まえがき
ア ク テ ィ ブ フ ェ ー ズ ド ア レ ー ア ン テ ナ(Active Phased Array Antenna:APAA)は、ビームを電子的 に制御するため、機械的にアンテナを動かすことなく 指向方向を可変でき、高速な走査が可能な高機能なア ンテナである。さらに、薄型・軽量に構成できること から、移動体衛星通信への応用が期待されている。衛 星搭載用としては Ka帯で実現例[1]がある。また、移動 体搭載用としては、Ku帯でのヘリコプター搭載通信実 験の実績がある[2]。いずれも、性能は優秀であるが、
コスト面の問題もあり、一般に広く普及するには至っ ていない。これらのことから、情報通信研究機構では 様々な形態の APAAに関して実施例を積み重ねてお り[2]−[4]、その一環として、ETS−Ⅷの移動体衛星通信シ ステム実験のために車載用 S帯アクティブフェーズド アレーアンテナ(APAA)を開発した[5]。本 APAAの 有効性を評価するため、衛星信号を用いて本アンテナ の基礎特性、車載状態での走行試験による追尾特性、
送信特性を取得したので報告する。
S帯アクティブフェーズドアレーアンテナ
[5]開発した APAAの外観(レドームを外した状態)
を図 1に示す。本 APAAは、ユニット構造の採用で 量産に適しているほか、車載用として車の屋根への取 り付けを想定し、重量 18.7kg、厚さ 117mm の低姿勢 に抑えている点に特徴がある。また、ETS−Ⅷを用いた 実験に使用するため、車の移動範囲による衛星仰角変 動と動揺による仰角の誤差を見込んで、仰角 48度 ±10 度以内で、所望利得 12dBi以上を満たす設計となって いる。素子アンテナには円形パッチと円環パッチを用 いた送受共用のセルフダイプレクシングアンテナ[6]を 採用し、18素子のアレー構成により衛星方向で 12dBi 以上の利得が得られている。追尾速度は車両の旋回時
の角速度において正常動作するため、30度 /secを仕様 としている。
1素子相当のユニットを図 2に示す。特徴は 1素子 相当の送受信アンテナ、送信電力増幅器(SSPA)、受 信低雑音増幅器(LNA)および送受信移相器を 1ユニッ トとし、素子毎に分解が可能なモジュール構造を採用 しており、素子の追加、修理等が容易である点である。
また、移相器にダブルバランスドミクサを使用した無 限移相器を利用している。これにより、量子化誤差が 軽減できる。また、移相器の出力レベルを可変するこ とによって各素子信号の振幅を個別に変更できるため、
アレーアンテナに非一様な振幅分布を与えることが可 能である。これはアレーアンテナの放射パターンのサ
高機能アンテナ
三浦 周 藤野義之
NI CTでは、ETS−Ⅷを用いた移動体衛星通信システム実験の一環として、車載用の高機能なアク ティブフェーズドアレーアンテナ(APAA)を開発した。本アンテナは、薄型・軽量で、電子ビー ム走査による自動衛星捕捉追尾機能を有する。衛星信号を用いて本アンテナの基礎特性、走行試 験による追尾特性、送信特性を取得し、本アンテナの有効性を確認した。
1
2
図 1 S帯アクティブフェーズドアレーアンテナ
図 2 1素子相当のユニット
イドローブレベル抑圧などに適用できる[7]。
本 APAAの追尾制御は、受信アンテナにおいて受信 信号を用いて衛星信号の自動捕捉追尾を行うクローズ ドループ方式を採用しており、送信アンテナからの送 信は、受信アンテナが追尾状態のときにのみ送信し、
自動探索時などの非追尾状態では自動的に送信を停止 する。送信アンテナ指向方向は受信アンテナと同一方 向である。
クローズドループ追尾の動作フローを図 3に示す。
特徴は、信号状態に応じた複数の動作モードを用意し ている点である。まず広域探索モードで衛星方向の初 期探索を行い、設定した閾値レベルを検知すると追尾 モードに移行する。追尾モードではステップトラック 方式で常に方位角、仰角の 2軸で指向方向を微小に可 変しつつ最大受信レベル方向への追尾を行う。何らか の原因により受信レベルが設定した閾値以下になると 信号レベルを消失したと判断する。その場合、効率的 に衛星方向の探索を行うため、3つの探索モードで探 索範囲を段階的に拡大し、信号レベルを再検知すると 追尾モードに戻る。3つの探索モードは、停止探索
モード(アンテナ指向方向は正しいが衛星信号が何ら かの原因で瞬断した場合の対策として一定時間、指向 方向を保持)、近傍探索モード(車両の場合衛星仰角 の変化は小さいことから仰角を変えずに方位角のみ走 査して信号を探索)、広域探索モード(方位角、仰角 の 2軸で衛星方向を探索)である。追尾に使用する信 号は、アレー受信信号の総和が最大となるように追尾 を行う和パターン信号、およびボアサイト方向にヌル となるアレーパターンを形成した上でその大きさがゼ ロになるように制御する差パターン信号のいずれかが 選択可能である。これ以外に、外部から衛星方向の方 位角、仰角の情報を供給することでオープンループ方 式の自動追尾も可能である。本アンテナを図 4に示す ように車両に搭載し、3に示す追尾特性等の実験を実 施している。
