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顔の表情認知過程の研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

顔の表情認知過程の研究

蒲池, みゆき

九州大学人間環境学研究科行動システム専攻

https://doi.org/10.11501/3166828

出版情報:Kyushu University, 1999, 博士(人間環境学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

第二章 持続的注視法による表情認知過程 の検討

「‘J「3

(3)

本章, および次章では, 著者が心理学的実験に基づい て, 表情認知過程の特性の解明を目的とした実験的考察 を試みる.

まず本章では, 静止画顔パタンを刺激として用いた 3 つの実験から 顔の表情認知過程における処理系の選択 的順応効果を探ることを試みる.

2・1

11碩応顔刺激の持続的注視による表情認 知の遅延

第一章で述べたように, 表情認知の次元や文脈効果を 追求する研究,ならびに神経生理学的な知見をふまえて,

本研究では, 表情認知のメカニズムを探る新しい心理物 理学的手法を試みる. その手法とは, 特定表情を持続的 注視した後の, 表情認知時間の変容を測定するものであ り, 以下に述べるように, 選択的順応の手続きを表情に 応用することを試みたものである.

2・1・1

選択的JI原応と持続的注視法

選択的順応の手続きとは, 従来, 色残効などの比較的 低次の視覚特徴抽出過程におけるチャンネル特性やモジ

ュール特性を解析する手法のーっとして利用されてきた ものである. たとえば 特定の空間周波数や方位をもっ 縞パタンを順応刺激として持続的に注視すると, 後に観 察するテスト刺激が近傍の空間周波数や方位を持つ場合 に限って, 感度が低下することが知られている. これら の結果は, 視覚系がそれらの特徴次元に関して複数のチ ャンネルをもつことの積極的証拠として取り上げられて いる(Braddick, Campbell, & Atkinson, 1978).

- 34 -

(4)

2・1・2 表情認知への応用

このような手法を表情認知に拡張して考えてみると,

もし,特定表情を選択的に処理する機構があるとすれば,

その表情刺激を持続的注視していると, 選択的順応が生 じ, その機構の機能低下が起こるはずである. したがっ て, その機構が関与する表情刺激の認知反応時間は遅延 することが考えられる. しかし, それとは独立した機構 により処理がな される表情の認知反応時間には, 影響が みられないはずである.

本研究では, まず, SD法を用いて, 表情認知を規定す る成分を抽出し, それぞれの表情成分を代表する顔刺激 を選定する(実験1 ). 次に, それらの顔刺激を持続的注 視した後の,さまざまな顔刺激の表情認知時間を測定し,

遅延の発生状態を調べ, 表情認知機構の独立性や相互関 連性を探ることとする(実験II ). さらに, 実験Eで得ら れた表情認知の遅延効果が, 順応顔刺激を倒立に提示し た際にも見られるのかについて,調べることにする(実験

皿)

- 35・

(5)

2国2実験的考察1 :顔刺激の選定と表情の心的 次元の抽出

実験Iの目的は, 持続的注視実験(実験1I)で使用する 顔刺激の選定を行うことである. そして持続的注視によ る表情認知の遅延効果を詳細に考察するために, それら の顔刺激について主成分分析を行い, 各表情の布置や主 成分得点を調べることにする.

方 法

【表情と表出者】

吉川 ・ 中村(1994)によると, 表情として作りやすい情 動は男女で異なる. 今回は表出者の性差要因を除くため に, 表出者を女性に限定した. したがって使用する表情 は女性が表出しやすい表情から順に五つ(“幸福" “悲し み" “驚き" “怒り" “嫌悪")を選んだ. さらに, “中性"

の顔(特に何の表情も有していないもの)を加えた6つ の表情を表出者に表出させた. 表出者は21歳から25歳

までの女性7名であった.

【表出方法】

表出者は, 日音箱の中に入ったカメラに向かつて自分で リモコンを押して写真を撮影した. 撮影の様子を図2・1 に示す. 表出者と暗箱内のカメラの聞にはプラスチック の板があり, それがハーフミラーの役割をして, 表出者 は自分の表情を見ながら撮影できるようになっていた.

写真はモノクロで, カメラと表出者の距離は約70cm,

写真の枠内に入るのは, 表出者の顔と首, および肩の上 部のみで, 背景は, グレーに統ーした. また, 服装や髪 型の影響を極力避けるため, 表出者の首から下をグレー

- 36 -

(6)

の紙で覆い, 髪はゴムやピンで留めて顔が明瞭に見える ようにした.

表出者には次の教示を与えた.

(1)非常に強くその情動を感じているときの表情を作 ること

(2)その情動を感じているということが, 第三者にも分 かるようにすること

以上の二点である. このような条件のもとで, 表出者に は, “幸福" “悲しみ" “驚き" “怒り" “嫌悪" “中性" の 六つの表情について, 基本的には各表情につき一人二枚 ずつ撮影するように教示したが, モデルが各表情に対し て納得するまで撮影を行わせたので, 二枚以上になった

場合もある. その結果, 計142枚の写真が撮影された.

