No. 59, pp.25 - 34, 2009 Ⅰ.研究目的 睡眠は健康でリズムのある生活を維持する最 も基本的な必要条件である。しかし、石原ら1) の調査によれば小中高校生の平日の就寝時間は 過去 30 年間で約 1 時間遅くなる傾向にある。 また、第一生命経済研究所の調査2)によると、 中学生の 7 割が放課後クラブ活動に参加してい るが、半数以上は体を休めたり、寝たりしたい と思っている。その他日本の子どもの睡眠時間 が大きく短縮される傾向を指摘した調査3-6)は 多く、近年の児童生徒は十分に睡眠時間を確保 できないまま授業に臨んでいる生活が日常化し てきていると思われる。 睡眠の研究は主に睡眠のメカニズムや体の因 果関係を明らかにする医学・生理学の分野に多 い。そこでは生体時計のメカニズムの解明など が進み、その結果、睡眠不足が原因となる心身 の阻害状況、たとえば、睡眠不足が疲労感や脱 力感を生み、子どもの心身・脳の成長に深刻な 影響を与えることが明らかにされてきた7-10)。 また、睡眠習慣と学習態度、学習効果を高める 脳の状態や精神状態との関係も児童生徒を対象 とした調査から明らかにされた11-16)。 ところで、神山17)は、国際比較を行って日 本の子どもたちは「世界で最も眠らない」とし た上で、その原因について、塾や学習のしばり ばかりでなく、「夜更かし」に対するマイナス イメージが減退したこと、「家族も起きている」 生活の夜型を重視している。 以上の既往の研究からも分かるように、生徒 が睡眠不足を自覚しながらも、睡眠と生活の関 係について思い至らない状況が浮かび上がって くる。「眠い」まま始動する生活状態は快適な 睡眠の覚醒後に生じる生活に比べて、思考力、 集中力が落ち、注意力に欠けるために、受講、 遊び、通学、交友等様々な場面においてリスク が大きくなる。したがって、児童生徒が睡眠を 確保し、心身の活力を再生産して 1 日を迎える ことは学校教育活動に欠かせない条件ではない だろうか。にもかかわらず、現代日本の社会で は、勤勉のために睡眠を削る生活を容認する傾 向が続いている。このように児童生徒の学習の 前提が崩れてきていることを教師は問題視して いるのか、問題視していないのか、学習者を対 象とした学習態度と睡眠習慣の調査はあるが、 教師が学習者の学習態度と睡眠習慣をどのよう に把握し、問題としているかについての調査は ない。 そこで、上記の問題意識にたち、本研究は、 生徒の学校生活を観察できる立場にいる教師の 視点で、生徒の学習態度と睡眠環境との関係を 把握し、さらに現代の睡眠環境を作り出してい る生徒の生活の課題を顕在化することを目的と した。
滋賀県中学生の「生活と睡眠」に対する教師の認識
田 中 宏 子・高 井 美 沙・山 崎 古都子
Life and Sleep of Junnior High School Students
in Shiga Prefecture from Teacher’s View Point
Ⅱ.研究方法 本研究は中学校教師を対象にアンケート調査 を実施した。調査は、性別のバランス注 1)を考 えて滋賀県下の全中学校(105 校)における養 護教諭、家庭科担当教諭、技術科担当教諭、保 健体育科担当教諭、理科担当教諭、社会科担当 教諭の各校 1 名を対象に、無記名自記式質問紙 により行った。本調査は、中学校教師の「生活 と睡眠」に対する意識として「中学生の生活と 睡眠に対する教師の認識」「教師の生活と睡眠 の状況」「生活と睡眠に関する学習」の 3 領域 について設問しているが、本報告ではそのうち の「中学生の生活と睡眠に対する教師の認識」 を取り上げる。 