IESO法を用いた構造性能と採光性能の両立を目的と するシェル構造の形態創生
著者 明石 凌平
出版者 法政大学大学院デザイン工学研究科
雑誌名 法政大学大学院紀要. デザイン工学研究科編
巻 10
ページ 1‑8
発行年 2021‑03‑24
URL http://doi.org/10.15002/00023779
法政大学大学院デザイン工学研究科紀要 Vol. 10(2021年3月) 法政大学
IESO 法を用いた構造性能と採光性能の両立を目的とする シェル構造の形態創生
TOPOLOGY OPTIMIZATION OF SHELL STRUCTURE FOR COMPATIBILITY BETWEEN STRUCTURAL AND DAYLIGHT PERFORMANCE USING IESO METHOD
明石凌平
Ryohei AKASHI
主査 浜田英明 副査 吉田長行・川久保俊 法政大学大学院デザイン工学研究科建築学専攻修士課程
This paper aims to allow compatibility between structural and environmental performance, performing topology optimization targeting continuum shell structure. The IESO (Improved Evolutionary Structural Optimization) method is compatible with daylight performance and that makes it easier for simultaneous evaluation with structural performance. By using a method of assigning arbitrary weighting coefficients to each evaluation performance, we study the influence of structure and daylighting on buildings.
Key Words :Topology optimization, IESO method, Balance of Structural and Environmental Performance, Computational Morphogenesis, Continuum shell structure
1. はじめに
自由な曲面を実現できるコンクリートシェルは,これ まで多くの魅力ある建築物を産み出してきた.近年,コン クリートの高強度化,軽量化,新素材による補強の多様化 に伴い,様々な形態のコンクリートシェルが建設されつ つある.また,コンピューター技術の発展によりシェル構 造の形態創生や構造性能の最適形態を導き出せる研究が 多く行われている.
シェル構造は主に大空間構造物として使用されている が,構造性能のみ満足していても,その巨大な物体が実現 することで内外空間の風,気流,照度,熱の分布など環境 的な影響も与えるため環境性能も満足させなければなら ない.コンピューター発展の前時代である1950年から独 自の実験的研究を行い,美しい形態のシェル構造物を多 く作り出したハインツ・イスラーはシェルの実験的形態 創生や構造性能だけではなく採光性能,いわゆる省エネ ルギーのシェル構造物の研究を行っている.しかし,現代 において,このような構造と環境の両方の性能評価につ いて述べたシェル構造物の研究はあまりされていない.
環境分野における評価指標は複数存在し,正確な居住 性や快適性を評価するためには,温熱や気流,音,光など 様々な要因について考える必要がある.温熱環境につい て解析を行う場合,内外部の境界条件だけでなく,気流 や照明器具による発熱,太陽の放射熱など様々な要因に ついて想定する必要がある.気流においては機械工学の
分野などで形状の最適化の研究は行われているが,建築 という巨大構造物に対しては,未だ膨大な解析時間を要 し,構造との両立を目的とした形態の最適化は難しい.
そこで本論文では,進化的構造最適化手法である ESO 法を改良した,改良型ESO法(IESO法)[1]にCA法を付加 率として加えたCA-IESO法[2]を用いて,複数ある環境性 能評価指標のうち,他の要因の影響を受けにくく,位相最 適化と相性のよい採光性能を評価指標として導入する.
構造性能と採光性能の2つの評価指標を目的関数として 扱うことで,力学的合理性を有しつつ,良好な採光環境が 確保されたシェル構造の形態創生が可能となることを示 し,その有効性を検証する.
2. 構造性能評価指標
(1)IESO法の概要
本論文に用いるトポロジー最適化手法では,物体領域 を包含する直方体の固定設計領域(各辺の長さ:𝐿𝑥, 𝐿𝑦, 𝐿𝑧) を設定し,これを均等な直方体要素(ボクセル)で分割す る(各辺の有限要素分割数:𝑛𝑥, 𝑛𝑦, 𝑛𝑧).そして,物体領 域と空洞領域の判別は設計変数であるボクセルの密度の 有無(1/0)によって与える.この時,ボクセルの各辺の 長さ𝑙𝑥, 𝑙𝑦, 𝑙𝑧は,𝑙𝑥= 𝐿𝑥⁄𝑛𝑥, 𝑙𝑦= 𝐿𝑦⁄𝑛𝑦, 𝑙𝑧= 𝐿𝑧⁄𝑛𝑧 とな る.ボクセルを用いた応力解析の方法(ボクセル有限要素 法)は,文献[1]に示すものにしたがう.また,IESO法[3],[4]
によるトポロジー最適化では,ボクセル有限要素法の利
点を生かすため,最適化の過程でリメッシュは行わず,物 体領域となる存在要素の密度を1,空洞領域となる除去要 素の密度を0 とすることで各ステップの材料分布を決定 する.