【評定者】

22歳から34歳までの男性7名, 女性3名の計10名.

【評定方法】

表出された142枚の写真をランダムな順序でアルバム に入れ, 評定者には, 写真一枚ごとに, “幸福" “悲しみ"

“驚き" “怒り" “嫌悪"の五つの表情について, “非常に そう見える"を5, “まったくそう見えない"を1として

5段階尺度で評定を行うように教示した.

- 37 -

(7)

くヨ

Semi Reflective Mirror

図2-1 刺激録影の様子

DARK BOX

表出者はハーフミラーに写る自分の顔をみながら録影することが可能である

-3 8-

(8)

結果と考察

【顔刺激の選定】

全評定値の平均値(2.05)や標準偏差(1.09), そして実験 Eの持続的注視実験に必要な各表情ごとの刺激枚数を考 慮、に入れた上で, 顔刺激 の選定を行った. “幸福" “悲し み" “驚き" “怒り" “嫌悪"については, 平均評定値が表 出者 の意図す る 表情と同じ表情だけが 3.8 (平均値+

1. 6SD程度)以上 , かっその他の表情 は3.0(平均値+ 1 SD程度)未満のものを, 的確にその表情 が表されている 写真とみなした. “中性"については, どの表情も含まな

いように, 平均評定値が “幸福"“悲しみ"“驚き"“怒り"

“嫌悪"の全ての表情において2.2(平均値程度)以下で,

かっ表情聞の差が1 ( 1 SD程度)以下 のものを的確な 中性の写真であるとみなした. これらの条件を満たす写 真を, 一人一表情につき一枚選出した. その結果, 6名 の表出者について 36枚 が選出され, 実験Eで使用され る顔刺激とした. 刺激写真の例を図2-2a'"'-'fに示す .

- 39 -

(9)

図2-2a: 刺激写真の例 (幸福)

図2-2b: 刺激写真の例 (悲しみ)

図2-2c: 刺激写真の例 (驚き)

-40-

(10)

図2-2d: 刺激写真の例 (怒り)

図2-2e: 刺激写真の例 (嫌悪)

図2-2f: 刺激写真の例 (中性)

-41-

(11)

【主成分分析】

142枚の写真について, 得られた平均評定値を用いて,

主成分分析を行った. 累積寄与率70%をめやすにした分 析では, 二つの主成分が抽出され, 第一主成分の寄与率 は47.7%, 第二主成分の寄与率は24.4%であった. 選出

された 36枚の顔刺激の主成分得点を, 第一主成分と第

二主成分について算出し, 表情ごとにまとめたのが図 2・3である.

第一主成分において, “幸福" が極端な負の値を示し,

“怒り" や “嫌悪" が正の値を示している. これらの結 果から, 第一主成分は「快-不快」軸に相当するものと 考えられる. 表情空間の基軸を因子分析などにより抽出 しようとした Schlosberg(1952)をはじめとする数多く の研究の中で, 必ずあらわれるのが「快-不快」の軸で あった. このことから, “快" であるか “不快" であるか の判断は, 表情認知において基本的なものであると考え られる.

一方, 本実験における第二主成分は, “驚き" と “悲し み" を対極にもつものとなっている. 先行研究において,

「快-不快」以外の軸は, “覚醒水準" や“注意的活動性"

などが多くの研究で抽出されてきたが, 今回の第二主成 分は, “沈静-覚醒" 軸と名づけることにする.

選定された個々の顔刺激の主成分得点をみていくと,

“幸福" はほぼ第一主成分軸上にあり, “悲しみ" は第二 主成分軸上にある. “怒り"はやや第一主成分の主成分得 点が高く, “驚き"はやや第二主成分の主成分得点が高い.

“嫌悪" は第二主成分の得点のばらつきが大きくなって いる. これは 表出者が撮影後に “嫌悪は表出しにくい"

と多数報告していたことや, 女性の表出しやすい五つの 表情(吉川 ・ 中村, 1994)のうちで最下位であることから 考えても, 嫌悪を特定化することが困難であったものと

- 42 -

(12)

考えられる.

- 43 -

(13)

Pleasant

Arousal

The 2nd comoonent

2

-2

Non-arousal

/Anger /.

\ . . \ /.

