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2017 年度環境医学実習報告書 3 班 在日韓国朝鮮人における肝がん死亡の推移 指導教官大島明実習学生上原駿一多田浩気松本凉聖東野克温 1. 背景在日韓国朝鮮人は 日本に在住する外国人のうち 韓国朝鮮籍のひとのことである 2015 年の国勢調査では約 37 万人で 日本に在留する外国人の中では中国

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12 2017年度環境医学実習報告書3班

『在日韓国朝鮮人における肝がん死亡の推移』

指導教官 大島 明 実習学生 上原駿一 多田浩気 松本凉聖 東野克温 1.背景 在日韓国朝鮮人は、日本に在住する外国人のうち、韓国朝鮮籍のひとのことである。2015 年の国勢 調査では約 37 万人で、日本に在留する外国人の中では中国人に次ぎ第 2 位となっている。『在日韓国 朝鮮人においては日本人および韓国人に比して肝がん死亡が多い』という論文を指導教官から示され た。しかし、2000 年以降在日韓国人の肝がん死亡の推移は示されていない。 2.目的 2000 年以降も『在日韓国朝鮮人においては、日本人および韓国人に比して肝がん死亡が多い』かど うか調査すること、そしてそのような結果になった原因について考察し、今後とるべき対策について検 討する。 3.方法 日本人と在日韓国朝鮮人の死因別粗死亡率を直接比較することは、それぞれの人口分布が異なるため 適切ではない。なので、日本人の死因別死亡率(年齢別)に在日韓国朝鮮人の人口を掛け、その総和を 在日韓国朝鮮人の予測値とし、在日韓国朝鮮人の死因別死亡数を実測値として SMR(Standardized Motality Ratio、標準化死亡比=死亡実測値/死亡予測値)を計算した。日本人の死因別死亡率と在日韓 国朝鮮人の人口、死因別死亡数はそれぞれ政府統計のe-stat より 1995 年から 2015 年まで 5 年ごとに 取得した。SMR が有意に 1 より大きいかを調べるため、Open source statistics for public health とい うサイトを用い確認した。 死因については全死亡、全がん、胃がん、肺がん、肝がん、大腸がん、乳がん、不慮の事故、子宮がん、 肝硬変、自殺の11 項目について調べた。 さらに、日本の年齢調整肝がん死亡率(標準人口:世界人口)のデータは、国立がん研究センターが ん情報サービス「統計」のサイトから,韓国の肝がんの年齢調整死亡率(同上)は WHO の Cancer Mortality Database のサイトから得た。在日韓国朝鮮人における肝がん年齢調整死亡率は,日本の肝 がんの年齢調整死亡率に在日韓国朝鮮人の肝がんのSMR を掛け合わせて求めるという便宜的な方法を 採用した。 4.結果 男(1995) 死因ごとの死亡期待値 死因ごとの死亡実測値 SMR 全がん 548.055291 939 1.713331 胃がん 109.551285 119 1.086249 肺がん 114.410156 193 1.686913 肝がん 78.440889 322 4.105002 大腸がん 59.042821 70 1.18558 乳がん 0.196181 1 5.097334 子宮がん 0 0 0 全死亡 1667.91233 2896 1.736302 肝硬変 26.786795 112 4.181165 自殺 59.33478 121 2.039276 不慮の事故 107.860025 211 1.956239

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13 女(1995) 死因ごとの死亡期待値 死因ごとの死亡実測値 SMR 全がん 317.057998 422 1.330987 胃がん 54.690986 64 1.170211 肺がん 36.355292 64 1.760404 肝がん 26.199348 89 3.397031 大腸がん 41.395047 36 0.869669 乳がん 29.385615 19 0.646575 子宮がん 15.966091 23 1.440553 全死亡 1134.411222 1681 1.481826 肝硬変 11.575091 33 2.85095 自殺 28.434836 48 1.68807 不慮の事故 54.537042 121 2.218676 1995 年の結果を示す。男女ともに肝がん、肝硬変の SMR が 3 ないし 4 倍ととくに高い。またそれ以 外にも自殺、不慮の事故においてSMR が 2 倍前後であった。 男性の乳がんのSMR は 1995 年において 5 を超しており高いが、死亡実測値は1であり、SMR の 95% 信頼区間は0.255 から 25.14 であった。2000 年、2005 年、2010 年、2015 年の結果は表示していない が、ほぼ同様であった。 SMR が特に高水準であった肝硬変、肝がんと、比較のため全がん、全死亡の SMR の変化について以 下に示す。 SMR 男 肝がん 肝硬変 全がん 全死亡 2015 2.75101 2.479481 1.510905 1.60193393 2010 3.39208 2.273896 1.511679 1.59632598 2005 3.176741 2.281773 1.562045 1.62646571 2000 3.643437 4.679265 1.637718 1.628801 1995 4.105002 4.181164 1.713331 1.736302 SMR 女 肝がん 肝硬変 全がん 全死亡 2015 2.683268 1.785684 1.497176 1.517394 2010 2.842349 1.520069 1.431087 1.450025 2005 2.481814 1.946427 1.445987 1.501877 2000 2.811795 3.142888 1.442556 1.484133 1995 3.397031 2.85095 1.330987 1.481826