実験
3. 1 基礎特性
(a)放射パターン
APAAの使用状態における放射パターンを評価す るため、ETS−Ⅷより送信された無変調ビーコン波を受 信し、方位角方向(AZ)の和パターンおよび差パター ンを取得した結果を図 5に示す。和パターンのビーム 幅は約 30度であること、和パターンのピークと差パ ターンのヌルがおおむね同一方向であることから使用 状態で正常に放射パターンが形成できていることを確 認した。
(b)基本追尾特性
ETS−Ⅷより送信された無変調ビーコン波を方位角 方向(AZ)、仰角方向(EL)2軸の回転台に設置した APAAで受信し、回転台の回転速度を可変することで 追尾特性の検証を行った。追尾誤差を回転台の指示値
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㏣ᑿ䝰䞊䝗
Ṇ᥈⣴䝰䞊䝗
㏆ഐ᥈⣴䝰䞊䝗
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䝺䝧䝹᳨▱
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䝺䝧䝹ᾘኻ
図 3 クローズドループ追尾の動作フロー
3
㻙㻝㻝㻡 㻙㻝㻝㻜 㻙㻝㻜㻡 㻙㻝㻜㻜 㻙㻥㻡 㻙㻥㻜
㻝㻡㻜 㻝㻢㻜 㻝㻣㻜 㻝㻤㻜 㻝㻥㻜 㻞㻜㻜 㻞㻝㻜
Azimuth angle [deg]
R e ce iv ed si gna l pow er [d B m ] R ece ived s igna l powe r [d Bm]
図 5 AZ面パターン
APAA
図 4 車載時の外観
と APAAで検出された角度の差と定義し、和パターン 追尾、差パターン追尾の追尾誤差を取得した。測定例 として、図 6に和パターンの回転速度 30度 /secにお ける AZ角度対追尾誤差を示す。表 1に各追尾速度に おける追尾誤差の rms値を示すように、和パターンに おける追尾誤差は約 2度、差パターンにおける追尾誤 差は 2~ 3度であり、いずれもビーム幅と比較して十 分小さく、追尾速度依存性もないことがわかる。また、
図 7に追尾誤差の C/N(受信信号電力対雑音電力密度0
比)依存性を示すように、受信信号の C/N0が高いほ ど追尾誤差は低減することがわかる。以上の結果から、
APAAが十分な基本追尾性能を有することを確認し た。
3. 2 走行試験による追尾特性
衛星信号を用いた APAAの追尾特性を評価するた め、ETS−Ⅷ衛星から無変調ビーコン波を送信し、茨城 県鹿嶋市内の市街地を車載局で走行しながら APAA で受信したときの受信信号の追尾特性を和パターン方 式、差パターン方式のクローズドループ方式について 取得した。テストコースを図 8に示す。評価は衛星を 見通せる環境、建物・高架橋により衛星からの電波が 遮蔽されるブロッキング環境、樹木により衛星からの 電波の一部が遮蔽されるシャドウイング環境について 実施した。測定値としてはクローズドループ追尾時の 受信電力値、APAAのレベルメータ値(受信電力値と 相関。参考値として記録)、ならびにアンテナ指向方向 の AZ、EL値を取得した。また、走行時の衛星方向の 参照値として、磁気センサと車速パルス感知器からの 衛星方向情報を用いるオープンループ方式[8][9]による 追尾系を構築し、衛星方向の AZ値を取得した(EL 値は平地を走行するためほぼ一定であることから測定 を省略)。なお、測定結果において、レベルメータ値 と AZ、ELの値は同期している。レベルメータ値と受 信電力値は双方の時計の差による 2~ 4秒の時刻ずれ を有するが、相関がある。
(a)見通し環境
見通し環境における直進時の追尾特性を図 9に示す。
図中、Received signalpower、AZ、EL、AZ (openloop)
はそれぞれクローズドループ追尾時の受信電力値とア ンテナ指向方向の AZ、EL値、オープンループ追尾に よる衛星方向の AZ値を示す。和パターン方式、差パ ターン方式において、安定した受信電力を記録してお り、良好に追尾が行われていることがわかる。受信電 力の変動幅は本稿に示していないがオープンループよ りクローズドループ方式が大きい。これはクローズド ループ方式の追尾モードでは、ステップトラック方式 によって常に指向方向を変化させていることによる。
㻭㼚㼓㼘㼑㻌㼇㼐㼑㼓㼉
㼀㼞㼍㼏㼗㼕㼚㼓㻌㼑㼞㼞㼛㼞㼇㼐㼑㼓㼉
㻜 㻥㻜 㻝㻤㻜 㻞㻣㻜 㻟㻢㻜
㻙㻤 㻙㻠 㻜 㻠 㻤
図 6 和パターンの追尾誤差の角度特性の一例
図 7 追尾誤差の C/N0依存性
