研究ノート
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司書課程における2016年度「図書館実習」に関する調査
藤原 真以子(文学研究科日本文学専攻)
1 調査方法および調査時期
本稿は、大学司書課程における「図書館実習」の開講状況をウェブ上から情報収集し、そ の結果をまとめたものである。
調査に際して、文部科学省が公表している「司書養成科目開講大学一覧」 (平成 27 年 9 月 1 日現在) (http://www.mext.go.jp/a̲menu/shougai/gakugei/shisyo/04040502.htm)
を参照し、ここに掲載されている 212 の大学を調査対象とした。実習の有無を調査するにあ たって、第三者の作成したページは使用せず、司書課程の説明ページ、サイトマップ、シラ バスなどの大学のサイトのみを参照した。
調査の手順は次の通りである。まず、検索エンジンで大学名を検索し、大学の公式サイト を探す。公式サイトのなかに、司書課程に関する説明ページがあり、2016 年度の「図書館 実習」開講状況に関する記載がある場合は、説明ページを参照した。
ページそのもの、あるいは実習に関する記載がない場合は、シラバスを参照した。シラバ ス内の検索機能を使用する際には、開講年度を 2016 年度に限定し、①授業名を「図書館実 習」として検索し、該当する授業があった場合はそのページを参照した。見つからなかった 場合は、②フリーワード検索でキーワードを「図書館 or 司書」として検索し、検索結果と して出てきた司書関連科目のシラバスに目を通し、「図書館実習」にあたる科目の有無を調 査した。これは、「インターンシップ」や「演習」といった大学ごとの独自の授業名で開講 されている「図書館実習」にあたる授業の検索もれを防ぐためである。
司書課程に関する説明ページおよび実習有無に関する記載がなく、シラバス検索の手順① と②のいずれにおいても「図書館実習」に相当する授業が見られなかった場合は、実習が行 われていないものとしてデータをまとめた。なお、シラバスは公開されているが、2016 年 度は開講されていない場合も、同様の扱いにした。
以上が、調査の方法である。本調査は、2016 年 6 月から 9 月上旬にかけて行い、ウェブ 以外の調査方法は一切使用せず、ウェブのみで収集した情報をまとめた。
2016 年度の「図書館実習」開講状況に関する調査結果は、川原亜希世氏らによってまとめ られた報告
1) がすでに発表されているが、本調査は川原氏らと同時期に行っていたものであり、調査方法が異なる。川原氏らは、第 1 段階として往復はがきでのアンケート調査を実施 し、第 2 段階としてアンケート調査を補うためにウェブ調査やメール、電話による問い合わ せを行っているのに対し、本調査ではウェブのみを情報源としている。検索もれやシラバス の閲覧ができなかったなどの理由から、川原氏らの調査結果と本調査の結果には相違が見ら れる。そこで、本稿では本調査の結果をまとめた後に、川原氏らの報告との比較も行いたい。
2 調査結果
ウェブ調査の結果、2016 年度に「図書館実習」に相当する授業を開講していたのは 68 大学であった。 「司書養成科目開講大学」212 のうち、約 32%が「図書館実習」を開講して いるといえる。
68 大学の内訳は、国公立・4 年制大学が 5、私立・4年制の大学が 44、公立・短大が 0、
私立・短大が 19 となっている。司書養成科目を開講している大学は、国公立・4 年制大学
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が 13 校、私立 4 年制大学が 143、公立・短期大学が 2、私立・短期大学が 54 であるため、
司書課程を設置している国公立・4 年制大学の約 38%、私立・4 年制大学の約 30%、私立・
短期大学の 35%が実習を実施していることになる。大学種別による開講率の差は大きくなく、
いずれも 3 割台である。
地域別に見てみると、以下の表のようになる。
表:地域別「図書館実習」開講大学数と開講率
地域別に調査結果を見ると、北海道・東北、関東・甲信越、関西での開講率が 3 割台、中 部・北陸、中国・四国での開講率が 2 割台であるのに対し、九州・沖縄での開講率は約 48%
と、他の地域と比較して高くなっていることが分かった。
以上のことから、調査データを整理した結果、大学の種別による「図書館実習」開講率に 特筆すべき差異はないこと、地域別に見ると、九州・沖縄の開講率が他の地域に比べて高い ということが明らかになった。
3 結果
前章では、本調査のデータを大学種別ごと、地域ごとにまとめ、「図書館実習」開講率を 割り出したが、ここでは第 1 章でも言及した川原氏らの調査との比較を行いながら全体のま とめを行いたい。
