ドーピング問題を考える 望月喜市
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4 年に 1 度のスポーツの祭典、南米初の夏季オリンピックがブラジル・リオデジャ ネイロで 8 月 5 日夜(日本時間 6 日朝)に開催された。史上最多の205か国・地域が 参加し、1万1千人を超える選手が 21 日まで 17 日間の熱戦を繰り広げる。弾劾手続 きで停職中のルセフ大統領は開会式を欠席し、テメル大統領代行(副大統領)が開会 を宣言した。聖火台に点火したのは 04 年アテネ五輪男子マラソン銅メタリスト、バン デルレイ・デリマ氏であった。今度の五輪では内戦や 過激派組織「イスラム国」の勢 力拡大などで混乱が続くシリアの選手や「難民五輪選手団」も参加した。 ロシアは 「国家ぐるみのドーピング問題」に揺れ、参加が危ぶまれたが、結局、参加申請 389 人に対し、271 人が参加するとの発表があった(8 月 4 日現在)。ロシア・オリンピッ ク委員会のジューコフ会長は、参加人数はさらに増える可能性があると述べるととも に、「ロシア選手は選手村でドーピングの追加検査を受けている。・・・国際陸連の 決定でイシンバイワ選手ら違反歴のない選手も含めて陸上チームとして除外されたた ことについて“不公平だ”とも述べた」(道新 8 月 5 日夕刊)。 リオ五輪のドーピング問題を検討しよう。ドーピングに絡んで参加できないケース には、 (1)薬物利用が証明された前歴がある選手で罰則適用期間内にある選手の参加取り消し と、 (2)開催時点で薬物反応陽性を示した選手の参加禁止の 2 つがある。 スポーツ仲裁裁判所(CAS)は 7 月 26 日、リオに 2 カ所の臨時出張所を設置し、 五輪で初めて反ドーピング専門の部署を設置したと発表した。前歴問題では、 国内予 選を勝ち抜き、リオ五輪への参加リストに入った各国選手につき、2004 年アテネ、 2008 年北京、2012 年ロンドンなどどこまでさかのぼって薬物利用の前歴有無を調査す るのだろうか。報道では、違反選手は、北京では 8 か国、ロンドンでは 9 か国に及ぶ という。前歴問題に関する報道のいくつかを次に示そう。 ★「国際オリンピック委員会(IOC)は 7 月 22 日、2008 年北京五輪と 12 年のロン ドン五輪で、ドーピング違反を調べるため採取した検体を再検査したところ、新たに 45 選手分から禁止薬物が検出されたという。これまでの結果と合わせると、北京、ロ ンドンで 1243 検体を調べ、計 98 選手分の検体から禁止薬物の陽性反応があったこと になる」(朝日 160723)。 ★「IOCは 15 年 8 月から、リオ五輪に出場しそうな選手から最新機器で再検査を始 めた。今回は北京で 386、ロンドンで 138 の検体を選んだ。陽性になった北京の 30 検 体は 4 競技で 8 か国・地域の選手で、うち 23 選手はメダリストだという。ロンドンで 陽性になった 15 検体の選手は 2 競技で 9 か国・地域に渡る。ドーピング規程違反が確 定すればリオ五輪に出場できず、メダルは剥奪される」(朝日 160728)。 ★「IOCは 7 月 22 日、最新の分析技術によるドーピング検体の再検査第 2 弾で、 新たに 2008 年北京五輪で 4 競技、8 か国・地域の 30 選手(うち 23 選手がメダリス ト)、 12 年ロンドン五輪で 2 競技、9 か国・地域の 15 選手が陽性反応を示したと発 表した。予備のB検体も含め違反が確定すれば、8 月のリオ五輪に出場できない。第 1弾で違反が確定した分を合わせると、両五輪で再検査した 1243 検体のうち陽性反応 を示したのは 98 選手となった。