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ジグソーメソッドによる保健体育科の授業づくり

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(1)

はじめに

 これからの教育課程は,よりよい社会を創るという理念を学校と社会が共有していく

「社会に開かれた教育課程」の実施が期待され,そのために社会や世界に通用する資質・

能力を育む各学校の「カリキュラム・マネジメント」が重要であり,学習指導要領では総 則の構造が刷新され,「何ができるようになるか」,「何を学ぶか」,「どのように学ぶか」,「何 が身に付いたか」,「発達をどのように支援するか」,「実施するために何が必要か」が示さ れた。

 引き続き「生きる力」が大きな柱とされており,中でも基礎的 ・ 基本的な知識・技能の 習得が重要であることは言うまでもないが,思考力・判断力・表現力等の育成について,

十分に留意しなければならない。

 「どのように学ぶか」については,生徒一人一人の「主体的 ・ 対話的で深い学び」を実 現し,学びの動機付けや幅広い資質・能力の育成を図っていく必要性から生徒ファースト の授業ができる教師が求められている。

 「アクティブ・ラーニング」は,学習者である生徒が主体的・対話的で深い学びに繋が る学習法であり,ここで取り上げるジグソーメソッド(ジグソー方式)のジグソー法・知 識構成型ジグソー法もその一つで,他者との関わりの中でより深く知識を構築していくこ とに重きを置いた学習法と言われている。

ジグソーメソッドによる保健体育科の授業づくり

石井 悦夫

(2)

1 「ジグソー法」の捉え方

 ジグソーメソッドは,協同学習・強調学習の実現方法として紹介されているが,元はア ロンソンという社会心理学者の実践方略である。

 おなじみのジグソーパズルは,バラバラの絵を完成させるが,ジグソーメソッドでは,

教師が学習内容をテーマごとに分割し,それを生徒たちが協力して完成させていくという 協力性が大きなポイントになっている。

 実際の学習では,単なるパズル合わせで終わらず一つ一つのピースを合わせようとする たびにピース同士が様々な相互作用等,相互影響を起こし変容する。質が高まる学習活動 が起こり,そのための環境づくりが「ゾグソーメソッド」。互いが協力する構造や教え合 いを促すやり方で研究が進んできた。

(1) 「ジグソー法」考案の背景と展望

 1971 年,アロンソンはテキサス州オースティンの要請で観察を始めるが,当時,人種 分離廃止政策はうまく進んでおらず,マイノリティーの子どもたちの学力や自己肯定感の 育成も停滞し,学校は暴力事件が日常的で何度か命に関わる事件も起こり,正に混乱の状 態に陥っていた。

 この課題を解決するために,教育現場での生徒間競争を軽減させ,互いに協力する協同 的なものへと変えていくために「ジグソー法」を考案した。

 子どもたち同士の対立や偏見を和らげることに効果を上げ,他の教育上の利点も広く生 み出していった。協同学習の利点をさらに明らかにし,普段の教育に組み込んでいくこと がねらいにあった。

 考案者アロンソンは,より温かで緊密な友人関係をもたらすだけでなく,生徒の自尊心 を高め,学ぶことへの意欲を高めて学力の向上に効果があるとしている。

 現在,外国籍生徒の多様化・増加傾向,異なる文化的背景,人格・技能・能力,自尊心 や情緒面など様々な課題が見られ,個に応じた学習手法で全ての生徒に効果を発揮する必 要がある。心の安定や向上心など学習効果を上げる面からも大切な視点である。

 ジグソーメソッドには,教育目標を達成するために協力する対人技能を発達させて学 級・ホームルーム体制を構築し,さらにより楽しく互いを尊重する姿勢を向上させるねら いがある。

(3)

(2) アロンソンの実践研究

 協同学習では,生徒が仲間に評価されてよい質問をし,互いに助け合い,他者の学びを 助けるときに効果を上げる。

実践例:「ある人物の伝記学習」

 ・ある人物伝記の半生をA~Fの6つに区分

 ・学習集団を6人グループに分ける       (「ジグソーグループ」)  ・6区分(A~F)を切り離す

  各グループ内の6人に1区分ずつ配布

 ・グループ内の各区分担当は,与えられた区分内容を十分に理解していく

 ・同じ区分の担当同士(A~F)で集まり,意見交換等により全員が各区分の専門家に なる      (『エクスパートグループ』)  ジグソー学習の過程において,『エクスパートグループ』は重要な位置づけになる。

