ 類)の影響を検討する。また、イアコーンサイレー ジ摂取牛から生産される牛乳の品質特性について検 討する。 2.育成・肥育前期の黒毛和種牛に対するイアコー ンサイレージの効率的給与法の開発 黒毛和種牛20頭を供試して、育成期~肥育前期 (13ヶ月齢まで)の飼養方法を慣行法または慣行の 配合飼料由来の濃厚飼料をイアコーンサイレージで 代替して飼養し、採食性、増体量、血液性状を調査 し、育成・肥育前期黒毛和種牛に対するイアコーン サイレージの効率的給与技術を開発する。 3.イアコーンサイレージ多給による自給飼料活用 型牛肉生産技術の開発 黒毛和種牛去勢牛15頭を供して、濃厚飼料代替率
国産濃厚飼料の安定供給に向けたイアコーンサイレージの生産利用技術の開発 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター
黒毛和種牛に自給率90%のイアコーンサイレージを 組み入れた飼料メニューでも増体量は配合飼料区と 遜色ないことを示した。イアコーンサイレージ給与 が生乳中の香気成分であるラクトン類や牛肉の肉質 に特徴的な効果を及ぼす可能性を示した。 第4章 イアコーンサイレージ生産・利用が農業経 営に及ぼす経済効果の検証 実証試験に取り組む道内のTMRセンターにおけ る2010年度のイアコーンサイレージの生産量および 生産に係る費用を調査し、イアコーンサイレージの 生産コストがTDN1kgあたり51円であることを明ら かにした。また、イアコーンサイレージ生産利用技 術の導入条件を解明し、地域資源を活用した耕畜連 携モデルを提示し、イアコーンサイレージの生産・ 利用が畑作および畜産の農家経営に及ぼす経済効果 を検証した。 Ⅶ 研究発表 1 論文発表 大津英子・大下友子・滑川拓朗・高田雅透・高橋 俊・西浦明子(2012)イアコーンサイレージの収 穫調製作業体系の構築.日草誌.58:95-101 藤田直聡・大下友子・山田洋文・久保田哲史(2012) 国産濃厚飼料イアコーンの酪農経営への普及条件 -北海道における現地実証試験を踏まえて-.農 業普及研究.35:55-67 2 学会発表・講演 渡部 敢(2012)十勝地域におけるイアコーン の栽培法.平成23年度十勝畜産技術セミナー (2012.03) 酒井麻子・大津英子・滑川拓朗・筒木 潔(2011) 黒ボク土における実取りトウモロコシ茎葉残渣の 緑肥効果.1.すき込み後2年間の土壌・作物体 分析.日本土肥学会講演要旨集.57:119 筒木 潔 ・酒井麻子・大津英子(2011)黒ボク土 における実取りトウモロコシ茎葉残渣の緑肥効果. 2.2年連作すき込み後の土壌・作物分析.土肥 学会講演要旨集.57:119 Ⅵ 研究結果 第1章 雌穂利用向け飼料用トウモロコシの低コス ト安定生産技術の開発 飼料用トウモロコシを雌穂利用する場合には、雌 穂乾物率が10月中旬に55~60%に達する必要性があ ること、雌穂乾物収量は800~1,000kg/10a見込める ことを明らかにするとともに、単純積算温度マップ を作成し、それに対応する栽培地域区分表を提示し た。雌穂収量は栽植密度および窒素施肥量が多いほ ど高収量になるが、イアコーン向けトウモロコシの 適正密度は9000本/10a、窒素施肥量は収量増見合い の窒素2kg/10a程度の増肥が適当であり、追肥時期 としては4~7葉期が適期であることを示した。イア コーン収穫後の茎葉残さの圃場への還元は、団粒構 造や保水性等の土壌物理性を改善することを明らか にした。 第2章 イアコーンサイレージの大規模収穫調製技 術の確立 自走式フォレージハーベスタ(破砕装置付)の収 穫用アタッチメントをスナッパヘッドに交換し、ホ ールクロップと同様な作業体系でかつ同様な作業能 率でイアコーンを収穫し、細断型ロールベーラで密 封梱包することで、良質でかつ保存性の高いサイレ ージを調製できることを示した。細断型ロールベー ラのソフト、ハード面を改良することによって、梱 包ロスを5%から1%に低減できることを明らかにし た。イアコーンサイレージの収穫適期を、保存性、 収量性および作業性等から総合的に判断すると、ホ ールクロップサイレージの収穫適期である黄熟後期 から1~2週間後であることを明らかにした。イア コーンサイレージの品質評価基準に必要な項目は水 分、でんぷん含量、TDN含量およびVスコア値で あった。 第3章 イアコーンサイレージの乳肉用牛への効率 的給与技術の開発 イアコーンサイレージが圧片トウモロコシの代替 となりえることを栄養生理学的に明らかにした。そ の知見に基づき、イアコーンサイレージを圧片トウ モロコシや濃厚飼料の代替とする際の適切な給与水 準を、舎飼または放牧飼養の泌乳牛、肉用育成牛お よび肥育牛の飼養試験によって提示した。育成期の
大津英子(2011)大規模畑作地帯における飼料用ト ウモロコシ栽培の導入.スクラム十勝シンポジウ ム2011 食料自給率向上を目指した連携のあり方 (2011.11) 大津英子(2011)畑輪作体系への飼料用トウモロコ シ導入の可能性.農研機構シンポジウム 耕畜連 携による濃厚飼料の安定的自給生産技術の重要性 と今後の展開~新技術「イアコーンサイレージの 生産利用技術」普及のための改善方向~:17-22 大下友子・大津英子・青木真理・青木康浩・上田靖 子(2011)細断型ロールベーラで梱包したイアコ ーンサイレージの保存性.北草研報.45:49 大下友子・大津英子・中西雅昭・滑川拓朗・高田雅 透・岩渕 慶・西浦明子・青木真理・上田靖子・ 高橋 俊(2010)イアコーンサイレージの消化性 と乳牛の嗜好性.日草誌.56.(別):61 大下友子・青木康浩・上田靖子・青木真理・大津英 子(2012)イアコーンサイレージ給与が泌乳牛の 摂取量および乳生産性に及ぼす影響.日畜学会第 115回大会講演要旨:132 大下友子・根本英子・青木康浩・青木真理・上田靖 子・西浦明子・滑川拓朗・高田雅透(2012)イア コーンの水分含量がサイレージの発酵品質および 好気的変敗に及ぼす影響.日草誌.58(別):60 大下友子(2013)イアコーンサイレージの生産技術 と乳牛への給与体系.北畜草会報.1:9-12 大下友子(2010)北イタリアとオランダの畜産農家 における自給飼料利用体系.平成22年度グリーン テクノバンクセミナー(2010.11) 大下友子(2011)コントラ組織におけるイアコーン 活用の可能性.