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尿中微量アルブミン簡易測定法(ED002)の検討

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原 著 〔東女医大誌 第59巻 第2号頁 91∼95 平成元年2月〕

尿中微量アルブミン簡易測定法(EDOO2)の検討

東京女子医科大学 第三内科学教室 オダギリレイコ ァベ ハナエ タカハシチエコ

小田桐玲子・阿部 英恵・高橋千恵子

カワハラ レイコ ヒラタ ユキマサ

河原 玲子・平田 幸正

(受付 昭和63年9月13日)

AStudy of Urinary M量croalbumin by Simple Methods(EDOO2 Test) Reiko ODAGIRI, Hanae ABE, Chieko TAKAHASm, Reiko KAWAHARA and Yukimasa HIRATA

Department of Medicine III, Tokyo Women’s Medical College

All diabetics should be screened to identify patients at risk of developing clinical nephropathy. EDOO2 test is a rapid,10w priced, two minutes test easily performed in the clinic, for the detection of microalbuminuria.

The priniciple used is that of Latex agglutination inhibition. A urine sample is mixed on a test card with a solution containing human antibodies to albumin. If albumin is present in the urine, it will react with the antibodies in solution, forming an antigen−antibody complex.

We studied fresh, first morning urine sample from 203 diabetic patients.

Urinary albumin concentration was measured in all samples by Radioimmunoassay(RIA). Thirty one cases with albumin concentration>29 mg/1 read positive(i.e. agglutination was

inhibited)with the EDOO2 test. In these, albumin concentration ranged between 29∼120 mg/1. The remaining 172 cases, with albumin concentration ranging between O.5 and 28 mg/1 read negative. A strong correlation exists between microalbuminuria at the EDOO2 test and RIA(97.2%).

There was significantly higher incidence of hypertension, severe retinopathy and longer duration in relation to urinary albumin among patients with positive than negative at the EDOO2 test. These results show that EDOO2 test may prove useful in the outpatients setting.

緒 言 尿中アルブミンの微量測定は,糖尿病性腎症の 早期モニターとして有用視されている. 近年Keenら1)により開発された,ラジオアイソ トープを用いた尿中微量アルブミンの測定は通常 の試験紙法により,尿蛋白陰性である糖尿病患者 (IDDM)の尿中アルブミンは健常者に比較して, 有意に高値であり,このアルブミン排泄量の増加 しているものでは,糖尿病性腎症へ移行する頻度 が高く,生命予後の判定にも用いられている2)3). 測定方法はRIA法・免疫比濁法(TIA)は非常に 高感度で2.5μg/1となっているものが使用されて いる.これらの方法は,正確な値が得られるもの の,簡便迅速という点には難がある.また長期外 来で経過観察するに当り,より簡単,安価,多数 の検体の処理が可能であり,正確な方法が求めら れる. 今回,私共は,簡易尿中微量アルブミン測定キッ トEDOO2(エーザイ)の使用機会を得たので,そ の精度をRIA法の結果と比較し,その有用性なら びに,臨床像との対比を行った.

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対象と方法 1.対象 糖尿病外来を受診し,糖負荷試験前と負荷後2 時間に採尿した検体につき,試験紙法自動読みと り器(Ames, Clinitek 200:アルブミン濃度5∼20 mg/d1)により,尿蛋白陰性と判定されたインスリ ン非依存性糖尿病患者203例の尿アルブミンを本 法とRIA法により測定した.また同時に採血し, 血糖(glucose−oxidase法),ヘモグロビンAlc (HbA、c:HPLC法)を測定した. 対照は,肝・腎疾患,糖尿病,高血圧のない健 常者20例(平均年齢30.5±2,4歳)である. 2.EDOO2の測定原理 ラテックス凝集阻止反応を用いている.アルブ ミンでcoatingしたポリスチレン粒子(ラテック ス粒子),持異抗体として,抗ヒトアルブミン山羊 抗体を用い,抗原(尿)と反応させる.尿にアル ブミンが多く存在する場合は,特異抗体と大部分 が反応し,抗原・抗体complexを形成し,ラテッ クス粒子とは反応せず,凝集がおこらない.尿中 アルブミン濃度が30mg/1以上では凝集しないよ うに,すなわち陽性となるように条件設定されて いる.一方,尿中アルブミンが全く存在しないか, ごく微量の時には,特異抗体の大部分がラテック ス粒子上で結合し凝集がおこり,陰性と判定する. ラテヅクス粒子に抗体がcoatingされているため にプロゾーン現象がおこらない(図1). 3,操作方法(図1) 尿サンプルをキット内にセットされているスポ イトで,スライド板上のサークル内に1滴(30μ1) 滴下する.この時に尿サンプルが多い(30μZ以上)