 話が上手でない,技能が劣る,理解が浅い等の生徒に対して対応策を提供しつつ,よ りよくできる生徒の紹介機会を与え,発表の方向性を明確にさせる。

 ・「ジグソーグループ」に戻る

 ・ジグソーグループ内で,A~Fを通して理解できるように調整  ・互いの内容を教え合う時間の提示

 ・授業の終わりに,全体について知識テスト

 生徒は,学習すべき全体内容を互いに頼らなければならない。

 この過程は,それぞれの生徒が全体の中の不可欠部分を持っているジグソーパズルを 想起させるので,ジグソーモデルと呼ばれるようになった。

 構造化された学習の中で,生徒は自分自身が情報源であることで徐々に教え合い,しっ かり聞くようになり,

 ・誰もが他者の助けなしには学べない

 ・各々,不可欠な部分と必要な意見によって貢献することができる

など,各生徒が教える立場になり,能動的参加者として学びへの責任を持つことになる。

(4)

(3) ジグソー学習過程における事例研究

 級友からしばしばからかわれる男子生徒は黙っていることが多かった。授業中,指名さ れると口ごもることもあり,指名も徐々になくなり周りからは相応に見られるようになっ た。

 ジグソー学習に入ると,他の生徒たちはほとんど助けずにいたところ,教師が「みんな のそのような姿勢では彼から学ぶことはできないよ。20 分後に全体理解についてのテス トをします。どうしたらいいのかよく考えなさい。」と。

 必要に迫られて,次第に聞き始め,探るような質問も出てきて,数時間を経て男子生徒 には伝える力の向上が見られた。級友は少しずつ彼に心を開き始めた。

 アロンソンは,ジグソー法研究で人の結びつき,自尊心,学校での満足度等の調査を行い,

 ・同じ学級の生徒も好きになったが,ジグソーグループの生徒はより好きになった  ・生徒の自尊心が高まった

 ・授業理解でも効果があった

 ・共感の大切さを学び,他者の立場を理解するようになり,

 週数時間程度の実践であっても十分な効果が得られ,生徒の満足度も高まり,双方の未 熟さに対する寛容さも身に付けられたとした。

 また,ある程度の競争は,効果を上げることも承知しておきたいとの理解も示している。

(4) ジグソー学習の適否

 文章を基にした教材で,生徒間で平等に分割できる場合に最も効果を発揮すると言われ ているが,一定の読解力を持たなければならない。したがって,幼い子にはお進めできず,

小学校高学年以上が言語能力の関係から適正であるとされている。

 この教材で筋道が理解され,用語や内容のつながり・関連を知り,ねらいの全体を把握 し,知識の習得や言語能力の発達を促すなど,様々な視点を作り出す。

 しかし,グループの人数が少ないと学びの広がりが不足し,多すぎると個々の意見表明 が不足して効果の低下となる。さらに,グループ構成は男女混合,積極的な生徒とそうで ない生徒,理解の早い遅いなど多様性に富む集団は学習資源を拡げていく。

 また,親しい友達やトラブルのあった生徒同士の構成は避けるなど配慮も必要となる。

生徒同士が打ち解けてグループスキルが高められていくためには,扱う時間数との兼ね合 いも必要となる。

(5)

(5) 必要なグループ形成活動

 ジグソー法を含む協同学習では,望ましいグループ機能のための準備が必要であること から,アロンソンは,次の活動を提示している。

① 聞き取る力の構築

 ジグソー法の活用では,人の話を聞く技能が重要であることから,そのための育成機 会を設定する必要がある。せっかく話しても聞いてもらえないと感じた生徒は疎外感を 感じて,責任もって教えようとする姿勢が損なわれることになりかねない。

