• 検索結果がありません。

836 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 6 (2015) 方法 1. 実態調査 1-1. 調査期間及び対象患者 2014 年 10 月 1 日 15 日の 2 週間において, ホスピタル坂東 ( 以下, 当院 ) の一般病棟に入院している患者のうち, 酸化マグネシウム錠 [

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "836 YAKUGAKU ZASSHI Vol. 135 No. 6 (2015) 方法 1. 実態調査 1-1. 調査期間及び対象患者 2014 年 10 月 1 日 15 日の 2 週間において, ホスピタル坂東 ( 以下, 当院 ) の一般病棟に入院している患者のうち, 酸化マグネシウム錠 ["

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

aホスピタル坂東薬剤部,b協和化学工業株式会社医薬 製剤事業所,cホスピタル坂東内科,dホスピタル坂東 こころの診療科,eいわき明星大学薬学部,fつくば国 際大学医療保健学部 e-mail: t.tomita@hpbando.jp ―Note―

とろみ調整食品が酸化マグネシウム錠の崩壊と溶出に及ぼす影響

富田 隆,,a 後藤英和,a 吉村勇哉,b 坪内良子,b 中西利恵,a 小島千賀子,a 米島美穂子,a 吉田 正,c 田中勝也,d 住谷賢治,e 幸田幸直a, f

EŠect of Food Thickener on Disintegration and Dissolution of Magnesium Oxide Tablets

Takashi Tomita,,aHidekazu Goto,aYuya Yoshimura,bYoshiko Tsubouchi,b

Rie Nakanishi,aChikako Kojima,aMihoko Yoneshima,aTadashi Yoshida,c Katsuya Tanaka,dKenji Sumiya,e and Yukinao Kohdaa, f

aDepartment of Pharmacy;cDepartment of Internal Medicine;dDepartment of Psychiatry, Hospital Bando; 411 Kutsukake, Bando, Ibaraki 3060515 Japan:bKyowa Chemical Industry Co., Ltd.; 28762 Inoue, Miki-cho,

Kita-gun, Kagawa 7610705, Japan:eFaculty of Pharmacy, Iwaki Meisei University; 551 Chuodai Iino, Iwaki, Fukushima 9708551, Japan: andfFaculty of Health Sciences, Tsukuba International University;

6201 Manabe, Tsuchiura, Ibaraki 3000051, Japan.

(Received February 16, 2015; Accepted March 2, 2015)

It has been reported that magnesium oxide tablets are excreted in a non-disintegrated state in the stool of patients when the tablets are administered after being immersed in a food thickener. Therefore we examined whether immersion in a food thickener aŠects the pharmacological eŠect in patients taking magnesium oxide tablets, and whether immersion aŠects its disintegration and solubility. The mean dosage(1705 mg/d) was higher for patients who took tablets after im-mersion in a food thickener than for those who took non-immersed tablets(1380 mg/d). The disintegration time and dissolution rate of the immersed tablets were lower than those of non-immersed tabletsin vitro. Furthermore, compo-nents that constitute the food thickener and diŠerences in composition concentrations diŠerentially aŠect the disintegra-tion and solubility of magnesium oxide tablets. This suggests that commercially available food thickeners are likely to be associated with changes in the degradation of magnesium oxide tablets, and they therefore should be carefully used in certain clinical situations.

Key words―food thickener; magnesium oxide; tablet; disintegration; dissolution rate

緒 言 食事の際の誤嚥の防止策として嚥下補助食品であ るとろみ調整食品(以下,「とろみ剤」と略)が医 療機関や介護施設で汎用されている.13)嚥下障害 を持つ患者においては,食事の際に使用されるだけ ではなく,薬剤を服用するためにも誤嚥防止策とし て使用される機会が多い.とくに認知症患者は嚥下 能力の低い,あるいはほとんど失っている者が多 く,とろみ剤は薬剤服用に必要欠くべからざるもの となっている.とろみ剤の嚥下補助剤としての有用 性についての検討は多いが,15)それらの内用薬服 用時の薬物動態に及ぼす影響については十分な資料 がなく,薬剤服用時にむやみにとろみ剤を使用する ことに警鐘が鳴らされている.6)最近,とろみ剤に 浸漬させた酸化マグネシウム錠を服用した患者の便 中に未崩壊の錠剤が観察され,とろみ剤が錠剤の崩 壊に影響することが明らかになった.7) そこで,本研究では,酸化マグネシウム錠を服用 している患者におけるとろみ剤使用の影響を調査す るとともに,とろみ剤が錠剤の崩壊性と溶出性に及 ぼす影響を検討した.