「中学生の生活と睡眠に対する教師の認識」 領域の設問は、3 分野から構成されており、「中 学生の学校での生活態度に関する教師の認識」 13 項目、「中学生の家庭での生活習慣に関する 教師の認識」11 項目、「教師からみた生徒の睡 眠の妨げ要因」38 項目(ただし分析では 30 項 目のみ使用)、計 62 項目である。 調査票の配票と回収は郵送、調査期間は 2006 年 12 月から 2007 年 5 月である。表 1 に 担当別回収率、分析に用いた対象数を示す。総 回収数 274 から非常勤講師を除外した 270 票を 分析の対象とした。データ解析には、統計ソフ ト SPSS Base 15.0 を使用し、χ2検定およびt 検 定 を 随 時 行 っ た。 パ ス 解 析 に は、SPSS Amos を、コレスポンデンス分析には、SPSS Categories を使用した。 Ⅲ.結果及び考察 1 .回答者の属性 回答者の属性を表 2 に示す。学校の所在地は、 湖南地域が多く回答数も多いが、地域ごとの学 校数の割合でみると、滋賀県下から偏りなく回 答を得ている。回答者は、学級を担任していな いものが多いが、校務の種類は多く、一人で複 数の校務を担当している。平均教師経験は約 20 年とベテラン教師が多い。 表 1 担当別回収率、分析に用いた対象数 養護教諭 家庭科 担当教諭 保健体育科 担当教諭 理科 担当教諭 社会科 担当教諭 技術科 担当教諭 その他 合計 配布数 105 105 105 105 105 105 630 回収数 66 47 38 44 36 37 6 274 回収率(%) 62.9 44.8 36.2 41.9 34.3 35.2 43.5 分析に 用いた 対象数 男性 1 0 30 37 33 37 6 144 女性 65 43 8 7 3 0 0 126 合計 66 43 38 44 36 37 6 270 「その他」は調査を依頼をした担当者以外の教諭の回答と欠損値をあわせたものである。 表 2 回答者の属性 人数 % 学校の 所在地 湖南地域 123 45.6 湖東地域 66 24.4 湖北地域 62 23.0 湖西地域 17 6.3 担任学年 もっていない 157 58.2 1 年 44 16.3 2 年 35 13.0 3 年 29 10.7 特別支援学級 2 0.7 校務 部活動顧問 162 60.0 教科主任 152 56.3 学校保健委員 72 26.7 生活指導 65 24.1 保健給食 37 13.7 教育相談 27 10.0 進路・学習 24 8.9 平均年齢(歳) 42.5 ± 8.5 平均教師経験(年) 20.3 ± 8.9
2 .中学生の学校での生活態度に対する教師 の認識 本調査では、中学生の学校での生活態度に関 連があると思われる項目を可能な限り収集し、 その中から、意味が把握しにくい、似た意味、 教師が評価しにくいと思われる項目を省き、そ れに睡眠不足の影響があると思われる項目「午 前中から眠たそうにしている生徒」を加え 13 項目を設定した。項目毎に「非常に多い」「や や多い」「ほとんどいない」「全くいない」の 4 段階に「分からない」を加えて回答を求めた。 図 1 は項目ごとの分布である。「非常に多い」 と「やや多い」をあわせて「多い」とし、項目 ごとにみると「体調不良を訴える」生徒が多い と回答した教師は 69.1%であり、体調が不十分 なまま授業に臨む生徒が多い現状が確認でき た。次いで「他人への配慮が欠けている」「集 中することができない」「土日の疲れが月曜日 に影響している」生徒が多いと 6 割以上の教師 が回答している。睡眠不足の影響があると思わ れる「午前中から眠たそうにしている」生徒が 多いと回答している教師は 47.9%である。中学 生の学校での生活態度や学習態度は望ましいと は言えないことが明らかとなった。 次に、教師が中学生の学校での生活態度と睡 眠習慣との関係をどのように捉えているかを検 討するために、上記 13 項目を分類して、新た な指標を作成した。