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室生火砕流堆積物とその類似凝灰岩類の化学分析及 び給源の考察

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Academic year: 2022

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室生火砕流堆積物とその類似凝灰岩類の化学分析及 び給源の考察

著者 原川 朋矢

URL http://hdl.handle.net/10236/12362

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2013 年度 修士論文要旨

室生火砕流堆積物とその類似凝灰岩類の化学分析及び給源の考察

関西学院大学大学院理工学研究科 化学専攻 壷井研究室 原川 朋矢

室生火砕流堆積物は, 奈良県中央部から三重県との県境にかけて東西28 km,南北15 kmの範囲に分布する中新世の流紋岩質凝灰岩である。主にガラス質で黒色の強溶結凝灰 岩である黒色岩と,脱ガラス化の進んだ隠微晶質で優白色の溶結火山礫凝灰岩である白 色岩に大別される1)。また, ジルコンのFT年代として15 Ma前後が報告されている2)。現在, 本岩体については,周辺に複数分布する類似した性質の凝灰岩と共に, いくつかの全岩 化学組成分析や地質学的な研究報告は行われているが,同位体分析をはじめ詳細な地球 化学的な研究はされておらず,未だその供給源についての決定的な結論は得られていな い。よって, 本研究では, 室生火砕流堆積物及び類似した性質を持つ石仏凝灰岩・玉手山 凝灰岩の全岩化学組成分析や室生火砕流堆積物中の火山ガラスの化学組成分析, さらに,

室生火砕流堆積物のSr同位体分析を行い, 給源を解明することを目的とした。

全岩における主成分元素・微量成分元素は,室生火砕流堆積物20試料,石仏凝灰岩2 試料, 玉手山凝灰岩2試料を,波長分散型蛍光X線分析装置(XRF)を用いて分析した。希土 類元素組成については誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いて分析した。火山 ガラスは, 黒色岩から,ポリタングステン酸ナトリウム水溶液を用いて分離し, 主成分元 素組成はXRF, 微量成分元素・希土類元素組成はICP-MSを用いて分析した。Sr同位体分 析は, 表面電離型質量分析装置(TIMS)を用いて室生火砕流堆積物7試料,火山ガラス試料 1試料について87Sr/86Srを分析した。

分析の結果,類似凝灰岩類を含む全ての試料のSiO2含有量は71.5–75.1 wt.%と高い範囲 に収まり, 非常に結晶分化の進んだ流紋岩質な化

学組成を示した。室生火砕流堆積物のSiO2含有量は 71.6–75.1 wt.%で,その中でも黒色岩は71.6–73.8 wt.%,白色岩は73.5–75.1 wt.%の範囲に分かれた。

石仏凝灰岩のSiO2含有量は73.6–74.1 wt.%を示し, 玉手山凝灰岩では71.5–71.9 wt.%と若干低い値を示 した。SiO2含有量に対する各元素含有量をプロット したハーカー図では,一部の玉手山凝灰岩試料を除 き単一のトレンドを形成し, 希土類元素の分析結

図 1 全岩化学組成で規格化した火山ガラス組成

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果をCIコンドライトで規格化すると, 全岩体で同様の希土類元素パターンを示した。ま た, Sr同位体分析より,Sr同位体初生値(SrI値)を求めると,0.70607–0.70647を示した。

火山ガラスの分析結果を,火山ガラスを分離した黒色岩の全岩化学組成で規格化する と,ほとんどの元素で含有量は減少するが, SiO2, K2O, Na2O, Al2O3, Rbでは増加する(図

1)。ここで,CaOの減少に対しNa2O,Al2O3の減少が確認できないことから,噴火する際

のマグマでは,Caに富む斜長石の分別は進んでいるが, Naに富む斜長石はまだマグマ中 からほとんど晶出していなかった可能性が高い。

室生火砕流堆積物において黒色岩と白色岩の化学組成には, わずかな違いが存在する。

黒色岩の方が若干デイサイトに近い化学組成を示し,SiO2含有量において白色岩より1–2

wt.%程乏しい。この化学組成における相違の原因として,(1)白色岩の起源マグマがもと

もと黒色岩に比べややSiO2に富む別のマグマに由来する可能性と,(2)単一の起源マグマ における結晶分化作用の影響を受けた可能性が考えられる。新庄ほか(2002)3)は,モード 組成において黒色岩に見られる斜方輝石が白色岩にほとんど無く,また,斜方輝石が変 質したような鉱物も観察されないことから,両者がそれぞれ別の起源マグマに由来する ことを示した。しかし,SrI値において黒色岩と白色岩で明確な差異は認められず, 狭い 範囲で一致した。さらに,La–TiO2において相関関係が見られることや,活動期間が長期 にわたることから,黒色岩と白色岩の化学組成の違いは起源マグマの違いによるもので はなく,結晶分化作用の影響である可能性が高い。

今回分析した3岩体は,その化学組成から同一あるいは非常に類似したマグマに起源を 持つ可能性が高く,これらを一連の火成活動で供給した給源カルデラは非常に大規模な ものが想定される。紀伊半島付近で化学組成が類似し,時間的に近接して活動した岩体 は,外帯地域の大峰酸性火成岩類と熊野酸性火成岩類が存在する。それぞれの岩体で, SrI 値は熊野酸性火成岩類で0.70625–0.70826,大峰火成岩類で0.70561–0.70656を示し4), 今回 分析した室生火砕流堆積物のSrI値は,大峯火成岩類が示す範囲に収まる。また,室生火 砕流堆積物に含まれる異質岩片に,しばしば放散虫チャート岩片とペルム紀~ジュラ紀 の放散虫化石が存在する5)。これらが示す年代のチャートは,西南日本では丹波・美濃帯 や外帯の秩父帯の付加コンプレックスに限定される。従って,室生火砕流堆積物の一部 はこのチャートの存在する地帯の火道を通り噴出した可能性が高い。以上のことから, 室生火砕流堆積物の給源として,現状最も有力な給源候補は,中期中新世に形成され, 秩 父帯を含む紀伊半島中央部に推定されている大峰・大台コールドロン及び大峰火成岩類 である。

1) 志井田ほか,1960, 地質雑,661-16. 2) 岩野英樹ほか,2007,地質雑,113326-339.

3) 新庄裕尚ほか,2002, 岩石鉱物科学,31307-317. 4) Y.Terakado et al., 1988, Contrib. Mineral.

Petrol., 98, 1-10 5) 室生団体研究グループ・八尾昭,2008, 地球科学,6297-108

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