(1)-0-
戸別所得補償制度に対する
JAグループの政策提案
~ 我われのめざす農業政策と5つの提案 ~
平 成 2 2 年 1 0 月
全国農業協同組合中央会
はじめに
Ⅰ.我々のめざす農業政策(3つの政策の柱と5つの提案)・・・・・・・・・・・・ 2
Ⅱ.戸別所得補償制度 に対する 5つの提案
提案1.農業の多面的機能の発揮に向けた政策の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
提案2.米の需給・価格安定対策の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・4
(1)米の計画生産と出口対策の構築による需給調整
(2)総合的な備蓄政策の確立
(3)22年度における緊急需給調整対策の早期実施
提案3.生産振興と所得確保をはかる品目別政策の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
(1)地域裁量に基づく水田利活用の取り組みへの十分な支援
(2)作物生産の振興と生産性向上による所得確保をはかる条件整備対策の確立
提案4.担い手の育成・確保と経営安定をめざす政策の確立・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
(1)地域・品目ごとの価格変動に対する担い手へのセーフティネットの確立
(2)地域農業の担い手づくりや農地集積をはかる政策の確立
提案5.国・行政が主体となる戸別所得補償制度にかかる推進・実施体制の確立・・・・・・・13
(1)国・行政が主体となる米の需給調整システムの確立と食糧法改正
(2)戸別所得補償制度にかかる実施体制の確立
【 目 次 】
(2)-1-
【はじめに】
○ 政府は、23年度からの戸別所得補償制度に対して、8月31日
に概算要求案として「農業者戸別所得補償制度概算要求の骨子」を
示した。
○ 国 家 戦 略 で あ る 新 た な 基 本 計 画 が 大 き な 柱 と し て 位 置 づ け た 戸
別所得補償制度は、農業者の経営安定と国内生産力の確保を図るた
めの重要な政策であり、生産者の期待は大きい。
○ 例えば、米の計画生産をはかる上での直接支払いとしての「米所
得補償交付金」や畑作における「営農継続支払」、水田自給力向上
を地域裁量ですすめる「産地資金」の仕組み、生産者の努力が報わ
れる仕組みとしての「畑作物の所得補償交付金」などは評価できる。
○ 一方、生産現場が求める需給・価格安定対策や担い手の育成・確
保対策などについて課題があり、生産現場の実態や意見をふまえた
制度の改善・見直しを行う必要がある。
○ とりわけ、水田農業については、引き続く需要減少のもとでの過
剰米の発生や米価低落の状況が続いており、生産者の将来にわたる
安 定 的 な 営 農 や 国 民 に 対 す る 食 料 の 安 定 供 給 に 支 障 が 生 じ か ね な
い。
○ JAグループは、全国のほぼ全ての農業者が組合員であり、地域
に根ざした組織として、23年産の営農準備をすすめながら、多様
な地域実態を踏まえつつ、地域農業の展開方向と農業者の営農の安
定と経営安定をはかる観点から、建設的な提案をまとめたものであ
る。
(3)-2-
Ⅰ.我々のめざす農業政策(3つの政策の柱と5つの提案)
≪補足≫
○ 戸別所得補償制度の目的・理念は、生産コスト と販売価格の差額を補てんす
ることで、農業経営の安定と国内生産力の確保を図り、食料自給率の向上と多
面的機能を維持する こととしている。
○ しかし、わが国農業は、アジア・モンスーン気候の中で、日本列島で多種多
様な農業形態が存在し、土地利用型農業では高齢化や担い手不足、零細 な生産
構造、品目ごとの需給問題など、幅広い課題を全国一律的に生産コストと販売
価格の差額補てんを講じたのみでは、 解決できない。
○ 農業経営の安定と国内生産力の確保を図るためには 、需給・価格を国内外の
市場原理のみに任せて、差額補てんすることよりも、一定の国境措置のもとで
品目ごとの需給と価格の安定を図りつつ、生産性向上と生産振興努力を促す政
策、地域の担い手の育成・確保や農地集積を図る政策を総合的に講じることが
必要と考える。
【総合的な政策体系の確立のイメージ】
○ 23年度から実施する農業政策は、農業所得の増大と農家の経営安
定による自給力向上に向け、農業のあるべき姿と地域農業の将来像を
描いた上で、①農業の多面的機能に対する直接支払政策、② 需給・価
格の安定と生産振興をはかる品目別政策、③担い手の育成・確保と経
営安定をめざす政策等、3つの政策を柱とした総合的な政策体系を構
