住民参加型在宅福祉とコミュニティ
一一相互扶助的生活問題処理と意識構造一一
江 上 渉
1 .住民参加塑在宅福祉サービスと相互扶助
小稿は、住民参加型在宅福祉サーピス提供活動を「素人の住民による相互扶 助的生活問題処理」と位置づけ、この活動への参加者の意識を探ることを目的
としている
O住民参加型在宅福祉サービスは、「地域住民の参加を基本として公社・事業 団、社会福祉協議会、生活協同組合、住民自主組織など非営利を組織理念とす る団体の行う家事援助やホームヘルプ等の在宅福祉サービス(活動) J ( 1 ) と 定 義される。その特徴は、第一に非営利性を貫いていること、第二に、サービス の受け手が低廉な利用料を払いサービスの供給者は報酬を受け取るという形で 金銭を介在させる有料制、有償制をとることである(ただし、サービス提供者 が活動時間を点数として預託する場合もある)。第三には、サービスの受け手・
供給者とも組織の会員となる会員制度をとる場合が多い(ヘ
組織形態はまちまちであるが、おおよそ次のように類型化されている ( 3 ) 口第
一は、「互助型組織」と呼ばれ市民の手によって自発的活動として運営される
タイプ、第二は、「行政関与型」で、自治体が関与しながらも公社や事業団の
ように独自の組織化がなされるタイプである
O第三は、「社協運営型」で市区
町村社会福祉協議会活動の延長線上に事業化されるタイプ、第四は、生活協同
組合や農業協同組合などの事業の延長線上にあるタイプ ( f 協同組合運営型J ) 、
第五は、保育園・老人ホームなどの施設がその専門的資源を生かしていくタイ
1 1 2 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
プ ( i 施設運営型 J ) である
Oこの他にも、労働省の補助を受けて地域婦人団体 連合会が実施している「ファミリー・サービス・クラブ」事業などがある。全 国社会福祉協議会が1988 年 1 1 月現在で調査した結果では、全組織として 200 が 把握されている
Oそのうち互助型組織が60 、社協運営型が6 1 で両者あわせて全 組織の約 6 割にのぼる
O協同組合運営型は 2 3 であり、行政関与型 1 4 、施設運営 型6 、その他3 5 となっている ( 4 ) 。
このような住民参加型と称される在宅福祉サービス提供活動が、コミュニ ティ・ケアのー形態として重要な役割が期待されていることはいうまでもな い。しかし、同時にコミュニティ論の視野からすれば、住民参加型の在宅福祉 サービス提供活動は「キ目互扶助的生活問題処理」として位置づけられる
O都市的生活様式論において、相互扶助的生活問題処理は生活問題の共同処理 の様式として、専門家・専門機関による専門処理と対置される
O倉沢進は地域 住民が共通に処理を必要としている生活問題を「共通・共同問題」と呼ぴ、こ れを処理する共同の様式の差異から村落的生活様式と都市的生活様式を、地域 社会を準拠とする共通・共同問題の処理システムとして措定した。すなわち、
村落的生活様式とは「非専門家ないし住民による相互扶助的な共通・共同問題 の共同処理」システム ( 5 ) であり、一方の都市的生活様式とは「専門家・専門機 関による共通・共同問題の専門的な共同処理」システム ( 6 ) である。
当然のことながら、現代都市の生活は i 高度に行政サービスや商業サービスと いう専門処理に依存している
Oこの意味で「生活の社会化」が進んでいるので あり、そこでは生活の利便性が向上してきたといわれる
O世帯や個人を単位と
して生起する様々な生活問題を処理できる専門サービスが発達してきたからで ある ( 7 ) 。しかし、一方では「諸倒人と専門的サービスの聞に、大きなギャップ が生じ、改めて相互扶助システムの必要性ないし有効性の問題が意識されるよ
うになった」川のも事実であり、「専門的処理システムによる問題処理には、
明白な限界があり、地域社会における素人の住民の相互扶助システムに、大き
な役割が期待されることになった」 ( 9 ) のである。ここに期待概念としてのコミュ
ニティが注目されることになる。すなわち、「素人の住民の相互扶助的な問題
処理のシステムの回復が、コミュニティ形成の柱であるわけであるが、……専
門機関による問題処理システムのなかに、それをサブ・システムとしていかに 組み込むかという点 J ( 1 0 ) が焦点であり、コミュニティ形成のカギのひとつは どのような相互扶助システムを、いかように創造できるかというところにある
Oこの議論は、地域社会を準拠とするシステムレベルの議論である
Oこれを個 人の活動レベル(行為レベル)でとらえなおせば、次のように住民参加型在宅 福祉サービス提供活動を理解することができょう
O住民参加型在宅福祉サービ ス提供活動は、在宅の高齢者や障害者(児)本人やその家族のかかえる問題を
「地域社会における素人の住民の相互扶助 J によって処理するという意味にお いて相互扶助的生活問題処理に相当する
Oさらに、在宅福祉サービスが「地域社会における素人の住民の相互扶助 J に よって提供されるという住民参加型活動の特徴は、コミュニティ形成のキイで ある専門サービスと相互扶助との関係性を問うている (11)O これは、コミュニ ティ論にとって重要な論点である。システムレベルにおいて上述のような問題 提起がなされながら、これまでほとんど煮つめられていない論点といえよう
