イ ンピー ダ ンス咽頭 図 ( I PG) を用 いた加齢 による 膝下機 能減退 の定 量 的評価 法
楠原俊 昌,中村隆夫,森恵子
1),山本 尚武,白川靖博
2),猶本良夫
2)要 約
インピーダンス咽頭図
( I mpe da nc ePhar yngo gr a phy
,以下IPG)
は嘆下活動 中の頚部電気 インピーダンス を測定するもので,樵下機能評価 を簡便かつ無侵襲 に行 うことがで きる手 法である。IP
G波形 は嘆下機能 を反映す る ものであるが嘆下機能の減退 による波形への影 響はその原因に よ り様 々である。すなわち嘆下機能の状態が異 なる被験者のIP
G波形 を直 接比較 ・診断す ることは測定者の主観 に依存す ることにな り客観性 に欠ける。本研究では,まず青年健常者 のNor
ma lI P
Gをもとに嘆下機能が反映 され る波形 の特徴 を評価す るパ ラ メータとして,咽頭通過時間,インピーダンス変化率,類似度,嘆下音 タイ ミングの4
つ を採用 し,I P
Cを定量的 に評価す る手法 を提案 した。 また, この評価法 を高齢者 のIP
Gに 適用 し,青年健常者 に比べて嘆下活動 に関与す る器官が円滑 に活動 を履行す る能力 に減退 が生 じる様子 を定量的に示 した。キーワー ド:嘆下活動,嘆下障害,生体電気 インピーダンス,イ ンピーダンス咽頭図
( I PG)
,嘆下機能評価 は じ め に脳血管障害,神経 ・筋変性疾患 などによ り発生す る 醸 下 障 害 は 人 か ら食 の 楽 しみ を奪 い, QOL
( Q。a l i t y。fLi f 。 )
を著 しく低 下 させ る1)。高齢化社 会 を迎 えた今 日,陸下障害患者は増加する傾向にあ ることか ら,嘆下障害 は社会福祉的課題 といえる2)また,医療技術の進歩 によ り食道癌 などの頭頚部術 後患者の余命 は長期化 し,術後 に発生する嘩下障害 をリハ ビリテーシ ョンによって克服 して経 口摂取 を 再獲得するケース も増加 している。 したがって,諺 断 ・治療のみならず リハ ビリテーシ ョン領域で も ト
レーニ ングの評価 ツール として工学技術 を応用す る 研究が注 目されつつあ る2‑4)。 しか しなが ら現在 は 嘆下障害 を診断す る機器 として,超音波検査,内視 鏡検査,X線透視検査 な どが広 く用い られ,解剖学 的構造や嘆下動態の異常 を観察するに留 まっている
5 8)。す なわち,嘆下障害 の有無,程度あるいは リ ハ ビリテーシ ョンの達成度 などは,その検査 に立 ち 会 う医師 と患者 (被験者)の主観的な判断に強 く依存
している。
これに対 し我々はスク リーニ ングや リハ ビリテ‑
シ ョンな どにも応用で きる簡便 な嘆下機能の定量評 価法の確立 を目的 として,嘆下活動中の頚部電気 イ ンピーダンスを無侵襲 に計測す るインピーダンス咽 頭 図
( I mpe da nc ePhar yngo gr a phy
,以下IPG)
を提案 し,各種検討 を行 なって きた9 13)。I P
G波形 は嘆下 機能 を反映す る ものであるが嘆下機能の減退 による 波形への影響 はその原 因によ り様 々であ り,嘩下機 能の状態が異 なる被験者のIPG波形 を直接比較 ・診 断することは測定者の主観 に依存することにな り客 観性 に欠ける。そ こで本研究では,IPGと共 に食塊が咽頭 を通過 した際 に発生する嘆下音 を取得す る測定 システムを 用 い て 青 年 健 常 者 に対 す る測 定 を行 い, こ の
Nor malI P
Gを もとに嘆下機 能が反映 され る波形 の 特徴 を評価す るパ ラメー タとして,咽頭通過時間, インピー ダンス変化率,類似度,嘆下音 タイ ミング の4つ を採用 し ,I P
Gを定量的 に評価す る手法 を提 案す る。 さらに,高齢者 に対 して も同様 の測定 を行 い この評価法 を適用 し,青年健常者 に比べて嘆下活 動 に関与す る器官が円滑 に活動 を履行す る能力 に減 退が生 じる様子 を定量的に示す。岡山大学医学部保健学科放射線技術科学専攻 1)岡山大学医学部保健学科看護学専攻
