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広域震災を受けた道路ネットワークの復旧過程予測システムの開発

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Academic year: 2021

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広域震災を受けた道路ネットワークの

復旧過程予測システムの開発

川島一彦,杉田秀樹

11川11川11川11川11川11川11川11川l川11川11川11川11川11川1111川11川11川11川11川111川11川l川11川11川11川11川|川11川11川11111川11川11川11川11川|川l川|川11111川11川11川11川11川11川l川11川11川1111川11111川11川11川l川11川|川l川111川11川11川11111川11川11川11川l川11川11川|川|川1111111111川11川11川11川11川11川11川11川11川11111111川11川111川11川|川11川|川11川11川11川1111111川1111川11川111川11川11川11川111111川111川11川11川111川11川l川11川11川11川11川11川11川111川11川11川11川|川11川11川111川111川1111川11川1111川11川11111川1111川1111111川1111111川11川11川11川11川11川1111川1111川111川11川11111川11川11川11川11川1111111l

1

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まえがき

震災が生じた場合には,速やかな復旧が必要とされる が,震災復旧に果たす道路の役割はきわめて大きく,道 路の復旧が進まなければ他の施設の復旧はできないとい っても過言ではない.これは,道路が医療品や食料,復 旧資機材の運搬に欠かせないだけでなく,道路に埋設さ れた各種ライフライン施設の復旧にも関連しているため である[

1

J

.

したがって,震災が発生した場合には,何よりも優先 的に道路を復旧することが求められるが,震災が広域的 に,かつ,複雑な被害をともなって発生した場合には, 復旧の優先度の選定を含めて限りある復旧資機材の有効 活用等,非常に複雑で高度な判断が求められる. 本文は,地震発生後の道路の震災状況をインプットと して,これに対してどのような順序で復旧を講じれば, おおよそどのようなプロセスで道路を復旧できるのかを 各種の制約条件のもとで解析できるシステムを開発した ので,この概要について紹介する.

2

.

広域震災後の道路ネットワークの

復旧予測

大規模な震災が大都市圏に発生し,広域的に複雑な被 害を生じた場合には,道路管理者には迅速な復旧が求め られる.迅速といっても,どのような考え方にもとづい て復旧を進めるかによって復旧の方策も異なってくる. 震災の特性によって何を最適にするかという目的関数が 異なってくるからである.復旧資機材や人員の確保には 制限があり,これをどのように有効に活用するかが最も 基本的な判断であるが,道路をひたすら復旧すればよい のではなく,道路管理者には他にもいろいろな制約条件 があることに配慮しておかなければならない.たとえば かわしま かずひこ,すぎたひでき 建設省土木研究所地震防災部耐震研究室 〒 305 つくば市旭 1 1993 年 2 月号 過去の災害の例からみると代表的な制約条件としては以 下のものがある [2J-[4]. 1) 社会的な条件,資機材の調達,他施設の復旧,行 方不明者の捜索活動等により,限られた期間内に復旧を 完了する必要がある場合や,反対に一定期間は復旧に着 手できない場合がある. 2) 道路の不通は沿道住民の生活に大きく影響する. 住民生活への影響を最小に抑えるためには 1 :車線でも 復旧できれば,とりあえず一般解放することが望ましい が,一度,一般解放してしまうと,その後の復旧資機材 や人員の輸送に支障が生じる恐れがある.したがって, 部分的に復旧できた段階での一般解放の影響を検討して おく必要がある. 3) 道路の復旧とライフライン施設等の占用物件や沿 道施設の復旧は競合する場合が多い. クリテイカルパス ではな:~、路線とその時期を知ることは,復旧の時期を調 整するのに欠かせない. したがって,復旧に関する各種の判断を支援するため には,開発すべきシステムは上記の各種の社会的な制約 条件の下で使えるものでなければならない.復旧の予測 には,後述するようにネットワーク解析を用いるが,震 災状況がかなりリアルタイムに近く把握できなければ, ネットワーク解析を行なうことはできない.従来の地上 からのパトローんでは,道路自体の被害や交通渋滞等に より被害情報を得るのに時間を要し,かっ,収録される 情報の精度が低かったり,さらに視覚的な情報が少ない と L 寸問題が指摘されている.しかし,これに対しては ヘリコプタ一等を用いた上空からの震災状況の把握技術 や電子野帳の開発,さらには通信衛星を用いたディジタ ル通信技術の飛躍的な進歩により,情報の量,質ともに 大幅に改善され,また,情報伝達に要する時間も短縮さ れつつある [5J-[8J. こうしたハイテク技術を利用し て,不ットワーク解析に用いる震災状況の初期入力デー タを得るのである. もう 1 つ,こうした、ンステム開発の重要な前提条件は 常時からこのシステムを活用していなければ,地震発生 (9)