② グループピクチャ

 紙とペンをグループメンバーに回し,一人一人が書き足していき,一つの絵を描く。

 絵の完成後,書き足した部分のポイントを話し合い,協力して活動することの有益性 を理解させていく。

③ ブロークン・スクエアズ・ゲーム   壊した正方形を皆で戻していく。

  ・グループ人数分(例として5人分)に,同じ大きさの正方形を用意し,次の図のよ うに3ピースにカットする

  ・これらのピースをランダムに5人分に分けて配布する

  ・言葉は発しないで,他者を注意深く見てピース交換をし,全員が正方形を完成させる。

 このときに各生徒が行うことは,必要なピースを誰かのために自分のピースを渡そうと することである。積極的に他者を助けることを促すが頼んだりしない。全てのメンバーが 率先して行動することである。

 ここでは,全員の成功が個々にかかっているという認識を持たせたい。

 ジグソー法の実践では,見識ある個々人の表現に支えられる。生徒たちは,学習内容の 全体像を得るために互いを必要とするので,積極的な相互関係が発揮される。

 ジグソー法は,相互作用を重視するため,目的が学力成果あるいは人間関係の発達のど ちらであろうと,円滑な集団活動が求められる。

(6)

(6) 学習カードの必要性

 学習カードは,グループでの学習効果向上のための記録であり,さらによりよく協力す るためにフィードバックできる内容が求められる。

 ・互いの話を聞き,よいことに対応したか  ・皆が助け合ったか

 ・質問にはしっかり答えたか

 などが考えられるが,考えをしっかり出させ,分からないときは分からないなりに素直 に態度や表情で表現する姿勢も大切となる。

 学習活動を生徒の自主性のみに委ね,「活動あって学びなし」と指導の型をなぞるだけ で学びにつながらない授業になってしまうことのないようにしたい。

2 ジグソー学習の「ジグソー法」・「知識構成型ジグソー法」の各モデルについて  「ジグソー法」考案のねらいには生徒の関わり合いの促進があり,次のように基本の学 習過程を提示した。

「ジグソー法」

(ステップ0) (ステップ1) (ステップ2) (ステップ3) (ステップ4)

教師の準備 ジグソーグループ エクスパートグループ ジグソーグループ (全体理解度)テスト

①学習課題の内容 資料をグループ 人数分に分割し ておく。

 このときの各グ ル ー プ 人 数 は,

同数とする。

②学習課題は,ど のグループも同 じ内容とする。

①各グループに資 料を1セットご とに配布するが,

各生徒は分割し た学習課題の資 料の1つのみを 受け取る。

②各自の配布内容 を理解する。

①同じ配布パート 別で集まる。

②互いに意見交換 により理解を深 め,担当パート に詳しくなる。

③ジグソーグルー プのメンバーに 伝える最良の方 法を考える。

①元の「ジグソー グループ」に戻 り,互いの情報 を共有し,協議 することで,全 体を理解する。

①ジグソーグルー プでの教え合い 後にテストを行 うことを伝えて おき,実施する。

主な準備

 提示内容の事前 分轄

各生徒

全体の中の担当部 分の理解

各生徒

全体の中の担当部 分の理解を深める。

生徒全員 全体理解

各生徒 テスト

 アロンソンは,「ジグソー法Ⅱ」として上記ステップ1のジグソーグループに記した「各 生徒 全体の中の担当部分の理解」を下記の「知識構成型ジグソー法 ステップ1」のよ うに全体を読ませて進めるスレイヴィン形態にも理解を示している。

 また,教員研修のワークショップ例示では,ステップ4の全体理解度テストを省いた流 れで示されている。

(7)

「知識構成型ジグソー法」

(ステップ0) (ステップ1) (ステップ2) (ステップ3) (ステップ4) (ステップ5)