分類の手法は上記質問の「非 常に多い」から「全くいない」までの 4 段階に、 4 から 1 の得点を与え、主因子法による因子分 析を行った。この値を使用した 13 項目の固有 値の変化は、7.03、1.11、0.69…であり、2 因子 構造が妥当であるとみなした。また、回転前の 2 因子で 13 項目の全分散を説明する割合は 62.6%であった。表 3 は Promax 回転後の最終 的な因子パターンと因子名である。第Ⅰ因子(8 項目)は「キレやすい」「イライラしている」 など、学校における集団生活に相応しくない行 動と思われる内容の項目が高い負荷量を示して いた。そこで「学校での問題行動」因子と命名 した。第Ⅱ因子(5 項目)は「午前中から眠た そうにしている」「ぼおっと疲れた表情をして いる」など、元気がない様子の内容の項目が高 い負荷量を示していた。そこで「学校での活力 低下」因子と命名した。信頼性を検討するため にα係数を算出したところ十分な値が得られ た。 次に、ここで抽出された 2 つの因子に属する 項目の得点をそれぞれ合算した後、項目数で除 した平均値を算出し【学校での問題行動尺度】 図 1 中学生の学校での生活態度に対する教師の認識
と【学校での活力低下尺度】とした。【学校で の問題行動尺度】の得点が高いほど、生徒はキ レやすく、イライラしていることを示しており、 【学校での活力低下尺度】の得点が高いほど元 気がないことを表している。【学校での問題行 動尺度】と【学校での活力低下尺度】の相関係 数を求めた結果、互いに有意な正の相関を示し た(r=0.74 p< 0.001)。さらに【学校での問 題行動尺度】の平均 1.62(SD 0.51)を用いて、 平均以下を【学校での問題行動】低得点群、平 均より大きいものを【学校での問題行動】高得 点群とし回答者を 2 分割した。【学校での活力 低下尺度】も同様に、平均 1.47(SD 0.47)を 用いて【学校での活力低下】低得点群と高得点 群に分割した。以後、これらを変数に加える。 3 .中学生の家庭での生活習慣に対する教師 の認識 「中学生の家庭での生活習慣に対する教師の 認識」についても、中学生の睡眠に関わる内容 を中心に、学校での生活態度と同様の手順で収 集・精選し、選択肢を 11 項目設定した。回答 は学校での生活態度と同様に「非常に多い」「や や多い」「ほとんどいない」「全くいない」の 4 選択肢に「分からない」を加えて 4 段階で求め た。図 2 は項目ごとの分布である。「非常に多い」 と「やや多い」をあわせて「多い」とし、項目 ごとにみると、教師の 7 割以上が「多い」と回 答した項目は「塾や習い事などで帰宅が遅い」 「夜更かしをしている」「睡眠が不足している」 「家事に協力をしていない」「夕食の時刻が遅い 又は不規則」と夜型の生活習慣に関する項目が 多い。「朝食を十分にとっていない」や「夜食 や間食が朝食に影響を与えている」など朝食に 関する項目を「多い」と回答した教師は 5 割前 後であり、夜型の生活習慣に関することの方が、 朝食に関することよりも割合が高い。中学生の 生活が夜型化し、睡眠不足の生徒が多いと教師 が認識している現状が確認できた。 「中学生の家庭での生活習慣に対する教師の 認識」11 項目についも主因子法・Promax 回転 による因子分析を行った(表 4)。固有値の変 化 は、5.34、1.12、0.84… で あ り、2 因 子 で 11 項目の全分散の 58.8%を説明している。第Ⅰ因 子(5 項目)は「夜更かしをしている」「睡眠 が不足している」など夜遅くまで起きているこ とに関わると思われる内容の項目が高い負荷量 を示していた。そこで「夜型生活」因子と命名 した。