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© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

(2)

込ζ橋梁

ーペミミ

「イ問

I

L

交差点711

リンク

/属性

・車線数,等 ノード(交差点)

¥

ノード(構造物設置位置) .施設種別 ・構造諸元 ・管理者,等 、血 女,

¥

ノード(備蓄基地) .資機材最 ・人員数 ・管理者f,等 図 1 ネットワーク解析に用いる道路のモデル化 直後にこのシステムを有効に使いこなせないという点で ある.常時の利用形態としては,以下のものが考えられ る. 1) 道路網に予想される震災をあらかじめ何通りか想 定して復旧過程をシミュレーションする.これにもとづ き備蓄しておくべき資機材量とその位置を検討する. 2) 予想される何通りかの地震被害に対して,復旧過 程のシミュレーションを行なうことにより,復旧上のポ トルネックとなる道路施設および路線を絞り込む.これ らは,震災対策の優先箇所として,震前対策に反映でき る.

3

.

OR を利用した予測システムの開発

ネットワーク解析に際しては,図 1 に示すようにリン クとノードの集合として道路網を表わす.ノードは構造 物や突差点,資機材の備蓄基地等に設ける.地震被害は こうしたリンクもしくはノードに生じるものとし,あら かじめどのようなタイプの被害が生じ得るか,また,ど の程度の被害度があるかを分類しておかなければならな い.被害のタイプとしては,盛土や斜面の被害,橋の被 害等に分けられている.また,被害の度合いは,たとえ ば橋を例にとれば,構造的な耐力からの分類{被害な し,小被害,中被害,大被害,落橋)と,さらに橋商の 段差等にもとづく走行性からの分類(被害なし,走行注 意,走行不可)に応じて,図 2 のように分けられてい る [9 ].また,こうした被害のタイプやその度合いに応 じて,たとえば表 1 のように,復旧に必要な資機材に れを原単位と呼ぶ)が想定されている. 図 2 被害の種類および程度の分類の例(橋梁の場合)

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(3)

表 1 復旧資機材の原単位(橋梁が被害を受けた場合)

位協部構|橋脚l 支承部 11縮装|里付盛

l カ所が復旧すれば孤立が解消される場合 にれを, 11曹の孤立と呼ぶ)と,図 3 に示 すように何段階にもわたって復旧を進めなけ ればならない場合がある.後者を n 層の孤立 と呼び,次のように表わす.

耐荷力から見た被災度 I

E

I

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1 - 1

走行性から見た被災度卜

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H傷保鍋板砂主CB

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支鋼

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材 土アスフアルト (tf(tf

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鋼管杭

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1

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ブルドーザー((台台))

2

2

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ダクンレプートンラ車y ク((台台)

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ローラー

(ぷ台口、

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3

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5

5

5

0

1

0

n (kI!k2, …・ , kn) (1) ここに, 川主孤立地区の規模(層), ki は第 i層めに位置する被災施設を復旧して,孤立 の規模を z層からい -1 )層にするのに要す る時間(日)である.したがって,孤立度が n の地区の復旧に要する時間 T況は,次のよう になる. n Tn=

L

:

ki

(

2

)

復旧人員(人)

1 1

0

0

1 70 1 5

0

1 2

0

1 2

0

1 4

0

2) 復旧資機材および人員は,輸送が可能 な地点、に移動させて繰り返して使用できる. ただし,一度ある地点、の復旧に投入された復 旧資機材および人員は,その復旧が終了する

