Title 麻酔・疼痛シグナル伝達とα_2ーアドレナリン受容体系の制御機構( はしがき ) Author(s) 土肥, 修司 Report No. 平成8年度-平成10年度年度科学研究費補助金 (基盤研究(B)(2) 課題番号08457405) 研究成果報告書 Issue Date 1998 Type 研究報告書 Version URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/334 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
はしがき 麻酔の機序や痛み神経伝達機構の解明は著しい進歩をとげたが、神経細胞 膜に到達した作用や刺激が細胞内の情報伝達系で認知される過程は明らかで はない。 麻酔薬の作用や痺痛刺激を受けた細胞が、その情報をどの様に伝 達し細胞応答をするかの課題は、麻酔のメカニズムにも関係する重要な問題 である。 過去の10年間の膨大な臨床研究の結果は、クロニジンやデキサメデトミ ジンなどのα2-アドレナリン受容体作動薬が麻酔臨床に使用され、麻酔前投 薬として服用させることによって、吸入麻酔薬や静脈麻酔薬の必要量を軽減 するのみならず、麻酔・手術中の循環動態の安定をもたらし、麻酔からのス ムースな覚醒などが得られ、著明な鎮静作用がある(MazeM&Tranq W:Anesthesiology,1991;西川、土肥:麻酔、1995;土肥、浅野:医学の あゆみ、1995)のみならず、更には局所麻酔薬やモルヒネなどのオピオイド と併用して硬膜外腔や脊髄クモ膜下腔に投与すると、脊髄レベルで鎮痛効果 を発揮する(EisenachJC et al:Anesthesiology,1996;DohiS:Curr OpinioninAnaesthesiol、1996)ことを示している。特に脊髄鎮痛機構(Spinal Antinociception)にα2-アドレナリン受容体が重要な役割を担っていること が明らかとなってきたのである。 α2-アドレナリン受容体は脳や脊髄の中枢神経系みならず、心血管系にも 広く存在し、特に脊髄ではG一蛋白を介してオピオイド受容体との著明な相互 作用をきたし、吸入麻酔薬を含め様々な薬との相乗作用が報告されているが、 ベンゾジアゼパムとは相乗的な作用を示さない。従ってクロニジンなどのα2 一アドレナリン受容体作動薬の作用・効果は、麻酔作用の機序はもとより、臨 床麻酔における様々な現象を理解する上では重要な情報を提供する。α2-ア ドレナリン受容体作動薬による脊髄鎮痛は、血液脳関門という生理的なバリ アーを介さないでα2-アドレナリン受容体作動薬を脊髄腔に直接投与するの で、血管作用が著明であるだけに、脊髄の安全性に関しては十分の留意が必 要とされる。 本研究では、このような背景を踏まえて、クロニジン、デキサメデトミジ ン、テルネリンなどのα2-アドレナリン受容体作動薬の効果を比較するとと もに、G蛋白を介するα2-アドレナリン受容体アゴニストが麻酔作用や鎮痛 伝達系に重要な役割を担っているとの知見があり、痺痛シグナル伝達の細胞 内情報伝達系、及びα2一受容体作用薬によるその制御機構を明らかにし、麻 酔に機序を知ることを目的をしたものである。 平成11年3月 研究代表者 土肥修司