とcut off pointが減少し陰性と判定され,また少

ないとcut off pointが増加して陽性と判定され

る.次に特異抗体の1滴をさらに滴下し撹搾する. 終りにラテヅクス懸濁液を1滴滴下し,2分後に 凝集の有無を判定する.判定に当っては,自動読 みとり器で検出される潜血反応,白血球反応を参 考にすることもあるが,大部分は,凝集,非凝集 の判定は容易である. 成 績 1.健常対照者 アルブミン被覆 ポリスチレン微粒子 ラテックス

Y

特異抗体 ∩ 抗原 (アルブミン) 熔 9‘ ウ づL 心

・癒誉\./・・プ・・舗尿

含まない尿 Y入

特異抗体 ¥

熱\/嘉_

初響,。透漸

轡人Ψ畑

凝集する 凝集しない (陰性) (陽性) 1。特異抗体液の1滴をスライド板上のサークル内に 1滴滴下する. 2.スライド板上の特異抗体液の上に,心あるいは,ア ルブミンのコントロール液を1滴滴下し,撹絆する. 3。ラテックス懸濁液を1滴滴下し,2分間静かに振撮 混和後,凝集の有無を判定する. 4.判定:正常尿検体あるいは,陰性アルブミン標準液 は約30秒後に明瞭な凝集が現われる.ミクロアルブ ミソ尿,あるいは陽性アルブミン標準液は凝集が認 められない. *最適温度は15∼20℃で行うことが良い.25℃の場合に は2分後直ちに判定する. 図ユ EDOO2の測定原理および操作方法 健常対照者20例は,本法では全て陰性と判定さ れた.またRIA法によるアルブミン濃度は1例22 mg/1であったが,残り19例は0.5∼12(6。4±3.7) mg/1であった. 2.糖尿病患老 試験紙法自動読みとり器により陰性と判定され た203名の早朝空腹時尿を本法で測定すると,陰性 であったもの172名で,残り31名(15.3%)は陽性 となった.一定の食事摂取2時間後に採尿した尿 を本法で測定したところ19例(9.3%)が陽性と判 定され,来院時の空腹時尿より,アルブミン尿の 検出は低下した.しかしその内容をみると来院時

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糖負荷前 糖負荷後 陽 性 A 性 31例 P72例 !3 陽性率 153% 9.4% ォ 朝食前 →糖負荷後1時間→ 糖負荷後2時間 採血,採尿 採血,採尿 採血,採尿 図2 糖負荷前・後のEDOO2の陽性頻度 空腹時血糖値 120mg/d2> 140mg/dβ〉 160mg/dゑ〉 180mg/d2> 180mg/d2< 0 10 20 30 40 50%} (4.1) (19.4) (32.0> (13.6) (21,7) 図4 空腹時血糖値と尿アルブミン陽性頻度 e凝凝 集160 9 RIA法との一致率 @ 97.2% 非凝集 4 2ア 0 30 50 100 RiA法による尿中アルブミン濃度(mg/の 図3 EDOO2とRIA法の比較(Cut ofE 301ng〃) ヘモグロビンAlc o 10 20 30 40 50〔%} 6.4%> V.4%〉 (0,6) i0,5) 8.4%〉 (28,6) 9.4%〉 / (40.0) 9.4%く 〔262) 正常値:ヘモグロビンAlc 5.1∼6』% 図5 ヘモグロビンA、cと尿アルブミン陽性頻度 空腹時尿で陽性と判定された31例中13例が陽性の ままであり,172例の陰性と判定されたものから6 例計19例が陽性となっていた.また陽性と判定さ れた31例中,18例が陰性となっていた(図2). 今回は,糖負荷前の来院時空腹時尿につき臨床 像との対比を行った. (1)EDOO2法とRIA法との関係(図3) 本法とRIA法により測定したアルブミン濃度 の実測値を示した.本法で凝集を示したもの,す なわちアルブミン尿陰性は172例であり,このうち 9例はRIA法のアルブミン濃度は30mg/13例,

