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室内環境

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Academic year: 2021

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原著論文

1.緒言 量子力学の創設期に活躍したハイゼンベルクは, 「殴られた跡ではないかと思われるほどに顔がふく れあがっていた」1)と述懐しているように,花粉症に 悩まされていたことは有名な話である。このように 花粉症症状による身体的・精神的な影響は多大なも ので,花粉シーズンにおける花粉症患者のQuality OfLife(QOL)は有意に低値を示す2)とされる。この 花粉症は世界的に問題となっており,欧州でのイネ 科花粉症,北米のブタクサ花粉症及び日本のスギ花 粉症が世界三大花粉症と言われる。国内に目を向け ると,推計花粉症患者数は2,200万人3)と言われてお り,年々その数は増加している。室内での花粉症対 策として,花粉を侵入させないことや,侵入花粉を

窓と換気扇を有する室内の空気清浄機花粉捕集に関する

シミュレーション研究

中川翔太郎1),橋本明憲2),髙橋俊樹1*) 1)群馬大学大学院理工学府電子情報部門 〒376-8515群馬県桐生市天神町1-5-1 2)三桜工業株式会社研究開発部 〒306-0041茨城県古河市鴻巣758

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ShotaroNAKAGAWA1),AkinoriHASHIMOTO2)andToshikiTAKAHASHI1*)

1)DivisionofElectronicsandInformatics,FacultyofScienceandTechnology,GunmaUniversity,1-5-1Tenjin-Cho,Kiryu376-8515,Japan 2)Research&DevelopmentDiv.,SanohIndustrialCo.,Ltd.,758Kounosu,Koga306-0041,Japan

Keywords:花粉除去(PollenRemoval),空気清浄機(Airpurifier),数値流体力学(Comput a-tionalFluidDynamics),換気扇(VentilationFan)

窓から室内に侵入したスギ花粉挙動を,数値流体力学と粒子軌道計算の連成シミュレーションにより解析 した。シミュレーションには群馬大学で開発した“数値流体力学及び浮遊粒子状物質挙動の特性解析ツール 群:CAMPAS”を用いた。本研究では,窓と換気扇を有する室内を想定し,大規模な換気時の室内花粉飛散 を定量的に示し,また弱換気時の空気清浄機導入による花粉捕集効果を明らかにすることを目的とした。窓 を花粉の侵入源とし,窓のある壁面に対して左側面壁奥上に換気扇がついているものとモデル化した。換気 回数8.3回/hの大規模換気時における花粉の室内侵入を調べるため,床面への落下率,換気扇からの排出率, または落下花粉を計算した。窓の対面壁近傍,換気扇の下などに多数の花粉が床面へ落下することがわかっ た。次に換気回数1回/hの弱換気時に空気清浄機を稼働した際の花粉捕集を調べた。空気清浄機の設置位置 は,右側面壁中央下部とした。捕集できる花粉数は落下花粉数の半分程度であることがわかった。また,空 気清浄機の生成気流により,窓から侵入した花粉を広く拡散させることも明らかになった。 要 旨

Themotionofpollengrainsinvadingthroughthewindowissimulatedbythecomputationalfluiddynamicsandpar -ticle-trackingcalculation.Here,thesimulationsoftwareCAMPAS,whichisdevelopedinGunmaUniversity,is employed.Theobjectivesofthepresentstudyaretoestimatequantitativelyindoordispersalofpollengrainsinthecase ofmassiveventilationandeffectivenessofairpurifierinstallationforpollenremovalduringweakventilation.Pollen grainsaresettobeinvadingintotheroomthroughthewindow,andtheroomhastheventilationfanontheleftside wallagainstthewindow.Wecalculatetheratiosofthenumberofthepollengrainsfallenonthefloor,andventedout fromtheventilationfantothetotalinvadingpollensthroughthewindow.Itisfoundthatasubstantialfractionofpollen grainsfallonthefloornearthewalloppositetothewindowandbelowtheventilationfanwhentheairchangerateper houris8.3.Wealsostudypollenremovalefficiencyofairpurifierinthecasethattheairchangerateperhouris1.0. Thenumberofremovedpollengrainsisfoundtobeabouthalfoftheoneoffallenpollengrains.Wealsofoundthat pollengrainsarewidelydistributedduetotheturbulentairflowbyairpurifier.

