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楠原俊 昌,中村隆夫,森恵子

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(1)

イ ンピー ダ ンス咽頭 図 ( I PG) を用 いた加齢 による 膝下機 能減退 の定 量 的評価 法

楠原俊 昌,中村隆夫,森恵子

1)

,山本 尚武,白川靖博

2)

,猶本良夫

2)

要 約

インピーダンス咽頭図

( I mpe da nc ePhar yngo gr a phy

,以下I

PG)

は嘆下活動 中の頚部電気 インピーダンス を測定するもので,樵下機能評価 を簡便かつ無侵襲 に行 うことがで きる手 法である。I

P

G波形 は嘆下機能 を反映す る ものであるが嘆下機能の減退 による波形への影 響はその原因に よ り様 々である。すなわち嘆下機能の状態が異 なる被験者のI

P

G波形 を直 接比較 ・診断す ることは測定者の主観 に依存す ることにな り客観性 に欠ける。本研究では,

まず青年健常者 のNor

ma lI P

Gをもとに嘆下機能が反映 され る波形 の特徴 を評価す るパ ラ メータとして,咽頭通過時間,インピーダンス変化率,類似度,嘆下音 タイ ミングの

4

つ を採用 し

,I P

Cを定量的 に評価す る手法 を提案 した。 また, この評価法 を高齢者 のI

P

Gに 適用 し,青年健常者 に比べて嘆下活動 に関与す る器官が円滑 に活動 を履行す る能力 に減退 が生 じる様子 を定量的に示 した。

キーワー ド:嘆下活動,嘆下障害,生体電気 インピーダンス,イ ンピーダンス咽頭図

( I PG)

,嘆下機能評価 は じ め に

脳血管障害,神経 ・筋変性疾患 などによ り発生す る 醸 下 障 害 は 人 か ら食 の 楽 しみ を奪 い, QOL

( Q。a l i t y。fLi f 。 )

を著 しく低 下 させ る1)。高齢化社 会 を迎 えた今 日,陸下障害患者は増加する傾向にあ ることか ら,嘆下障害 は社会福祉的課題 といえる2)

また,医療技術の進歩 によ り食道癌 などの頭頚部術 後患者の余命 は長期化 し,術後 に発生する嘩下障害 をリハ ビリテーシ ョンによって克服 して経 口摂取 を 再獲得するケース も増加 している。 したがって,諺 断 ・治療のみならず リハ ビリテーシ ョン領域で も ト

レーニ ングの評価 ツール として工学技術 を応用す る 研究が注 目されつつあ る2‑4)。 しか しなが ら現在 は 嘆下障害 を診断す る機器 として,超音波検査,内視 鏡検査,X線透視検査 な どが広 く用い られ,解剖学 的構造や嘆下動態の異常 を観察するに留 まっている

5 8)。す なわち,嘆下障害 の有無,程度あるいは リ ハ ビリテーシ ョンの達成度 などは,その検査 に立 ち 会 う医師 と患者 (被験者)の主観的な判断に強 く依存

している。

これに対 し我々はスク リーニ ングや リハ ビリテ‑

シ ョンな どにも応用で きる簡便 な嘆下機能の定量評 価法の確立 を目的 として,嘆下活動中の頚部電気 イ ンピーダンスを無侵襲 に計測す るインピーダンス咽 頭 図

( I mpe da nc ePhar yngo gr a phy

,以下I

PG)

を提案 し,各種検討 を行 なって きた9 13)

。I P

G波形 は嘆下 機能 を反映す る ものであるが嘆下機能の減退 による 波形への影響 はその原 因によ り様 々であ り,嘩下機 能の状態が異 なる被験者のIPG波形 を直接比較 ・診 断することは測定者の主観 に依存することにな り客 観性 に欠ける

そ こで本研究では,IPGと共 に食塊が咽頭 を通過 した際 に発生する嘆下音 を取得す る測定 システムを 用 い て 青 年 健 常 者 に対 す る測 定 を行 い, こ の