川原氏らは「図書館実習」の開講状況をまとめるにあたって、往復ハガキによる各大学へ のアンケート調査、ウェブによる調査、担当教員へのメール調査、大学への電話による問い 合わせを実施しており、情報の精度は非常に高い。そのため、本調査との比較を行うことに より、 「図書館実習」開講の実態とウェブのみで分かる情報との差異が明らかになるだろう。
まず、開講大学数に関する比較を行う。本調査では、「図書館実習」にあたる授業を開講 している大学は 68 であると述べたが、川原氏らの調査によると「図書館実習」を必修とし ていると回答したのは 11 大学、選択科目としていると回答したのは 76 大学であり、合計で 87 の大学で開講されているという。つまり、本調査の方が、開講している大学数が 19 少な くなっているのである。
内訳は次の通りである。必修としている大学で 1、選択科目としている大学で 22 がウェ ブ上では開講していることが分からなかった。反対に、実際には開講していない 4 の大学で、
ウェブ上では実習にあたる授業が開講されていると読み取れる記述があったため、調査の際 に開講していると見做していた。
こうした差異は、以下の理由によって生じたものである。①司書課程の説明ページがない、
大学数(校) 「実習」開講大学数(校) 「実習」開講率(% )
北海道・東北 22 7 30
関東・甲信越 79 24 30
中部・北陸 22 5 22
関西 49 17 34
中国・四国 17 4 23
九州・沖縄 23 11 48
合計 212 68
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あるいは、ページはあるが「図書館実習」の有無に関する記載がなく、②シラバスがウェブ 上に公開されていない、もしくは在学生限定公開となっていて外部からは閲覧できない。も しくは、③シラバスは閲覧できたがキーワード検索で該当科目を探せず検索もれとなった。
調査の際には、ほとんどの大学の調査過程でシラバスの検索を行った。司書課程の説明ペ ージが充実しているとはいえず、「図書館実習」の有無に関する記載がない大学が大半だっ たためである。さらにシラバス検索においても、ID やパスワードを入力しないと閲覧できな い大学が 10 以上存在したり、独自の授業名が付けられていたりと、調査は困難を極めた。
その結果、川原氏らの調査では、87 大学、司書養成科目を開講している大学の約 4 割が「図 書館実習」を開講していると明らかになっているが、本調査では 68 大学、約 3 割しか開講 していないという誤差が生じてしまった。当然、前章において実施した大学種別ごと、地域 ごとの調査結果分析にも差異が生じることと考えられる。
川原氏らは、調査に関するまとめで、検索の困難さを指摘し、現状を改善するためにまず
“
各大学がウェブサイトから司書課程に関する情報発信を行うこと
”、
“文部科学省や日本図 書館協会が全国的な司書課程情報を取りまとめる作業を再開すること
”2)を提案している。
本調査の結果は、川原氏らの提案の裏付けとなることだろう。現状の「図書館実習」開講 に関する情報の検索可能性の低さおよび、公開されている情報を可能な限り丁寧に調査して も生じてしまう実態との誤差は、ウェブで検索した際に「図書館実習」に関する情報に触れ る機会を狭めていることを示している。
同様のことは、「図書館実習」の開講状況に関する情報の検索可能性だけでなく、司書課 程全体の情報に関しても言えるだろう。各大学の司書課程の説明ページが充実しているとは 言い難い現状では、ウェブ検索によって司書課程や司書という職について知る機会が十分で はない。まずは、各大学が司書課程に関する情報を充実させ、ウェブで発信することにより、
司書の専門性を広めるきっかけを作れるのではないか。
なお、専任の教員の有無や司書課程科目の担当教員を追加調査することによって、「図書 館実習」開講の有無との相関関係が明らかになる可能性はあるが、今回は調査が及ばなかっ たため、今後の課題としたい。
1) 川原亜希世・中道厚子・前川和子・横山桂「大学司書課程における 2016 年度「図書館実習」の開
講状況」『図書館雑誌』vol. 111, no. 2, 2017, p. 108-111.
2) 注 1 と同様の文献から引用である(p. 111)。この報告のなかで川原氏らは、大学司書課程に関す
る情報をまとめ 5 年ごとに刊行されていた日本図書館協会図書館学教育学部会編『日本の図書館情 報学教育』が 2005 年を最後に刊行されていないこと、日本図書館協会図書館年鑑編集委員会編『図 書館年鑑』に「図書館学開講大学」の掲載がなくなったことを述べた上で、情報の取りまとめの必 要性に言及している。