北海道コントラクター組織連絡協 議会平成23年度春季研修会(2011.02) 大下友子(2011)国産濃厚飼料の安定供給に向けた イアコーンサイレージの利用技術.農研機構シン ポジウム 耕畜連携による濃厚飼料の安定的自給 大津英子・大下友子・滑川拓朗・中西雅昭・高田雅 透・岩渕 慶・石田茂樹(2009)イアコーンサイ レージの収穫調製作業能率の検証.日草誌.55 (別):51 大津英子・大下友子・石田茂樹・高田雅透・滑川拓 朗(2010)イアコーンサイレージの収穫調製作業 能率の検証(第2報 作業精度の検証).日草誌. 56(別):177 大津英子・大下友子・青木康浩・高橋 俊・上田靖 子・滑川拓朗・高田雅透(2011)細断型ロールベ ーラを使用したイアコーンサイレージ調製におけ る梱包密封時損失率.日草誌.57(別):184 根本英子・大下友子・青木康浩・上田靖子・西浦 明子・滑川拓朗(2012)イアコーンの機械収穫 条件が飼料成分組成に及ぼす影響.日草誌.58 (別):61 大津英子・大下友子・青木康浩・上田靖子・高橋 俊・高田雅透・滑川拓朗(2011)細断型ロールベ ーラを用いたイアコーンサイレージ調製作業の損 失率.農機学会北海道支部第62回年次大会講演要 旨:26-27 根本英子・大下友子・青木康浩・上田靖子・滑川拓 朗・高田雅透(2013)細断型ベーラを利用したイ アコーンサイレージ調製技術. 第72回農業食料工 学会年次大会講演要旨:201 大津英子(2010)細断型ベーララッパを利用したイ アコーンサイレージ調製.平成21年度細断型ロー ルベーラ利用研究会 大津英子(2010)北イタリアおよびドイツ北西部の 畑作地帯における飼料用とうもろこし生産の実 態.平成22年度グリーンテクノバンクセミナー (2010.11) 大津英子(2010)イアコーン用とうもろこしを組み 入れた畑輪作体系の構築.平成22年度地域農業確 立研究検討会(2010.12)
コーンサイレージを給与した黒毛和種育成牛の発 育.日畜学会第115回大会講演要旨:143 浅田正嗣・尾花尚明・角屋敏幸・火ノ川和春・立崎 広行・塚本信行・守屋隆也・松井史郎・岡田眞 人・滑川拓朗・大下友子(2013)黒毛和種去勢牛 の育成・肥育前期におけるイアコーンサイレージ 給与が増体および枝肉成績におよぼす影響. 日畜 学会第116回大会講演要旨:116 滑川拓郎・浅田正嗣(2013)国産濃厚飼料への挑戦 ~イアコーンサイレージの普及を目指して~.ス クラム十勝2013(2013.11) 浅田正嗣(2013)イアコーンサイレージを取り入れ た肉用牛向け飼料メニューの開発. 平成25年度北 海道地域マッチングフォーラム講演要旨:25-35 大井幹記・齋藤早春・遠藤哲代・及川 学・杉本昌 仁・藤川 朗(2009)濃厚飼料中のイアコーンサ イレージの混合割合が黒毛和種去勢牛の消化性・ 第一胃内発酵に及ぼす影響.日畜学会第114回大 会講演要旨:115 杉本昌仁(2011)イアコーンサイレージを肉用牛の エサに.スクラム十勝シンポジウム2011 食料自 給率向上を目指した連携のあり方(2011.11) 山田洋文(2010)畑作経営におけるイアコーン向 けとうもろこし生産の可能性~畑作経営の現状 と飼料用とうもろこし生産導入への課題~.平 成22年度実用技術開発事業21003現地検討会 (2010.10) 山田洋文(2011)経営におけるイアコーン栽培の可 能性.スクラム十勝シンポジウム2011食料自給率 向上を目指した連携のあり方(2011.11) 山田洋文(2011)耕畜連携による濃厚飼料の安定的 自給生産技術の重要性と今後の展開.農研機構シ ンポジウム 耕畜連携による濃厚飼料の安定的自 給生産技術の重要性と今後の展開~新技術「イア コーンサイレージの生産利用技術」普及のための 改善方向~:23-31 生産技術の重要性と今後の展開~新技術「イアコ ーンサイレージの生産利用技術」普及のための改 善方向~:9-16 大下友子(2012)新しい国産濃厚飼料“イアコーン サイレージ”の生産利用技術.平成24年農業新技 術発表会(2012.02) 大下友子(2012)新しい国産濃厚飼料を作る-イア コーンサイレージの生産利用技術-.平成24年十 勝畜産技術セミナー(2012.03) 大下友子(2009)トウモロコシ雌穂サイレージの収 穫・調製技術.平成21年度自給飼料利用研究会資 料:25-29 大下友子(2012)トウモロコシサイレージ等の収 穫・調製・給与技術.平成24年度自給飼料活用型 TMRセンターに関する情報交換会資料:1-12 大下友子(2012)イアコーンサイレージの収穫・調 製・利用技術について.平成24年度埼玉県粗飼料 利用研究会講演会(2012.12) 大下友子(2012)イアコーンサイレージの生産 と 利 用 . 全 日 畜 北 海 道 ブ ロ ッ ク 会 議 研 修 会 (2012.09) 青木康浩(2010)流通向けイアコーンサイレージの 調製・給与技術の開発.平成22年度地域農業確立 研究検討会(2010.12) 青木康浩(2013)イアコーンサイレージの生産利用 技術の開発研究の現状と課題.北海道の農畜産業 強化に向けたイアコーンサイレージ生産利用技術 の新たな展開.平成25年度北海道地域マッチング フォーラム講演要旨:36-45 須藤賢司・上田靖子・朝隈貞樹・秋山典昭・大下友 子(2011)放牧搾乳牛へのイアコーンサイレージ 給与による圧片トウモロコシ代替効果.北海道草 地研報.45:71 浅田正嗣・本名信孝・上田勝美・熊沢幸治・渡邊貴 之・岡田真人・滑川拓朗・大下友子(2012)イア