Nor malI P

Gを もとに嘆下機 能が反映 され る波形 の 特徴 を評価す るパ ラメー タとして,咽頭通過時間, インピー ダンス変化率,類似度,嘆下音 タイ ミング の

4つ を採用 し ,I P

Gを定量的 に評価す る手法 を提 案す る。 さらに,高齢者 に対 して も同様 の測定 を行 い この評価法 を適用 し,青年健常者 に比べて嘆下活 動 に関与す る器官が円滑 に活動 を履行す る能力 に減 退が生 じる様子 を定量的に示す。

岡山大学医学部保健学科放射線技術科学専攻 1)岡山大学医学部保健学科看護学専攻

2)岡山大学大学院医歯学総合研究科病態制御科学専攻

(2)

楠原俊 昌他

方 法

1.I mpe da nc ePha r yng o gr a phy( I PG)

測定 システム を図 1に示す

。I PG

を測定す るイ ン ピー ダ ンス メー タ9,10,13)の他 ,加速 度検 出型 の心 音 セ ンサ

( TA‑ 7 0

1T, 日本 光 電)を用 い て,咽 頭 を 食塊 が通過す る際 に発 生す る嘆下音 も測定 す る14)

これによ り嘆下活動 に関与す る器官の動 きと実際の 食塊 の移動 の タイ ミングが適正であるか否か を検 出 す る

。I PG

と嘆下音 のデー タはサ ンプ リング周波数

2kHz

A/ D

変換 されてノー トパ ソコンで両波形 の 表示 と記録が行 われる。被験者 は,測定 の趣 旨 と測 定方法 を説明 して測定 に同意 を得 た嘆下障害 のない 人 に限定 している。被験者 には背 もたれの角度 を

75 de g

に設定 した シー トに腰掛 けて もらい,測定 開始

まで に食塊 (水

l °c c )

を口 に含 んで もらう。 そ して 指示 ランプの合図 に従 い嘆下活動 を開始す る。測定 時間は嘆下活動前後の安静時間 も含 め, 1回につ き

1 0

Sとした。

2

は青年健常者

( 21

歳男性)の

I PG

測定結果であ る。嘆下 開始 の合 図 は

O s

の時点 であ る。VF検査 との照合 によ り,同図の区間 Ⅰが食塊が 口腔 の中を 移動す る口腔期 ,区間 Ⅱが嘆下反射が起 こって食塊 が咽頭 を通過す る咽頭期 ,区間Ⅲが嘆下反射 が終了 して嘆下活動 に関与す る器官が元へ戻 る食道期 に対 応 してい る こ とが確 認 され てい る15)。 また,嘆下 音 と

I PG

との対応 に注 目 してみ る と,食塊 が咽頭 を 通過す る咽頭期 に醒下音が活発 に発生 してい ること がわか る。 この ように嘆下機能が健常 な青年 におい て高い再現性 で観測 され る

I PG

「 Nor ma lI PG

」 と 定義す る。

1 I PG

測定 システム

101231[J

)qy刷YJ<1

6‑

.7八J, 05050

(>)LFU一≡l

lPG 咽 .、通過 時間

d T S

ヒ量

0 0.5

鳴 f

.FBll(S) l.5 2

̲」lllIII1̲̲h̲̲̲ I 喰下書

T T叩 一日 喋下音タイミング

0 日 0.5 1 1.5 2 時間(S)

2 Nor ma lI PG

と嘩下音

( 21

歳,男性)

2.