Abstract

受付:2015年3月16日(Received:16March2015) 受理:2015年11月27日(Accepted:27November2015)

(2)

速やかに除去することが挙げられる。室内への花粉 の侵入経路は,換気のために開口した窓から侵入す る直接侵入と,人や洗濯物に付着する間接侵入があ る。間接侵入では,衣類を叩くことで,衣類に付着 した屋外花粉の50%を除去することが可能である4) が,残りの約半数の花粉は衣類に付着したまま搬入 されてしまい,室内での花粉飛散源となり得る。室 内での被曝量は,屋外の1~2%であり,窓際はその 約2倍,開口部では室内中央の10~20倍高い5)と報告 されている。この侵入花粉が室内に残留すると,屋 外花粉飛散シーズンが終了しても花粉症症状を引き 起こす原因となる6)。よって,室内の花粉を効率的 に除去し続け,床などに残留させないことが,花粉 症患者のQOL維持には重要となる。しかし,換気 や人の出入りは必要であるため,室内への花粉侵入 を完全に防ぐことは困難である。 手軽に導入できる室内花粉除去装置としては空気 清浄機がある。空気清浄機は一般世帯の43.5%7) 普及しており,花粉に対する高い捕集性能が望まれ る。花粉粒子の終端速度は3.85mm/s8)であるので, 天井の高さを2.5mとすれば,夜間など人の動きが ない静かな空気中では10分程度で床に落下すること になる。床に落下した花粉は,歩行による空気の流 れで再飛散することもあるが,床面近傍の気流に乱 れが生じない限り,堆積し続ける。したがって,花 粉が屋外から侵入して10分程度の間に,空気清浄機 のフィルタまで花粉を運ぶことのできる気流を生成 できるかが花粉捕集の鍵と言える。 ところが,空気清浄機の生成する室内乱流場にお ける花粉挙動を,3次元空間でリアルタイムに観測 することは難しい。そこで橋本等は,前面吸気・上 面排気型の空気清浄機をモデル化し,15畳程度の空 間の中央に空気清浄機を設置した場合の花粉捕集性 能を評価し,本誌上にて報告9)した。この研究によ り,空気清浄機の吸排気構造と花粉捕集率の関係, 空気清浄機の配置ごとの落下花粉分布予測,などが 可能になる。さらには,現在,花粉捕集に関する規 格が存在しない空気清浄機に対して花粉捕集性能の 定量指標を検討する際に有用である。 先述の報告9)は,閉じた室内空間での解析に限ら れた。本報では,窓と換気扇のある室内での花粉挙 動のシミュレーション結果について報告する。花粉 シーズンに,窓を開放すると室内へ大量の花粉が入 り込む。本報では,換気回数が8回/h程度の空気の 入れ換えによる,花粉の室内侵入をシミュレーショ ンで明らかにすることが目的である。排気にファン を用い窓は開放されている第三種換気を想定するが, 換気経路と落下花粉分布の関係を明らかにできる。 また,建築基準法令で定める換気回数0.5回/h以上 の換気設備を持つ室内を想定し,換気回数1回/hで 換気扇を使用した際の花粉挙動についても報告する。 2.手法 本報での解析には,数値流体力学及び浮遊粒子状 物質挙動の特性解析ツール群であるCFDandAer o-solMotionPropertyAnalysesSuite(CAMPAS)9)を用い る。 花粉挙動解析にはLagrangianParticleTracking (LPT)を用い,室内乱流解析にはLargeEddySimul a-tion(LES)を採用する。 花粉の運動を表す支配方程式はニュートンの運動 方程式であり,以下で示される。 mdvi dt・ ・mg・i3・FDi (1) 右辺第一項は重力,第二項は粘性抵抗力であり, mは花粉の質量,gは重力加速度, ・ijはKronecker のデルタである。花粉粒子の密度は0.14[g/cm3]8) あり,空気密度よりも2桁オーダが大きいため,浮 力を無視する。 粘性抵抗力FDは,Allery10),Chow11)を参考に,以 下のベクトル式とした。 FDi・ ・d 2 p 8・CD・vi・ui・・vi・ui・ (2) ここで,dpは花粉の直径,・は流体の密度,uiは 花粉位置での流速,CDは抗力係数である。粘性抵 抗力は,相対速度の逆方向に働く力であり,投影面 積,抗力係数,相対速度の2乗に比例する。抗力係 数は,粒径を基準にしたレイノルズ数に依存する近 似式12)を用いた。 LESの計算モデルについては本誌上にて報告し た9)ので, そちらを参照されたい。 ポイントは SubGrid-Scale(SGS)モデルにCoherentStructureModel (CSM)13,14)を採用したことである。

