<翻訳>米国社会における日本企業 : 協力,衝突,お
よび企業市民としての役割 : ダニエルE.ボブ&SRI
インターナショナル編,Japan Society(NewYork)刊
行図書,1990年
著者
中村 久人
著者別名
Nakamura Hisato
雑誌名
経営論集
巻
44
ページ
83-138
発行年
1997-02-28
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00005656/
Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 )
(翻 訳)
ダニエルE.
ボブ&SRI
インターナショナル編
『 米 国 社 会 に お げ る 日 本 企 業 一協力、衝突、および企業市民としこ の役割り
中 村 久 人 訳 1 2 3 4 5 6 7 序 文 は じめ に・各 章解 説 日本か らの対 米直接 投資 の増 加 米 国で の企業 市民:1990 年 代に おけ る 新し い 意味 投 資環 境: 日本、 日本 の直接投 資、 お よび企業 市民に対 する アタ リカ人 の 見方 アメ リカ人 の目を通 じて: 対米 日本 直接投 資の経 験 企業 市民 とし ての日 本企業 し お わ りに 83 序 文 ∧ \ 米国 で の日本 から の直 接 投資 は ア メリ カ人や 卑 近 な メデ ィアに とって 重 要な 問 題 に なっ てき た。 米 国経 済に 占め るそ のよう な投資 の役 割 は依 然 とし て小 さく、 国境を 越 え て行 わ れ る大 規 模な海 外 直 接投資 の一 部 を形 成し て い るだけ な のに 、 日本 の直 接投資 に つい て の議 論は 、「 米 国 を 買 収 し よ うとし てい る」 と か 「米国 の自律性 を脅 か し てい る」 とい った 論調 にそ の 矛先 が 向 く傾 向に あ る。 話し の他 の側面 が無 視 され てし まっ てい る。 こ の研究 で は、 アメ リカ人 は 日本 の投 資 を ど の ように 見 てい るのか 、 日本 企業 は 米国の 企 業市 民 とし て ど の ように 行 動し てい る のか 、 現地 レベル で 日米 間 の絆 はいか に形 成 さ れつつ あ るの か、 とい った非 常 に重 要な幾 つか の 問題を 検討 す る。 ジ ャパン・ ソサイェ テ ィ( 日本 協 会〉 は 日米 関 係に重 要 な タイ ムリ ーで客 観的 な 分 析を 提供 す る とい う全 体的 使 命 の一 部 と して この プ ロジ ェ クトを 計 画し 実施し た。 当研 究 の実 施 に 当 たっ てば、 非営利 研 究団 体 であ るSRI イ ンタ ーナシ ョ ナル の協 力 のも/とに推 進さ れた。 世 論 調 査や 市 場調 査を 専門 とす る ワ ース リン ダ・ グル ープ 社に も当プ ロ ジ ェ クト の支援を お 願い し た。 ※ 当 調 査 は ニ ュ ー ヨ ー ク の 日 本 協 会(JAPANSOCIETY ) に よ り 実 施 さ れ た も の で あ り、 訳 者 は 協 会 日 米 関 係 部 よ り 翻 訳 の 許 可 を 得 た 。 尚、 本 文 はJapanSociety 発 刊 の 小 冊 子 “Japanese,CompaniesinAmericanCommunity" (70 ペ ー ジ ) の全 訳 で あ る が 、序 文 の 一 部 と 事 例 か ら な るExibitA −L に つ い て は 、紙 幅 の 都 合 上 割 愛 し た 。84 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) まず、 出発点 とし て、SRI イ ン タ ーナシ ョ ナル のモデ ルに 基づい て 企業 市民 につ い て の枠 組 みを 開発し た。 そし て この枠 組 みを 以 下 の 日本企業3 社 の経験 に適用 し た。 ニ ュ ーヨ ー ク州 タリ ータ ウ ソの 日立 ア メリカ の本 社、 ケン タ ッキ ー州 ジ ョ ージ タウ ンのト ヨ タ・ モ ータ ー. マ ニ ュフ ァタチ ャ リン グ(TMM ) の工 場、 お よび サ ンフ ラ ンシ ス コの(三菱 銀 行所 有 の) カ リフ ォル ニ ア銀 行 であ り、そ れらを 日本 の直接 投資 が引 き起 こし てい る 広範 な問 題を 検討 す るた めに 選択 し たの であ る。 これら3 つ の事 例研 究 は、ブ リ ーソフ ィ ール ド( 上地取 得 から操 業 に漕 ぎ 着け るま で) の投資 と買 収 の両方 が 含ま れて お り、 西 海岸 、北 東 部、南 部 と地 理的 区 分 も 異な り、 事 業 活 動 も製 造 、 金 融 サ ービ ス、本部 業 務 と異 って お り、 またト ヨ タ3,000人 、日立 本部150 人( 全米740 人 )と事業 規模 も 違い 、 都市、 郊 外、 田 園地 帯 と立 地が 異な り、 さ らに ケ ンタ ッキ ーの場 合5 年 、 サンフ ランシ スコ の場合10年 とい うよ うに 日本 企業 の投 資 の経 験年 数 も異な っ て い る 。 ジ ャ パ ン ・ ソ サ イェ テ ィ とSRI イ ン タ ーナシ ョ ナル は 事例 研究 のために 、 企業 の代 表 者、 市 の当 局 者 、 従 業 員 や 社 会 の リ ー ダ ーだ ち から なる90人 以上 の人 々に イ ン タビ ューを 実 施し た。 私た ちは √そ のイ ン タビ ュ ーの 結果 を用 い て一 連 の世 論調 査や 在 米 日本 企業 調 査 の ため の質問表 を作 成し た。 ジ ャパ ン ・ ソサ イェ テ ィはSRI イン タ ーナシ ョナ ルと ワ ース リソ ・ グ ル ープ社 と 協力 し てア メ リカにおけ る日 本 、 日本 の投資 、 お よび 企業市 民 とし て の日本 企 業に 対 す る ア メリカ人 の 全国 的お よび 地 域的 態度を 測定 す るた めに 世 論調 査を 計 画した。 ワ ース リソ ・ グル ープ社 は1990年1 月31 日から2 月5 日ま で4 回 の世論 調 査を 行 った。18歳 以上 の全 米 の アメ リ カ市 民800 人 に 対 す る調 査、 事 例研 究企業 の立 地 す る各 コ ミ ュニテ ィから300人 ずつ の 調査 であ っ た。 全 国 調 査 の 結 果 は 十/ −3.5 %、 地 域調 査 では 十/ −5.7 % の誤差 の幅 があっ た。 私た ちは そ の 企業 の 約70% の従業 員 が来 てい る地 域を そ の コ ミ ュニテ ィ と定 義 し た。 ジ ャパ ン・ ソサ イェ テ ィは 再びSRI イ ンタ ーナ ショ ナル、 ワ ースリ ン・ グル ープ 社 と協力 し て 在 米 の 日本所 有企 業 の調 査を 計 画し た。 日本 の8 つ の証 券取 引所 に上 場 さ れてい る 日本 企業 のす べて のア メリ カで の子会 社に 対 し て匿 名で の調査 に応 じ てく れる よ う要請 し た。1990年5 月8 日か ら6 月8 日の 期間に 渡 って行 わ れ、 連 絡し た2,900社を 越え る 企業 の うち、1,605 社 が質 問 表を 受け 入 れ、585 社 がそ の調査 に 有効 回答 を く れた。 本 報告 書 はSRI イ ン タ ーナシ ョ ナル の支 援 の下にジ ャ パン・ ソ サイェ テ ィが執 筆 し た。そ れ ら 調 査か ら の発 見事 実は 統計 的 有 意性に 関 し て厳 密に 検討 さ れた。 事 例研 究、 イ ン タビ ュ ー調 査、 お よ び世 論調 査 の結果 は ア メ リカ の コ ミュ 三テ ィと 日本企業 とが企業 市民を 通 じ て 日 本 の投資 に適 応し てい く方 法、 そ の適 応プ ロセ スが 将来 的 に どめ よ うに変 化 す るか 、そ し て究 極 的に 双 方 向的 関係 が 現地 レベ ル で どの よ うに な っ てい く のかを 示 し てtヽる。
米 国 社 会 に お け る 日本 企 業 85 1 は じ め に ・ 各 章 解 説1980 年 代 は 白米 双方 に とっ て騒 々し い10年 であ った。 通 産 省 と米国 通商 代表 部 と の 間 の貿 易政 策 に 関 す る曖 昧 な議 論が 新 聞の 見出しを 賑 わ せ た。 ア メ リカ の新 聞見 出し の記 事 は もはや 日米を 特 別 な 関 係に あ る 友好 的な パ ート ナ ーとし て は 扱 って い ない。 そ うで はな くて、 両 国を 経 済的 技 術 的卓 越 性 を 競 う戦 士 と捉え てい る。共 産主 義 の崩 壊 に 伴い 、東 京 の 自動 車や コンピ ュ ー タ・ チ ップ ス の 工 場 の ほ うが モス クワ の爆弾や ミサ イル よ りも遥 に脅 威 の よ うに み えた。1980 年 代 後 半 の日本 のア メリカへ の直 接投 資 の急増 は 不満 の炎 に 油を 注い だ。 ア メ リカ の象 徴 の 幾 つ かー ア メ リカ人 の好 みであ る クリ ス マス ツ リ ーが飾 ら れ る 場 所 、 ア メ リ カ の 文 化 の ア イ。デ ソ テ ィテ ィが形 成 され た映 画 スタジ オ、 ア メ リカが そ の将 来 の経 済を 託 すべ き ハイ テ ク企業− が東 京 か ら 飛 行機 で や って きた ビ ジネスマ ンに よっ て買 収 さ れた。 突 然 とし て、 問題 な の は 日本 製 の製品 だ け で は な くな った。 日本は 目に入 る も のは 何で も買 お うとし てい る よ うに 見 え た。1990 年 まで は、 世論 調 査に よれば 、 ア メ リカ人 の 大部 分 は 日本 の直 接投資 に 不賛 成 の意 を表 明 し てい た。 何人 か の政 治家 や ジ 十− ナ リスト た ち は、 世論 の不満 を感知 し て 、選 挙に 勝つ た め にあ る い は 新 聞 の購 読を 伸 ばす ため にア メ リカ 人 の関心 を利 用し た。 マ デ ィソ ン街 の劇場 で は、 ア メ リカ の企 業 や 不動 産を 強 欲に 買い あさ る日本 に 対 し て募 る 不安を モ チ ーフ に 上 演 が 行 わ れ て 当 た りを 取 ってい る。 