評価パ ラメー タ

高齢者 の

I PG

波形 につ いて は後述す るが,多 くの 場合高齢者 の

I PG

は加齢 に伴 う膝下機能 の減退 によ

り青 年 の

Nor ma lI PG

とは異 なる波 形 とな る。 また, 高齢者 の

I PG

は再現性 が低下 し,個体差 も大 きいた め,波形 を他 の高齢者 あるいは青年健常者のそれ と 単 純 に比較 す る こ とが で きない。 そ こで

,Nor mal I PG

の特徴 を評価 す るパ ラメー タを定義 して

I PG

を 解析す る。 これ によ り嘆下機能 を定量 的 に表現 して 年齢層 の異 なる被験者 間の比較が可能 になる。我 々 は

NormalI PG

の特 徴 か ら以 下 の

4

つ の評 価 パ ラ メータを採用 している。

1)咽頭通過時間 :Tp

同一被験者 に対 す る

I PG

測定 回数 を

n

,m 回 目の 測定で取得 され た

I PG

波形 の咽頭通過時 間 (図

2

参 照)を

T

mとす る とき,咽頭通過時 間

T

pを次式で定義 す る

・ p = i m i l T ‑

(1,

Tpの値 は被験 者 が樵 下活 動 を行 なった ときの咽 頭期 の平均時 間 を示す ものであ り,喋下活動 に関与 す る器官の嘆下 プログラムの遂行速度 を評価す るパ ラメー タといえる。咽頭期 の平均時 間 を求めてい る ため, nをある程度大 きい値 に しなければ信頼性 の 高 い Tpが得 られ ない こ とになるが,高齢 な被験 者

(3)

‑の時間的 ・体力的負担 を考慮 して今 回は

n=5

と した。 また,食塊 を一度 に飲み込めず に複数回に分 けて飲み込 んだ被験者のI

PG

はその回数分多相化す るが,パ ラメータ値 の算出 には,膝下音の発生が確 認で きる,インピーダンス変化量が最 も大 きい相の 波形 を採用 した。

2

)インピーダンス変化率 :zc

同一被験者 に対 してI

PG

測定 をn回行 ない,その 波形か ら求めた安静時のイ ンピーダンス レベルの平 均値 をzA

,I PG

の変化量 の平均値 をdZAとす る とき,

インピーダンス変化率zcを次式で定義す る。

zc ‑ 2 (2,

zcの値 は被験者のI

PG

の平均 的な変化率 を示す も のであ り,嘆下活動 に関与す る器官の運動の大 きさ を評価す るパ ラメー タとい える。 また

,T

pの とこ ろで述べたように,ZA,dZAを求めるための測定回 敬(=n)は

5

回である。図

2

ではインピーダンス 「変 化」で表現 しているため, インピーダンス レベルを 読み取 ることがで きないが,通常 は

2 00

後半か ら

6 0

n程度である。 また, このパ ラメータについて も多 相化 したI

PG

に対す る値 の算 出には,嘆下音の発生 が確認で きる,インピー ダンス変化量が最 も大 きい 相の波形 を採用 した。

3

)類似度

: S

類似度は被験者のI

PG

波形が,膝下機能が健常 な 場合 に観測 されるI

PG

波形 にどの程度似 ているか を 示す ものである。 この評価 の基準波形 となる 「基準

I PG

」 (図

3

)は青年健常者35人のNor

malI PG

か ら以 下の手順 によって生成 した ものである。

1

人の青年健常者 につ き

5

回I

PG

測定 を行 ない, 正規化平均波形 を作成 しイ ンピーダンス レベルが

O

nになるようにレベルシフ トする。 さらにピーク ・ ピーク値が

2

0となるように正規化 した波形 をZ2PP

02(O)qy胤Y八6‑.q八),

とす る。35人のZ2ppを平均化 した波形 を求め, さら に, この ピーク ・ピーク値が

2

0となるように正規 化 した波形 を基準I

PGと定義 し, これ を Fとす る。

次 に,比較する被験者 について もZ2mを求め, この 波形 をGとす る。 この とき,類似 度 Sを次式 によ り 定義す る

(3)

ただ し

,F

iお よび

Gi

(1≦ i≦ j)は,それぞれ j 個 の時系列 デー タか ら成 るFお よび

G

の第

i

番 目の 値 である。本研究では図

3

に示 した ように

4

S分の 基準I

PGを用意 したので j= 8 000

で あ る。比較す る 被験者 のI

PG

については咽頭期が終了 してイ ンピー ダンスが最小値 になる時刻の前後

2

Sを計算の対象 とした。 また,このパ ラメータについて も多相化 し たI

PG

に対する値 の算 出には,嘆下音 の発生が確認 で きる,インピーダンス変化量が最 も大 きい相の波 形 を採 用 した。式 か ら分 か る よ うに,評価 され る