IESO法[3],[4]では,要素除去に関しては,拡張ESO法[5]
のルールを用いる.ただし,要素除去の指標としてBESO 法[6]で用いられているひずみエネルギー感度(コンプライ アンスの要素密度に関する感度[6])を用いる.したがって,
要素除去のルールは次式となる.
𝜌𝑖= 0 𝑖𝑓 𝛼𝑖< 𝑋𝑐𝑟;i = 1, ⋯ , 𝑁𝐿 (1)
ここで,𝜌𝑖, 𝛼𝑖は要素iの密度(0 or 1)とひずみエネルギー 感度,𝑁𝐿は残存要素数,𝑋𝑐𝑟は閾値で,次式で定義される.
𝑋𝑐𝑟= 𝛼𝑎𝑣− 𝜂 ∙ 𝜙 (2)
ただし,𝛼𝑎𝑣とϕは残存要素のひずみエネルギー感度の平 均値と標準偏差であり,次式から計算される.
𝛼𝑎𝑣= 1 𝑁𝐿∑ 𝛼𝑖
𝑁𝐿
𝑖=1
ϕ = √∑(𝛼𝑖− 𝛼𝑎𝑣)2
𝑁𝐿
𝑖=1
𝑁𝐿
⁄ (3)
ここで,ηは要素の除去量を制御する制御変数であり,η が大きいと要素が除去されにくく,ηが小さいと除去され やすくなる.
IESO法では,BESO法と同様に各ステップの要素除去 率を与える.この除去率をλとすると,第kステップの除去 要素数𝑁𝑅(𝑘)は,次式で計算される.
𝑁𝑅(𝑘)= {𝜆𝑁𝐿(𝑘−1) 𝑖𝑓 (1 − 𝜆)𝑁𝐿(𝑘−1)≥ 𝑁̅𝐿 𝑁𝐿(𝑘−1)− 𝑁̅𝐿 𝑖𝑓 (1 − 𝜆)𝑁𝐿(𝑘−1)< 𝑁̅𝐿 (4)
ここで,𝑁𝐿(𝑘−1)は(𝑘 − 1)ステップの残存要素数,𝑁̅𝐿は残存 要素数の制約値(下限値)である.そして,(1)式で除去さ れる要素数が,(4)式の𝑁𝑅(𝑘)に近くなる𝜂(𝑘)(第kステップ
(2)式のη)をプログラム内で自動計算する[4].
一方,(1)式の𝛼𝑖は,次のように求められる[3],[6].まず,
次式により要素のひずみエネルギー𝛼𝑖𝑒が計算される.な お,これは,コンプライアンスの要素密度に関する感度の 1 2⁄ に相当する[3],[6].
𝛼𝑖𝑒= (1 2⁄ )𝐝𝑖𝑇𝐊𝑖𝐝𝑖 (5)
ただし,𝐊𝑖, 𝐝𝑖は要素iの剛性マトリクスと節点変位ベク トルを表す.次に次式により節点jの感度が計算される.
𝛼𝑗𝑛= (∑ 𝛼𝑖𝑒
𝑀𝑒
𝑖=1
) 𝑀⁄ 𝑒 (6)
ここで,𝛼𝑗𝑛は節点jのひずみエネルギー感度,𝑀𝑒は節点 jと接続関係を有する要素の数を表す.なお,これは,チ ェッカーボード状の密度分布を防ぐために行われる.そ して,(1)式の𝛼𝑖は次式から計算される.