2)岡山大学大学院医歯学総合研究科病態制御科学専攻
楠原俊 昌他
方 法
1.I mpe da nc ePha r yng o gr a phy( I PG)
測定 システム を図 1に示す
。I PG
を測定す るイ ン ピー ダ ンス メー タ9,10,13)の他 ,加速 度検 出型 の心 音 セ ンサ( TA‑ 7 0
1T, 日本 光 電)を用 い て,咽 頭 を 食塊 が通過す る際 に発 生す る嘆下音 も測定 す る14)。これによ り嘆下活動 に関与す る器官の動 きと実際の 食塊 の移動 の タイ ミングが適正であるか否か を検 出 す る
。I PG
と嘆下音 のデー タはサ ンプ リング周波数2kHz
でA/ D
変換 されてノー トパ ソコンで両波形 の 表示 と記録が行 われる。被験者 は,測定 の趣 旨 と測 定方法 を説明 して測定 に同意 を得 た嘆下障害 のない 人 に限定 している。被験者 には背 もたれの角度 を75 de g
に設定 した シー トに腰掛 けて もらい,測定 開始まで に食塊 (水
l °c c )
を口 に含 んで もらう。 そ して 指示 ランプの合図 に従 い嘆下活動 を開始す る。測定 時間は嘆下活動前後の安静時間 も含 め, 1回につ き1 0
Sとした。図
2
は青年健常者( 21
歳男性)のI PG
測定結果であ る。嘆下 開始 の合 図 はO s
の時点 であ る。VF検査 との照合 によ り,同図の区間 Ⅰが食塊が 口腔 の中を 移動す る口腔期 ,区間 Ⅱが嘆下反射が起 こって食塊 が咽頭 を通過す る咽頭期 ,区間Ⅲが嘆下反射 が終了 して嘆下活動 に関与す る器官が元へ戻 る食道期 に対 応 してい る こ とが確 認 され てい る15)。 また,嘆下 音 とI PG
との対応 に注 目 してみ る と,食塊 が咽頭 を 通過す る咽頭期 に醒下音が活発 に発生 してい ること がわか る。 この ように嘆下機能が健常 な青年 におい て高い再現性 で観測 され るI PG
を「 Nor ma lI PG
」 と 定義す る。図
1 I PG
測定 システム101231[J
(α
)qy刷YJ<16‑
.7八J, 05050(>)LF丑U一≡l
lPG 咽 .、通過 時間
d T S
ヒ量0 0.5
鳴 f
.FBll(S) l.5 2̲」lllIII1̲̲h̲̲̲ I 喰下書
T T叩 一日 喋下音タイミング
0 日 0.5 蔓1 1.5 2 時間(S)
図
2 Nor ma lI PG
と嘩下音( 21
歳,男性)2.
評価パ ラメー タ高齢者 の
I PG
波形 につ いて は後述す るが,多 くの 場合高齢者 のI PG
は加齢 に伴 う膝下機能 の減退 により青 年 の
Nor ma lI PG
とは異 なる波 形 とな る。 また, 高齢者 のI PG
は再現性 が低下 し,個体差 も大 きいた め,波形 を他 の高齢者 あるいは青年健常者のそれ と 単 純 に比較 す る こ とが で きない。 そ こで,Nor mal I PG
の特徴 を評価 す るパ ラメー タを定義 してI PG
を 解析す る。 これ によ り嘆下機能 を定量 的 に表現 して 年齢層 の異 なる被験者 間の比較が可能 になる。我 々 はNormalI PG
の特 徴 か ら以 下 の4
つ の評 価 パ ラ メータを採用 している。1)咽頭通過時間 :Tp
同一被験者 に対 す る
I PG
測定 回数 をn
,m 回 目の 測定で取得 され たI PG
波形 の咽頭通過時 間 (図2
参 照)をT
mとす る とき,咽頭通過時 間T
pを次式で定義 す る。・ p = i m i l T ‑ (1,