非定常乱流場内での花粉挙動解析には,LPTと LESの連成計算(LPT-LES)が必要になる。LPT-LES

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において,LESの時間刻みは1msであり,LPTにお ける時間積分は0.1msの間隔で行う。したがって, 粒子追跡10回につき,1回だけ場を更新させること になる。よって,本研究では1000Hzより低周波の グリッドスケール乱流変動を取り扱っている。 LESにおいて,圧力に関するPoisson方程式の収束 に多大な時間を要するため,SymmetricSOR法では なくRed-BlackSOR法を採用した。この工夫により LPT-LESは,グラフィックボードを用いた計算,い わゆるGeneralPurposecomputingonGPU(GPGPU)で 約18倍まで高速化することに成功している15) 本報でのシミュレーションモデルをFig.1に示す。 1辺5m,高さ2.5mの15畳程度の部屋空間に,引き 違いの腰高窓及び換気扇が存在すると仮定した。こ の腰高窓は,高さ110cm,幅70cmの窓が床面から 90cmの高さに存在し,室内から見て左側を全開に しているものとする。壁面の隅に換気扇が存在する と仮定し,25cm径ファンの換気扇を520m3/hで動 作させ,第三種換気を行う。これは,換気回数8.3 回/hに相当し,大々的に空気の入れ換えが行われる 状態である。このような換気を行った場合に,花粉 が部屋にどの程度侵入し飛散するかを明らかにする。 次に,換気回数1回/hでの換気と同時に前面吸気・ 上面排気型の空気清浄機を1台使用する状況下での 花粉挙動を調べる。換気回数1回/hとは,建築基準 法令で居室に設置が義務づけられている換気回数 0.5回/h以上の換気量を持つ換気設備を,この基準 の2倍の流量で運転している時の換気回数である。 ここでは,例えば洗濯物を干すなど,5分間だけ窓 を開放する状態を想定する。5分以降は窓と換気扇 を停止し,窓を開放していた5分間に室内に侵入し た花粉挙動を解析する。この際,花粉捕集のため空 気清浄機も動作させる。この時に使用する空気清浄 機の流量は,21畳用程度である469m3/hとし,寸法 はW42×H62×D21cmである。この空気清浄機の 配置は,Fig.1に示す通り,部屋の四方の壁にそれ ぞれ1箇所配置する。本報では窓際に設置する場合 をWindow side,窓対面に設置する場合をOpposite side, 換気扇のある窓から左側の壁面近傍をLeft side, そしてその対面で窓から右側の壁面近傍を Rightsideの設置と呼称する。この空気清浄機の吸 気面には,多くの空気清浄機に採用されているHigh EfficiencyParticulateAirFilter(HEPAフィルタ)が搭 載されているものとする。HEPAフィルタは,粒径 が0.3・mの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率 を持つため,粒径30・mの花粉を100%捕集できる と本報では仮定する。本研究における,窓,空気清 浄機,及び換気扇に関する計算条件をTable1にま とめる。これらは,LES乱流計算の境界条件として 反映される。 シミュレーションモデルのセル分割数は,X軸方 向とY軸方向に96分割,Z軸方向に48分割する。前 述の通り,シミュレーションモデルは1辺が5m, 高さが2.5mであるので,シミュレーション中にお ける格子1つあたりのサイズは5.2cmの立方体であ る。 花粉は,窓から引き込む外気とともに室内に侵入 するものとする。よって,花粉の初期配置は,窓の 開口部の正面とした。本研究では,初期配置の方法 は次の二通りとした。1)換気回数8.3回/hの時は,幅 70cm,高さ110cmの窓の正面に格子幅である5.2 cmの間隔で花粉を一様配置し,それをY方向(窓の 法線方向)に65cmの距離まで5.2cm間隔で配置す る。2)換気回数1回/hの時は,幅70cm,高さ110cm の窓の正面に一様乱数を用いて100個/sをランダム に配置する。毎秒100個の花粉は現実の観測に基づ いて決めた値ではなく,統計精度を確保するため本 研究の計算環境下で可能な限り多くの粒子数に決め た結果である。また,一度に花粉を曝露するのでは なく,毎秒100個ずつ曝露しているのは,窓を開口 直後から室内気流分布が時間変化するためである。 また本報では,落下した花粉の再飛散は考慮して いない。通常は,人の歩行などで再飛散が起こるこ ともあり得るが,ここでは人の動きは想定していな いため,再飛散をモデル化していない。さらに,壁 面の細かい凹凸や壁面と花粉間の微弱な静電気力に よって,花粉が壁面に付着することもあり得るが, ここでは天井と壁面については反射条件を採用して いる。壁面近傍での流速は小さいため,花粉は壁面 に衝突すると,壁に沿って重力落下するように運動 する。今後,石松子などの疑似花粉を用いた壁付着 の実験を行い,その結果に基づいた数値計算モデル 化を行う予定である。 予備的なLESの結果,換気回数8.3回/hの時でも, 換気扇及び空気清浄機の運転開始後150sまでの間 に準定常状態に達することがわかった。つまり,流 れ場の室内全域にわたる構造は,乱流変動分を除い てほぼ一定となる。 1)では準定常状態に達した

