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(1)

体育館における音響計画

著者

藤井 弘義, 末永 義明

著者別名

FUJII Hiroyoshi, SUENAGA Yoshiaki

雑誌名

工業技術

38

ページ

59-64

発行年

2016

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00009542/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

(2)

体育館における音響計画

Sound

Planning o

f

a

Gymnagium

藤井弘義安

末永義明*

1

.はじめに

多くの建物は、デザインに優れた設計計画の基に作ら れている。その室内設計計画は様々な使用目的にあった 使い易さを追求し動線計画等を考慮した室内形状や設 置場所に工夫がなされている。 その上、使用にあった室内環境面では良く見える照 明・色・日照と寒暖をより良く凌げる快適性を有した換 気・空調設備が追求され整えられてきている。 しかし、使われ方が異なる多くの室内状況の中で直ぐ に実感把握しにくい音環境については後回しになる傾 向となってきた。そこには音響計画に際して室内の使用 目的にあった材料の使い方、どの位置にどのような材料 を使用したら良いか専門的な知識がかなり必要で捕ら えづらいことや費用が掛かることが懸念されるなど難 しい現状にある。 今回、大学に設定された新体育館の音響計画に参加す る事ができたのでこの建物を例として上記の問題の一 例として取り上げてみた。 一般的な体育館は、多くの競技を行う残響時間が長い 専用体育館、小中高学校に附置されている体育館は講堂 にも使用し多目的に使われ傾向にあり残響時間が少し 長めのものが多くなっている。 今回の新体育館は、主に教員と学生が使用し音声コミ ュニュケーション(教員からの指示等)を行いながら実 技や実演に使われるものである。また、公式試合や部活 動などにも多く使用される。 この体育館は、設計計画当初に比べて費用の高騰など から使用材料等が異なる施工がなされた。そのことから 音声コミュニュケーションが大いに必要な各室内でそ れが取りづらい室内状況となったことから竣工後に室 戸内改修計画を行うことになった。そこで計画に際して、 室内の音響測定を実施し結果を参考に使用する側に立 った改修設計が設計事務所により行われ施工に至った。 計画では、特にアリーナの改修前後の室内音響シミュレ ーションと音響実測データからの検討と確認を行い音 響シミュレーションの意味も含めて室内音環境を考え るものとした。

2.

建物概要と主な使用目的 建設場所:東洋大学朝霞校地内 全体育館建物面積:3190m2 アリーナ棟 :1590 m2 高さ :14.900m、 多目的棟:1602

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高さ:10.61m アリーナ :室内全表面積4800

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全容積20000m3 多目的室1+トレーニング室:室内全表面積650

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全容積900m3 多目的室2:室内全表面積580

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全容積775m3 実習室 :室内全表面積470

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全容積580m3

3.

主な室内使用目的と改修前の室肉状況 ・アリーナ.室内体育授業の際、講義(*音声によ る指示)に基づいた実技演習及び部活、公式競 技場等に使用。(*以下略) ・多目的室1+トレーニング室:講義や実技演習、 身障者対象スポーツ等の指導、体力増進に必要 な身体造りに使用。 -多目的室2:主にダンス・エアロピクスの講義と 実技演習と部活にも使用する。更に、柔道実技 にも{吏用。 -実習室 :体育理論に基づく研究と卒論作成に必 要な機器を使った研究実技指導演習に使用。

(3)

体育館における音響計画

Sound Planning ofa Gymnagium

藤 井 弘 義 末 永 義 明 *改修前の各室内の使用状況 ・アリーナでは、図・

2

の改修前実測データーに示 す全帯域に渡って残響時聞が大幅に長く特に人の声を 認識する場合に大切な 500Hz 、 1KHz で約 6 秒となり 3~ 4 m離れると会話がほとんど取れず、更に離れると大騒 音となり声の聞き取れない状態で、あった。 -図・ 3の多目的室1+トレーニング室でも声による 指示が聞こえにくい状況となっていた。 -図・ 4の多目的室 2では、エアロピックスを行うに 当たりマイクロフォンと増幅器を使って体の動かし方 等のエックササイズ・レッスンを行うがその声が良く聞 き取れない状況となっていた。 -図・ 5の実習室では、 500Hz,1KHz, 2間zで残響時聞 が長く音声による指示が非常に聞こえづらい状況とな っていた。 これらは、各室内を使うライフデザイン学部健康スポ ーツ学科の教員とのミ ティングで多くの教員から音 声による指示が出来ないとの指摘がされていた。

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騒音計

(NL-22)

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PC(解析制御用) 図・

1

測 定 ブ ロ ッ ク 図

4.