第Ⅱ因子(6 項目)は「朝食を十分にとっ ていない」「家族とのコミュニケーションが不 表 3 因子分析結果 <中学生の学校での生活態度に対する教師の認識> (Promax 回転後の因子パターン) 項目内容 Ⅰ Ⅱ 因子名 キレやすい 0.88 -0.08 イライラしている 0.83 0.00 だらだらしている 0.78 0.05 学校での 他人への配慮が欠けている 0.73 0.00 問題行動 集中することができない 0.67 0.07 遅刻をする 0.61 0.11 α=0.91 忘れ物が多い 0.49 0.25 体調不良を訴える 0.38 0.34 午前中から眠たそうにしている -0.15 1.00 ぼおっと疲れた表情をしている 0.05 0.71 学校での 午後にならないと元気がでない 0.13 0.60 活力低下 土日の疲れが月曜日に影響している 0.12 0.55 授業中・集会中に居眠りをしている 0.37 0.44 α=0.85
足している」など、家族や家庭生活の問題と思 われる内容の項目が高い負荷量を示していた。 そこで「家庭生活の乱れ」因子と命名した。 次に、この 2 つの因子ごとに項目の平均値を 算出し【夜型生活尺度】と【家庭生活の乱れ尺 度】とした。【夜型生活尺度】の得点が高いほど、 夜更かしや睡眠不足を示しており、【家庭生活 の乱れ尺度】の得点が高いほど、朝食を十分に とっていなかったり、家族とのコミュニケー ションが不足している。【夜型生活尺度】と【家 庭生活の乱れ尺度】との相関係数を求めた結果、 互いに有意な正の相関を示した(r=0.68 p< 0.001)。さらに【夜型生活尺度】(平均 1.96、 SD 0.49)と【家庭生活の乱れ尺度】(平均 1.75、 SD 0.44)についても、【学校での問題行動尺度】 や【学校での活力低下尺度】と同様に、平均以 下と平均より大きいものとに回答者を分割し、 【夜型生活】低得点群、【夜型生活】高得点群、【家 図 2 中学生の家庭での生活習慣に対する教師の認識 表 4 因子分析結果 <中学生の家庭での生活習慣に対する教師の認識> (Promax 回転後の因子パターン) 項目内容 Ⅰ Ⅱ 因子名 夜更かしをしている 0.91 -0.10 睡眠が不足している 0.88 -0.14 夜型生活 夕食の時刻が遅い又は不規則 0.56 0.30 塾や習い事などで帰宅が遅い 0.55 0.13 α=0.86 朝、登校ぎりぎりまで寝ている 0.51 0.26 朝食を十分にとっていない -0.15 0.79 家族とのコミュニケーションが不足している -0.07 0.79 家庭生活 規則正しい生活をしていない 0.23 0.54 の乱れ 家事に協力をしていない 0.09 0.53 身だしなみを整えないで登校する 0.12 0.47 α=0.81 夜食や間食が朝食に影響を与えている 0.24 0.45
庭生活の乱れ】低得点群、【家庭生活の乱れ】 高得点群とした。 4 .中学生の家庭での生活習慣が学校での生 活態度に及ぼす影響 家庭での生活習慣の【夜型生活尺度】と【家 庭生活の乱れ尺度】が、学校での生活態度の【学 校での問題行動尺度】と【学校での活力低下尺 度】に及ぼす影響を検討するために重回帰分析 を行った。重回帰分析に基づくパス図を図 3 に 示す。【夜型生活尺度】と【家庭生活の乱れ尺度】 から、【学校での問題行動尺度】と【学校での 活力低下尺度】に対する標準偏回帰係数はそれ ぞれ有意であり、中でも【夜型生活尺度】から 【学校での活力低下尺度】へ、【家庭生活の乱れ 尺度】から【学校での問題行動尺度】への影響 が強い(p< 0.001)。