[特集:環境修復]竹炭を混合したコンクリートの水質浄化特性
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(2) 竹炭を混合したコンクリートの水質浄化特性. 1 0 3. ついて考察した。まず,一般にコンクリートから. クリート製品では蒸気養生工程があるが,これら. は種々の溶解物質が溶け出すことが知られてい. の試験片については行わなかった。写真に各試験. る4)ため,竹炭混合コンクリートから溶出する物. 片の外観を示す。. 質を調査し,通常のコンクリートと比較した。次. 2.2 浸 漬 実 験. に,付着微生物による浄化作用5∼6)に注目し,コ. 竹炭混合コンクリートおよび普通コンクリート. ンクリート表面に竹炭を混合することによる,微. の試験片6個を300ml トールビーカーにそれぞれ. 生物付着量および水質浄化能の変化について調査. 入れ,蒸留水250ml に浸した後,ロータリーシェ. を行った。. イカーにより約80rpm で旋回振とうした。実験は 20℃の恒温室内で行った。浸漬期間中,電気伝導 法. 度と pH を測定し,値が安定した後,浸漬した水. 2.1 実 験 試 料. 2. 方. を採取し,溶出した無機物質の濃度を測定した。. 本実験に使用した竹炭混合コンクリートの製造. 無機物質の測定には,イオン項目についてはイ. 方法7)を以下に示す。竹炭はモウソウチクを原料. オンクロマトグラフィー (横河社製 IC7000) ,金属. として,ロータリーキルン式連続炭化炉で製造し. (PERKIN ELMER 社製 OPTIMA3000) 類は ICP―OES. たものを用いた。竹炭の大きさは長辺5∼10mm,. をそれぞれ用いた。全リン (T―P)およびリン酸イ. 短辺2∼3mm の長粒状であった。竹炭の性状を. オン(PO4―P)はアスコルビン酸還元吸光光度法,. 表 1 に示す。竹炭を混合することによる強度の. 六価クロムはジフェニルカルバジド吸光光度法に. 低下が予想されたことから,従来のセメントに比. よって定量した。また,得られた浸漬水を0. 1mol. べ圧縮強度,曲げ強度が大きくなる特殊セメント. !l の塩酸により滴定し,中和滴定曲線を求めた。. を使用した。次に,竹炭とセメントを重量比1:. 2.3 竹炭によるクロム吸着試験. 3で混合した後,水を加えてミキサーで撹拌した。. 濃度0. 1mg!l に調製した六価クロム溶液1l を. 材齢7日および28日における圧縮強度は,24. 2お. 2l ビーカーに入れ,この溶液に竹炭混合コンク. よび25. 5N!mm2で JIS 強度を満たした。. リートに使用したものと同じ竹炭1 0g を添加し. 室内実験に用いるため,一辺2cm の立方体の. た。これをスターラーで撹拌しつつ,数時間おき. コンクリート試験片を作製した。また,対照とし. に駒込ピペットで溶液を採取した。採取した溶液. て竹炭の入っていないコンクリート (普通コンク. を0. 45µm のメンブレンフィルターで濾過 し た. リート)の試験片も作製した。なお,実際のコン. 後,濾液中の六価クロム濃度をジフェニルカルバ. 表1 pH. ジド吸光光度法によって定量した。また実験終了. 竹炭の性状. 後の溶液の全クロム濃度を ICP―OES で定量した。. 灰分 揮発分 炭素 水素 酸素 嵩比重 比表面積 % % % % % g!cm3 m2!g. 10. 2 6. 4. 11. 2 87. 2 0. 9 5. 5. 0. 23. 226. 2.4 微生物付着実験. 竹炭混合コンクリート,普通コンクリートの試 験片を酸化池に約3カ月間浸漬し,付着した微生 45m,面 物量を測定した8)。酸化池は平均水深0. 積270m2であり,実験期間中は植物や藻類が繁茂 していた。水質は水温5∼15℃,溶存酸素飽和度 60∼1 00%,pH6. 0∼9. 0,COD5. 9∼1 7mg!l,T― N 0. 3∼12. 6mg!l,T―P 0. 13∼1. 4mg!l であった。 微生物付着量は,付着重量と好気性従属栄養細 菌数の2種類の方法で測定した。付着重量は,コ ンクリートの一定面積から付着微生物をハブラシ で落とし,105℃で乾燥して,単位面積当たりの. 写真. 竹炭混合コンクリート(左) と普通コンクリート(右) の試験片の外観. Vol. 29. No. 2(2004). 乾重量として求めた。好気性従属栄養細菌数は PYG 寒天培地(ポリペプトン1. 0g,酵母エキス0. 5 ─3 1.