リオ五輪の期間中や大会後に第3、第 4 弾の再検査を予定しており、バッハ会長は、「新たな再検査はドーピングと戦うIOCの決意を示 している」とコメントした。」(道新 160723)。 このように、今度の参加者のなかで複数の国の参加者が違反経歴を持っていると発 表されているのである。ソチ冬季五輪で、ロシアは検体の取り換えなど組織的隠ぺい をしたとされているが、この問題は次回の冬季オリンピックで問題にすべきことであ る。現在の問題は、ソチ冬季五輪に参加したロシアの選手で、夏季リオ五輪に参加し ている選手がいるとすれば、その選手は違反容疑の対象になる可能性があるが、冬夏 両方に参加する選手がいるとは思えない。問題なのは冬季ソチ五輪の罪(?)を、ロ シア陸上全体の連帯責任とし、違反を立証しないまま陸上に所属するすべての選手の 参加権を理不尽にも奪ったことだ(「推定無罪の原則」違反)。とくに悲劇的なのは、 棒高跳びの世界チャンピオン、エレーナ・イシンバエワ選手の出場権を奪ったことで ある(同選手は年齢的にも今回が最後の機会になるかもしれない)。 以上をまとめると、 (1) 上記新聞報道のように、薬物使用履歴を持つ(数カ国の)選手については、た とえドーピング検査をパスしているとしても、国際オリンピック委員会(IAO)の罰則 ルール(罰則適用期間内は参加禁止)に触れる選手の参加は取り消すべきである。 (2)2014年2月のソチ冬季五輪の検体すり替え事犯については、次の冬季五輪 関連で検討され るべきで、今回の夏季リオ五輪の検討事項ではない。なぜなら冬季五 輪に参加したロシア選手で、今回の夏季五輪にも参加している選手はいないと推定さ れるからだ。 (3)ロシアから参加申請のあった389人すべての選手の参加を許可し、リオ五輪 でのドーピング検査を受けさせるべきだ。 最後に、今回のドーピング事件の反響の大きさを踏まえロシア大統領は次の決定をし たことをお伝えしたい。 ★「プーチン大統領は7月22日、ロシアオリンピック委員会(ROC)に対し、ド ーピングの取り締まりを強化するため、ロシア人だけでなく、外国人の専門家も含む 独立委員会を設置するよう指示した」(道新 7 月 23 日)。
プーチン大統領が WADA 報告で声明
2016 年 7 月 19 日 タス通信 「世界反ドーピング機関(WADA)」は 7 月 18 日、2014年ソチ冬季五 輪でロシア選手がドーピングを行い、役人がそれを組織的に隠ぺいしていたと する報告書を発表した。 これに対し、プーチン大統領の声明が18日、クレ ムリンの公式ウェブサイトに掲載された。WADA 特別委員会の報告書で指摘さ れたロシアの役人を、調査が終了するまで一時的に外すという。同時に、もう 少し完全で客観的な情報を提示するよう WADA に求めた。 スポーツへの政治介入プーチン大統領は、今回のドーピング騒動について、スポーツに再び(冷戦 時代のような)政治的介入が入り始めていると考えている。 「スポーツへの政治的干渉の危険な再開を目の当たりにしている。干渉の形 は確かに変わったが、スポーツを地政学的圧力、国とその国民の悪いイメージ づくりの道具にするという本質は昔と同じ。(中略)今日、ドーピング使用が 発覚したといって、潔白な選手たちの利益を守るとみせかけて、彼らを含めた 選手全員に対して、制裁を加えようという試みが行われ、いわゆるドーピング 騒動が利用され始めている」と記されている。 ロシアのスポーツ選手を非難する WADA 特別委員会の結論は、「スキャン ダラスと評判」の一人の主張にもとづいて構築されている。これがモスクワ反 ドーピング研究所のグリゴリー・ロトチェンコフ元所長のことを指しているの は明らかだ。 ロシアはオリンピズムの原則を大切にしている プーチン大統領の声明によれば、ロシアは以前からずっと、「スポーツにド ーピングが存在する余地はない」という自国の立場を明確に示してきた。 「ロシアは一貫してこの悪を根絶し、国内法を改善し、関連国際機関や国際 オリンピック委員会とオープンに協力し、自国の義務を厳格に遵守している」 とプーチン大統領。 *記事全文(露語)