(4)

150sから1,400s間,花粉挙動の解析を行う。すな わち, 150 sまではLESのみを行い, 150 sから 1,550sまでは,LPT-LESを行う。2)では窓と換気扇 を開放し空気清浄機を稼働させた瞬間を0sとし, そこから300sまでその状態を保持したまま乱流解 析と花粉挙動解析の連成シミュレーションを行う。 その後,300sから1,200sまでは換気扇と窓からの 流入出を停止し,空気清浄機のみ稼働させた状態で 連成シミュレーションを行う。なお,本報での花粉 挙動に関する主要パラメータを,Table2に示す。 3.解析結果及び考察 本報では,Fig.1のモデルに示す室内を対象に解 析を行う。まずは換気回数8回/hを超える大規模換 気時で空気清浄機を使用しない条件での解析とその 結果について説明する。次に,換気回数1回/hの換 気時に,空気清浄機を併用する条件での解析とその 結果の説明を行う。 3.1 大規模換気時の室内気流と花粉挙動 換気扇運転開始後,150sまでの間に流れ場は準 定常状態(モデル空間における流れ場の大域的な構 造が落ち着いた状態)に達する。換気扇運転開始か ら150sまでの間の平均流れ場を可視化したのが, Fig.2である。各位置でのベクトルは,流速値の常 用対数の値に応じて,ベクトル長及びグレースケー ル色が変化するように描かれている。流速値が小さ いほど黒く短く,大きいほど白く長くなる。上図は YZ平面で部屋中央付近(X=2.85[m])のベクトルプロッ トであり,その図内の右中央部に窓が存在する。こ の窓から室内に外気が供給される。窓から室内奥ま で,束となって流入するその気流を,本報では「流 入主流」と呼ぶこととする。平均流れ場の流入主流 は,室内中央部付近まで0.17m/sを保ちながら部屋 中央方向に流れている。部屋中央付近から徐々に主 流周辺部から剥離が発生し,流入主流の速度が遅く なっており,窓からの距離が3.2~5.0mの領域,す なわち対面壁側1.8 m幅の領域では, 流入主流は 0.09m/sにまで弱くなっている。下図は,換気扇の Fig.1 Thesimulationmodelof3Dschematicview.The

ventilationfanisinstalledintheroom,andthesli d-ingwindowsuppliesoutdoorairtotheroom.The testedairpurifierisplacedat4differentpositions: Windowside,Oppositeside,Leftside,andRight side.

Table1 Parameteroftheflowvolume,area,andflowvelocity.

Flowvolume

[m3/h] Ar[mea2] Flowvel[m/s]ocity

Airpurifier(Exhaust) 469 8.65×10-2 1.5

Airpurifier(Intake) 469 26.0×10-2 0.50

Ventfan 520 6.25×10-2 2.3

Window 520 77.0×10-2 0.19

Table2 Simulationparameters.

Parameters Value Pollen8) Mass[kg] 2.01×10-12

Diameter[m] 3.0×10-5

Dynamicviscosity[m2/s] 1.54×10-5

Particletrackingsimulationtime[s] 1,400

Fig.2 Thevectorplotsofthetime-averagedairflowover 150secondsafterstartinguptheventilationfanin theabsenceoftheairpurifier.Theupperfigureis projectionontotheYZplane(x=2.85m:centerof theroom),andthelowerfigureisXZplane(y=4.62 m:centeroftheventilationfan).Thevectorlength isproportionaltothecommonlogarithmoft hemag-nitudeoftheflowvelocity.