Tracking error [deg] Tracking error [deg]
sum pattern) difference pattern)
10 2.3 3.1
20 2.2 2.2
30 2.2 2.9
Tracking angular velocity [deg/sec]
表 1 追尾誤差測定結果
N
ᶞᮌ䛸ᆏ ᘓ≀䛾ᙳ
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䝤䝻䝑䜻䞁䜾䠄㧗ᯫୗ䠅
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䝤䝻䝑䜻䞁䜾䠄㧗ᯫ䠅
⾨ᫍ᪉ྥ
図 8 テストコース(図中の地図はヤフー(株)の許可を得て利用)
㻜 㻝 㻞 㻟 㻠 㻡 㻢 㻣
㻠㻜㻚㻜㻜 㻡㻜㻚㻜㻜 㻢㻜㻚㻜㻜 㻣㻜㻚㻜㻜 㻤㻜㻚㻜㻜
㻯㻛㻺㻜䚷㼇㼐㻮㻛㻴㼦㼉
㼀㼞㼍㼏㼗㼕㼚㼓㻌㼑㼞㼞㼛㼞㻌㼇
㻝㻜㼻㻛㼟㼑㼏 㻟㻜㼻㻛㼟㼑㼏
T ra c ki n g e rr o r [d e g ]
(b) 建物・高架によるブロッキング
建物によるブロッキング時の各種追尾方式の追尾特 性を図 10に示す。図中の Levelmeterは APAAのレ ベルメータ値を示す(範囲: 0~ 100%)。和パターン、
差パターン追尾の AZ、ELの変動特性には、建物のブ ロッキングにより受信電力が低下した後に停止探索 モード(同じ位置で追尾を停止)、近傍探索モード(AZ のみ自動探索)、広域捜索モード(AZ、EL双方の自 動探索)の動作が表れている。受信電力が回復した後 の和・差パターンの AZ指示値は同時測定したオープ ンループの AZ指示値とほぼ一致している。以上の結 果から、和・差パターンの追尾制御が正常に動作して いることを確認した。
高架橋によるブロッキング時の各種追尾方式の追尾 特性を図 11に示す。2本の高架橋によるブロッキング により受信電力が 2回低下していることがわかる。1 回目のブロッキング(1秒間)では AZ自動探索を1 度実施して受信電力が回復している(近傍探索モード)。
また、2回目のブロッキング(4秒間)では AZ、EL の自動探索を行い(広域探索モード)、受信電力が回 復している。和・差パターンの AZ指示値は同時測定 したオープンループの AZ指示値とほぼ一致している。
以上の結果から、和・差パターンの追尾制御が正常に 動作していることを確認した。
図 9 見通し環境における直進時の追尾特性 (a) 和パターン方式
(b) 差パターン方式
図 10 建物によるブロッキング時の追尾特性 (a) 和パターン方式
(b) 差パターン方式
E
-22 -21 -20 -19 -18 -17 -16 -15 -14 -13 -12
14:36:10 14:36:15 14:36:20 14:36:25 14:36:30 Time
Received signal power
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120
Angle [de
Received signal power AZ
EL
AZ (openloop)
-22 -21 -20 -19 -18 -17 -16 -15 -14 -13 -12
14:36:10 14:36:15 14:36:20 14:36:25 14:36:30 Time
Received signal power
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120
Angle [de
Received signal power AZ
EL
AZ (openloop)
Received signal power [dBm] Angle [deg]
D
-22 -21 -20 -19 -18 -17 -16 -15 -14 -13 -12
17:52:50 17:52:55 17:53:00 17:53:05 17:53:10 Time
Received signal power
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120
Angle [deg], Angular [deg/s]
Received signal power AZ
EL AZ (openloop)
-22 -21 -20 -19 -18 -17 -16 -15 -14 -13 -12
17:52:50 17:52:55 17:53:00 17:53:05 17:53:10 Time
Received signal power
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 110 120
Angle [deg], Angular [deg/s]
Received signal power AZ
