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移転価格税制における推定課税上の問題について

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移転価格税制における推定課税上の問題について

‑ 適用順序の解釈 と質問検査権 に焦点 をあてて ‑

Aboutaproblemontheestimatedtaxationinatransferpricingtaxation

Pleasefocusoninterpretationandauthoritytoinquh'eandinspectofanapplicationorder

神奈川大学大学院 経営学研究科 国際経営専攻 博士前期課程

松 浦 弘

■キーワー ド

1 は じめに

課税当局は、税務調査 において、企業の国外関 連者への所得移転 を認定 し、移転価格税制 を適用 してい く場合 には、企業の申告 を是正す るために 租税特別措置法66条の4第1項 と同条第2項に基づ いて更正 を行 うこととなる1。更正 を行 うにあたっ て課税当局の調査官は、企業に対 して各事業年度 における国外関連取引に係 る、独立企業間価格 を 算定するために必要 な帳簿書類等の提示、提出を 求めることとなる。 そ うした場合 に、企業側 か ら これ らを遅滞 な く提示 し、又は提出 されなかった 場合には、一定の方法 によ り算定 した金額 を独立 企業間価格 と推定 して更正できる旨の規定がある (租持66条の4第7項)。 これがいわゆ る移転価格 税制における推定課税であるが、 この推定規定に は、以前か ら問題 とされ る点が2つある。

1つ 目は、同条 第9項 を含めた推定規 定 の適用 順序の問題である。第9項は、税務職員 の国外関 連者への質問検査権限 を認めた規定である。 この

第9項は、独立企業間価格の妥 当正 を精査す るた めには、類似の事業 を営む者 か ら、第三者 との取 引価格や利益率等に関す る情事馴文集が不可決であ るとい う事実 に基づ き、平成3(1991)牛の税制 改正 において創設 され た もので ある。 この第9項 の特長 は、第7項 と同一の適 用要件 を掲 げてい る ことである。それゆえに推定課税 による独立企業 間価格の算定上、その適用順序 を巡 って意見の対 立 がある。その原因には、推定規定が移転価格税 制導入当初 より規定 されているものの、裁判例や 裁決例等 が少 ないため、第7項の解釈 ・適 用 を巡

り、明確 な判断の拠 り所 がない ことが考 えられ る。

2つ 目は、 シーク レッ ト・コ ンパ ラブルの問題 である。 シーク レッ ト・コンパ ラブル とは、第9 項 によ り収集 し得 られ た非公開情報 に基づ く比較 対象取引 をい う。移転価格税制 に基づ く更正処 分 に当たって、比較対象取引に関す る情報 を納税者 に開示 しないことは、納税者の反論の機会 を奪 う

「不公正」 な処分で あ り、予見可能性 の面 か らみ て も大 きな問題 となっている。

(2)

48 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第13 2009年3月

そこで、本稿 では、推定課税上 問題 となる第7 項 と第9項 の適 用関係 と第9項 に付 随す るシーク

レッ ト・コンパ ラブルの問題に焦点 をあてて、立 法解釈 によ り理想的な適用関係のあ り方 を明 らか にす るとともに、推定規定 に内在す る問題の所在 を明 らかに し、その改善 を強 く主張す る。具体的 には、第2章では、推定規定の根拠や適用要件 を 立法趣 旨や条文解釈か ら考察 し、その合理性 と立 証責任 につ いて明 らかに してい く。 そ して第3章 で は、第9項 の質 問検査権 に焦点 をあてて、第7 項 との適用関係 とシークレッ ト・コンパ ラブルの 問題 について検討す る。 これ らを通 じて、移転価 格税制における推定規定の全体像 を把握 し、その 役割 と今後の展望 につ いて論 じる。

2 推定課税 とはなにか 2‑1 推定規定の根拠 と立法趣 旨

推定規 定 の根 拠 は、措 置法66条 の4第7項 であ る。 ここに規定す る推定課税 とは、「法人 が独立 企業間価格 を算定す るために必要 と認め られ る帳 簿書頬又 はその写 しを課税当局の要求後、遅滞な く提示又 は提 出 しなかった場合 に、税務署長 は、

(1)その法人の国外関連取引に係 る事業 と同種の 事業 を営む法人で事業規模 その他の事業の内容が 類似す る法人のその事業 に係 る売上総利益率 その 他 これに準ず る割合 を基礎 として、再販売価格基 準法又は原価基準法又はこれ らと同等の方法、そ して (1)の方 法 が適 用で きない場合 には、 (2) 利益分割法及び取引単位営業利益法 を用いて算定

した金額 を独立企業間価格 と推定 して、更正又は 決定 をす ることがで きる (粗特66の4第7項、粗 持令39条の12第12項)2」 としている。

推定規定の立法趣 旨は、当時の大蔵省 (現、財 務省) か ら公表 され た昭和61年版改正税法のす べてにおいて、 「問題 となる取 引価格 の決定根拠 や他の通常の取 引価格 に関す る情報 について納税 者側 か ら資料提供 とい う形で協力が行われ ること が極 めて重要 であること、仮 に納税者か らかかる 協力が行われない場合 に課税 当局が何の手 だて も