O小稿においては、この論点を展開する予備的考察として相互扶助的生活問題処 理に限定して、コミュニティ形成の活動とその担い手、小稿に即して言えば、
住民参加型在宅福祉サービス提供活動とその担い手に議論の焦点を置くことに したい。特に、活動の背後にある担い手の意識を探ることを通して、活動の性 格を理解していきたい。
すでに明らかなように、相互扶助的生活問題処理には 2 つの側面を持ってい る 。 1つは村落の共同の様式の典型であり、 1つは期待概念としてのコミュニ ティにおける共同の様式である
O都市化の過程で次第に前者が失われ、そこに 生活の社会化が進展してきたのであるが、後者は前者の模倣あるいは単純な再 生ではないはずである
Oしかし、現実には両者の区別は大変っけにくいといっ てよいだろう
O小稿は、担い手の意識から活動自体の性格をある程度把握しよ
うとする試みである O
1 1 4 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
2. 相互扶助の担い手
相互扶助的生活問題処理が、理念型的には村落に特徴的な生活問題処理様式 であることは前述した口これは「ムラ」という共同体の中で、「山と水」 をめ ぐる共同のように農業生産に直結したものであったり、強制や服従を伴うもの であったり、儀礼的・規範的な意味を持ったりしながら実行されていたという 伝統を持つ口また、コミュニティに期待されている相互扶助的生活問題処理が 単に村落的な相互扶助の模倣や再生ではないこともすでに述べた通りである。
従来、都市化の過程で近隣に代表されるような第 1次的関係は消滅していく とし寸仮説に対して、都市化が進展しでもそれは生き残るという反証があげら
れてきた (12)O わが国では神島二郎が『近代日本の精神構造』において、既成
の「第一のムラ」が都市社会にも生き延びていること、それを「第二のムラ」
と呼んだことは周知のとおりである(1 3 ) 。また、 ドーアは東京での参与観察的 業績である『者 S [ 市の日本人』で、村落的な秩序が都市生活においても生きてい ることを明らかにしている口例えば、「いろいろな力が都市生活を匿名化し原 子化しようとしているにもかかわらず・・・・・・、主婦たちはしばしば、都市生活 よりはむしろ村落生活にふさわしい親しい間柄を、隣人とのあいだにとりむす んでいる」 ( 1 4 ) と述べている O その原因を分析する中でドーアは「彼女らの多 くが、近隣関係の親密な、小さな固定的な共同体の中で育ったという事実」を あげ、 司 H I 同
フオ一マルなエチケツトが発達していて、それが都市生活のモデルになり、そ の基盤の上に新しい来従者を同イヒ J ( 1 5 ) したという。神島のいう「第二のムラ」
の状況を、者 5 [ 市生活の中に見いだしたものといえよう。
しかし、コミュニティ形成や相互扶助にとってより重要なのは 第 1次的関 係が失われたか残存しているかという論点ではすでになくなり、その質を問う
ことであろう
O例えば、ドーアが観察したような「村落のそれによく似た近隣
関係のフォーマルなエチケット」に基づく相互扶助が生きているのか、あるい
はこのような伝統を越えた相互扶助が展開しているのかという点である口いう
までもなく、コミュニティに期待されるのは後者であるというのが従来のコ
ミュニティ論にほぼ共通している見解といってよかろう(1 6 ) 口期待されている のは市民の存在であり市民の活動である O 例えば、コミュニティ政策の鴨矢と なった『コミュニティー一生活の場における人間性の回復』においては、コミュ ニティが「生活の場において、市民としての自主性と責任を自覚した個人およ び家庭を構成主体として、地域性と各種の共通目標をもった、開放的でしかも 構成員相互に信頼感のある集団 J ( 1 7 ) と定義された。これ以後も多くの場合に、
自主性・主体性・自立性・自律性をもった市民像がコミュニティの担い手とし て描かれてきている
Oコミュニテイの担い手としての市民は、具体的には次のような人間像として とらえられる O 「自分の生活上の利益を守るために行動できる主体的人問、他 大の立場を認め、必要に応じて共同の実践に参加できる連帯的人問、一定のルー ルに従う権利・義務の主体としての社会的人間 J ( 1 8 ) であり、その底流には倒 として自立した人間像がある
Oそして、「このような市民による、自主的創造 力による参加経験の蓄積がコミュニティの道を切り拓いていく J ( J 9 ) ことにつ ながる
Oドーアの観察は 1 9 5 0 年代の東京を舞台にしているが、今日でも相万
a扶 助的生活問題処理は、いわば村落的・伝統的なそれと市民的なそれとが、同時 存在しているであろう
Oこれは、住民参加型在宅福祉サービス活動の担い手に おいても変わらないのではないだ、ろうか。
以下本稿では、事例として東京郊外・調布市において住民参加型在宅福祉 サービス活動を担っている人達を対象として実施した標準化調査の結果をもと に、その意識を探りながら相互扶助的生活問題処理について考察を加えていき たい。
3 .調査の対象と方法
調査の対象は調布市在宅福祉事業団(以下では「事業団」と略記する) ( 2 0 )