EL AZ (openloop)
Received signal power [dBm] Angle [deg]
D
E
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
17:53:35 17:53:40 17:53:45 17:53:50 17:53:55 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Received signal power
AZ
EL AZ (openloop)
Level meter
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
17:53:35 17:53:40 17:53:45 17:53:50 17:53:55 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Received signal power
AZ
EL AZ (openloop)
Level meter
Received signal power [dBm] Level meter [%] Angle [deg]
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
14:37:30 14:37:35 14:37:40 14:37:45 14:37:50 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Received signal power
AZ
EL
AZ (openloop) Level meter
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
14:37:30 14:37:35 14:37:40 14:37:45 14:37:50 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Received signal power
AZ
EL
AZ (openloop) Level meter
Received signal power [dBm] Level meter [%] Angle [deg]
図 11 高架下によるブロッキング時の追尾特性 (a) 和パターン方式
(b) 差パターン方式 D
E -100
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
14:34:35 14:34:40 14:34:45 14:34:50 14:34:55 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Received signal power AZ
EL
AZ (openloop) Level meter
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
14:34:35 14:34:40 14:34:45 14:34:50 14:34:55 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Received signal power AZ
EL
AZ (openloop) Level meter
Received signal power [dBm] Level meter [%] Angle [deg]
D -100
-80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
17:50:18 17:50:23 17:50:28 17:50:33 17:50:38 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Level meter
AZ EL
AZ
(openloop)Received signal power
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
17:50:18 17:50:23 17:50:28 17:50:33 17:50:38 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
Level meter
AZ EL
AZ
(openloop)Received signal power
Angle [deg]
Received signal power [dBm] Level meter [%]
(c) 樹木によるシャドウイング
樹木によるシャドウイング環境における追尾特性を 図 12に示す。樹木のシャドウイングにより和・差パ ターンとも受信電力が低下していることがわかる。後 半の受信電力低下量が大きい時間帯において、AZ、EL 自動探索を行い(広域探索モード)、受信電力が回復 していることがわかり、和・差パターンの追尾制御が 正常に動作していることを確認した。また、和・差パ ターンで自動探索動作に大きな差がないことも確認し た。
