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小学校社会科における地域学習の改善

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Academic year: 2021

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小学校社会科における地域学習の改善

一一多元的な社会認識形成を目指した小単元開発一一

教科・領域教育専攻 社 会 系 コ ー ス

岩 田 月 月 子

序 章 本 研 究 の 意 義 と 方 法

本研究は,現在の小学校社会科地域学習を分 析し地域学習の理論と方法を解明することを 通して,小学校における地域学習の改善を示す 事を目的としている。

序章では本研究の意義と方法を明示した。

本研究の意義として,第1に,自らの住んで いる地域を学ぶことで,多くの異空間と自己が いかにかかわって成立しているのかが分かるこ とを通じて,白地域を含め 多様な文化を優劣 なく同等に考える資質が育成できる,つまり多 文化理解の手段として地域を活用し,白地域を 多元的な広がりをもった空間として認識する小 単元を提案する点,第

2

に改善点として3つの キーワードをもとに多元的な社会認識を育成す る小単元を具体化してし1く点がある。

1

章先行する社会科地域学習の分析 従来取り組まれてきた社会科地域学習の実践 事例には閉ざされた社会認識

J

の共感的理解 型授業と,

r

開かれた社会認識jの社会構造分析 型の授業に迫る授業の型がある。

しかし,それぞれの学習は別々のものとして 取り組まれてきたのが現状であり,そのことが 地域学習を希薄なものにしてきた現実がある。

筆者は,その現状を打破していくために,

r

閉 ざされた社会認識Jの共感的理解型授業におい て「地域と自己とのつながりをつくるjをつくる 学習過程を設定し「開かれた社会認識jの社会構

指 導 教 官 西 村 公 孝

造分析型の授業に迫る授業において「自他や社 会構造を認識するJ学習へと深めていくOその過 程により,個と社会の関係、性を問い,その学習 内容を批判的に吟味・検証する過程を繰り返し ながら,最終的に「地域を通して公的に生きる自 己を追究するJ学習へと深めていく社会科地域 学習を提起したいと考える。

2

章社会科地域学習の改善視点

小学校社会科における地域学習を改善してい くためには,どのような小単元を開発すればよ いのか。

地域の中にある社会問題に対して,

r

共感的に 理解」することができるよう,地樹土会と個のつ ながりがわかる学習を行う。そしてそのつなが りがどのような社会状況から成り立っているの か「社会構造を客観的に分析Jし,それらの「多元 的な社会認識jを踏まえて,地域の中で自己がど のような行動をしていけばよいのかという「自 己の生き方を追究できるj資質を育成するOこれ により,地域学習の課題を克服していくことに つながるのである。

したがって筆者は,

r

地域と自己とのつながり をつくるJ

r

自他や社会構造を認識するJ

r

地域を 通して公的に生きる自己を追究する」という

3

つの改善視点で「多元的な社会認識形成jを目指

した小学校社会科地域学習を提起したいと考え る。

LU

U

(2)

3

章社会科地域学習の理論

「多元的な社会認識形成

J

とは,地域を共感的 瑚樫村士会構造分析型のどちらか一方の見方 でみるのではなく 地域社会を構成するさまざ まな多元的な空間を認識することである。「多元 的な社会認識形成

J

とは,自己の住んでいる地域 を共感的に理解した後,白地域を「外の視点から 捉えるjことである。それは「白地域を突き放し てみるJといってもよいし,あるいは「他の立場 からみるJといってもよい。いずれにしても,自 分自身をあたかも他人をみるかのように捉え返

し知識を客観化させることである。したがっ て,この場合に理解される白地域は,他者とし ての地域という,極めて客観的なものである。

そして,そのような客観的分析を土台として,

再度地域社会を,自己の問題として捉え直すの である。

目標原理としての「多元的な社会認識jに迫る 方法原理は,

r

共感的理解

J r

客観的分析

J r

深化・

拡充的分析jである。

社会科地域学習においては まず学習者の入 りやすい「共感的理解Jを軸に,事象とその事象 を行う人物を主観的に捉え,次の過程で,客観 的に社会構造を捉えることが,科学的な社会認 識形成の土台となる。学習者の中には「共感的理 解jからf客観的分析」への追究と,その追究を踏 まえて「客観的分析jし,事実相互の因果関係を 見出しそこからさらに社会構造を把握し,発 見していくという「客観的分析jの方法を「共感 的理解jの方法へ組み込んでし、くのである。

その「共感的理解jからf客観的分析jへの学習 は,他者の行為価値への主雛ぢ判断と社会構造 を分析した中での客観的判断を可能にする。こ のf共感的理解jから「客観的分析jへの認識を土 台として,自己の既存の行為価値や他者の既存

の行為価値を批判的に捉え直し,主観的・客観 的に判断する批判的思考により学習者の「深 化・拡充的分析jを深めていくのである口 第

4

章社会科地域学習の展開

先に考察した理論に基づき 具体的な小学校 社会科地域学習の小単元を開発する。主題はf伝 統産業とわたしたちのくらしjであり,その単元 構成は以下の通りである。

<共感的理解> 伝統産業ができるまでにかか わった人々の願いや苦悩の学習

<客観的分析> 伝統産業から社会構造を学ぶ 学習

<深化・拡充的分析> 地域の中で伝統産業を 捉える学習。

まず地域産業を残す側と地域住民の立場を共 感的に捉え,その社会構造を探求法で分析する。

そして,話し合いを通じて,地域の中の社会問 題の本質を明確にし,地域の一員としての公民 的資質を育成する小単元を開発する。

終 章 成 果 と 今 後 の 課 題

「多元的な社会認識形成

J

を目標原理とする社 会科地域学習では,その方法原理であるf共感的 理解

J r

客観的分析

J r

深化・拡充的分析jという学 習の流れの中で,共感的理解の枠を超え,社会 構造を認識することで社会の中で自己の生き 方が追究できるようになる。

自己の地域と社会とのつながりを認識し、地 域の中で自己の生き方を考えて行動をできるよ うになることは,つまり多文化に対応できる資 質へとつながっていき,そして地域社会を築い ていく公民としての主体性を育てる社会科地域 学習へと,従来の取り組みを改善していくこと ができるのであるD

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参照

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