図2-3 主成分分析による表情認知空間

Unpleasant

The 1st comoonent

10名の評定者によって評定された142枚の表情写真のうち, 選出 された36枚のそれぞれの主成分得点をプロットし 各表情カテゴリー

ごとにわけたもの

-44-

(14)

2・3実験的考察n:持続的注視実験(正立顔)

実験Iで選定された刺激を用いて, 実験Hでは, 持続 的注視法を用いて顔表情認知のサブシステムの選択的順 応効果を調べる. 持続的注視法は, 従来, 比較的低次の 視覚特徴抽出過程におけるチャンネル特性やモジュール 特性を解析する手法のーっとして利用されてきた選択的 順応の手続きを, 表情認知に応用したものであり, 特定 表情を持続的に注視した後の表情認知時間の変容を測定 するものである.

第一章で述べたように, 顔表情が選択的に障害を受け る相貌失認の症例(Zeh, 19 50; Bornstein, 1963)や, 表情 に特異的 に応答す るニュ ーロン が発見されている が

(Perrett et al., 1984; Nakamura et al., 1992), もし特

定表情を選択的に処理する機構があるとすれば, その表 情刺激を持続的注視していると, 選択的順応が生じ, そ の機構の機能低下が起こるはずである. したがって, そ の機構が関与する表情刺激の認知反応時間は遅延するこ とが考えられる. しかし, それとは独立した機構により 処理がなされる表情の認知反応時間には影響がみられな いはずである.

持続的注視を行う刺激をAS(順応刺激), その後に観察 する刺激をTS(テスト刺激)とよぶことにする.

縞パタンなどを用いた他の選択的順応実験では, AS の 提 示 時 間 を数十秒に設定 し て い る 場 合 が多い

(Braddick et al., 1978). 二瀬 ・ 行場(1996)は, 漢字ノミタ

ンを用いて, 本研究と同じように ASを持続的注視した 後のTSの認知時間の遅延を調べたが, ASを25秒間提 示する場合を持続的注視条件とし, 1秒間を提示する条 件との比較を行っている. そこで, 本研究においてもそ れらの注視時間条件を採用することにした. また, 持続

- 45 -

(15)

的注視による効果は, AS 提示終了後も比較的長く続く ことから, 二瀬 ・ 行場(1996)と同様に, 本研究でも AS の後, TSを4回連続して提示した.

方 法

【被験者】

被験者は,19歳から23歳までの健常な視力をもっ(矯 正を含む)男性5名, 女性25名の計30名. いずれも表 出者とはまったく面識のない者, またはほとんどない者 に限定した. 表情の答え方を統ーするために, 実験前に 表情の答え方を書いた紙をわたし, 声に出して5回ずつ 読ませた. その後, 刺激として使う写真を一通り見せ,

統ーした答え方ができるかどうか,あらかじめ確認した.

【装置】

実験Iで顔刺激として選定した 36枚の写真(モノク ロ)をイメージスキャナ(SHARP JX・330X)で白黒256 階調で読み取り, それらの提示および反応時間の測定に はパーソナルコンピュータ( SHARP X68000)を使用した.

被 験 者 の口頭反 応 を検出す る た め にボイスキー (SanKen SSP50312) , 実験中の様子を録音するためカ セットテープレコーダを使用した. 顔刺激は, 画面の中 央に縦9 .6o , 横11.70 の大きさで提示され, 平均輝度 は26cd/m2であった. 実験は, 暗室で行われた. また,

視距離を一定に保つために, あごのせ台を使用した.

【手続き】

被験者がマウスボタンを押すと, “幸福" “悲しみ"

“驚き" “怒り" “嫌悪" のいずれかの表情をもっAS が 提示された. ASの提示時間は25秒間(持続的注視条件) と1秒間(コントロ ール 条件)の二条件を設けた. また,

- 46 -

(16)

被験者が提示時間を予測して刺激から目をそらすのを防 ぐため, 1から25秒間のランダムな時間でASを提示す る条件(不算系列条件)も加えた. 三つの条件のいずれか でAS を提示したあと画面を 消し, その0.5 秒後に “幸 福" “悲しみ" “驚き" “怒り" “嫌悪" “中性"のいずれか

の表情のTSを提示した. 一試行中のタイムチャートを 図2-4に示す.

被験者には, ASを見続け, その後に提示されるTSが どの表情であるかを口頭でできるだけ速く答えるように

教示した. また, ボイスキーの作動を確認するために,

答えると同時にキーボードを 押させた. 被験者の声を ボ イスキーで検知すると同時に画面は消え, 1回目のオン セットから 4秒後に, 2回目のTS が提示された. 同時 に, 1試行では一つのASに対し, 続けて4回のTSが提 示され, 被験者は同じ課題を行った.4回とも別の表情 および別の人物の写真がTSとして提示された.TSのオ ンセットから, ボイスキーが 作動するまで(被験者が 表情 名を答えるまで)を,その表情に対する認知反応時間(RT) とした. 同時に押させたキーボードによる反応時間との ずれを見て, あまりにも離れている場合には, ボイスキ ーの誤動作の疑いがあるので, データとして採用しなか った. 加えて, RT が 2秒以上のものは, 推測や判断修 正などが入った可能性があり, 信頼のある反応とはいえ ないので, これもデータとして採用しなかった.