ロシアの選手は、逆風を跳ね返し、立派な成果を挙げた。
「ロシア成果を強調:ロシア・オリンピ ック委員会のジューコフ会長は、ドーピ ング問題で陸上と重量挙げがチームとし て除外されたことによりメダル獲得数争 いは困難だったとしながらも、「一部が 欠けたチームだが、輝かしい成果を挙げた」と総括した。ムトコ・スポーツ相もロシア通信に対し、女子ハンドボールがソ連時代以来となる金メダルを獲得したことなど を挙げ、出場除外を除けば「ロンドン五輪に比べて後退しておらず、むしろ一歩進ん だ」と評価した。ロシアはリオ五輪で金メダル 19 個を含む総計 56 個を獲得したが、 前回ロンドン五輪の 82 個から大幅に減らし、国・地域別の順位も 3 位から 4 位に下げ た。ロシアは前回 8 個を稼いだ陸上チームがドーピング問題で参加を禁じられた。前 回ゼロのフェンシングで 4 個をとっても、挽回できなかった。」(道新夕刊 160822)
イシンバエワ、IOC 選手委員に
2016 年 8 月 19 日 アレクセイ・モスコ リオ五輪から除外されたロシアの棒高跳び選手エレーナ・イシンバエワが IOC 選手委員に選出された。 スポーツ, 五輪, リオ五輪 エレーナ・イシンバエワ= ミハイル・クリメンチエフ撮影/ロシア通信 8 月 18 日、五輪二冠のロシア女子棒高跳び選手エレーナ・イシンバエワ(34) が IOC 選手委員に選出された。投票には、リオ五輪に参加している 5185 人の 選手全員が参加した。IOC 選手委員会の 4 つの欠員を補うべく 23 人が立候補し た中で、イシンバエワは 1365 票を得票した。 イシンバエワ自身もリオ五輪 に出場するはずだったが、国際陸上競技連盟(IAAF)の決定により、他の全て のロシア人陸上選手とともに、大会から除外された。イシンバエワ以外の今回 の選手委員当選者は、ドイツのフェンシング選手ブリッタ・ハイデマン(1603 票)、韓国の卓球選手ユ・スンミン(1544 票)、ハンガリーの競泳選手ダニエ ル・ギュルタ(1469 票)であった。 選手委員会はスポーツ選手たちの利益を 代表する IOC の諮問機関。委員会の決定は IOC の指導機関にとって勧告的意義 をもつ。イシンバエワを含め、委員の任期は 8 年。これまでロシアを代表して競泳選手アレクサンドル・ポポフが委員に名を連ねていたが、8 月 21 日をもっ てその権限が切れる。イシンバエワが新たに委員となることで、ロシアは委員 会に自国の代表者を残すことになる。 IOC とのより効果的な対話を目指す ロシアの当局者らはイシンバエワの選出を「ロシアのスポーツ界の貢献が認 知されていることの表れ」であるとしている。ロシア陸上競技連盟のドミート リー・シュリャフチン会長はタス通信のインタビューで、「イシンバエワはス ポーツで偉大な成果を残しており、権威がある。ロシアがスポーツ界における 国際的地位を高めることを助けてくれるだろう」と語っている。 イシンバエ ワ本人は、IOC とロシアの間により生産的な対話を打ち立てることを試みる、 と述べている。「まず第一に、選手の権利を守る。こんにち、そのことは非常 に重要だ。選手の声が聞き入れられなければならない。ロシアと IOC をつなぐ 橋となれることは嬉しい」。タス通信が伝えた。 