(2)

方 法 1. 実態調査 1-1. 調査期間及び対象患者 2014年 10 月 1 日15 日の 2 週間において,ホスピタル坂東(以 下,当院)の一般病棟に入院している患者のうち, 酸化マグネシウム錠[マグミット錠 330 mg;協和 化学工業株式会社(以下,「M 錠」と略)]が投与 された 147 名(女性 66 名,男性 81 名)を対象とし た. 1-2. 調査項目 とろみ剤の使用状況,酸化マ グネシウム投与量,及び M 錠以外の下剤の併用状 況を調査した.なお,当院で使用しているとろみ剤 は,キサンタンガム系の「つるりんこ Quickly」 (株式会社クリニコ)であり,その濃度は 1.5%で ある. 2. 崩壊試験と溶出試験 2-1. 試料 試験には M 錠を用いた.とろみ 剤は,キサンタンガム系の「つるりんこ Quickly」 (以下「Tsuru-Q」と略)とネオハイトロミール III (以下「Neo Hi-toro III」と略)(株式会社フードケ ア),グアーガム系のハイトロミール(以下「Hi-toro」と略)(株式会社フードケア)を用いた. 2-2. とろみ剤のラインスプレッドテスト 日 本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分 類 20138)に従い,各種の濃度に調製したとろみ剤 について,ラインスプレッドテスト用プラスチック 測定板を用いて測定した.すなわち,直径 30 mm の金属製リング内にとろみ剤を 20 mL 注入し,30 秒後にリングを持ち上げ,60 秒後に試料の広がり 距離(mm)を測定した.6 方向の測定値の平均値 (n=3)を line spread test (LST)値とした.

2-3. とろみ剤の調製 各とろみ剤はそれぞれ

の調製指標に従い,濃いとろみ,中間のとろみ,薄 いとろみにほぼ相当する濃度(LST 値として約 30 43 mm に相当)に調製した.すなわち,Tsuru-Q は,3.0% (w/v), 1.5% (w/v), 1.0% (w/v)の濃度 に,Neo Hi-toro III は,2.0% (w/v), 1.0% (w/v), 0.75% (w/v)の濃度に,Hi-toro は,2.7% (w/v), 2.0% (w/v), 1.5% (w/v)の濃度に調製した. 2-4. とろみ剤中での錠剤の崩壊 各濃度に調 製した 3 種類のとろみ剤に M 錠を浸漬し,30 分後 の膨潤・崩壊状況を観察した. 2-5. とろみ剤浸漬後の溶出 各濃度に調製し た Tsuru-Q に M 錠を 30 分間浸漬させた後,直ち に溶出試験を行った.なお,対照は非浸漬の M 錠 とした.浸漬時間は,医療現場での聞き取り調査の 結果,食前に M 錠をとろみ剤に浸漬し,食後に服 用させた事例が多かったことから,その平均時間の 30分間に設定した.溶出試験は,日局溶出試験法 に準じ,8 連式溶出試験器(NTR-8000AC;富山産 業株 式 会社 ) を用 い, 溶 出試 験液 と して 第 1 液 (pH 1.2)を用い,パドル法 50 rpm で実施した. 2-6. 錠剤懸濁液・とろみ剤混合液からの溶出 M錠 1 錠を 2 mL の常温の水で崩壊・懸濁させた 後,各濃度に調製した Tsuru-Q 3 mL に混和し,均 一にした錠剤懸濁液・とろみ剤混合液の全量を試料 としてベッセル内に投入し,溶出試験を行った.な お,対照は非浸漬の M 錠とした.溶出試験は,日 局溶 出 試験 法 に準 じ, 溶 出試 験液 と して 第 1 液 (pH 1.2)を用い,パドル法 50 rpm で実施した. なお,とろみ剤はマイクロピペットで計量し,分取 した. 酸化マグネシウムの溶出率は,原子吸光光度法 (原子吸光分光光度計 AA-6300;株式会社島津製作 所)で溶出したマグネシウムを定量し,算出した. 結 果 1. 実態調査 M 錠が投与された 147 名のう ち,とろみ剤を使用していた患者は 21 名(女性 7 名,男性 14 名),使用していなかった患者は 126 名 (女性 59 名,男性 67 名)であった.とろみ剤を使 用していた患者 21 名のうち,15 名は M 錠を少量 の水で崩壊後,とろみ剤に混和して服用していた. 酸化マグネシウムの平均投与量は,とろみ剤を使 用していなかった患者で 1380 mg/日(範囲;660 2970 mg/日)であった.とろみ剤を使用していた 患者のうち,M 錠を崩壊させずにとろみ剤に浸漬 し,そのまま服用していた患者は 1705 mg/日(範 囲;6602970 mg/日),M 錠を崩壊させてから,と ろみ剤に混合して服用していた患者は 1122 mg/日 (範囲;6601980 mg/日)であった(Table 1). M錠以外の下剤が併用投与されていた患者は, とろみ剤を使用していなかった患者 126 名のうち 31名(25%)であった.とろみ剤を使用していた 患者(21 名)の場合,M 錠を崩壊させずに服用し