4 その他 (商業誌 等) 渡部 敢(2012)十勝地域における飼料用とうもろ こしのイアコーン向け安定多収栽培法.平成23年 度北海道農業試験会議 指導参考事項. 大下友子・大津英子・青木康浩・上田靖子・青木 真理・西浦明子・須藤賢司・高橋 俊・滑川拓 朗・高田雅透・中西雅昭・岩渕 慶・谷川珠子 (2012)イアコーンサイレージの大規模収穫調製 技術.平成23年度北海道農業試験会議 指導参考 事項. 久保田哲史・藤田直聡・山田洋文・原 仁(2012) イアコーンサイレージ生産・利用に関する畑作経 営と酪農経営における経済性評価.平成23年度北 海道農業試験会議 指導参考事項. 大津英子(2009)イアコーンサイレージ生産利用技 術の開発.ぐらーす.55(2):22-25 大下友子・大津英子(2010)濃厚飼料自給を耕畜連 携で.機械化農業.3104:26-29 大下友子(2009)濃厚飼料の代替に期待されるイア コーンサイレージ.デーリィマン.59(11): 42-43 大下友子(2012)イアコーンサイレージ・酪農の未 来を担う国産濃厚飼料.よつ葉大地.287:13 大下友子(2012)イアコーンサイレージの調製.最 新サイレージバイブル:110-115 大下友子(2012)濃厚飼料を自給!本気でイアコー ンサイレージを作る.現代農業.91(4):256-261 大下友子(2012)第3の自給濃厚飼料 新しい国産 濃厚飼料「イアコーンサイレージ」の生産と利用. デーリィジャパン.57(11):24-27 大下友子(2012)最新農業技術 畜産 vol.5 イア コーンサイレージの項分担執筆:55-62 山田洋文・原 仁(2013)畑作経営における飼料用 とうもろこし栽培受託の経済性と土地利用に与え る影響に関する研究.2013 年度北海道農業経済 学会大会(第126 回北海道農業経済学会例会) 山田洋文(2013)イアコーン生産利用による耕畜連 携の経済性評価と普及・定着に当たっての課題. 北海道の農畜産業強化に向けたイアコーンサイレ ージ生産利用技術の新たな展開.平成25年度北海 道地域マッチングフォーラム講演要旨:46-53 藤 田 直 聡 ・ 山 田 洋 文 ・ 大 下 友 子 ・ 久 保 田 哲 史 (2012)耕畜連携による国産濃厚飼料イアコーン の酪農経営への普及条件.平成23年度日本農業改 良普及学会個別報告:55-60 藤田直聡(2013)国産濃厚飼料イアコーンサイレ ージの酪農経営への普及条件.農業経営通信. 254:2-3 久保田哲史(2013)北海道農業の先進性と限界性 「酪農」.北海道農業研究会2013年度シンポジウ ム (2013.06) 3 研究成果情報 大津英子・大下友子・青木真理・上田靖子・西浦明 子・須藤賢司・高橋 俊・滑川拓朗・中西雅昭・ 高田雅透・岩渕 慶(2009)イアコーンは機械収 穫でき、そのサイレージは嗜好性と栄養価が高い (技術・参考).平成21年度北海道農業研究成果 情報. 藤田直聡・久保田哲史(2009)酪農経営における委 託生産イアコーンサイレージの導入条件の事前評 価(研究・参考).平成21年度北海道農業研究成 果情報. 大下友子・大津英子・青木康浩・上田靖子・須藤賢 司・青木真理・高橋 俊・西浦明子・久保田哲 史・藤田直聡・山田洋文・谷川珠子・滑川拓朗・ 高田雅透・中西雅昭・岩渕 慶(2012)イアコー ンサイレージの大規模収穫調製技術(普及).平 成23年度北海道農業研究成果情報.
第3章 イアコーンサイレージの乳肉用牛への合理 的給与法の開発 1.イアコーンサイレージの栄養特性に基づく泌乳 牛への合理的給与技術の開発 青木康浩* (農研機構北海道農業研究センター) 須藤賢司 (同上) 上田靖子 (同上) 谷川珠子 (地方独立行政法人北海道総合研究機構 畜産試験場、現根釧農業試験場) 2.育成・肥育前期の黒毛和種牛に対するイアコー ンサイレージの効率的給与法の開発 浅田正嗣* ((独)家畜改良センター十勝牧場) 渡邊貴之 (同上) 3.イアコーンサイレージ多給による自給飼料活用 型牛肉生産技術の開発 杉本昌仁* (地方独立行政法人北海道総合研究機構 畜産試験場、現道総研農業研究本部) 及川 学 (地方独立行政法人北海道総合研究機構 畜産試験場) 第4章 イアコーンサイレージ生産・利用が農業経 営に及ぼす経済効果の検証 1.畑作経営におけるイアコーン生産の経済性評価 と導入条件の解明 山田洋文* (地方独立行政法人北海道総合研究機構 十勝農業試験場) 原 仁 (同上、現根釧農業試験場) 2.酪農経営におけるイアコーンサイレージ利用の 経済効果と耕畜連携モデルの提示 藤田直聡* (農研機構北海道農業研究センター) 久保田哲史(同上) *は取りまとめ執筆 大下友子(2012)イアコーンサイレージの生産利用 技術.畜産コンサルタント.49(2):52-56 大下友子(2012)イアコーンサイレージの生産・利 用と経済性.農家の友.64(6):104-106 大下友子(2013)新たな国産濃厚飼料“イアコーン サイレージ”の生産と利用.酪農ジャーナル.66 (3):22-25 Ⅷ.研究担当者 第1章 雌穂利用向け飼料用トウモロコシの低コス ト安定生産技術の開発 1.イアコーン向け高雌穂収量型品種の選定 岩渕 慶* (ホクレン農業協同組合連合会) 2.高雌穂収量型トウモロコシの安定多収栽培技術 の開発 渡部 敢* (地方独立行政法人北海道総合研究機構 畜産試験場) 寺見 裕 (同上) 玉置宏之 (同上、現農研機構畜産草地研究所) 3.イアコーン収穫残さの有効利用法の開発 根本英子* (農研機構北海道農業研究センター) 筒木 潔 (国立大学法人帯広畜産大学) 横田 聡 (農研機構北海道農業研究センター) 第2章 イアコーンサイレージの大規模収穫調製技 術の確立 1.イアコーンサイレージの効率的収穫調製作業の 体系化 根本英子* (農研機構北海道農業研究センター) 2.流通向けイアコーンサイレージの安定調製・貯 蔵技術の開発 高田雅透 (株式会社IHIスター) 根本英子 (農研機構北海道農業研究センター) 大下友子* (同上) 3.イアコーンサイレージの品質評価基準の策定 大下友子* (農研機構北海道農業研究センター) 青木康浩 (同上)