の協力会員であり、調査は 1 9 9 0 年 1 月から 2 月にかけて実施した (21)O
事業団は、先に述べた住民参加型在宅福祉サービス活動の類型でいえば行政
関与型である
O事業団への登録によって会員となるが、会員はサービスの受け
1 1 6 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
手である利用会員とサービスの提供者である協力会員からなる
O小稿が調査・
分析の対象としたのは、サービス提供の主体である協力会員である
O事業団は 1 9 8 8 年 8 月に設立され、調査時点での会員数は協力会員が 1 4 7 名、利 用会員が 1 2 7 名であった。協力会員が提供しているサービスは、主として在宅 老人世帯に対する家事援助サービスと介護サービスである
O一部障害者(児) の援助などを含むが、主体は独居・同居の在宅老人世帯へのサービスと考えて
さしっかえない口
では、この調査結果をもとに協力会員(以下「会員」という)のプロフィー ルをみていくことにしよう(表 1を参照)。
[性別]
女 性
男 性
[年齢]
3 9
歳以下40‑49
歳50‑59 歳 60‑69
歳7 0 議 以 上
[職業の有無] 職業あり 職業なし
[学歴]
義 務 教 育 高 等 学 校 短 大 ー 高 専 大 学 以 上
表 1 協力会員のプロフィール
1 3 1 ( 9 2 . 9 ) 1O( 7 . 1 )
2 0 ( 1 4 . 2 ) 3 2 ( 2 2 . 7 ) 6 2 ( 4 4 . 0 ) 25 ( 1 7 . 7 ) 2 ( 1 . 4 )
5 1 ( 3 6 . 2 ) 9 0 ( 6 3 . 8 )
1 5 ( 1 0 . 6 ) 7 1 ( 5 0 . 4 ) 2 3 ( 1 6 . 3 ) 3 2 ( 2 2 . 7 )
[世帯収入] 1 0 0 万円未満 1 0 0 ‑ 3 0 0 万円 300‑500 万円 5 00 ‑ 7 0 0 万円 7 0 0 ・ 1 . 000 万円
噂 1 立 . 人 ( % )
3 ( 2 . 1 ) 1 5 ( 1 0 . 6 ) 2 1 ( 1 4 . 9 ) 3 2 ( 2 2 . 7 ) 3 6 ( 2 5 . 5 ) 1 . 0 0 0 ・ 1 . 5 0 0 万円 2 4 ( 1 7 . 0 ) 1 . 5 0 0 万円以上 1 0 ( 7 . 1 )
[態度決定地]
調布市内 1 1 ( 7 . 8 ) 5 0 ( 3 5 . 5 )
[居住年数 l
東京都内
その仰のr. 1 ¥ i n m ¥ 4 1 ( 2 9 . 1 ) その他の農村部 3 9 ( 2 7 . 7 )
3 年未満 1 1 ( 7 . 9 ) 3 ‑ 5 年 1 1 ( 7 . 9 ) ト 1 0 ' .
手1 9 ( 1 3 . 6 ) l ト 2 0 年 4 1 ( 2 9 . 3 ) 21‑30 年 3 0 ( 2 1 . 4 ) 3 0 年以上 2 8 ( 2 0 . 0 )
(注) r わからない・答えない」を除く
はじめに会員の性別であるが、これは圧倒的に女性が多し
) 0年齢別にみると 5 0 歳代をピークにして 40 歳代、 6 0 歳代が中核をなしている。 40‑60 歳代を合計 すると全体の約85% を占めている。現在、何らかの収入を伴う職業(事業問活 動は除く)を持つかどうかをたずねたところ、有職が36% 、無職が64% であり、
ほぼ 3 分の 1 が職業をもちながら事業団へも参加している。学歴は高等学校卒 が最も多く半数を占める
O大学卒以上の学歴を有する会員も 20% 強である。世 帯収入(年収)では、ピークが700‑1 , 000 万円層であり、比較的高収入である といえよう。中学校卒業時点での居住地(態度決定地)は、東京以外のほうが 過半を越える
O東京都内(調布市内を含む)が 43% であり東京以外が57% であっ た。また、調布市内での居住年数はかなり長いといってよいであろう o 20 年を 越す会員が4 割以上であり、 1 0 年を越す会員まで含めると 6 割を越える
Oこの調査では会員の意識分析のために次のような 1 0 項目を用意した。これは 相互扶助としての在宅福祉サービス提供活
a動の担い手の意識を、伝統的な意識 と自主的自律的なものとに区別しようとする目的で設定したものである。そし て、質問項目のそれぞれについて「そう思う J r まあそう思う J r あまりそう思 わない J r そう思わない」の4 段階での評価を求めた。
ア.となり近所のうわさぱなしを気にするより、なるべく広く社会ので、
きごとを知る方が大切だ。
イ.人とは違う生き方でも、自分の信念に基づいた生き方をしたい。
ウ.親しくなればなるほど、プライパシーにまで踏み込んだっきあいに なるのは当然だ。
エ.友だちづきあいの上で大切なのは、趣味や関心が一致することだ。
オ.趣味や関心が異なっても、近所の人とのつきあいは大切にしなけれ ばならない。
カ.集団で行動するときは、自分だけ目立つよりもみんなと一緒に行動 するほうがよい。
キ r 長いものには巻かれろ」という生き方はよくない口
ク.人と意見が違う場合には、議論をするよりも和を大切にするほうが
よ し
) 0住民参加型在宅福祉とコミュニティ 1 1 8
町内の行事や活動に積極的に参加するのは住民の義務だ。
ケ.