築すべきである。
○ 戸別所得補償制度は、EPAなど貿易自由化の代償措置ではなく、
国の責務である安定供給のための食料の安全保障、農業経営の安定と
自給率向上政策として明確に位置付けるべきである。
農業・農村の現状 政策のめざす方向 必要な総合的な政策体系
農業の多面的機能の発揮に向けた政策
農業経営の安定
生産力の維持
自給率の向上
多面的機能の維持
農業所得・生産額の減少
高齢化・担い手不足
農村・集落機能の低下
食料自給率の低下
零細な生産構造のまま
米の需給・価格安定対策
担い手育成・確保と経営安定をめざす政策
国・行政が主体となる戸別所得補償制度に
かかる推進・実施体制
一定の国境措置が大前提
生産振興と所得確保をはかる品目別政策
(4)-3-
Ⅱ.戸別所得補償制度に対する5つの提案
提案1.農業の多面的機能の発揮に向けた政策の確立
≪補足≫
○ 今後、農業の持続的発展のためには、政策手法を国民理解のともなう食料安
定供給も含めた多面的機能への支援に方向転換していく必要 がある。
○ 一方、 戸別所得補償制度の目的・理念は、「食料自給 率の向上と農業の多面
的機能を維持すること」とされて おり、政府案にある米の所得補償交付金(1.5
万円/10a)や畑作物の営農継続支払(2.0 万円/10a)は、計画的な農地利用に
よる多面的機能の維持を 評価し、営農継続できる再生産 コストを補てんする 直
接支払として、明確に位置付けるべき である。
○ 政府案の米の所得補償交付金は、家族労働費8割評価で 1.5 万円/10a を固
定することで、毎年の生産コストに基づく「生産費と販売価格の差額補てん」
の仕組みとなっていない。
○ 野菜・果樹・畜産・酪農を 含めて、全ての農地に対し、農地を農地として利
用し、多面的機能を維持し得るまでの コストを補てんする 直接支 払を基礎に、
さらに地域実態に応じて条件不利のコスト差や農地・水保全、環境保全の取り
組みへの補てんとして、中山間地域等への直接支払を位置づけることが必要。
【我々の主張する直接支払・担い手セーフティネット・品目別対策のイメージ】
○ 国民的合意のもとで、持続的・安定的な政策を構築するため、野菜・
果樹や水田・畑作をはじめ農地を利用する耕種、畜産・酪農など、全
ての農地に対する多面的機能の価値評価を基本とした直接支払制度
の一つとして、戸別所得補償制度を確立すべきである。
○ 米の所得補償交付金や畑作物の所得補償交付金の営農継続支払は、
多面的機能維持を目的とした直接支払と位置づけるべきである。
○ 中山間地域等直接支払制度および農地・水保全管理支払・環境保全
型農業支払などは、条件不利のコスト差や環境保全の取り組みへの補
てんとして、地域実態に応じた仕組みの充実を行うべきである。
販売価格
販売価格 生産コストと
販売価格の
差額補てん
販売価格
食料安定供給多面的機能発揮に対する直接支払
(全農地・地目別)
(緑の政策)
中山間地域直接支払制度、農地・水保全管理支払、環境保全型農業支払
<米> <転作作物> <その他作物> <畑作物>
担い手
セーフティネット
主食用米並
以上の所得を
実現する支援
販売価格
担い手
セーフティネット
品目別対策
販
売
価
格
生
産
コ
ス
ト
販
売
価
格
需給と価格の
安定を図る
品目別対策
条件不利
コスト差
(5)-4-
提案2.米の需給・価格安定対策の確立
(1)米の計画生産と出口対策の構築による需給調整
≪補足≫
○ 米について、全国一律の米価変動補てん交付金を引き続き講じるとし ている
が、差額分が取引価格の引き下げ圧力となるといった弊害 や生産意欲を阻害し
かねず、また、下落の補てん分の財政負担の増大は、十分な国民理解が得られ
ない。
○ 米価下落によって計画生産を促すという米の戸別所得補償のねらい も、かえ
って計画生産を実施した生産者の経営不安 をもたらすことになりかねない。
○ したがって、主食用米以外の作 物振 興に対する 支援の予算の 充実 をはじめ、
過剰作付の削減に向けた計画 生産の徹底とともに、どうしても生じる作柄・需
給の変動による需給ギャップを解消 し、結果として自給率向上につながる主食
用米以外への転換にかかる出口対策の構築が必要である。
【米の需給・価格政策に関する考え方】
政府案 JAグループ政策提案
○ 国として需要に応じた生産誘導を行
う一方、豊作など過剰が生じた場合の
対策はなし。
○ 需給の安定をはかるためには、需要
に応じた生産(入口対策)とあわせ、
どうしても豊作分等をコントロールす
る国の対策(出口対策)が必要。
○ 米価が下がった場合は、全国平均価
格で下落分を生産者補てん。