𝛼𝑖= (∑ 𝑤(𝑟𝑖𝑗)𝛼𝑗𝑛
𝑀𝑛
𝑗=1
) ∑ 𝑤(𝑟𝑖𝑗)
𝑀𝑛
𝑖=1
⁄ (7)
ただし,𝑀𝑛は要素 iの要素中心から影響半径𝑟𝑚𝑖𝑛の球体 内に含まれる節点数,𝑟𝑖𝑗は要素iの中心から節点jまでの
距離,𝑤(𝑟𝑖𝑗)は要素中心からの距離に比例する重みで,次
式で定義される.
𝑤(𝑟𝑖𝑗) = 𝑟𝑚𝑖𝑛− 𝑟𝑖𝑗 (8)
以上の解析では,有限要素解析に必要なデータとして,
固定設計領域の大きさ(𝐿𝑥, 𝐿𝑦, 𝐿𝑧),分割数(𝑛𝑥, 𝑛𝑦, 𝑛𝑧),ヤ ング係数,ポアソン比,境界条件,荷重条件がある.また,
最適化計算に必要なデータとして,(8)式の影響半径𝑟𝑚𝑖𝑛
(実際には,𝑟𝑚𝑖𝑛= 𝑏𝑟∙ 𝑙𝑥として𝑙𝑥の倍数𝑏(影響半径倍率)𝑟 で与える),(4)式の残存要素数の下限値𝑁̅𝐿(実際には,
目標体積比𝑉̅𝑟= 𝑁̅𝐿⁄(𝑛𝑥∙ 𝑛𝑦∙ 𝑛𝑧)で与える),除去率λ(残 存要素数に対する 1 ステップの除去率)がある.固定設 計領域内に空洞領域や非設計領域を設定する場合は,設 計対象から除外する要素の番号・密度情報(0/1)を定数 として入力する必要がある.
(2)コンプライアンス最小化問題
位相最適化では,初期形態に対して目標体積になるま で逐次的に制約を大きくしていき,最終的に目標体積に 達したものを獲得位相として評価する.しかし,一般的に 初期形態は目標体積より大きく設定されているため,最 適化された個体のコンプライアンスなどの性能は初期形 態と比べて低下する.
コンプライアンスは構造形態の剛性として評価し,次 式で計算される.
C = {𝐹𝑗}{𝑢𝑗} (9)
ここで,Cは形態のコンプライアンス,{𝐹𝑗}は形態の節点j に作用する外力,{𝑢𝑗}は形態の節点jの変位である.コン プライアンスは,一般的には値が小さいほど構造性能が 優れていると評価される.ただし,本論文では,要素が除 去される過程で全体にかかる物体力が小さくなっていく ため,初期形態の平均コンプライアンス𝐶0と進化過程で の平均コンプライアンスCの比である平均コンプライア
ンス比𝐶 𝐶⁄ 0は進化が進むごとに小さくなる.
3. 採光性能評価指標
(1)開口部による昼光率計算
開口から入射する日光に対して計算する際,正確な解 析を行うと時間と場所の推定とシェル構造による複雑な 反射の考慮が必要になる.本論文では,それらを簡易的に 計算するために基準昼光率を用いる.一般的に,開口の大 きい部屋は明るく,小さい部屋は暗いという概念は室内 の明るさと外の明るさの比に対応していると考えられる ため,ある点の照度/その時の全天空照度で求めることが できる値を評価値として使用しているが,本手法では,無 作為な天空点を用意し,床要素から見上げた際に可視で きる天空点数の比率を算出することで床面における昼光 率の計算を行う.次式により,床要素kの昼光率𝐷𝑘が計 算される.
𝐷𝑘=𝐿𝑘
𝑀 (10)
ここで,𝐿𝑘は床要素 kから見上げた際に可視できる天空 点数(可視天空点数),𝑀は全天空点数を表す.
(2)昼光率偏差感度
採光性能における目的関数として各要素を除去するこ とにより,均一な昼光率分布を得られる指標を扱う.一般 的には,壁側1mを除いた最低照度/最高照度(もしくは最 低照度/平均照度)で求めることができる均斉度が評価指 標としてしばしば扱われているが,本論文においては,昼 光率の標準偏差を昼光率偏差と呼称し,評価関数とする.
次式により,昼光率偏差が計算される.