いつの世の中でも大切な 近所の人どうしがお互いに助け合うのは、
ことだ。
コ
この 10 項目の単純集計結果は表 2 に示したとおりである
O単純集計結果 表 2
単 位 : 人 (
9 6 ) E 十 4 う fM
ぃ合
あ t り f う fM~1
t あ そ う E う f
フE う
項 目
1 4 1 2 ( 1 .
4)3( 2.1) 62(44.0)
74(52.5) 鐙味関心が遣っても近所づきあいは
大切にしな』すればならない
1 4 1
1 4 1 I ( 0.7)
4 ( 2.8) O( 0.0)
8(
5.7) 43(30.5)
51(36.2) 97(68.8)
78(55.3) 近所の人どうしがお互いに助け合うのは.
いつの世の中でも大切なことだ 集団で行動するときは自分だ付目立つよりも
みんなと一緒がよい
町内の行事や活動には積極的に参加するのは住民の線務だ 20(14.3) 67(47.9) 46(32.9) 7( 5.0) 1 4 0 1 4 0 4 ( 2.9)
8 ( 5.7) 5IC36.4)
77(55.0) 人とは違う生き方でも、自分の信念に基づいた生き方をしたい
1 4 1 5 ( 3.5)
33(23.4)
4 4 < 3 1 . 2 )
59(4 1 . 8 )
「畏いものには巻かれろ」という生き方はよくない
1 4 1
。 ( 0.0) 4( 2.8)
32(22.7) 105(74.5)
となり近所の噂を気にするより、
なるべく広〈社会のできごとを知るほう.が大切だ
1 4 1 1 4 ( 9.9)
48(34.0) 52(36.9)
27(19.1 ) 人と意見が違う場合には、議論をするよりも
和を大切にするべきだ
1 4 1 57(40.4)
46(32.6) 25(17.7)
1 3 ( 9.2) 親しくなればなるほと:、プライパシーまで
踏み込んだつきあいになるのは当然だ
1 4 0
4 .
29(20.7) 45(32.1 )
45(32.1) 2 1 ( J 5 . 0 )
友だちづきあいで大切なのは鍾昧や関心が一致することだ
戸 庁
i R 1
分
上記の 10 項目にわたる意識調査項目に因子分析をほどこし変数を集約する 意識の背後に隠れた要因をさぐることにした。
と同時に、
ここでは主因子法(因子抽出の際の繰 因子分析の手法はさまざまであるが、
因子抽出後に直交パリマックス法により因子を回転し を採用し、
り返しあり)
この因子 回転後の因子負荷量は表 3 の通りとなった O
負荷量をもとに因子の解釈を試みたい。
この結果、
ている ( 2 2 ) 。
表 3 因子分析の結果(因子負荷量・因子寄与率)
J f t 日 共通性
0 . 8 1 4
ただちづきあいで大切なのは組味や関心がー
3 3 . 8 2
第 1 因子は因子寄与率が 17.04% で 3 因子の中では最も高い。この因子と特 に強い関連をもっ変数は、「趣味関心が違っても近所づきあいは大切にしなけ ればならない J I 近所の人どうしがお互いに助け合うのは、いつの世の中でも 大切なことだ」の 2 つであり、第 1 因子の中核を成すのは規範として近隣での 相互扶助を尊重する意識と考えてよかろう
Dまた、「町内の行事や活動には積 極的に参加するのは住民の義務だ」という変数との関連も同様のことを示して いる。一方、「集団で行動するときは自分だけ目立つよりもみんなと一緒がよい」
という変数との関連も強く、これは集団の中に佃が埋没しているほうが行動し やすいという集団主義的意識のあらわれと解することができる O したがって、
第 1因子は、集団主義意識を背後に持ちながら、近隣の相互扶助を尊重する意 識という意味で「近隣集団主義意識 J と呼ぶことにしたい。
次に第 2 因子であるが、これは「人と違う生き方でも、自分の信念に基づい た生き方をしたい J I If'長いものに巻かれろ』という生き方はよくない J I とな り近所の噂を気にするより、なるべく広く社会のできごとを知るほうが大切だ、 J
という 3 変数と正の関連を持ち、反対に第 1 因子とは正の関連をもっていた「集
団で行動するときは自分だけ目立つよりもみんなと一緒がよい」とは負の関連
を持つ。さらに「人と意見が違う場合には、議論をするよりも和を大切にする
1 2 0 住民参加型在宅福祉とコミュニティ
べきだ」とも負の関連をもっている
O各変数とのこのような関連の持ち方から 総合的に考えると、第 2 因子は自律的な個人を尊重する価値観に裏づけられた 意識と考えるのが適当ではなかろうか。従って、第 2 因子は「自律性因子」と 呼ぶことにする
O第 3 因子は表 3 からわかるとおり、 2 つの変数との関連が高し
) 01 つは「親 しくなればなるほど、プライパシーにまで踏み込んだっきあいになるのは当然 だ」であり、もう l つは「友だちづきあいで大切なのは趣味や関心が一致する ことだ」である
