九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
トシ ケイカン イメージ コントロール ニ カンスル ケンキュウ
金, 英美
韓国淑明女子大学産業デザイン研究所責任研究員
https://doi.org/10.11501/3121417
出版情報:Kyushu Institute of Design, 1996, 博士(芸術工学), 論文博士 バージョン:
権利関係:
氏 名・本籍(国籍) 金 英 美 (大韓民国)
学 位 の 種 類 博士(芸術工学)
学 位 記 番 号 乙第2号 学位授与の日付 平成9年2月13日
学位授与の要件 学位規則第4条第2項該当
学位論文題目 都市景観イメージコントロールに関する研究 審 査 委 員 会 幹事 教 授 都 築 政 昭
委員 教 授 長 島 健 次 委員 助教授 山 下 由己男 論文内容の要旨
本研究では、都市における建物と屋外広告物の色彩の実態を把握し、その中でも特に批 判されることが多い屋外広告物をとりあげ、その色彩をコントロールすることが景観整備 の上で有効であるのか、またその具体的な方法について検討した。なお、従来の景観コン トロールの事例は、歴史的景観地区や自然資源等保護地区、ないしは新規整備地区等に偏 っていたが、本研究では既存の一般的な市街地を対象として景観誘導の方法を検討した。
1.研究の方法
(1)性格の異なる地区における建物と屋外広告物の色彩の分布調査を行った。福岡市と ソウルの商業地区とオフィス地区の合計4地区の色彩の分布実態を確認した。 (2)地区 間のイメージの比較や、色彩の調整によるイメージの変動を把握するための調査方法を考 案した。色彩の分布調査を特定地区の固有の現象だと捉えずに、できるだけ客観化して同 一の条件のもとで比較実験を行えるように、正方形の背景色にポイント色を規則的に配置 した色彩パレットによる刺激をつくった。
(3)その調査方法によって、2地区の色彩を現状+各3通りの方法で調整した刺激によ るイメージ調査を行った。福岡の商業地区とオフィス地区の調査結果を色彩パレットに当 てはめ、現状、彩度を10以下及び6以下にした場合、彩度10以上のもの面積を1/2にし た場合のイメージの変動を調査した。
(4)その地区をどのようなイメージにしたいのかによって景観誘導の根拠が異なるはず であるため、天神地区を例にとって、天神地区として認知されている範囲(色彩調査地区 との関係の確認)、現在のイメージ(色彩分布調査から推測できるイメージとの関係の確認)、 これから望むイメージ(誘導の方針の確認)について確認するための調査を行った。
(5)具体的な現場で、推論した方法が適切であるのかどうか、シミュレーションによっ て確認するための検証調査を行った。天神地区の具体的な景観8点を対象とした。
2.研究の結果
(1)屋外広告物の面積は建築物の壁面面積に対して約3%を占めていて、福岡とソウル を比較して見るとその違いは少ないが、地区の類型によるイメージの違いが認められた。
(2)地区を特徴づけている要素のひとつは彩度であり、彩度を調整することによって地
域の特性を誘導できる。
(3)色彩パレットによって、彩度をコントロールした場合のイメージの変動を調査した 結果、彩度をコントロールすると「まとまり感」が出てくる。高彩度の面積を減ずるより も彩度を落とす方がイメージの変動が大きい。
(4)天神地区で一般の人々のイメージを色彩と言葉で確認する調査を行った結果、色彩 パレットによる調査とほぼ一致しており、色彩パレットによるイメージ調査が実態と類似 していることが確認できた。
(5)一般の人々のイメージ調査と色彩パレットによる調査結果、「賑わい感」と「まと まり感」は両立できることがわかった。
(6)地元住民等の意見を要約すると、これからの天神には先進的で「まとまり感」のあ る景観整備が求められている。
(7)天神の街路を例にとり、実態に基づいた誘導例によってシミュレーションをし、イ メージ調査を行った結果、色彩パレットによるイメージ調査、色彩と言葉によるイメージ 調査、それを実態に適用させた場合のイメージ調査の3つの結果がほぼ一致していた。
(8)高彩度の屋外広告物の彩度を中彩度や低彩度に落とすべきか、面積を減ずるべきか は現場の状況によってイメージの変動が異なる場合があり、求めるイメージに対してその 手法を選択する必要があることがわかった。