3. 3 送信特性
本 APAAの送信機能の動作を確認するため、ブロッ キングによる受信信号レベル低下~回復時の送信動作 を評価した。
受信・送信回線を同時測定するため、フォワードリ ンク(Ka帯鹿島地球局→ ETS−Ⅷ→ S帯 APAA)、リ ターンリンク(S帯 APAA→ ETS−Ⅷ→ S帯鹿島地球 局)の 2回線を使用した。フォワードリンクを APAA の追尾に使用し、追尾状態(電力、アンテナ指向方向)
を記録した。また、リターンリンクで APAAから送信 し、S帯鹿島地球局で受信し電力を記録した。
情報通信研究機構鹿島宇宙技術センター構内を走行
して建物によるブロッキング状態を人為的に生成し、
クローズドループ追尾(差パターン)と、参考として オープンループで評価を行った結果を図 13に示す。
差パターン追尾時は車載局アンテナの受信レベルの断
~回復に地球局受信レベルが追従していることから、
ブロッキング発生時に送信が停止し、回復時に送信が 再開していることが確認できた。アンテナ指向方向の 変動特性から、受信レベル断時に追尾が外れ、アンテ ナ指向方向の探索を行い、その後再捕捉できているこ とを確認した。
参考として示したオープンループ追尾では、ブロッ キングによる受信レベルの低下および回復が車載局 APAA側で観測されている。これは、オープンループ 追尾の場合、高機能アンテナが磁気センサと車速パル ス感知器からの情報を用いて計算した衛星方向に常に アンテナ方向を指向しているためである。また、同様 の受信レベルの変化が地球局側でも観測されている理 由は、オープンループ追尾では送信信号を停止するこ とがないことによる。これに対し、クローズドループ 追尾では車載局 APAA側の受信レベルが閾値以下と なると探索モードに入るため、レベル変動が急峻に なっている。
以上の結果から、本 APAAの送信機能が有効に動作 していることを確認した。
まとめ
ETS−Ⅷを用いた移動体衛星通信実験の一環として、
図 12 樹木によるシャドウイング時の追尾特性 (a) 和パターン方式
(b) 差パターン方式 D
E 㻙㻝㻜㻜
㻙㻤㻜 㻙㻢㻜 㻙㻠㻜 㻙㻞㻜 㻜 㻞㻜 㻠㻜 㻢㻜 㻤㻜 㻝㻜㻜
㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻟㻡 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻠㻜 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻠㻡 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻡㻜 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻡㻡 㻝㻠㻦㻜㻢㻦㻜㻜 㻝㻠㻦㻜㻢㻦㻜㻡 Time
Received signal power level meter [%]
㻜 㻡㻜 㻝㻜㻜 㻝㻡㻜 㻞㻜㻜 㻞㻡㻜 㻟㻜㻜 㻟㻡㻜 㻠㻜㻜 㻠㻡㻜 㻡㻜㻜
Angle [de
Received signal power
AZ EL
Level meter
㻙㻝㻜㻜 㻙㻤㻜 㻙㻢㻜 㻙㻠㻜 㻙㻞㻜 㻜 㻞㻜 㻠㻜 㻢㻜 㻤㻜 㻝㻜㻜
㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻟㻡 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻠㻜 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻠㻡 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻡㻜 㻝㻠㻦㻜㻡㻦㻡㻡 㻝㻠㻦㻜㻢㻦㻜㻜 㻝㻠㻦㻜㻢㻦㻜㻡 Time
Received signal power level meter [%]
㻜 㻡㻜 㻝㻜㻜 㻝㻡㻜 㻞㻜㻜 㻞㻡㻜 㻟㻜㻜 㻟㻡㻜 㻠㻜㻜 㻠㻡㻜 㻡㻜㻜
Angle [de
Received signal power
AZ EL
Level meter
Received signal power [dBm] Level meter [%] Angle [deg]
ᗈᇦ᥈⣴䝰䞊䝗䠄AZ,EL᥈⣴䠅
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
14:33:25 14:33:30 14:33:35 14:33:40 14:33:45 14:33:50 14:33:55 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
