• 検索結果がありません。

水稲の持続的生産に関する作物学的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "水稲の持続的生産に関する作物学的研究"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Title

水稲の持続的生産に関する作物学的研究( 内容と審査の要旨

(Summary) )

Author(s)

浅井, 辰夫

Report No.(Doctoral

Degree)

博士(農学) 乙第147号

Issue Date

2016-09-26

Type

博士論文

Version

ETD

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/55539

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

(2)

[2] 氏 名(本(国)籍) 浅井 辰夫(静岡県) 学 位 の 種 類 博士(農学) 学 位 記 番 号 農博乙第147号 学 位 授 与 年 月 日 平成28年9月26日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第3条第2項該当 学 位 論 文 題 目 水稲の持続的生産に関する作物学的研究 審 査 委 員 会 主査 静岡大学 教 授 山 下 雅 幸 副査 静岡大学 教 授 森 田 明 雄 副査 岐阜大学 教 授 宮 川 修 一

論 文 の 内 容 の 要 旨

環境保全型農業の遂行には、環境負荷を軽減するために、代替の担保が重要となる。無農薬栽 培で水稲は育つか。化学肥料を使わないで、安定した収量を持続出来るのか。環境ストレスは防 げるのか。そこで、本研究では、無農薬の水稲栽培における代替機能の探索を目的として、第1 章では、緑肥レンゲ(Astragalus sinicus L.)を 17 年間連用した水稲収量とその変動要因につい て検討した。静岡大学農学部附属地域フィールド科学教育研究センターの水田において、緑肥レ ンゲを利用した水稲の無農薬栽培試験を早生品種を用いて17 年間継続して実施した。試験区とし て、基肥に緑肥レンゲをすき込み、農薬を使わないレンゲ無農薬区(1993~2009 年)、レンゲをす き込むが農薬を使うレンゲ有農薬区(1999~2009 年)および化学肥料と農薬を使用する化学肥料 区(1993~2009 年)を設定した。レンゲ無農薬区は、1993~2000 年までの 8 年間は気象災害とニ カメイチュウの被害が頻発して、水稲部分刈り平均収量は409 g m-2であったが、同被害がない 2001~2009 年の 9 年間の平均収量は 466 g m-2 へと向上した。同期間のレンゲ有農薬区の平均 収量が468 g m-2であり、無農薬でも有農薬と比べて遜色のない収量が得られた。化学肥料区は、 1993~2000 年の平均収量が 517 g m-2、2001~2009 年が 539 g m2で、試験期間中における収 量の変動はレンゲ無農薬区ほど大きくはなかった。両レンゲ区では、2006、2007 年および 2009 年に外来害虫のアルファルファタコゾウムシが多発したことによりレンゲ生産量が減少したこと から、この3 年間のレンゲ無農薬区の平均収量は 414 g m-2と他の年より低かった。一方、アル ファルファタコゾウムシが発生しなかった6 年間の平均収量は 493 g m-2で、化学肥料区の93% の収量が確保された。また、レンゲ生産量と水稲収量との間には、高い正の相関関係が認められ た。レンゲすき込み区の生育の特徴は、化学肥料区に比べて初期生育が緩慢であることが明らか になった。 第2章では、15 年間継続した水稲有機栽培の生育、収量および食味値について検討した。静岡 大学農学部附属地域フィールド科学教育研究センターの水田において、堆肥を連用した水稲の有 機栽培試験を早生品種を用いて15 年間継続して実施した。試験区として、基肥に籾殻堆肥と菜種 油粕を用い、農薬を使用しない籾殻堆肥区(1996~2010 年)および基肥に牛糞堆肥を用い、農薬

(3)