31mg/1のもの4例,32mg〃1例,33mg〃1例

で,これ以上のものはなかった.凝集しないもの, すなわちアルブミン尿陽性は31例,アルブミン濃 度が30mg/1以上のものは27例で30∼120(32.5± 31.8)mg/1に分布した.残り4例のアルブミン濃 度は29mg/1であった. 本法とRIA法でのアルブミン濃度との一致率 は,97.2%と良好であった. (2)空腹時血糖値との関係 空腹時血糖値を120,140,160,180mg/d1未満 と以上に区別し本法でのアルブミン尿陽性頻度を 検討した.空腹時血糖値120mg/d 1に比較して 140,160,18Gmg/d1未満,180mg/d♂以上に比較 して,アルブミン尿陽性頻度は高率になる.しか し,空腹時血糖値のより高いもので,高率にアル ブミン尿が検出されるとは限らない(図4). (3)ヘモグロビンA、c濃度との関係 HbAlc濃度を6.4,7,4,8.4,9,4%未満と以上 に分け,アルブミン尿陽性頻度をみると,HbA、c 濃度の高いもので陽性頻度は多くなった(図5). (4)糖尿病の治療法との関係 203例のうち,食事療法単独群は96例,経口血糖 降下剤併用群62例,インスリン使用のもの30例と な:つた.各群におけるアルブミン尿陽性頻度は, 食事療法単独群96例中10例(10.4%),経口血糖降 下剤併用群62例中15例(24.2%),インスリン使用 中のもの30一中6例(20%)であった.食事療法 群が他群に比較して,アルブミン尿陽性頻度が低 率であった(図6).

一93一

(4)

治療方法 0 狛 20 30 40 50 食事療法単独 (10.4) 経ロ血糖 下剤 (242) インスリン (20.0) 図6 糖尿病の治療法と尿アルブミン陽性頻度 高血圧 なし あり 罹病期間 1年未満 5年未満 10年未満 10年以上 糖尿病性網膜症 網膜症なし 単純性 増殖性 図7 23/164(14.0%) 8/39 (20.5%) 4/47 ( 8.3%) 5/47 (10.6%) 7/42 (16.7%) 15/64 (23.4%) 11/131(8,4%) 15/57 (26.3%) 5/15 (33.3%) Albscreen EDOO2陽性者(31名)の臨床像 (5)高血圧

高血圧はWHOの判定を用い150/90mmHg以

上,または血圧降下剤を使用中のものとした. 高血圧のないもの164例,高血圧の合併したもの 39例であり,アルブミン尿陽性のものは164例中23 例(14.0%),39例中8例(20.5%)と,高血圧の ものでアルブミン尿の陽性頻度が高かった. (6)糖尿病性罹病期間 罹病期間は1年未満47例,5年未満47例,10年 未満42例,10年以上64例であり,このうちアルブ ミン尿陽性は,それぞれ4例(8.3%),5例 (10.6%),7例(16.7%),15例(23.4%)であり, 罹病期間の長い症例でアルブミン尿の検出される 頻度が多く認められた. (7)糖尿病性網膜症 糖尿病性網膜症はScottの分類を用いて検眼鏡 的に,網膜症を認めないもの131例,網膜症の程度

がScott Ia∼IIIaを単純性網膜症57例, Scott IIIb

以上の増殖性網膜症15例に分け,アルブミン尿の 頻度を検討すると,それぞれ11例(8。4%),15例 (26.3%),5例(33.3%)となり,重症な網膜症 を有しているものでアルブミン尿の検出頻度が多 く認められた. 考 察 試験紙法による尿蛋白が,持続的に検出される 時には,糖尿病性腎症の診断が下される.この時 点には,腎病変がかなり進展していることが多く, 蛋白尿が検出される以前の早期の腎病変を推測す る1つの方法に尿中microalbuminの測定が重視 されている.測定方法は,高感度のRIA法,免疫 台南法が広く用いられているが,外来で長期間経 過観察するに当っては,安価,簡単,迅速かつ正 確なものが要求される.最近は,簡易検査法によ るアルブミン半定量法も用いられはじめている. 今回使用したEDOO2法は,ラテックス凝集阻止反 応を用いた半定量法であり,操作方法も簡単,検 体量も尿の1滴(30μ1相当),判定は2分間と短か く,多数の検体の処理が可能である.しかし,簡 便法であるため,精度,感度に難点が推測される. このため同一検体をRIA法により測定したアル ブミン濃度と比較し,信頼性を確認することが必 要である. 本法は,尿中のアルブミンとのみ結合する抗ヒ トアルブミン山羊抗体を使用し,抗原抗体複合体 を形成させ,さらにアルブミンでcoatingしたラ テックス懸濁液と反応させ凝集を完了させる方法 である.この方法では,プロゾーン現象がおこら ず,尿中アルブミン濃度が30mg〃以上であれぽ, 凝集せず,常に同じ成績が得られるように条件設 定されている.尿中アルブミン濃度が30mg/1に 設定された背景には,1分間のアルブミン排泄量 (albumin excretion rate:AER)として表現され