I PG

が基準I

PG

の波形 に似か よるほ どSの値 は大 きく なる。 2つの波形が完全 に一致す る ときにSは最大 値 の 1にな り,逆相であれば最小値 の‑ 1になる。

これは嘆下活動 に関与する器官の動態の健常性 を評 価す るパ ラメータといえる。

4

)嘆下音 タイミング:TT

同一被験者 に対す るI

PG

測定 回数 を

n

,m回 目の 測定で取得 されたI

PG

波形が最小値 を とる時刻 (咽 頭期 終了時刻)を

T z

m,樵下音 の振 幅が最 も大 きい 時刻 をTsmとする とき,樵下音 タイ ミングを次式 に

よ り走義する。

Ui m i l ( T z m ‑T S ‑)

'4'

2のNormalI PG

の ように,食塊 は咽頭期 に咽 頭 を通過す ることが正 しい タイ ミングであることか ら

,Nor malI PGを評価 した場合 には

TTは咽頭通過 時 間 ち よ りも小 さい正の値 になる。す なわち

TT

は 嘆下活動 に関与す る器官の動作 と実際の食塊の搬送 の タイ ミングを評価するパ ラメー タといえる。 また, 他 のパ ラメー タと同様, TTを求 め るための測定 回 数nは

5

回である。 また, このパ ラメー タについて も多相化 したI

PG

に対す る借の算 出 には,膝下音 の 発生が確認で きる, インピーーダンス変化量が最 も大

きい相の波形 を採用 した。

(4)

楠原俊 昌他

結 果

4

にパ ラメー タ解析 の対象 となる高齢者 の

I PG

測定結果 を

3

例示す。高齢者 の

I P

Gは この

3

波形 の いずれか に分類 で きることが多い。 まず

, 3

波形 に 共通す る特徴 は,被験者が樵下障害者ではないため に誤嘆が な く,醸下音が活発 に発生す るタイ ミング は常 に咽頭期 と同期 しているこ とである.一万

, 3

波形 それぞれに特徴 的 な点 としては,下記が挙 げ ら れる

4 ( a ) :

嘆下活動 に関与す る器官の運動能力が低 下す る ことに よって

I P

Gの変化量が少 な くなった り, 嘆下活動 に違和感 を感 じて

I P

Gが不安定 に変動す る。

図4(b):食塊 を一度 に飲み込め ないため に嘆下動 作 を繰 り返す ことが原 因 となって

I P

Gが多相化す る。

0

(C 5)

Y/t

d

Io7人)I 20241一

(

V

)qy樹Y八JfIoqJ<),

(ci

)Y/"6‑n), 24一一

tPG

L... L

3 4

0 1 2 3 4 5

時間 (S) (b)75歳 , 男 性

lPG

̲L 嘆汀 音

̲L 嘆汀 音

0 1 2 3

時間 (S) (C)82歳 ,女性

4

高齢者の

I P

Gと樵下音

MCttih(V)

50 MICEj7(V)

2

図 4(C):(a),(b)に比べ て該 当す る被験者数 は少 な いが,高齢 となって も嘆下活動が健常で,青年健常 者 の

No r ma lI P

Gに近 い波形 が高 い再現性 を もって 得 られる。

しか しなが ら,嘆下機能が減退す る原 因には複数 の要素があ り,それ らが複合 的 に作用す る場合 もあ るため,(a),(b)の現象が 同時 に観察 される場合 もあ る。 さらに,(

a) ,( b )