𝜎𝐷= √1
𝑁∑(𝐷𝑘− 𝜇𝐷)2
𝑁
𝑘=1
(11)
ここで,𝜎𝐷は床要素の昼光率偏差,Nは床要素の昼光率探 索点総数,𝜇𝐷は床要素の昼光率の平均値を表す.
そして,(11)式の𝜎𝐷を用いて要素iの昼光率偏差感度𝛽𝑖 は次式で計算される.
𝛽𝑖= 𝑖𝜎𝐷 𝜇𝐷
𝑖
−𝜎𝐷
𝜇𝐷 (12)
ここで,𝑖𝜎𝐷は要素iを除去した場合の昼光率偏差,𝑖𝜇𝐷
は要素 i を除去した場合の床要素の昼光率の平均値を示 す.ここで得られた昼光率偏差感度の値を採光性能の目 的関数として扱うものとする.
4. 採光性能を導入した
CA-IESO
法アルゴリズム(1)解析フロー
図1に解析フローを示す.
(2)多目的問題の単一化
位相最適化において多目的最適化を行う場合, 要素の 除去付加判定を明確にするために単一の指標とする必要 がある.そのために構造性能の目的関数であるひずみエ ネルギー感度と採光性能の目的関数である昼光率偏差感 度の等値線を算出後,各目的関数に重み付け関数を掛け,
足し合わせる事で目的関数の単一化を行うものとする.
従来のCA-IESO法は解析モデルの構造解析後,単一の目
的関数に応じて感度係数を算出し,除去と付加を行う.本 論文では構造解析と採光解析を並行して行い,重み付け 係数に合わせて足し合わせることで感度係数を算出する.
感度係数は(7)式のひずみエネルギー感度𝛼𝑖と(12)式の昼 光率偏差感度𝛽𝑖から次式で計算される.
𝜆𝑖= 𝑚𝛼𝑖+ 𝑛𝛽𝑖 (𝑚 + 𝑛 = 1 , 𝑚 ≥ 0 , 𝑛 ≥ 0) (13)
ここで,𝜆𝑖 は要素iの感度係数,𝑚, 𝑛 は重みづけ係数 を表す.
最終 STEP
制約値以下 制約値以上
図1 解析フロー
重み付け係数を掛け,感度として単一化
制約条件を満たす 目的関数最小解の保存
総密度制約の判定
CA 法による 要素付加 ひずみエネルギー感度
の算出
データ入力
構造解析 採光解析
昼光率偏差感度 の算出
IESO 法による 要素除去
STEP 数の判定
目的関数最小解の保存 最終 STEP 未満
繰 り返 し計 算
5. 解析例
(1)球形シェル a)構造性能解析
図2に示す固定設計領域の底面に,図3に示す円の支 持条件を与えた問題の解析を行う.ただし,固定設計領域 のボクセル分割数は60×60×30とし,図3の赤塗りで示さ れる要素底面の節点は完全拘束とする.図4は,図3の 支持条件に対して,図 2の固定設計領域に鉛直方向の物 体力(重力)を加えた場合のIESO法による解析結果を示 す(Case1).ただし,目標体積比𝑉̅𝑟は0.06,除去率λは0.05,
影響半径倍率𝑏𝑟は3 としている.図には,収束ステップ 数,平均コンプライアンス比𝐶 𝐶⁄ 0(初期平均コンプライ アンス𝐶0と最終ステップの平均コンプライアンスCの比)
も示している.図 4に示すように,円の支持条件からは 球形シェルが創生される.図5は,図3のシェル中央断 面にカテナリー曲線を重ねた図を示す.図に示すように,
得られたシェルの断面は,カテナリー曲線に近い形態と なっている.カテナリー曲線を反転すると自然に安定し たアーチとなり,地面にむかう推力は常にアーチの軸線 に沿って働くので構造的に安定する形態となる.また,図 6は,図5のカテナリー曲線に等分布鉛直荷重を加えた時 の軸力分布を示しているが,この軸力分布と図5 の断面 厚分布がほぼ対応しており,軸力が大きい支持部分は板 厚が厚くなっている.したがって,図3の形態は,シェル の形状・板厚の両方に力学的合理性を有していることが わかる.