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中央位置(Y=4.62[m])でのXZ平面であり,図の左上 部に換気扇が存在する。その換気扇を,室内空気が 非常に乱れながら排出されており,これを本報では 排出流と呼ぶ。中央より左の領域では,0.18m/s程 度の流入主流と同じオーダの気流を広範囲から集め, 換気扇から2.3m/sで排出される。しかしながら, 換気扇の流量よりも多くの気流を集めているため, 換気扇から排出できずに換気扇上部の壁面に衝突す る気流がある。その残留気流は0.89m/sで壁面に沿っ て上昇し,天井に衝突する。その後,天井に沿って 流れていくが,天井面中央での流速は0.17m/sと20 %にまで減衰し,換気扇対面の壁面に到達する時に は0.13m/sになる。これは,換気扇中央位置直上の 天井から,気流は様々な方向に広がりながら天井に 沿って流れるためである。 上述の条件,つまり空気清浄機を設置せずに排気 用の換気扇のみを使用し,窓から花粉が流入する条 件で,LPT-LESにより花粉挙動解析を行った。換気 扇からの排出花粉及び床面への落下率の時間推移を Fig.3に示す。この排出率及び落下率は,流入花粉 総数に対する,各々の割合を示す。排出花粉曲線の 立ち上がり時間は36sであり,落下花粉は39sであ る。これは,流入主流により,窓から対面壁まで5 m花粉が運ばれるのに30sかかり,そこから換気扇 へ到達するのが36s,対面壁衝突後の下降流により 床面に落下するのが39sだからである。対面壁にて 花粉の流跡線は,換気扇のある左に向かうか,右に 向かうかのどちらかになる。その右に別れた花粉は, Fig.1で空気清浄機が示してある側の(または換気 扇のない側の)壁面に沿って移動し,80sにて窓側 壁面に到達する。(ただし,本計算では,空気清浄 機は置いていないことに注意して頂きたい。)この挙 動は概ね流線に従っているため,換気扇の向かいの 壁面において,流入主流とは逆方向の流れが形成さ れていることを示している。この壁面に沿う流れか ら脱落した花粉が床面に落下するため,120sまで は落下花粉曲線の傾きが大きい。120sから傾きが 小さくなるのは,花粉がその逆方向流れから上昇流 に乗り,流入主流へ再度乗り移るからである。 1,400s計算後の,床面に落下した花粉のXY分布 図をFig.4に示す。乱流計算の格子サイズと同じ5.2 cm四方で区切られた床面の領域に落下した花粉を カウントしている。濃いほど花粉数が多く,淡くな るほど少なくなる。プロットエリア内の,対面壁中 央から右壁面中央にかけての領域に,多く花粉が落 下している。これは,対面壁到達後の花粉が,主流 と逆向きの右壁面に沿った弱い流れから脱落した花 粉が落下しているためである。プロットエリア左上 部に多いのは,換気扇に吸い寄せられた花粉が,そ の周辺の壁面に衝突し,床まで自由落下したためで ある。プロットエリア右上部,右下部(窓右下),及 び左下部の壁面に花粉が密集しているのが分かる。 これは,室内で循環流を形成するために壁近傍で気 流が方向を変える際,花粉は慣性力を持つために追 従しきれずに壁面に衝突するからである。壁面に衝 突し床に落下した花粉(壁からの垂直距離5.2cm以 内と定義)は,落下花粉全体の28.9%を占める。し かしながら,壁面隣接セルと定義した領域の面積は 全体の約4%に過ぎないため,壁近傍に落下する花 粉の割合が多いことがわかる。

Fig.3 Thetimeevolutionoftheratiosofthenumberoffallen pollengrains(thesolidline)andventedoutpollens throughtheventilationfan(thedashedline)tothet o-talnumberofinvadingpollensthroughthewindow.

Fig.4 Thedistributionofthefallenpollengrainsprojected ontheXYplaneat1,400secondsaftercalculating LPT-LESintheabsenceoftheairpurifier.