ニ ューヨ ー クの ポソ テ ィア ッ クの カ ー・ デ ィ ーラ ーに よる1990年 の広 告 のな か で、 あ る ア ナウ ン サ ーは日 本が ア メリカを 支 配 す る ように な る と、真 面 目に 次 の ような警 告を 発 し てい る。 「 これ から 数 年後 を 想像 し てみ よう。12月 に な る と、 すべ て の家族 は 広 島セ ンタ- に ク リス マ ス ツ リ ーを 見に い くことに なる」。 彼は 三菱 地 所 の ロ ッタフ ェラ ーセ ソタ ーの一 部買 収 を 暗 に 仄 め か し て 言っ てい た 。 また、「ます ます 日本 の 自動 車を買 い 続け な さい 」 と 乱 コマ ーシ 申ル の最 後 に は、 黒 地 を バ ックにし た 白い 紙に 、「 も う沢 山 だ」 と書い て あ った。 ア メリ カへ の日本 から の直 接投資 は アメ リ カで不 協 和音を もた らし 、 日米 関係 のト ゲに な っ てい る。 こ の現 象 を生 じ さ せる力 (企業 の グロ ーバi; ゼ ーシ ョン) は 当 分の 間継 続す る で あろ うか ら、 日本 の投 資 も終息 す る こ とはない であ ろ う。 アメ リ カ人 は日 本を そ の国 の最 大 の挑 戦 者 とし て 、 ま た 日本 の投 資 家を 外 国か ら の投資家 とし て最 大 の影 響 力を 持つ も のと見 倣す ように な る ので 、 彼ら が 日本 の投 資 に対 し て感 じ る疑問 は依 然 とし て 残 る であろ う。 ‥ 日本 の直 接 投資 を受 け 入 れてい る コ ミ ュニテ ィで は、 普通 の ア メリ カ人 と日本 人 が毎 日ビ ジネ ス や 文 化 の違 い で対 決を 迫 ら れてお り、 日 本 のプ レ ゼ ンスに つ い ての 問題 解決 は も っ とも緊 急 を 要し てい る。 こ れら の問 題 の解 決 の糸 口 とし て、 現 地 レ ベル での 日 本企業 とア メリ カ の コ ミ ュニ テ ィ間 に 形 成 さ れ る結 びつ き方 が 大 きく関 係し てい る。 ぐ し 日 本 の投資 につ い て の問題 が無 視 さ れ る とす
86 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) れば、文 化 の違 い が双方 を 結 ぶ こ とを よ り困 難に し、 信 用を 得 るこ とは ます ます 難し く なろ う。 日 本 企業 は新 しい コ ミュニ テ ィ の中 で歓 迎 され ざ る隣人 と見 なさ れる こ とにな り、 日 本 の投資 に対 す る 憤 りが 強化 され 、 日本 が仕 掛け る競 争上 の挑戦 は脅 威 と受け 取 ら れる ように な る か も七 れない。 しかし 、 潜 在的 には 、 こ れら の結 び つ きに よって 日本 企業 の工 場 が一つ の コ ミ ュニ テ ィに 即座 に 経 済的 繁 栄を もた らし た り、 日本企 業 と 現地 の役 人 の 間で 進めら れてい た交 渉 に よりそ の 企業が 田 園 地 域に 職を もた らす とい った 以上 の便 益を 提供 す る可 能 性が ある。 そ れら の 結びつ きぱ ア メリカ の製造 業 者に 品質 の 向上 ばか りで な く生産 技 術 の 改善を もたらし うる のであ り、 ア メリカ の コミ ュ ニテ ィに とっ て グロ ーバ ル経 済へ の入 口を 形 成 す るこ とが 可能 にな る。 そ れら は 日本企 業 に新し い アイデ ィアを 提供 し、 アメ リ カば か りで なく 世 界 の他 の地 域に あ る日本 企業 の 子会 社に も、 また日 本 にお い て も大 きな 便益 が も たら さ れ うる。 そ し てそ れと 同 じくら い重 要 な こ とは 、 現地 レベ ルで のあ らゆ る業 績 が積 み重 ねら れる と、 日 米を よ り強力 で より生 産的 な パ ¬ト ナ ーに 結 び付け る こと ので きる 連 体の 絆が 創造 さ れ る とい うこ と であ る。 アメ リカ での 日本 の投資 の増 加 に よっ て、 日本 企業 が摩 擦を 創 りだ す可 能性 を 高め る よ りも、 積 極 的に ア メリ カの コ ミュ ニテ ィ と結び つ く 可能性 を 引 き 出す ために も、 日本企 業 は アメ リカに おけ る企業 市 民 とし て の意識 を 一層 高揚 する 必 要 があ る。そ れはそ の企 業 が事 業を 行 ってい る コ ミュニ テ ィの経 済的 社 会的 福利 に 生産 的 な影 響 力を 与 え るた めに 私企 業 とし て の力を 活用 す るや り方 であ る。 企業 市民 の 概念 に は以 下 の よ うな事 業 活動 の すべ て の範 囲が含 まれ る。 企 業 が従業 員 を 雇用し 、 訓 練し 、 昇 進さ せる こ と、 供 給業 者を 開発し 、 資 源を 調達 し、 新し い 事業 に投 資 する こ と、そ の企 業 が 率先 し て社 会貢 献活 動 に 貢献 し、 教育 や社 会 福祉 面 でそ の企業 の影響 力を 駆 使し 改善 を 図る こ と、 な どで あ る。 要 す るに 、 良 き企業 市 民 の概念 は、 あ る企業 が 事業を 行 い そ の資 源を 活 用 するや り方 に 関係 して い る。 ア メリ カの地 域 経済 や コ ミ ュニ テ ィに 影 響を 与 え る力 は変 化し 、 次第に 複雑 に な るの で、 経済問 題や 他 の国 内問 題ご 対 処 で きる 新し い パ ート ナ ーの 必要 性は こ れまで 以 上に 不 可 欠に な ってい る。 こ の報 告書 で は、 日本 企業 が ア メリ カで 良 き企業 市民 に な るた め の挑 戦 にお い て 直面 す る環 境 とそ れ ら企業 の対 応 の仕方 につ い て 検討 す る。 十 次章 で は、 ア メリ カへ の 日本 から の直 接投 資 の額 につ い て一瞥 し、 な ぜ非 常 に多 く の日 本企業 が ア メ リカ で の事業 設営 の路を 選 択 した の か振 り返る。 証 拠 事実 に よれ ば、 日本 の投資 だけ が特 異な 現 象 では ない。 そ れ は ア メリ カや 他 の先 進 国で 外国 投資 が 幅広 い範 囲に 渡 って 増 加 して い る とい う パ タ ー ンに 適合 する も ので あ る。 アメ リカ で の日本 の投 資 は ビジ ネス の国 際化 を 反 映し た も のであ り、そ の国際 化 はこ こ数 十年 間 で大 き く進 展し てお り、 将 来に 向け て さら に成 長 を 続け る こ とに な ろ う。
米国社会 におけ る日 本企業 87 3 章 で は、 アメ リカの企 業市民 の 概念に つ い て のル ーツを 検討 するレ 過 去30年 に 渡 る底 辺 で の要 請 や草 の 根運 動 と平行 し て、最近 の政 府 規制 の煩 向か 社会 にお け る企業 の役 割に つ いて こ れ ま で以 上 に広 範 な理 解を 促進 さ せてい る。 私た ちは 企業 が行 う活 動 とそ うした 活動 の 目標 の双 方 から 企業 市 民に つい て の実 践的 な定 義を提 示 する。 そ し て企 業 と コ ミュ ニテ ィの双方 が企 業 市民 の概 念を 通 じ て確 立 さ れた 連携か らい かに 便益を 得 るか を み るこ とに す る。4 章 は 日本 の投 資に 対す る アメ リカ人 の態 度 と企 業 市民 の概 念に 関す る ア メリ カ人 の期 待 につ い て 分析 す る。 そ れは 日本 の投資家 が ア メリ カで 事業 を 設営 す る場 合に遭 遇 する であ ろ う風 土に つ い て の包 括的 分 析で もあ るレ こ の章 は 私た ちが 実 施し た ア フリ カ人に 対す る世 論調 査 に基 づい てい る。 そ れは 日 本、 日本 の投資 、 お よびア メ リカで の日本 企 業 の企業 市民 につ い て の彼 ら の意見 であ る。 そ の結 果 は、 新聞 等 の見 出しに もかか わ らず 、 ア メ リカ人 は 日本 の直接 投資 につ い て多 くが 前 向き 的 な見 解を 持 って いた。 特 に、雇 用 の創 造 とそ れが 促 進す る アメ リカ の競争力 の 向上 に つ い てであ る。 実 に、 日本 の投資家 に ついて知 れば知 る ほ ど、 アメ リカ人 は彼 らの投 資を 望 ん でい る よ うに 思 え る。 し かし √同 時に ア メリ カ人 は 日本か ら の投 資 に対 し て 自分た ちを 悩 ます多 くの こ とを 発 見し てい る。 つ まり、 彼ら は ア メリカの企業 が 日本企 業 と のビ ジ ネス競争 に破 れる ので ぱ ない か、 また 日本 企 業 の女 子や 少数民 族 に対す る 雇用や 昇 進 の方 針、 さら に は組 合に対 す る方 針 に関 し て ア メリ カ の基 準に 合 わない のでぱ ないか 、 とい った こ とで あ る。 アナ リ カ人 は また 企業 市 民 の観 点 から 日 本 企 業 に多 大 の期 待を寄 せ てい る。そ の よ うな期 待 は、 日本 の 直接投 資 の経 済的 便 益 が ア メリ カの 市 民 と企業 に より充分に 還 元さ れる とい う願 望を 含 み、 フ ィ ラソ ソロピ ー以 上 の もの であ る。5 章 では 、 ア メリ カ人 の述 べ る見 解に関 し て 在米 日 本企業 の反応 を 検討 する。 在 米 日本 企業 に つ い て の調 査に基 づ く結果 は 驚 くほ ど 前向 きな もので あ る。 ほ とん どの企 業ぱ 現地 の コ ミュニ テ ィに 非 常 に うまく受 け 入れら れ ている と 言って い る。 事 実、 そ れら は 他の外 国企業 と か 地場 企業 と同 じ か そ れ 以上 に うま く受 入れら れてい る と感 じ てい る。 そ し てほ と んどの 日本企 業 は 新 聞が 彼 らを 公 正 に あ るい は 前向 きに 扱っ ている と 信じて い る。 反面 、多 くの 企業 は、 依然 とし て 文化 や コ ミュニ ケ ーシ ョ ンに よる 問題に 遭遇 して お り、 また多 くの企 業 が 雇用 や昇 進時 の差別 を 理 由に 告 訴 され て きたレ こ れら の問題 に対 応 するた め、 部分 的に で は あ るが、 たい てい の 企業 はそ れ ら の事業 を アメ リ カの 環境 に よ り うま く適 応させ る よ う改 変 しつ つ あ る。 尤 も 、 全 面 的 に 自 らを 「 ア メ リ カ ナ イ ズ」 し よ うとし てい る企 業 はほ とん どない 。6 章 では 、 日本企 業 の企業 市民 活動をT掘 り下 げ て 検討 す る。 証拠 事実 とし ては 企業 市 民 とし て 積 極 的 に 活動 して い る日本 企業 は数 から す れば 取 るに足 ら ない が 、そ れを 行っ てい る 企業 は 現地 で 前 向 き の反 応を 見 い だして お り、そ れら の活 動を 促 進し 七い く考 えで ある。多 く の企業 は より 大き な コ ミ ュニテ ィに 参 加する 場 合に障壁 に直 面 し てい る と 言っ てい るが、 彼ら の対 応 に は 企業市 民 の 概