本結果から、中学生の学 校での生活態度には、家庭での生活習慣が影響 していると教師は認識しており、特に、夜遅く まで起きていることが生徒の活力を低下させる こと、朝食を十分にとっていない、家族とのコ ミュニケーションが不足しているなど家族や家 庭生活の問題が、生徒をキレやすく、イライラ させることに影響すると教師は捉えていた。 5 .教師からみた生徒の睡眠の妨げ要因 次に、生徒の睡眠の妨げになると思われる要 因を可能な限り集め、KJ 法を用いて分類・整 理し、最終的に 38 項目に絞り込んだ。これら の項目で該当すると思われるものすべてに○を つけてもらった(複数回答)。その結果、教師 の 4 割以上が回答した項目を多い順にあげると 「就寝前のゲーム・パソコン・携帯」(87.4%)、「塾 や習い事の時間帯が遅い」(78.5%)、「親の生活 が 夜 型 に な っ て い る 」(63.0 %)、「 就 寝 前 の TV・ビデオ(DVD)視聴」(59.6%)、「規則正 しい生活習慣が身に付いていない」(56.7%)、「起 床または就寝時刻が遅い」(49.3%)、「社会全体 が夜型になっている」(47.8%)、「帰宅または夕 食時刻が遅い」(45.9%)と、「生活行為」「生活 時間」「睡眠に対する親の配慮」「家庭生活」「社 会の変化」などである。 次に、項目を分類・整理するために上記の項 目から、回答率 10%以下の項目を除外し、30 項目について多重コレスポンデンス分析を行っ た。図 4 は、カテゴリ間の差や類似度、関係の 深さを把握するために、コレスポンデンス分析 によって得られた 2 つの次元における 30 項目 それぞれのカテゴリの重みをx軸(次元 1)、 y軸(次元 2)として表したものである。この 次元 1 と次元 2 の値を利用した散布図は、関連 の強いカテゴリは近くに、弱いカテゴリは遠く にプロットされ、あくまでカテゴリ間の相対的 な関係を示し、絶対的な量を表すものではない。 図 4 をみると、無回答は 30 項目すべてで、そ の重みは次元 1 のプラスの値に集まり、回答さ れた項目はすべて次元 1 のマイナスの値に集 まった。回答された項目注 2)の位置をみてみる 図 3 パス解析結果
と、「深夜放送:深夜放送」「本:就寝前の読書・ 漫画・雑誌」「趣味:就寝前の自分の時間・趣 味の時間」「夜更かし:夜更かしを楽しみたい 気持ち」と個人生活である就寝前の過ごし方に 関する項目は、次元 2 のプラス方向にプロット された。続いて「コンビニ:コンビニなど深夜 営業のお店が増えている」「夜型社会:社会全 体が夜型になっている」「親が夜型:親の生活 が夜型になっている」「塾:塾や習い事の時間 帯が遅い」「TV: 就寝前の TV・ビデオ(DVD) 視聴」など夜型に関わる項目がプロットされた が、夜型に関わる項目は、中学生自身の夜型に 関わる項目(「帰宅遅:帰宅または夕食の時間 が遅い」「塾」「勉強量:勉強(受験勉強)の量」 「勉強法:勉強の仕方」「携帯:就寝前のゲーム・ パソコン・携帯」「TV」「遊び少:体を使う屋 外での遊びが減少した」「夜食:間食または夜 食をとる」「起床遅:起床または就寝時刻が遅い」 「不規則:規則正しい生活習慣が身に付いてい ない」「取掛り遅:物事に取りかかる時間が遅 い」)、親に関する項目(「親が夜型」「親の関心: 子どもの睡眠に対する親の関心が低い」)、そし て夜型社会に関する項目(「夜型社会」「コンビ ニ」「夜の誘い:夜の誘い」)など、中学生自身、 親、地域社会についての事項がみられる。 次元 2 が 0.0 よりマイナス方向には、「疲労: 疲労が溜まっている」「悩み:悩みごとや気が かりなことがある」「けじめ:夜の挨拶、就寝 のけじめがなくなった」「ストレス:精神的ス トレス」「友人関係:友人関係がうまくいって いない」と疲労やストレスに関わる項目がプ ロットされ、続いて「親の期待:親の期待」「家 族関係:家族関係がうまくいっていない」「家 庭生活不満:家庭生活に対する不満」「家族会 話少:家族との会話が少ない」「団らん少:団 らんが少ない」と家族・家庭生活に関わる項目 がプロットされた。 