39K56(RM85)、リッチモンド(RM85)、39T13 (RM90)、39A87(RM90)、シンシア(RM90)、 3 9 T 4 5 ( R M 9 0 )、 3 8 V 5 2 ( R M 9 5 )、 3 8 A 7 9 (RM95)、36B08(RM100)、34N84(RM105) の17品種とした。なお、道央試験圃場で供試した RM90の品種は、39T13 および39T45である。 播種日は、十勝試験圃場では2009年は5月20日、 2010年は5月22日、2011年は5月19日、道央試験圃 場では、2010年は5月17日、2011年は5月26日であ った。収穫日は、十勝試験圃場では2009年は10月 7日(1回目)および10月19日(2回目)、2010年 は9月18日(1回目)および9月24日(2回目)、 2011年は9月27日、道央試験圃場では、2010年は9 月14日(1回目)および9月22日(2回目)、2011 年は9月29日(1回目)および10月8日(2回目) であった。なお、2011年は十勝試験圃場において根 腐れ病の発生が多く認められたため、収穫を1回と した。 栽植密度は、いずれの圃場および年次においても RM73~90の品種は8,889本/10a、RM95~105の品種 は7,843本/10aとした。試験区は、一区15㎡(0.75m ×4畦×5m)とし、乱塊法にて3反復設置した。 施肥は、BBS380 (N:P:K=13:18:10)100㎏/10aとし、 防散炭カル80㎏/10a、重焼リン2号(成分51%) 100㎏/10aを施用した。調査は、一区4畦のうち中 央2畦を対象に実施し、雌穂乾物率の調査には、5 本の雌穂を用いた。 2)絹糸抽出期以後の低温遭遇が雌穂乾物率の上昇 と雌穂への炭水化物転流に及ぼす影響 試験は2009年に江別市の酪農学園大学内圃場にて 行い、品種はたちぴりかおよび39B29を5月中旬に 2000分の1ワグネルポットにトウモロコシを播種し た。播種後70~110日、すなわち絹糸抽出後10~40 日の間に10日間ずつ人工気象室内で低温処理した。 処理区は、江別市の各処理時期の平均気温を標準区 とし、平均気温-4℃および同-2℃を低温処理区 とした。 1.イアコーン向け高雌穂収量型品種の選定 ア 研究目的 わが国で利用するサイレージ用トウモロコシ品種 は、ホールクロップサイレージ利用を目的に選定さ れてきた(村井2001、戸澤2005)。そのため、雌穂 のみを利用するイアコーンサイレージ用の専用品種 はなく、現在流通しているホールクロップ用品種が イアコーン用として利用可能か否かも検討されてい ない。北海道でトウモロコシをイアコーン用として 利用する場合には、その目的に合致した品種を選定 する必要があり、そのことで収量および品質が最大 となり、低コスト生産が可能となると考える。 そこで、現在ホールクロップ用に市販されている 品種を供試して、雌穂の生産性、雌穂乾物率、雌穂 割合、雌穂の登熟パターン、耐病性、耐倒伏性など を調査し、イアコーン用として利用する際に具備す べき特性、目標とする雌穂乾物率および期待可能な 雌穂収量を明らかにしようとした。また、全道各地 のトウモロコシの生育期間中の平均気温の単純積算 気温を調査してイアコーンサイレージ用のトウモロ コシ栽培推奨マップ、ならびに栽培地域区分表の作 成を検討した。 イ 材料と方法 1)適応品種の検討 2009年から2011年にホールクロップ用の相対熱度 (RM)73~105の品種を十勝地域および道央地域 で栽培し、各々各年2回の収穫時期を設けて品種毎 の雌穂の登熟の特性を明らかにし、イアコーン用と して利用する際の目標雌穂乾物率および期待可能な 雌穂乾物収量を調査した。 試験場所はホクレン十勝試験圃場(帯広市川西) およびホクレン道央試験圃場(恵庭市、江別市) で、十勝試験圃場では2009年から2011年の3ヶ年 RM73~90の品種を、道央試験圃場では2010年お よび2011年の2ヶ年 RM90~105の品種を供試した。 供試品種は、クウィス(RM73)、39B29(RM75)、 39V43(RM75)、たちぴりか(RM80)、39M48 (RM82)、チベリウス(RM85)、39H32(RM85)、
第1章 雌穂利用向け飼料用トウモロコシの低コス
ト安定生産技術の開発
異なり、ホールクロップ用の早晩性の一つの基準で ある総体乾物率との間にも有意な相関関係は認めら れなかった(収穫1回目:R2=0.123、収穫2回目: R2=0.222)ことから、イアコーン利用する場合の早 晩性は雌穂乾物率およびその変化で判断すべきこ とが明らかとなった。このことについて、伊藤ら (1989)は絹糸抽出期から収穫適期までの期間の 長さは早晩性に影響されないと指摘している一方 で、WilkinsonとHill(2003)や菅野ら(2010)は登 熟パターンの異なる品種があることを指摘している。 2010年においては、収穫1回目の値は2009年の2回 目の値よりも高く、収穫2回目では全ての品種が60 %以上となり、収穫1回目と2回目の値は全ての品 種で近似した。2009年は播種から2回の収穫期ま での単純積算温度が各々平年の99.6%、94.4%と平 年並みであったのに対し、2010年は各々平年の115 %、115%と高温であったため、2010年の雌穂乾物 率が2009年のそれに比べ非常に高くなったと考えら れた。トウモロコシの生育および雌穂登熟には、生 育期間中の積算温度が関与する(戸澤2005)。なお、 2009年の収穫2回目と2010年の2回の収穫期におけ る品種間の相対的な序列には差異はなかった(図1 -1)。2年間の結果をもとにイアコーン利用した 場合の各品種の早晩性を、雌穂乾物率を50%、55%、 60%の3段階に分けて2年間の各品種の雌穂乾物率 およびその変化から判断し、表1-1のように整理 3)栽培推奨マップの作成 試験期間中の両試験圃場における生育期間中の平 均気温の単純積算気温と、供試した各品種の雌穂乾 物率から一次回帰式を作成し、イアコーン用として 利用する際の目標雌穂乾物率に達するまでの単純積 算温度を算出した。それをもとに栽培マップを作成 した。なお、根腐れ病発生のため、十勝試験圃場の 2011年の雌穂乾物率のデータは除外した。 ウ 結果と考察 十勝試験圃場では2011年の収穫時に根腐れ病が多 く認められたため、試験結果の検討には2009年およ び2010年のデータを用いた。雌穂乾物率は、2009 年の収穫1回目では、RM82までの品種では「たち ぴりか」を除いた全品種が、それより晩生のRM の品種では「リッチモンド」、「シンシア」および 「39T45」が黄熟期の目安となる50%に達し、収穫 2回目では、全品種が55%以上となった。RM82ま での品種では「たちぴりか」を除く4品種が60% 以上となり、それより晩生の品種では認められな かったものの「39K56」が最も高かった。収穫1回 目から2回目にかけて雌穂の登熟が良好であった (雌穂乾物率の差異の大きかった)品種は「クウィ ス」(12.5%)と「39K56」(10.2%)で、その他の 品種では約6~8%であった(図1-1)。このよ うに、雌穂乾物率やその上昇の変化は品種によって 図1-1 雌穂乾物率の推移