改修工事に当たり各室の残響時間の設定 今回のテーマで、ある各室内の状況から音声コミュニ ュケーションをよりよく取るための設定を行った。そこ で、室内の使用目的を考えながら容積に見合った残響時 間を設定し、声の通りと聞こえ易くするために吸音力を 増し解決を図ることを計画した。 図・ 2~5 に、音声による指示や人同士の声を聞き取 りやすいものとする最適残響時間を設定し、これらを基 に各室内の残響時間の目標とした。 特に、アリーナは室容積が大凡 20000m3と非常に大き く天井、壁、床とも反射性の材料となっていることから

BNC

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品目(専用電力増幅装置)

-60-改修では声が相互に聞こえやすい残響時間とするため に 500Hz以上の周波数で 6秒から 3秒程度まで短くする 目標を置いた。 多目的室1+トレーニング室では、 500Hz以上の高域 周波数でも大凡1.5秒程度に目標設定した。 多目的室 2では、 500Hz以上の高域周波数で1.5秒程 度に目標設定した。 実習室では、 500Hz以上の高域周波数で1.5秒程度に を目標設定した。 更に、改修に当たり竣工後間もないことも含めて特に 天井が非常に高いアリーナなので費用や施工工期を考

(4)

慮しながら壁面にのみラッピンググラスウール

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とした。 多目的室

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は、壁に給音材を貼る位置が少なく天井に 岩面吸音板厚み905mm, 95

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とした。 多目的室 2は、壁面にアコス トーン厚み

1

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を 施工した。 実習室は、低い天井

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と合 わせた

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こ岩面吸音板厚み90

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を貼った。

50

音響実測に使用した機器と測定方法 測定は、ブロック図・ 1に示すような室内残響時間測 定機器を用いインパルス音を無指向性スピーカーによ り発生させ室内の各点で騒音計を通して時間波形を収 録し後に、インパノレス応答波形より

1

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オクターブ、バン ド中心周波数 125Hz~4KH

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を解析計算した。

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測定結果 ハ リ ハ Y O D

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図・2のアリーナでは、目標最適残響時間に対して改 修後の残響時間は、

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以上で大凡会話のしやすい 30 5秒程度になり、低域で若干長めであるが概ね目標達 成ができた。その上、低域が少し長めであることから室 内の会話に艶のある状態が生まれた。 また、残響時聞が短くなった事からアリーナを使用す る人たちも前に比べて話のし易さを述べており、騒音状 態となっていた室内のほとんどの位置で教員の指示す る声も伝わりやすい状態になり、更に流す音楽も歯切れ が良いものとすることが出来た。 図・

3

の多目的室1+トレーニング室では、

5

0

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H

z

では、目標に近い結果になったが低域と高域周波数で長 めになっている。これは、改修前の室内形状と材料によ って低高域で短い残響となっていることによるもので ある。結果として改修に使用した岩面吸音板の吸音率が 大きく影響していたが室内の使用状況は指示や会話は 充分取れやすいものになっている。

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の多目的室

2

では、改修前の残響時聞から低域 と高域の周波数で短めになっている傾向はあるがが大 幅な改善効果が出ている。しかし、エアロビクス実習の 場合はマイク・増幅器を使って声の音量を大きくしたレ ッスン指導による運動が多くなっている。しかし、室内 の 4壁面がガラス、鏡等の硬い反射性の材料が使われて いることから改修効果により改修前に比べて残響時聞 が大幅に短くなり残響時間の長いときには隠れていた フラッターエコーが目立つようになった。但し、 レッス ンのときの指導に大幅な改善効果につながった。

(5)

体育館における音響計画

Sound Planning of a Gymnagium

藤 井 弘 義 末 永 義 明 :3.50 :3.00 2.50

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結果 図.

5

の実習室は、目標に概ね近いものとなっている が,改修前の残響時間が低域と高域周波数で短めになっ ていることから改修後もその影響を受ける結果となっ ている。

7.

インパルス応答からの検討

図 .