○ 米価が下がった場合の対策を講じる
前に、米価が安定するための対策(出
口対策)が必要。
○ 豊作や国の需給調整に参加しない過
剰作付の影響によって販売残が生じた
場合は、当該産地の自己責任。
○ 需 要 に 応 じ た 生 産 を 達 成 し た 生 産
者・産地のため、国の出口対策や、産
地自らが行う需給改善の取り組みに対
する政府の支援が必要。
○ 戸別所得補償制度の本格実施にあたり、適正な需給・価格環境を整
備することが不可欠であり、米価が大幅に下落する事態を招かないよ
う、国の責任として計画生産の徹底や、出口対策の構築を含めた米の
需給・価格安定対策を確立すべきである。
○ このため、棚上備蓄の運用とともに、需給状況に応じて自主的に主
食用米以外へ転換する場合の政府の支援策を確立すべ きである。
(6)-5-
(2)総合的な備蓄政策の確立
≪補足≫
○ 農水省は、23年度からの備蓄運営方式として、国内産米 100 万トンを5年
間の棚上備蓄(20 万トンずつ5年で回転)への転換を8月末に概算要求。一
方、需給に影響を与える政府買入は行わないという見解を示しており、一切の
出口対策を講じないという姿勢。
○ どうしても生じる作柄や需給変動に対応した出口対策として、国産米の政府
備蓄について、食料安全保障に加え、米の需給安定を目的として明確に位置づ
けたうえで、出口対策の機能を あわせ持つ棚上備蓄を制度として構築する必要
がある。
○ このため、一定のルールの下に、作柄や生産過剰等により数量を決める 買入
数量が予見することができるよう、買い入れ 数量・手法を明確化して 実施する
ことが必要である。
○ また、飼料用米や米粉用米などの 非主食用米についても 、今後の生産誘導・
増産に対応し、円滑に流通・消費されるよう、政府として総合的な備蓄運営を
はかる必要がある。
【総合的な備蓄政策のイメージ】
○ 国産米の政府備蓄は、食料安全保障に加え、米の需給安定を目的と
して明確に位置づけた上で、棚上備蓄による運営を基本に、出口対策
の機能を併せ持つ政府買入手法を構築すべきである。
○ 飼料用米 や米粉 用米など の非主 食用米に ついて も、今後 の生産誘
導・増産に対応し、円滑に流通・消費されるよう、国産米の政府備蓄・
MA米とあわせ、政府としての米の総合的な備蓄 運営をはかるべきで
ある。
○ 備蓄水準は、食料安全保障の観点から、現在の
100 万トン水準を
大幅に拡充し、国際需給の逼迫等に対応し得る水準にすべきである。
[国内市場
主
食
用
米
海外市場
【主食用米備蓄】
【 非 主 食 用米
備 蓄 】
米の総合的備蓄(国)
棚
上
備
蓄
【目的】
・食料安全保障
・主食用米の需給と価格の安定
・非主食用への安定供給
非主食
用米
非主食
用米
食料安全保障の
ため備蓄拡大
需給緩和と価格の下落
に対応した政府買入
非主食用米の管理
主食用
緊急時
平 常 時
一定期間備蓄し、
非主食用に提供
加工用
飼料用
米粉用
非食用
海外援助用
非主食用途として低価格
で輸入 MA米
非主食
用米
(7)-6-
(3)22年度における緊急需給調整対策の早期実施
≪補足≫
○ 21年産米は、政府の需要見通しを上回る米消費の減少や20年産米の大量
持 越 し に と も な う 契 約 ・ 販 売 進 度 の 大 幅 な 遅 れ な ど か ら 、 価格は出来秋から
1,000 円/60 ㎏近く下落したうえ、30 万トン以上が古米として持ち越される見
通し。
○ さらに、22年産米は、約 4 万 1 千 ha 過剰作付けと需要減により、26 万ト
ン程度の過剰米の発生 が懸念されており、21年産米の持越し在庫などと合わ
せ、50~60 万トンもの需給ギャップが生じかねない。
○ こうした状況を放置すれば、22年産米の全国的な価格下落と数年にわたり
低米価が定着化することへの危惧、在庫を抱える産地・生産者の所得減少、国
の財政負担増、全国的な生産数量目標の削減 等により、国の需給調整と米戸別
所得補償制度に参加した農家ほど、営農の不安や制度への不信を抱きかねない 。
○ かかる危機的な状況を改善し、稲作生産者が安心して経営を展望できるよう、
政府は、過剰米の市場隔離や棚上備蓄の前倒し実施等の緊急的な需給調整対策
を早急に実施すべき である。
【20・21・22年産米相対価格の推移】
○ 米の需給・価格環境を整備し、23年度からの円滑な制度移行をは
かるため、22年産米からの棚上備蓄の早期実施等の緊急需給調整対
策を講じるべきである。
(8)-7-
提案3.生産振興と所得確保をはかる品目別政策の確立
(1)地域裁量に基づく水田利活用の取り組みへの十分な支援