に分類 され る同一被験者 の

I PG

は再現性が低 く,同年代 の他 の被験者 の

I P

Gと比較

して も類似性が乏 しい ことも特徴 的であ り,嘆下機 能の状態が異 なる被験者 間で

1

回分 の

I P

G波形 を単 純 に比較す るこ とは難 しい とい える。

次 に図

4

の被験者 を含 む嘆下障害 のない高齢者

3 0

( 7 6. 2±5. 4

歳)の

I P

Gにつ い てパ ラメー タ解析 を 行 なった結果 を表

1

に示す。 コン トロール として青 年健常 者

2 0

( 2 4. 1±2. 5

歳)の

I P

Cに対 す る解析 結 果 も併記 した。 また,両 グループのパ ラメー タ値 の 有意差 を確認す るため に

t

検定 を行 なった。各パ ラ メー タの値 の解釈 と有効性 の検討 については後述す るが,咽頭通過時間 帯は高齢者

0・ 8 0 1±0・ 1 8 6

S,育 年健常者

0. 6 4 4±0. 1 4 5

Sで高齢者 の方が大 きく, イ ンピー ダ ンス変化 率 zcは高齢 者

4. 7 3±2. 2 6%

,育 年健 常 者

7. 6 6±4. 2 1 0

/0,類 似 度

S

は高齢 者

0. 8 0 9

±

0. 2 3 3

,青年健常 者

0. 9 0 8±0. 0 8 9

で高齢 者 の方が小 さい値 となった。 また,嘆下音 タイ ミング

TT

は高 齢 者

0. 4 6 1±0. 2 3 3

S,青 年 健 常 者

0. 3 8 4±0. 1 5 4 S

であ ったが, t検定 に よって両 グループ間で有意差 が認 め られ ない

( P>0. 0 5 )

ことが判明 した。

1

パ ラメー タ解析結果

高齢者(30人)青年健常者(20人)P(t検定) 年齢 (読) 76.2±5.4 24.1±2.5 咽頭通過時間㌔(S) 0.801±0.186 0.644±0.145 0.0084 **

インピーダンス変化率zc(%) 4.73±2.26 7.66±4.21 0.025 *

類似度S 0.809±0.233 0.908±0.089 0.0075 **

**:P<0.01*:P<0.05ns:nonslgniflCant

考 察

咽頭 通過 時 間

T

pの結 果 よ り,高齢 者 の咽頭期 は 青年健常者 に対 して長期化す る傾向があることが示 された。 これは加齢 に よって舌骨,甲状軟骨,輪状 軟骨 か らなる喉頭 の挙上動作 が緩慢 になっているこ とや,食塊 が円滑 に咽頭 を通過す ることがで きな く な りつつ あ る こ とが原 因 と考 え られ る。高齢 者 の Tpの ば らつ きが やや大 きい の は加齢 に よ り個体差

(5)

が大 きくなる傾向があることを反映 している。また, 高齢 となって も青年健常者 と同程度 に瞭下活動に関 与する器官の動作速度 を維持 している被験者がいた ことも要因のひとつである。例 えば図4(C)の被験者 が これに該当す るが, この被験者の

T

pは

0・ 6 8 8

であ り,高齢者 よりも青年健常者のグループの平均値 に 近い。 またt検定の結果,両 グループの値 には有意 差があ り

( P<0. 0 1 )

, このパ ラメータは加齢 による 嘆下機能の減退の評価 に有効 といえる。

インピーダンス変化率zcの結果 よ り,高齢者の インピーダンス変化率は青年健常者 に対 して小 さく なる傾向があることが示 された。すなわち,加齢 に より嘆下活動 に関与する器官の運動量が低下 し,喉 頭の挙上量が青年健常者 よ りも小 さ くなる9)ことが 反映 されている と考 え られる。 これは前述の帯の 結果 も考慮すると,青年健常者 に比べて高齢者の嘆 下活動では醒下反射 による喉頭挙上が,短い距離 を

より長い時間をかけて行 われているといえる。また, zcについては青年健常者の方がば らつ きが大 きい 結果 となっているが,これは高齢者の被験者の大半 が痩せていて頚部の周囲長が短かったのに対 し,育 年健常者では頚部 の周囲長が被験者 に よ り様々で あったことが原因 と考 えられる。すなわち頚部の脂 肪量によってインピーダンス レベルが変化するため,