教師の準備 課題への意識化 エキスパート活動 ジグソー活動 クロストーク 課題に向き合う 明確な「問い」の

設定

①知っていること,

3か4の知識を 部品とする。

②組み合わせると 解けるようにす る。

③ 必 要 な 資 料 を パート別に準備 する。

明確な「問い」に 対して,各自で思 いつく答えを書く。

①同じパート別に グ ル ー プ に な る。

②各グループで理 解を深め,担当 パートに詳しく なる。

①全体が掌握でき るよう,各担当 パートが一人ず つ入ったグルー プになる。

②グループ内の全 員から説明を聞 き,各パートと の関連を考えて,

理解を深める。

①他のジグソー活 動グループの発 表を聞く。

②ステップ1の「問 い」への答えを イメージする。

①ステップ1の「問 い 」 に つ い て,

再度一人で考え て答えを記述す る。

主な準備

 提示内容の事前 分轄

生徒全員

「問い」に答える

(その1)

各生徒

全体の中の担当部 分の理解を深める。

生徒全員 全体理解

生徒全員 全体理解

生徒全員

「問い」に答える

(その2)

 「知識構成型ジグソー法」は,教育の手段として目指す授業法ではなく,生徒自身によっ て実現される学びを目指すものであり,「協調学習」の実践に適しているとしている。

 明確な問いを設定して,学習の前後で問いに対する回答を2回求めるなどの特徴を持つ のは,この方向性からきている。アロンソン「ジグソー法」の関わり合い促進そのものが ねらいにあるのとは違うとしている。

   「ジグソー法」………知識定着を意図した正解到達型    「知識構成型ジグソー法」…能力育成を意図した知識構成型

と考え,両者が対立的なものではなく相互に補う相補的な関係にあるともされており,共 にジグソーメソッドである。

3 ジグソーメソッドによる保健体育科の授業づくり

 指導手法としては前述の「ジグソー法」「知識構成型ジグソー法」を参考に教科として の保健体育科の特性,そして実施したい単元の特性を承知して進めたい。

(1) 体育分野における活用例

① 中学校1・2学年「陸上競技 走り幅跳び」

 ・エキスパート活動    A 助走・踏み切り    B 空間動作

(8)

   C 着地・足合わせ

   ※学習カードに「伝達したいこと」を記録  ・ジグソー活動

   エキスパート活動で理解した内容を他のメンバーに伝える。

   知識・技能を確認しながら,記録が伸びるように活動する。

 ・クロストーク

   発表し合い,動きの定着を図る  ・振り返りとまとめ

   よいグループの紹介

   学習カード記入,自己評価・相互評価    記録会の実施

② 高校1・2学年「陸上競技 長距離走」

 ・エキスパート活動    A ストライド    B 腕振り    C 着地

 ・ジグソー活動   ①の対応。

   ペース走・インターバル走・心拍数測定  ・クロストーク   ①の対応。

 ・振り返り     ①の対応。

③ 中学校1・2学年「ダンス」

 ・エキスパート活動    A ステップ    B 場の工夫

   C 集団・隊形の工夫  ・ジグソー活動   ①の対応。

 ・クロストーク   ①の対応。

 ・振り返り・まとめ ①の対応。

   学習成果としての発表

(9)

(2) 授業において指導技能が多数の運動種目『マット運動』におけるエキスパート活動 の設定例

 器械運動の授業において教師が他の運動種目以上に苦労する点は,技の適切な指導・助 言が難しいことである。学習指導要領解説の器械運動には,中学校・高等学校に共通して

「自己に適した技で演技する」ことが求められている。

 例えば,マット運動において前転→開脚前転と技の系統性を承知して技の習得のための カードの提供やタブレット端末利用の工夫をするが,エキスパート活動の項目設定は特に 迷いが生じる。研究成果の中では3項目設定が多く見られるが,ここに3つの技を当ては めて指定してもマット運動が苦手でできる技が少ない生徒にとっては「自己に適した技で 演技する」方向には向かず苦痛となるため,工夫ある設定が必要になる。