Oこの因子は、交際における親密性と、友人との交際における 選択性との両方を表現しているようである
O選択的交際の中ではプライパシー にまで踏み込んだっきあい方も容認するということであろうか。いずれにせよ 解釈は難しい。
以下の分析では比較的性格のはっきりとした第 1 因子と第 2 因子の 2 つの因 子に注目していきたい。これは因子の性格が明瞭であるということだけが理由 ではなし」先に述べたように、村落的あるいは伝統的な人間関係の持ち方を意 識の側面から第 1 因子は表現し、第 2 因子は主体的・自律的な個人を前提とす る市民的意識を表現していると考えられるからである
O事業団活動に協力会員 として参加する人たちからこの両方の意識が分離されたことは、相互扶助とし ての住民参加型在宅福祉サービス提供活動を考察する上で大変興味深い。
さて、分析の第 2 段階は次のような手)II~ で行いたい。第 1 因子すなわち近隣
集問主義と第 2 因子すなわち自律性とが対象者の基本的属性とどのような関連 をもっているかをさぐる
O近隣集団主義や自律性のかたちで表現される意識の 担い手はどのような層であるかを明らかにしようとするのである。このために 凶子分析の過程で得られる因子得点を被説明変数として用いる ( 2 3 ) 。この際、
対象者ごとに算出される因子得点を第 1 因子(近隣集団主義)、第 2 因子(自
律性)ともに正の値と負の値に 2 分割した。つまり、個々の対象者について近
隣集団主義的意識を持つ者 ( f 近隣集団主義十 J ) とそうでない者 ( f 近隣集団
主義一 J ) および自律的意識を持つ者 ( f 自律性十 J ) とそうでない者 ( f 自律性
一J ) に類別するわけである
Oさらに、近隣集団主義および自律性のかたちで
表現される意識の相互関係についても分析を進めることにする。
相互扶助意識(近隣集団主義 ) X 年齢 表 4
単 位 : 人 ( % )
近 隣 集 団 主 義 = = ロ
ム ーA
t:J+
年 齢
noqδn6
3 4 5 24(63.2)
17(39.5) 20(34.5) 14(36.8)
26(60.5) 38(65.5) 45 歳以下
4 6 ' " ' ‑55 歳 出歳以上
139 61
Ll 78
‑ 2‑
ロ
A
口
f わ か ら な い ・ 答 え な い J 2
x 二 乗 検 定 の 結 果 P. < 0.05. V=.242
相互扶助意識(近隣集団主義 )X 学 歴 表 5
単 位 : 人 ( % )
近 隣 集 団 主 義
言 十
A
t:J+ 歴
学
5 9 3 2
唱
i 氏
Uワ
M n φ
6(40.0) 24(34.8) 11(47.8) 20(62.5) 9(60.0)
45(65.2) 12(52.2) 12(37.5) 義 務 教 育
高 等 学 校 短 大 ・ 高 専 大学以上
61 139
ふ ー
78
=
=
A ロ
ロ
「 わ か ら な い ・ 答 え な い J 2
x 二 乗 検 定 の 結 果 p.< 0.10. V=.225
住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
1 2 2
相互扶助意識(近隣集団主義 ) X態度決定地 表 6
単 位 : 人 ( % ) 近 隣 集 団 主 義 4
1
吾 司
ぷ L ロ
+ o 態 度 決 定 地
n ョ 'in3 FHU84 ・
n J
3 3 ( 5 5 . 9 ) 1 6 ( 3 9 . 0 ) 1 2 ( 3 0 . 8 ) 2 6 ( 4 4 . 1 )
2 5 ( 6 1 . 9 ) 2 7 ( 6 9 . 2 )
東 京
そ の 他 の 都 市 部 そ の 他 の 農 村 部
自 十
ぷ 〉 、
ロ 6 1 1 3 9
「 わ か ら な い ・ 答 え な い J 2
x 二 乗 検 定 の 結 果 p. < 0.05. V=.218
7 8
はじめに近隣集団主義である。対象者の基本的属性項目のうち、近隣集団主 義と有意な関連をもつものを拾い上げると年齢、学歴、態度決定地などがある。
年齢では表 4 からわかるとおり、近隣集団主義について正の値 ( r 近隣集団主 をとるのは 46‑55 歳と 5 6 歳以上の年齢層であり、逆に負の値 ( r近隣集 義 + J )
同主義一 J ) をとるのは 4 5 歳以下の年齢層である。非常にラフな区分ではあるが、
4 5 歳以下の層を「戦後生まれ世代」、 46‑55 歳の層を「戦中生まれ世代」、 5 6 歳 以上の同を「戦前生まれ世代」と名づけるならば、戦前・戦中生まれ世代が近 隣集団主義的意識を強く持ち、戦後生まれ世代はこれが低いということになる口 近隣集団主義と学歴の関連では、高等学校卒業の層にもっとも近隣集団主義 これより高学歴になるほど低くなる傾向があらわれた。当然の 的意識が強く、
( 表 5 )。また、