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まとめると,大規模換気時は,窓と換気扇を結ぶ 換気経路に沿って花粉が室内に大量に室内に入り込 む。換気経路となる主流以外にも,吸気となる窓へ 戻る流れも形成され,花粉は窓の対面壁付近にでき る澱み点などに多く落下し堆積することがわかった。 3.2 弱換気時の室内気流と花粉挙動 ここでは,5分間窓を開放し,換気扇で換気回数1 回/hの第三種換気を行い,5分経過後に窓と換気扇 の使用を停止する状況を想定した解析結果を説明す る。空気清浄機は,Fig.1に示すように,部屋の四 方いずれかの壁中央の床面1箇所に設置する。例え ば洗濯物を干すなどで,窓を5分間開放することを 余儀なくされているが,侵入する花粉を捕集する目 的でこの空気清浄機を稼働させている,といった状 況が考えられる。そのような場合,洗濯物を干し終 わるなど窓を開放する必要がなくなれば窓を閉める ことが想定されるが,窓を閉めた後も室内に侵入し た花粉は残留し続けるため,空気清浄機を継続して 使用すると考えられる。 室内侵入花粉の空気清浄機による捕集数,床への 落下数,換気扇からの排出数の時間変化をFigs.5 ~7に示す。空気清浄機による捕集数の時間変化を Fig.5に示す。捕集数は,Oppositeside,Rightside, Windowside,Leftsideの順で多いことがわかる。ま た,OppositesideとLeftsideでは捕集数に2,000個ほ ど差がある。ただし,2,000個という数値について は,毎秒100個が室内に流入するというモデルに依 存しており,現実的な意味を持たない。空気清浄機 の配置による定量的議論は,後でまとめたい。最も 曲 線 の 立 ち 上 が り が 早 い モ デ ル は Rightsideと Windowsideである。4つのモデルの中で,Window sideは窓の直下に空気清浄機があるため,花粉出現 位置との距離が最も近い。それに次いで,Rightside が近くなる。そのため,この2つのモデルではその 他のモデルと比較して空気清浄機と花粉発生源の位 置が近いため,早い時間から捕集することができる と考えられる。床への落下数の時間変化をFig.6に 示す。落下数は,Windowside,Leftside,Rightside, Oppositesideの順で多いことがわかる。Windowside とOppositesideで比較すると,Windowsideでは2,500 個ほど落下花粉が多いことがわかる。落下花粉曲線 の立ち上がりはOppositesideで最も遅かったが,こ の理由については後述する。換気扇による排出数を

Fig.7に示す。排出花粉は,Leftside,Oppositeside, Rightside,Windowsideの順で多いことがわかる。 LeftsideとOppositesideではその他2つのモデルと比 較して排出数の差が大きいが,空気清浄機と換気扇 の配置の関係上,LeftsideとOppositesideのモデル は換気扇の周囲に花粉が挙動しやすいため,排出数 が多くなる。

Fig.5 Thetimeevolutionofthecountofthenumberofr e-movedpollengrains.

Fig.6 Thetimeevolutionofthecountofthenumberof fallenpollengrains.

Fig.7 Thetimeevolutionofthecountofthenumberof ventedoutpollengrains.

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各モデルにおける落下花粉の分布図をFig.8に示 す。すべてのモデルに共通していることとして,空 気清浄機の側面や背後の壁の直下に落下花粉が多数 存在していることがわかる。空気清浄機の側面に落 下花粉が多い理由は,吸気の流れとともに運ばれた 花粉が,吸気口近傍で気流から逸脱してしまい,空 気清浄機側面の澱み点で落下したものと考えられる。 空気清浄機の背後の壁直下に落下花粉が多い理由は, 空気清浄機の排気主流によるものであると考えられ る。排気主流は天井に到達したのち天井に沿って放 射状に広がる。そのため,空気清浄機の後方に向か う気流も存在することになる。そして,空気清浄機 とその後方の壁は距離が非常に近いため流速が強く, その付近に運ばれた花粉は壁に沿って流れる気流に 追従できずに壁に衝突しやすくなると考えられる。 また,モデルごとに落下花粉分布に特徴が見られる。 RightsideとLeftsideでは窓の前方の床付近に落下花 粉が多数存在しており,Windowsideでは空気清浄 機の右側方向に落下花粉が集中している。Opposite sideでは窓の前方の床には落下花粉が少なく,それ 以外の箇所に全体的に散らばっていることがわかる。

空気清浄機の4つの配置モデルについて,2次元室 内平均流速分布を以下に示す。

RightsideおよびLeftsideのXZ平面(Y=0.25[m])の 気流分布がFig.9である。気流分布の図中の太めの 白い矢印で示す流れに着目すると,Rightsideでは 右上の天井から左下の床へ,Leftsideでは左上の天

井から右下の床へ向かって気流が生成されているこ とがわかる。この気流の流速は,Rightsideで約0.22 m/s,Leftsideで約0.24m/sである。また,図中央付 近の長方形は窓を示しており,この枠内から花粉が 室内へ侵入する。窓の枠内の気流分布は床方向へと 流れており,窓から侵入した花粉は窓から見て下方 向へ流れやすいことが予想できる。また,下方向へ 流れていくと,前述の天井から床へ向かって流れる 気流の影響で床方向へ運ばれやすくなると予想でき る。このような気流の影響により,RightsideとLeft sideではFig.8の落下花粉分布に示すように窓前方 の床に花粉が落下しやすいと考えられる。 Window sideのXZ平面(Y=0.05[m])の気流分布が Fig.10である。空気清浄機の排気主流は,天井に 到達した後左右に分かれ,空気清浄機の右方向では 白い矢印で示すような流れが生成されている。その ため,窓から侵入した花粉の大半はそのまま空気清 浄機の排気主流に乗り,右方向に向かって挙動しや すいことがわかる。その後,右側の壁付近まで到達 した花粉は壁に沿って下方に流れていく。その結果, Window sideではFig.8の落下花粉分布に示すよう に,空気清浄機の右方向に花粉が落下しやすいと考 えられる。