6 .学校での生活態度および家庭での生活習 慣と睡眠の妨げ要因との関連 多重コレスポンデンス分析による次元 1 と次 元 2 の値からなる 30 項目の重みを【睡眠の妨 げ得点】とし、「中学生の学校での生活態度に 対する教師の認識」および「中学生の家庭での 生活習慣に関する教師の認識」との関連を検討 した。具体的には、「中学生の学校での生活態 図 4 教師からみた中学生の睡眠の妨げ要因
度に関する教師の認識」の因子【学校での問題 行動尺度】【学校での活力低下尺度】および「中 学生の家庭での生活習慣に関する教師の認識」 の因子【夜型生活尺度】【家庭生活の乱れ尺度】 のそれぞれの高得点群と低得点群別に、【睡眠 の妨げ得点】の平均値を算出し、次元 1、次元 2 にプロットした(図 5)。【学校での問題行動 尺度】【学校での活力低下尺度】【夜型生活尺度】 【家庭生活の乱れ尺度】の 4 つの尺度の低得点 群は次元 1 の値はプラス、次元 2 の値はマイナ スとなった。 【学校での問題行動尺度】高得点群は次元 1 の値はマイナス、次元 2 の値は 0 付近で、図 4 で同位置にある睡眠の妨げ要因は、「夜の誘い」 「コンビニ」「夜食」「取り掛り遅」「起床遅」「不 規則」と地域社会の夜型化と中学生自身の生活 リズムの乱れに関わる項目であり、【学校での 活力低下尺度】高得点群は次元 1 の値も次元 2 の値もマイナスとなり、図 4 で同位置にある睡 眠の妨げ要因は「疲労」「悩み」「けじめ」「ス トレス」「友人関係」など心身の状態に関わる 項目であった。 【夜型生活尺度】高得点群は、次元 1 の値は マイナス、次元 2 の値はプラスで、図 4 で同位 置にある睡眠の妨げ要因は「深夜放送」「本」「趣 味」「夜更かし」など個人生活である就寝前の 過ごし方に関わる項目であり、【家庭生活の乱 れ尺度】高得点群は次元 1 の値も次元 2 の値も マイナスとなり、図 4 で同位置にある睡眠の妨 げ要因は「親の期待」「家族関係」「家庭生活不 満」「家族会話少」「団らん少」と家族・家庭生 活に関わる項目であった。 以上、現代の中学生の睡眠に関する課題は、 中学生自身の心身の状態、生活時間の夜型化、 生活リズムの乱れ、夜更かしを容認する親子関 係、家族との会話が少ないこと、親の期待、家 庭生活に対する不満、社会の夜型化など多岐に わたると教師は認識していることを示した。 Ⅳ.まとめ 本研究は、生徒の学校生活を観察できる立場 にいる教師の視点で、生徒の学習態度と睡眠環 境との関係を把握し、さらに現代の睡眠環境を 作り出している生徒の生活の課題を顕在化する ことを目的とし、中学校教師を対象とした調査 を行った。その結果、 1 )午前中から眠たそうにしている中学生は多 く、学校での学習態度は望ましいとは言え ないと教師は認識していた。 2 )教師は中学生の学校での学習態度と夜更か しや睡眠不足との関係を強く捉えていた。 図 5 「学校での問題行動尺度」「学校での活力低下尺度」「夜型生活尺度」「家庭生活の乱れ尺度」の 高得点群・低得点群別睡眠の妨げ得点
3 )中学生の睡眠の妨げ要因として、「心身の 状態」「生活行為」「生活時間」「生活リズム」 「睡眠に対する親の配慮」「家族関係」「家 庭生活」「社会の変化」など教師は多岐に わたって認めており、現代の日本の中学生 の睡眠に関する課題が、中学生自身、家族・ 家庭生活、社会に起因すると教師は捉えて いた。 中学校教師が把握している中学生の生活は、 塾や習い事などで帰宅が遅く、夕食時刻は不規 則または遅い。それにも関わらず、就寝前にゲー ムをしたり、メールをしたり、TV やビデオ (DVD)をみたりして過ごしており、教師はこ のことを重視している。