- 47 -

(17)

AS

TS

R

lsec AS start point

dummy AS start point

O.5sec 々ータ

4.0sec

可司 ...

4.0sed � 4.0sec

図2-4 持続的注視法の実験手続きタイムチャート

-48・

(18)

一人の被験者 につき , 試行数は全部で72試行(25秒間 提示と1秒間提示条件がそれぞれ30試行 , 不算系列条

件1 2試行)であり , 各試行 につきTSは4回提示された.

これらの試行では, AS には5種類 (“中性" を除く)の うち3種類の表情が用いられ, TS には6種類すべての 表情が用いられた. 実験は, 前半 ・ 後半各 36 試行ずつ

に分けて行 った.

実験計画は, 被験者 全体で, 5種類の ASと6種類の TS, お よび4回のTSの提示順序の組み合わせが均等に

なる ように組まれた. 30名分の データを集計すると, 25 秒間提示条件と 1 秒間提示条件のそれぞれについて

3600個(30試行X 4回のTS提示X 30人)の測定値が得ら れ, ASとTSの組み合わせ(5種X 6種=30通り)ごとに みると, 各々120 個(4回のTS提示×各 TS提示 におい てその組み合わせが該当する被験者6名X 5 回ずつ)の測 定値が得られた. ただし, 結果の分析では, それらの う

ち正答であった反応のみ採用 した.

結 果

2要因( ASの提示時間XTSの提示回数)の分散分析 を行った. 表 2・1 はASの提示時間の主効果 に注目して 結果をまとめたものである. 持続的注視 の効果をみる た めに, ASとTSの表情の各組み合わせごとに, 25秒間 注視条件と, 1秒間 注視条件のそれぞれについて平均RT を求め(TSの提示回数について はデータを集計 ), 後者 から前者をひいた値 を求めた. 表でマイナスを示すもの

は, 持続的注視 によりTSのRTが遅延したもの , プラ スを示すもの は, 促進したもの を表 している.

まず, 符号のっき方についてみてみると マイナス( 遅 延)が ついている箇所がほとんどであり 特にASとし

て “幸福ぺ “怒り" や “嫌悪" を持続的に注視すると,

- 49-

(19)

後 にみる全ての表情認知が遅延している . 分散分析の結 果, まず “幸福" をASとした場合 , TSとして “幸福"

を見た場合の RT が有意に遅延しげと5.88, df = 1/20,

pく.05), TSが“中性"の場合 も有意に遅延した(Þと10.13,

df= 1/20, pく.01). TSとして “嫌悪" を見たときにも遅 延する 傾向が見られた(Þと4.12, df = 1/20, pく.10). さら

にASとして “驚き" を持続的に注視した場合 は, その 後の “中性" の認知を有意に遅延し(F=5.15, df = 1/20,

pく.05), また“怒り"の認知 も遅延する傾向が認められ た(Þと4.02, df= 1/20, pく.10). さらにASとして “嫌悪"

を持続的に注視すると, 後 に見る “驚き" の認知を有意 に遅延し(Þと16.12, df= 1/20, pく.001), また, “嫌悪" の 後の “悲しみ" も反応時間が有意に遅延した(Þと5.51, df

= 1/20, pく.05). 表2・1で促進を表すプラスの符合のとこ ろには, どこ にも有意差は見られなかった.

な お, TSの提示回数について 有意な主効果(pく.05)は,

表2・1の二つのセル(ASとTSの組み合わせがそれぞれ,

“悲しみ" x “悲しみ" と, “悲しみ" x “嫌悪")でみ られた. また, ASの提示時間とTSの提示回数について の有意な交互作用 (pく.05)は, 表1・2 の三つのセル (AS とTSの組み合わせがそれぞれ, “驚き"x“悲しみ", “悲 しみ" x “嫌悪", “怒り" x “驚き")でみられた. ただ し, AS の提示時間 について主効果が見られたセルのう

ち, TS の提示回数に関する有意な主効果および交互作 用がみられた箇所はなかった. このことは, 持続的注視 によりRTの遅延が起こ る 場合 には, TSの提示回数によ る影響が少ない, すなわち, 順応効果は比較的長く (最 後のTSが提示されるのは12.5秒後であり, それ以上) 継続し, なかなか回復しないことを示している.