イメージ効果 ロシア NOW の取材に応じたスポーツ問題が専門の法律家アルチョーム・パ ツェフ氏は、イシンバエワの新しい役職において、IOC の決定に対する直接的 な影響よりも重要なのは、そのイメージ効果である、との見方を示している。 「選手委員会は法律的に重要な決定を下すものではなく、IOC 執行委員会の 決定を取り消す権限もないわけであるが、彼らの意見は IOC でもメディア空間 でも特段の重みをもつ」とパツェフ氏。「新たなポストを得たイシンバエワは 全く新しい立場でものを言えるようになる。彼女はトラヴィス・タイガート (米国反ドーピング機関会長)やリチャード・パウンド(世界アンチ・ドーピ ング機関元会長)のそれとは異なる立場、オルタナティヴな考えを、世界のス ポーツ世論に訴えるための場所を得たのだ」
柔道がロシアの主要な五輪競技に
2016 年 8 月 21 日 インディラ・シェスタコワ, ロシア NOW への特別寄稿 ここ 8 年でロシアの柔道は大き く前進した。これはウラジーミ ル・プーチン大統領の影響だけで はない。 リオ五輪柔道男子 60 キロ級で金メ ダルを取ったベスラン・ムドラノ フ選手とプーチン大統領、ソチ、1 月 8 日、2016 年= アレクセイ・ニコリスキー撮影/タス通信 リオデジャネイロ夏季五輪で、ロシアの柔道の選手は、フェンシングの選手 とともに、主なメダルの稼ぎ手となった。五輪が開幕してすぐに、カリオカ・ アリーナ 2 ではロシアの国歌が流れた。柔道男子 60 キロ級でベスラン・ムドラ ノフが、またその 3 日後にハサン・ハルムルザエフが柔道男子 81 キロ級で金メ ダルを獲得した。 国内の競争 2012 年ロンドン五輪以降、ロシアの男子柔道選手が優勝しても、驚きではな くなった。前回はアルセン・ガルスチャン、マンスル・イサエフ、タギル・ハ イブラエフの 3 人が金メダルを獲得している。今回のチャンピオンは別の選手 だ。30 歳のムドラノフの優勝までの道のりには、2 つの五輪周期があった。前 回は代表を決める選考試合でガルスチャンに負け、出場を逃している。それで もあきらめることなく、目標に向かって邁進した。22 歳のハルムルザエフはぎ りぎりまで、五輪の代表に選ばれるかどうか、自信を持てずにいた。国内の 81 キロ級の競争はとても激しいためだ。 大きく飛躍 柔道を注視する人物は、このような活躍に特に驚いていないだろ う。それは武道の大ファンで、世界柔道連盟(IJF)8 段(講道館 5 段)、テコン ドー9 段のプーチン大統領である。とはいえ、発展に影響を与えているのはプ ーチン大統領だけではない。これだけで柔道家が最高の結果などだすことはで きない。2000 年シドニー五輪の銅 メダル 1 個と銀メダル 2 個、2004 年アテネ五輪の銀メダル 2 個と銅 メダル 3 個は、熱いスポーツ大国 にはちょっと物足りなかったが、 2008 年北京五輪からは代表は手ぶ らで帰国した。 北京の失敗の後、 1980 年モスクワ五輪の金メダリス トで 1984 年ロサンゼルス五輪の銀 メダリストであるイタリアの柔道 家エツィオ・ガンバ氏が、コーチとして代表に招かれた。すると、選手はたち まち畳の上で輝きだした。ガンバ・コーチがいる間に、ロシア代表は金メダル 5 個を含む、五輪メダル 8 個を手にした。前回金メダルをとったイサエフは、 ガンバ氏が選手を精神的に解放することができたと考える。「コーチは技術面 ではあまり口だしせず、何かを修正したり、ほのめかしたりする程度だった。 雰囲気が変わり、代表がすごく仲良くなった。練習中は互いを助け合っている」 と、ロシア NOW に話した。