その他の品種は900㎏/10a以上となった。RM82ま での品種では「39V43」および「39M83」が、85 以降の品種では「リッチモンド」を除いて1,000㎏ /10a以上となった(図1-2)。収量の増加量(収 穫1回目と2回目の差異)が多いのは「クウィス」、 「39V43」、「39M48」、「チベリウス」、「39H32」、 「39K56」および「39A87」で、いずれも150㎏ /10a以上であった。このうち「クウィス」が178 ㎏/10a、「39M48」が179㎏/10a、「39K56」が233 した。その結果、イアコーンとして利用する場合の 目標雌穂乾物率は10月中旬に60%(最低55%)に達 することと判断した。 雌穂乾物収量は、2009年の収穫1回目では、「ク ウィス」と「たちぴりか」を除き800㎏/10aに達 した。早晩性別では、RM73~82では「39V43」、 RM85では「チベリウス」および「39H32」、RM90 では「39T13」および「39T45」が多収となった。 収穫2回目では、「たちぴりか」が約800㎏/10aで、 表1-1 イアコーン利用した場合の各品種の早晩性の評価 図1-2 収穫期別・品種別の雌穂乾物収量
いて大きく、低温ほどその影響は大きかった。 2010年および2011年の生育期間中の平均気温の単 純積算温度と本試験に供試した品種の雌穂乾物率と の関係から一次回帰式を算出し、目標雌穂乾物率の 55%および60%に達するまでの品種別の単純積算温 度を算出した(表1-2)。各品種が雌穂乾物率55 %に達するには2,295~2,554℃必要で、60%に達す るにはさらに58~262℃必要であった。雌穂乾物率 55%に達するまでの単純積算気温は、ホールクロッ プ用の目標雌穂乾物率30%(名久井ら1981、村井 2001、EttleとSchwarz 2003、谷川ら 2008)に達す るまでのそれより44~115℃多く必要であった。 この単純積算温度をもとにイアコーンの栽培マッ プ(図1-5)および品種別の栽培地域区分表を作 成した(表1-3)。根釧地域、宗谷から網走西部 地域ならびに標高の高い地域を除いてイアコーンの 栽培は可能であると判断された エ 今後の課題 トウモロコシの早晩性をさらに精査するとともに、 イアコーン向け品種メニューの充実をさらにはかる 必要がある。 ㎏/10aであった。増加率が高いのは「クウィ ス」の24%、「39M48」の21%、「39K56」の 27%で、その他は10~18%であった(図1- 2)。2010年の収量は2回の収穫期間に大差な く、2009年の収穫2回目と同程度であった。 2年間の調査の結果、イアコーン用として 期待可能な雌穂乾物収量は800~1,000㎏/10a と判断された。 道央試験圃場においては、2010年および 2011年とも高温年であった。その2年間の雌 穂乾物率および雌穂乾物収量は図1-3およ び図1-4のとおりで、38V52および36B08が 雌穂乾物率が55%以上となり、雌穂乾物収量 は供試した全品種が800㎏/10a以上となった。 これらのことから、晩生品種についてもイア コーンとして利用する場合の雌穂乾物率は55 %を目標とし、期待可能な雌穂乾物収量は800 ㎏/10a以上と考えられた。 次に、低温処理による雌穂乾物率の低下と雌穂乾 物重の減少は、各品種とも絹糸抽出後20~40日にお 図1-3 収穫期別・品種別の雌穂乾物率 図1-4 収穫期別・品種別の雌穂乾物収量 表1-2 雌穂乾物率が55%および60%に達するまでの 単純積算温度 1)北海道優良品種
1)雌穂乾物率55%目標の場合、2)雌穂乾物率60%目標の場合.
◎:最適、○:適、△:マルチ栽培.
図1-5 単純積算温度(℃)をもとにしたイアコーン栽培マップ 表1-3 イアコーン栽培地域区分表
2.高雌穂収量型トウモロコシの安定多収栽培技術 の開発 ア 研究目的 北海道十勝地域において単位面積当たりの雌穂収 量を最大に高める安定多収栽培技術を開発すること を目的とし、飼料用トウモロコシの北海道優良品種 で十勝が栽培適地となっている“早生の中”から収 量水準の高い「チベリウス」と、雌穂乾物率が確実 に高くなることを期待し“早生の早”の品種である 「クウィス」を用いて、栽植密度、窒素施肥量、追 肥の時期・方法について検討した。 イ 研究方法 1) 適正栽植密度と窒素施肥量の検討 畜試場内(十勝山麓、多湿黒ボク土:以下畜試) および帯広市川西現地圃場(十勝中央部、黒ボク 土:以下現地)において「クウィス(早生の早)」、 「チベリウス(早生の中)」を用い、栽植密度3水 準(約10,500、9,000、7,500本/10a、畦幅:畜試72 ㎝、現地75㎝)と窒素施肥量3水準(14、18、22 ㎏/10a、基肥8~10㎏/10a、残りを硫安で4葉期を 目処に追肥)の組み合わせで栽培試験を実施した (2009~2011年)。試験区の配置は分割区法(栽植 密度を主区、施肥量を副区)とし、畜試3反復、現 地は2反復で実施した。試験区面積は畜試10.1~ 10.7m2/区、現地12.0m2/区とした(各試験共通)。 試験圃場の土壌化学性を表1-4に、基肥施肥量を 表1-5に、播種日および収穫日を表1-6に示し た(各試験に共通)。 2)追肥時期の検討 畜試(2009~2011年)、現地(2011年)におい て「クウィス(早生の早)」「チベリウス(早生の 中)」を用い、栽植密度約9,000本/10a、窒素施肥量 オ 要約 イアコーン用としてトウモロコシを利用する場合 の基準(目標)雌穂乾物率は、10月中旬までに55% に達することであり、そのときの期待可能な雌穂乾 物収量は、800~1,000㎏/10aであった。本試験の結 果から、イアコーン用品種として選抜された品種は、 39B29(RM75)、39M48(RM82)、39K56(RM85)、 39T45(RM90)、38V52(RM95)、36B08(RM100)、 34N84(RM105)であった。本試験に供試した品種の 雌穂乾物率と生育期間中の平均気温の単純積算温度 から、イアコーン用の栽培マップを作成するととも に、品種別の栽培地域区分表を作成した。 カ 参考文献