ることが多く,腎臓からの尿排泄速度の影響を受 けない方法であり,AER 30μg/min以上をmi− croalbuminuriaとすると糖尿病性腎症を予測す るのに適した濃度として用いられたものと推測さ れる. 測定の実際に当っては,室温(20℃∼25℃)で 行うことがのぞまれた.これ以上の温度では,正 確に2分間で判定することがすすめられている. キット内にセットされた判定しやすいように黒 い円形のスライド板上に,検体,試薬を1滴ずつ 滴下し,2分後に判定するものであり,!時間に

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100検体が処理できる.判定に当っては,凝集(陰 性)と非凝集(陽性)の区別は容易である.時に 尿中潜血反応(赤血球),白血球反応を参考にする こともあるが,大部分は,正確に判定可能である. 今回検討した検体は,外来受診し,早朝空腹時 に採尿し,試験紙法自動読み取り器(アルブミン 濃度5∼20mg/d 1)により尿蛋白陰性と判定された 203名である.この検体を本法で検査すると3/名が アルブミン尿陽性と判定され,RIA法でのアルブ ミン濃度は29∼120mg〃(35.2±31.8)であった. 本法で陽性(非凝集)と判定した4例のアルブミ ン濃:度は29mg/1であった.また,本法により陰性 (凝集)と判定した9例はRIA法で測定したアル ブミン濃度が,30mg/13名,31mg/14名,32mg/

11名,33mg〃1名であり,34mg/1以上は本法

で全て陽性と判定され,RIA法との一致率は

97.2%で良好な相関関係が認められた.RIA法で 測定したアルブミン濃度30nlg/1以上のものは36 名であり,本法では27名が陽性(非凝集)として 判定された.これらのことよりEDOO2法の精度は かなり良好なものと考えられた. EDOO2を臨床的に使用するに当り,203名の臨床 像につき検討した. 空腹時血糖値120mg/d 1未満, HbA、c 6.4%未 満の血糖コントロールの良好なものではアルブミ ン尿の陽性頻度は低率であった.一方空腹時血糖 値の上昇しているもの,HbAlcの高いものではア ルブミン陽性率は高率であるものの,糖代謝の著し く悪いもの(空腹時血糖値180mg/d1以上, HbA、c 9.4%以上)で,よりアルブミン尿の陽性頻度が高 率に検出されることはなかった.本法は半定量法 であり,陽性か陰性かの判定を行うものであるた め,以前私共の報告した成績4)と異っていたもの と推測された. 糖尿病の罹病期間の長いもの,糖尿病性増殖性 網膜症を有するものでは,本法での尿アルブミン の陽性頻度は高率であった.また,高血圧を合併 しているものは,合併していないものに比較して 有意にアルブミン尿の検出率は高く,従来の報 告‘)と一致した.本法は半定量法であるが,臨床像 を良く反映しており,試験紙法により尿蛋白陰性 である糖尿病患者の外来での尿中アルブミンのス クリーニングには,簡便・迅速な方法の1つと思 われた. ま と め !.EDOO2法とRIA法によるアルブミン濃:度の 一致率は972%と高い信頼性が得られた. 2.本法は迅速かつ,簡単な尿アルブミン検出法 である. 3.本法によるアルブミン尿陽性と判定された ものはその糖尿病の臨床像を良く反映している. この論文の主旨については,第273回東京女子医大 学会例会において発表した。 文 献

1)Keen H, Chlouverokis C:An immunoassay

method for urinary albumin at low concentra− tion. Lancet 2:913−915, 1963

2)Mogenson CE: Urinary albumin excretion in

early and long term luvenil diabetes, Scand J Clin Lab Invest 28:10}106,!971 3)Viberti GC, Hill RD, Jarrett RJ et a1: Microalbuminuria as a predictor of clinical nephropathy in lnsulin−dependent diabetes mel− 1itus. Lancet 1:1430−1432, 1982 4)小田桐玲子,野村武則,出村 博:尿中微:量アル ブミン.日本臨床 44(夏期増刊号):209−214, 1986 5)小田桐玲子,平田幸正,出村博ほか:糖尿病患 者における尿中微量アルブミンおよびNAG濃度 の測定の有用性.東女医大誌 55:244−250,1986

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