な くこれ を放置せ ざるを得 ないことになれば、本 制度の適正公平 な執行 を担保 し難 いことか ら設 け

られた ものです3」 とある。

立法趣 旨の解釈 に関 して、藤巻一男 [2003] は、

「第7項の創設趣 旨は、資料提供 について法人の協 力 を担保す ることである。法人にとっては独立企 業間価格の算定に必要 な帳簿書類等 を遅滞 な く提 示 ・提出 しなければ、推定課税 を受 けるか もしれ ない とい う懸念 を抱 かせ ることにな るので、第7 項 は、法人のコンプライア ンスを確保す るための 手段 として位置付 け られ る。所得移転の蓋然性 が 認め られ るに もかかわ らず、法人の協力が得 られ ないために独立企業間価格の算定作業が遅 々とし て進 まないような場合、公開情報やその他利用可 能 な資料等か ら推定課税 に必要 なデ‑タをそろえ ることがで きれば、推定課税 は有効 な対抗策 とな りえるであろう4」 と述べ られている。

羽床正秀,古賀陽子 [2006] は、「この推定規定 が置かれた趣 旨は、推定課税 その ものを定めると い うよ りは、国外関連取引における独立企業間価 格の算定根拠 となる書類等の提示 についての納税 者 の協力 を担保す ることにあると思われ る5」 と 解 している。

これ らの解釈 に依拠 して考察 す ると、措置法 66条 の4第7項の隠れ た機 能 が必然 的に浮 き彫 り になって くる。それは、経営者 に対す るコンプラ イア ンス経営の意識定着である。税務署長 が推定 による課税 を行 った場合 には、納税者 は、 自己の 取引価格 が法定 された移転価格の算定方法 によ り、

独立企業間価格であると立証 しない限 り、当局の 課税 を覆す ことはで きない こととな る6。 これ を 換言 すれば、推定課税 を受 けた場合、企業側 は、

反証 をあげて課税当局の判断を覆 さなければな ら ないC しか し、国外関連取引における複雑 な要素 の集大成である独立企業間価格 について、自社の 算定方法の正当性 を立証す ることは非常 に困難で ある。 このような手間は、時間 ・費用 ・労力など 本 来、 しっか りと措置法66条 の4第7項 に対 す る コンプライア ンスに意識 を向けていれば、かける 必要 の無かった無駄 な負担である。だ とす るな ら

(3)

ば、企業 においては帳簿書類等の提示 ・提出を求 められた際に速やかにその要求 を実行できる準備 を常時すべ きであるといえよう。企業 に対 して「課 税当局に対す る調査協力」 とい う姿勢 を促す とい う観点か らみ ると、「適正公平 な執行のため、納 税者の理解 と協力 を確保するための担保」 となる 規定である措置法66条 の4第7項 の役割 は大 きい

ものであると考 えられよう。

2‑2推定規定の適用要件の解釈

この規定の適用要件 としては、税務職員か らの 要請があったに もかかわ らず、図表2‑13に表 さ れる4要件のいずれかを履行 しなかった場合 であ る。1つ 目は、独立企業間価格 の算定 に必要 な資 料の控示 を しなかった場合、2つ 目は、独立企業 間価格の算定に必要な資料の提出をしなかった場 合、3つ 目は、提示 又は提出はあったが、それ が 遅滞なく行われ なかった場合、4つ 目は、提示又 は提示 された資料が不十分だった場合、である7。

推定規定 の根 拠 で ある措置法66条の4第7項 に ついて文理解釈 を試みた際、疑問に沸 く点がある。

それは、帳簿書類等の写 しの提示又は提出を求め られた際、法人がこれ らを遅滞 な く提示 し、又は 提出 しなかった ときの 「遅滞な く」 とい う期間の 基準はどうなのか とい う点であるS。

これについて法令用語 としての一般的見解 をす るならば

、「

遅滞 な く』 は、事情の許す限 りで き るだけ早 くとい う意味であり、正 当な又は合理的 な理由があれば、その遅滞 も許容 され る9」 となる。

「遅滞なく」 とい う用語 と類似す る用語 に、「すみ やかにmJ と 「直 ちに

ユ 1

」 が あ る。 これ らは、 い

ずれ も行為又は事実 とその後 に続 く行為 との間の 時間的な近接性 を表す場合 に用い られ るが、それ ぞれの問には、遅滞の時間的許容範囲、遅滞があっ た場合の違法性 の有無 ・程度 といった点に差異 が ある12。

なぜ措置法66条 の4第7項 において時間的近接 性 を表す用語 のなかで、「遅滞 な く」 が用い られ ているのか を考察 す るに、本規定 が 「第1項 に規 定す る独立企業間価格 を算定す るために必要 と認 め られ る帳簿書類」の写 しの提示又は提出を求 め ているか らだ と筆者 は考 える。つ まり、独立企業 間価格算定 に係 る帳簿書頬 を集めるには、国内取 引に比べ、取引規模が国外 に跨 ってい るだけに時 間 を要 し、取引額の巨額 さ故に帳簿書類が膨大 な 量 になっていることは火 を見 るよ り明 らかであろ う。 したがって企業側の こうした帳簿書類の写 し の提示又 は提出 をす るための準備期問 として、相 当の 日時を要す るであろうとい う課税庁側の推測 によ り、その時問的余裕 を与 える趣 旨に したかっ たためで\あるとい えよう。

事実、国税 庁 の移転価格事務運営要領2‑5 (2) においては、「法人が第7項に規定す る書類等 を遅 滞な く提示 し、又は提出 したか どうかは、当該書 頬等の提示又は提出の準備に通常要す る期間を考 慮 して判断す る」 とある。

川 田剛 [2006]は

、「

遅 滞 な く提 出す る』 の 期間の判断は、ケース ・バ イ ・ケースとい うこと になるが、一般 的にいえば、合理的期間内 とい う ことである。例 えば、国外関連者の手許 にある資 料であれば、調査対象法人か ら当該国外関連者 と の通信に要す る日数 プラス必要書類の作成 に要す