Tpの値 は被験 者 が樵 下活 動 を行 なった ときの咽 頭期 の平均時 間 を示す ものであ り,喋下活動 に関与 す る器官の嘆下 プログラムの遂行速度 を評価す るパ ラメー タといえる。咽頭期 の平均時 間 を求めてい る ため, nをある程度大 きい値 に しなければ信頼性 の 高 い Tpが得 られ ない こ とになるが,高齢 な被験 者
‑の時間的 ・体力的負担 を考慮 して今 回は
n=5
と した。 また,食塊 を一度 に飲み込めず に複数回に分 けて飲み込 んだ被験者のIPG
はその回数分多相化す るが,パ ラメータ値 の算出 には,膝下音の発生が確 認で きる,インピーダンス変化量が最 も大 きい相の 波形 を採用 した。2
)インピーダンス変化率 :zc同一被験者 に対 してI
PG
測定 をn回行 ない,その 波形か ら求めた安静時のイ ンピーダンス レベルの平 均値 をzA,I PG
の変化量 の平均値 をdZAとす る とき,インピーダンス変化率zcを次式で定義す る。
zc ‑ 2 (2,
zcの値 は被験者のI
PG
の平均 的な変化率 を示す も のであ り,嘆下活動 に関与す る器官の運動の大 きさ を評価す るパ ラメー タとい える。 また,T
pの とこ ろで述べたように,ZA,dZAを求めるための測定回 敬(=n)は5
回である。図2
ではインピーダンス 「変 化」で表現 しているため, インピーダンス レベルを 読み取 ることがで きないが,通常 は2 00
後半か ら6 0
n程度である。 また, このパ ラメータについて も多 相化 したI
PG
に対す る値 の算 出には,嘆下音の発生 が確認で きる,インピー ダンス変化量が最 も大 きい 相の波形 を採用 した。3
)類似度: S
類似度は被験者のI
PG
波形が,膝下機能が健常 な 場合 に観測 されるIPG
波形 にどの程度似 ているか を 示す ものである。 この評価 の基準波形 となる 「基準I PG
」 (図3
)は青年健常者35人のNormalI PG
か ら以 下の手順 によって生成 した ものである。1
人の青年健常者 につ き5
回IPG
測定 を行 ない, 正規化平均波形 を作成 しイ ンピーダンス レベルがO
nになるようにレベルシフ トする。 さらにピーク ・ ピーク値が2
0となるように正規化 した波形 をZ2PP02一一(O)qy胤Y八6‑.q八),
とす る。35人のZ2ppを平均化 した波形 を求め, さら に, この ピーク ・ピーク値が
2
0となるように正規 化 した波形 を基準IPGと定義 し, これ を Fとす る。
次 に,比較する被験者 について もZ2mを求め, この 波形 をGとす る。 この とき,類似 度 Sを次式 によ り 定義す る。
(3)
ただ し
,F
iお よびGi
(1≦ i≦ j)は,それぞれ j 個 の時系列 デー タか ら成 るFお よびG
の第i
番 目の 値 である。本研究では図3
に示 した ように4
S分の 基準IPGを用意 したので j= 8 000
で あ る。比較す る 被験者 のIPG
については咽頭期が終了 してイ ンピー ダンスが最小値 になる時刻の前後2
Sを計算の対象 とした。 また,このパ ラメータについて も多相化 し たIPG
に対する値 の算 出には,嘆下音 の発生が確認 で きる,インピーダンス変化量が最 も大 きい相の波 形 を採 用 した。式 か ら分 か る よ うに,評価 され るI PG
が基準IPG
の波形 に似か よるほ どSの値 は大 きく なる。 2つの波形が完全 に一致す る ときにSは最大 値 の 1にな り,逆相であれば最小値 の‑ 1になる。これは嘆下活動 に関与する器官の動態の健常性 を評 価す るパ ラメータといえる。
4
)嘆下音 タイミング:TT同一被験者 に対す るI
PG
測定 回数 をn
,m回 目の 測定で取得 されたIPG
波形が最小値 を とる時刻 (咽 頭期 終了時刻)をT z
m,樵下音 の振 幅が最 も大 きい 時刻 をTsmとする とき,樵下音 タイ ミングを次式 によ り走義する。
Ui m i l ( T z m ‑T S ‑)
'4'図
2のNormalI PG