- 50-

(20)

表2-1 : 正立顔における表情認知反応時間の遅延表

各セルの符号は, 持続的注視によりRTが遅延したもの(ー)と 促進したもの(+ )を示す. 左上の値は持続的注視条件の平均RT,

左下の値はコントロール条件の平均RT. 符号の上部の値は分散分析 のF値を表している. + ーのシンボルの大きさはF値の大きさに対応

している

Adaptation Stimuli (AS)

(∞'同)

Happiness Surprise Sa也less Anger Disgust

928 934 1055 903 929 �・J

Happiness 5. 88 O. 23 一 一2.81 O. 09 一 一O. 76

853 922 1019 896 909曹"

838 O. 11 902 829 0.13 878 840 ". ・" .

2. 28 O. 60 16. 12

Surprise 一 一

+ ***

829 859 838 845 763

1007 1029 1112 971 1014

10. 13 5. 15 1.87 O. 18 O. 55

Neutral 一 一 一

** *

938 969 1063 961 997

1003 1011 1191 1122 1068

Sa也less O. 58 O. 26 2. 74 0.35 5.51

981 997 1111 1092 998 *

1033 1108 990 1113 1096

0.06 4.02 0.01 1. 80 1. 21

Anger

+

1023 1033 + 995 1060 1055

1030 1013 1134 1064 1153

4.12 O. 96 2.05 0.06 1. 04

Disgust

+

+

1969 1055 1094 1054 1108

.... 1秒後平均RT (ms)

-・25秒後平均RT (ms)

."・H・-分散分析F値

何回目EZ∞恒SH

-51・

(21)

考 察

実験Hの結果を, 実験Iの主成分分析(図2・3)の結果に 照らして考察すると, 以下のような興味深い知見が得ら れる. 持続的注視が後の表情認知に有意に影響を及ぼし ている表情は, 表2・1より “幸福" “驚き" “嫌悪" であ る. この三つの表情に共通する点は, 図2・3より第一主 成分得点の絶対値が比較的大きい表情であることが分か る. したがって, 持続的注視による表情認知の遅延には,

おもに第一主成分が関与しているのではなし1かと考えら れる.

そこで,ASの第一主成分得点の大きさと持続的注視に よる認知反応時間の遅延との関連をより詳細にみるため に, さらに図2・5を作成した. これは 図2・3における 第一主成分得点については, 絶対値に注目して “不快"

側を “快" 倶IJに折り返し, 持続的注視をした表情からそ れにより認知が有意に遅延した表情へ矢印を描いたもの である. 図2・5では矢印はすべて右向きであり, 持続的 注視は “快-不快" の主成分得点の絶対値が高い表情か らより低い表情へしか影響を及ぼさないことが分かる.

第一主成分得点の絶対値が高い表情を持続的に注視す ることで, 後にみる第一主成分得点の絶対値がより低い 表情の認知が遅延されてしまうのは どのようなメカニ

ズムに基づくのであろうか. まず, “快-不快"に対して 極性をもたない, しかも幅広い同調特性をもっ単一の処 理系が存在する可能性が考えられる. そしてこの処理系 を強く活性化する表情を持続的注視することにより選択 的順応を起こし, 後に)1慎応刺激よりその処理系を弱くし か活性化しない他の表情の認知を遅らせてしまうのでは なし、かと推測される. “幸福" を持続的注視すると, TS が “幸福" 自身の場合の認知にも遅延がみられるのは,

- 52 -

(22)

“幸福" は第一主成分得点がもっとも高いので, この処 理系を強く活性化し, その結果, 大きな順応効果を引き

起こしたためと考えられる.

それに対し, “覚醒-沈静"を表す第二主成分得点の絶 対値が高い “悲しみ" を持続的に注視しでも, 後の表情 認知には何ら影響が現れなかった. この理由には, 以下 に示す二つの可能性が挙げられる. まず “悲しみ" は第 一主成分得点の絶対値が非常に小さいので 上述した特 性をもっ “快-不快" 処理系を活性化しないことが考え られる. 次に “悲しみ" の認知には それ独自の処理系 が関与するが, その処理系は持続的注視に頑健で,“快­

不快" 処理系とは異なる時間特性をもっ可能性が挙げら れる.

- 53 -

(23)

Ihe 2nd component

Arousal

'山山ム'

IPleasantness l

The 1st component

2

-2

Non-arousal

図2-5 持続的注視による表情箆知の遅延状況 (正立顔を順応刺激とした場合)

第1主成分( I Pleasantness I )については, 図2-1の主成分分析における第1軸を 原点で折り返し 絶対値を表したもの.

(24)

Kirita & Endo(1995)や桐田(1993)は, 空間周波数フィ ルタリングを施した画像や, 倒立顔提示法および左右視 野提示法を用いて, “幸福"の表情認知には低空間周波数 成分が重要で, 全体的 ・概略的処理方略がとられ, 他方,

“悲しみ" の認知には高空間周波数成分が関与し, 部分 的 ・分析的方略がなされていることを指摘している. 永 山 ・ 吉田 ・ 利島(1995)も笑顔の認知には, 顔パタンのも つ大まかな情報(低空間周波数成分)だけで十分であり,

局所的な情報(高空間周波数成分)は, むしろ冗長な情報 であることを示唆している. したがって, 空間周波数成 分と表情認知の関連を調べたこれらの研究から, I幸福」

と「悲しみ」の認知には異なる空間的処理が行われる可 能性が示唆されている. 持続的注視による遅延状況を調 べた本実験の結果は, 顔の表情認知過程には時間特性の 異なる少なくとも二つの処理系が関与することを示して いる可能性が高い.