カフカスの伝統 ロシア柔道の近年の金メダリスト全員が、カフカス地方の出 身者である。この地域では格闘技にとても人気がある。「カフカスでは闘いが 血に染み込んでいる。人生とは闘いであり、常に競争を探さなくてはならない。 子供時代からこのような考えが植えつけられている」とイサエフ。 カフカスの選手の成功をリオ五輪の前に予測していたのが、プーチン大統領。 1 月、柔道の練習を見学し、こう言った。「オリンピックの主要なライバルは 誰かと選手に聞いたら、多くが日本人と答えた。我々は日本人に多大な尊敬の 念を抱いている。ロシアの柔道選手の多くはカバルダ人(北カフカスの民族) である。彼らは日本人への全面的な尊敬を込めながらも、「カバルダ人は日本 人を圧倒するだろう」と答えている。選手は、プーチン大統領の柔道へのこだ わりを感じている。「プーチン大統領は若い頃から柔道をやっていて、ずっと 柔道を愛してきた。だから大きな大会の前には必ず会う。そしてエネルギーを もらい、前進する」とイサエフ。柔道への投資が増えていることも、選手の力 になっている。
柔道への国の支援
2012 年ロンドン五輪で選手が活躍したことにより、国か らの補助が大きく増えた。2013 年から 2016 年にかけて、すべての級で選手に 費やされた金額は、3 億 1000 万ルーブルから 4 億 4500 万ルーブル(約 4 億 6500 万円から 6 億 6750 万円)へと増えている。ロシア柔道振興プログラムに よると、2020 年までにさらに 5 億 800 万ルーブル(約 7 億 6200 万円)まで増 えるという。ロシアでは現在、柔道家育成センターが 24 ヶ所運営されている。 2012 年にはわずか 3 ヶ所だったが、2020 年までに 52 ヶ所まで増える見込み。 柔道には民間からの投資もある。リオ五輪金メダリストのハルムルザエフは、 自身の報奨金 400 万ルーブル(約 600 万円)を、ふるさとのイングーシ共和国 での児童の柔道振興のために寄付する。不正転売、IOCに不信 チケット収益3億円?
容疑の理事入院
毎日新聞 2016 年 8 月 19 日 東京朝刊 国際オリンピック委員会(IOC)のパトリック・ヒッキー理事(71)が 17日、リオデジャネイロ五輪の観戦チケットの不正転売に関与するなどした 疑いで、リオ市内のホテルで、ブラジル警察に拘束される異例の事態が起こっ た。AP通信によると、不正転売の利益は少なくとも1000万レアル(約3 億1000万円)という。ヒッキー理事は体調不良を訴え、病院に入院してい る。 OCIは「調査を開始する」としている。同氏は欧州委員会(EOC) 会長、IOC理事、OCI会長の役職を兼務しているが、暫定的に停止となった。 五輪の開催期間中にIOC幹部が逮捕される前代未聞の事態が起きた。I OCは「罪が証明されるまで彼は無実だ」と語った。現段階では推定無罪では あるが、IOCのイメージに大きな傷が付いたことは間違いない。 五輪の観戦 チケットは各国・地域のオリンピック委員会に割り当て分がある。ヒッキー氏 が会長を務めるOCIにも配分され、そのうち800枚以上を不正転売する計 画があったとされ、ブラジル警察に押収された。 配分された観戦チケットは、各国・地域のオリンピック委員会が自国・地域 内に定価で販売できるが、IOCは定価より高い価格での販売を禁じている。 しかし、2012年ロンドン五輪開幕前の6月、複数の国内オリンピック委員 会や公式販売業者らが観戦チケットを闇市場に流していたことが発覚。その際 にもIOCは「転売」撲滅に乗り出したはずだったが、今回の事件はIOC理 事という「身内中の身内」がルールを破った疑いがあるだけに、より事態は深 刻だ。IOCはロシアの国ぐるみのドーピング違反で度々、「高潔性」をうた ったが、汚職事件を繰り返しているIOCへの不信感は高まっている。【田中 義郎】 <リオ五輪チケット、なぜ余る?