図表2‑1 推定規定の適用要件 推定規定の適用要件 (1)独立企業間価格の算定に必要な資料の提示 をしなかつた場合 (2)独立企業間価格の算定に必要な資料の提出をしなかつた場合 (3)提示又は提出はあつたが、それが遅滞なく行われなかった場合

(出所)川田剛 [2006]346頁をもとに、表 を筆者作成

(4)

50 神 奈川大学大学 院経営 学研究科 F研究年報』 第13 20093月

る 日数及び先方 か ら日本への送付 に要す る日数等 が一応 の 目安 となろ う】3」 と述べ られてい る。

いずれ に して も、重要 な ことは、独立企業 間価 格 の算定 に必要 と認 め られ る資料等の提 出につ い ては、可及 的速やかに行われ るよ うに十分協 力す るとい うことであるとい えよ う14。

2‑3 推定規定の合理性

推 定規 定 の適 用要 件 に該 当 した場合、措置法 66条 の4第7項 に基 づ き、企 業側 は、課税 当局 か ら推定課税 を受 けることにな る。 その場合 、課税 当局 としては充分な資料の手持 ちがない とい う制 約 が ある ものの15、与 え られ た権 限 を駆使 し、可 能 な限 りその推定の合理性 を確保す るよ う努 めね ば な らない 16。つ ま り、課税 当局は、推定課税 の 必要性、合 理性 につ いて立 証責任17を負 わねば な らない とい うことである。 しか し、課税 当局側 か らすれば、 「法人 か らの独立企業 間価 格 の算定 に 必要 な帳簿書芦等が遅滞 な く提 出 され なかった こ とか ら、最終 的措置 と して第7項 を適用 し、一応 独立企業 間価格 と推定 され る金額 に基づ き課税 し たに過 ぎず、訴訟段階で法人の反証 を認 めるもの で あるか ら、当該課税段階では独立企業間価格の 算定 において第2項 の適 用 に よる場合 と同様 の精 微 さは要求 され ていないIS」 もの と考 え られ るた め、 「その立証責任の程度 は、 『一応 の立証』 で良

い 19」 と解 され る。

推定の合理性 につ いて、さらに前原真一 [2003]

は、 「推定 の合理性 を満 たす ためには、独立企業 間価格の算定 において、同種 の事業 を営 む、事業 規模 その他の事業の内容 が頬似す る法人の売上総 利益率 またはこれに準ず る割合 を用いる必要 があ る, この場合、調査法人 と比較対象法人 との比較 可能性 をどの程度厳密 に判 断す るかが問題 とな る 20」 と述べ られている。

ただ し、課税 当局が これ らの推定 による課税 を 行 った場合 には、納税者で ある企業 の非協力的 と い う大義名 分が存在す るため、課税 当局の判 断が 一応 の合理性 あ りと推定 され、一応の立証で良い と され るの は必然 で あ る と考 え られ よ う。 した

がって、納税者 が これに対 して争 うためには、原 則 と して納税者側 で、 自己の主張 とす る価格 が独 立企業 間価格 と して よ り合理的で あるとい うこと につ いて反証 をあげて、課税 当局の判断 を覆 さな ければな らない 2122。

2‑4 推定課税 における立証責任

課税 当局が確定処分 を行 うためには、課税要件 事実の認定 が必要 であるか ら、課税要件事実 の存 否23及び課税標準 につ いて は、原則 的 と して課税 当局が立証責任 を負 うと解 されてお り (最判 昭利 38年3月3日月報9巻5号668頁、熊本池判昭和33年 6月19日行政例集9巻6号1149頁)24、移転価格税 制 の場合 も同様 と考 え られ る25。 その根 拠 は、 「合 理 性 を欠 く推 計 (推 定 ) 課 税26は違 法 で あ る27

とい う原則 にあると考 えるか らで あるO また、「推 定 す る2R」 とは、 あ る事柄 につ いて、 当事者 間 に 取決 めがない場合 、法律上 その事柄 を一応一定 の 事実状態 にあると認定す るが、他の事実状態 にあ るとい うことが証明 され た場合 には、反論 を許す 法令用語 である29。従 って、推定課税 を受 けた企 業 は、既述 してい る通 り、反証 をあげて この推定 を覆す ことがで きるのである。

しか し、現実 には、企業側 の反証 は極 めて困難 で あ るといわれ てい る。 なぜ な らば、 「法人側 が 反証す るにあたって、課税 当局が採用 した比較対 象 法人 が守 秘義務 に よって開示 され ないため30」 セある。次項 において述べ るが、 これがいわゆ る 移転価格税制に係 るシーク レッ ト・コンパ ラブル の問題である。

この推定規定 について小松芳明 [1999]は 「本 規定 は一種の立証責任の転換規定で あって、課税 庁側 は、推計課税 につ いて争証 があった場合 に採 られ る方法 に類似 した比較 的平易 な方法で事実 を 立証すれば よいのに対 し、納税義務者側 は、 もし この推定 が自己に不利 な もので あれば、それ を覆 す ためには、国外関連者 が保存す る各種 の資料の 提 出 を含めて、 その基礎 となる事実 を立証す る必 要 がある。 この点 につ いて、納税義務者 に過度の 負担 を課す ることになるのではないか との疑問 も

(5)