復旧日数(日)

1 51

41

31

21

11

4

(注)耐荷力から見た被災度 (C: 中被害, D: 大被害, E: 落橋) 走行性から見た被災度 (b: 走行注意 c :通行不可) 以上のようなモデル化をもちいて,ネットワーク解析 を行なう.解析の基本的な考え方は,以下のとおりであ る. 1) 復旧開始からの時聞を追って,被災した道路施設 を順次復旧していく.ただし,復旧を行なうためには被 災施設に資機材と人員を供給できることが必要であり, 連続して複数の地点で被災した場合には,代替路線を設 けない限り,いきなり中間地点の復旧に着手することは できない. 2) ある地点の周辺の道路がすべて被災し,外部から 到達不可能となった状態を孤立と呼ぶ.孤立には,ある までは他の地点には移動させないものとする. 3) 輸送路が確保されていれば,ある箇所の復旧を行 なうために複数の備蓄基地から復旧資機材および人員を 供給できる.このため,どの備蓄基地から,どのような 配分で復旧資機材および人員を投入するか,の判断が重 要となる.特に,震災が広域的に生じた場合には,限ら れた復旧資機材および人員を,どの地域に優先的に投入 する 71' は,基本的な復旧戦略としてきわめて重要な判断 となる. 4) 孤立地区の解消,緊急物資輸送路の確保等のため に優先的に復旧すべき路線がある場合には,これを制約 凡伊1 ・:被害箇所 〈〉:孤立地区

n

(kl

,

k2

,

,

k.) (a)1 屑の孤立地区 (b)2 腐の孤立地医 (c)多層の孤立地区 図 3 多層の孤立地区の定義 1993 年 2 月号 © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず. (11)

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(4)

条件として解析に反映させる. ネットワ}ク解析には,数学的な方法の利用 も考えられるが,本解析のように多くの制約条 件がある場合には,適当な解析法がない.この ため,ここでは,総あたり法を用いることとし た.目的関数としては, ①復旧開始から完了までに要する時間の最小 化,②特定の路線,あるいは地区の復旧に要す る時間の最小化,③投入する復!日資機材および 人員の最小化,等が考えられる. ただし,解析を行なってみると,ノード数に よっては計算時聞が長くなりすぎたり,また, L 、かに目的関数を複数選択しこれらの中の優先 度を調整しても道路管理からみれば突飛としか 映らない解が得られる場合がある.このため, 本解析では自動モード以外にマニュアルモート を導入することにした.これは,震後の時間経 過とともに新しい情報が入手でき,時々刻々被 災状況が更新されていくことを解析に取り入れ るためにも必要な措置であった.さらに,道路 管理者からみれば地震発生から完全復旧までを 一時にシミュレートするよりも,重要な判断を 迫られる個々の時点、で自分の判断を交えて復旧 してし、く方が実用的であるという点からもマニ ュアルモードの方が優れている.

4.

解析例

解析の一例として,千葉県に広域的に震災が発生した 場合を想定して,自動モードにより復旧過程のシミュレ ーションを行なった結果を紹介しよう.解析では,どの レベルの道路までを考慮するかが重要であるが,ここで は県内の国道および県道を考慮することとし,合計 160本 のリンクと 103個のノードにより表現した.地震被害は, 図 4 に示すように,平地盛土および橋梁が各30 カ所で被 災したと想定した.このため 3 層の孤立地区が野島崎 と勝浦の 2 カ所に生じた.復旧資機材および人員は,図 4 に示す千葉,酒々井,木更津,柏,船橋の 5 カ所に備 蓄されているものとした. いろいろの解析を行なったが,ここに示すのは最も基 本となる場合で,各種の制約条件を設けず,また,十分 な復旧資機材を投入できるとした場合と,復旧資機材の 量が限られるとした場合である.図 4 の被災を同時復旧 するためには,復旧人員としては最大で2200人/日,ま