88 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) 念 に含 ま れる活 動範 囲に つい て の理 解 が不 十 分で あ るこ とを物 語 ってい る。多 く の 企業 は 人的資 源 政 策を 実 施し た り、 重役 た ちを 直接 コ ミュ ニテ ィに 参加 させ てい るが、 フ ィラ ソ ソ ロピ ーは日 本企 業 に とっ て最 も重 要な市 民 権を得 るた め の道 具で あ る。 しか七 、 ア メリカに 高 付 加 価値 の活動を 移 転 す る とい った より基本 的 な領 域で は、 日本 企業 は 今 のところ あ ま り積極的 で は ない 。 最終 章 で は、企業 市民 と して 改善 を 目 指す 場 合に事 例 研究 とし で役 立つ と思 わ れ る こ れまで 企業 が学 習し た幾つ か の教 訓を 提示 す る。 そ して いか にす れ ば 日本企 業 がア メリ カ の コ ミ ュニテ ィと相 互に利 益 のあ る連 携を 創 り出 せる の か検討 す る。 2 日 本 か ら の 対 米 直 接 投 資 の 増 加 二 日本 企 業 が アメ リカの コ ミュ ニテ ィに 参入 し、 企業 市 民 とし て の役 割が非 常 に 重 要 と なる投 資形 態は 海外 直 接投資 であ る。 そ れら の投 資 は、 既 存 の企業 の支配 権を獲 得し た り 、不 動 産を 得 た り、 あ るい は 新 規に企業 を 設営 す るた めに 行 わ れる。 支配 権 の獲 得 は直接 投資を ポ ート フ ォリ オ投 資 と 呼ば れる海 外 へ の投 資形 態 と区別 す る もの であ る。つ ま り、 ポ ート フ ォリ オ投 資 家 の 目的 は 単に 金 銭上 の利 得を得 る た めであ る。 直 接投 資を 行 う企業 に よっ て行 使さ れる支 配 権 は、 そ れ が アメ リカ なら、 アメ リカ経 済 の一 部 に対 し て 外国 人 の権 限を 認 め るとい う意味にお い て重 要 で あ る。 米 国商 務 省の経 済 分析局 は 米国 に ど れくら い 日 本か ら直 接投資 が なさ れてい るか 最 も包括 的な 情 報 を提 供 し てい る。 紛 れ もな く、 そ れ は最 近に お いて 劇的 な増 加を示 し てい る。1985 年 から1989年 の間に 、日本 の直接投 資 は平 均年 率35% 伸び √ 億 ドルに 達し た。 図2 −1 は こ の期 間 の 日本 の投資 の急 激 な増 加を示 し てい る 。 こ の増 加に よって 日本 は米 国 へ の累 積投 資 額で7 番 目から2 番 目に躍 り出 た。1990年 代末 まで に は 、 日本 は英 国を 抜 い て対米 外 国直接 投資 で一 位 にな る であ ろ う。 図2-1 米 国 に お け る 日 本 の 直 接 投 資 ( 単位10 億 ド ル ) 60 40 20 '80'8 】'82'83'84 ’85'86'87'88'89Source:BureauofEconomicAnalysis
米国社会に おけ る日本企業 89 あ る地 域 での また特 定 の一つ の重 要 な経 済部門 に おい て、 日本 の直 接投 資 は、 こ れ ま で以 上に 大 き な 位置を 占 め てい る。 目印に な る よ うな 建物 に 対 す る日本 の投 資家 の好 みに よっ て買 収 さ れ たハ ワイや フサ ソジ ェル ス都心 の大 規模 な 不動 産 が新 聞 の見 出し に なった 。 さらに 重 要 な こ とに は、 日 本 の銀 行業 へ の直 接投 資に より、 東 京 は米 国 金融業 界で重 要 な役 割を 果 たす よ うに な っ た。1988年 、 日本 は 最 も外 国企業 のプ レゼ ンス が 大 きい 米 国金 融業 界 で外 国人 が買 収し た資 産 の1/2 強 を 所 有 し てい る。 日 本 が投 資 する動 機 日 本 の投資 家 たち は なぜ ア メリカに 群 が る のであ ろ うか 。 図2 −2 は親 会社 が 日 本 で最 大 規 模の8 つ の証 券取 引 所に上 場 さ れてい る 日本 企業 の子会 社 すべ てに つい て の調 査結 果 で あ り、 一つ の回 答 を 提供 し てい る。そ れは 日本企業 が 米 国 に投資 し た 主要 な動 機を 明 らかに し てい る。 十 図2-2 貴親 会社が米 国へ の投資を 最初 に決 定し た とき最 も重視 した 要素を 次の リスト から3 つ 選 ん 七下 さい 。 ・米 国 で 市場 シェ アを獲 得 す る ・米 国 で 他 の日系 企業 に ア ク セ スす る ・ 米 国 の科 学 と 技術 にア ク セ ス す る ・ 円 高 が投 資 を 財務 的 に魅 力 あ る もの にし た ・ 実 際的 潜 在 的 な輸 出 規 制 を避 け る ・ 自然 の諸 資 源 に ア クセ スす る ・ 米国 の 労 働力 の質 ・ そ の他 69.7% 市場 シ ェ ア の拡 大一 最大 の理 由は 市 場 シ ェアを 拡 大す る ため であ っ た。 こ の動 機を 挙げ る 企業 の数 は 一 時 よ り次第 に減 少し てき ては い る か(15 年 以 上前 に投 資 した 企業 の77% か ら 過 去2 年 以 内 に 投 資 し た企 業 の60%へ と) 依然 日本 企業 が米 国に 直 接投 資を 行 う最 大 の理 由に な っ てい る。 また 、 何年 に も渡 って 継続し て きた 動 機が あ っ た。 そ れは 日本 の戦 後初 期 の直 接 投資 は原 材料 の 輸 入 と完 成 品 の輸 出 とい う基 本的な 貿 易 戦略 に 従 って 行わ れ た。 従っ て、 日本 は 消 費財 の輸 出 と原 材 料 の輸入 を 容易に す る卸 売業 にそ の 投資 を 集中 させ た。 調 査結果 に よれ ば、15年 以上 前 に 行 わ れ た 投 資 額 の うちで3 分 の1 少 々が卸 売業 に 投資 さ れ、そ の 件数 は 他の 部門 の3 倍 で あ った 。
90 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) 大政府 の圧 力一 日本 の貿 易 収 支 の黒 字に 対 す る不満 の高 ま りに より、1975年 ま でに 大 蔵 省は 日本 企 業が 海外 で 事業を 設営 す る 場 合融 資 の 支援 活動 を行 う ように なっ てい た 七、 さ らに 後 年に なる と 政 府は 海外 へ の直 接投資 を 促 進 す るた め別 の政策 を 打ち 出し た。 日 本で 製品 を 生産 し そ れらを 米 国 に 輸出 す る よりも 、 アメ リ カで そ れらを 生産 し直 接 販売 す るほ うがそ の黒字 を 減 少 させ 不 満を 押 さ える こと がで きる と考 えた 。 こ の期 間 、投 資 が最 も頻繁 に行 わ れた 領 域とし て 軽 工業 生 産 が卸売 産 業 に取 っ て代 わ り、投資 総 額 の26% に の ば った。 し かし 、卸 売産 業 へ の投 資 は 双方 の不 均 衡を 緩 和 するに は ほ とん ど役立 だ なか っ た が、 依 然 とし て 日本 の海 外投資 の 中心 とし て 続行 さ れた。 わ れわ れ の調 査に よれば 、1975−80年 間に 行 わ れた 投資 の24% は、 卸売 産業 に 対 す る も のであ っ た。 貿易 障壁1970 年 代末 に 、 米 国は 日 本 が輸 出し た カラ ーテ レビ に対 し てい わゆ る 自主 規制 とい う貿易 障 壁を 設け る よ うに な っ・だ。 ア メリ カで 日本 企業 が 生産し た 製品 はそ の 規制 の対 象 には なら なか った ので 、こ の障 壁 が 日本 の ア メ リカ で の生 産 設備 へ の投資 を 刺 激し た。1981年 に は 完成品 の トラ ッ クと乗 用車 の米 国 へ の輸 出制 限 を 目的 とし て類似 の規制 が 日本 の自 動車 産 業 に対 し て行 われ た。驚 く なか れ、 そ れに対 応 し て 同 じパ タ ーンの 直 接投 資 が 出現し た。 つ ま り、 ボッ ブ と日産 ぱそ れぞ れ オハ イ オとテ ネシ ーに10) % 所 有 の組 立工 場を 設 営し 、 トヨ タはGM と カ リ フ ォル ニ アで 合 弁 会 社を 設立 し た。 他 の主 要 な 日本 の自 動 車 メ ーカ ーもす ぐに アメ リカ進 出 で 同 じ道を 辿 る ことに な り、 部 品 メ ーカ ーたち も 日本 の組立 メ ーカ ーの後 を追 っ て米 国へ 積 極的に 進 出し た。 過 去]。0年 間 以 上に 渡 って 、 ア メリ カで の 日本 企業 子 会 社 の進 出動 機 の内で 横並 び 進 出が 日 本 の直 接投 資 の うち 一 番多 くかつ 増加 し てい る。 