あるが、相 当協力な調査体制が取 られ ないか ぎり、

税務当局には調査困難 な事実 が多い とい う性格 を 持つ国外関連取引につ いて、その正 当性 を納税義 務者 が立証す る必要 があることは、ある意味当然 であ り、 そのための納税義務者 の負担 も、特殊の 関係 を有す る国外関連者 に係 る事実で あるか ら納 税義務者 に とって、その果 たすべ き納税協力 (tax compliance)の範囲内の もの と認 め るべ きではな

かろうか3‑」 と述べ られてい るo

そ もそ も措置法66条 の4第7項 は図表2‑1の推 定課税の適用要件 (1)、(2)、(3)に関 してい えば、

企業側 の帳簿書類等の提示 または提出がな されな かった とい う過失32に よって、適 用 され る規定 で あるとい える。 だ とす るな らば、 「法人の課税 当 局の推定規定による課税の合理性 を揺 るがせ る程 度の反証で は足 りない33」 とす る見解 は至極 当然 の見解で あ り、企業側 の立証責任の程度 は、相 当 重い ものであるとの認識 を持たなければな らな

したがって企業側 、 とりわけ多国籍企業である経 営者はこれ らの移転価格の リスクヘ ッジをす る意 味で、 日々の経営活動 を見直 さなければな らない ことがあるのではないか とい うことを指摘 してお きたい。

3

シーク レッ ト・コンパラブルの問題

3‑1 第9項の質問検査権の 目的

平成3(1991)年の税制改正 時 に比較対象企業 に対す る質問検査権の規定が創設 された。 それ が 措置法66条 の4第9項で ある。第9項 の創設趣 旨に は、以下の通 り説明がな されている。

「移転価格税制 は、大量 かつ頻繁 に行われてい る関係会社間の取引の価格の妥当性 を問題 とす る 税制だけに、それ を精査す るためには、 どうして も頬似の事業 を営む者 か ら、第三者 との取引価格 や利益率等 に関す る情報収集 が必要 とな ります。

法人税法の質問 ・検査権限に関す る規定の下では、

法人税の調査対象法人 とその取引先 を調査す る権 限は認め られていますが、取引関係のない者 に対 する調査権 限 までは認め られてい ません。 そこで、

今回の改正 では、移転価格税制の執行 に不可欠で ある比較対象企業 か らの情報収集 に法的根拠 を与 えることとし、比較対象企業 の受忍義務違反に対 しては刑罰 を科 す こととされ ま した34

この よ うに、 もともと法人税法 において質問検 査権 の規 定 は存在 して い る (法税153条1項)。 し たがって移転価格税制 において も法人税法上の質 問検査権 は機能す るため、法人及びその取引先 に 対す る反面調査権 もある。 しか し、国外関連者 に 対 しては課税権 が及ばないため質問検査権の行使 がで きなか ったので あ る35. そ こで、国外関連者 への調査 を要 す る移転価格税制 において、 この権 限 を行使 で きるよ うにす るために措置法66条の4 第9項 と して規定 され るに至 ったので ある。

3‑2 第7項 と第9項の適用関係

措 置 法66条 の4第7項 で は、税務 職員 が法人 に その事業年度 におけ る国外関連取 引に係 る第1項 に規定す る独立企業 間価格 を算定す るために必要 と認め られ る帳簿書類又 はその写 しの提示又 は提 出 を求 めた場合 において、当該法人が これ らを遅 滞 な く提示 し、又 は提 出 しなかったときは、税務 署長 は独立企業間価格 を推定 して、更正 をす るこ

とがで きる旨を規定 してい る。

一方、措 置法66条 の4第9項 で は、税 務職 員 は 法人 が第7項 に規 定 す る帳簿書類又 はその写 しの 提示 、又 は提 出 しなかった場合 において、当該法 人 の各事業年度 にお け る国外 関連取 引に係 る第1 項 に規定す る独立企業間価格 を算定す るために必 要 があるときは、 その必要 と認 め られ る範 囲内に おいて、当該法人 の当該 国外関連取 引に係 る事業 と同種 の事業 を営 む者 に質問 し、又 は当該事業 に 関す る帳簿書拝 を検査す ることがで きる旨を規定

してい る。

措置法66条の4第7項 の推定規定 の適用要 件 は、

税務職員の要求 に対 し、法人が遅滞 な く独立企業 間価格 を算定す るために必要 と認 め られ る書芦 を 提示 しなかった ことで あ り、 また第9項 の質問検 査権 の行使 に関す る適用要 件 も、第7項 に規 定す る書類等、すなわ ち、独立企業間価格 を算定す る

(6)

52 神奈川大学大学 院経営学研究科 F研究年報』 第13 20093月

ために必要 と認め られ る書類 を遅滞な く提示等 し なかったことであるか ら、法文上、同一の要件が 規定 されてい る36。

同一の要件が規定 されているのだか ら、それぞ れの規定において どのような適用関係 になるのか が疑問に思 うところである。 この点について、望 月文夫 [2008] は、「第7項の射程範囲は、第9項 を用 いた後の第2項 に規定す る独立企業間価格算 定方法の適用がで きない場合で、かつ課税できな い状況 を放置 しておけば課税の公平が保 たれな く な る場合 、 とい う極 めて限 られ た もの となる37」 と述べ られている。つ まりこの考 え方 による適用 関係 は、以下のよ うになる。企業が帳簿書類等 を 遅滞 なく提示 し、又は提出 しなかったとき、課税 当局 は独立企 業 間価格 を推定す るため、 まず措 置法66条の4第9項 の質 問検査権 を行使 して、同 業者の情報収集 を行い、その情報 に基づ き措置法 66条の4第2項 の算定方法 によ り求 め よ うとす る のである。 しか し、それで も算定方法 を適用す る ことが出来なかった場合 に、最後の手段 として措 置法66条 の4第7項 が適 用 され るとい う。 この考 え方 の根拠 は、一言 でい えば、平成3 (1991)午 に措置法66条の4第9項が創設 されたことによ り、