> ブラジル不況 観戦の余裕なく Q: リオデジャネイロ五輪・パラリンピックのチケットが余っているんだって? A:売れ行きはよくないです。大会組織(そしき)委員会はそれぞれの開幕の100 日前にチケットの販売状況を公表しましたが、五輪は約7割、パラリンピックは約3 割しか売れていません。 Q どうして売れないのかな。 A 最も高いチケットは開会式のA席で4600レア ル(約14万7000円)もします。ブラジル経済は不況で、五輪観戦(かんせん) にお金を割(さ)く余裕に乏(とぼ)しいと指摘されています。 Q 空席だと選手もがっかりするね。 A:2012年ロンドン五輪では、チ ケットが完売したにもかかわらず空席が目立ち、批判の声が上がりました。ス ポンサーや関係者に割り当てられた席が原因でしたが、大会組織委は会場警備 員を座らせたり近所の子供たちを招待したりして乗り切りました。 Q 日本か らは遠いなあ。 A 日本とブラジルには直行便がなく、乗り継ぎで1日以上か かります。日本からの観戦客は五輪・パラリンピック期間を含む今月1日〜9
月18日はビザが免除(めんじょ)されることになりましたが、渡航者(とこ うしゃ)には予防接種(せっしゅ)が推奨(すいしょう)されるなど観戦のハ ードルは低くありません。 Q 日本でもチケットが買えるの? A 「チ ケットぴあ」で公式に販売されており、今月15日から第4次販売が始まりま した。1日からはパラリンピックのチケット販売も行われています。 Q 売 れ残ったらどうなるのかな。 A チケット収入は組織委収入の柱です。収入 が不足すると、財政保証(ほしょう)した政府が負担する羽目(はめ)に陥 (おちい)りかねません。(運動部)
リオ五輪のチケット販売不振、完売は開会式のみ
2016 年 8 月 8 日 15 時 55 分(最終更新 8 月 8 日 15 時 55 分) [リオデジャネイロ 7日 ロイター] - リオデジャネイロ五輪のチケット の売れ行きが、4年前のロンドン五輪の水準を大きく下回っている。チケット 料金はロンドンの半額程度であるにもかかわらず、現時点で販売されたのは全 体の82%で、完売したのは5日の開会式のみとなっている。 広報担当者は、 これまでに500万枚を販売したが、まだ110万枚が売れ残っていると説明 した。ただ主催組織によると、金額では目標を5%上回っている。 ロンドン 五輪では最終的に、発券された850万枚のうち820万枚が販売された。 同担当者は「当日券の確保が法律で義務付けられているため、全競技、全会 場で6%前後の余剰チケットが必要となっている。このため、期待通りの頻度 で完売宣言ができない面がある」と述べた。パラリンピックチケット売れず 12%止まり
毎日新聞 2016 年 8 月 19 日 東京朝刊 リオデジャネイロ五輪・パラリンピックの大会組織委員会は17日の記者会 見で、9月7日に開幕するパラリンピックの入場券がまだ12%しか売れていないことを明らかにした。スポンサー不足と政府の資金拠出の遅れで財政事情 も苦しく、アンドラダ広報責任者は「影響を懸念している」と述べた。 開催 中のリオ五輪でも入場券の売り上げは低調で、各会場で空席が目立つ。組織委 によると、パラリンピックの入場券販売は開幕100日前の5月30日時点で 総数250万枚のうち約3割の72万枚が売れたと公表していた。そのうち5 0万枚は、リオ市が購入した上で地元の学生や公務員に無料配布する計画だっ たが、行政機関が選挙年に財産などを無償で分配することを禁じる公職選挙法 に抵触するとして差し止められたという。【共同】 <リオ偽造チケット、81万円で販売 容疑者逮捕>
偽造チケット、81万円で販売 容疑者逮捕
