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人とエージェントが織りなすSociety X.0

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Academic year: 2021

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1162 情報処理 Vol.61 No.12 Dec. 2020

[巻頭コラム]

I P S J

M a g a z i n e

 私が専門とするのは,

Human-Agent Interaction

HAI

)という研究領域である.ここでいうエージェント とは,ロボットや

CG

キャラクタ,チャットボットなど,擬人化される人工物の総称といえる.私はこのエー ジェントが次世代の産業を大きく変えていくと考えている.近年,

Society 5.0

において人工知能(

AI

)の注目 されている点が自動化であるのに対し,エージェントの注目すべき点は擬人化にある.  擬人化について議論する上で,ダニエル・デネットが提唱した理論である志向姿勢が重要である.人があ る程度複雑な人工物の振る舞いを解釈する際,その人工物の「設計」か「意図」のいずれかが想定されることが 知られている.また,人工物が擬人化されている状態は,人が人工物を意図に基づいて解釈している状態と いえ,設計が想定されている場合のインタラクションとは根本的に異なる.  擬人化の産業応用への有用性は,インタフェースとしての側面が理解されやすい.現状ほとんどの人工物 は,設計が想定されている.この場合,人が新しい人工物と出会うたびにその設計を理解する必要があるた め,設計が直感的に分かりやすくシンプルであることが重要となる.一方,意図が想定されている場合,人 は人とのインタラクションと同様な方法で人工物とインタラクションする.期待値コントロールが難しいな どの課題もあるが,うまくいけば誰でもその人工物とのかかわり方が初めから分かっており,誰もがかかわ

人とエージェントが織りなす

Society X.0

大澤

正彦

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1163

情報処理 Vol.61 No.12 Dec. 2020

りやすい人工物が実現し得る.  

HAI

が産業応用に優れている理由はインタフェースとしての側面にとどまらない.人が人工物に対して設 計を想定する場合と比べて,意図を想定する場合には,人の態度が根本的に変わる.たとえば,人工物の機 能不足や失敗が許容され,さらに人が自然に人工物を補助することもある.掃除ロボットは適度にエージェ ントとしての性質を持ち社会に浸透した好例の

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つである.現在の掃除ロボットは,ものが散らかっている 部屋では機能せず,しばしばコードや椅子の足に引っかかって動けなくなることもある.ところがこのとき, 「動けなくて困っている」など,意図に基づいて掃除ロボットの振る舞いを人が理解する結果,人が掃除ロ ボットのために部屋を片付けたり,動けなくなったロボットを助けたりすることがある.いつでも完璧に部 屋を掃除できるわけではない掃除ロボットが社会に浸透しているように,これまでは社会実装が難しかった 挑戦的な技術も擬人化によって社会実装のチャンスがあるとすれば,技術が社会をより加速的に豊かにして いくだろう.  私は

Society 5.0

として描かれる未来に,エージェント技術が浸透することで,人と人工物の関係性が変 化し,さらなる社会の進展が望めると考えている.それも含めて

Society 5.0

なのか,はたまたその次なる

Society 6.0

なのかは分からないが,近い未来の当たり前を生み出したい. ■ 大澤 正彦 日本大学文理学部 情報科学科 助教 1993 年生.博士(工学).2014 年全脳アー キテクチャ若手の会,2017 年認知科学若手 の会各設立.孫正義育英財団一期生.著書に 『ドラえもんを本気でつくる』(PHP 新書). 夢はドラえもんをつくること.

参照

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■はじめに