 ア 逆さ感覚,回転感覚,支え感覚を高めるための各種の動きの設定  イ 前転・後転・倒立姿勢など生徒の状況把握で基礎的な技の設定

 ウ できる,頑張ればできるかもしれない,補助具があればできると思われる技につい て,望ましいこなし方,基礎的動きの活用,補助具の利用法の設定

 エ 発表課題とする「はじめ→なか→おわり」の条件を変えた技,組み合わせ方,安定 感と美しさの表現,リズム感

などが例として挙げることができる。

 教師が技の適切な指導法を習得しているかが,大きなポイントになるので難しい領域で ある。

(3) 体育理論・保健分野の実践について

 新中学校学習指導要領(保健体育)と解説には    「体育理論」は,各学年で3単位時間以上    「保健分野」は,3年間で 48 単位時間程度 の配当と示されている。

 「保健分野」の第1学年の内容は,

(1)「健康な生活と疾病の予防」のアの(ア)(イ)

(1)「健康な生活と疾病の予防」のイ

(2)「心身の機能の発達と心の健康」のア

(2)「心身の機能の発達と心の健康」のイ

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第2・3学年も同様の示され方があり,各学年の「…のア」について解説には  「理解するようにする。」第1学年は 13 記述

と多数示され,各学年の「…のイ」については

 「…に関わる事象や情報から課題を発見し,…したり,…を考え,適切な方法を選択し,

それらを伝え合うことができるようにする。」 と示されている。

 総則第1の2では「(1)から(3)までに掲げる事項の実現を図り,生徒に生きる力を育む ことを目指すものとする。」とし,(1)には「確実な習得,思考力・判断力・表現力を育む,

主体的に学習に取り組む態度を養う」などが記されている。

 上記に示した解説の「…のア」「…のイ」は,この具体化の提示と捉えたい。

 保健分野・体育分野の全分野でほぼ同じ表現があるため,保健体育科のジグソーメソッ ドの活用は望ましい学習法になる要素がある。

 さて,「保健分野」48 単位時間を1年当たりで換算すると 16 単位時間となり,各学校の 配当時間はこれに近いところで設定されると予想される。

 一方,学年当たりの項目数は第1学年では,⑴の(ア)(イ),⑵の(ア)(イ)(ウ)(エ)

の6項目である。教科書採択における教科書展示も中学校は来年度であるため,明確な配 当時間案は現時点で提示しにくい。ここでは仮に1項目当たりで換算すると約 2.5 単位時 間になる。他学年も大きくは変わらない。 この時間数を基に次のように考えた。

① ジグソー学習の活用法

 指導計画をどのような考えで設定するかで,ジグソーメソッドの活用は変わってく る。ジグソー法・知識構成型ジグソー法の基本的手法を参考にして

  ・1単位時間の中で

  ・上記6項目の1項目を小単元として   ・上記6項目の2項目を中単元として   ・上記6項目の⑴を中単元として          ⑵を大単元として  進めるいくつかの方法が考えられる。

② 教科書に掲載される保健用語

 1単位時間内で教科書記載の理解が必要な保健用語は,10 を超えることもしばしばあ

(11)

る。効率よく理解させる工夫により時間を確保しなければ,教科書をなぞるだけの授業 になってしまう。

③ 実習を伴う授業の場合

 実習を通して応急手当ができるようにする内容についてはステップ後半にポイントを 置き実習での成果を上げるなど,慎重に進める必要がある。

(4) ジグソー学習利用の実践から

① 生徒の様子

 ・教え合いの活動が増えた

 ・生徒同士が認め合う時間が増えた  ・自己肯定感の向上につながった

 ・フォームを考える時間として有効だった  ・普段目立たない生徒も活躍できた

 ・グループでの記録の伸びを評価項目に入れたため,教え合いが活発だった  ・苦手な生徒も自分の役割があるため,主体的に活動できた

 ・学習カードが有効に機能した

 ・最終的には「関心・意欲」が高かった  ・数時間目から協力評価が高まった

 ・固定化した話し合いが徐々に減っていった

 ・なぜ,提示内容や教え合いが大切かを必要に応じて説いたので,数時間目でエキス パート活動が機能し,記録が向上した

② 授業で工夫・改善したい具体的な点

 ・ジグソー活動が単なるABCの足し算的になってしまい,工夫の広がり・発展に繋が らなかった

 ・空間動作に興味が傾いてしまい,ジグソー活動ではそれが中心の活動になったグルー プがあった

 ・活動エリアが広すぎて意思の統一がうまくいかなかった

 ・実施種目に得意な生徒,苦手な生徒に配慮したジグソーグループ・エキスパートグ ループづくりも大切である

 ・話し合いと運動量とバランスを考えた活動にしていかなくてはいけない

(12)