実験Hの正立顔の持続的注視でみられた「快-不快J 処理系の選択的順応が, 顔パタンに特有の現象であるの か, また顔ノミタンのどのような特性に基づくものなのか を次に検証する必要があると考えられる.

サッチャー錯視(Thompson, 1980)に代表されるよう に, 顔を倒立で提示するとその顔つきや表情の読み取り が著しく困難になることが知られている. この効果は,

顔の処理の特殊性を示す証拠のーっとして挙げられてい る(Yin, 1969). パタンとしての顔処理の特殊性に関する 議論の中で, Diamond and Carey(1986)のように倒立効 果は顔に限らないとする主張もある. しかし彼らの主張 は顔を提示する向きによって顔つきや表情などの処理方 略が異なることに異論を唱えるものではない.

実験Hで得られた選択的順応効果が正立の顔パタンに 特有の現象かどうかを検証するため, 次の実験阻では,

- 55・

(25)

JI頃応刺激(AS)に倒立顔を用いた実験を用いた実験を試 みることにする. これにより, 実験Hと同じような反応 時間の遅延効果が得られれば, I快一不快」処理系の選択 的順応効果は,顔パタンに特異な効果というよりむしろ,

顔表情画像の視覚的な物理特性(例えば, 空間周波数や 方位成分など) に依存したものであると考えられる. そ れに対し, もし実験Eと異なり反応時間の遅延効果が減 少あるいは消失すれば, I快-不快」処理系の選択的順応 効果は, 王立な顔パタンに特異な効果であると言えるだ ろう.

- 56-

(26)

2・4実験的考察m:持続的注視実験(倒立顔)

サッチャー錯視(Thompson, 1980)に代表されるよう に, 顔を逆さまに提示するとその顔つきや表情の読み取 りが著しく困難になることが知られており, この顔の倒 立提示効果についても多くの研究がなされている(遠藤,

1995).

実験皿では, 実験Hで述べたような正立顔でみられた 持続的注視による表情認知の遅延効果は, )1慎応刺激を倒 立顔にした際にはどのように変容するのかを調べる. も し顔を倒立に提示することで, 正立顔と同様の遅延効果 が見られるのであれば, 顔の選択的)1慎応効果は刺激画像 のもつ傾き成分や空間周波数成分などに対する順応が考 えられ, 視覚処理のごく低次の過程でおきている可能性 がある. 一方, 倒立顔を持続的注視することで実験Eで みられた遅延効果が消失, あるいは王立顔とはまったく 異なる反応時間の遅延または促進効果があらわれたとす れば, 持続的注視で生じる選択的順応効果は, 顔表情認 知に特異的な高次の処理系で生起する現象であると考え ることが可能であろう.

方 法

実験皿の被験者数, 装置および手続きは, 実験Eと同 じである. ただし, 全ての順応刺激AS は正立顔を画面 上1800 回転させた倒立顔の状態で提示し すべてのテ スト刺激TSは実験Eと同様に正立顔のままで提示した.

- 57 -

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結果と考察

実験Eと同様, jI慎応倒立顔提示による持続的注視の効 果を見るために, 表2・2 を作成した. ASとTSの表情の 各組み合わせごとに, 持続的注視(25秒間注視)条件とコ ントロール( 1秒間注視)条件のそれぞれについて平均 RTを求め(TSの提示回数についてはデータを集計) ,

後者から前者をヲ川、た値を求めた. 分散分析の結果, ま ずAS として “怒り" の倒立顔を持続的注視した場合,

TSとして “驚き" を判断した場合のRTが有意に遅延し (F= 10.59, df= 1/20, pく.01), TSが “怒り" の場合も反 応時間が有意に遅延した(F= 9.23, df= 1/20, pく.01). 次 にASとして “嫌悪" の倒立顔を持続的注視した場合,

その後の “幸福" に対する認知に有意な遅延が生じ(F = 15.41, df二1/20, pく.01), またTSが “嫌悪" の場合は遅 延が生じる傾向が見られた(F= 3.52, df= 1/20, pく.01).