(3)

Table 1. Proˆles of Patients Administerd Magmitt Tab.

Magmitt Tab. ingestion With water Immersed withfood thickener water and then mixedCrushed using by with food thickener

No. of patients 126 6 15

Dose of magnesium oxide (mg/d)

Mean 1380 1705 1122 Range 6602970 6602970 6601980 Age (year) Mean 64 85 73 Range 2193 7094 3088 Sex Female 59 4 3 Male 67 2 12 No. of patients

using with other relaxivants 31(25%) 2(33%) 9(60%)

using without other relaxivants 95(75%) 4(67%) 6(40%)

Table 2. Physical State of Magmitt Tab. after 30 Min Immersing in Food Thickeners

Tsururinko Quickly

Swelling slightly moderate complete

Disintegration non moderate complete

Cocentration (%, w/v) 3.0 1.5 1.0

LST (mm, mean±S.D.) 31.7±1.62 38.0±1.45 42.3±0.67

Neo-hightoromeal III

Swelling non moderate complete

Disintegration non moderate complete

Cocentration (%, w/v) 2.0 1.0 0.75

LST (mm, mean±S.D.) 32.1±0.17 34.1±0.79 35.6±0.98

Hightoromeal

Swelling non non non

Disintegration non non non

Cocentration (%, w/v) 2.7 2.0 1.5

LST (mm, mean±S.D.) 33.3±0.84 38.3±0.42 41.0±0.64

LST: Line Spread Test.

ていた患者では,6 名のうち 2 名(33%),崩壊後 に服用していた患者では,15 名のうち 9 名(60%) であった(Table 1). 2. 崩壊試験と溶出試験 2-1. とろみ剤の LST 値 Tsuru-Q の LST 値 は,濃度 3.01.0% (w/v)の範囲において,31.7± 1.6242.3 ±0.67 mm であ った .ま た Neo Hi-toro III のそれは,濃度 2.00.75% (w/v)の範囲におい て,32.1±0.1735.6±0.98 mm であり,Hi-toro の それは,濃度 2.71.5% (w/v)の範囲において, 33.3±0.8441.0±0.64 mm であった(Table 2). 2-2. と ろ み 剤 中 で の M 錠 の 崩 壊 Tsuru-Q においては,濃いとろみ(LST=31.7)では,わず かに膨潤したものの,崩壊はしなかった.中間とろ み(LST=38.0)では,膨潤はしたものの,完全に 崩壊しなかった.薄いとろみ(LST=42.3)では, 膨潤して崩壊した.Hi-toro においては,3 段階す べてのとろみ(LST=33.341.0)で膨潤も崩壊も 認められなかった.Neo Hi-toro III においては, 濃いとろみ(LST=32.1)では,膨潤も崩壊も認め られなかったが,中間とろみ(LST=34.1)ではわ ずかに膨潤したものの,完全に崩壊はしなかった. 薄いとろみ(LST=35.6)では,膨潤し完全に崩壊