過 去2 年 間 で、 私た ち の調査 に協 力し て く れた 日 本企 業 の35%近 くが 投 資 決定 におい てこ の動 機を 重 要 な要 因 に 挙げ てい る。 アメ リカ の貿 易黒 字 と低 貯蓄 率一1980 年 代 に 、 日本 の直 接投資 は マ ク ロ経 済 の力 の変 化に よっ て刺 激を受 け た。 ア メリ カの 巨 額な 連邦 予 算 の赤 字は そ の国 の低 貯蓄 率を 上 回 り、海 外資 本 の必要 性を 引 き起 こし た。 外国 人 た ちは アメ リ カの 過剰 消費 に対 し て公 的負 債や 私 的 負 債 の形 で 借用証書 を 受け 取 る こ とに よ り、 また直 接 投資 を 行 っ て アメ リ カの不 動産を 購 入 する ことに よ り融 資 に走 っ た のであ る。 米 国が 負 債額 を 増や す につ れて、 日本 の黒 字額 が急 上昇 し た。 貿 易 収支 の黒 字と国 内 資 金 需要 に 比し た過 剰貯 蓄 とに よ丿 発生 す る ドル お よび そ の他 の現金 に よ る準 備 金 の過剰 が、 日本 の海 外投 資 額を急 上 昇 さ せた。し 強く な った 円一 米 国 へ の日 本 の新 た な投資 動 機 が、 円 とド ル の交 換 比率 の劇 的 な再 調 整が行 わ れ た1985年9 月 以 降に 出 現し た。 円高 の た めに 日本 企業 は 日本 から 米国 へ の輸 出で利 益を 出す こと
米国社 会におけ る日本企業 91 は 一層 困 難 に な った だけ で なく、 ア メリカで の 円に よ る投資 を 実質 的に 割安 な もの にし た。 過 去10 年 間に 米 国 で 直接 投 資を 行 った日本 企業 の5 社に1 社 は、 円高 をそ れら の投 資 決定 に際 し て の重要 な要 素 とし て 挙げ た ので あ る。 アメ リ カ の科 学 と技術一 最後 の動機 は、 日本 の投 資に 対し て 高ま りつつ あ る批 判 理 由の一つ で もあ る が、 科 学 と技 術に 接 近してそ れを 手に 入 れ よ うとす る願 望 であ った。20 年以 上 に も渡 って、 日本 企業 が投 資 決定 にお い て一貫し て 挙げ て きた3 番 目に 重要 な理 由で あ った。 日本 企業 が 既存 の ア メリ カ企 業 の買 収 を決 定 す る場 合だい た い3 件に1 件は 、技 術 の獲得 が 重要 な動 機 であ っ た。 日 本企業 がそ の よ ケな動 機 が強いた めに ア メリ カ企業 と 革新 的技 術を 共 有す る意 思は な いし 、そ れ ど ころ か、 そ れら の企 業 は アメ リカ の技術 を獲 得 して そ れを 日本 の 親会 社に 持ち 帰 る こと のみを 目的 に し てい る、 と多 く のア メリ カ人は 考え てい る。 もし こ れが本 当 であ れぼ、 日本 の直 接投 資に よっ て もた ら さ れ る技 術 移転 の方向性は 、技 術 が外 国人 投 資家 の母 国 から投 資受 入 国に 流 れ るという こ れ まで の歴 史 的 傾 向とは 逆 行する。 こ の調 査プ ロジ ェ クトで 事例研究 とし て取 り上げ た3 社 の うち の最初 の1 社 であ る日立 ア メリ カ (HAL ) の沿 革 は米 国に お いて日本 企業 のプ レゼ ンス の性 格 が次 第に 高ま って 行 く例を 提供 し てい る。30年 以 上 に渡 って、 そ の企業は 自 社を 限 られた 販 売 の使命 を 帯びた 前哨 部 隊か ら北 アメ リカ市 場で 実 質的 に 益 々 自律 権を 獲得し つ つ あ る企業 に変 身 さ せた ので あ る。 そ の発 展 の各 段 階で、 日立 アメ リカ と 日本 の親 会 社は、 日立 の長 期的 な地 位を 強 化す る ため に人、 技 術、 設備 に 色 々な 種類 の 投資 を 行 っ た。 十 ‥ ニ 他 の 対米 外 国 直接 投 資と の 比較 ∧ 上 米 国 で の 日本 の直 接投 資 額 とそ の増 加理 由 を みれば アメ リカ の経 済に 対す る 日本 の投 資家 の影 響 力 と 目的 と がは っ き りとし た形で 読 み取 れる。 し かし 、そ の事態 は 投資 現象 の うち の一 部を 構成 し ていjるだけ な の でい く らか 歪 曲さ れた も のに なって い る。 日本 の対米 直接 投資 を正 しく 理解 す るた めに は 、尚対 米 外 国直 接投 資 全体 と先進 諸国 間 の国境 を 越 え る直接 投資 の流 れ とい っ た文 脈 のな かで 見 てみ る 必要 が あ る。 図2 −3 は前者 、 す なわ ち対米 外国 直接 投 資全 体 とそ の一 部 とし て の日本 の直 接 投資 の関 係を 示 し てい る。 この 図は3 つ の重要点を 指 摘し て い る。1 ) 日本 の直 接 投資 は増 加し て い るが、 ア メ リ カで の外 国直 接投 資 総 額 のな か亡は 依然 とし て比較 的 少 額 であ る。2 ) 日本 の直 接 投資 はそ れ 自体 まだ米 国 経 済の な かで は小 さ な役 割 し か 演 じ て い な い の で あ り 、 米 国 の 雇 用 やGNP で は1% 未 満、 株 式 所有 で は2 % 未満 を占 めるに す ぎな い。3 ) アメ リ カに おげ る日本 の直 接 投資 の伸 び は米
92 経営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) 国 で の外国 直接 投資 全 体の 伸び と呼 応し てい る。 10% 8 6 4 2 0 図2-3 全 米 国 経 済 に 占 め る 日 本 企 業 お よ び 全 外 資 企 業 の 役 割 '77'78'79'80'81'82'83'84'85'86'87'QQ Source:E.Grahamandp.Krugman,"ForeignDirectInvestmentintheUnitedStates," InstituteforInternationalEconomics,1989,andBureauofEconomicAnalysis 先 進諸 国 間の国 境 を越え る 直接投 資 の 比較 よ り広 範 なデ ータから みて も、 ア メリ カで の 日本 の直 接 投資 は、 米国 の海 外 直接投 資 を 含 めて、 世 界の先 進 諸国 間 の国境を 越 え る直 接 投資 の増加 を反 映す る パタ ーンに なっ てい る。 戦 後 の国 境を越 え た投資 の急 増 は、 交 通や コ ミュ ニケ ーシ ョン の発達 に よっ てビ ジ ネ スの 国際化 に 新 時代 が もたら さ れた1960年 代 に始 ま った。 図2 −4 に 示す ように、60年 代 、70年 代 を 通 じて、 米 国 は海 外直 接投 資 では圧 倒 的な力 を 持ち 、 世 界 のそ れ の約3 分 の2 を 占 めて いた 。70年 代 の オイ ル や 他 の商 品 の価格 シ ョ ックに よって 、直 接 投資 は 、貿 易 と同 様そ の成 長 が低 下し た。80 年代 に な り、 国境を 越え る直 接投 資 が再び 増 加し始 め 、G5 の他 の4 つ の先 進工 業 国か ら の直 接投 資 が、 ア メ リカか ら のそ れに 対 抗す る ように なっ た。 し かし 、 他 の先 進 工業 諸国 の対 外直 接 投資 が 増 加し て も、 米国 は依 然 として 世 界 のど の国 よりも 直 接投 資 の スト ック額で は最 大 であ った 。 ア メ リカ の1961年 から1988 年 まで の 累 積 直 接 投 資 額 は3,240 億 ドル で あ り、 そ れぞ れ海 外直 接投 資 国 とし て2 位 と3 位 であ った英 国 の 約2 倍 、 日本 の 約3 倍 であ っ た。 こ れら の数 字は 現 在の市 場 価値 で は なく 時価 の投 資 額に 基づい て い る ので、 実際 の ア メ リカの リ ード は恐ら く もっ と大 きい も のと 思わ れ る。 数 十年 前に アメ リカ が行 った 数多 く の投
米 国社 会におけ る日本企業 資 は 今 日 よりも っと 価値 のあ る もので あ っ ただ ろ う。 図2-4 国別 に みたG5 から の対 外直接 投資 の流 れ(1980年 が基準値 、単 位10万 ドル) 93 '61'64'67'70'73'76'79'82'85'88 Source:D.Julius,"GlobalCompanies&PublicPolicy,"RoyalInstituteofInternationalAffairs,1990 ヨ ーロ ッパ よ り低額一 表2 −1 は 、 外国 から の直接 投資 額を 示 し て い る 。 つ ま り、1977 年 と1986 年 のG5 の国 内経 済に 対 する 外国 投 資 の影 響 の程 度で あ る。 英 国、 フ ラ ン ス、 ド イ ツ では、 外 国 から の直 接投 資 は 明らか に そ の期 間重 要 な役 割を 演 じて い る。 事 実、 そ め期 間を 通 じて3 力国間 で の外 国直 接投 資 の パ タ- ンは比 較的 安 定し て お り、 そ れぞ れ の国 の外国直 接 投資 が 均 衡水 準 に到 達 し てい る とい え る。 ‥ 米 国 日 本 フ ラ ン ス ド イッ イ ギ リ ス 売上 高 7 %75247CM0:>cviT ︱ICNj1 表2-1G5 経 済に対 す る外資 企業 の影響 の指標 1986 % 017801CM. ︱ICM 製 造業 の従業 員数 6 %871134192117 %9732181415 − 資 産 1977 5%2n.a.17n.a. n.a 17 14 Source:D.Juliusands.Thomsen,"Foreign ―OwnedFirms,TradeandEconomicIntegration,"TokyoClubPapers2.London:RoyalInstituteofInternationalAffairs,1988.