① 地域裁量による取り組みを支援する仕組みの構築
≪補足≫
○ 22年度の激変緩和措置では、以前の「産地確立交付金」と比較して、遜色
ない支援単価と予算額を確保できた地域がある一方、麦・大豆や地域振興作物、
あるいは団地化加算等へ十分な予算が確保できず、これまでの取り組みの継続
に不安視をしている地域も多い。
○ 「産地資金」の予算枠は 430 億円程度と提示されたが、激変緩和調整枠(22
年度:260 億円)とその他作物助成(22 年度:204 億円)の合計額(464 億円)
よりも減少しており、 十分な予算の確保がされない懸念 がある。
○ 地域ごとにおいて、品目別の単収や販売価格の状況は大きく異なり、地域に
よって振興すべき転作作物や 、主食用米以上の所得を実現するために必要な支
援方法も多種多様であるため、「産地資金」は、地域裁量に基づき、対象作物
や単価、加算措置等を設定できる仕組みと十分な予算の確 保が必要である。
【品目別所得の状況(全中試算・全国)】
○ 水田の転作作物への支援にかかる産地資金について、地域裁量に基
づき、対象作物や単価設定、担い手・団地加算等を柔軟に設定できる
仕組みとして、地域の創意工夫ある取り組みを可能とするため、また、
主食用米以上の所得が確保できるよう、十分な予算を確保するべきで
ある。
(単位:千円/10a)
販売収入 販売収入 収入合計 経営費 所得 (参考)
転作率 (流通経費除) うち うち 平年単収
38.5% ① ② 畑作物 水田活用 ③=①+② ④ ③-④ (kg/10a)
12 79 44 35 91 45 46 412
16 66 31 35 82 45 37 164
42 25 80 ― 80 105 69 36 530
15 0 80 ― 80 80 69 11 600
15 0 93 ― 93 93 69 24 600
60 20 ― 20 80 69 11 530
106 15 ― ー 121 80 41 530
106 ― ― ー 106 80 26 530
戸別所得補償交付金
主食用米
需給調整参加
需給調整非参加
加工用米
〔わら利用の場合〕
飼料用米
米粉用米
大豆(田)
小麦(田)
現 在 の支 援 水
準 では主 食 用
米 を 超 え る 所
得 は 確 保 で き
ない。
米 と 転 作 作 物 に お け る 所 得 比 較 (10a 当 た り の イ メー ジ )試 算 に お け る農 水 省 試算 と 異な る 前 提 条 件
1 . 大 豆 の 単 収 : 平 年 単 収 (164kg/10a) を 使 用 → 国 は 203kg/10a( 低 単 収地 域を 除いた 数値 )
2 .飼 料 用 米 の 販 売 収 入:単 価25 円 /60 ㎏( 直 近の 全農 飼料 用米 販売 価格 )、流通 経費 1.5 千 円 /60 ㎏ 、
単 収600 ㎏ で 試算 。 → 国は 単価 31 円 /60 ㎏ 、 流 通経費 1.1 千 円 /60 ㎏ 、
単 収650 ㎏ ( 先進 事例 )で 試算 。
3 . 加 工 用 米 の 販 売 収 入 :22 年 産概 算金 A: 7,500 円 、 B: 4,000 円 を 8 :2 (= 6,800 円 ) で試 算
→ 国 は19 年 産 全農 販売 価格 9,335 円 を 使 用 。
4 . 米 粉 用 米 ・ 飼 料 用 米 ・ 加 工 用 米 の 経 営 費
: 主 食 用 米 の 経 営 費 か ら さ ら に 「 農 機 具 費 お よ び 自 動 車 費 の 償 却 費 」 の 6 割 を 控 除 ( 4 割 転 作 )。
→ 国 は 「 農 機 具 費 お よ び 自 動 車 費 の 償 却 費 」 の 1 0 割 を 控 除 。
(9)-8-
② 水田利活用の取り組み拡大に対応できる十分な予算の確保
≪補足≫
○ 現下の需給ギャップ 50~60 万トンをこのまま放置した場合、23年産米の
生産数量目標は 大幅 に削減される懸念の一方、23 年度水田活用所得補償交付
金の予算額は、22 年度と同水準の転作面積に対応する前提で積算されている。
○ さらに今後、米消費量の減少がすすむことで、生産数量目標の削減 による転
作強化となっても、主食用米以上の所得が確保でき る単価設定や産地資金の増
額が可能となるよう、十分な財源の確保が必要である。
○ また、米モデル事業では、計画生産と水田利活用事業とのリンクがなく なっ
たが、転作実施は地域を単位にまとまって効率的に実施することが基本 であり、
計 画 生 産 と リ ン ク し た 仕 組 み と す る と と も に 、 需 給 調 整 参 加 の た め の 地 区 達