b)構造・採光性能解析
次に,図 4の収束解を用いて解析を行う.固定設計領 域のボクセル分割数,支持条件はそれぞれ図2,図3と同 様とし,図 7の黄塗りで示されている要素は床要素とす る.ただし,演算効率を考え探索床要素は図 8 の緑塗り で示された要素とする.目標体積比𝑉̅𝑟は0.06とし,IESO 法による除去率λは0.01,影響半径倍率𝑏𝑟は1,CA法によ る付加率の下限値𝜆𝐶𝐴は0.01を与えて,重み付け係数は構 造性能であるひずみエネルギー感度に0.7,採光性能であ る昼光率偏差感度に0.3の重み付けを設定している.図9 に収束ステップの解析結果を示す(Case2).図10,図11
にCase1とCase2の上面図と昼光率の分布を示す.Case2
の球形シェルは,Case1と比較して頂部の開口が非対称に なっている.これは図 8 に示す昼光率を探索する床要素 が非対称なためである.また,昼光率偏差の変動に対し影 響力の低い要素を除去できているため,採光性能評価が 良くなっている.構造性能に関しては,感度の小さい開口 60 60
30
X Y Z
図2 固定設計領域
図3 支持条件・円
上から見た図
下から見た図
53step 𝐶 𝐶⁄ 0= 0.0080 (𝑉̅𝑟= 0.06, 𝜆 = 0.05, 𝑏𝑟= 3) Case1
図4 収束解(Case1)
図5 シェル中央断面図と対応するカテナリー曲線
図6 図5のカテナリー曲線に作用する軸力
部付近の要素をIESO法で除去し,板厚を大きくするため に CA 法で要素を付加しているため全体の自重が大きく なるため構造性能の悪化の原因となっている.
図12に平均コンプライアンス比の推移,図13に探索 床要素の昼光率偏差の推移を示す.本解析例において,
CA-IESO 法による解析を行うと平均コンプライアンス比
が大きくなり構造性能が悪くなるため有効ではないが,
Case1 と比較して昼光率偏差は低い数値を取り推移して
おり,採光性能の重み付けが機能している.
(2)開口を考慮した楕円形シェル a)構造性能解析
図14は,図16に示すように固定設計領域にあらかじ めトップライトを想定して,非設計空洞領域を設定する ことにより,孔を設けた解析モデルを示す.また,固定設 計領域底面の支持条件は,図15に示すような楕円形とす る.ただし,固定設計領域のボクセル分割数は60×60×30 とする.図17は,図14の解析モデルに対して,鉛直方 向の物体力(重力)を与えた場合(Case3)のIESO法に よる解析結果を示す.ただし,目標体積比𝑉̅𝑟は0.06,除去
率λは0.05,影響半径倍率𝑏𝑟は3としている.図17に示
すように,本解析例では,初期に設定した孔の他にもう一 つの孔が空いた楕円形のシェル構造が創生されることが わかる.ちなみに,図17の開口を設定しない場合の解析 を行うと,中心(頂部)に1つだけの孔の空いた形態が得 られる.したがって,この場合は,あらかじめ図16に示 す開口を設定したことで,応力に偏りが生じ,別の箇所に もう1つの孔が空いたと考えられる.
以上のように,あらかじめ空洞領域を非設計領域とし て設定することで,開口を考慮したシェル構造の形態創 生も可能であることがわかる.