の ように,食塊 は咽頭期 に咽 頭 を通過す ることが正 しい タイ ミングであることか ら,Nor malI PGを評価 した場合 には
TTは咽頭通過 時 間 ち よ りも小 さい正の値 になる。す なわちTT
は 嘆下活動 に関与す る器官の動作 と実際の食塊の搬送 の タイ ミングを評価するパ ラメー タといえる。 また, 他 のパ ラメー タと同様, TTを求 め るための測定 回 数nは5
回である。 また, このパ ラメー タについて も多相化 したIPG
に対す る借の算 出 には,膝下音 の 発生が確認で きる, インピーーダンス変化量が最 も大きい相の波形 を採用 した。
楠原俊 昌他
結 果
図
4
にパ ラメー タ解析 の対象 となる高齢者 のI PG
測定結果 を3
例示す。高齢者 のI P
Gは この3
波形 の いずれか に分類 で きることが多い。 まず, 3
波形 に 共通す る特徴 は,被験者が樵下障害者ではないため に誤嘆が な く,醸下音が活発 に発生す るタイ ミング は常 に咽頭期 と同期 しているこ とである.一万, 3
波形 それぞれに特徴 的 な点 としては,下記が挙 げ ら れる。図
4 ( a ) :
嘆下活動 に関与す る器官の運動能力が低 下す る ことに よってI P
Gの変化量が少 な くなった り, 嘆下活動 に違和感 を感 じてI P
Gが不安定 に変動す る。図4(b):食塊 を一度 に飲み込め ないため に嘆下動 作 を繰 り返す ことが原 因 となって
I P
Gが多相化す る。0
(C 5)
と伽
Y/td
Io7人)I 20241一(
V
)qy樹Y八JfIoqJ<),(ci
)と樹Y/"6‑n八), 24一一tPG
L... L
3 4
0 1 2 3 4 5
時間 (S) (b)75歳 , 男 性
lPG
̲L 嘆汀 音
̲L 嘆汀 音
0 1 2 3
時間 (S) (C)82歳 ,女性
図
4
高齢者のI P
Gと樵下音M一Cttih(V)
50 MICEj7(V)
2
図 4(C):(a),(b)に比べ て該 当す る被験者数 は少 な いが,高齢 となって も嘆下活動が健常で,青年健常 者 の
No r ma lI P
Gに近 い波形 が高 い再現性 を もって 得 られる。しか しなが ら,嘆下機能が減退す る原 因には複数 の要素があ り,それ らが複合 的 に作用す る場合 もあ るため,(a),(b)の現象が 同時 に観察 される場合 もあ る。 さらに,(
a) ,( b )
に分類 され る同一被験者 のI PG
は再現性が低 く,同年代 の他 の被験者 のI P
Gと比較して も類似性が乏 しい ことも特徴 的であ り,嘆下機 能の状態が異 なる被験者 間で
1
回分 のI P
G波形 を単 純 に比較す るこ とは難 しい とい える。次 に図
4
の被験者 を含 む嘆下障害 のない高齢者3 0
人( 7 6. 2±5. 4
歳)のI P
Gにつ い てパ ラメー タ解析 を 行 なった結果 を表1
に示す。 コン トロール として青 年健常 者2 0
人( 2 4. 1±2. 5
歳)のI P
Cに対 す る解析 結 果 も併記 した。 また,両 グループのパ ラメー タ値 の 有意差 を確認す るため にt
検定 を行 なった。各パ ラ メー タの値 の解釈 と有効性 の検討 については後述す るが,咽頭通過時間 帯は高齢者0・ 8 0 1±0・ 1 8 6
S,育 年健常者0. 6 4 4±0. 1 4 5
Sで高齢者 の方が大 きく, イ ンピー ダ ンス変化 率 zcは高齢 者4. 7 3±2. 2 6%
,育 年健 常 者7. 6 6±4. 2 1 0
/0,類 似 度S
は高齢 者0. 8 0 9
±0. 2 3 3
,青年健常 者0. 9 0 8±0. 0 8 9
で高齢 者 の方が小 さい値 となった。 また,嘆下音 タイ ミングTT
は高 齢 者0. 4 6 1±0. 2 3 3
S,青 年 健 常 者0. 3 8 4±0. 1 5 4 S