94 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) こ れど対 照 的に 、米 国 で は外 国 か ら の投資 は遥 に 小さ なプ レ ゼン スし か 持 たなしヽ。 し か し、表2 −1 が示 す よ うに 対 米外 国 直接 投 資 は10年 間で 約2 倍に 増加 し てお り、 アメ リカ経 済 へ の外国 から の資本 参 加は ヨ ーロ ッ パ諸 国 で のそ れに 近づ い てい る。 もち ろ ん、 米国 は 英 国、 フ ラン ス、ド イ ツ より も遥に 大 きな 経 済 規模 で あ り、そ れ ら3 力国 の外 国か らの 直接 投資 め多 くは 近 隣 の ヨ ーロッパ 諸 国か ら 来た も ので あ る。 そ の よ うな ヨ ―p ッパ諸 国 内 の直 接投 資 額は 大 ま かに 言 え ば、フ メリカ の諸地 域 間で 、例 え ば北 東 部 から 南 西部 に かけ て の地 域間 で、 行わ れ る域 内 の投 資 に匹 敵 す るもの で あ り、 だか ら対 米 の外 国 投資 額 は 対 ヨ ーロ ッパ のそ れ とは厳 密に 比較 で き ない 、 と い う分析家 も い る。し か し、デ ュ ア ソ・ ジ ュ リア スは、イ グロ ーバ ル企 業 と公共 政 策』の中 で、万ヨ ーロ ッパ諸 国 内 の投資 を 因数 に分 解 し て も、外 国 の資本 参 加は14% か ら12%位 に落 ち るだけ で、 依 然 とし て米 国 よ りも実 質的 に 比率 は 高 くな ると述 べ てい る。 日 本で の対 内直 接投 資 比 率 より低 い一 日本 は、 米 国 よ りも外 国か ら の直 接投 資 額 は さら に少な い 。 事実 、 日本 経済 に 占 める 外国 か ら の直 接投 資 比率 は実 際そ の期 間に 減少 し てい る。 かっ て政府 は資 本 の流 入流 出 の双 方を 厳 し く 規制し て い たレ1980 年代 にそ れら の規 制は 緩 和 さ れ、そ の結果堰 を 切っ た よ うに資 本 が 流 出し た。 し か し、 資 本 の流入 の方 は、 規 制を 自 由化 し たに もか か わらず。 ま た外 国から の投 資 を 促 進す る た め の政府 の 事務 所を 新 設し た り、条 件を 満 たす 海外 投資 企 業に は 日本 開 発銀 行 の融資 を 提供 す る に もか か わら ず、 日本 経 済 のなか で まだ あ ま り大 き な 規模に なっ て いな い。 日 本で の事 業 の設 営 に か か る高額 の費 用 の ため に、 ま た敵対 的 買 収に 応 じ ない で( 意図的 であ ろ うとなか ろ う と) 外部 者に 対 し て は抵 抗し 続け る 日本 のビ ジ ネ ス文化 のた め に、 外 国の潜 在 投資 家 たち は 意欲を 削 が れ てし ま って い る。 さら に、 アメ リカ企 業 のエ イ ボ ソや シ ャ クリ ーの よ う な 在 日の多 く の外国 直 接投 資 企業 は、 日本 子 会 社 の株 の一部 あ る七ヽは全 部を 、 四半 期ご との財 務諸 表を 良 く見 せ るた めに 近 視 眼的 な や り方 で売 却 する 道を 選 んでし まっ た。 日 本や 他の 国に よ る国 境 を 越え る 直接 投資 の将来 の 増加 アメ リカ の海外 直 接投 資 が1960年 代お よび70年代を 通じ て伸 び た理 由 と日 本 や他 の 国か ら の直接 投 資 が1980年 代に そ れ よ り急 速に 増 加し た 理 由は類 似 してい る。 国 内で生 産 し て輸 出 す る のと海外 に 直 接投 資を し てそ こ で生 産 す る とい う選 択 肢 のある ビ ジネ スと では 、純 利 益 が大 きい とい うこ と が分 か れば後 者を 選 択す るこ とに な る であ ろ う。 例え ば、 市場 シ ェアの獲 得 、 海外 で の技術 進展に 遅 れない こ と、貿 易 障壁 め回 避、 コス ト の低 減、 市況 の変 化に 対 す る素 早い 対 応、 顧 客 と の緊 密 な 関 係の 維持、 な どが 直接 投 資 に よ って よ り可 能な も のに なるで あろ う。 さ らに サ ービ ス産 業 では 、多 く の企業 は買い 手 と売 り手間 で直 接接 触が 必 要な ので 貿 易か 投資 か
米国社会 におけ る日本 企業 95 と い う 選 択 は な い 。 例 え ば 、 レ ソ タ カ ー の 企 業 は 直 接 投 資 で 外 国 市 場 に 事 業 所 を 設 営 す る こ と に よ っ て の み サ ービ スを 販 売 す る こ と が で き る。1980 年 か ら1988 年 ま で めG5 諸 国 間 の 直 接 投 資 の 伸 び の う ち 約m% は サ こ ビ ス 産 業 部 門 に よ る も の で あ っ た 。 も し1992 年 の ヨ ー ロ ッ パ 統 合 やGATT ( 関 税 と 貿 易 に 関 す る 一 般 協 定) の 交 渉 が 意 図 し た よ う に 進 展 す れ ば 、 さ ら に 巨 額 の 直 接 投 資 が 触 発 さ れ サ ー ビ ス 部 門 の グ ロ ー バ ル な 規 制 緩 和 が 加 速 化 さ れ る で あ ろ う。 も し 市 場 シ ェ ア の 獲 得 、 米 国 に 既 に 進 出 し て い る 日 本 子 会 社 へ の 接 近 、 米 国 の 科 学 と 技 術 へ の 接 近 が 依 然 と し て 米 国 内 で の 日 本 の 直 接 投 資 に 拍 車 を か け る 主 要 な 動 機 で あ り 続 け る な ら ば 、 そ の 現 象 が 継 続 す る だ ろ う こ と は 容 易 に 言 え る こ と で あ る 。 実 に 、 日 本 の通 産 省 に 勧 告 を 行 う委 員 会 の 最 近 の 予 測 に よ れ ば 、 日 本 の 海 外 直 接 投 資 は2000 年 に な る ま で の 残 さ れ た 期 間 中 年 率14 % で 成 長 す る と 述 べ て い る 。 し か し 、 海 外 直 接 投 資 の 動 機 は 世 界 的 に 類 似 し て い る か ら 、 日 本 の 直 接 投 資 の 将 来 の 伸 び も 世 界 中 の 国 境 を 越 え る直 接 投 資 の 伸 び と 歩 調 を 合 わ せ る こ と に な る で あ ろ う。1970 年 代 の オ イ ル シ ョ ッ クの よ う な 過 去 の グ ロ ーバ ル な 経 済 問 題 は 海 外 直 接 投 資 の 伸 び を 一 時 的 に 低 下 さ せ た が 、 ま た 将 来 に お い て もそ う い っ た こ と は あ り う る だ ろ う が 、 直 接 投 資 の 基 底 に あ る 国 境 を 越 え る 動 機 は 強 力 で あ り 、 長 期 的 に は 容 赦 な く 増 加 の 一 途 を 辿 る で あ ろ う。1963 年 か ら1988 年 の25 年 間 に 、 対 外 直 接 投 資 の 伸 び はG5 間 で 輸 出 の 伸 び と 比 べ て 約2.5 倍 、GNP の 伸 び 七 比 べ て3.5 倍 上 回 っ て い た 。 こ の よ う な 急 速 な 増 加 が 海 外 直 接 投 資 を グ ロ ー バ ル な 経 済 統 合 の 推 進 力 に 、 お そ ら く ぱ 貿 易 よ り 重 要 で さ え あ る 推 進 力 に 高 め た の で あ る 。 づ し か し 、 経 済 統 合 の 過 程 は 、 諸 問 題 を は ら ん で い る。 米 国 で の 日 本 の 直 接 投 資 の 拡 大 と 成 熟 に ょ り2 国 間 の 緊 張 は よ り深 刻 な 段 階 を 迎 え る こ と に な る 。 他 方 、 日 本 企 業 が 米 国 経 済 の 中 に 長 期 間 参 加 し 七 、 企 業 市 民 に つ い て の ア メ リ カ人 の 考 え 方 を 理 解 七 始 め る に つ れ て 、 そ れ ら は 自 社 に と っ て の 新 し い 抱 負 や 新 し い 便 益 を 見 い だ す よ う に な る か も し れ な い 。 同 時 に 、 ア メ リ カ 側 も 、 米 国 で 事 業 を 行 っ て い る ア メ リ カ 企 業 や 他 の 外 国 企 業 と 同 様 に 、 日 本 企 業 が コ ミ ュ ニ テ ィ の 経 済 的 社 会 的 安 寧 の た め ど れ ほ ど 貢 献 す る も の で あ る か 一 層 理 解 す る よ う に な る か もし れ な い 。 必 要 な こ と は 日本 の 直 接 投 資 に よ る ア メ リ カ 地 域 の 国 際 化 に つ い て 新 し い ゲ ー ムの 規 財 を お 互 い に 理 解 す る こ と で あ るレ 以 下 の 章 で は 、 ア ノ リ 力人 の 企 業 市 民 に つ い て の 考 え 方 を 理 解 す る た め の 枠 組 み を 提 供 す る 。 こ の 枠 組 み は ア メ リ カ 人 が ア メ リ カ で 事 業 を 行 っ て い る 日 本 企 業 を ど の よ う に 認 識 し て い る か 、 ま た 日 本 企 業 自 体 が 米 国 で ビ ジ ネ ス を 行 う の に ど の よ う に 適 応 し て い る か 、 を み る 手 段 を 提 供 す る こ と に な る。 \ 3 米 国 で の 企 業 市 民:1990 年 代 に お け る 新 し い 意 味 企 業 市民 とい うのは ア ズリ カで 広 女 りつ つ あ る意 味深 長な 概 念 であ る。 そ の重要 性を 今 日理 解す