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0

凡例

*

:未復旧の施設 <>:復旧中の施設 0: 復旧を完了した施設 ・:備蓄基地 〈設:孤立地区 孤立地区 3 層 (3 日, 7 日, 12 日) 3 層 (3D , 8 日, 13 日) 図 4 解析対象とした被災状況 た,復旧資機材としては,たとえばブルドーザーを例に とれば最大で 267 台/日必要になる.これだけの復旧人 員と復旧資機材を投入できれば,図 4 の被災は 13 日で復 !日できることになる. これに対して,投入できる復旧人員が上記の 12.5%に 当たる 275 人/日,また,ブルドーザーが上記の 15%に 相当する 40台しかないとした場合には,被災後 13 日経 過した段階でも,図 5 に示すように,まだ多数の地点で 復旧が完了していない.この場合には,復旧までには全 体で49 日を要し,上記の 3.8 傍の時間がかかることにな る. こうした解析によれば,資機材を直接投入できない孤 立地区の存在が,完全復旧に要する時簡を大きく左右す る重要な要素であることがわかっている. 5. まとめ 本システムを開発したことにより,現状から,たとえ ぽ 2 日後にはおおむねどのような復旧状況になっている © 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

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凡{同j *未復旧の施設 く):復旧中の施設 してし、くためには,試用を通した今後の各種の 改良が必要であろう. 参芳文献 [ 1

J

日本道路協会:道路震災対策便覧(震災 復旧編),昭和63年 2 月

[2

J

川島一彦,大日方尚巳,後藤勝志,加納 尚史:昭和 59年長野県西部地震における震後 対応,土木技術資料, Vo 1. 28-9,昭和61 年 9 月

[3J

JlI島一彦,大日方尚巳,加納尚史:地震 災害が地域経済に与える影響,土木技術資料

Vol

.

29-3,昭和62年 3 月

[4J

川島一彦,大日方尚巴,加納尚史:長崎 水害および山陰水害における路上放置車両の 除去,土木技術資料,

Vol

.

1

.

29-9,昭和62 年 9 月 。:復旧を完了じた施設 ・:備蓄基地

[

5

J

建設省土木研究所:基幹施設の災害情報 システム・ガイドライン(案),土木研究所繋 報,第45号,平成 4 年 ヨ:孤立地区 場ム/孤立地区 1 層 (4 日) 図 5 復旧資機材に制約がある場合の震災後 13 日(復 旧資機材に制約がなければ完全復旧できる日数) の復旧状況 かを即座に知ることができ,従来,経験と勘にしか頼れ なかった広域的な道路ネットワークの震災復旧予測に判 断を助けるピジプルな情報提供が可能となった.しか し,震災復旧という大きなシナリオ・レスの“ドラマ" の中では,どのような事態が生じるか予想がつかない. 臨機応変な対応が重要な“火事場"で役立つシステムと

考多

選挙

1993 年 2 月号

多多

[6

J

川島一彦,杉田秀樹,加納尚史:へリコ プターから撮影したビデオ映像による地震被 害状況の把握,土木技術資料,

Vo

1.

33-1

,

平成 3 年 1 月

[7]

川島一彦,杉田秀樹,加納尚史,飯田寛 之:震災情報の収集に対する熱赤外線ビデオ の適用性,土木技術資料, Vo1. 33-1 ,平成3 年 1 月

[8

J 寺川陽,野口 正,小栗ひとみ,松木功:災害 情報地上検知システムの開発,土木技術資料,

Vol

.

3

4ー 12 ,平成 4 年 12 月

[9J

建設省土木研究所:土木構造物の震災復旧技術マ ニュアル(案),土木研究所葉報,第45号,昭和61 年 12 月

多多

多多

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© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.

表 1 復旧資機材の原単位(橋梁が被害を受けた場合) 被 災 部 位協部構|橋脚l 支承部 11縮装|里付盛 l カ所が復旧すれば孤立が解消される場合にれを,11曹の孤立と呼ぶ)と,図 3 に示 すように何段階にもわたって復旧を進めなけ ればならない場合がある.後者を n 層の孤立 と呼び,次のように表わす.

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