このZcのパ ラメー タ算 出法では青年健常者のほう に大 きなばらつ きが発生 した と考 えられる。 しか し なが ら

t

検定の結果,両 グループの値 には有意差が あ り

( P<0. 0 5 )

, このパ ラメータは加齢 による嘆下 機能の減退の評価 に有効 といえる。

類似度Sの結果 よ り,高齢者のI

PG

波形 は青年健 常者に対 して基準I

PG

か ら崩れた波形 となる傾向が あることが示 された。基準I

PGと相似 なI PG

波形が 得 られないのは,加齢 によって口腔期後半の嘆下反 射の誘発,口腔一鼻腔間の閉鎖,咽頭期 の喉頭挙上, 喉頭蓋 による気道閉鎖,食道期前半の食道入口部の 開大 といった,醸下活動 に関与する器官が円滑に活 動 を履行する能力が低下 していることが原因 と考え られる。嘆下障害は,嘆下活動 に関与する器官の形 状異常だけではな く,内視鏡検査 などでは検出で き ない喋下動態の異常が原因である動的嘆下障害 も多 いため

,

Sはこのことが評価で きるパ ラメータとし て興味深い。 また,青年健常者のSのば らつ きは平 均値の

1 / 1 0

と非常 に小 さ く, このパ ラメータが嘆下 動態の異常に対 して感度の高い検出能力があること を示 している。 t検定 を行 なった結果 においても

P

値は

O. 0 0 7 5

4

つのパ ラメータの うちで最小値 をと

り,最 も有意差がある

( P<0.

01)パ ラメータであっ たことが確認で きる。以上のことか ら

,

Sも加齢 に よる嘆下機能の減退の評価 に有効 といえる。高齢者 のSのば らつ きは青年健常者 より大 きく,加齢 によ

り個体差が大 きくなる傾向があることを示 している。

また, Tpと同様 に高齢 となって も青年健常者 に近 いI

PG

波形が得 られ る被験者がいたため被験者 に よっては青年健常者 よりも

S

が高 くなる場合があっ た。再度 図 4

(

C

)

の被験者 を例 に挙 げる とSは

0. 9 2 7

であ り,青年健常者のグループの平均値 を上回って いた。

樵下音 タイ ミングTTの結果 よ り,高齢者の咽頭 期終了時刻か らの嘩下音の発生 タイミングが長 くな る傾向があることが示 された。 しか しなが らt検定 の結果,両 グループの値 には有 意差が認め られな かった(

P>01 0 5 )

。両 グループの値の差 はちの結果 を参照す ると分か り易いが,高齢者のI

PG

における 咽頭通過時間の増加が主な原因であ り,加齢 による 醸下機能の変化が原因 となって生 じた差ではない と いえる。 TTは嘆下活動 に関与す る器官の活動 と食 塊の搬送の同期,すなわち咽頭期 に食塊が咽頭 を通 過することを確認するパ ラメータであるため,値が 正で咽頭通過時 間 (

T

p)よ り短 ければ健常 と判断 さ れる。 この観点か らは本研究の被験者は全て健常で あ り,樵下機能が減退 しているとはいえ,誤嘆のな い被験者 を対象 としたことが有効 なパ ラメータにな れなかった理由 といえる。 このパ ラメータの有効性 は実際 に嘆下障害者のI

PGを取得 した段階で再度検

討す る必要があるが,誤嘆 (特 に,むせ,呼吸苦 な ど多党的 に兆候 がみ られない無症候性誤嘆 (

si l ent as pi rat i on

)

)

の有無 もしくは発生の危険性 を示す能 力 を有す るため,今後 の研究 においては評価パ ラ メータとして重要度が増 して くると期待する。

ま と め

本研究ではNor

malI PG

の特徴 を もとに,咽頭通 過時間,インピーダンス変化率,類似度,嘆下音 タ イミングの

4

つの評価パ ラメータを採用 し,青年健 常者のI

PGと直接比較することが困難 な喋下機能の

減退者のI

PG

を評価 ・比較 した。その結果,以下の

4

点について青年健常者 と高齢者の喋下動態の違い を定量的に示す ことがで きた。

( 1 )