毎日新聞 2016 年 8 月 10 日 東京朝刊 【リオデジャネイロ石原聖】リオデジャネイロ五輪の偽造チケットを販売した として、ブラジル・リオ市の警察当局は8日、英国のチケットブローカー会社 「THGスポーツ」幹部のアイルランド人を逮捕したと発表した。 発表によると、幹部は5日の五輪開会式直前に市内のホテルで、開会式など の偽造チケット32枚を持っていたところを現行犯逮捕された。開会式の偽造 チケットに1枚8000ドル(約81万円)の値を付けるなどして計1000 枚以上の偽造チケットを売りさばき、1000万レアル(約3億2000万円) を得ていたという。 同社はリオ五輪のチケットを販売する権利を持っていな かった。2014年にブラジルで開催されたサッカー・ワールドカップ(W杯) でも、別の幹部がチケットの不正販売容疑で逮捕されている。ホテルは閑古鳥…祝祭の後に放置される負の遺産たち
09:04 熱狂の渦にまみれた競技場は、前日までの人いきれが 嘘のように静まっていた。平日の昼間、道路の交通渋滞はなくなり、駅には人がまばらになった。カリオカ(リオっ子)は「さみしくなったね」と感慨 深そう。五輪が閉幕したリオデジャネイロは、再び日常を取り戻した。9月 7日から始まるパラリンピックに向けて、英気を養おうしているかのようで もある。 「アベマリオ出現」。22日付のリオの地元紙は閉会式の日本側 の演出で、安倍晋三首相がマリオにふんして巨大な土管から飛び出したこと を大きく伝えていた。汚職事件で大統領が不在のまま五輪を迎えたブラジル にとっては「うらやましい」という反応を感じさせる内容だった。運営の不 手際はあったが、テロや大きな事故もなかったとして、記事は「リオ五輪の 成功」を強調している。 大会組織委員会の担当者は五輪のレガシー(遺産) を「交通インフラだ」と胸を張った。道路にバスの専用レーンを設けたり、 地下鉄の路線を増やしたりしたことだ。ただこれらの交通機関は未開通の部 分もあり、乗り継ぎだけで20分歩く場所もあった。担当者は「路線は計画 段階のままのものもある。完成する見込みもない」とも語り、「五輪まで」 という目標がなくなったことを憂える。 専用レーンについては「時間が予 測でき大変便利だった」という地元の声が多かった。しかし、東京五輪へ導 入できるかどうかについて、東京都の小池百合子知事は「道路が狭く車線が 少ない東京では、現実問題としてどうか」と難色を示す。 「1泊10万円」。あれだけ強気の値段を提示していたリオのホテルは急に 閑古鳥が鳴き始めた。「選手と一緒に写真を撮れた」と嬉しそうに話してい た地元ホテルマンも、五輪後のことを聞くと急に表情を曇らせ、「予約率は 半分以下に落ち込んでいる」と打ち明けた。五輪開催が決まってからの7年 間で客室数は倍増したが、五輪後に客を呼び込む展望は描けていない。 1 0近い競技会場が集中した「五輪公園」は連日大勢の人でにぎわい、“祝祭” を象徴する場所だった。後半はハンバーガーや焼きそばなど、地元の露天商 も軒を連ね、ソースのおいしそうな香りがただよった。 しかし、こうした 賑わいの場は東京にはない。既存施設を活用するため競技場は各地に点在。
東京五輪組織委の武藤敏郎事務総長は「祝祭感を盛り上げる必要がある」と 象徴場所の検討を示唆した。ただすでに仮設会場の整備費が招致時の約4倍 に膨らみ、ない袖は振れない。 リオで特に目立った問題は会場の空席だっ た。卓球やバドミントンなど地元で人気のない競技は当日でも簡単にチケッ トが手に入った。地元民は「サッカーとバレーボールぐらいしか興味がない」 といい、1枚数万円というチケットの高額化が空席に拍車をかけた。 東京 五輪でも約780万枚のチケットを販売する。マイナー競技は普段の大会で 無料のところもあり、武藤氏は「国民の関心が高まり、競技場に足を運ぶ人 が増えることを考える」と話した。(リオデジャネイロ 天野健作)