図11 昼光率分布(Case1,Case2)
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
昼光率偏差 [%]
STEP数 0.000
0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 0.007 0.008 0.009 0.010
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9
C/Co
STEP数
9step 𝐶 𝐶⁄ 0= 0.0091 Case2
図7 床要素(黄) 図8 探索床要素(緑)
図9 収束解(Case2)
図10 上面図(Case1,Case2)
Case2 Case1
Case1 Case2
60 60 30
X Y Z
図14 固定設計領域
図15 支持条件・楕円
図12 𝐶 𝐶⁄ 0の推移 図13 昼光率偏差の推移
25[%]
2.27 2.27 25[%]
b)構造・採光性能解析
次に,図18の収束解を用いて解析を行う.固定設計領 域のボクセル分割数,支持条件はそれぞれ図14,図15と 同様とし,図19の黄塗りで示されている要素は床要素と する.ただし,演算効率を考え探索床要素は図20の緑塗 りで示された要素とする.目標体積比𝑉̅𝑟は0.06とし,IESO 法による除去率λは0.01,影響半径倍率𝑏𝑟は1,CA法によ る付加率の下限値𝜆𝐶𝐴は0.01を与えて,重み付け係数は構 造性能であるひずみエネルギー感度に0.7,採光性能であ る昼光率偏差感度に 0.3 の重み付けを設定している.図 21に収束ステップの解析結果を示す(Case4).図22,図
23にCase3とCase4の上面図と昼光率の分布を示す.あ
らかじめ設定した開口と頂部の開口の他に右端に小さな 開口が創生された.右端に開口が空いたことにより,全体 に光が入射し,昼光率の分散が少なく採光性能も優れた 形態となっていることがわかる.構造性能に関しては,支 持部分の板厚が薄くなった分,開口が小さくなったため 全体の物体力が大きくなり,平均コンプライアンス比が 上昇したと考えられる.
図24に平均コンプライアンス比の推移,図25に探索
床要素の昼光率偏差の推移を示す.球形シェルと同じよ うな傾向を示すことがわかる.
0.000 0.001 0.002 0.003 0.004 0.005 0.006 0.007 0.008 0.009 0.010 0.011 0.012
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
C/Co
STEP数
0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13
昼光率偏差 [%]
STEP数
設計領域 非設計空洞領域 図17 開口を考慮した固定設計領域
上から見た図
下から見た図
53step 𝐶 𝐶⁄ 0= 0.0094 (𝑉̅𝑟= 0.06, 𝜆 = 0.05, 𝑏𝑟= 3) Case3
図18 収束解(Case3)
図19 床要素(黄) 図20 探索床要素(緑)
13step 𝐶 𝐶⁄ 0= 0.0101 Case4
図21 収束解(Case4)
図22 上面図(Case3,Case4)
Case4 Case3
Case3 Case4
図23 昼光率分布(Case3,Case4)
図24 𝐶 𝐶⁄ 0の推移 図25 昼光率偏差の推移
22.73[%]
0 0 22.73[%]
(3)自由曲面シェル a)構造性能解析
図26に示すような直方体の固定設計領域(要素分割数:
100×100×25)を設定した.また,図28に示すように固定
設計領域にあらかじめトップライトを想定して,非設計 空洞領域を設定することにより,孔(トップライト)を設 けた解析モデルを示す.固定設計領域底面の支持条件は,
図27に示す赤塗りで示される要素底面の節点は完全拘束 とする.また,図27に右に示すように,エントランスを 設けるために支持条件の一部を開けた形とした.図29は,
図26 の解析モデルに対して,鉛直方向の物体力(重力)
を与えた場合(Case5)のIESO法による解析結果を示す.
ただし,目標体積比𝑉̅𝑟は0.07,除去率λは0.01,影響半径 倍率𝑏𝑟は1としている.また,収束ステップ数,平均コン プライアンス比𝐶 𝐶⁄ 0(初期平均コンプライアンス𝐶0と最 終ステップの平均コンプライアンスCの比)も示している.
図29に示すように,本解析例では,エントランス,孔(ト ップライト)を考慮した自由な曲面を有したシェル構造 物の創生も可能であることがわかる.
b)構造・採光性能解析
次に,図29の収束解を用いて解析を行う.固定設計領 域のボクセル分割数,支持条件はそれぞれ図26,図27と 同様とし,図30の黄塗りで示されている要素は床要素と する.ただし,演算効率を考え探索床要素は図31の緑塗 りで示された要素とする.目標体積比𝑉̅𝑟は0.07とし,IESO 法による除去率λは0.01,影響半径倍率𝑏𝑟は1,CA法によ る付加率の下限値𝜆𝐶𝐴は0.01を与えて,重み付け係数は構 造性能であるひずみエネルギー感度に0.7,採光性能であ る昼光率偏差感度に 0.3 の重み付けを設定している.図 32に収束ステップの解析結果を示す(Case6).図33,図
34 に Case5 と Case6 の上面図と昼光率の分布を示す.
Case6では,構造全体に開口が創生された.昼光率の小さ
い部分に局所的に開口が創生できているため昼光率偏差 が小さくなり,採光性能評価が最も優れた形態となって いる.