課税 当局の情 報収 集活動 に対 して、法人 は 「協 力」 か ら法文化に伴 う 「義務」に変わった点であ る とい えよ う。望 月文夫 [2008]は、「平成3年 に同業者への質問検査権が導入 されてか らは、課 税 当局が情報収集の観点か ら法人に劣 ることはな い、 とい うよ りも、む しろ法人 よりも情報収集能 力があるとい う状況 が創 出 され た38」 と述べ られ ている。

つ まり、課税 当局の推定課税執行において、 こ れ まで第3者企業 の もつ書類 は、その企業の 「協 力」 により収集が行われていたのである。 しか し、

「これは純粋の任意調査 に過 ぎないため、実際の 執行 にあたっては法人の協力 も得 られ ない39」事 態 が出て きたため、措 置法66条 の4第9項 と して 条文化す ることによ り、第3者企業 に義務 を課 し、

この義務 を果 た さなければ、受忍義務違反 とな り 10万円以下の罰金 に処す るとし (粗特66の4第12

項)、法的な強行性 を身に付 けたのである。

独立企業 間価格 の算 定 につ いて は、措置法66 条 の4第2項 が原則 で あ る。措置法66条 の4第7項 は、単 に一定の要件に該当すれば独立企業間価格 を推定 して課税す ることを規定 してい るのみであ る。 したが って、「第7項 に基 づ いて算 出 され た 独立企業 間価格 は、第2項 に規 定す る算定方法 に よ り算定 された独立企業間価格 とは異 なるといっ て も過言 ではない4

」 とい える。 だ とす るな らば、

法的な強行性 を盾 に、当該法人の各事業年度にお け る国外関連取 引に係 る第1項 に規 定す る独立企 業間価格 を算定す るために必要 があるときは、そ の必要 と認め られ る範囲内において、当該法人の 当該国外聞連取引に係 る事業 と同種の事業 を営む 者 に質問 し、又 は当該事業に関す る帳簿書類 を検 査 し、得 られた情報 によ り (粗特66条の4第9項)、

措 置法66条の4第2項 に規定 す る算定方 法 を適 用 しよ うとす る措 置法66条 の4第9項 が措置法66条 の4第7項 よ り先 に適 用 され ることは妥 当で ある とい えよ う。 したがって、筆者 は、望 月文夫の考 えに対 し賛成の立場であ り、実務において もこの よ うに適用、実行 され るべ きであろうと考 える。

3‑3 シークレッ ト・コンパラブルについて シークレッ ト・コンパ ラブル とは、移転価格税 制 に基づ く調査、又は更正処分にあたって、法人 がこれ らを遅滞な く提示又は提出 しなかったとき に、課税当局が同業者 に対す る質問検査権 (租特 66条 の4第9項) を通 じて、収集 した非公 開情報 に基づ く比較対象取引 をい う。移転価格税制に基 づ く更正処分に当たって比較対象取引に関す る情 報 を納税者 に開示 しないとい うシークレッ ト・コ

ンパ ラブル につ いては、納税者の反論の機会 を奪 う 「不公正」 な処分であるとの批判 を国際的にも 招いている4142

移転価格税制研究会 で平成19年9月に出 された 中間報告書では、 シークレッ ト・コンパ ラブルの 適 用 につ いて、「更正処 分 を受 けた企業 は、課税 当局の更正処分についての検証、反証 を行 うこと が極 めて困難 となることか ら、企業 にとって脅威

(7)

となってい る43」 との指摘 がな されている。 また、

非公開情報 ゆ えの税務職員の守秘義務 につ いて、

「税務職員 は公務員 と しての守秘義務 が法律 によ り課せ られているが、個別の比較対象 を特定す る ほどではない ものの比較対象 としての適切 さを検 証できる程度の情報開示 は納税者 に対 して行われ

るべ きである44」 との指摘がな されてい る45。 また、 日本公認会計士協会 は、「平成15年度税 制改正意見 ・要望書」 を取 りまとめて公表 した。

その中で、上記の指摘以外 に、「事前確 認制度 を 活用する際に も、納税者 が独立企業間価格 を主体 的に算定 し、 これ を基 に税務当局 と折衝 を行 うこ とを困難に している。納税者 と税務当局は共通の 情報を基礎 とすべ きであ り、 したがって、税務当 局は公開情報のみに基づいて比較対象取引の選定 を行い移転価格税制の更正 を行 うことがで きるよ う明確 に されたい。 また、 これ を実効 あらしめる ため、企業 間算定価格 に資す る情報 を極 力開示 さ れたい46」 と、独立企業間価格算定 に関 してのみ ならず、事前確認制度 にまでその影響 を示唆 して いるものであ り、シークレッ ト・コンパ ラブルの 問題 を訴 える意味で、非常 に有益 な意見であると いえよう。 しか しなが ら、 この 日本公認会計士協 会 による税 制改正意見 ・要望書 は この平成15年 度か ら平成21年度の7年度 に渡 り、同様 の ことが 意見 ・要望 と して公表 されている47。つ ま りこの 間題については一向に改善す る措置が探 られてい ないとい うことになる。