(4)

Fig. 1. Dissolution Proˆle of Magnesium Oxide from the Magmitt Tab. Immersed in Food Thickener

□: 1% Tsururinko Quickly (LST=42.3), △: 1.5% Tsururinko Quickly (LST=38.0), ▲: 3% Tsururinko Quickly (LST=31.7), ◆: 2.7% High-toromeal (LST=33.3), ●: No immersed.

Fig. 2. Dissolution Proˆle of Magnesium Oxide from the Mixture Consisted of Magmitt Tab. Suspension and Food Thickener

□: 1% Tsururinko Quickly (LST=42.3), △: 1.5% Tsururinko Quickly (LST=38.0), ▲: 3% Tsururinko Quickly (LST=31.7), ◆: 2.7% High-toromeal (LST=33.3), ●: Food thickener free.

した(Table 2). 2-3. とろみ剤浸漬後の M 錠からの酸化マグネ シウムの溶出 120 分後の溶出率は,Tsuru-Q に おいては,濃いとろみ(LST=31.7)では 25.5%, 中間とろみ(LST=38.0)では 41.4%,薄いとろみ (LST=42.3)では 37.4%であった.Hi-toro の濃い とろみ(LST=33.3)においては,M 錠は崩壊が認 められず,溶出率も 2.6%であった(Fig. 1). 2-4. M錠懸濁液・とろみ剤混合液からの酸化マ グネシウムの溶出 120 分後の溶出率は,Tsuru-Qにおいては,濃いとろみ(LST=31.7)では 84.6 %,中間とろみ(LST=38.0)では 87.3%,薄いと ろみ(LST=42.3)では 87.1%であった.Hi-toro の濃いとろみ(LST=33.3)においては,59.6%で あった(Fig. 2). 考 察 酸化マグネシウムによる緩下作用は,製剤の崩 壊,崩壊した粒子の胃酸との反応による重炭酸マグ ネシウム生成の 2 段階を経ることによって得られ る.今回の当院での調査において,とろみ剤を使用 していた患者のうち,M 錠を粉砕せずに服用して いた患者の酸化マグネシウムの平均投与量が,とろ み剤を使用していなかった患者の投与量に比べ多 かったこと,M 錠以外の下剤が併用投与された患 者の割合は,とろみ剤を使用していなかった患者に 比べ,とろみ剤を使用していた患者で高かったこと から,とろみ剤が M 錠の薬効発現に及ぼす影響は 少なくなく,とろみ剤が製剤の崩壊過程や崩壊後の 酸化マグネシウムの胃酸との反応に影響していると 考えられる. 製剤の崩壊については,とろみ剤に浸漬した M 錠を服用した患者の便中から未崩壊の M 錠が排泄 され,とろみ剤の主成分の違いやとろみの強さに よっては,錠剤が崩壊しなかったという報告7)から も,とろみ剤による錠剤の崩壊阻害は種々の状況で 生じているものと考えられる.なお,便中に未崩壊 の M 錠が排泄された患者に使用されたとろみ剤 は,本研究で使用したとろみ剤と同じキサンタンガ ム系であり,濃いとろみほど M 錠が崩壊し難いと いう報告も本研究と同じ結果であった. とろみ剤はそれに含まれているとろみ成分によ り,デンプン系(第 1 世代),グアーガム系(第 2 世代)及びキンサンタンガム系(第 3 世代)などに 分類されている.4,5)そして,それらの調製において は,各とろみ剤毎に必要とされる粘度を類似の食品 を目安にして,「マヨネーズ状」,「フレンチドレッ シング状」等と表示されているだけである.各製品 に含有されている増粘剤の種類や含量により,調製 後の粘度が異なるため,とろみ剤間での粘度の比較 は難しい.現在,とろみ剤間の粘度の評価・調整を 図る意図から日本摂食・嚥下リハビリテーション学 会では,粘度との相関のある LST 値を提案し,8) ろみの程度を標準化している.段階 1 の薄いとろみ は LST 値として 3643 mm(粘度 50150 mPa・s), 段階 2 の中間のとろみは LST 値として 3236 mm ( 粘 度 150 300 mPa ・ s ), 段 階 3 の 濃 い と ろ み は LST値として 3032 mm(粘度 300500 mPa・s)で ある.