ことながら近隣集団主義的意識が低いのはこれと反対になる
対象者が中学校を卒業する時点までをもっとも長く過ごした地域を態度決定地 と呼ぴ、今回の集計では「東京都内(調布市を含む )J 、「その他の都市部 J r そ これは対象者の社会化の過程で都市的生 活様式と村落的生活様式のどちらを主に体験してきているのかを類推する目的 をもっている (24)D 結果、近隣集団主義的意識が高いのは東京以外を態度決定 の他の農村部」という区分を用いた。
これが低いのは東京を態度決定地とする層であることがわ
地とする層であり、
( 表 6)0 かった
しかし、態度決定地と年齢との聞に交互作用が存在することも明らかである
Oすなわち、 4 6
.,....5 5 歳層においては近隣集団主義と態度決定地の関連が特に強く、
東京以外の都市部・農村部が態度決定地である対象者は東京を態度決定地とす ( 表 7)0
る対象者よりも近隣集団主義的意識が極めて高いのである
相互扶助意識(近隣集団主義 )X 態度決定地 [ 4 6 ' " ' " ' 5 5 歳]
表 7
単 位 : 人 ( 9 6 ) 近 隣 集 団 主 義
言 十
」弘、
cl
+
態 度 決 定 地
ワーヮ
r n u d
‑ ‑
' ・
‑ 4 a
︐..
1 1 ( 6 4 . 7 ) 2 ( 2 8 . 6 ) 4 ( 2 1.1)
6 ( 3 5 . 3 ) 5 ( 7 1 . 4 ) 1 5 ( 7 8 . 9 )
東 京
そ の 他 の 都 市 部 そ の 他 の 農 村 部
4 3 1 7
2 6
41 = ヨ ロ
A cl
P.< 0.05. V=.420 X 二 乗 検 定 の 結 果
相互扶助意識(自律性) X 年齢 表 8
単 位 : 人 ( 9 6 )
' 律 性
自 ←
I
S ‑ ‑
ロ A
+ 口
齢 年
noqdno n
︐δ 吊品IFhu
1 4 ( 3 6 . 8 ) 1 5 ( 3 4 . 9 ) 3 7 ( 6 3 . 8 ) 2 4 ( 6 3 . 2 )
2 8 ( 6 5 . 1 )
2 1 ( 3 6 . 2 ) 4 5 歳 以 下
4 6 . ‑ . . . . ‑5 5 歳 5 6 歳 以 上
1 3 9 7 3 66
← f
= = ロ
A E コ
I わ か ら な い ・ 答 え な い J 2
x 二 乗 検 定 の 結 果 p. < 0.01. V=.277
1 2 4 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
表 9 相互扶助意識(自律性 ) X 学歴
単 位 : 人 ( % )
学 歴
自 律 性
ぷ 口 』 計
+
4 ( 2 6 . 7 ) 1 1 ( 7 3 . 3 ) 1 5 3 5 ( 5 0 . 7 ) 3 4 ( 4 9 . 3 ) 6 9 1 1 ( 4 7 . 8 ) 1 2 ( 5 2 . 2 ) 2 3 2 3 ( 7 1 . 9 ) 9 ( 2 8 . 1 ) 3 2 7 3 6 6 1 3 9
『 わ か ら な い ・ 答 え な い J 2
x 二 乗 検 定 の 結 果 ; P.< 0.05. V=.256
専
育 校 高 上 教 学
・ 以 務 等 大 学 義 高 短 大
←
l
z z u
A
ロ
表 1 0 相互扶助意識(自律性) x 学歴 [ 4 6 . . . . . . 5 5 歳]
単 位 : 人 ( 9 6 )
自 律 性
学 歴 合 ‑ 言 口 ふ l
+
義 務 教 育 高 等 学 校 短 大 ・ 高 専 大 学 以 上
o ( 0 . 0 ) 1 5 ( 7 5 . 0 ) 2 ( 2 2 . 2 )
1 1 ( 9 1 . 7 )
1000.0}
5 ( 2 5 . 0 ) 2 0 7 ( 7 7 . 8 ) 9
I ( 8 . 3 ) 1 2 1 5 4 3
A.
r::J言 十 2 8
X 二 乗 検 定 の 結 果 p.<0.05. V=.602
表 1 1 相互扶助意識(自律性 )X 態度決定地 [ 4 6 " ' 5 5 歳]
単 位 : 人 ( % )
自 律 ' 性
態 度 決 定 地 A cl 5 十
+
東 京
そ の 他 の 都 市 部 そ の 他 の 農 村 部
1 4 ( 8 2 . 4 ) 6 ( 8 5 . 7 )
8 ( 4 2 . 1 )
3 ( 1 7.6) 1 ( 1 4.3) 1 1 ( 57.9)
司
f
司I Q d
‑ z
i ‑
‑
A cl 言 十 2 8 1 5 4 3
x 二 乗 検 定 の 結 果 P.<0.05
,V=.430
表 1 2 相互扶助意識×年齢
単 位 人 ( . 9 6 )
近 隣 集 団 主 義 + +
年 齢
azn ふl
A
口A c
ロS =
l T自 律 性
十+
9 5 1 5 9
( 2 3 . 7 ) ( 1 3 . 2 ) ( 3 9 . 5 ) ( 2 3 .