(3) 特 集 ! 環 境 修 復. 1 0 4. g,グルコース0. 2g)に,一定面積から採取した付. 窒素および亜硝酸性窒素は普通コンクリートの半. 着微生物を希釈後に表面塗布し,20℃で14日間培. 分ほどの濃度であった。. 養して計測した。. 金属類については,竹炭混合コンクリートから. 2.5 BOD 除去実験. アルミニウムが140mg"l 溶出した。これは竹炭混. 酸化池で微生物を付着させた状態の竹炭混合コ. 合コンクリートの製造過程で,竹炭とセメントの. ンクリートおよび普通コンクリートの試験片5個. 結合を高めるため,バインダーとしてシリカアル. を,それぞれ合成下水2 00ml に入れ,20℃の恒温. ミナセメントが使用されたことによると考えられ. 暗室内で旋回振とうした。一定経過時間ごとに溶. た。アルミニウムは非常に高濃度であったため,. 液を採取し,BOD を測定した。実験に用いた合. 今後は用いるバインダーの工夫が必要である。. 成下水はペプトン20mg,サッカロース2 0mg,リ. また,普通コンクリートから六価クロムが0. 99. ン酸二水素カリウム5mg,炭酸水素カリウム10. mg"l 溶出した。普通コンクリートに比べ,竹炭. mg を蒸留水1l に溶解させることにより調製し. 混合コンクリートからの六価クロム溶出量が少な. た。. い理由としては,竹炭による吸着と三価クロムへ の還元の2つの要因が考えられた10)が,今回の実. 3.. 結果および考察. 験では三価クロムは浸漬水中にほとんど存在しな. 3.1 コンクリートから溶出する無機物質. かった。アルミニウム,六価クロム以外の金属類. コンクリートが護岸ブロックとして河川で使わ. については高濃度の溶出は認められなかった。. れることを想定し,コンクリートと水が接したと. 次に,それぞれの浸漬水の中和滴定曲線を図 1. きに溶出する無機物質を把握するために浸漬実験. に示す。竹炭混合コンクリートの浸漬水は,普通. を行った。コンクリートから浸漬水に溶出したイ. コンクリートの浸漬水に比べて pH9前後での緩. オンと金属類の分析結果を表 2 に示す。. 衝能が大きかった。. イオン項目についてみると,竹炭混合コンク リートからはカリウムイオンが350mg"l 溶出し た。これは竹に多く含まれるカリウムが炭化に よって無機化し,溶出したものと考えられた。植 物体内のカリウムの形態は十分には解明されてい ないが,カリウムイオンとして存在すると考えら れる9)。 逆に,セメント由来と思われる硫酸イオン,カ ルシウムイオンの溶出は少なかった。また硝酸性 図1. 表2. コンクリートから溶出した無機物質 竹炭混合 普通コ コンクリ ンクリ ート ート. NO2―N NO3―N NH4―N PO4―P T―P SO4 Cl. 0. 5 1. 2 <0. 02 <0. 2 0. 08 7. 8 43. 1. 1. 1 2. 1 <0. 02 <0. 2 0. 01 299 34. 5. 竹炭混合 普通コ コンクリ ンクリ ート ート Na K Mg Ca Al Cr(Ⅵ). 単位:mg" l,浸漬期間:8日間,n=2. 3 2─. 浸漬水の中和滴定曲線. 12. 8 82. 2 350 33. 9 <0. 02 0. 5 2. 6 75. 7 140 0. 08 0. 06 0. 99. 図2. 浸漬水の六価クロム濃度の経時変化 全国環境研会誌.