成・超過達成への加算や地域間調整の促進策が必要 である。
【主食用米の需要量の推移】
【主食用米の需給安定と自給率向上のために必要な取り組みイメージ】
○ 水田活用の所得補償交付金および産地資金は、転作強化に対応でき
る十分な予算を確保するとともに、転作拡大分に応じて支援単価の維
持が可能となるような仕組みを構築すべきである。
○ 水田活用の所得補償交付金や産地資金は、需給調整の実効性を高め
るとともに、地域の取り組みを促進する上で、計画生産とリンクした
仕組みとするべきである。
○ 畑地についても、輪作体系の持続的発展に向けた地域の取り組みを
支援するため、産地資金を地域裁量に基づき柔軟な対応ができる仕組
みと十分な予算を確保すべきである。
① 21年産 の持越 し在庫 (推定) :約 35 万トン
② 22年産 で推定 される 需給ギャ ップ ( 政府見 通し):26 万ト ン
③ 最近の消 費減ト レンド を22年 度・2 3年度 における 需要減 (推定 ) :約 20~40 万 トン
◎ 主食用 米の需給均 衡 と自給率向上のため必要 な麦・大 豆・飼料 用米等 の拡大面積
⇒ 約 80~100 万 トン相当、約 15~19 万 ha の主食 用米作 付を他 の作物へ 転換す る必要 。
【 補 足 】
① → 全 農 推 定
② → 2 2 年 産 の 生 産 量 ( 831 万 t ) と 22/23 年 需 要 量 の 国 の 見 通 し ( 805 万 t ) と の 差 : 2 6 万 ト ン
③ → ア + イ + ウ = 約 4 0 万 ト ン
ア . 22/23 年 需 要 量 の 国 の 見 通 し ( 805 万 t ) と 全 中 試 算 ( 796 万 t ) と の 差 : 9 万 ト ン
イ . 22 年 産 生 産 数 量 目 標 ( 813 万 t ) と 22/23 年 需 要 量 の 全 中 試 算 ( 796 万 t ) と の 差 : 1 7 万 ト ン
ウ . 22/23 年 需 要 量 実 績 ( 796 万 t ) と 23/24 年 需 要 量 の 全 中 試 算 ( 782 万 t ) と の 差 : 1 4 万 ト ン
※ 国 の 需 要 見 通 し は 、 過 去 1 5 年 の ト レ ン ド で 算 定 ( 毎 年 平 均 約 9 万 ト ン ず つ 減 少 と 予 測 )
※ 全 中 試 算 は 、 過 去 5 年 の ト レ ン ド で 推 計 ( 毎 年 平 均 約 1 4 万 ト ン ず つ 減 少 と 予 測 )
→ 19/20 年 は 、 小 麦 等 高 騰 に よ る 一 時 的 な 値 と し て 、 国 算 定 と 同 様 に 除 い て 試 算 。 ※ 使 用 単 収 は 平 年 単 収 530kg/10a
943.8
912.9
907.3
885.9
911.5
872.1
894.7
861.6 865.4
851.7
837.5 854.5
823.6
809.6
700
750
800
850
900
950
8/9 9/10 10/11 11/12 12/13 13/14 14/15 15/16 16/17 17/18 18/19 19/20 20/21 21/22 22/23 23/24 24/25 25/26 26/27
国による需要見通し
804.6万トン
※ 過去15年のトレンドに
よる算定(毎年9万トンずつ
減少の想定)
ここ5年は毎年約14万トンずつ減少
※ 国の算定同様19/20年は除く
※ 約2.6万ha削減分
万トン
年
(10)-9-
(2)作物生産の振興と生産性向上による所得確保をはかる条件整備対策の確立
≪補足≫
○ 政府案では、麦・大豆等の畑作物についても、生産数量目標を設定する とし
ているが、生産・販売の実態に即したものとすべき であり、また、生産数量目
標の設定を行う前提として、増産を実現可能とするよう、インフラ・流通整備
および実需者の国産引取の促進対策の実施等、増産した畑作物が需要に確実に
結びつくことができる 対策や、増産に対応したインフラ・流通整備対策などの
条件整備が必要である。
【生産振興に向けた条件整備対策】
○ 麦・大豆等の畑作物にかかる生産数量目標の設定にあたっては、増
産した畑作物が需要に確実に結びつくことができる対策や、増産に対
応した機械・施設・流通整備対策の実施など、真に増産が実現可能と
なるような品目別の条件整備対策を講じるべきである。
○ 農業関係予算が減少するなかで、自給率向上を支える生産振興対策
として、農業基盤整備や強い農業づくり交付金などを含め、戦略作物
や野菜・果樹等を含めた地域振興作物の生産・流通・施設整備にかか