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258-264 (岩渕 慶)
表1-4 試験圃場の土壌化学性
高いほど、また、施肥量が多いほど収量が高い傾向 であり、慣行の栽植密度7,500本/10a、窒素施肥量 14㎏/10aから、栽植密度を高め、増肥することで1 ~2割程度の雌穂収量の増加が見込まれた。倒伏折 損の恐れの少ない栽植密度9,000本/10aの雌穂収量 は3カ年の平均値で832~1,153㎏/10aであった。 雌穂の乾物率を表1-9に示した。イアコーンサ イレージ原料として雌穂の乾物率50~60%を目標と して試験を実施してきた。2009年(冷害年)は「チ ベリウス」(10月19~20日収穫)で雌穂乾物率50% に満たない事例があったが、おおむね、50%以上の 乾物率を確保できた。栽植密度・施肥の違いによる 雌穂乾物率の違いは小さく、実用上影響は少ないと 考えられた。栽植密度9,000本/10aの雌穂乾物率は 3カ年平均で54.5~60.3%であった。 栽植密度を高くすることで、高い雌穂収量が得ら れたが、10,500本/10aを超える密度で栽培した場合、 14(基肥8㎏/10a残り6㎏/10aを硫安で追肥)㎏ /10aで栽培試験を実施した。追肥は側条施肥とし、 追肥時期の処理として発芽期および4、7、10葉期 を設けた。試験区の配置は乱塊法とし、畜試3反復、 現地は2反復で実施した。 3)追肥方法の検討(2010~2011年) 畜試(2010~2011年)、現地(2011年)におい て「チベリウス(早生の中)」、「クウィス(早生 の早)」(2011年のみ)を用い、栽植密度約9,000本 /10a、窒素施肥量14(基肥8㎏/10a残り6㎏/10aを 硫安で追肥)㎏/10aで栽培試験を実施した。追肥時 期は4~6葉期とし、追肥法として、側条(側条 区)、葉面が乾いた状態で散播(散乾区)、散水に より葉面が湿った状態にした後に散播(散湿区)を 設けた。試験区の配置は乱塊法とし、畜試3反復、 現地は2反復で実施した。 ウ 結果及び考察 1)適正栽植密度と窒素施肥量の検討 倒伏・折損個体率を表1-7に示した。2009年は 倒伏・折損が多発し、特に栽植密度が高い区が多発 傾向であったため、2010年以降は12,000本/10a区の 試験を中止した。2011年畜試「クウィス」において 再度倒伏折損が発生し、10,500区で特に多発した。 雌穂の乾物収量を表1-8に示した。栽植密度が 表1-5 基肥施肥量 *基肥は施肥機より作条施用。 調査日:2009年、畜試10/16、現地10/20 2010年、畜試クウィス9/9チベリウス9/14、現地9/20 2011年、畜試9/13、現地クウィス9/20チベリウス9/29 7500本/10a、N14区に対する収量比( )内は収量実数(kg/10a) *栽植密度9000本区の最小雌穂収量835kg/10a(755×111%) **栽植密度9000本区の最大雌穂収量1153kg/10a(979×118%) 表1-7 栽植密度と施肥量の検討試験における 倒伏・折損個体率(%) 表1-8 栽植密度と施肥量の検討試験における 雌穂乾物収量 表1-6 播種日および収穫日
以上で窒素吸収量は横ばいとなり、過剰な施肥を 行っても窒素吸収量は増加していなかった。窒素 施肥18㎏までは施肥と吸収に密接な関係(r=0.92, p<0.01)があり、一次回帰式より、施肥窒素1㎏ 当たり吸収窒素が0.77㎏増加することから、窒素利 用率は0.77と見積もられた(図1-7)。以上から、 窒素吸収量1.6~2.1㎏/10aに見合う窒素増肥量は2.1 ~2.7㎏/10aと見積もられた。 これらのことから栽植密度の9,000本の変更にと もない窒素2㎏/10a程度の増肥が適当と判断した。 2)追肥時期の検討 表1-10に雌穂乾物収量を、表1-11に茎葉乾物 収量を示した。 雌穂乾物収量は発芽期追肥では4葉期追肥に比べ 1割程度低下する事例があった。4~7葉期追肥は 年次・試験地・品種を問わず高い収量であった。4 ~10葉期の品種・試験地を込みにした平均収量は7 葉期で最も高収量であったが、その差は1~2ポイ ント程度と小さく、4~10葉期で安定した収量であ った。 茎葉乾物収量は4葉期追肥で最も収量が高かった。 発芽期追肥および10葉期追肥では収量が1割程度低 下する事例があった。7葉期追肥は4葉期に比べ、 同等かやや低下した。 以上のように、雌穂収量は4~10葉期追肥で高ま り、茎葉収量は10葉期追肥で下がることから、追肥 時期としては4~7葉期が適期と考えられた。 倒伏・折損割合が増加する場合があったことから、 栽植密度は9,000本/10aが適当と考えられた。 道総研畜試および十勝農試で実施された過去の トウモロコシ栽培データを含め解析したところ、雌 穂収量と地上部窒素吸収量の両者には密接な関係 (r=0.89、p<0.01)があり、一次回帰式より、窒素 吸収量が1㎏/10a増加すると雌穂収量が47㎏/10a 増加すると推定された(図1-6)。本成績におけ る慣行区(7,500本-N14区)の3カ年平均の雌穂乾 物収量は、755㎏/10a(畜試「クウィス」)~979㎏ /10a(現地「チベリウス」)であった。栽植密度を 9,000本/10aに上げることによる増収分は乾物で75.5 ~97.9㎏/10aとなり、前述回帰式によりその雌穂乾 物増収分にともなう窒素吸収量は1.6~2.1㎏/10aと 推定された。また、図1-7に示した窒素施肥量と 地上部窒素吸収量の関係から、窒素施肥18㎏/10a 表1-9 栽植密度と施肥量の検討試験における雌 穂乾物率(%) 本試験データ:2010~2011年、畜試(新得)、現地(帯広)、 品種(「クウィス」「チベリウス」「39M48」、n=108 過去データ:2000~2010年、畜試(新得)、十勝農試(芽室)、 品種(「エマ」「デュカス」「チベリウス」、n=44 図1-7 地上部窒素吸収量と窒素施肥量の関係 本試験データの畜試窒素施肥量は堆肥由来分を1.8kg/10aと計算