Fig.8 Fallenpollendistributionofeachmodel.Theupper leftfigureisRightsidemodel,upperrightisLeft sidemodel,lowerleftisWindowsidemodeland lowerrightisOppositesidemodel.

Fig.9 Thevectorplotsofthemeanairflowafterstartingup boththeventilationfanandtheairpurifier.Thefi g-ureisprojectionontotheXZplane(y=0.25m).The upperfigureisRightsidemodel,thelowerfigureis Leftsidemodel.

(8)

OppositesideのYZ平面(X=2.85[m])の気流分布が Fig.11である。図に示すように,部屋の右中央部 に窓がある。窓前方の気流分布を見ると,矢印で示 すように床付近では右上方向に,窓正面付近では上 方向に,窓の上部付近では左上方向に流れる気流が 確認できた。花粉は窓がある位置から室内に侵入し てくるため,侵入してきた花粉は上方向に向かう気 流の流れに乗り室内に散らばっていく。そのため, 花粉が室内に侵入した時点では花粉が室内を舞いや すい状況となっており,結果的にFig.6の落下花粉 分布に示したように落下花粉曲線の立ち上がりが最 も遅いと考えられる。その後,空気清浄機付近まで 花粉が運ばれ,吸引または排気主流に乗って室内を 循環していく。このような気流の影響により,Op-positesideではFig.8の落下花粉分布に示すように 窓前方付近で落下花粉が少なく,それ以外の領域に 花粉が落下すると考えられる。 最後に,空気清浄機の設置による花粉捕集の効果 について,定量的に比較したい。ここでは,1,200s 経過後の空気清浄機による捕集花粉数と落下花粉数 を空気清浄機の配置で比較する。4つの配置での平 均値を計算し,各配置の偏差を平均値で除して百分 率で表したのがFig.12である。縦軸が偏差で,0% が平均を表す。花粉をより多く捕集するためには, 窓の対面の壁近傍設置(Oppositeside)で平均より約 11%の向上が見られる。また,このときは落下花粉 を平均よりも約7%程度抑制することができる。一 方で,窓直下に設置すると,排気主流によって花粉 を飛散させるため,花粉捕集は平均よりも約8%低 下し,落下花粉を6.5%程度増加させることが示さ れた。 非定常乱流場における微粒子挙動には,統計性が 伴うため,本報における花粉暴露モデルの初期配置 のわずかなずれで誤差を生じることになる。しかし, 空気清浄機の配置によって平均流れ場が異なり,空 気清浄機による花粉捕集や床面への落下に傾向が見 られるのも事実である。本報の結果の意義はそこに ある。ただし,一般家庭では家具の配置には多くの 自由度が存在し,家具の配置によって室内気流分布 Fig.10 Thevectorplotsofthemeanairflowafterstarting

upboththeventilationfanandtheairpurifierat thewindowside.Thefigureisprojectionontothe XZplane(y=0.05m).

Fig.11 Thevectorplotsofthemeanairflowafterstarting upboththeventilationfanandtheairpurifierat theoppositeside.Thefigureisprojectionontothe YZplane(x=2.85m).

Fig.12 Deviationofthecountof(top)removedand(bot -tom)fallenpollengrainsamongfourdifferent positionsofairpurifier.

(9)