る予算については、生産現場のニーズに対応しうる十分な財源確保を
行うべきである。
≪飼料用米≫
○ 飼料用米を大幅に増産し得る生産振興・流通整備対策。 数量支払的な交付の検討。
○ 需給状況に応じて 主食用米を飼料用米に転換する自 主的な取り組みに対して、水田
活用の所得補償交付金による支援 。
≪加工用米≫
○ 加工用途への国産米の使用増大 のための 低価格帯の加工用米への支援の強化。
≪新規需要米≫
○ バイオ燃料用米に対する水田活用の所得補償交付金の継続。
○ 新規需要用途の拡大に向けた支援対策。
≪麦≫
○ 国内麦の振興・増産と安定供給のための麦管理制度と播種前契約を 前提に、国内麦
の円滑な流通を支援する対策 。
○ 交付対象麦について、播種前契約した麦だけでなく全量を交付対象。
≪大豆≫
○ 現下の過剰在庫や販売不振状況を改善し、23年産以降における増産が可能となる
ような、国産大豆の需要確保対策。
≪畑作物における品質加算≫
○ 品目毎の実態をふまえた等級間における価格差や数量比率等の単価設定。
≪農地の有効利用≫
○ 再生利用加算 とあわせ、不作付地に作付する作物の産地形成への支援や基盤整備 の
充実等。
(11)-10-
提案4.担い手の育成・確保と経営安定をめざす政策の確立
(1)地域・品目ごとの価格変動に対する担い手へのセーフティネットの確立
① 米の収入変動に対するセーフティネット
≪補足≫
○ 米の産地・銘柄間において、最大1万円/60kg 以上の価格差があるとともに、
銘柄ごとの作柄や需給によっては、価格変動が全国平均の動きと比較して大幅
に下落する場合も多い等、価格・収入の状況は、産地・銘柄ごとによって異な
っているのが実態である。
○ 特に、大きな価格・収入変動が生じた場合に、経営に大きな影響 が出てしま
う担い手に対しては、全国平均における米価変動補てん交付金ではなく、どう
しても地域・銘柄ごとに生じる価格・収入変動に対する万全なセーフティネッ
ト対策を講じるべき ではないか。
【産地銘柄別の相値価格の推移】
○ 当年産の米価下落分を補てんする米価変動補てん交付金につい て
は、取引価格の引き下げ圧力等の弊害があることから、需給・価格安
定対策を構築したうえで、地域・品目ごとの価格・収入の変動に対す
る担い手 の経営安定をは かるセーフティ ネット対策を講 じるべき で
ある。
全国平均よりも大きく下落
する地域銘柄へのセーフテ
ィネット対策が必要
(59 銘柄中 32 銘柄が全国
平均よりも大きく下落)
(単位:円/60㎏)
18年産 19年産 差額
全銘柄平均 15,203 14,164 ▲ 1,039
東北A銘柄 16,392 14,649 ▲ 1,743
関東B銘柄 15,309 13,784 ▲ 1,525
北陸C銘柄 18,272 16,390 ▲ 1,882
東海近畿D銘柄 15,244 14,036 ▲ 1,208
中四国E銘柄 15,142 14,168 ▲ 974
九州F銘柄 14,917 13,808 ▲ 1,109
※ 相対取引価格の銘柄別平均(農水省公表)を使用
13,500
14,000
14,500
15,000
15,500
16,000
16,500
17,000
17,500
18,000
18,500
18年産 19年産
全銘柄平均
東北A銘柄
関東B銘柄
北陸C銘柄
東海近畿D銘柄
中四国E銘柄
九州F銘柄
(12)-11-
② 畑作物の収入変動に対するセーフティネット
≪補足≫
○ 政府案 では、麦・大豆等の畑作物の収入変動対策については、「現行のナ ラ
シ対策を廃止」と記述され、23年度以降において、畑作物における収入変動
対策は一切講じないという姿勢 。
○ しかし、大豆は、輸入され国境措置のないなかで 外国産大豆との競合で 価格
下落が生じており、麦も国際相場により変動する外麦価格に 連動して価格が決
定せざるをえないため、今後の国際的な穀物相場の変動状況や国内生産拡大に
ともない国内価格も大きく変動していく可能性があり、担い手への経営に影響
を及ぼす懸念がある。
○ そのため、麦・大豆などの畑作物については、品目ごとにおける価格・収入
の変動に対する担い手へのセーフティネット対策を講じる必要 がある。
○ また、畑作物の所得補償交付金 については、こうした直近の需給・価格状況
をふまえ、より生産者の販売手取り実態 を反映したものとなるよう、より直近
の価格状況を反映する 期間での算定や、基準価格への実勢販売価格の 反映を検
討する必要がある。
【大豆における実勢価格の推移】
○ 畑作物における現行の収入減少影響緩和対策(ナラシ)を廃止する