実験Eの選択的順応効果が正立した顔の布置に特異的 かどうかを検証するため, 実験Hと実験Eの結果の比較 を試みる. 倒立顔を持続的に注視した結果, 後の表情認 知に遅延をもたらした倒立刺激は, I怒り」と「嫌悪」の 表情であることが分かる. 実験Eでは, これらは「幸福J

「嫌悪J I驚き」の表情であった. また, 影響が及ぶテス ト刺激の表情の組み合わせも倒立顔と正立顔では異なる ことが分かる. このことから, 画像としては正立顔と同 じ空間周波数や類似した傾き成分を含んでいるのにもか かわらず, 倒立顔では異なる遅延効果が得られることが 分かった. したがって, 実験Iでその存在が示唆された 処理系は, 正立顔の布置に特有な刺激構造により駆動さ れ, 表情に特異的な処理系の)1慎応が引き起こされた可能 性が高い.

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表2-2 倒立顔における表情認知反応時間の遅延表

各セルの符号は, 持続的注視によりRTが遅延したもの(ー)と 促進したもの(+)を示す. 左上の値は持続的注視条件の平均RT,

左下の値はコントロール条件の平均RT. 符号の上部の値は分散分析 のF値を表している. + ーのシンボルの大きさはF値の大きさに対応

している

Adaptation Stimuli (AS)

(∞H)

Happiness Surprise Sa也less Anger Disgust

934 900 907 941 969 -4・・J

Happiness 1. 41 O. 29 0.04 O. 08 15.41

*ヨド

902 883 906 932 891軍

839 737 821 795 837 ......... ..

0.05 O. 11 O. 47 10.59 2. 79

Surprise 一 一 一

** 773

832 723 812 743

1071 999 1110 1110 1090

O. 24 2. 28 2. 82 O. 34 0.01

Neutral 一 一 一 一 一

1060 945 1037 1096 1082

1042 900 974 1042 1048

Sa也less O. 11 O. 33 0.17 2. 24 1.68

一 + + 一

1040 945 994 967 1002

1125 1078 1066 1170 1089

Anger O. 00 O. 58 1.56 9. 23 1...31

+

*本

1119 1064 1155 1038 1028

1186 1092 1047 1223 1190

Disgust 0.03 0.00 0.00 1. 51 3. 52

一 司圃圃・・・圃・・・・・・

11198 1086 1040 1156 1102 +

hヮ\J

-・・25秒後平均RT (ms)

.,.・...分散分析F値

.... 1秒後平均R T (ms) 判-zgz∞相SH

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2・5持続的注視実験のまとめ

実験Iで述べたように, 今回使用した6つ の表情(“幸 福"・“悲しみ"・“驚き"・“怒り"・“嫌悪"・“中性")に対 する表情評定値の主成分分析により, “幸福" と “嫌悪"

を対極にもつ 「快-不快J 軸を第一主成分, “悲しみ" と

“驚き" を対極にもつ “覚醒-沈静" 軸を第二主成分と する表情の心的次元を意味する表情空間が得られた. こ れらは, 過去の研究者がSD法や類似度評定により抽出 した主要な軸 (Smith & Ellsworth, 1985) と一致する

ことから, 今回用いた顔刺激が表情空間を忠実に反映し たものであると考えることができる.

また実験Eから, “幸福" の表情を代表とする「快-不 快」の絶対値の高い顔を順応刺激として正立で持続的に 注視すると, 後にみる「快-不快」の絶対値のより低し 表情の認知に遅延をもたらすことが明らかになった. こ の結果は, 表情認知の基底となると考えられる「快一不

快」の次元に対して, 極性を持たない全般的な処理を行 うサブシステムが存在し, そのシステムは持続的注視に よって選択的順応を引き起こすことを示唆している. こ れに対し, I覚醒-沈静Jの性質のみを強くもつ「悲しみ」

の表情を持続的に注視しでも, 後の表情認知反応時間に 影響を及ぼさないことから, “悲しみ"の処理には持続的 注視に頑健な独自のサブシステムが駆動されている可能 性が考えられる.

実験皿では, 持続的注視による遅延効果が顔パタンに 特有のものであるかどうかを調べるため, 顔刺激を倒立 で提示して実験を行った. その結果, 倒立の顔刺激を持 続的注視すると, 明らかに正立顔の場合とは異なる遅延 効果が現れることが確認された. したがって, 実験Eで その存在が示唆されたサブシステムは, 正立顔の布置に

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特有な刺激構造により駆動され, 表情に特異的な処理系 の選択的順応が引き起こされた可能性が高いと考えられ る.

これまでの顔表情研究では, 表情刺激に対して被験者 が行う印象評定や類似性判断などから顔の表情を規定す る成分軸を抽出し, 各表情を空間上に配置する研究が多 くなされてきた(Smith & Ellsworth, 1985). また, 表情 判断に及ぼす先行刺激の効果については, たとえば, 幸

福の表情の後に悲しみの表情が提示されると, 悲しみの 印 象 が よ り強く評 定 さ れ る こ と な どが報告さ れ た 何hayer, 1980; Russell & Fehr, 1987). これらの研究は,

意味的 ・ 情動的判断を含んだ比較的高次の表情認知過程 を問題にしてきたといえる.