(5)

本試験では,相対評価が可能な LST 値を用い て,各濃度におけるとろみ剤中での錠剤の崩壊性, 並びに浸漬後における酸化マグネシウムの溶出性を 観察したが,キンサンタンガム系の Tsuru-Q にお いては,LST 値の低い濃いとろみでは錠剤の崩壊 はみられず,LST 値の高い薄いとろみにおいて, 錠剤の崩壊が認められた.このことは薄いとろみに おいては,粘度が比較的低いため,とろみ剤の高分 子マトリックス(キサンタンガム分子は,高粘度の 溶液中では三次元的な弱い網目構造を形成するが, 低粘度の溶液中では網目構造の維持が難しくなる) からの離水が容易で,錠剤が適度に吸水できたこと によるものと考えられる.また,Tsuru-Q と同じキ ンサンタンガム系の Neo Hi-toro III においては, 推奨される調製濃度では,3 濃度ともに中間のとろ みの範囲(LST=3236)に入ってしまったが,そ の範囲内で錠剤は非崩壊から完全崩壊までの結果が 得られ,崩壊性への影響は,とろみの粘度だけでな くとろみ剤を構成している高分子マトリックスから の M 錠内部への水の浸入度合いの違いが影響して いることがわかる.しかしながら,Tsuru-Q と Neo

Hi-toro IIIとは異なるグアーガム系の Hi-toro にお

いては濃いとろみ(LST=33.3)だけでなく,中間 と薄いとろみ(LST=38.3 と 41.0)においても M 錠は膨潤も崩壊も認められなかったことからも,錠 剤の崩壊への影響は,とろみの粘性に依存するので はなく,高分子マトリックスの構造そのものや添加 物の違いに由来するのではないかと考えられる. このことは,溶出試験でもみられ,Tsuru-Q にお いては 120 分で,濃いとろみ(LST=31.7)では 25.5%,中間と薄いとろみ(LST=38.0 と 42.3)で は,37.441.4%の溶出率を示していたが,Hi-toro (LST=33.3)においては,2.6%と非常に低く,と ろみの粘性に依存するのではなく,高分子マトリッ クスの構造そのものに由来することが溶出試験に よっても立証されたのではないかと考えられる. このように錠剤をとろみ剤に浸漬後,溶出試験に 供すると溶出率が低くなることが認められたが,錠 剤をあらかじめ水で崩壊・懸濁させた後,Tsuru-Q に混和した場合は,酸化マグネシウムの溶出速度 は,混合したとろみ剤の LST 値に影響されず,120 分の溶出率は 8587%であり,とろみ剤未混合時の 溶出パターンとほとんど差が認められなかったが, Hi-toroと混和した場合には,120 分の溶出率は 60 %と低く,崩壊・懸濁後の錠剤にとろみ剤を混合す るだけでも,高分子の影響をうけることが認められ る. 以上のことより,粘性の低いとろみ剤であっても 溶出速度が低下する可能性があること,あらかじめ 水で錠剤を懸濁してからとろみ剤と混合すれば溶出 率の低下をかなり防ぐことができること,しかしな がら,とろみ剤に含有される増粘剤の種類によって は,粘度にかかわらず薬物の溶出に影響することが あることが判明した. このことから医療機関でとろみ剤を使用する際 は,可能な限りとろみの程度を低めに(LST 値を 高く)調製するだけでなく,前もって錠剤を水で崩 壊・懸濁させておき,とろみ剤と混和することなど の服薬時の工夫を施す必要がある.しかしながら, とろみ剤に含有される増粘性高分子(Tsuru-Q の主 要原材料;デキストリン,キサンタンガム,乳酸カ ルシウム,クエン酸三ナトリウム/Neo Hi-toro III の主要原材料;デキストリン,キサンタンガム等の 増粘多糖類,pH 調整剤/Hi-toro の主要原材料;デ キストリン,グアーガム等の増粘多糖類,加工でん ぷん)の違いにより,とろみの粘度が薬剤からの薬 物の溶出率の低下の指標にならないことから,低粘 度であっても溶出に影響する可能性が残っているこ とを忘れてはならない.また,われわれは,M 錠 以外の錠剤についてもとろみ剤の影響について検討 を進めており,口腔内崩壊錠においても,とろみ剤 に浸漬することにより,その崩壊時間が長くなる現 象を捉えている.このようなことから,とろみ剤を 使用する場合には,薬剤の崩壊性・溶出性に及ぼす 影響が少ないことが確認された製品を適切に選択 し,使用する必要があると考える. 利益相反 本研究は,酸化マグネシウム錠の未 崩壊排泄事例を受けて医療従事者が計画したもので あり,協和化学工業株式会社からの委託ではない. 吉村勇哉(協和化学工業株式会社の社員).坪内良 子(協和化学工業株式会社の社員).これ以外に開 示すべき利益相反はない. REFERENCES 1) Fujitani J.,Yakkyoku, 51, 13501355 (2000).