Open source statistics for public health で確認したところ、肝がん、肝硬変、全がん、全死亡のいず れ、またどの年度でもSMR は有意に 1 より高かった。

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14 肝がん死亡率は在日韓国朝鮮人、韓国人、日本人の順で高く、一貫して減少傾向にあるもののその順位 は変動していなかった。 5.考察 在日韓国朝鮮人に肝がんが多い理由 原発性肝がんのうちのほとんどは肝細胞癌である。そしてその原因の内訳としては、近年非アルコール 性脂肪肝炎と呼ばれる生活習慣病をベースとした肝炎から肝細胞癌を発症するケースが増加傾向にあ り注目されているものの、依然としてC 型肝炎ウイルス感染が最多で約 60 パーセント、B 型肝炎ウイ ルス感染が約15 パーセントと、肝炎ウイルスによる肝炎から発症したものが多くを占める。 肝炎ウイルスに感染すると、一過性感染に終わりウイルスが排除されることで治癒に向かうこともある が、ウイルスが排除されることなく持続性感染に移行してしまうと 10~30 年の経過で慢性肝炎、肝硬 変を経て肝がんを発症するに至ってしまうこともある。 それぞれの肝炎ウイルスの特徴を挙げる。B 型肝炎ウイルスはヘパドナウイルス科の DNA ウイルスで あり、感染経路は血液、体液感染であり、性感染や母子感染が原因となることが多い。性感染では感染

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15 後キャリア化することはほとんどなく、また母子感染では感染後キャリア化することが多いが、キャリ アが慢性肝炎へと移行するのはおよそ 10~15 パーセント程度であり、それほど多いとは言えない。ま たワクチンが存在するため、予防が可能である。一方、C 型肝炎ウイルスはフラビウイルス科の RNA ウイルスであり、感染経路は同じく血液、体液感染であるが、性感染や母子感染はほとんど見られず、 注射器の回し打ちや針刺し事故、そしてHCV 発見以前の輸血などの医療行為が原因となることが多い。 感染後キャリア化して慢性感染へと移行するのはおよそ70 パーセントと高率であり、またワクチンも 存在しないので予防することも難しい。 ここで注目したいのがそれぞれのウイルスの感染様式の違いである。B 型肝炎ウイルスには性感染、輸 血、針刺し事故などによる水平感染と母子感染による垂直感染が起こりうるのだが、水平感染では一過 性感染で終わることが多いのに対し、垂直感染では持続性感染に移行することが多い。それに対し C 型肝炎ウイルスは覚醒剤の回し打ちや針刺し事故そしてHCV 発見以前の輸血などの医療行為、すなわ ち医原病による水平感染がほとんどであり、そこから持続性感染に移行することが多い。 以上のようなそれぞれのウイルスの感染様式の特徴を踏まえたうえで、元々韓国人には B 型肝炎ウイ ルス感染による肝硬変、肝がんが多く、また日本では戦時中、戦後に覚醒剤の回し打ちが流行したこと から C 型肝炎ウイルス感染も増えたということを考慮すると、戦前から日本に住んでいた在日韓国朝 鮮人には、母子感染によるB 型肝炎ウイルス感染も多く、医原病としての C 型肝炎ウイルス感染も多 かったということが、在日韓国朝鮮人に肝癌が多い理由として挙げられると考える。 今後とるべき対策 まず、肝癌死亡率が減少傾向であることの理由について考察する。B 型及び C 型肝炎に代表されるウ イルス性肝炎は日本国内最大級の感染症ともいわれ、国民の健康に関わる重要な問題として位置づけら れている。まず、肝炎ウイルス検査について、都道府県、保健所設置市及び特別区では、保健所又は医 療機関において肝炎ウイルス検査を実施している。肝炎ウイルス検診のより一層の受診促進を図るた め、40 歳など特定の年齢の方に対する個別勧奨による検査の取組を推進している。その検査で肝炎ウ イルス陽性であった場合は医療機関で精密検査を受けることになる。そこで大きな役割を果たすのが肝 疾患診療連携拠点病院である。肝疾患の診療ネットワークの司令塔として地域ぐるみの対策を推進する だけでなく、肝炎医療にかかわる人材の育成や地域住民などへの広報活動、肝炎の治療などに関する研 究、そしてウイルス検査受験者数を確実に増加させる取り組みを行うなどの役割が期待されている。治 療が必要と判断された場合、抗ウイルス療法がおこなわれる。治療に際して、原則 1 月あたり 1 万円 (世帯所得の高い方については、2 万円)を超える部分について、医療費が助成される制度になってい る。インターフェロン治療に加えて、核酸アナログ治療(B 型肝炎)やハーボニーなどの DAA(直接 作動型抗ウイルス剤)を用いたインターフェロンフリー治療(C 型肝炎)がある。個人の免疫能を高め ることで作用するインターフェロンでは副作用が見られる、そもそもの免疫力が落ちている高齢者では 適応がない、などの問題点があったが、DAAs ではほぼ完治が期待できるようになった。これらに加え て、より多くの人に肝炎ウイルス検査を受けてもらえるように、著名人による啓発活動などの広報、よ りよい肝炎対策に向けた治療法などの研究もおこなわている。これら一連の対策によって、肝炎が重症 化する前に患者を発見することが出来、結果的に日本人及び在日韓国朝鮮人における肝がんによる死亡 者数の減少につながったと考えられる。韓国の肝がん死亡率については、90 年代から新生児を対象に HBV のワクチン接種が行われており、時期を見ると日本同様に患者数の減少につながっていると考え ることが出来ると考える。 しかし、日本ではこれらの対策が取られてはいるものの、問題点も依然として残されている。B 型肝 炎は発症後の治療よりもワクチンによる感染防御を主体とする対策が取られているものの、厚生労働省 のホームページのイラストに特に記載がない。また、世界の標準が新生児全員に対してワクチン接種を 行う「ユニバーサルワクチネーション」である中日本は2016 年まで母親を検査してウイルスが確認さ れた場合のみワクチン接種を行う「セレクティブワクチネーション」を行っており、この問題点は各方 面から指摘されていた。一方、HCV 排除のための治療および経過のフォローアップに関しては、がん 検診ではスクリーニング検査結果だけでなく精密検査受診者や精密検査の結果、手術結果も公表されて いるにもかかわらず、C 型肝炎については個人情報保護の観点からスクリーニング検査結果のみの公表 となっており、十分にフォローアップがなされているとはいいがたい。 6.まとめ 今後の対策としては、B 型肝炎ウイルスに対する「ユニバーサルワクチネーション」を継続するととも に、C 型肝炎に対する検診に関しては精密検査結果などについて個人情報に配慮したうえで十分にフォ ローアップを行い、最新の有効な治療に結び付けることができるように整えることで、日本人及び在日