課税当局側 にとって シーク レッ ト・コンパ ラブ ルの問題について積極 的な改善措置が取 られない 背景には、やは り税務職員の守秘義務の規定 (法 法163条) がその障壁 として存在 しているのでは ないか と考 え られ る。 なぜ な らば、質 問検査権 (租持66条の4第9項) を通 じて、収集 した非公開 情報に基づ く比較対象取引 を納税者 に開示す るこ とは、法人税の調査 に関す る事務に従事 していた 者が、その事務に関 して知 ることので きた秘密 を 漏 らし、又 は盗用 した とき (法税163粂) の 「秘 密を漏 らし」にあたると解す ことがで きるか らで ある。 しか し、 これ を論理 解釈 したな らば、措

置 法66の4第7項、 第9項 の趣 旨、 目的か ら考 え て、「秘密 を漏 らし」 にあたるとは思 えない。 「漏 らす」 とは、 「故意 に」 とい うニ ュア ンス を含ん でいると一般 的にいわれ るか らである4㌔ だ とす るな らば、移転価格税制研究会の 「個別の比較対 象 を特定す るほどではない ものの比較対象 として の適切 さを検証で きる程度の情報 開示 は納税者 に 対 して行われ るべ きである」 とい う指摘は、理 に 適 っているもの といえよう。換言 すれば、比較対 象 としての適切 さを検証で きる程度の情報開示 を す ることは、 (1)租税正義、負担の公平 を実現す るとい う租税法の大原則 を遵守す ることにつ なが り、 (2)諸事情への対応の観点か らは、租税紛争 の抑止 につ ながると考 えられ る。 また恐縮 なが ら 誤解 を恐れず にい うな らば (3)これ ら結論の妥 当性 については、先人である尊敬すべ き法学者や、

国内外 をは じめ とす る多くの税務会計分野の職業 会計人、機 関などか ら同様 な意見 ・要望 ・提言 が な されてい ることか ら、 これは社会一般、経済的 事象か らの要求 ともいえるものであ り、普遍的妥 当性の ある結論 で あるとい えよ う490 したがって、

これ ら3つの観 点か ら、 この問題 に対 して積極 的 な改善策 を講 じる必要 があることを改めて強 く主 張 したい。

4 おわ りに

このよ うに、「適正 な国際課税 を実現す るため、

企業が国外関連企業 と取引 を行 った場合の課税所 得計算に関す る規定 を整備す るとともに、資料収 集等、制度の円滑 な運用に資す るための措置 を講 ず ることが適 当で ある50」 とい う目的の実現 を目 指 し、移転価格税制は導入後か ら度重 なる税制改 正の度に、進化 を遂 げて、今 日に至 っているが潜 在す る問題点はまだまだ存在 しているため、 この 傾向は今後 も続 くといえよう。

独立企業間価格の算定方法に関す る、原則的な 算定手法 を定 めた根拠 は措 置法66条の4第2項 で

ある。 しか し、課税 当局の移転価格調査 にあた り、

税務職員が法人 にその各事業年度 における国外関

(8)

54 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』第13 20093月

連取 引に係 る独立企業間価格 を算定す るために必 要 と認め られ る帳簿書類等の写 しの提示又 は提 出 を求 めたに もかかわ らず、企業 か らこれ らを遅滞 な く提示又 は提 出 されず、協力 をえられ なかった 場合 は価格算定 しょ うがない ことにな る。 そ して、

これ らの状況 に陥った場合、課税 当局が何の手段 も有 きなければ、本税制 における適正 かつ公正 な 課税執行 は不可能 となって しま う。 それゆ えに課 税 当局 は、措 置 法66条 の4第7項 の推 定規 定 を設 けることによ り、価格算定の最後 の手段 を得 たわ けで ある。

しか し、平成3 (1991)年 の税制改正 において、

措置法66条 の4第9項の質問検査権 の創 設 によ り、

課税 当局 の価 格 算定方 法 は、新 た な局面 を迎 え た。措置法66条の4第9項は、上記状況 に陥 った際、

第3者企業つ ま り同業者 に対す る調査権 限 を法 的 に与 え、課税 当局の情報収集 レベル を強化 させ た ので ある。 これ は、課税 当局の採 るべ き価格算定 方法 に大 きな変化 をもた らした。 これ まで企業側 の 非協 力 に よ り措 置法66条 の4第2項 が適 用 で き ない場合 は、最 終手段 と して措置法66条 の条第7 項の推定規定 によ り、独立企業間価格 を推定 した。

しか し、平成3 (1991)年以後 は、その 中間に措 置 法66条 の4第9項 によって得 られ た資 料 を もと に措 置法66条 の4第2項 を適 用 で きない か ど うか 再 び検討す ることがで きることになった とい えよ う。 その結果 と して、措置法66条の4第9項 によっ て得 られ た資料 が、措置 法66条 の4第2項 の適 用 要 件 を満 たす 資料 等 で あ った場合 は、措 置法66 条 の4条 第2項 を適 用 して、課税 を行 うべ きで あ

る。 そ して上記 にあてはま らない場合 に、本 当に 最 後 の手段 と して、措置法66条 の4第7項 が適 用 され るべ きではないか。 こ うした考 えによ り、措 置 法66条 の4第7項 と措置法66条 の4第9項 は、同 一の適用要件で あるか らといって、 どち らも選択 可能であ り、 その判断は、課税 当局の裁量 による

とい う考 えには同意で きない ところで ある。

また、措 置法66条 の4第9項 に関連 した シーク レッ ト・コ ンパ ラブルの問題 は、納税者 の反論の 機会 を奪 う 「不公正」 な処分であるとい える。納

