超音波の反応系への効果(II)
著者
岡田 文男
雑誌名
技術報告集
巻
7 (2001年度)
ページ
59-62
発行年
2002-04
URL
http://hdl.handle.net/10098/7515
超音波の反応系への効果 (II
)
第二技術室佑学計測技術班 岡田文男 1.且じ盈ζ 地球環境の汚染が深刻な問題になってからかなりの時間が経過している。そのひとつに工場か ら排出される染料がある。この種の廃液処理には、活性汚泥法のような生物学的な処理法が適用さ れてきた。しかしながら、活性汚泥法では、 BOD あるいは COD などの値を法令の排出基準以下にす ることは可能であるが、 染料廃液の色度を落とすことは困難であった。 今回は、染料の分解・脱色に 200 , 400 , 600kHz の超音波を照射して周波数の効果と、出力の増加 に伴う効果を調べた。 2. 宴験装置および方法 《実験装置》 実験装置の概略を図 1 に示す。分解反応は、前固までのアクリル製から、冷却効果に優れた温調 用ジャケット付きの円筒状ステンレス製容器を用いた。その底部に 200"-'600kHz の共振周波数から なるセラミック超音波振動子 [2] を取り付けた反応器 [1] (φ64x
108mm) で行った。なお、超音波 Hi-frequency amplifier 1.R鎗dぽ 3.COl首旬胤 tempera組陀CirCUJaωr 2. 百-amduωr 4.Temperaωresensor 図 l 実験装置図 の入力はマルチファンクションシンセサイザーを介して高周波アンプによって制御した。また、温 度は、 [3] の循環恒温槽にて 250 C に設定した。《実験法》
(
a
)
71<への紹音液照射 250ml の蒸留水を反応器内に入れ、 10 時間超音波照射下のもとで分解 反応を行い、過酸化水素発生量を佑学発光法、亜硝酸、硝酸を HPLC 法にて pH、 DO とともに測定を 行った。 (b) 染料への超音波照射 25ppm の濃度からなるアゾ染料 Orange II と塩基性染料 Rhodamine B を それぞれ 250ml 反応器内に入れ、上記と同様な条件下で分解反応を行い、その吸光度変化から分解 量を測定した。また、超音波照射開始前と終了時の染料溶液の吸収スペクトルおよび TOC の測定も 行った。 3. 結果と考察 図 2 は水の分解反応に及ぼす超音波周波数の影響を示したものである。 400kHz の場合が、硝酸、 10 8 au 凋吟 (更 mE} ・ 0zou 。, N O N Z 2 4 6 8T
i
m
e
(
h
)
図 2 水分解時の H2
02
生成量に及ぼす 超音波周波数の影響 (40W) 10 1401
E
S120 〈〉-200kHZ4』 200kHZ ---cト 400 -・← 400 d100 ーとト 600 一心>- 600 z 。 80 υ 》円 60z
z
民 40 。z刷:
:
r
:
20 。 。 2 4 6 8 10T
i
m
e
(
h
)
水分解時の HN02
・ HN03
生成量に及ぼす 超音波周波数の影響 (40W) 亜硝酸の生成量がもっとも多く、最適周波数とした。 一般に、空気で飽和した水に強力な超音波を照射すると下記のような諸反応が起こる。 [1] HzO → H ・+O
H
.
N
z
→ 2N ・O
z
→ 20 ・ 0 ・+H
z
O
•
HzOz
N
.
+
0 ・•
NO
N
O
+
0 ・•
NO z
OH ・+N
O
•
HNOz
OH ・ +NOz
•
HN0
3 これは、マイクロ秒オーダーで生成・消滅する局所的な反応場において水分子が分解し、様々な ラジカルやイオン種が生成するとともにそれらのラジカルやイオンが溶存空気と反応し、過酸化水 素、亜硝酸、硝酸を形成することを示唆している。図 2 の本実験におけるデータからも上記の反応 が起こっていることが裏付けられ、しかもそれらの発生量は周波数に依存することが明らかとなっ た。とりわけ、 400kHz 前後のところで過酸化水素、硝酸の発生量が極大となり、キャビテーシヨン-
60 ー由来のラジカルの発生が活発であることを示唆している。 図 3 は、上記で得られた最適周波数領域において Orange II と Rhodamine B を分解させたときの超 音波出力の影響を示したものである。いずれの染料も出力の増大とともに分解速度が増大し、最大 30 30
Orange
I
I
Rhodamine B
25 25 ::J、-・-
20w
、、、一---
40
-ート-40
回 20 E --!::s-60
-{_ト-60
2 1 5 。 c::: 15 。 。 υ 。 唖b 旦 10>
-ロ ロ 4 6 8 2 4 6 8 10 。 。 2 10Time (
h
)
Time (
h
)
図 3 染料分解反応における超音波出力の影響 (400kHz) 出力下では 2'"'-'4 時間以内に染料は完全に分解消失し、溶液は無色透明イじした。これは、染料の分 解・脱色時においてもラジカル反応が起こり、主として OH ラジカルが染料の分子骨格を攻撃し、 低分子化を促進していることに起因しているものと推測される。 表 1 は、染料分子が低分子化されているかどうか確認するために全有機体炭素量 (TOC) を測定 表 1 全有機体炭素量作OC) の変化(
4
0
0
k
H
z
)
TOC a
t
O
h
(
m
g
-
C
/
I
)
Power
(W)TOC a
f
t
e
r
1
0
h
(
m
g
-
C
/
I
)
2
0
1
0
.46
Orange
n
1
3
.
3
2
40
8
.
2
5
6
0
7
.
3
0
2
0
1
2
.
5
4
Rhodamine
B1
7
.
1
5
4
0
1
0
.
5
3
6
0
6
.44
したものである。これは超音波照射前と終了後の値を評価したものであるが、いずれの染料も超音 波の出力の増大とともに TOC の値が急激に減少しており、分解生成物が低分子化され気体として放 出されていることを示している。とりわけ、 Rhodamine B の場合には、出力 60W で 1/3 程度まで TOC の値が減少している。分解経路を詳しく検討する必要があると思われるが、開裂の仕方が複雑であ るためその経路を予想するには困難が予想される。 4. 孟主主主 染料に強力な超音波を照射することで分解・脱色することができた。 TOC の値から推論すれば、 分解生成物はかなり低分子化されていることが予想されるが、実際どの程度の分子量まで分解され ているのかは LC/MS 等で測定する必要がある。しかし手法は昨年度の研修で行った、近年問題となっているフェノール類等の環境ホルモン系物質の分解にも有効である。今後、反応装置の改良、最 適条件を調べることにより、さらに効率が高ぐなることが期待される。 「参考文献J