7)1 6 1 0 1 2 5 ( 3 7 . 2 ) ( 2 3 . 3 ) ( 2 7 . 9 ) (11. 6 ) 1 3 2 5 8 1 2 ( 2 2 . 4 ) ( 4 3 . 1 ) 03.8) ( 2 0 .
7)3 8 4 0 35 26
「 わ か ら な い ・ 答 え な い 2
X 二 乗 検 定 の 結 果 : p.<O.Ot. V=.255
3 8 45 議 以 下
4 6 ‑ ‑ ‑ 5 5 歳 4 3
56 歳 以 上 5 8
1 3 9
1 2 6 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
次に、自律性についてである D 自律性因子については年齢と学歴との聞に有
意差のある関連がみられた。年齢は 46~55歳の層と 45歳以下の層、つまり 55歳以下の年齢層において 5 6 歳以上の年齢層よりも自律性の高い意識が測定された ( 表 8)0 また、学歴では大学卒業以上の高学歴者の自律性が高く、義務教育 修了では低い。高等学校卒業および、短大・高専卒業は両者の中間にある
Oした がって、ほほ高学歴になるほど自律性も高くなる傾向にあると判断してよいだ ろう(表 9 。 )
ただし、年齢と学歴は自律性に対して交互作用を持つ。表1 0 に示したとおり、
46‑55 歳の層において学歴と自律性は、クラマーの関連係数で見るかぎり、原 相関よりも強い関連をもっていることがわかる。大学卒業以上および高等学校 卒業層の自律性がかなり他よりも高いのである
Oさらに、態度決定地についても原相関では有意な差はみられなかったが、年
齢をコントロールすることによって 46~55歳層において東京および他の都市部
を態度決定地とする者に自律性が高く、その他の農村部では低いということが わかった(表 1 1 ) 0
5 . 結果と考察
現に住民参加型在宅福祉サービスの提供という相互扶助的生活問題処理に従 事する人たちの意識を分析してきた。その結果、 2 つの意識的側面、すなわち 近隣集団主義と自律性の担い手はかなりその社会的属性を異にすることが発見 された。このことをより明確にするために、上で用いた近隣集団主義+、ーと 自律性+、ーを組み合わせた 4 分類によって年齢、学歴、態度決定地との関連 をいま一度確認しておくことにしたい。
年齢についてはっきりとあらわれた傾向は、「近隣集団主義+自律性一」の
場合は年齢が上がるほどその比率が増し、逆に「近隣集団主義一自律性 +J で
は年齢が下がるほど比率が増すことである(表 1 2 ) 0 学歴との関連についても
ほぼ同様の指摘ができる。すなわち、「近隣集団主義+自律性 ‑ J は学歴が低
いほど、「近隣集団主義一自律性 +J は学歴が高いほど、それぞれの比率が高
表 1 3 相互扶助意識×学歴
単 位 : 人 ( 9 6 )
近 隣 集 団 主 義 + +
学 歴 一一一一……一一一一一一ーー一一一一一一一ーーー一一一一一一一一一一 一一一 合 計
自律性 + +
3 6 5
(20.0) (40.0) ( 6 . 7 ) (33.3) 22 23 1 3 1 1 ( 3 1 . 9 ) (33.3) ( 1 8.8) ( 1 5.9)
5 7 6 5
( 2 1 . 7 ) (30.4) ( 2 6 . 1 ) ( 2 1 . 7 )
8 4 1 5 5
(25.0) ( 1 2.5) (46.9) ( 1 5.6) 38 40 35 26
「 わ か ら な い 答 え な い 2
X 二 乗 倹 定 の 結 果 : p.<O.10. V=.200
義 務 教 育 高 等 学 校 短 大 ・ 高 専 大 学 以 上
A
E コ 言 十
表 1 4 相互扶助意識 X 態度決定地 [ 4 6 " " ' 5 5 歳]
単 位 : 人 ( 9 6 )
1 5 6 9 2 3 32
1 3 9
近 隣 集 団 主 義 + +
態 度 決 定 地
自律性 + +
5 9 2
(29.4) 5.9) (52.9) 01 . 8 )
4 2 O
( 5 7 . 1 ) ( 1 4.3) (28.6) ( 0.0)
7 8 3
(36.8) ( 4 2 . 1 ) 5.3) 05.8) 1 6 1 0 1 2 5
X 二 乗 検 定 の 結 果 p.<O.05. V=.415
東‑ 尽
そ の 他 の 都 市 部
その他の農村吉I~A
CI 5 十 43
合 計
1 7 7 1 9
い(表 1 3 ) 0
相互扶助という行為を考察するにあたって、その背後にある意識と年齢、学 歴との関連は重要である。年齢は、帰属的地位としての年齢が直接作用すると
は考えにくく、出生時期による教育経験、あるいは教育内容、社会的環境など