96 経 営 論 集 第44 号(1997 年2 月 ) る ため に は、 そ の歴史的 起 源を 見て み る必 要が あ る。 こ の章 では、 ビ ジネ スで の 私利 追 求、 政府 規 制 、過 去30年に 及 ぶ草 の根 運動 と並 ん で、 コ ミ ュニ テ ィに つい て の アメ リカ特 有 の観 念 がい かに 企 業 が市民 とし て果 すこ との で きる また果 す べ き役 割に つい て の新し い 見方を 創 りあ げ て き たかを 検 討 する。 次に、 私 たち は、 ア メリ カ企業 の経 験に 基づい て、 企業 市民に つい て の 実用 的 な定 義を 提 供 するノ ア メ リカの 企業 市民 の基 礎 :コ ミ ュニテ ィの 観 念 犬 ダ ユエ ル・ブ ースチ ソが 『急 進主 義 の衰 退』 のなか で 指摘し た よ うに 、 歴史 的 に は、 アメ リカ人 の コミ ュニテ ィは共 通 の ニ ーズを 処 理 する のに 政 府組 織 が乗 り出す前 にそ れを 行 うて し ま うた めに つ くら れ た。 ア メリ カ人 た ちが 政府 の 法律 が 及びに くい あ るいは 全 ぐ及ば ない 西 部 の遠 隔 地に 移動 し た とき、 彼ら ぱ直 面す る 危険 から 自ら を うま く守 るた めに コミ ュニテ ィを 組 織 し た。 シカ ゴ、 カ ンザス シ テ ィ、 デ ンバ ―、 そし て オマ ハを 含 む西 部 の大 都市 の多 く は今 日の よう な行 き届 いた 政府 の形 に発 展す る前 まで は コ ミュ ニテ ィとし て充 分 に 確立 さ れてい た のであ る。 コ ミ ュニテ ィが 米国 では 政府 の 前身 であ る こ とが多 か っ たとい う事 実は 社会 に おけ る個 人、 企業 、 お よび 州 の役 割につ い て のア メ リカ人 め 見解 に 絶え ず影 響を 与 え て きた 。 政 府 を 欠 い た コ ミ ュ ニ テ ィは 州 の機 能を 代行 す るも の とし てそ の メ ンバ ーの ボラ ン タリ ー活動を 必 要 とし た。 市 民 とし て の個人 参 加 はニ ーズを 満 たし ただけ でな く、 コ ミュ ニテ ィへ の参加を 実 践す る こ とに な った。 最終 的 に政 府 に発 展し た とき、 そ れ は主に ボラ ン タリ ー組織 と の ギ ヤヽジプを 埋め た りレ そ れを 単に 引 き 継ぐ 働きを し た。 例え ば、 ベ ソジ ャミソ ・フ ラン クリ ンは、 故 郷 のフ ィラデ ル フ ィア の町 で、 貸 出 し 図書 館 、 ボ ランテ ィアに よる消 防署 、警 察 署 、さ らに は 街路 舗装 や ゴ ミ収 集 のシ ス テ ムな どの新 設を含 め て、 政府 に よ りまだ 実現 さ れてい な い ニ ーズを 処 理す る一 連 のプ ロジ ェ クトを 実 施し た。 後 年そ れら の活動 の すべ ては 州に 引 き継 が れた。 コ ミュニ テ ィの ニ ーズが急 速に変 化 し た ア メリ カの急 成長 の町 で は、 市民 の 自由 意 思に よる個 人 参加 は政 府 より も早 くて効 率 的 な対応 を も たら す場 合 が多い 。そ の ような場 合 、 コ ミ ュニテ ィ のメ ン バ ーは時に は 自分 たち で歩 道を 建設 し た り、 上 水道を 増 設し た り公園を 作 っ た りす る作 業を 行 う ことに な っ た、1900年 ま でに 、 コ ミュ ニテ イめプ ロジ ェ タト に よ く付 き も の の 声 高 な 強 い 感 情 、 ブ ース タ ー. スピ リット( 熱 狂的 支援 者 精神 )を 表 す ため に新 しい 局面 が創 り出 され た。 一 般的 に は社会 のなか の上 流気 取 り の メンバ ーに は 評判 は よく ない が、 ブ ース タ ーた ち ぱ コ ミ ュニテ ィの発 展を 願 う熱 狂的 な後 援者 たち であ っ た。 か れら は 自分 だも の町を 限 りなく 住み や す くし よ うとす る のに最 も熱心 な人 た ちで あ った。 彼ら は コ ミュニニテ ィの安 寧を 促 進さ せるプ ロジ ェ クト から 自ら も 利 益 にあ ずか ろ うと する 「啓 発 され た 自己利 益 「enlightenedself-interest)」 とし て知 ら れ る も の
米 国 社 会 に お け る 日 本 企 業 97 を 具 体化L ようとす る人 々で もあ った 。 十 啓 発 さ れた 自己 利 益 は アメ リカの企 業 市民 概 念 の中 核を 占 める原 則 であ る。 個人 や 企 業 は利 他 的 な理 由 とか 自ら の気 休 めだけ で コ ミュ ニテ ィ のた めに 活動 す るこ とは 稀であ ると 言 え よ ‰ そ れよ りも そ の コ ミュニ テ ィの改善 に よ り彼 ら 自身 の 生 活が 豊か に な り、 そ の コミ ュニ テ ィに 参 加し た り メ ンバ ーで ある こ とを 誇 示し たト ため に 参加 す る こ とのほ うが多い 。同 様に 、 ア メ リ カ人 は一 般的 に 人 々 の感 謝 の念や 忠誠 心だ けに基 づ い た ボ ラン テ ィア活 動や 慈善 献金 は受け 入 れ ない。 そ の代 わ り、彼 ら は コ ミュ ニテ ィに とって の 自己 改善 や 貢献 につ な が るも のにつ いて は 、そ れを 喜 んで受 け 入れ るこ と が多 い 。 法的 な 正当 性 個人 に 対す る啓 発 され た 自己利益 の原 理 は、 そ れが常 に 当 ては まる とい うわけ で はな い が、 企 業 に も伺 様 に適 用で き る。19世 紀から20 世紀 初 頭 にかけ て、 企業 の慈 善献 金は 法 律に よっ て 制 限さ れ て お り、 フ ィラ ンソ ロピ ーは 企業 自体 とい う よりは 個人 や 大実 業家 の領域で あ っ た。 し か し、1935 年に 、 内 国歳 入法 の 改正に よって企 業 が慈 善 の 献金を する 場合 税引 前利 益 の5 % ま で控 除 さ れる こ とに な り(こ の基 準は 後に10 %に引 き上 げ ら れ た)、 国 家 に よっ て は っ き り と保 障 さ れ る こ と に な った。 そ の時 以来、 裁 判所 は企 業 フィ ラン ソ ロピ ーの正 当性 を 確立し た。1953年 に、A.P. ス ミス 製 造会 社 のあ る 株主 が、 そ の企業 がプ リ ン スト ン大 学 に行 な った1,500ド ルの献 金 を 不 服 とし て 訴 訟 を 起こ し た。彼 は そ の支 出がそ の企 業あ るい は株 主 の利 益 に役 立 ってい ない と主 張 し た。 画期 的 な 裁 定 のなか で、 ニュ ージ ャ ージ ー裁 判所 は 次 の よ うに判 決を 下 した。A.P. ス ミス社 は 教育 が 普 及し 充 分に 機能 す る社 会に おい て のみ成 功 す る こ とがで き るか ら、 同社 は 高等 教育 を 支 援 す る権利 を 持 つ だけ でな く責 任を も有 する のであ る。 コ ミュ みテ ィの改 善に 役立つ こと は間 接 的 に そ の企 業 自体 の利 益 にな る ことで あ る から 、 同 じ よ うに こ の実用 的 な理 由は 企業 が コ ミ ュニ テ ィで 関 係す る すべ て の事 柄に 適用 可 能で あ る。 ニ 最 近 の流 れ: 法的 正当 化 に よる 企 業 参加 の 増加 と 草 の根 運動 によ る圧 力 過 去30年 間に 渡 って、 公 民 権や 環 境、 果 て は隣 の活性 化 問題 に至 る まで の大 きな 草 の根 運動 は 市 民 運 動 の大 きな 現代 的表 明 であ った。 そ の よ うな草 の 根運 動は 株主 や一 般大 衆 向け の企 業 政策 に 対 す る 関心を 増 大 さ せる とと もに、 企 業を フ ィラ ソ ソロピ ーを 越 えた 遥遠 く の領 域に まで 巻 き込 む 重 要 な役 割を 演 じ た。 企業 の取締役 会 を合 めて民 間 の集団 は 大衆 に よる圧力 か ら 無縁 では な い。 多 く の アメ リ カ企 業 はそ れら の圧力に 抵 抗し 、 大 衆 の期 待 の変化 に 適応 す るには 問 題が あっ た。 に も か