咽頭通過時間ちは高齢者平均

0・ 8 01

S,青年健 常者平均

0. 6 4 4

Sであ り,加齢 に伴 い

2 4. 4%

増 加 した。これは加齢 により喉頭の挙上動作が緩 慢 にな り,食塊が円滑 に咽頭 を通過 しに くくな

(6)

楠原俊 昌他

ることが数値化 された と考 え られ る。

(2)イ ンピー ダ ンス変化 率 zcは高齢 者 平均4.73%, 青 年 健 常 者 平 均7.66%で あ り, 加 齢 に伴 い 38.3%減少 した。 これは加齢 によ り嘆下反射 に 伴 う喉頭挙上量が減少 しているこ とが数値化 さ れた と考 え られる。 また,(1)の内容 も考慮す る と,高齢者 の喉頭挙上動作 は,短 い距離 をよ り 長 い時間 をかけて行 われている といえる。

(3)類 似 度

S

は高齢 者平均0.809,青年健常 者平均 0.908で あ り,加齢 に伴 い10.9%減少 した。 こ れは加齢 によ り陛下活動 に関与す る器官が円滑 に活動 を履行 す る能力が低 下 し

,I PG

波形 が乱 れたことが数値化 された と考 え られ る。

(4)喋下音 タイ ミング

TT

は高齢者平均0.461S,育 年健常者平均0.384Sであったが,有 意差 が得 られなか った。 これは本研究の高齢被験者 は嘆 下機能の減退 のみで誤嘆が な く,食塊 の搬送 に は問題が ない ことが反映 された といえる。

今後 の課題 は,様 々な嘆下機能の状態 の被験者 に 対 して

I PG

測定 を行 ない,判別分析 な どの統計処理 による樵下機能評価が可能 となるように解析結果 を 蓄積す ることである。 これ によ り,例 えばス ク リー ニ ングにおいては,病院での さらなる精査 の必要性 について測定者 ・被験者 に定量的 な情報 をフィー ド バ ックす るこ とが期待 で きる。 また, リハ ビリテー シ ョンにおいて も,指導員 と患者の主観 的な判断で 構築 ・履行 されていた リハ ビリテーシ ョンプランが,

目標 と トレーニ ングによる達成度 を定量 的 に確認 で きる もの となるため,指導員の適切 なプラン構築 あ るいは患者の 目標意識向上の一助 となることが期待 で きる。

文 献

1)丘相伴 :嘆下の しくみ と臨床.金原出版 :東京,1993.

2)峯尾喜好,木村彰男,出江紳‑,江端広樹 ,道免和久, 千 野 直 ‑ :脳 血 管 障 害 の 嘆 下 障 害 に 対 す る Electroglottography(EGG)の応用. リハ医学,27,No.2

:103‑106,1990.

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4

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(7)

Quantitative evaluation method of swallowing hypofunction by aging using Impedance Pharyngography (IPG)

Toshimasa KUSUHARA, Takao NAKAMURA, Keiko MORIO, Yoshitake YAMAMOTO, Yasuhiro SHIRAKAWA

Z)

and Yoshio NAOMOTO

Z)

Abstract

Impedance Pharyngography (IPG) measures neck electrical impedance during swallowing. IPG method is simple procedures and the technique which can perform non- invasive evaluation of swallowing function. IPG waveform reflects swallowing function.

However, the influence on IPG waveform by swallowing hypofunction is various by the causes. That is, it will be dependent on a measurement person's subjectivity to compare directly IPG waveforms of subjects whose states of swallowing function differs, and objectivity is missing.

Keywords: swallowing, dysphagia, bio·electrical impedance, Impedance Pharyngography (IPG) , assessment of swallowing function

Department of Radiological Technology, Faculty of Health Sciences, Okayama University Medical School 1) Department of Nursing, Faculty of Health Sciences, Okayama University Medical School

2) Department of Gastroenterological Surgery, Transplant and Surgical Oncology, Okayama University

Graduate School of Medicine and Dentistry

参照

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