税者 で ある企業 に とって、 こ うした不透明な手段 による処 分 は、課税 当局 に対す る不信や不満 を招 く結果 に思 えてな らない。 したが って、 「個 別 の 比較対象 を特定す るほ どではない ものの、比較対 象 と しての適切 さを検証 で きる程度 の情報開示 は 納税者 に対 して行 われ るべ き51」 であ る。 そ うす ることによ り、移転価格課税 の透 明性 が増 し、適 正 かつ公正 な課税 を実行 してい ると して、世界 的 に も評価 され るとい えよ う。 また、納税者 である 企業か ら不信不満の原 因が解消 され、移転価格税 制全体 に対す る理解 と協力がよ り一層増す とい う 副次的な産物 を得 ることがで きるのではないか と 考 える。 したがって、今後 もシーク レッ ト・コン パ ラブルの問題 に対す る改善 を継続 して訴 えてい

きたい。

1 藤巻一男 [2003]75頁。

2 望 月文夫 [2008]81頁。

3 大蔵省 「昭和61年版 改正税法のすべて」210頁。

4 藤巻一男 [2003]52頁。

5 羽床正秀,古賀陽子 [2006]473頁。

6 羽床正秀,古賀陽子 [2006]473頁。

7 川田剛 [2006]346頁。

8 その他 に も適 用要件 の4つ 目にある 「提示 又 は提示 され た資料 が不十分だった場合」 につ いて、藤巻一男 は 「課税 当局 が、法人の独立 企業間価格 の算定 に用 いたデ ー タにつ いて、

比較可能性 がないな どの理 由によ り不適 当で あ る と認定 した段 階 で、第7項 又 は第9項 の 要件 が満 た され る。 もっとも、不適 当か どう かの最終 的な判断は、裁判 に委ね られ ること もあろ う」 と述べ られてい る。 ここにある第 9項 につ いては、第3章 第1節で詳 しく述べ る

こととす る。

9 伊藤義一 [2008]158頁.

10 「すみやかに」 は、 「直 ちに」 よ りは緊迫の程 度、時間的近接性 の度合 いが低 い場合 につ い て訓示 的意味 を持つ もの と して用い られ、通

(9)

常の事務処理 に従 ってで きる限 りすみやかに 行 えば、「直 ちに」 行 われ な くて も、違法 と はな らない (伊藤義‑ [2008]157頁)0 l

l

「直 ちに」 は、即 時性 が最 も 、言葉で、「す

ぐに」処理 しろとい う意味である。 したがっ て、時間的近接性 が最 も強 く、仮 に間髪 を入 れずに処理 しなかった場合 には、不 当 とい う だけで な く、違法 となる (伊藤義 一 [2008] 157頁)0

12伊藤義一 [2008]156頁。

13川田剛 [2006]346頁。

14羽床正秀,古賀陽子 [2006]476頁。

15 しか しなが ら、望 月文夫 は平成3(1991)午 に同業者への質問検査権 が導入 されてか らは、

課税当局が情報収集の観点か ら法人 に劣 るこ とはない、 とい うよ り、む しろ法人 よ りも情 報収集能力があるとい う状況 が創 出 されたと 考 えてい る、 とい う見解 を示 してい る (望 月 文夫 [2008]82頁)。 この同業者 への質 問検 査 権 の法 的根 拠 は、粗特66の4第9項 で ある が、 これ につ いて は、第3章 第1節 で検 討 を 加 えることとす る。

16土屋重義 [2007]82頁。

17推定課税 における立証責任 につ いては、次項 4‑4で詳 しく述べ る

18前原英一 [2003]27頁。

19土屋重義 [2007]84頁。

20前原真一 [2003]25頁0

21川田剛 [2006]346頁、また川田剛 は同頁 (荏) において、「米 国で は、納税者 が資料 を提 出

しなかったため推計課税 が行われ た場合 には、

不服申立てや訴訟の段階になって 自己に有利 な資料 を提 出す るとい うことは認 め られ ない。

したがって、納税者 としては、課税 当局が採 用 したこれ らのデータの不合理性 につ いて争 い、それ を自 ら立証す るか、 よ り合 理的な方 法 を反証 と してあげなければな らないことと されて い る (IRC982条)。」 と米 国 につ いて 紹介 されてい る0

22金子宏 [2008]418頁。

23金子宏 は、課税要件事実の存否、つ ま り認定 につ いては、租税法の適用 にあた り租税公平 主義の観点か ら必要不可欠であると してい る。

また、課税要件事実 の認定 に必要 な事実関係 や法律 関係 の 「外観 と実体」 ない し、 「形式 と実質」 が くいちがってい る場合 には、外観 や形式 に従 ってではな く、実体や実質 に従 っ てそれ らを判断 し、認定 しなけれ ばな らない と述べ られてい る。 これは移転価格税制 にお ける各課税要件 につ いて も、取 引の外観 や形 式 だけに囚われず、取引の実体や実質 に沿 っ で 慎重 に調査 しなければな らない ことを明示 す る重要 な示 唆で あると考 える。