(6)

2) Ookoshi H.,Jpn. J. Clin. Nutr., 105, 178185 (2004).

3) Ookoshi H.,Medical Rehabilitation, 57, 132 139 (2005).

4) Deto A., Yamagata Y., Kayashita J., Bull. Fac. Human Culture Sci. Pref. Univ. Hiroshi-ma, 2, 3947 (2007).

5) Nakamura M., Yoshida S., Nishioka Y.,

Hayashi S., Suzuki Y. A., Jpn. J. Nutr. Diet., 70, 5970(2012).

6) Morita T., Takane H., Otsubo K., Ieiri I.,

Jpn. J. Pharm. Health Care Sci., 37, 1319 (2011).

7) Yamaguchi H., Ochiai A., Takiya H., Ab-stracts of papers, the 24th Annual Meeting of Japanese Society of Pharmaceutical Health Care and Sciences, Nagoya, September 2014, p. 371.

8) Japanese Society of Dysphagia Rehabilitation, Jpn. J. Dysphagia Rehabilitation, 17, 255267 (2013).

Table 2. Physical State of Magmitt Tab. after 30 Min Immersing in Food Thickeners
Fig. 1. Dissolution Proˆle of Magnesium Oxide from the Magmitt Tab. Immersed in Food Thickener

参照

関連したドキュメント

(※)Microsoft Edge については、2020 年 1 月 15 日以降に Microsoft 社が提供しているメジャーバージョンが 79 以降の Microsoft Edge を対象としています。2020 年 1

⑤調査内容 2015年度 (2015年4月~2016年3月) 1年間の国内宿泊旅行(出張・帰省・修学旅行などを除く)の有無について.

・少なくとも 1 か月間に 1 回以上、1 週間に 1

⑴調査対象 65 歳以上の住民が 50%以上を占める集落 53 集落. ⑵調査期間 平成 18 年 11 月 13 日~12 月

6 月、 月 、8 8月 月、 、1 10 0 月 月、 、1 1月 月及 及び び2 2月 月) )に に調 調査 査を を行 行い いま まし した た。 。. 森ヶ崎の鼻 1

目について︑一九九四年︱二月二 0

(2)工場等廃止時の調査  ア  調査報告期限  イ  調査義務者  ウ  調査対象地  エ  汚染状況調査の方法  オ 

○「調査期間(平成 6 年〜10 年)」と「平成 12 年〜16 年」の状況の比較検証 . ・多くの観測井において、 「平成 12 年から