6

7

で、大空間であるアリーナを改修前後の 音源から十分離れている測定点について見るとインパ ルス応答波形からも改修後に 1/2程短い時間で、減衰し ていることが見え、図・ 2の残響時間結果と一致してい ることが伺える。

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I I I I I I I I I I I I I I I I I I t 1αコ8 2α)3 Tirre[s] 図 .6 アリーナ 改修前時間応答波形 oα250

円 υ 告 J t 宣 E ︿ -{l.ce50 Q) B

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-1 I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I I 1.008 2.0コs Tirre[s] 図・ 7 アリーナ 改修後時間応答波形 0.0125 2α3打 百 400昨E 6αコrrs Ti四[s] 図 .8 改修前の初期反射の密度

α

:60 2α)ITE 4αコITE 6∞ 昨 日 Tirre日 図 .9 改修後の初期反射の密度

(6)

また、室内音響時間の大切な指標のひとつであり明 瞭 に 室 内 で 音 を 聞 く た め の 直 接 音 が 到 達 し て か ら

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までの初期反射音の減衰と密度を見ると改修前 の図・8では、インパルス応答波形より初期反射の密度 が多くなっている。その点、図・ 9の改修後になると初 期反射部分 (0部分)の密度が改修前に比べて減少して いることが見えている。 以上、インパルス応答波形及び初期反射音の解析か ら ア リ ー ナ の 対 策 前 後 の 音 声 明 僚 度

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lndex) を比較する。 STI は 0~1 の数値で 表示され、余分な音が多く含まれると音声明瞭度が悪く 0に近づき、余分な音が少ないと音声明瞭度が良く lに 近づく。

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の結果から音声明瞭度

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の平均値 は改修前が

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アリーナ計測位置

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~P4) 、音源位置 SP 音声明瞭度

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値 計測位置

8.

音響シミュレーションによる手法

そのーっとして、図・11でアリーナの測定点 5につ いて反射回数を

5

固として音響シミュレーションによ る音線解析を行った。 シミュレーションを見ると室内の反射音は、天井や平 行壁面よりの反射が多くなっている。 更に、壁上部からの反射が天井などを経由して様々な 場所に反射していることが伺える。 この図・ 11は、聴感に影響する5回反射までの反射 音線図を表しており、エネルギー減衰の少ない初期反射 音による室内音響への影響が予測されるものである。 改修では吸音材は壁の上部に設置されており音声明 瞭度に対して効果的であった。 体育館においても使用目的が様々なので、それに見合 った反射音線を考慮した音響設計計画が必要と考えら れる。 上記の結果から、どのような吸音材をどの部分に貼る かを検討することで壁面等からの反射と残響時間を適 切なものとしてより効果のある方法を捉えることが出 来る。 新しい建築設計でも当初から音響設計も配慮した計 画をすることにより使用目的にあった室内をよ り良い 音環境を作り出すことが出来る。 そこでは、吸音材のデーター情報を基に材料選択する ことが可能になり、更に音響シミュレーション手法によ り音源からの直接音と初期反射を含めた反射音が聴感 上違和感のないものとされ目的にあった心地良い残響 空間を作り出せることになる。 今回、実測と音響シミュレーション手法について述べ たが、竣工後でも音響改修は行える事の一例である。意 匠面や工事期間、工事費用(音響測定費も含めて)など多 くの煩わしさが起こってくることから後回しになって きたが、設計計画当初から音響設計も考えることで改修 工事の費用に比べれば費用負担割合を小さく出来る。 今回の音響改修工事でも設計事務所が積極的に関わ ったように、多くの建築計画に設計事務所の適切な計画 を進めることの役割が大きいと言わざるを得ない。

(7)

体育館における音響計画 Sound Planningof a Gymnagium 藤 井 弘 義 末 永 義 明 図・ 11 アリーナの音響シミレーション例

おわりに

音響改修計画にあたり、東洋大学朝霞事務部長田辺陸 夫氏、次長佐久間孝行氏、課長長谷川直美氏、有)飯吉 建築設計事務所所長飯吉伸一氏、所員根岸秀行氏のご尽 力があったこと、更に改修前後2回の音響測定に当たり 東洋大学理工学部建築学科田中研究室及びイム(林)研 究室の多くの 3,4年生学生のご協力を得られたことに 記して感謝する次第です。 [参考文献] 建築の音環境設計 日本建築学会設計計画パンフレット 幼稚園・保育所の室内音環境 日本音響学会大会論文 そ の1~ その 10 幼稚園・保育所の室内音環境 日本音響学会建築音響委 員 会 資 料 品2001-37 2001, 12、4

-

6

4

図 .4 の多目 的室 2 では、改修前の残響時聞か ら低域 と 高域の周波数で短めになっている 傾向は あるがが大 幅な改善効果が出ている。しか し 、エアロビクス実習の 場合はマイク ・ 増幅器を使って声の音量を大きくした レ ッス ン 指導による運動が多く なって いる。しか し 、 室内 の 4 壁面がガラス、鏡等の硬い反射性の材料が使われて いるこ とから改修効果により改修前に比べて残響時聞 が大幅に短くなり残響時間の長いときには隠れて いた フラッターエコ ーが目立つよ うになっ た。 但し、

参照

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