24金子宏 [2008]779頁。

25前原真一 [2003]32頁。

26推計課税 と推定課税 の違いについて、吉 良実 は

、「

『推定』 は法律上の用語であ り、それ は ある間接 的な事実か らお しはかって、他 のあ る事実 の存在 を決定 し、 その事実 に対 して、

法律 が適用 され、一定の法律効果 が生 ず るこ とに な る もの で あ る。 とこ ろが、所 得税 法 156条 と法人税法131条で規定 されてい る 『推 計』 とは、所得金額等や収入 ・費用等の金額 の実額 を捕捉 ・測定す るに足 る充分 な直接 的 課税資料 を税務官庁 が得 られ ない場合 に、間 接的な資料 か ら蓋然 的考察 によって実学近似 値 の所得金額等や収入 ・費用等の金額 を推算 し、推認す ることをい うので ある」 とし、『推 定』 と 『推計』 の違 いの結論 を 「同 じく法律 の用語で あ り、かつ法律効果 が付与 され るこ とになるものであるとい う点では、先程の 『推 定』 と 『推計』 とは共通性 を もつ ものである が、 しか し F推計』 はあ くまで金額の計算 に 対 して認 め られ るもので ある」 と述べている。

27金子宏 [2008]656頁。

28「推定す る」 の頬義法令用語 として、「みなす」 がある。 この 「み なす」 とは、法律上 その事 柄 を他の ある事柄 と同一視す るため、いわば 法律 の力で白を黒 と して しま うことか ら、 こ れ は絶対 的な ものであって、事実 はそ うでな

(10)

56 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第13 2009年3月

いとい うよ うな反論が許 されない。そ ういっ た意味で、「推定す る」 と用語 自体 は似てい るようだが、反対語 としての意味 を持 ってい るといえよう0

29 伊藤義一 [2008]143頁。

30 前原真一 [2003]頁。

31小松芳明 [1999]267頁。

32 「過失」 とは、 自己の行為 か ら一定の結果 が 生 じることの認識 ・予測可能性 があ り,結果 の回避が可能だったに もかかわ らず、回避す るための行為 を怠 ったことをい う。 この意味 にあてはめて考 えるな らば、企業側 は帳簿書 類等 をすみやかに提示 ・提出 しなければ、推 定規定 を受 けることは予見可能であるのだか ら、回避す るための行為、つ まりすみやかな 帳簿書類の提示 ・提出を怠 ったことは過失 と いえよう。 したがって ここではそれ を明示す る意味 を込 めて、「過失」 とい う用語 を使用

345670090123333333444

した。

国税庁 [1986]211頁。

大蔵省 [1991]287頁。

前原真一 前原真一 望 月文夫 望 月文夫 前原真一 望 月文夫

[2003]38頁。

[2003]42頁。

[2008]88頁。

[2008]82頁。

[2003]39頁。

[2008]88頁。

赤松晃 [1998]40東。

2008年10月5日 (日) に開催 され た租税法学 会 第37回総会、今 村隆報 告 に よ ると、 日本 以外で、 シークレッ ト・コンパ ラブル は、 カ ナダ、 フランス、 ドイツ、オース トラ リアで 用い られている。

43移転価格税制研究会平成19年9月中間報告書 7頁。

44移転価格税 制研究会平成19年9月中間報告書 7頁。

45 シークレッ ト・コンパ ラブルの影響 によ り、

各国では独立企業間価格算定 に係 る情報の文 書化の義務 がな されてい る。 この文書化 は、

移転価格事務運営要領2‑4に基づ き作成 され るべ きものである。 こうして国外関連取引価 格の決定的根拠 を具体的な資料によって提示 す ることによ り、課税当局による推定課税や 質問検査権の行使 が行われ るリスクを軽減 し、

課税当局による移転価格調査の効率 も格段に 向上す るもの とされている。 しか し、 これに 関 して も、文書化の過重 な負担が企業活動 を 圧迫す ることについての懸念 もな されている。

46 日本 公 認会 計 士 協 会 租 税 調 査 会 意 見報 告 平成15年度 税 制改正 に対す る意 見 ・要望書 http://www.hp.jicpa.orjp/specialized̲丘eld/

pd〝00704‑002179.

47平成16年度 か ら平成21年度 の意 見 ・要望書 で は、平成15年度 の もの と比較 して 内零 は 同 じであるが文言 が少 し異 なっている。なお、

平成20年度 の ものか ら、「移転価格税制 につ いて、その執行 に当たっては、納税者の予見 可能性 に十分配慮 して加算税の課税 を行 う等 の適切な執行が担保 され るよう制度 を整備す ること」 が新たに追加 されている。

詳 し く は、http://ww .hp.jicpa.orjp/ippan/

sp̲publicinfo̲opinion/を参照。

48大辞林第三版 によると、「漏 らす」の意味には、

「秘密 などをこっそ りと他の人に伝 える。」 と ある。 この 「こっそ り」 とい う部分が故意的 な印象 を与 える故である。

49伊藤義一 は、解釈 に当た り留意すべ き基本的 態度 として、(D正義 と公平、②諸事情の変化 への対応、(彰結論 における妥 当性 の3つ をあ げてい る。 それ ゆ えに筆者 は この3つの観点 に沿 って、 シークレッ ト・コンパ ラブルの問 題 について解釈 ・検討 したことをここに主張

したい。

50羽床正秀,古賀陽子 [2006]4頁。

51移転価格税制研究会平成19年9月中間報告書 7頁。

(11)

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その他 協 会案 件 [2007]意 見報告 「平成20年度 税制改正意見 ・要望書」 日本公認会計士協

会 。

http://W .hp.jicpa.or.jp/specializedlleld/

pdf/4‑44‑012C‑20070702.pdf

その他 協会 案 件 [2008]意 見報告 「平成21年度 税制改正意見 ・要望書」 日本公認会計士協

会 。

http://ww .hp.jicpa.orjp/specializedJield/

pd〝4‑44‑0‑2a‑20080630.pdf

参照

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