を使用しない牛糞堆肥区(1996~2010 年)の 2 種類の有機栽培と、基肥に化学肥料と農薬を使 用する化学肥料区(1996~2010 年)および基肥無しで農薬を使用する無肥料区(1998~2010 年) を設定した。堆肥を連用する牛糞堆肥区で5 年目以降、籾殻堆肥区で 6 年目以降に堆肥の連用効 果が認められた。2006~2010 年の 5 年間の平均収量は、籾殻堆肥区 437 g m-2、牛糞堆肥区430 g m-2、化学肥料区523 g m2および無肥料区329 g m2であった。食味分析計で測定した食味 値は、籾殻堆肥や牛糞堆肥を施用する有機栽培が、化学肥料を施用する化学肥料栽培より高い傾 向にあることが確認された。また、連用水田の土壌分析から、堆肥連用の有機栽培区は、化学肥 料区と比べて全窒素量が増加することが確かめられた。 第3章では、フェアリーリングを惹起するキノコが産生する2-アザヒポキサンチン(AHX)の イネの生育と収量への効果について検討した。イネ(Oryza sativa L. 品種 日本晴)に対する 2-アザヒポキサンチン(AHX)の効果を試験するためにポットと圃場試験を行った。AHX は、ポ ット試験で50μM で 4 つの生育ステージ(移植期、分けつ期、幼穂形成期、登熟期)に 2 週間と、 圃場試験においては1mMAHX で 3 つのステージ〔育苗箱(苗処理)の苗の出芽期、移植期およ び幼穂形成期〕に施用された。ポットと圃場の両試験は、AHX 処理で穂数(PN)、稈長(CL) および乾物重が増加する傾向が見られた。玄米重もまた、ポットと圃場試験それぞれで特に分け つ期と幼穂形成期と苗期と移植期の AHX 処理によって高まった。その後、収量は、対照区に対 してポット試験の分けつ期、幼穂形成期では 18.7%、15.8%、圃場試験の苗処理と移植期処理で は 9.6%および 5.8%有意に増加した。しかし、穂長と千粒重は、AHX 施用によって影響されな かった。これらの結果は、AHX は、穂数と稈長または穂数か稈長への影響を通して玄米収量を増 大させると示唆された。

審 査 結 果 の 要 旨

浅井辰夫氏の学位論文は、環境保全型の水稲栽培を普及させるために、水稲栽培における代替 機能の探索を目的として、緑肥レンゲ(Astragalus sinicus L.)および堆肥を長期連用し、慣行 農法と収量等を比較検討した。 まず、緑肥レンゲを17 年間連用した水稲収量とその変動要因について検討した。静岡大学農学 部附属地域フィールド科学教育研究センターの水田において、緑肥レンゲを利用した水稲の無農薬 栽培試験を早生品種を用いて17 年間継続して実施した。レンゲ無農薬区は、1993~2000 年まで の8 年間は気象災害とニカメイチュウの被害が頻発して、水稲部分刈り平均収量は 409 g m-2であ ったが、同被害がない2001~2009 年の 9 年間の平均収量は 466 g m-2 へと向上した。同期間の レンゲ有農薬区の平均収量が468 g m-2であり、無農薬でも有農薬と比べて遜色のない収量が得ら れた。化学肥料区は、1993~2000 年の平均収量が 517 g m-2、2001~2009 年が 539 g m2で、 試験期間中における収量の変動はレンゲ無農薬区ほど大きくはなかった。また、レンゲ生産量と水 稲収量との間には、高い正の相関関係が認められた。レンゲすき込み区の生育の特徴は、化学肥料 区に比べて初期生育が緩慢であることが明らかになった。 次に15 年間継続した水稲有機栽培の生育、収量および食味値について検討した。静岡大学農学 部附属地域フィールド科学教育研究センターの水田において、堆肥を連用した水稲の有機栽培試験

(4)

を早生品種を用いて15 年間継続して実施した。堆肥を連用する牛糞堆肥区で 5 年目以降、籾殻堆 肥区で6 年目以降に堆肥の連用効果が認められた。2006~2010 年の 5 年間の平均収量は、籾殻堆 肥区437 g m-2、牛糞堆肥区430 g m2、化学肥料区523 g m2および無肥料区329 g m2であっ た。食味値は、籾殻堆肥や牛糞堆肥を施用する有機栽培が、化学肥料を施用する化学肥料栽培より 高い傾向にあることが確認された。また、連用水田の土壌分析から、堆肥連用の有機栽培区は、化 学肥料区と比べて全窒素量が増加することが確かめられた。 さらに、フェアリーリングを惹起するキノコが産生する2-アザヒポキサンチン(AHX)のイネ