本研究において得られた屋外広告物の色彩の誘導の方法は、今後の都市景観計画に十分 導入され得るものである。また、これまで最もあいまいでいつも重要な課題とされてきた 景観誘導の根拠を明確にするものである。しかも本研究は、特定の個性ある景観地区では なく一般的な市街地を対象にしており、普遍的な方法として活用できるものである。
ただし、本研究の趣旨は画一的な景観整備の方向を示すものではなく、彩度をコントロ ールすることによっていくつかの異なるイメージが導かれる点を明かにしたものである。
本研究は、景観誘導の現場の問題点を理解し、景観の育成のために具体的に何をしたらい いのか、またその根拠について設計的な観点から研究したもので、今後の景観指導上の基 礎研究として位置づけられる。
論文審査の結果の要旨
本研究は、屋外広告物の色彩をコントロールすることによって、都市景観を望ましい方 向に誘導するためのひとつの方法を研究したものである。現状の都市景観は、建築物、そ れに付属する広告物などの色彩の氾濫により、無秩序な様相を呈している。そこで屋外広 告物の色彩を景観の構成要素の一つとして位置づけ、色彩を切り口とした街並みのあり方 を調査研究し、その誘導方法を検討する。
本論文は 6章から成り立っていて、第1 章では、都市景観の構成要素、景観における色 彩の分布特性、そして景観における色彩の心理的評価などに関する既成の研究成果の検討、
さらに都市景観の色彩計画の現状として兵庫県、神奈川県、北九州市、東京郊外のニュー タウンなど7地区における色彩コントロールの実体を検証した。
第 2 章では、都市景観を構成する要素として建物に付属する屋外広告物に注目、その分 類と現状、その規制の実体を調査、検証をした。
第 3 章は色彩調査による地域の比較調査を行い、福岡市とソウル市の都市空間における 建物や屋外広告物の色彩分布状況を調査、地域のイメージと色彩との関連を調査した。そ の色彩調査として外装色を「基本色」、広告などを「ポイント色」に分類、調査した結果、
基本色とポイント色の比はおよそ3%程度であり、色彩コントロールは屋外広告物のコント ロールと関していることを確認した。
第 4 章はポイント色の彩度を中心としたコントロールを行うために色彩パレットによる シミュレーションを行った。場所は福岡市内の商店街の天神とオフィス街の博多を選び現 状の写真をもとに色彩、面積のデータを独自の正方形の色彩パレットに置き換え、そこに 主なポイント色を配置、面積と彩度を調整したものを被験者に提示、SD法によりイメー ジ調査を行った。その結果、ポイント色の面積を調整するよりも彩度を調整する方がイメ ージの変動が大きいことがわかり、彩度が都市景観のイメージに影響を与えていることが 確認された。
第 5 章では、特に商業地区の天神のイメージ調査を行い、人々が景観に何を感じ、何を 期待しているかを調査した。方法として「現在のイメージ」と「これから望むイメージ」
を色彩と言語の両イメージで調査し、色彩では現在はまとまり感がなく、将来は落ち着い た明るいイメージが望まれていることがわかり、言語イメージでは良いところはその「便 利さ」であり、悪いところは「非計画性」が景観を阻害していることがわかった。
第 6 章では、以上の調査を踏まえ、現場写真の屋外広告物の彩度を調整したシミュレー ション、高彩度の面積を1/2にしたもの、中彩度にしたもの、低彩度にしたものを作成し、
SD法によりイメージ調査を行った。その結果、彩度の変化かイメージの変動により大き な影響を与えることが再確認された。
以上により本論文は、都市景観を快適で秩序あるものとするため、屋外広告物の色彩の コントロールが有効であるという仮説に基づいた調査研究の結果、屋外広告物の彩度をコ ントロールすることが景観整備のために有益な効果をあげることが実証された。したがっ て本研究による屋外広告物の色彩の誘導の方法は、今後の都市景観計画に十分導入されう るものと考える。
よって、本論文は博士(芸術工学)の学位論文に値するものであると認められる。
最終試験の結果の要旨
本論文の最終試験は各審査員より専門的観点から論文内容について質問を行ったが、い ずれも適切な回答がえられた。
次に都市景観のデザインの研究者の出席のもとに公開発表会を行い、申請者の発表に対 し質疑応答を行ったが、的確な説明を行い、質問者の納得をえた。
以上の結果により、審査委員協議の上最終試験は合格と決定した。