 ・TT形態の授業では,教師の事前協議の充実が大切である

 ・他教科や他の単元でのジグソー学習によって取り組み易さができくるので,校内研修 テーマ等の取り組みがあるとよい

 ・ジグソー学習のための事前準備(各ステップ計画と内容など)は重要である

 ・特に,適切な課題設定やエキスパート活動の種目や生徒の実態に適した項目・内容立 てはさらなる研究の余地がある

 ・タブレット端末やDVD教材など,新たな教材教具の開発が待たれる

 ・ジグソーメソッドと他の指導法を織り交ぜる可能性について単元計画の検討がなされ ることも必要である

 ・ジグソー法にあるテストの利用法として,毎時間の小テスト的なものにはタイム測定・

記録測定・フォームチェック,学習カードによる自己評価・相互評価などがあり,こ の運用を考えたい

4 ジグソー学習導入の単元計画における配慮・工夫すべき事項  ・ジグソーメソッドを何時間利用するか

 時間を重ねることで話し合いが活発になり,普段意見の少ない生徒も動きづくりに 積極的に関わりだした報告がある。

 ・何時間かけて全ステップを進めていくのか  1単位時間で全ステップを進める  2~3単位時間で全ステップを進める  ほぼ全単元で全ステップを進める  ・ステップ1では,全体提示か,部分提示か  ・ステップ2でのエキスパート活動

 提示項目数はいくつにするか  提示項目・内容は,毎回変えるか  提示項目は変えずに,内容を変えるか  提示は,全グループ同じか,違う提示か  ・ステップ3における指導の工夫

 ・全体理解度のテストは実施するか

(13)

 ・クロストークの実施と内容の検討  ・ステップ5の扱い方の工夫

 学習カード記入による振り返り  自己評価・相互評価

 体育実技では,運動技能や戦略等を理解し実践できる対応力,保健分野においても必要 な知識理解との兼ね合い・工夫ある対応など,ジグソーメソッドの中での可能な弾力的で 適切な対応が大切である。

5 ジグソー学習活用の留意点

(1) 協同的学習とラーニングピラミッド

 文部科学省は,アクティブ・ラーニングを「主体的・対話的で深い学び」として強調し ていますが,ラーニングピラミッド結果を承知した考えと思われます。

 この考えは,アメリカの国立訓練 研究所が大学生を対象に調査研究し た結果です。研究対象が大学生であ ることから学習定着率(%)が全て の世代と同率かどうかはやや疑問の 余地もありますが,ピラミッドその ものは概ね理解されているものと考 えます。

 この中にある「人に教える」とは,「生徒が生徒に教える」であり,「学び合い」という ことにもなる。この学び合いは「自己への問いかけを繰り返して他者と関わりながら,自 分やグループの考えを発展させて,共に高め合うこと」とまとめることができる。

 単なる意見交換で全体把握をするだけでなく,よりよい話し合いのために,自問し,活 動を起こし,他者との連携を進めることで,「練り合う・深め合う」活動段階が期待される。

 しかし,教師はこの「学び合い」場面の実施において上手くいかない授業に少なからず 遭遇し,ついつい講義形式が多くなってしまう事態に陥ってしまうのである。

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(2) 各グループ活動の留意点

① 外発的動機付け・内発的動機付け

 既存の対応法に自分の考えを入れていく,あるいは全く新たな発想を提示するなど,

生徒にとって難しい作業が待ち受けている。

  ア 体育実技の技能的内容については,自ら進んで助言できる能力が求められ,

  イ いくつもの必要な技能の内,何を指摘すべきかを瞬時に見つけ出す能力など,

  ウ イについて,どのように指摘すべきかを見通した対応が必要になる。ここでは相 手に対して適切な「言葉掛け」が重要となり,「言葉探し」が大きなポイントと なる。

 ステップ1では,外発的動機付けとして課題や「問い」などを投げかけ,ステップ2 のエキスパート活動では,周りの刺激を受けながら内発的動機付けも加わり,各ステッ プが充実していくため,授業者はこれらを意識しながら効果的な授業を進めたい。