一方、親自身も夜型の 生活になる傾向があり、また、親と中学生との コミュニケーションは十分とは言えず、親は子 どもに期待をかけるが、子どもの夜更かしには 口出しをしない状況がみえてきた。 教師は、生徒の学校における学習態度には睡 眠環境のあり方が影響を与えていると捉えてお り、学習態度と睡眠環境を相関づけて認識して いることが明確となった。したがって、中学生 の学校での学習態度をより望ましいものにする ためには、睡眠環境の改善が必要であり、中学 生自身も睡眠環境について学習する必要がある と考える。本研究より、現代の中学生の睡眠環 境を作り出している生活の課題が顕れてきた が、生活の営みや家族関係、家庭生活時間の夜 型化や子どもの夜更かしを容認する親子関係、 夜型の社会など、まさに多角的視点から問題解 決行動の選択肢を学習に組みこむことが可能な のではないかと思われる注 3)。今回は、中学生 を観察する大人の立場である教師を対象とした 調査を行ったが、中学生を対象とした「生活と 睡眠」の調査により、中学生の睡眠環境を作り 出している生活の課題をより一層鮮明にする予 定である。 謝辞 今回の調査にご協力いただいた滋賀県中学校 の先生方に深く御礼申し上げます。 注 注1) 調査で性別のバランスを確保したのは、性別に よって生徒の行動の認識が異なると考えたため である。担当教科の差を検討した結果、教科間 の有意差は認められなかったので、全教科を対 象にしなかった事の妥当性は確保できている。 注2) 図 4 は、図の制約上、項目名を省略して表記し ている。文中初出は項目名を用いて、再出は省 略した名称を用いる。 注3) 学校教育においては、保健体育で睡眠に関する 学習が扱われ、睡眠の重要性を学ぶ。しかし、 実際の生活でその知識を生かし実践されている とは思えない。その理由の一つに、子どもの睡 眠を妨げ、生活リズムを乱す原因は、本人だけ で解決できる単純なものではなく、例えば、睡 眠習慣と生活の営みや家族関係、特に家庭生活 時間の夜型化や、子どもの夜更かしを容認する 親子関係、そして夜型社会など家庭や社会の問 題が複雑に作用している。保健体育科では家庭 生活まで視野にいれた学習が難しいと思われる。 一方、家庭科は「生活と睡眠」の学習を通して、 生徒にとって、今生活がどのようになっている のか、多角的視点から生活の現実を冷静にみつ め、何が問題かに気づき、その改善や解決の方 法を吟味し、実行する総合力としての問題解決 力の育成につなげることができるのではないか と考えている。 引用文献 1 ) 石原金由,福田一彦.子供の睡眠リズムとその 特徴-現代のリスク.日本睡眠学会第 26 回定期 学術集会抄録集,2001,p.62 2 ) 的場康子.小中学生の放課後生活-小・中学生 対象のアンケート調査結果を中心に- Life Design REPORT.2008,p.16-23 3 ) 荒川雅志,田中秀樹,白川秀一郎他.中学生の 睡眠・生活習慣と夜型化の影響-沖縄県の中学 生 3,754 名における実態調査結果-.学校保健研 究,43(5).2001.p.388-398 4 ) 福田一彦.学校教育と睡眠の問題.現代医療 35 (10),2003.p.2365-2370 5 ) 原田哲夫,竹内日登美.夜のコンビニ・携帯利用・ 深夜番組で子どもが寝不足?.小児歯科臨床 8 (2),2003.p.57-67 6 ) ベネッセコーポレーション.第 1 回子ども生活 実態基本調査報告書.2004 7 ) 大鳥徹子,石原金由.学校週 5 日制に基づいた 睡眠習慣と主観的疲労感.CCI 年報 12,1999, p.25-28
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