AZ (openloop) Received
signal power
AZ EL
Level meter
-100 -80 -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100
14:33:25 14:33:30 14:33:35 14:33:40 14:33:45 14:33:50 14:33:55 Time
Received signal power level meter [%]
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
Angle [de
AZ (openloop) Received
signal power
AZ EL
Level meter
Received signal power [dBm] Level meter [%] Angle [deg]
ᗈᇦ᥈⣴䝰䞊䝗䠄AZ,EL᥈⣴䠅
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
0 10 20 30 40
Rx level [dBm]
Time [sec]
Vehicle rx level (closed loop (dif.)) Earth station rx level
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0 10 20 30 40
Angle[deg]
Time [sec]
Vehicle el (closed loop (dif.)) Vehicle az (closed loop (dif.))
-70 -60 -50 -40 -30 -20 -10 0
0 10 20 30 40
Rx level [dBm]
Time [sec]
Vehicle rx level (open loop) Earth station rx level
0 50 100 150 200 250 300 350 400
0 10 20 30 40
Angle [deg]
Time [sec]
Vehicle az (open loop)
D E
F G
図 13 ブロッキング時のアンテナ指向方向と受信レベル (a) クローズドループ追尾の受信レベル (b) オープンループ追尾の受信レベル (c) クローズドループ追尾のアンテナ指向方向 (d) オープンループ追尾のアンテナ指向方向
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車載用の薄型・軽量の高機能な APAAを開発した。本 APAAでは、衛星方向の自動追尾を行うため和パター ンまたは差パターンを用いたクローズドループ追尾方 式を適用するとともに、衛星方向の効率的な探索を実 現するため探索範囲を段階的に拡大する複数の探索 モードを設定した。本 APAAの特性を確認するため、
衛星信号を用いて本アンテナの基礎特性、車載状態で の走行試験による追尾特性、送信特性を取得した。基 礎特性においては、使用状態で放射パターンが正常に 形成できていること、回転台を用いた追尾特性試験で 追尾誤差がビーム幅と比較して十分小さく、追尾速度 依存性もないことから、本 APAAが十分な基礎性能を 有することを確認した。追尾特性においては、茨城県 鹿嶋市内のテストコースを走行して追尾動作を評価し た。その結果、和・差パターン追尾のいずれにおいて も、衛星が見通せる環境では追尾モードによる安定し た受信電力値を記録し、また、建物・高架橋により衛 星からの電波が遮蔽されるブロッキング環境、樹木に より衛星からの電波の一部が遮蔽されるシャドウイン グ環境では 3つの探索モード(停止探索モード、近傍 探索モード、広域捜索モード)に適切に移行して自動 探 索 を 行 い、信 号 を 回 復 し た。こ の こ と か ら、本 APAAの追尾動作が有効に機能していることを確認 した。送信特性においては、建物によるブロッキング 状態を人為的に生成し、クローズドループ追尾(差パ ターン)を行った結果、本 APAAの設計どおりブロッ キング発生時に送信が停止し、回復時に送信が再開し ていることが確認できた。以上の結果から、本 APAA が移動体衛星通信用アンテナとして良好に動作するこ とを確認した。
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三浦 周 (みうら あまね)
ワイヤレスネットワーク研究所宇宙通信シス テム研究室主任研究員
博士(情報科学)
衛星通信、アンテナ
藤野義之 (ふじの よしゆき)
東洋大学教授/元ワイヤレスネットワーク研究所 宇宙通信システム研究室主任研究員
博士(工学)
衛星通信、無線電力伝送