エ 今後の課題 土壌診断に基づいた窒素施肥法や肥効調節型肥料 による省力施肥法の検討が必要である。 オ 要約 イアコーンサイレージ向けトウモロコシ栽培は、 収量および耐倒伏性から、栽植密度は9,000本/10a が適当で、対照7,500本/10aに比べた収量増に見合 いの窒素2㎏/10aを飼料用トウモロコシの施肥標準 に比べ追肥で増肥する。追肥時期としては4~7葉 期が適期である。葉面の乾いた状態の散播追肥は側 条追肥と同等の効果がある。 カ 参考文献 北海道農政部 (2010)北海道施肥ガイド2010. 北海道. (渡部 敢) 3)追肥方法の検討 雌穂乾物収量を表1-12に示した。2010年試験に おいて散湿区で収量が低下傾向であったため、2011 年は散乾区のみ実施した。葉面が乾燥した状態の散 播追肥は、側条施肥と同等以上の雌穂乾物収量が得 られた。 4)高雌穂収量型トウモロコシの安定多収栽培法 以上の結果に基づき、十勝地域におけるイアコー ンサイレージ向けトウモロコシの安定栽培法として、 適正栽植密度および窒素施肥の推奨値を表1-13に 整理した。 表1-10 追肥時期試験における雌穂乾物収量 表1-11 追肥時期試験における茎葉乾物収量 表1-12 追肥方法試験における雌穂乾物収量 表1-13 十勝地域におけるイアコーンサイレー ジ向けトウモロコシ栽培の推奨値 試験区:発=発芽期、4L=4葉期、7L=7葉期、10L=10葉期 4Lに対する収量比、( )内は収量実数(kg/10a) 試験区:発=発芽期、4L=4葉期、7L=7葉期、10L=10葉期 4Lに対する収量比、( )内は収量実数(kg/10a) 側条に対する収量比( )内は収量実数(kg/10a) *ホールクロップ用早生の早~中の品種を用いる場合の推奨 値である。 *有機物施用にともなう減肥は、北海道施肥ガイド2010の飼 料用とうもろこしに準拠する。
2)緑肥効果と後作作物への影響 2009~2011年にかけて、各作物の生育状況、収量 および品質を調査した。2011年の小麦栽培では、収 穫残さの緑肥効果を明らかにするため、窒素量を標 準(8㎏/10a)から減じたN減肥区(6.5㎏/10a、5 ㎏/10aの2段階)を設定した。 ウ 結果および考察 1)土壌への影響 土壌物理性では、土壌硬度が、イアコーン収穫残 さのすき込みのある単年区で低下し、すき込み後 2年を経過しても継続して効果がみられた(図1 -8)。さらにpF2.3~3.2の易有効水分が増加した (図1-9)。 土壌化学性では、pHの上昇と有効態リン酸の増 加が認められた(表1-16)。pHは、交換性カルシ ウムの増加に起因した上昇と考えられた。トウモロ コシのカルシウム吸収量は極めて少ないこと(仲 野 1972)と、タンカル(炭酸カルシウム)施用量 が200㎏/10aであったことから、pH上昇はタンカル 施用によるものと推測された。トウモロコシ茎葉は 有機リン含量が高いことが杉戸ら(2001)によって 示されており、イアコーン収穫残渣がリン供給源と なった可能性がある。しかし、2009年6月には既に 有効態リン酸が対照区に比べて著しく高いことから、 前年のトウモロコシ播種時の施肥の影響も否定でき ないため、その可能性の検証は残された課題である。 無機態窒素量は2010年には対照区とほぼ同様に推移 したこと(図1-10)、トウモロコシ茎葉中に多く 含まれる難分解性成分の分解酵素であるβ-グルコ シダーゼ活性に対しては2010年5月に、単年区0.68 μmol/g/hに対し対照区0.48μmol/g/hで有意差が 無かったことから、収穫残さはすき込み翌年に分解 されたことが示された。 キタネグサレセンチュウ密度は単年区で増加する 傾向にあったが、これは、トウモロコシ栽培後の一 般的な傾向と一致しており、すき込みの有無による 3.イアコーン収穫残さの有効利用法の開発 ア 研究目的 耕畜連携によるイアコーンサイレージの生産利用 体系の構築は、イアコーン利用向け飼料用トウモロ コシを輪作作物のひとつとして畑作に導入すること が前提となり、イアコーン収穫後の茎葉残さをすき 込み利用する技術開発が必要である。トウモロコシ の緑肥利用については青刈りやスイートコーンの収 穫残さについての研究は行われてきたが、イアコー ン収穫残さについては例がない。 本研究では、イアコーン収穫後のトウモロコシ収 穫残さのすき込みによる緑肥効果を、畑作物のダイ ズ、テンサイ、春まき小麦の栽培試験により検証す るとともに、土壌理化学性とセンチュウ密度への影 響を明らかにし、イアコーン利用向け雌穂用トウモ ロコシを組み入れた新しい輪作体系の可能性を検証 した。 イ 研究方法 (独)家畜改良センター十勝牧場(音更町、表層 多腐食質黒ボク土)において、イアコーン収穫後に 収穫残さをすき込んだ区を「単年区」、すき込みを 行っていない区を「対照区」とし、イアコーンの後 作となる可能性のある畑作作物を2009~2011年にか けて栽培した(表1-14)。すき込みは前年秋にプ ラウによる反転耕とし、すき込み推定量(乾物)は 2008年が326㎏/10a(供試品種「ぱぴりか」)、2009 年が742㎏/10a(供試品種「39B29」)だった。A圃 場は面積を25m2/区で各区4連、B圃場は13.9m2/ 区で各区4連で実施した。 1)土壌への影響 表1-14の圃場において、施肥播種前と収穫後に 土壌理化学性を調査した(表1-15)。 表1-14 試験圃場と栽培作物 表1-15 土壌理化学性の調査項目 品種)イアコーン:39B29、大豆:大袖の舞、テンサイ:リッ カ(移植)、小麦:春よ恋(春播き)
から、イアコーン収穫残さの窒素供給効果は低い事 が示された(図1-10)。これらの結果から、イア コーン収穫残さからの窒素供給の効果は期待できな いものの、リン酸については今後の検討課題として 残された。 有意差は認められなかった。 B圃場の土壌化学性を表1-17に示した。リン酸 吸収係数は、4月の時点で単年区が低く、また有効 態リン酸量は高かった。これはA圃場での、イアコ ーン収穫残渣すき込み1年目の傾向と同様であった。 また、無機態窒素量は両区とも同様に推移したこと 図1-8 土壌硬度の比較(2010年測定) 図1-9 土壌pF(2010年8月測定) 表1-16 A圃場の土壌化学性の推移