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韓国朝鮮人におけるさらなる肝がんの発症数及び死亡数を減らすことが出来ると考える。

7.参考文献

○Hiyama T, et al. Cancer patterns among Koreans in Japan and Osaka. In Tajima K and Sonoda S (eds.) Monograph on Cancer Research No.44. Ethnoepidemiology of Cancer 1996; 59-66. ○Tanaka H, et al. Declining incidence of hepatocellular carcinoma in Osaka, Japan, from 1990 to

2003. Ann Intern Med 2008; 148:820-826.

○人口動態調査別表下巻日本における外国人,外国における日本人第1表死亡数(日本における外国人 -国籍別,外国における日本人),性・死因(死因簡単分類)別 https://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020102.do?_toGL08020102_& tclassID=000001041652&cycleCode=7&requestSender=estat ○国勢調査報告 国籍(11 区分),年齢(5歳階級),男女別外国人数-全国 平成 22 年国勢調査第 58 表,平成 12 年国勢調査第 87 表 ○国立がん研究センターがん情報サービスがん登録・統計.人口動態統計によるがん死亡データ(1958 年~2014 年)http://ganjoho.jp/data/reg_stat/statistics/dl/cancer_mortality(1958-2014).xls ○Open Source Statistics for Public Health. Standardized Mortality Ratio.

http://www.openepi.com/SMR/SMR.htm

○国立がん研究センターがん情報サービスがん登録・統計「グラフデータベース」 http://gdb.ganjoho.jp/graph_db/index?lang=ja

○WHO Cancer Mortality Database http://www-dep.iarc.fr/WHOdb/WHOdb.htm

○肝がん白書 平成27 年度 https://www.jsh.or.jp/files/uploads/Liver%20Cancer%202015.pdf ○厚生労働省 肝炎総合対策の推進 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/ ○肝炎ウイルス検査 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/hepatitis_kensa.html ○各自治体における肝炎ウイルス検査の実績 平成27 年度 特定感染症検査等事業(PDF:496KB) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/kensa-16.pdf 平成 27 年度 健康増進事業(PDF:464KB) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/pdf/kensa-17.pdf ○平成28 年 3 月 30 日に開催された大阪府がん対策推進委員会での(参考資料6)_01 肝炎等克服政策研 究事業を利用した大阪府におけるフォローアップ事業について http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/15663/00216800/sankousiryou6-1.docx

参照

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