98 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) か わらず 、そ の他 の多 くの 企業 は 首尾 よく こ れら の新し い 環境 に適 応し 、 よ り広い 企 業市 民 の戦略 を 形成 し て きた。 例えば 、1960年 代 の公 民 権 運動 か ら の主 た る法 的 遺産は 女性 や少 数民 族 の 雇 用に おけ る差別を 禁 止 する一 群 の法 律で あ る。 完 全に 有 効 では ない に し ても、 こ れら の法 律は よ く目に す る 何社 かの大 企業 に女 性 や少数 民 族 の雇 用 の要 求を 最 小 限度 以 上受け 入 れさせ るのに 成 功 し た し、 人 的資 源 の問 題を 企業 市 民 の重 要 な一 部 とする こ とに 役 立 った。 同様に 、 金融 機関 が すべ て の隣 人 に 公正 な投 資 を 行 うよ う強制 する コ ミュ 三テ ィ再 投資 法(CRA ) や地 方 の住宅 金 融を 条 件 す れす れ で利 用 し よ うとし てい る借 り手 の 人た ち に 銀行 が積 極的に 支 援 する よ う仕向け る公正 な 住 宅に 関す る 法律 とい っ た ものは 、 コ ミュ ニテ ィ開 発 に おけ る 企業市民 の役割を 高 揚 させ た。 時 間が 経 過 する につ れて、 多 く の金融 機 関は 、 そ れら が 安 全 な貸 付げ であ り、 い ろい ろな 貸 付、 ロ ーン引 受 組 合、 貧 しい 隣 人 のた め の リス クのプ ール な どを 工 夫 す るこ とに よっ て 適度の 利 益を 獲得 す る こ とが で き るこ とを 認識 す る よ うに な ったレ 底辺 から の 圧力 収 益性 に対 す る関 心 も企業 を 企 業市 民 とし て の新 しい 役 割に 誘導し た。 例 え ば、 熟 練労 働者 や技 術を 収得 し たい とい う必 要 性 が企 業 が 教育 支援を 行 う基本 的動 機に な ってい っ た。 過 去10年 間に 、 経 済の変化 と生産 方 法 の変転 が よ り教育 程 度 の高い 労 働者を 必要 とす る よ うに な った ので 、企業 は 教育 に一層 積極的 な 役割を 果 たす よ うに な っ てき た。 幾つ か の企業 で は、資 金を 援 助 す る 「アダプ ト ・ア・ ス ク ール」 のプ ロ グラ ムに 参加 し てい る。 別 の企業 では学 校 の卒業 生に 雇用を 保 障し た り 高校 の終了 者に奨 学 金を 提供 す る契 約を 締 結し てい る。 経 済環境 の変化 のた めに 、 企業 は 従業 員 に 公平 な処 遇を 持 続す るに は 厳し い 立場 に 立 ださ れてお り、 オート メ ¬シ ョソに よる 生産 、 規 模 の縮 小、 労 働者 の配 置転 換等 の必 要 性 に迫 ら れて きた。 多 く の企業 で は、 レイ オ フし た 労 働者 に は退 職 金以 外に は ほ とん ど何 も与 えな か っ た が、 経済 的変化 に対 応す る た めの新 しい アプ ロ ーチ を 導 入し た企 業 も何 社か あ る。 カリ フ ォル ニア では 、幾 つか の 企業 は州 の失業 基金 で コスト の 一部 を 補填 し て 労働 者を 解 雇す る前に 彼 らを 任 意に 再訓 練し てい る。 健康管 理 面 では、 企業 は労 働 者に 健 康管 理 の巡 回 や予 防 給付を 提供 す る の に コ スト が嵩 む問題を し き りに 唱 え てい る。 あ る場 合 に は、 企業 は従業 員 に 伝統 的な保 険制 度 に 加 入す る より健康 維持 組 織 に加 盟 する よ う勧め た り、 給 付 の 選択 幅に 大 きな 弾力 性 のあ る保 健制 度を 再 編し た りし てい るレ 別 の 例で は、 幾つ か の企業 はそ の 労 働者 本 人お よび老 齢 の両親 やそ の 他扶 養 家族 ま で対 象 にし た新 し い タイ プ の健康 管理 サ ービ スを 提 供す る た めに 原資を 配 分し つつ あ る。 他 の 企業 で は、 依然 とし て アメ リカ の不十 分 で次 第 に値 上 りしつ つ あ る健 康管 理 シス テ ムを変 革 す る た めに 協 力し 合 ってい
米 国 社 会 に お け る 日 本 企 業 99 る。 こ れら の企業 は、 利 益を 上げ る とい う企 業 自体 の必 要 性に 対応 す る と同時 に、 従業 員や コ ミュ ニテ ィの利 益を も創 造しつっ ある。 作業 モデ ル ビ ジ ネ スの底 辺 にい る人 々の30年 来 の要請 が次 第に 収斂 し て きた こ と、 草 の根運 動 の進展 、 法律 の改正 、等 に より これ まで以 上に 幅広ト 企業 市民(corporatecitizenship) の概念 が 浮上 して き た。 今 日 では 、企 業 活 動 の各 レベ ル(企業 の生産 す る製品 か ら雇 用 され るヒ トや 利用 さ れ る生産 方 法に 至 る まで) が企 業市 民 の局 面を有 し てい るこ とにつ い て以 前に も増 して 大 きな認 識 が存 在す る。 収 益性 の向 上 と コ ミュ ニテ ィの 早−ズ の充足 が同 時に 実 現 され る こ とで、 企業 がそ の一 員 とし て活 動 して い る コミ ュニ テ ィや 地 域 と一層 緊 密に 関わ り、 そ れを 訪問 し て 教育 や訓 練、 健康 管理 、企 業 開 発 や 社 会 サ ービ スな ど の新 しい企業 主導 の 活動を 通 じ て支 援 した り、 参 加す る こと が可能 に なっ た。 アメ リ カ企業 の経 験を 説 明す る のに、SRI イ ン タ ーナ シ ョ ナル社 は、企 業 市民 の 現代的 モ デ ルを 作 成 し た。 こ の モデ ルで は、 企業市 民は コミ ュニテ ィ 生活 に関 す る5 つ の全般 的 領域を 改 善す るた め に 、5 つ の主 要 な資 源 あ るいは ツ ールを利 用 す るこ とに なる。 そ れ ら の ツ ールは 以下 の 通 りであ る。 ① フ ィラ ソ ソロ ピ ー一 企業 は コ ミュニテ ィ のイ ベン ト、 プ ロジ 土クト、 計 画、組 織 を後 援・ 援 助 す るた め にそ の 財務資 源を 活用 す るこ とが で きる。 フ ィラン ソ ロピ ーには 選 挙の 立候 補者 や 政 治 的 目的 のた めに 与 えら れる資金 は 該当 し ない / ② 寄 付 金以 外 の寄 与一 企業は 公共 部門 、非 営利 のコ ミ ュニ ティ組 織 や基 金募 集 の運 動に対 し て各 種 の資 源を 寄 贈 す ること がで きる。 寄贈 に は次 の よ うな もの があ る。 ト ・従業 員 に 企業 外 で時 間単位 の奉 仕を さ せた り、 ボラ ンテ ィ アの仕 事を 推奨 す る ・会 社 の製 品を 寄 贈 した り、 会 社の備 品や 設備 を 貸し 出 す ・電 話 や 郵 便や 印 刷 のサ ービス とい づた企 業 の サ ービ スを 提供 す る ・財務 分 析 、不 動産 開発、デ ータペ ース管 理 とい った 領 域で の企業 の専門 知識 を 提供 す る ③ 企業 のV- ダ ーシ ップ と名 声一 企業 は コミ ュニ テ ィがイ ユシ ャテ ィブ を 発揮 す る のを 支 援 し た り、 コ ミュニ テ ィの 目標を 擁 護す る のにそ の企業 の 名声を 利 用 す るこ とが でき る。 企 業 は 他 の企業 、 政 府 、 コ ミ ュニテ ィに対 し て公 共 の問題 に 積 極的 に対 応 す る よう働 きかけ るのに そ の影 響力 を 行 使 す るこ とがで き る。 企 業の ト ップ は コ ミュ ニテ ィ組 織の なか で リ ーダ ーシ ップ を と るこ と がで き る。 ④ 人 的資 源に 関 す る決 定と方 針一 企業 は 自社 の 人事 政策 を活 用 し て コミ ュニ テ ィの住民 の だ めに な る こ とが でき る。 企業 は女性 や 少数民 族 の人 々を 雇っ て昇 進さ せ るこ と もで きるし、 託