としているが、今後、国際相場の変動にともない国内価格が大きく変
動する恐れのある麦・大豆など畑作物についても、地域・品目ごとの
価格・収入の変動に対する担い手の経営安定をはかるセーフティネッ
ト対策を講じるべきである。
6,906
6,498
7,212
6,324
6,931
6,833
7,355
7,017
6,648
5,800
6,000
6,200
6,400
6,600
6,800
7,000
7,200
7,400
7,600
17年産 18年産 19年産 20年産 21年産
価格
(60k
g)
総平均価格
入札平均価格
21年産総平均価格は、20年産対
比▲600円/60kg程度の見通し
(13)-12-
(2)地域農業の担い手づくりや農地集積をはかる政策の確立
≪補足≫
○ 22年度モデル対策 において、対象農業者を生産数量目標に従って生産する
全販売農家・集落営農としたが、これまで地域ですすめてきた認定農業者の育
成や集落営農の組織化、担い手への集積・団地化等の担い手 育成の取り組みに
混乱を招いた事例も見受けられる。
○ 23年度以降の戸別所得補償制度の対象者についても、生産数量目標に従っ
て生産する全販売農家・集落営農としている 。
○ しかし、水田農業においては、これまでの担い手づくりの取り組みを後退さ
せることのないよう、集落営農法人化の加算措置のみならず、担い手の育成や
農地の集積、担い手の経営安定に寄与する政策支援を 、戸別所得補償制度の本
体とは別途、明確に 講じる必要があるのではないか。
【水田・畑作経営所得安定対策加入者(担い手)によるカバー率】
○ これまで各地域で行われてきた集落営農や認定農業者などの担い
手づくりの取り組みや、農地への面的集積による生産性向上の取り組
みをより一層すすめることが重要であり、担い手育成・確保をはかる
政策を実施すべきである。
○ 具体的には、①担い手への地域銘柄ごとに生じる収入減少に対する
セーフティネット対策の確立、②水田活用の所得補償交付金における
担い手集積・団地化等への加算措置の充実、③担い手への農地集積を
促進する交付金制度の実施等の政策を講じていくべきである。
加入面積 全作付面積 カバー率 加入面積 全作付面積 カバー率 加入面積 全作付面積 カバー率
ha ha % ha ha % ha ha %
436,869 1,636,864 26.7% 471,902 1,596,276 29.6% 490,866 1,535,274 32.0%
認定農業者 330,538 ― 20.2% 359,906 ― 22.5% 376,072 ― 24.5%
集落営農組織 106,331 ― 6.5% 111,996 ― 7.0% 114,794 ― 7.5%
253,860 264,000 96.2% 254,953 265,400 96.1% 256,327 266,200 96.3%
認定農業者 187,293 ― 70.9% 188,308 ― 71.0% 191,355 ― 71.9%
集落営農組織 66,567 ― 25.2% 66,645 ― 25.1% 64,972 ― 24.4%
110,073 138,300 79.6% 120,054 147,100 81.6% 120,899 147,100 82.2%
認定農業者 70,353 ― 50.9% 77,453 ― 52.7% 78,852 ― 53.6%
集落営農組織 39,721 ― 28.7% 42,601 ― 29.0% 42,047 ― 28.6%
てん菜 66,027 66,600 99.1% 65,585 66,000 99.4% 64,098 64,500 99.4%
22,191 ― ― 21,223 ― ― 20,741 ― ―
※ 全作付面積:米は実作付面積(加工用米等除く)、その他作物は作物統計より
大豆
でん粉原料用ばれいしょ
平成21年度
平成19年度 平成20年度
米
4麦
(14)-13-
提案5.国・行 政 が主 体となる戸 別所 得 補 償制 度にかかる推 進 ・実
施体制の確立
(1)国・行政が主体となる米の需給調整システムの確立と食糧法改正
≪補足≫
○ 22年度米モデル事業は、生産数量目標がそのまま交付金額に直結するとと
もに、国が計画生産の実効性を確保するために講じる政策であり、現在の食糧
法の規定する農業者・農業者団体が主体となり配分・調整・推進を行うという
政策体系と矛盾していたため、行政と農業団体との役割分担等で混乱が生じた
事例も見受けられる。
○ 政府案は、「生産数量目標の達成に向けて、行政が主体性を発揮する仕組み
を検討する」としており、国は食糧法の下で主要穀物たる米の需給と価格の安