図35に平均コンプライアンス比の推移,図36に探索 床要素の昼光率偏差の推移を示す.STEPが進むごとに平 均コンプライアンス比,昼光率偏差共に小さくなる傾向 にあるため,構造性能と採光性能の両立が得られた形態 が創生された.
60 60
15
X Y Z
図26 固定設計領域
図27 支持条件・自由形状
設計領域 非設計空洞領域 図28 開口を考慮した固定設計領域
上から見た図
下から見た図
235step 𝐶 𝐶⁄ 0= 0.0150 (𝑉̅𝑟= 0.07, 𝜆 = 0.01, 𝑏𝑟= 1) Case5
図29 収束解(Case5)
図30 床要素(黄) 図31 探索床要素(緑)
6. 結語
本論文では,ボクセル有限要素法を用いたIESO法によ り構造性能と採光性能の目的関数を単一化することで,2 つの評価を満足する連続体シェル構造の形態を創生する 手法を提案し,いくつかの解析例により,その有効性を検 証した.その結果,以下のような知見が得られた.
1. 固定設計領域に支持条件と自重を物体力として与え ることで,様々な連続体シェル構造の形態を創生す ることができる.
2. 球形シェルモデルでは,断面形状がほぼカテナリー 曲線と一致した.
3. 境界形状を変化させることで,設計条件に適応した シェル形態を創生することができる.
4. 事前に固定設計領域に孔(トップライト)を非設計 空洞領域として設定することで,孔(トップライト)
を考慮したシェル形態を創生できる.
5. エントランス計画部分に非設計空洞領域や,境界条 件の一部を開けることで,エントランスを考慮した シェル形態を創生できる.
6. IESO 法で得られたシェルモデルの構造性能評価が 良いものを対象に,構造性能と採光性能の目的関数 を単一化したCA-IESO法を用いることで,ひずみエ ネルギーや昼光率偏差が低下するシェル形態が創生 できる.
以上により,IESO 法を用いて構造性能と採光性能の両 方の性能評価が向上するシェル構造の形態創生が可能で あり,本手法の有効性が示せた.
謝辞:本論文の解析例のモデル作成および結果の表示に は,(株)くいんとのVOXELCONを利用している.(株)
くいんとの石井惠三氏,月野誠氏,英山寛之氏に,研究室 で開発したプログラムとのデータリンクについて技術協 力を受けたことを感謝する.
参考文献
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CA-IESO 法を用いた有限変形を考慮したトポロジー最
適化,2018.3
3)新内洋平,松本慎也,藤井大地:改良型ESO法を用い た3 次元構造物の位相最適化,日本建築学科構造系論 文集,Vol. 81,No.723,pp.851-858,2016.5
4)新内洋平,松本慎也,藤井大地:IESO法を用いた建築 構造の形態創生―鉛直荷重と地震荷重に抵抗する建物 の自然形態―,日本建築学会構造系論文集,Vol.82,
No.731,pp.97-103,2017.1
5)大森博司,崔昌禹:拡張ESO法による構造形態の創生―
多目的適応型構造とシェル構造への適用―,日本建築 学科構造系論文集,Vol. 67,No.552,pp.109-116,2002.2 6)X.Huang,Y.M.Xie:Convergent and mesh-independent solutions for the bi-directional evolutionary structural optimization method,Finite Elements in Analysis and Design 43 (2007) 1039-1049
7)日本建築学会編:昼光照明の計算方法,丸善,1993 8)日本建築学会編:採光設計,日本建築学会,1963
0.000 0.002 0.004 0.006 0.008 0.010 0.012 0.014 0.016
0 1 2 3 4 5 6 7 8
C/Co
STEP数
0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 6.0
0 1 2 3 4 5 6 7 8
昼光率偏差 [%]
STEP数
8step 𝐶 𝐶⁄ 0= 0.0145 Case6
図32 収束解(Case6)
図33 上面図(Case5,Case6)
Case6 Case5
Case5 Case6
図34 昼光率分布(Case5,Case6)
図35 𝐶 𝐶⁄ 0の推移 図36 昼光率偏差の推移
38.64[%]
0 0 38.64[%]