った(表1-19)。 2010年の2作目ダイズ播種時も土壌表層に長さ3 ~5㎝のイアコーン収穫残さが観察されたが、大豆 の出芽への影響はなかった。8月までは単年区の分 枝数と主茎長が対照区より優れており、両区とも土 壌中の窒素量に差がないことから(表1-16)、土 壌物理性の改善効果によるものと考えられた。しか し10月には生育の差がなくなり、収量は対照区と変 わらなかった。 (2)テンサイ 2009年の1作目では、初期生育がやや良好となっ た(表1-20)。テンサイの生育は酸性条件下で抑 制されることから、土壌pHの影響によるものと考 えられた(表1-16)。また、C/N比20以下の緑肥 をすき込んだ場合、後作のテンサイは茎葉部の生育 は良好だが、根部への効果は小さいとされており (今野 1991)、本試験でも地上部の生育は勝ったも のの根重に対する効果は認められなかった(表1- 21)。また、糖分蓄積が始まる8月以降の窒素吸収 は糖分低下を招き、製糖上の有害成分となるカリ 2)緑肥効果と後作作物への影響 (1)ダイズ 2009年の1作目の播種時には、土壌表層に長さ 10~15㎝程のイアコーン収穫残さが散在していた が、出芽への影響はなかった。2009年9月の草丈と SPAD値は単年区で低かった(表1-18)。ダイズ の生育は窒素が制限因子になりやすいといわれてお り(国分 2002)、根粒菌による窒素固定はダイズの 生育がある程度進んでからでないと認められないこ と(砂田 1986)から、施用した窒素が生育初期の 段階で、イアコーン収穫残さのすき込みにより増大 した微生物へ動員されるいわゆる窒素飢餓状態の可 能性が示唆されたが、収量に有意差は認められなか 表1-18 ダイズ生育状況 表1-19 ダイズ収量(2009年) 表1-17 B圃場の土壌化学性の推移(2011年) 図1-10 B圃場の無機態窒素動態(2011年)
テンサイの栽培履歴が無いため、本件は保菌種子に よって発病し、防除の遅れが罹病を促進させたと考 えられた。従って、発病はイアコーン収穫残さの影 響ではないと判断された。 (3)春まき小麦 対照区は窒素量を減らしても生育は安定したが、 単年区では、出穂期以降に窒素減肥による稈長、茎 数の減少がみられた(表1-22)。一方、穂長と葉 色への影響は施肥量に順じていないことから、窒素 減肥は主として植物個体を形成する段階に強く影響 したと考えられた。収穫時の総重量、子実重量は両 ウム吸収率が高まることが報告されており(但野 1967)、2009年のカリウム含量が有意に多くなって いることから判断すると、夏以降の窒素吸収量の増 加が影響して根中糖分が低下したと考えられた。 2010年の2作目でも生育状況は良好だった。テン サイの要求量が高い土壌中の窒素とカリウム含量は 5月において両区とも同等であったことから(表 1-16)、生育については土壌物理性の効果が影響 したと考えられた(図1-8、図1-9)。しかし、 最終的に根中糖分が減少し、根中カリウムとアミノ 態窒素が増加した(表1-21)。テンサイはアンモ ニア態窒素より硝酸態窒素を選択的に吸収するため (天野 1950、井村ら 1976)、単年区の10月の硝酸 態窒素量が高い(表1-16)ことが生育後半の窒素 吸収を活発にし糖分低下の原因となった可能性はあ ったが、9月以降に単年区で褐斑病への罹病が多発 し適正な評価は難しかった。褐斑病は圃場で越冬し た病原菌や保菌種子が原因で、本試験圃では過去に 表1-20 テンサイ生育状況 表1-22 小麦生育状況(2011年) 表1-21 テンサイ収量
ーン収穫残さのすき込みは、保水性の向上や土壌硬 度を低下させ物理性を改善する効果が認められた。 一方で、植物の生育初期には、一時的な窒素飢餓状 態の発生が推測された。しかしながら、標準施肥量 で栽培すると、収量は対照区と差が認められなかっ た。植物の生育初期には土壌物理性の改善効果が認 められることから、作物に適当な施肥方法を検討す ることで、イアコーン利用向け飼料用トウモロコシ を畑輪作作物として栽培することは可能である。 カ 参考文献 天野文助(1950)甜菜の窒素養分吸収利用状態に関 する研究. 北海道甜菜糖業振興会. 時報1:2- 24 井村悦夫・増田昭芳(1976)てん菜の栄養に関する 研究. 第2報.窒素源としてのアンモニア態窒 素と硝酸態窒素の割合と収量・品質との関係. て ん菜研究会報.17:179-185 国分牧衛・野村信史(2002) 作物学辞典. 日本作物 学会編. 朝倉書店. 370-377:445-450 今野一男・菊池晃二・宮脇忠(1991)麦類跡地にお ける緑肥導入がてん菜の生育数量に及ぼす影響. 北農.58(3):294-300 杉戸智子・吉田光二・新田恒雄(2001)各有機物の 施用に伴う土壌中の形態別リンの変化. 土肥誌. 72(2):195-205 砂田喜代志(1986)北海道の豆作技術大豆編. 農業 技術普及協会. 72:81 但野利秋・赤城仰哉・秋山喜三郎・宮脇忠(1967) 甜菜の生育・収量及び糖合成に及ぼす窒素及び加 里施用の効果(10.肥料および施肥法).土肥学会 講演要旨集.13:118 (根本英子・筒木 潔・横田 聡) 区で窒素減肥とともに減少したが、子実タンパク含 量には差がみられず、個体および子実の量的形質に 影響した(表1-23)。 土壌中の無機態窒素量は、両区ともに春まき小麦 の栄養成長期である6、7月に低下する傾向がみら れた。このことから、イアコーン収穫残さ由来の炭 素分解のために、一時的に窒素が微生物に取り込ま れる、いわゆる窒素飢餓がこの時期に発生し、植物 が栄養不足になりやすい条件にあったことが推測さ れた(図1-10)。 (4)小括 以上の結果から,イアコーン残さをすき込んだ圃 場では、6~7月において窒素飢餓が懸念されるた め、特に初期生育に必要な窒素量を増肥または追肥 によって補う必要があることが明らかになった。し かしテンサイのように、8月以降の窒素吸収が糖分 低下を招く場合もあるため、作物別の施肥設計が必 要である。 エ 今後の課題 イアコーン収穫残さが窒素供給源となる可能性は 低かった。その一方で、有効態リン酸量の高い原因 が明らかでなく検討が必要である。また、ダイズと 春まき小麦のように、生育初期の窒素要求量が高い 作物は、窒素飢餓を回避する施肥方法の開発が残さ れた課題である。 オ 要約 本研究は、耕畜連携による濃厚飼料の生産に向け て、畑作圃場におけるイアコーン収穫残さの利用法 を、イアコーン収穫残さのすき込み圃場の土壌理化 学性の変化と後作物への影響から検討した。イアコ 表1-23 小麦収量(2011年)