であ ったが, t検定 に よって両 グループ間で有意差 が認 め られ ない( P>0. 0 5 )
ことが判明 した。表
1
パ ラメー タ解析結果高齢者(30人)青年健常者(20人)P(t検定) 年齢 (読) 76.2±5.4 24.1±2.5 ‑ 咽頭通過時間㌔(S) 0.801±0.186 0.644±0.145 0.0084 **
インピーダンス変化率zc(%) 4.73±2.26 7.66±4.21 0.025 *
類似度S 0.809±0.233 0.908±0.089 0.0075 **
**:P<0.01*:P<0.05ns:nonslgniflCant
考 察
咽頭 通過 時 間
T
pの結 果 よ り,高齢 者 の咽頭期 は 青年健常者 に対 して長期化す る傾向があることが示 された。 これは加齢 に よって舌骨,甲状軟骨,輪状 軟骨 か らなる喉頭 の挙上動作 が緩慢 になっているこ とや,食塊 が円滑 に咽頭 を通過す ることがで きな く な りつつ あ る こ とが原 因 と考 え られ る。高齢 者 の Tpの ば らつ きが やや大 きい の は加齢 に よ り個体差が大 きくなる傾向があることを反映 している。また, 高齢 となって も青年健常者 と同程度 に瞭下活動に関 与する器官の動作速度 を維持 している被験者がいた ことも要因のひとつである。例 えば図4(C)の被験者 が これに該当す るが, この被験者の
T
pは0・ 6 8 8
であ り,高齢者 よりも青年健常者のグループの平均値 に 近い。 またt検定の結果,両 グループの値 には有意 差があ り( P<0. 0 1 )
, このパ ラメータは加齢 による 嘆下機能の減退の評価 に有効 といえる。インピーダンス変化率zcの結果 よ り,高齢者の インピーダンス変化率は青年健常者 に対 して小 さく なる傾向があることが示 された。すなわち,加齢 に より嘆下活動 に関与する器官の運動量が低下 し,喉 頭の挙上量が青年健常者 よ りも小 さ くなる9)ことが 反映 されている と考 え られる。 これは前述の帯の 結果 も考慮すると,青年健常者 に比べて高齢者の嘆 下活動では醒下反射 による喉頭挙上が,短い距離 を
より長い時間をかけて行 われているといえる。また, zcについては青年健常者の方がば らつ きが大 きい 結果 となっているが,これは高齢者の被験者の大半 が痩せていて頚部の周囲長が短かったのに対 し,育 年健常者では頚部 の周囲長が被験者 に よ り様々で あったことが原因 と考 えられる。すなわち頚部の脂 肪量によってインピーダンス レベルが変化するため,
このZcのパ ラメー タ算 出法では青年健常者のほう に大 きなばらつ きが発生 した と考 えられる。 しか し なが ら
t
検定の結果,両 グループの値 には有意差が あ り( P<0. 0 5 )
, このパ ラメータは加齢 による嘆下 機能の減退の評価 に有効 といえる。類似度Sの結果 よ り,高齢者のI
PG
波形 は青年健 常者に対 して基準IPG
か ら崩れた波形 となる傾向が あることが示 された。基準IPGと相似 なI PG
波形が 得 られないのは,加齢 によって口腔期後半の嘆下反 射の誘発,口腔一鼻腔間の閉鎖,咽頭期 の喉頭挙上, 喉頭蓋 による気道閉鎖,食道期前半の食道入口部の 開大 といった,醸下活動 に関与する器官が円滑に活 動 を履行する能力が低下 していることが原因 と考え られる。嘆下障害は,嘆下活動 に関与する器官の形 状異常だけではな く,内視鏡検査 などでは検出で き ない喋下動態の異常が原因である動的嘆下障害 も多 いため,
Sはこのことが評価で きるパ ラメータとし て興味深い。 また,青年健常者のSのば らつ きは平 均値の1 / 1 0
と非常 に小 さ く, このパ ラメータが嘆下 動態の異常に対 して感度の高い検出能力があること を示 している。 t検定 を行 なった結果 においてもP
値は
O. 0 0 7 5
と4
つのパ ラメータの うちで最小値 をとり,最 も有意差がある
( P<0.
