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図書紹介

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Academic year: 2021

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図書紹介

 本書は、子どもたちが学校で自覚せずして何 を学んでいるのかを検討している。特に、子ども の学びを構成する環境(制度や慣習、学びを構成 する道具や教師の行為、子ども自身の文脈など)

を踏まえ、いかに子どもたちが自らの周りの環境 を意味づけるのかに注目している。

学びとは教授によって規定されるのではなく、

子ども自身が自らの周りの環境を独自に意味づけ ることでなされるという立場から、本書は書かれ ている。そのため、どのような教授がなされたか、

子どもがどのような反応したかではなく、その教 授を子どもがどう受け取ったか(意味づけたか)、

なぜ子どもはそのような反応をしたかに注目する。

この立場に立つことで、本書は子どもにとっての 意味という観点から子どもの学校での経験を捉え ることに挑戦している。

本書は、様々な場面・文脈における子どものふ るまいを検討している。第1章では、入学したば かりの小学1年生が、その後の3カ月でいかに「主 体的」に授業の成立へ協力するようになるのかを 検討している。第2章では、授業中に生徒が自身 の疑問をわきに置き、形式的な授業の成立に共謀 している事実を見出し、その背景を検討している。

第3章では、教室での「書き言葉」の学習場面を 検討し、「書き言葉」が目的を持たずただ教師か ら提示された課題を解決するための道具となって しまう場合もあることを見出し、その背景を検討 する。そこでの検討から「書き言葉」の学習が、

自らを捉えなおし、発達を支援する道具となるた めの示唆を提示している。第4章では、教室の建 物としての特徴や学級規模、子どもの日常生活の 空間・就学前施設の空間と学校の空間の違いから、

学校という特殊な空間でなされる子どもの学びを

捉えている。第5章では、教師の子どもの問題行 動への対応場面で生じるジレンマの構造を検討し、

子どもがなぜその行動をとるのかを捉えることが 必要であるとの主張を展開する。そして、具体的 な事例を検討し、子どもの問題行動の背景の一つ として、子どもが自らの居場所を作るための交渉 の 結 果 と い う 視 座 を 提 示 す る。 第6章 で は、

ニューカマーの生徒の学校での学びをもとに、異 なる文化を持つ子どもの経験を捉えている。そし て、ニューカマーの生徒が単に日本語を学んでい るだけではなく、授業参加を通じて、自らのアイ デンティティへの交渉を行っていることを見出し ている。最後に、第7章ではそれまでの章を受け て、授業や教育実践をどのように捉えるべきかを 論じている。

著者の石黒が書いているように、本書は「限ら れたエピソードを通して一学習実践研究者が観た 世界を開陳しているだけのもの」(p.15)かもしれ ない。その意味では、本書は石黒の認識枠組みの 下、石黒が観た教育実践を対象に考察されており、

子どもが何を学んでいるのかについて限定的な知 見を提示するにとどまる。しかし、本書が提示す る立場と具体的なエピソードから見出された視座 は、教師や研究者など教育関係者が子どもにとっ ての学びを多角的に捉える助けとなる。本書の拓 いた次なる課題は、教育関係者が自らの見え方を 自覚・共有し、議論することでより子どもの側か ら見た学びを重層的・多角的に捉えること、そし て、そこでの知見を教育実践へつなげていくこと だろう。そのための視座を本書は提示している。

本書は、学びが行われている場と文脈を踏まえ、

子どもの側から学びを捉えるための視座を提示し ており、子どもにとっての学びを豊かにしようと 奮闘している教育関係者の一助となる良書である。

石黒広昭著

書評『子どもたちは教室で何を学ぶの か―教育実践論から学習実践論へ』

東京大学出版会 2016年2月 A5判 256頁 ¥3,672(税込)

大越健斗(東京大学大学院)

図書紹介

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