② 練り合い活動

 グループ活動においては,十分な練り合い活動にするためには次の4種類の中のどの パターンで進めたらよいかを模索させたい。

  ア 尊重型練り合い・・・個々の考えをまとめず,さらに深める   イ 順位型練り合い・・・個々の考えの中で有効な考えを選ぶ   ウ 集約型練り合い・・・個々の考えを一つにまとめる。

  エ 分類型練り合い・・・個々の考えを数グループに分類する。

6 まとめ

 スクールカウンセラー明橋大二は,著書「子育てハッピーアドバイス・大好きが伝わる ほめ方,しかり方」で,人間が生きる上で最も大切なのは「自己肯定感」と述べている。

 ・自分は大切な存在

 ・自分は生きている価値がある

 ・自分はいらない人間なんかじゃないんだ  ・他人から必要とされている

 ・社会から必要とされている  ・自分はここに居ていいんだ

(15)

 「自己肯定感」と「自分の能力への自信」は,「存在への自信=自己肯定感」であり,人 間が生きていくときに必要な自信であろう。

 学び合いは「自己肯定感」を醸成し,生徒たちの資質や発想が異なるほど充実し,この ことで,個を持ち自分を開くと同時に,他者を尊重し率直に向き合える態度の育成は,雰 囲気づくりにもつながり,学級・ホームルーム経営上においても大切である。

 また,令和元年 12 月にOECD生徒の学習到達度調査(PISA)2018 年の要約が発表され,

読解力は 77 か国中 15 位であった。

 レベル5以上(レベル1未満~6以上の7区分中)の割合が多かった国は,シンガポー ルで「読解力全般」「理解」「熟考」など 26%・26%・31%に対し,日本は 10%・11%・

13%である。

 「深い学び」で必要な押さえ処である「見方 ・ 考え方」との関連もあり,学習の中で育 まれることで大人になって生活していくに当たって重要な働きをするものとなる。

 「見方・考え方」は,知識・技能を構造化して身に付けたり,思考力・判断力・表現力 を豊かなものとしたり,社会や世界にどのように関わるかの視座を形成したりするために 重要なものであり,ジグソーメソッドはこれらの効果が期待できると考えられる。

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【主な引用・参考文献】

(1) Beating特集「知識が集まる。それはパズルのように」~「ジグソーメソッド」)

(2)2015 年(平成 27 年)8月 26 日「中央教育審議会教育課程 企画特別部会論点整理」

(3)2016 年(平成 28 年)7月 19 日「中央教育審議会教育課程 総則・評価特別部会,小 学校部会,中学校部会,高等学校部会における議論の取りまとめ」

(4)2017 年(平成 29 年)7月 文部科学省「中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説  保健体育編」

(5)2016 年(平成 28 年)3月 昭和女子大学教育研究会訳「ジグソー法ってなに? ─み ん な が 協 同 す る 授 業 ─ 」「Cooperation in the Classroom : The Jigsaw Method」by Elliot Aronson, Shelley Patnoe

(6) http://www.beatiii.jp/

 東京大学大学院 情報学環 ベネッセ先端教育技術学講座 Beating特集「5 分でわか る学習理論講座」第7回:知識が集まる。それはパズルのように。〜「ジグソーメソッド」)

(7)2019 年(平成 31 年)3月 東京大学CoREF

 協調学習授業デザインハンドブック第3版─「知識構成型ジグソー法」の授業づくり―

(8)2015 年(平成 27 年) 埼玉県立総合教育センター 調査研究報告書 「『協調学習』の 進め方」

(9)令和元年(2019 年)12 月 文部科学省 国立教育政策研究所 OECD生徒の学習到達 度調査(PISA) ~2018 年調査国際結果の要約~

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