の生育と収量への効果について検討した。イネ(Oryza sativa L. 日本晴)に対する AHX の効果

を試験するためにポットと圃場試験を行った。ポットと圃場の両試験は、AHX 処理で穂数(PN)、 稈長(CL)および乾物重が増加する傾向が見られた。玄米重もまた、ポットと圃場試験それぞれ で特に分けつ期と幼穂形成期と苗期と移植期のAHX 処理によって高まった。しかし、穂長と千粒 重は、AHX 施用によって影響されなかった。これらの結果より、AHX は穂数と稈長または穂数か 稈長への影響を通して玄米収量を増大させることが示唆された。 以上の研究は、環境保全型の水稲栽培を普及させるために活用できる優れた研究成果であり、博 士(農学)の学位にふさわしい研究成果であり,審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連 合農学研究科の学位論文として十分価値あるものと認めた。 基礎となる学術論文 浅井辰夫・平野清・前田節子・飛奈宏幸・西川浩二 2013. 緑肥レンゲ(Astragalus sinicus L.)を 17 年間連用した水稲収量とその変動要因.日作紀.82. : 353-359.

Tatsuo ASAI, Jae-Hoon CHOI, Takashi IKKA, Keiji FUSHIMI,Nobuo ABE, idekazu TANAKA, Yasuhiro YAMAKAWA, Hajime KOBORI,Yoshikazu KIRIIWA, Reiko MOTOHASHI, Vipin Kumar DEO,Tomohiro ASAKAWA, Toshiyuki KAN, Akio MORITA and Hirokazu KAWAGISHI 2015. Effect of 2-azahypoxanthine (AHX) produced by the fairy-ring-forming fungus on the growth and the grain yield of rice. JARQ. 49 : 45-49.

浅井辰夫・飛奈宏幸・前田節子・西川浩二 2016.15 年間継続した水稲有機栽培の生育,収量および食 味値.日作紀.85 : 274-281.

既 発 表 学 術 論 文

Tatsuo Asai and Hirokazu Nakai 1996. Selection efficiency of heading-time mutants in rice-role of environmental factors . Breeding Science. 46 : 1-5.

平野清・杉山智子・小杉明子・仁王以智夫・浅井辰夫・中井弘和 2001.自然農法におけるイネ品種の 生長と根面および根内の窒素固定菌の動態.育種学研究.3 : 3-12.

前田節子・新村洋人・中川公太・安藤創介・浅井辰夫・森田明雄 2007.種皮褐色遺伝子 Rc が玄米の

抗酸化能に及ぼす影響.育種学研究.9 : 97-102.

Hiroyuki Tobina, Jae-Hoon Choi, Tatsuo Asai, Yoshikazu Kiriiwa, Tomohiro Asakawa, Toshiyuki Kan, Akio Morita, Hirokazu Kawagishi 2014. 2-Azahypoxanthine and imidazole-4-carboxamide produced by the fairy-ring forming fungus increase wheat yield. Field Crops Research. 162 : 6-11.

参照

関連したドキュメント

〃o''7,-種のみ’であり、‘分類に大きな問題の無い,グループとして見なされてきた二と力判った。しかし,半

2014 年度に策定した「関西学院大学

3 学位の授与に関する事項 4 教育及び研究に関する事項 5 学部学科課程に関する事項 6 学生の入学及び卒業に関する事項 7

告—欧米豪の法制度と対比においてー』 , 知的財産の適切な保護に関する調査研究 ,2008,II-1 頁による。.. え ,

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

社会学研究科は、社会学および社会心理学の先端的研究を推進するとともに、博士課

小国町 飛び込み型 一次産業型 ひっそり型 現在登録居住者。将来再度移住者と して他地域へ移住する可能性あり TH 17.〈Q 氏〉 福岡→米国→小国町