1 2 8 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ
の相違が年齢を媒介にして表現されたものであろう
Oこのような類推を可能と する根拠は、学歴との関連にみられた傾向である
Oすなわち、教育程度の差が 相互扶助意識の差として顕著にあらわれた。一種の教育効果として、自律性が 培われていることは否定できないだ、ろう
Oただし、すでに指摘したとおり、年 齢と学歴には交互作用が認められ、とりわけ 46‑55 歳の年齢層が特殊な位置に あるといえよう
Oこの年齢層は戦後教育のいわば 1期生であり、高度経済成長 期に思春期・青年期を過ごしてきており、産業化・都市化という急激な社会変 動を経験してきている世代である
O産業化・都市化にともなう地域移動という要因も看過することができない。
態度決定地の効果が 46‑55 歳の年齢層に強くあらわれたこと(表 1 4 ) は、産業 化・都市化にともなう激しい地域移動と無関係ではない。そして、より重要な のは幼少期・少年期に体得した共同の様式が、成長した後の意識にも影響を残 すのではないかということである
Oこれはあくまで現時点での仮説であるが、
幼少期・少年期に生き生きとした相互扶助を経験あるいは見聞した場合とそう ではない場合とでは、相互扶助的行為に対する態度が異なるのではないか。態 度決定地による意識の相違はこうしたことを示唆している
Oとりわけ、小稿で いう近隣集団主義は近隣での相互扶助を経験しているか否かによって、相互扶 助に対する意識としてのあらわれ方が異なると考えられるのではなかろうか。
さて、住民参加型による在宅福祉サービスの提供という相互扶助的生活問題 処理への参加者の意識が少なくとも近隣集団主義と自律性に 2 分されること、
それぞれの担い手層が、一部で重なり合いながらもかなり異なる人々であるこ とを明らかにしてきた。最後に近隣集団主義に支えられる相互扶助と、自律性 を背後にもつ相互扶助について言及しておきたい。
従来、相互扶助に込められていたイメージは「助け合い」であり、近隣レベ ルでの「助け合い」が強調される傾向にあった。伝統的な相互扶助である。在 宅福祉サービスの提供にしても「いずれ自分が世話になるかもしれないから、
元気なうちにできることをしておきたい」という参加動機をもっ場合が少なく
ない。「情けは人のためならず、」という発想である
Oこれは、参加動機として
説得力をもっ
Oそして、まさにその背後にあるのは近隣集団主義であろう口近
隣集団主義と強い関連をもっ意識項目を再度あげるまでもない。
しかし、相互扶助について社会的広がりをもった考え方も可能であることが 今回明らかになった。自律性は「自主的創造力」に根ざした相互扶助の可能性 をきりひらいている
Oそこに不可欠なのは相互扶助によって取り組まれるべき 生活問題の対自的認識である
O単に「情けは人のためならず」という発想から
1 歩踏み出した相互扶助は、そこから始まる性格のものと考えられる
O最近、コミュニティの楼少化がいわれる (25)O コミュニティの位相は、都市 社会の大衆社会状況下で失われた第 1次的人間関係の回復を目標にする親交的 コミュニティと、地域住民の市民的連帯によって住民の直面する諸問題を自主 的・自治的に解決していくことを目標とする自治的コミュニティとがある ( 2 6 ) 。 あるいは、コミュニティを支えるボランタリー・アソシエーションのレベルに おいて、表出的指向にたち「文芸や趣味、スポーツなどを楽しむ仲間を組織し て活動し」、「基本的にはメンバ一個々の満足度に準拠する共楽的関係」にある 集団と、道具的指向にたって「メンバ一個々が自分の欲求をある程度犠牲にし ても共通の価値や目的のためにつくす」という共苦型がある ( 2 7)。これらの類 型は必ずしも親交的コミュニティから自治的コミュニティへとか、共楽型から 共苦型へという発展段階をたどるものと筆者は考えないが、コミュニティの媛 少化とは親交的コミュニティや共楽型の集団や活動に停滞している状況をさ す。このようなコミュニティ状況は、地域福祉の展開にとっても好ましいもの
とはいいがたい。
コミュニティの媛少化から脱するためには、今一度コミュニティの原点にた
ちかえり、地域社会において取り組むことのできる共通・共同問題としての地
域課題・生活問題を住民が対自的に認識できるてだてを講じることが、 1 つの
道ではないだろうか。
1 3 0 住民参加型在宅福祉とコミュニテイ 注
( 1 ) IT"多様化するホームヘルプサービス一一住民参加型在宅福祉サービスの可 能性をさぐる」全国社会福祉協議会、 1 9 8 9 年 3 月 、 7 0 ページ。
( 2 ) 同上。
(3) 同、 70~71 ページ。