も変化する。本報で示された空気清浄機配置による 差異は,家具の影響によらない普遍的事実とはなり 得ないが,例えば窓直下に上面排気の空気清浄機を 設置すると花粉飛散を促進する,という定性的な知 見は有用であると考える。 4.まとめ 窓と換気扇が存在する部屋をモデル化し,換気回 数8.3回/hの大規模換気時における花粉の屋外排出 率ならびに床への落下率を,室内気流及び花粉挙動 シミュレーションで調べた。大規模換気時は,窓と 換気扇を結ぶ換気経路に沿って花粉が室内に大量に 室内に入り込み,本研究のモデルでは,約7割が室 内に落下・堆積することとなった。残りの3割弱の 花粉は,換気経路に沿って運ばれ,換気扇を通って 排気される結果となった。換気経路となる主流の一 部は換気扇から排出されず壁に沿って窓へ引き返す 流れも形成される。このため,花粉は窓の対面壁付 近にできる流速の小さい澱み点で多く落下し堆積す ることがわかった。 また,建築基準法令で定める換気回数0.5回/h以 上の換気設備を持つ室内を想定し,換気回数1回/h で換気扇を使用すると同時に空気清浄機を稼働する ことで侵入花粉の除去を試みたケースについて解析 した。換気による室内気流のみでは,窓から室内に 向かう空気の流れは層流となり,花粉は窓直下に重 力落下する。しかし,空気清浄機を同時に稼働する ことによって,室内に花粉を引き込む乱流場が形成 される。このため,室内の床面に広く花粉が落下す ることが明らかになった。本研究では,空気清浄機 をOppositesideに配置したモデルで捕集花粉数が最 も多く,落下花粉数が最も少ないという結果が得ら れた。一方,Rightside,Leftside,Window sideに 空気清浄機を配置した場合,花粉の室内への侵入箇 所と空気清浄機の配置の関係上,花粉が落下しやす い傾向にあることがわかった。また,空気清浄機の モデルによらず空気清浄機の側面付近や背後の壁直 下の床では落下花粉が多く存在しているため,この 付近を積極的に掃除し,落下花粉を取り去ることが 必要となることが明らかになった。 引用文献 1)W.ハイゼンベルク,山崎和夫訳:部分と全体- 私の生涯の偉大な出会いと対話,みすず書房 (1974). 2)藤井つかさ,萩野敏,有本啓恵,入船盛弘,岩 田伸子,大川内一郎,菊守寛,瀬尾津,竹田真 理子,玉城晶子,馬場謙司,野瀬道宏:花粉大 量飛散ピーク時における花粉症患者のQOL: SF-8を用いて, JapaneseJournalofAllergology 55(10),288-1294(2006). 3)シード・プランニング株式会社:2005年版アレ ルギー性鼻炎(花粉症)患者数の動向. 4)清澤裕美,吉澤晋:住宅などへの花粉搬入量, 日本建築学会計画系論文集 558,37-42(2002). 5)清澤裕美,吉澤晋:住宅等における花粉の侵入 と被曝量,日本建築学会環境系論文集 548, 63-68(2001). 6)高橋裕一,宮沢博,阪口雅弘,井上栄,片桐進, 名古屋隆生,渡辺雅尚,谷口美文,栗本雅司, 安枝浩:室内塵中のCryjI量と空中スギ花粉数 との関係,JapaneseJournalofAllergology43(2), 97-100(1994). 7)内閣府経済社会総合研究所景気統計部:消費動 向調査 平成25年3月実施調査結果. 8)大橋えり,大岡龍三:スギ花粉による室内空気 汚染(2)―スギ花粉粒子の粒径・重量の実測と 空気力学特性について―,日本建築学会大会学 術講演梗概集 D-2環境工学II2001,939-940 (2001). 9)橋本明憲,髙橋俊樹,松本健作,鵜崎賢一:空 気清浄機の生成する室内気流と花粉挙動のシミュ レーション,室内環境 15(2),147-161(2012). 10)AlleryC.,B・gheinC.,HamdouniA.:Applying properorthogonaldecompositiontothecomput a-tionofparticledispersioninatwo-dimensional ventilated cavity,Communicationsin Nonlinear Scienceand NumericalSimulation 10,907-920 (2005).

11)ChowW.K.,YinR.:Anewmodelonsimulating smoketransportwithcomputationalfluiddynamics, BuildingandEnvironment39,611-620(2004). 12)HindsW.C.:AerosolsTechnology:Properti

es,Be-havior,andMeasurementofAirborneParticles,2nd Ed.,JohnWiley&SonsInc.,(1999).

13)KobayashiH.:Thesubgrid-scalemodelsbasedon coherentstructuresforrotatinghomogeneoustur bu-lenceandturbulentchannelflow,PHYSICSOF

(10)

FLUIDS,17,045104(2005).

14)KobayashiH.,HamF.,WuX.:Applicationofal o-calSGS modelbasedoncoherentstructuresto complexgeometries,HEATAND FLUID FLOW, 29,640-653(2008).

15)橋本明憲,中川翔太郎,髙橋俊樹:GPGPUに よる室内乱流および花粉挙動解析の高速化,第 4回電気学会東京支部群馬・栃木支所合同研究 発表会資料,資料番号ETG-14-88,282(2014).

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参照

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