100 経 営 論 集 第44 号 (1997 年2 月 ) 児 所 の よ うな サ ービ スを 従業 員 がそ め 住人 に提 供 した り、 公 衆の 教育計 画 の一 環 とし て 社内訓 練を 提供 す るこ ともで き る。 ⑤ 外 部 のビジ ネ ス関 係一 企業 は 外部に 対 す る事業 決定 を 通 じてそ の コ ミュ ニテ ィに 役 立つ こ とが でき る。 例 として 、 現地企 業か ら の原 材料 ・ 部品 の調 達、 現地 銀行 へ の預 金、 現 地 企業 へ の投 資 、現 地 政府 の 債券 購入、 現地 の 不動 産 開発 へ の参 加な どがあ る。 これら の ツ ール は大 き く2 種 類に 分け ら れ る。 初 め の3 つ の ツ ール( フ ィラソ ソ ロピ ー、 各種 の 寄贈、 リ ーダ ーシ ップ) は コミ ュニテ ィの問 題 処理 やそ の率先 的 な行為 を対 象 に企 業 の諸 資 源を 明 示 的 に投 入し ようとい う もので ある。 最 後 の2 つ に つい て は企 業 が自社 の 日々 の事 業 に影 響を 与え る決 定を 行 うに 際 して コ ミ ュニテ ィの ニ ーズを 考え る よ う要 請 し てい る。最 も 基本 的 な こと として 、 良 き企 業市 民 とし ては ビジ ネ ス上 の決定 がそ の コ ミュニテ ィに 対し て二 次的 で ある に せ よ絶対 に ネ ガ テ ィブ な 結果 を もたら さ ない ようにし なけ れば なら ない とい うこ とであ る。 しか し 、た い てい の 対 応 の 早い 企業 は ど うす ればそ れら の人 的資 源と 事業 上 の決定 が 自社 だけ でな くそ の コ ミュニテ ィ に も利 益に な るか 積 極的 に 考え てい る。 また 、フ ィラ ンソ ロピ ーは現 金支 出が 必要 な 唯一 の ツ ールで あ るこ とも 注意を 要 す る。多 く の中 小企業 は会 社 の参 加がフ ィラ ソソ ロピ ーだけ に 限ら れ る と信じ 込 んで、 そ れら 自体 が 良 き企業 市民 に な る こ とを 断 る 言い訳 に してい る。 し かし 、 企業 市 民を 実 現す る ツ ール の うち4 つ は、 金 銭を 必 要 とし てい ない 。 むしろ 、 そ れら は時 間、 新 しい 意 思決定 プ ロ セ ス、 お よび リ ーダ ーシ ップ の実 践 な のであ る。 企業 市民を 実 現 す る ツ ール は コ ミュニ ティ での生 活 に 関わ る5 つ の主 要 領域 に対 象 が絞 ら れ てい る。 ① 芸術 と文 化− コミ ュニテ ィにおげ る 芸術 と文化 の質に 多楡 旨、お よび 接近 可 能性 に 貢献 す る こ と。博 物 館、 コミ ュニテ ィ の祝賀 会、 芸術 組 織、 公共 のラジ オな ど が企業 が援助 す る対 象 に な り うる。 犬 ② 教育 と 訓練一 奨学 金制 度を 創設 し た り、義 務 教育 、 高等 教育 、職業 訓 練や 読 み 書 き能力を つ げ る 訓練 を 支援 する こ とに よっ て コ ミュ ニテ ィ住民 の 教育 や訓 練 の ニーズに 貢 献 す るこ と。 ③ 健 康 ・人 的 サ ービ スー コミ ュニテ ィ住 民 の発 育や 福 祉 の改善 のた めに 貢 献す る こ と。企 業 は子 供 の世 話、 ホ ームレ ス、薬 の乱 用、 健 康管 理 な どの 問題 で関 与す るこ とが でき る。 ④ コ ミュ ニテ ィの 開発− コミ ュニテ ィ・ ライフ の活 性化 や 質 の向上 に貢 献 す るこ と。 公共 の 施設 、 住宅 、 リ クリエ ーショ ン、環 境あ るい は近 隣 の開 発な どが 企業 援助 の対 象 に な り うる。 ⑤ 経 済 開発- そ の コ ミュニ テ ィの経 済的 能力 の向上 に貢 献 す るこ と。 企 業 は積 極 的に 新し い 企業 め展開 、 都心 開発 、技 術的 能力 の向上 な どに 参 加す るこ と がで きる。
米 国 社 会 に お け る 日 本 企 業 101 企 業 市 民 に つ い て の 日 本 人 の 見 解 ア メ リ カ 人 の 企 業 市 民 に う い て の 見 解 は 日 本 人 の 考 え 方 と 際 立 っ て 異 な っ て い る ノ 日 本 で は 、 企 業 に 対 す る 期 待 は 米 国 に お け る よ り狭 い 。 た い て い の 場 合 、 日 本 に お け る 良 き 企 業 市 民 は そ の 従 業 員 に 安 定 し た 職 を 提 供 し 政 府 に 税 金 を 支 払 っ て い る 企 業 で あ る 。 し か し 、 伝 統 的 に コ ミ ュ ニ テ ィ の 問 題 は ア メ リ カ の 場 合 よ り も 幅広 い 権 力 を 持 って い る 国 家 に 任 さ れ て き た 。 そ ん な ふ うに 日 本 人 が 企 業 市 民 を 定 義 す る 大 き な 理 由は 日本 の 戦 後 の 経 済 の 歴 史 と 関 係 し て い る 。 つ ま り 、 企 業 は 戦 時 の 荒 廃 か ら の 再 建 に 全 精 力 を 傾 注 し た 、 そ れ ら の 目標 を 達 成 す る た め に 、 企 業 は 従 業 員 と 安 定 し た 関 係 を 築 き 上 げ て い っ た 。 企 業 は 、 そ れ ら の 従 業 員 の 献 身 と 引 換 え に 、 彼 ら を レ イ オ ツ し な い で 社 内 で 再 訓 練 し た り配 置 転 換 を 行 い 、 ま た 会 社 を 解 散 す る こ と は 避 け て 生 産 を 調 節 し た り方 向 転 換 し た りし た い パ 同 時 に 、 日本 人 は 企 業 の 経 済 的 局 面 を 越 え た 社 会 的 関 与 を ア メ リ カ 人 よ り 懐 疑 的 に み る 傾 向 か あ っ た 。 与 え る 人 と 受 け 入 れ る 人 の 間 の 関 係 が な け れ ば 、 慈 善 的 貢 献 を し た り ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 に 参 加 す る人 々 の 本 当 の動 機 づ け は 疑 わ し い も の に な る だ ろ う。 フ ィ ラ ソ ソ ロ ピ ーや ボ ラ ン テ ィ ア活 動 に 対 す る 懐 疑 主 義 は 日 本 が 企業 の 慈 善 の 寄 付 に 対 し て 与 え て い る 税 制 優 遇 が 相 対 的 に 少 な い こ と ( 企 業 が チ ャ リ テ ィ に 寄 付 し て も 税 引 前 利 益 の1.25 % ま で し か 税 控 除 の 対 象 に な ら な い )、 さ ら に は 科 学 や 技 術 分 野 以 外 の 非 営 利 組 織 が 税 額 控 除 の 恩 典 を 受 け る こ と の 難 し さ に 表 わ れ て い る 。 よ り 最 近 で は 、 環 境 規 制 、 海 外 投 資 、 地 域 開 発 、 そ し て 労 働 市 場 等 の 傾 向 が 日 本 で の 企 業 市 民 の 考 え 方 を 拡 大 す る 方 向 に 作 用 し て い る 。1960 年 代 に お い て 、 環 境 問 題 は 危 機 的 状 態 に 到 達 し 、 産 業 や 政 府 の 活 動 は 戦 後 の 産 業 発 展 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ た 被 害 を 償 う よ う要 請 さ れ た レ1980 年 代 の後 半 に は 、 経 済 は 円 高 に よ り 大 き な 影 響 を 被 っ た の で 、 企 業 は 工 場 閉 鎖 、 労 働 者 の 削 減 、 お よ び 海 外 生 産 を 余 儀 な く さ れ る よ うな 厳 しト 圧 力 に 直 面 し た 。 既 に か な り の 製 造 企 業 が も っ と 低 コ ス ト の 生 産 立 地 を 求 め て 韓 国 、 台 湾 、 タ イ 、 シ ン ガ ポ ー ル に 、 ま た よ り 近 い 消 費 者 市 場 を 求 め て 米 国 や ヨ ー ロ ッ パ へ と 移 転 し た 。 さ ら に 、 日 本 人 の 生 活 の 質 の 改 善 を 目 指 し て 国 際 空 港 や 地 方 の 空 港 、 リ ゾ ー ト 地 、 マ リ ー ナや 公 共 の 文 化 施 設 な ど が 既 存 の 市 や 町 に 整 備 さ れ て く る に っ れ て 、 全 国 的 に 新 し い ド タ マ テ ィ ヅ ク な 開 発 の 波 が コ ミ ュ ニ テ ィ に 押 し 寄 せ て き た 。 そ し て 新 し い 先 進 的 な コ ミ ュ ニ テ ィ や 「 テ ク ノ ポ リ ス 」 が 誕 生 し た 。 さ ら に 、 人 口 統 計 的 に 男 子 労 働 者 の 数 が 減 少 傾 向 を 示 す に つ れ て 、 こ れ ま で よ り多 数 の女 子 や 外 国 人 労 働 者 が 労 働 市 場 に 参 入 し て く る で あ ろ う 。 こ れ ら の 変 化 に 直 面 し て 、 米 国 で 事 業 を 行 っ て い る 日 本 企 業 の 経 験 は 、 日 本 の 親 会 社 に ア イ デ ィ ア と 教 訓 を 提 供 す る こ と に な る で あ ろ う 。 ニ∼ 米 国 で の 日 本 企 業 が 経 験 す る学 習 プ ロ セ ス か ら 、 企 業 市 民 と し て の 人 々 の 新 し い 期 待 に 応 え る の が 容 易 な も の で は な い こ と が 理 解 さ れ て こ よ う 。 ア メ リ カ 人 は 日 本 人 投 資 家 に 異 常 に 神 経 質 な の で 、