定を図る責務を有しているため、その主たる手法の 生産調整は、国・行政が実
施主体として、目標配分と達成に責任を持つ「国・地方行政が主体となる需給
調整システム」を再構築すべき である。
○ あわせて、農業者・農業者団体は生産調整の実行 主体として、達成に向けた
最大限の努力と行政への協力を行う仕組みとするべき ではないか。また、こう
した仕組みとするためには、農業者・農業者団体が主体となる需給調 整システ
ムを基本とした、現行の 食糧法および関係規定を改正する必要 がある。
【需要量情報の提供と22年度米モデル事業の流れ】
○ 食 糧 法 の 下 で 主 要 穀 物 た る 米 の 需 給 と 価 格 の 安 定 を 図 る 国 の 責 務
として、米の生産調整は、国・行政が実施主体として、目標配分と達
成に責任を持つ需給調整システムを構築するよう、食糧法および関係
規定を改正すべきである。
【需要量情報の提供とモデル事業の流れ】
報告
報告
○ ○ ○ ○ ○
農水省
情報提供 地方
農政事務所
都道府県
情報提供
調整
市町村
地域水田協議会
市町村、JA等生産出荷団体、
農業共済組合等
情報提供
情報提供 確認・報告
情報提供
戸別所得補償モデル対策交付金
(生産面積≒配分面積に交付)
JA 販売業者集荷・
個人
農業者
非参加
農業者
生産調整方針を作成・
認定された生産出荷
団体・個人農業者 配分 配分 報告
認定方針
作成者
方針参加
農業者
県別の米の需要
量情報の策定
協議会事務局
(H21)
市町村:49%
JA等:36%
市町村JA共
同:15%
(15)-14-
(2)戸別所得補償制度にかかる実施体制の確立
≪補足≫
○ 農水省案の中で、「事務については、国が市町村に委託し、市町村に設置さ
れる農業再生協議会のメンバーが協力して事務を行う体制を検討」とあるが、
事業実施の責任主体は、あくまで国・行政であることを明確にする必要 がある。
○ 具体的には、市町村が設置する協議会については、事務局の主体・調整機能
等を市町村行政が担うとともに、必要業務を構成団体等が担う場合は、人件費
等も含めて負担が発生しないよう、必要な経費は国・行政が負担すべき である。
○ また、農業再生協議会は、関係機関が一体となり、これまでの「地域水田農
業ビジョン」のような 地域ごとの担い手育成・作物振興・農地利用や面的集積
等 に つ い て の ビ ジ ョ ン と 実 現 方 策 を 描 き 実 践 し て い く 地 域 農 業 振 興 の 推 進 主
体として位置付けるべき である。
【現在の地域水田農業推進協議会の主な役割】
【地域担い手育成協議会の取り組み内容】
○ 生産数量目標の設定・配分・確認と制度の推進など、戸別所得補償
制度の事業実施主体は、国および地方行政であることを明確にすべき
である。
○ 市町村が設置する農業再生協議会については、事務局の主体・調整
機能等を市町村行政が担うとともに、構成団体の役割分担を明確化し
たうえで、構成団体の取り組みにかかる必要な経費は国・行政におい
て負担すべきである。
○ 農業再生協議会は、関係機関が一体となり、これまでの「地域水田
農業ビジョン」のような地域ごとの担い手育成・作物振興・農地利用
や 面的 集積 等につ いて のビ ジョン と実 現方 策を描 き実 践し ていく 地
域農業振興の推進主体として位置付けるべきである。
① 地 域 水 田 農 業 ビ ジ ョ ン の 策 定 、 実 施 状 況 の 点 検 ・ 見 直 し
・ 地 域 農 業 の 特 性 を 活 か し た 作 物 振 興 の 将 来 方 向 と 実 現 手 段
・ 水 田 利 用 の 将 来 方 向 と 実 現 手 段
・ 担 い 手 の 明 確 化 と 育 成 の 将 来 方 向 、 担 い 手 リ ス ト
・ 米 の 生 産 調 整 の 取 り 組 み 方 針 、 推 進 手 法
② 米 の 生 産 調 整 関 連
・ 生 産 出 荷 団 体 等 へ の 需 要 量 情 報 ( 配 分 数 量 ) の 算 定
・ 生 産 出 荷 団 体 等 か ら 計 画 生 産 参 加 農 業 者 へ の 配 分 ル ー ル の 設 定
・ 生 産 調 整 の 推 進 に 関 す る 事 務
・ 生 産 調 整 の 達 成 状 況 に 関 す る 確 認 ・ 報 告 事 務
・担い手 の育成 アクシ ョン・プ ログラ ムに基 づく 担い 手育成 ・確保 運動の展 開
・農地・ 確保利 用支援 事業の実 施
・水田・ 畑作経 営所得 安定対策 (ナラ シ対策 )の資金 管理
・耕作放 棄地対 策の実 施 など
(16)