01)パ ラメータであっ たことが確認で きる。以上のことか ら,
Sも加齢 に よる嘆下機能の減退の評価 に有効 といえる。高齢者 のSのば らつ きは青年健常者 より大 きく,加齢 により個体差が大 きくなる傾向があることを示 している。
また, Tpと同様 に高齢 となって も青年健常者 に近 いI
PG
波形が得 られ る被験者がいたため被験者 に よっては青年健常者 よりもS
が高 くなる場合があっ た。再度 図 4(
C)
の被験者 を例 に挙 げる とSは0. 9 2 7
であ り,青年健常者のグループの平均値 を上回って いた。樵下音 タイ ミングTTの結果 よ り,高齢者の咽頭 期終了時刻か らの嘩下音の発生 タイミングが長 くな る傾向があることが示 された。 しか しなが らt検定 の結果,両 グループの値 には有 意差が認め られな かった(
P>01 0 5 )
。両 グループの値の差 はちの結果 を参照す ると分か り易いが,高齢者のIPG
における 咽頭通過時間の増加が主な原因であ り,加齢 による 醸下機能の変化が原因 となって生 じた差ではない と いえる。 TTは嘆下活動 に関与す る器官の活動 と食 塊の搬送の同期,すなわち咽頭期 に食塊が咽頭 を通 過することを確認するパ ラメータであるため,値が 正で咽頭通過時 間 (T
p)よ り短 ければ健常 と判断 さ れる。 この観点か らは本研究の被験者は全て健常で あ り,樵下機能が減退 しているとはいえ,誤嘆のな い被験者 を対象 としたことが有効 なパ ラメータにな れなかった理由 といえる。 このパ ラメータの有効性 は実際 に嘆下障害者のIPGを取得 した段階で再度検
討す る必要があるが,誤嘆 (特 に,むせ,呼吸苦 な ど多党的 に兆候 がみ られない無症候性誤嘆 (si l ent as pi rat i on
))
の有無 もしくは発生の危険性 を示す能 力 を有す るため,今後 の研究 においては評価パ ラ メータとして重要度が増 して くると期待する。ま と め
本研究ではNor
malI PG
の特徴 を もとに,咽頭通 過時間,インピーダンス変化率,類似度,嘆下音 タ イミングの4
つの評価パ ラメータを採用 し,青年健 常者のIPGと直接比較することが困難 な喋下機能の
減退者のIPG
を評価 ・比較 した。その結果,以下の4
点について青年健常者 と高齢者の喋下動態の違い を定量的に示す ことがで きた。( 1 )
咽頭通過時間ちは高齢者平均0・ 8 01
S,青年健 常者平均0. 6 4 4
Sであ り,加齢 に伴 い2 4. 4%
増 加 した。これは加齢 により喉頭の挙上動作が緩 慢 にな り,食塊が円滑 に咽頭 を通過 しに くくな楠原俊 昌他
ることが数値化 された と考 え られ る。
(2)イ ンピー ダ ンス変化 率 zcは高齢 者 平均4.73%, 青 年 健 常 者 平 均7.66%で あ り, 加 齢 に伴 い 38.3%減少 した。 これは加齢 によ り嘆下反射 に 伴 う喉頭挙上量が減少 しているこ とが数値化 さ れた と考 え られる。 また,(1)の内容 も考慮す る と,高齢者 の喉頭挙上動作 は,短 い距離 をよ り 長 い時間 をかけて行 われている といえる。
(3)類 似 度
S
は高齢 者平均0.809,青年健常 者平均 0.908で あ り,加齢 に伴 い10.9%減少 した。 こ れは加齢 によ り陛下活動 に関与す る器官が円滑 に活動 を履行 す る能力が低 下 し,I PG
波形 が乱 れたことが数値化 された と考 え られ る。(4)喋下音 タイ ミング
TT
は高齢者平均0.461S,育 年健常者平均0.384Sであったが,有 意差 が得 られなか った。 これは本研究の高齢被験者 は嘆 下機能の減退 のみで誤嘆が な く,食塊 の搬送 に は問題が ない ことが反映 された といえる。今後 の課題 は,様 々な嘆下機能の状態 の被験者 に 対 して
I PG
測定 を行 ない,判別分析 な どの統計処理 による樵下機能評価が可能 となるように解析結果 を 蓄積す ることである。 これ によ り,例 えばス ク リー ニ ングにおいては,病院での さらなる精査 の必要性 について測定者 ・被験者 に定量的 な情報 をフィー ド バ ックす るこ とが期待 で きる。 また, リハ ビリテー シ ョンにおいて も,指導員 と患者の主観 的な判断で 構築 ・履行 されていた リハ ビリテーシ ョンプランが,目標 と トレーニ ングによる達成度 を定量 的 に確認 で きる もの となるため,指導員の適切 なプラン構築 あ るいは患者の 目標意識向上の一助 となることが期待 で きる。
文 献
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4
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