(4) 竹炭を混合したコンクリートの水質浄化特性. 図3. 竹炭による六価クロム吸着 表3. 図4. 1 0 5. コンクリート付着微生物による BOD 除去. 微生物の付着量. の量を測定した結果を表 3 に示す。竹炭混合コ 竹炭混合 普通 コンクリート コンクリート. 量の付着微生物と好気性従属栄養細菌が存在して. 付着重量 (mg!cm2) 好気性従属栄養細菌数 (×106CFU!cm2). ンクリートには普通コンクリートに比べ,約3倍. 1. 22 14. 5. 0. 42 5. 20. 浸漬期間:1 9 9 8年1 2月∼1 9 9 9年3月. いた。表面に竹炭が露出することで表面積が増 し,微生物の増殖に好都合になった1,2)ためと考 えられた。 3.4 BOD 除去効果の比較. 微生物付着実験で得られた試験片を人工下水に 3.2 六価クロムの吸着. 入れたときの,BOD の経時変化を図 4 に示す。縦. 2.2 節の浸漬実験において,普通コンクリート. 軸は初期濃度に対する残存率で示した。最終的な. 浸漬水中に有害物質である六価クロムが検出され. BOD 残存率に大きな違いはみられないが,竹炭. たため,浸漬実験期間中の六価クロム濃度の経時. 混合コンクリートの方がより速く減少した。. 変化を測定した。結果を図 2 に示す。六価クロ. BOD が初期濃度の5 0%以下になるまでに要す. ムの濃度は,普通コンクリートでは経過時間とと. る時間は,竹炭混合コンクリートの方が4時間近. もに徐々に高くなったが,竹炭混合コンクリート. く速かった。実際の河川では,付着藻類と水が接. では0. 1mg!l 前後で推移し,その後わずかではあ. する時間は短いため,BOD 除去速度の大きい方. るが減少した。このことから,一度コンクリート. が水質浄化には効果的であると考えられる。. 部分から水に溶け出した六価クロムが,竹炭部分 に吸着されたと考えられた。 そこで,竹炭混合コンクリートの竹炭部分によ る六価クロムの吸着を確認するため,竹炭のみに. 4.. ま. と. め. 本研究で得られた知見を以下にまとめる。 コンクリートブロックを河川の護岸ブロックに. よる吸着実験を行った。この結果を図 3 に示す。. 使用することを想定し,水中に浸漬する実験を. 時間の経過とともに六価クロム濃度が減少し,. 行った。その結果,竹炭混合コンクリートからは,. 260時間経過後には検出下限値 (0. 02mg!l)以下と. セメントに含まれるカルシウムイオンや硫酸イオ. なり,竹炭が六価クロムを効果的に吸着すること. ンの溶出は少なく,カリウムイオン,アルミニウ. がわかった。また実験終了後の溶液の全クロム濃. ムが多く溶出することがわかった。カリウムは竹. 度は0. 0 1mg!l 以下であり,三価クロムとしても. に多く含まれることから,竹炭から溶け出したと. 存在していないことを確認した。. 考えられた。またアルミニウムは,竹炭混合コン. 3.3 微生物付着量の比較. クリートの製造過程で,バインダーとして使用し. コンクリート表面の違いによる微生物付着量の. たシリカアルミナセメントに由来すると考えられ. 差異を把握するため,酸化池で付着させた微生物 Vol. 29. No. 2(2004). た。アルミニウムは非常に高濃度であったため, ─3 3.
(5) 特 集 ! 環 境 修 復. 1 0 6. バインダーの工夫が必要である。 また,竹炭混合コンクリートでは,有害物質で ある六価クロムの溶出量が普通コンクリートに比 べ少なかった。竹炭のみによる六価クロム吸着実 験の結果,コンクリート表面の竹炭へ吸着されて いることがわかった。 酸化池でコンクリート試験片に微生物を付着さ せたところ,竹炭混合コンクリートには普通コン クリートに比べ約3倍の微生物が付着した。この 付着微生物量の違いは竹炭を入れたことで表面積 が増したためと考えられた。 付着微生物量が多いことにより竹炭含有コンク リートの BOD 除去速度も大きかったが,実際の 河川水質への効果については今後検証が必要であ る。 ―引 用 文 献― 1) 池嶋庸元:竹炭は効く.pp.1 8 3―1 8 4,致知出版社,東京,. 3 4─. 1 9 9 9 2) 田中淳夫:伐って燃やせば森は守れる,pp.1 0 8―1 1 4,洋 泉社,東京,1 9 9 9 3) 世利桂一,徳永隆司,中村融子,野田和孝,倉富伸一: 植物系炭化物を混合した機能性コンクリートの調製と水 質浄化特性.第5 0回日本木材学会研究発表要旨集,p.5 4 2, 2 0 0 0 4) 小林一輔:コンクリートが危ない.pp.1 9―2 4,岩波書店, 東京,1 9 9 9 5) 玉井信行,水野信彦,中村俊六:河川生態環境工学.pp. 2 7―2 8,東京大学出版会,東京,1 9 9 3 7, 6) 桜井善雄,市川新:都市の中に生きた水辺を.pp.7 5―7 信山社出版,東京,1 9 9 6 7) 世利桂一,平野吉男,倉富伸一,徳永隆司,中村融子,: 木質系炭化物を混合した多機能コンクリートの調製と キャラクタリゼーション.第5回日本木材学会九州支部 大会講演集,pp.6 7―6 8,1 9 9 8 8) 中村融子,緒方健,志水信弘,徳永隆司:シュロガヤツ リによる池の水質浄化と水生昆虫の定着.水環境学会誌, 2 2,pp.1 0 1 0―1 0 1 5,1 9 9 9 9) 畑野健一,佐々木恵彦:樹木の生長と環境.pp.3 3 1―3 3 5, 養賢堂,東京,1 9 8 7 1 0) Han I, Schlautman M, Batchelor B:Removal of Hexavalent Chromium from Groundwater by Granular Activated Carbon.Water Environment Research,7 2,pp.2 9―3 9,2 0 0 0. 全国環境研会誌.
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