これに対し, 本研究では, 視覚処理のみに依存した低 次の表情認知過程が捉えられた可能性がある. 本研究で 採用された持続的注視法は, これまで視覚処理のチャン ネル特性やモジュール特性を解析するのに利用されてき た選択的順応の実験手続きを拡張したものである. 持続 的注視を行っている問, 被験者は特に意味的 ・ 情動的な 判断を課題として求められるわけではなく ただ提示さ れた刺激を注視する視覚処理を行ったのみである. その 結果, 表情認知過程に持続的注視によって順応を引き起 こす処理系と, 持続的注視に頑健な処理系の少なくとも

二つの処理系が関与する可能性が示された.

Adolphs et al.(1994) は , 左右両側頭の大脳扇桃核 (amygdala)を損傷した患者は, 特に “恐れ" の顔表情認 知や, 他の表情カテゴリー聞の細かな表情識別が健常者 に比べて困難であることを示した. 彼らは, 多次元尺度 構成法(MDS)によって導き出された顔表情の類似性空 間による健常者と損傷患者の比較を試みている. 彼らの 結果によると, 健常者の場合はすべての表情刺激がカテ ゴリーの並びを保ちつつ円を描くように分布している.

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これは, 同一カテゴリー内の二表情や異なるカテゴリ一 間の中間表情の細かな識別が行われていることを示して いる. これに対し, 肩桃核損傷患者から得られた類似性 空間では, 各刺激がカテゴリーごとに偏在した形となっ ている. しかしこの結果は, 損傷患者でも大まかなカテ ゴリーの分別は可能であることを示すと考えられる. 扇 桃核は, 脳内で主に情動を処理する情動系の部位として 知られているが, 基本的な顔表情の識別は, 肩桃核を損 傷していてもある程度可能であることから, 情動系が関 与しなくても, 視覚系の処理のみで顔表情を識別する段 階が存在していることを示す証拠となるであろう.

また, 顔表情に特異的に応答するニューロンの存在が 示唆されているが(Perrett et al., 1984; Nakamura et

al.,1992), 実験Hで「快-不快」軸の特性が強い “幸福"

や “嫌悪" の表情を持続的に注視すると, その影響が他 の特性がより弱い表情全般に及んだことから, “幸福"の 表情に応答するこユーロンの顔ノミタンに対する同調特性 は比較的ブロードなものであると考えられる. それに対 し, “悲しみ"を持続的に注視した場合の遅延効果が得ら れないことから, “悲しみ"の表情に応答するニューロン は比較的狭い同調特性を持つのではなし\かと推察される.

加えて, “幸福" などを処理するサブシステムが選択的 順応を引き起こすのに対し, “悲しみ"などを処理するサ ブシステムは, 持続的注視に頑健であるという今回の結 果について,生態学的妥当性の観点からの考察を試みる.

“幸福" は一過的に感じ取られでもよい, つまり周囲の 援助活動を喚起する必要のない表情であり, 対して “悲 しみ" は, 持続的に感じ取られなければならない つま り周囲の援助活動を喚起し続けなければならないような 表情であると考えられる.

さらに複数のサブシステムそれぞれは, 生得的に保持 しているものなのか, もしくは人聞が発達していく過程

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で獲得するものなのか, だとすればいつ頃どのような経 緯で獲得するものなのかについても, 発達心理学的な研 究発展が望まれる. Kestenbaum & Nelson(1990)は, 生

後7ヶ月の 乳幼児を被験者として表情識別に有効な情報 を調べる実験を行った. それによれば, 倒立顔では幸福 と恐れの区別が不可能であるが, 歯の見えない笑顔や怒 りから歯の見える笑顔を区別すると報告している. 彼ら の結果は,乳幼児が顔の表情を識別する際, “幸福"や“怒 り" などのカテゴリーに基づいて識別を行うというより

むしろ,視覚的に顕著な特徴(歯が見えるか見えなし\かな ど)の知覚にもとづいて識別を行っていることを示唆し ている. したがって, 本研究で明らかになった処理系が 視覚処理を反映しているのであれば, その処理系は, 発 達初期から機能している可能性も考えられる.

今後の展開として, 空間周波数成分を制御した顔刺激 パタンなどを順応刺激やテスト刺激に用いて, 持続的注 視法による実験を行えば,今回その存在が示唆された「快 一不快」処理系などのサブシステムの実在性および表情 認知への関与の仕方がより明確になるであろう. また,

持続的注視法を顔に関わる他の認知課題(個人同定課題 や性別判断課題など)に拡張していけば, それらの課題 やパタン処理にどのような視覚サブシステムが関与する かが明らかになり, 顔認知メカニズムの特殊性や他のパ タン処理との共通性をより詳細に追求することが可能に なるであろう.

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参照

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